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関連審決 無効2002-35410
訂正2003-39172
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  組合せ /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  相違点の認定 /  新規事項の追加(新規事項を追加) /  減縮 /  請求項 /  容易に想到 /  公知技術 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 17年 (行ケ) 10322号 審決取消請求事件
原告 株式会社パソック
訴訟代理人弁護士 櫻林正己,弁理士 中村敬
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 吉村宅衛,治田義孝,高橋泰史,井出英一郎,大野克人,高木彰
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/05/24
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が訂正2003―39172号事件について,平成16年8月5日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 実用新案登録第2129601号「イベント用着用ぬいぐるみ」の請求項1に係る考案(本件考案)は,平成3年10月8日に実願平3-91093号として出願され,平成7年7月12日に出願公告され,その後平成8年8月1日に設定登録(請求項の数1)がされた。 本件考案について,平成14年9月25日株式会社風船工房匠により無効審判請求(無効2002-35410)があり,平成15年7月15日本件実用新案登録を無効とする旨の審決があり,その取消訴訟が,当庁平成17年(行ケ)第10283号事件として係属中である。
原告は,平成15年8月18日,本件考案につき訂正審判請求(訂正2003―39172)をしたが,平成16年8月5日,審判請求不成立の審決があり,その謄本は同月17日原告に送達された。
2 本件考案の要旨 (1) 訂正前の登録請求の範囲の記載 外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと,該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと,該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装された吸気管とからなり,モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ。
(2) 訂正による登録請求の範囲の記載(下線部が訂正箇所) 外部との通気口及びファスナー開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと,該ぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用する電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットと,該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー 式吸気管とからなり,モーターの駆動で送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませることを特徴とするイベント用着用ぬいぐるみ。
3 審決の理由の要点 (1) 訂正要件について 登録請求の範囲及び明細書の訂正は,実用新案登録請求の範囲減縮を目的とした訂正に該当し,新規事項の追加に該当せず,実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2) 独立登録要件について (2)-1 刊行物 刊行物1(株式会社ベンチャー・リンク 平成元年10月15日発行「VENTURE LINK ベンチャー・リンク」1989年11月号18頁。本訴甲6)には,以下の点が記載されている。
a.「米国生まれの新しい宣伝ツールが登場!人間が入って動くバルーン『ウォークアラウンド』」(18頁第1段左側) b.「ただ,普通のぬいぐるみの場合に難点となるのは,その重量。かなりの重さがあるだけに,中に入って動く人間の苦労もさることながら,軽快なアクションや細かな動きをするのは,なかなか難しい。
この人間入りのぬいぐるみを特殊素材を用いてもっと大きくしたのが,株式会社イベントサービスの『ジャイアントバルーン』。米国・エンターティメント・リサーチ・グループと総輸入販売代理店契約を結び,『ウォークアラウンド』という商品名で販売を開始した。
その名のとおり,仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので,バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして,背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。外部の装置から空気を送り込んだり,電源を供給しなくてもすむため,人間が中に入って自由に動き回れるというわけだ。内部は常時風が入るので,中に入る人も涼しい状態で動くことができるという。『いままでのぬいぐるみにはなかった軽やかさが大きな魅力です。また,重量も軽いので人間の等身大より大きくでき,インパクトがあります。......」(18頁第2段1〜30行) (2)-2 刊行物2(米国特許第3525334号明細書及びその抄訳。本訴甲7。判決注:特許査定日・1970年8月25日)には以下の点が記載されている。
c.「この衣服アセンブリは,着用者に支持され,モータを服地の内側に保持し,服地の外側に空気吸入器を備え,服地の内側に空気排出器を備えた,送風機のような空気流入手段を備える。」(第1欄68〜72行,抄訳1頁2行〜5行) d.「本衣服アセンブリには送風機51が設けられる。図3に示すように,着用者のウエストと首を囲むストラップ46からなるハーネスにより,送風機51が着用者の体の中央で支持される。送風機51は流入手段である吸入口52を備え,これは,送風機からジャケット12の開口58を通り,流体が流れないようしっかりと突出するよう適合される。吸入口52には,所望であれば,格子窓,あるいは吸入口フィルタ52aを設置することができる。送風機51はストラップ46に吊されたハウジング54と,バッテリ62により給電され出口59から排気するよう設置されたファン63からなる。一般的に,送風機の容量は,空気を服地の内側に入れ,かつ,服地内で頭が動かない状態で通常の呼吸が可能な割合で,服地のフィルタから排気するのに充分な容量であるべきである。毎分5〜15立方フィートの空気の流れは,(それより)幾分少ないか多い流れであっても充分である。送風機51は,吸入口52以外はジャケット12内に完全に収容されている。」(第3欄45〜61行及び図面第3図,抄訳1頁14行〜2頁3行) e.「使用に当たり,着用者は最初に送風機51にストラップ46を取り付ける。ヘルメット17と一体になったジャケット10が着用され,吸入口52がジャケット12の開口58に圧入される。」(第4欄61〜63行,抄訳2頁12行〜15行) f.「送風機51が作動され,空気が服地内に流入する。流入により,現在の内部の気圧で,通常5〜15c.f.mである空気の流入率が,フィルタ32と56の空気排出率を越える。内部気圧が上昇するにつれ,排気量率は,気圧と比例するので,圧力バランスが達成されるまで上昇する。同様に,内部気圧と反比例する流入率は,内部気圧が上昇するにつれ,ファンが高圧に対して作動するので減少する。」(第4欄68〜75行,抄訳2頁16行〜21行) (2)-3 対比 本件考案と刊行物1記載のものとを対比すると,刊行物1記載のものは,「背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」との記載から,ぬいぐるみの中に風を送り込むための外部との通気口を当然備えているものと認められ,また「人間入りのぬいぐるみ」,「人間が中に入って自由に動き回れる」との記載から,ぬいぐるみに人間が出入りするための開閉口や開閉手段が設けられているものと認められる。このことから,刊行物1記載のものにおける「風船をぬいぐるみにしたもの」は,本件考案の「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグ」に対応する。
次に,刊行物1記載のものにおける「扇風機」も,「小型バッテリー」を備え,かつバッテリーにより扇風機を動かすためのモータを当然備えているものと解されることから,刊行物1記載のものにおける「小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」構成は,本件考案の「電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニット」に対応し,同様に,刊行物1記載のものにおいて「扇風機で中に風を送り込む」ことは,本件考案における「モーターの駆動で送風機によって外気を吸入」し「送気」することに対応する。
さらに,刊行物1記載のものは「内部は常時風が入る」との記載から,ぬいぐるみ内に絶えず空気が送られているものと認められ,また,刊行物1における「バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして,背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」という記載から,ぬいぐるみ内に風を送り込んでバルーン状に膨らませるものと解されることから,刊行物1における「風船をぬいぐるみにしたもの」に「常時」「風を送り込む」ことは,本件考案における「絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気」することに対応する。
したがって,両者は「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと,電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットとからなり,モーターの駆動で送風機によって外気を吸入し,絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませるイベント用着用ぬいぐるみ。」である点で一致し,以下の点で相違している。
【相違点】 (i) 開閉口が,本件考案はファスナー開閉口であるのに対し,刊行物1記載のものはファスナーを有している旨の記載がない点 (ii) 送気ユニットが,本件考案はぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用するものであるが,刊行物1記載のものは「背中につけた小型バッテリー式の扇風機」と記載されているのみで,「扇風機」が取り付けられているのが「ぬいぐるみ」の背中なのか,エアバッグ内の人間の背中なのか不明である点 (iii) 送気ユニットの吸気及び送気の構造が,本件考案は,送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー式吸気管からなり,送風機によって吸気口から外気を吸入し送風口から送気するものであるのに対し,刊行物1記載のものは吸気及び送気のための具体的構成が不明である点 (2)-4 相違点についての判断 (相違点(i)について) 刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみは,「内部は常時風が入る」,「仕組みは風船をぬいぐるみにしたもの」との記載から,風船の状態を保つように内部に入れた空気が保持されることが必要であり,かつ,人の出入口を具備するのであるから,この人の出入口の開閉口を塞ぐ開閉手段も当然有しているものと解される。そして,一般に人間が着用する衣服等において,着用のための開口部を塞ぎ,また開閉するための手段としてファスナーは極めてよく知られた技術手段であり,その採用は当業者が適宜行う設計的事項である。さらに,刊行物1記載のものにあっても,その開閉口を塞ぐ開閉手段としてファスナーを適用することに何ら支障は認められない。したがって相違点(i)は,当業者が適宜になし得ることと認められる。 (相違点(ii)について) 刊行物2には,上記c,d及びeの記載にもあるように,気密性を保つ着衣(この場合衣服アセンブラ)を着用するに当たり,ストラップを取り付けた送風機を,着衣の着用者が直接装着することが記載されている。そして,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみと,刊行物2記載の衣服アセンブリとは,それぞれぬいぐるみと衣服アセンブリという,人が着用する衣服に類するものである点で共通し,また,両者は,人が頭部を含む体全体を覆うように着用できること,着用して使用する際に気密性を保つこと,及び中に入る人が呼吸できるようにするものであることから,人が呼吸可能な状態で体全体を覆うように着用するという点においても,技術的に共通の分野に属するものといえる。
してみると,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける「小型バッテリー式の扇風機」の支持方法として,刊行物2記載の構成を適用し,エアバッグ内に入る人間が着用し支持するようにすることは,当業者であれば極めて容易に想到し得るものである。
(相違点(iii)について) 刊行物2の上記d及びeには,送風機51上の空気流入手段である吸入口52とジャケット12上の開口58とは,使用に際し着用者が送風機51をストラップ46により身に付けジャケットを着用する時に,吸入口52が開口58に突出するように圧入されることで接合されるものであることが記載されており,また図1,3及び4には,吸入口52が,送風機51のハウジング54上に設けられた管の形状を有するものであることが示されている。このことから,刊行物2に記載のものにおける「開口」は本件考案における「通気口」に相当し,また刊行物2に記載のものにおける「吸入口」は本件考案における「吸気口」を備えた「吸気管」に相当する。そして,刊行物2に記載のものにおける「出口59」は本件考案における「送風口」に相当する。
ここで,刊行物2における吸入口と開口との接合方法に関して述べると,刊行物2の上記eには「吸入口52がジャケット12の開口58に圧入される」と記載されている。この「圧入」という語句の意味は,広辞苑(岩波書店)によれば「強い圧力で物を押し込むこと」,また特許技術用語集(日刊工業新聞社)によれば「圧力を加えて押し込むこと」とあり,これらより「圧力を加えて物を押し込むこと」の意味であるものと解される。この点に関し,刊行物2の上記dには,「...吸入口52を備え,これは,送風機からジャケット12の開口58を通り,流体が流れないようしっかりと突出するよう適合される。」と記載されており,当該記載には,流体である空気が外に漏れることのないよう「圧入」することが示されており,その接合状態は,使用時に容易に外れることで流体が漏れることない,しっかりとした取付けを要件としていると解される。
一方,本件考案は,吸気口と通気口の接合方法として「嵌装固止」と規定するものであり,この「嵌装」及び「固止」について本件明細書中には何ら定義されておらず,その技術的意義も明確でない。そして,前記広辞苑にも掲載されていないが,「嵌装」については特許技術用語集(日刊工業新聞社)に「嵌めた状態に備え付けること」とされていること,さらに「嵌」は「くぼみにはめこむこと,はまること」,及び「装」は「とりつけること」(共に広辞苑)であることを考え合わせると,「嵌装」という語句は「はめこむことでとりつけること」とするのが妥当であると考えられ,一方「固止」については特許技術用語集に示されておらず,「固」は「かたいこと,かためること」,及び「止」は「とまること,とまること」(共に広辞苑)であることを考え合わせて「かたくとめること」と解釈するのが妥当であると考えられる。この点に関し,本件明細書の記載には,「送風機6の吸気管13の吸気口7を通気口3に係脱自在に嵌装固止する。それから……ぬいぐるみエアバッグ1内に送気してぬいぐるみエアバッグ1を送気中,常にボリュームたっぷりふくらませるものである。」(公告公報,【0011】)との記載があるのみで,当該記載には,ぬいぐるみエアバッグを常にボリュームたっぷりに膨らませるもので,送気中に外れることのないよう「嵌装」して「固止」することが示されており,本件考案における「嵌装固止」による接合状態は,送気中などの使用時には容易に外れることのない取付けを要件としていると解される。したがって,本件考案における「嵌装固止」は,送気中などの使用時には容易に外れることないしっかりとした状態,すなわち「はめこむことでとりつけ」て「かたくとめる」という意味で用いられているものと認められる。
そこで,「嵌装固止」である本件考案と「圧入」である刊行物2を対比すると,両者はいずれも係脱自在あるいは嵌め外し自在であり,かつ容易に外れないしっかりとした結合であることを前提として,これを取り付けた後の状態として表現するか,取付時の状態として表現するかの差異であると認められる。さらに敷衍すると,前記「圧入」の意味のうち「圧力を加えて」という文言は,押し込む際に圧力を付加するという意味であり,一方「嵌装固止」は容易に外れることのないように「はめこむことでとりつけ」て「かたくとめる」ものであればよいから,圧力の要否にかかわらず接合した結果の構成・度合において両者に格別の相違があるものとは解されない。同じく「圧入」の意味のうち「押し込む」という文言も,「無理に入る」(広辞苑)という意味であることから,「嵌装固止」に係る操作と同様に,接合した結果の構成・度合において両者に格別の差異を生じさせるものであるとは解されない。したがって,刊行物2における「圧入」は,本件考案における「嵌装固止」に含まれるものである。
さらに,吸気管の構造に関して述べると,本件考案の吸気管の如く気密状態を連結する管状の構造において,その形状をベロー式,すなわち蛇腹式にすることは,極めてよく知られた技術であり,当業者が必要に応じ適宜行う事項にすぎない。
また,本件考案により奏する作用効果も,記刊行物1及び2に記載された考案から当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。
以上のことから,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける扇風機のための吸気及び送気構造として,刊行物2記載の構成を適用することは,当業者であれば極めて容易に想到し得るものである。
(2)-5 まとめ 以上のとおりであって,本件実用新案登録請求の範囲請求項1に係る考案は,刊行物1及び刊行物2に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものと認められるから,実用新案法3条2項の規定により,実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(3) 審決のむすび 以上のとおりであるから,当該訂正は,特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則14条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則4条1項の規定によりなおその効力を有するとされ,同附則4条2項の規定により読み替えて適用される改正前の実用新案法39条1項ただし書き,及び同条3項の規定に適合しない。
原告主張の審決取消事由
1 取消事由1(刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみの誤認) (1) 審決は,イベント用着用ぬいぐるみの当業者が刊行物1の記載から刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみを実施できるようにその構成を具体的に特定することができないにもかかわらず,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみを「外部との通気口及び開閉口を有する内部中空のぬいぐるみエアバッグと,電源バッテリー付きでモーター直結の送風機などを備えた送気ユニットとからなり,モーターの駆動で送風機によって外気を吸入し,絶えずぬいぐるみエアバッグ内に送気してバルーン状にふくらませるイベント用着用ぬいぐるみ。」と認定したが,誤りである。
(2) 刊行物1の記載は,単に「人間が入って動くバルーン」,「人間入りのぬいぐるみを特殊素材を用いて大きくした」,「仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので,バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして,背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。」,「外部の装置から空気を送り込んだり,電源を供給しなくてもすむため,人間が中に入って自由に動き回れる」,「内部は常時風が入るので,中に入る人も涼しい状態で動くことができるという。」だけで,極めて不明確なものにすぎない。本件考案においては,刊行物1記載の公知技術が問題となっているものであるが,刊行物1の記載だけでは,単に「風船をぬいぐるみにした」,「背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込む」という着想が示されているにすぎず,イベント用着用ぬいぐるみの当業者が実際にイベント用着用ぬいぐるみを実施できるようにその構成を具体的に特定することはできない (3) 刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみは,たとえある程度の構成を特定できるとしても,「背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの」であり,「送り込む」とは「送って先方に届ける。送って中へ入れる。」を意味する(広辞苑第3版)ことから,ここでは外側から内側に風を送ることを意味し,本件考案のように「外気を吸入」することは決して意味しない。すると,刊行物1記載の「背中」とは,本件考案の「ぬいぐるみエアバッグ」に相当する「生地」の背中を意味し,内部の人間の背中を意味しない。
2 取消事由2(技術分野の判断誤認) (1) 審決は,「刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみと,刊行物2記載の衣服アセンブリとは,それぞれぬいぐるみと衣服アセンブリという,人が着用する衣服に類するものである点で共通し,」との誤った判断を行っている。
刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみも,各種のパレード等のイベントにおいて使用されるものである。特に,このイベント用着用ぬいぐるみのぬいぐるみエアバッグは,これらのイベントを盛り上げるべく,各種のマスコット等に外観が形成される。そして,このイベント用着用ぬいぐるみのぬいぐるみエアバッグは,バルーン状に膨らんでボリュームを持ち,張りによって見栄えを向上させる。つまり,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみは,いわば人形,特に中に人が入る人形であることから,外観が最も重要であり,内部の人間のある程度の不便さは二次的なものとしか扱われない。同時に風船状のぬいぐるみであることから,同質の素材により一体的に形成される。
これに対し,刊行物2記載の衣服アセンブリは,「汚染物質浸入の可能性を減少させる必要のある,低汚染ルーム又はその他の管理された環境の現場での使用に適用する」(刊行物2の訳文として提出された甲第3号証(以下「訳文」と表記)1頁10〜11行),いわばクリーンルーム用汚染防止用気密服であり,かつヘルメット,ジャケット及びズボンからなり,ヘルメットとジャケットは固定され,ジャケットとズボンは取り外し可能に固定されるものである(訳文4頁2〜8行)。刊行物2は,「水中用ダイビング装置から宇宙服まで,各種の衣服アセンブリが公知である。」(訳文1頁25行)とし,水中用ダイビング装置や宇宙服も同種の衣服アセンブリとしている。
結局,両者は決して人が着用する衣服として共通のものということはできない。
両者を「衣服に類するもの」として共通化することは,人形と水中用ダイビング装置や宇宙服とも同一視するものであり,いかにも不自然である。
(2) 審決における「両者は,人が頭部を含む体全体を覆うように着用できること,・・・及び中に入る人が呼吸できるようにするものであることから,人が呼吸可能な状態で体全体を覆うように着用するという点」は共通点といえなくはないことは認める。
しかしながら,この点だけによって両者が技術的に共通の分野に属するものということは非論理的である。
また,(両者は),「着用して使用する際に気密性を保つこと」において,正確に共通するものではない。刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみはしっかりとバルーン状に膨らむための,内気についての気密性を要件としている(他方,排気については何も記載されていない。)だけで足りるのに対し,刊行物2記載の衣服アセンブリは,汚染物質が排出されないよう気密性を維持しながらフィルタから排気できるようにしており,汚染物質についての気密性を主に意図している。刊行物2記載の衣服アセンブリにおいても,吸入装置は排気装置よりも流入速度が速く,服地の気圧を正にする(訳文7頁下から5行以下)ことから,この意味での気密性はあるかもしれないが,本件考案のそれとは異なる。
すなわち,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみの主な機能はイベントを盛り上げることである。そのイベントにおいて,観客の興味を引き付けるため,ぬいぐるみエアバッグはバルーン状に十分膨らむ必要性がある。特に,ぬいぐるみエアバッグは,張りをもってバルーン状に膨らむことにより,大型かつ元気であることの驚異を観客に与え,イベントを盛大にする。ぬいぐるみエアバッグは絶えず送気されてバルーン状に膨らむことから,内部の人はその膨らみのついでに呼吸を行うのである。
これに対し,刊行物2記載のクリーンルーム用気密服,水中用ダイビング装置及び宇宙服は,環境を内部の人から守ったり,内部の人を環境から守ったりしつつ,内部の人の呼吸を確保することに主な共通の機能がある。これらにおいては,ジャケットがバルーン状に大きく膨らむ必要性は全くなく,内部の人が呼吸できるようにするためにだけ送気が行われる。
このため,刊行物2記載のクリーンルーム用気密服,水中用ダイビング装置及び宇宙服は,主な機能が共通し,技術的に共通の分野に属するものであると考えられるものの,これらと刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみとは,主な機能が異なり,技術的に共通の分野に属するものであるとは決して考えられない。
また,イベント用着用ぬいぐるみを製造販売する当業者が刊行物2に記載されるような衣服アセンブリの技術を参考にすることも決してない。国際特許分類(IPC)も,刊行物1記載の考案がA63H3/00「人形」の下位概念の3/02「布地で作られたもの又は詰め物を入れられたもの」及びA41Dl/00「衣服」であるのに対し,刊行物2記載の発明がA62B7/00「呼吸用の装置」であり,両者は異なるIPCによって分類される。
(3) 以上のように,審決は,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみと刊行物2記載の衣服アセンブリとが共通する技術分野に属するものであると誤って判断したものである。
3 取消事由3(組合せによって本件考案が得られるとの誤認) 審決は,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみと刊行物2記載の衣服アセンブリとを組み合わせることによって本件考案が得られる,との誤った判断もしている。
(1) 本件考案におけるベロー式吸気管の意義 刊行物1にも刊行物2にも,ベロー式吸気管は開示されていない。その下において,刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみと刊行物2記載の衣服アセンブリとを組み合わせた場合,刊行物2記載のハウジングにおける「管状をなす部分」が本件考案の「ベロー式吸気管」に相当することとなる。
前者は剛体であるのに対し,後者は可撓性,伸縮性を有するものである。本件考案は,このベロー式吸気管により,ぬいぐるみエアバッグの通気口と送風機との距離を保った横方向のずれが可能になるとともに,ぬいぐるみエアバッグの通気口と送風機との距離の変化も可能になることから,内部の人の軽快な動作という,ぬいぐるみ製造に携わる当業者が予測することができない顕著な作用効果を奏することができる。本件考案のイベント用着用ぬいぐるみは,ベロー式吸気管の採用によって,単に気密状態をフレキシブルに連結するだけではない。
こうして,内部の人の軽快な動作が得られる本件考案のイベント用着用ぬいぐるみによれば,例えば,二頭身のぬいぐるみエアバッグの腕に相当する部分に内部の人間が手を入れるためにしゃがんだり,内部の人間が外を見るためにぬいぐるみエアバッグの眼,口,眉等に相当する部分に形成された覗きスペースに眼を近づけたり,イベントの台本に従ってジャンプしたりするような激しい動作も可能となる。
そして,こうしても,イベントの実演中にべロー式吸気管の吸気口が通気口より抜けることがなく,ぬいぐるみエアバッグが弛むことも防止できる。本件考案のイベント用着用ぬいぐるみは,ぬいぐるみエアバッグが張りを有してバルーン状に膨らんでボリュームを出し,優れた見栄えによってイベントをより盛り上げることができる。
仮に認定し得る刊行物1記載のバルーンぬいぐるみも吸気管の有無が不明であり,仮にその吸気管があるとしても,その吸気管はベロー式のものではないと認定されることから,本件考案のバルーンぬいぐるみと比べれば,ぬいぐるみエアバッグ内で跳んだり跳ねたりするような激しい動作までの軽快さを奏すること等は開示されていない。刊行物1記載のバルーンぬいぐるみが吸気管を有さず,ぬいぐるみエアバッグの背中に送風機を設けたものであれば,送風機の重みによってぬいぐるみエアバッグは弛みも生じやすい。これを回避しようとすれば,支柱を設ける必要があるが,刊行物1記載のバルーンぬいぐるみが支柱を有するものであれば,従来ぬいぐるみ以上に激しい動作を行うことはできない。これに対し,本件考案のイベント用着用ぬいぐるみは,人間が送風機を着用することから,出力が大きい大重量の送風機を採用することができ,これによりぬいぐるみエアバッグの張りを確保しつつ,支柱を設ける必要性をなくしている。
確かに,気密状態を連結する管状の構造として,ベロー式,すなわち蛇腹式の吸気管は掃除機等においては周知かもしれない。しかしながら,ベロー式の吸気管に期待する作用は,本件考案に関する当業者と掃除機等の他の技術分野に関する当業者とで異なる。本件考案に関する当業者は,ベロー式の吸気管により,気密状態を維持するばかりでなく伸縮自在でぬいぐるみエアバッグの弛みを防止しつつ中の人間が活発に動作をすることができるなどという効果を奏することの着想を想到することができなかったものである。
(2) 本件考案においては,ベロー式吸気管はぬいぐるみエアバッグの通気口から外部に突出しない。
刊行物1記載のイベント用着用ぬいぐるみと刊行物2記載の衣服アセンブリとを組み合わせる場合,刊行物2には「管状をなす部分は,送風機からジャケット12の開口58を通り,流体が流れないようしっかりと突出するよう適合される。」との記載ないし示唆が存在するのであるから,刊行物1記載のぬいぐるみエアバッグの通気口には管状をなす部分が大きく突出されることとなる。つまり,こうして組み合わせて得られるものは,本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載された「送気ユニットの送風機の「吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止された」ベロー式吸気管」という構成を有することができない。このため,こうして得られたものは,外観上の美観が重視されるイベント用着用ぬいぐるみにおいて,イベントを台無しにしてしまう。
当裁判所の判断
1 取消事由1について (1) 原告は,刊行物1の記載は極めて不明確なものにすぎないと主張するが,当業者であれば,刊行物1の上記記載から,審決認定のように,本件考案と刊行物1に記載された考案との間の一致点・相違点に係る構成を容易に理解することができるというべきであり,一致点・相違点の認定には,その説示に照らし,誤りはない。原告は,刊行物1の記載だけでは,単に「風船をぬいぐるみにした」,「背中につけた小型バッテリー式の扇風機で風を送り込む」という着想が示されているにすぎず,イベント用着用ぬいぐるみの当業者が実際にイベント用着用ぬいぐるみを実施できるようにその構成を具体的に特定することはできない,とも主張するが,本件考案と対比できるだけの構成は,審決が認定した刊行物1の記載(前記第2の3審決の理由の要点(2)-1)から十分に理解することができるのであって,原告の主張は理由がない。
(2) 原告は,刊行物1記載の「背中」とは,本件考案の「ぬいぐるみエアバッグ」に相当する「生地」の背中を意味し,内部の人間の背中を意味しない,と主張するので,検討する。
刊行物1には,「仕組みは風船をぬいぐるみにしたもので,バルーン用の新素材『リップストップ』を生地にして,背中につけた小型バッテリー式の扇風機で中に風を送り込むというもの。」と記載されているだけであって,その文脈上,@「背中」が「ぬいぐるみ」の背中なのか,エアバッグ内の人間の背中なのかが不明であるし,また,A「背中につけた」の文言が「扇風機」にかかると読むこともできるほか,「小型バッテリー」にかかると読む余地もある。
そして,広辞苑(第5版)によれば,「送風機」とは「鉱山の坑内や溶鉱炉・鍛工炉や室内の換気装置などに空気を送入する機械。ブロワー。」であり,『送風』とは「風や空気などをふき送ること。」であり,「吸入」とは「@吸い入れること。吸い込むこと。A特に,治療などのために,気体や霧状にした薬を吸いこむこと。」であるとされている。
原告の上記主張は,刊行物1の「送り込む」との記載文言が「外側から内側に風を送ること」であるのに対し,本件考案は,「送風機によって吸気口から外気を吸入」することを構成要件としていることの違いを根拠とする。しかし,「送風」は風を送る機能を有する機械を主体としたときの表現であり,「吸入」は送風機によって送られた風についてエアバッグの内部を主体としたときの表現であって,一つの物理現象を異なる側から捉えた表現の相違にすぎないのであり,刊行物1の上記記載文言をもって,本件考案の「外気を吸入」することに対応するものではないとすることはできない。
このように,原告が主張する「送り込む」の文言の意味を考慮したとしても,刊行物1の記載からは,「(中に風を送り込むための)背中につけた小型バッテリー式の扇風機」の具体的な取付場所が不明である。審決は,かかる事項を相違点(ii)「送気ユニットが,本件考案はぬいぐるみエアバッグ内の人間が着用するものであるが,刊行物1記載のものは「背中につけた小型バッテリー式の扇風機」と記載されているのみで,「扇風機」が取り付けられているのが「ぬいぐるみ」の背中なのか,エアバッグ内の人間の背中なのか不明である点」として認定しているのであって,原告の上記主張をもって,審決に誤りがあるということはできない。
2 取消事由2について (1) 原告は,刊行物1記載のものと本件考案を,「衣服に類するもの」として共通化することは,人形と水中用ダイビング装置や宇宙服とも同一視するものであり,いかにも不自然である,と主張する。
しかしながら,広辞苑(第5版)によれば,「ぬいぐるみ」とは「演劇などで,俳優が動物などに扮する場合に着る特殊の衣装。」であり,「衣装」とは「@衣と裳。きもの。衣服。」A俳優・踊子などが演技の際に用いる衣服。」であるから,本件考案ないしは刊行物1記載の「ぬいぐるみ」は「衣服」の範疇に入るものである。一方,刊行物2に記載の「衣服アセンブリ」も「衣服」の範疇に入ることが明らかである。そして,刊行物1に記載のぬいぐるみは,中に人が入って動くものであり,刊行物2の「衣服アセンブリ」も人が着用するものであることがFIG.1〜3からも明らかである。
してみると,「ぬいぐるみと衣服アセンブリという人が着用する衣服に類するものである点で共通し」とし,刊行物1の「ぬいぐるみ」と刊行物2に開示された技術とは共通するものとし,両者は技術的に共通の分野に属するものといえるとした審決の認定に誤りはない。
(2) 原告は,刊行物2記載の衣服アセンブリは,汚染物質が排出されないよう気密性を維持しながらフィルタから排気できるようにしており,汚染物質についての気密性を主に意図しているとし,刊行物1の考案が内側から外側に向けての気密性を意味しているのに対し,刊行物2の考案では外側から内側に向けての気密性を意味していて,「気密性」の意味が相反するから,両者の考案は技術分野が相違し組み合わせることができない,との趣旨をも主張する。
しかしながら,「気密」とは「気体を通さぬこと。気体に対して密閉されていること。」であって(広辞苑第5版),刊行物1,2に記載のものは,いずれも「気体を通さぬこと」で共通し,かつ,「(外側の)気体に対して密閉されていること」で共通するものであって,仮に,両者においてその求める作用が相違するとしても,構成としては共通のものであり,技術分野が相違するということはできない。
(3) また,原告は,刊行物1記載のものがイベント用であるのに対し,刊行物2記載のものは,クリーンルーム用気密服,水中用ダイビング装置及び宇宙服であるし,両者は異なるIPCによって分類されているから,技術的に共通の分野に属するものではないとも主張する。
しかしながら,両者は,審決が認定したように,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみと,刊行物2記載の衣服アセンブリとは,それぞれぬいぐるみと衣服アセンブリという,人が着用する衣服に類するものである点で共通するだけでなく,人が頭部を含む体全体を覆うように着用できること,着用して使用する際に気密性を保つこと,及び中に入る人が呼吸できるようにするものであることから,人が呼吸可能な状態で体全体を覆うように着用するという点においても,技術的に共通の分野に属するものであることは明らかである。
(4) 結局,刊行物1の考案と刊行物2の考案とは,共通する技術分野に属するものであり,当業者において極めて容易に組み合わせることができるとし,相違点(ii)について,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける「小型バッテリー式の扇風機」の支持方法として,刊行物2記載の構成を適用し,エアバッグ内に入る人間が着用し支持するようにすること,並びに,相違点(iii)について,刊行物1記載のイベント用ぬいぐるみにおける扇風機のための吸気及び送気構造として,刊行物2記載の構成を適用することは,当業者であれば極めて容易に想到し得るものであるとした審決の判断に誤りはない。
3 取消事由3について (1) 本件考案におけるベロー式吸気管の看過ないし軽視について (1)-1 原告は,まず,刊行物1にも刊行物2にもベロー式吸気管は開示されていないと主張するが,審決は,刊行物1又は刊行物2にベロー式吸気管が開示されていると認定しているものではなく,両者にベロー式吸気管が開示されていないことを前提として,「吸気管の構造に関して述べると」とその判断対象を明確に特定した上で,「本件考案の吸気管の如く気密状態を連結する管状の構造において,その形状をベロー式,すなわち蛇腹式にすることは,極めてよく知られた技術であり,当業者が必要に応じ適宜行う事項にすぎない。」と認定判断したものであり,そこに誤りがあるということはできない。
(1)-2 原告は,本件考案は,このベロー式吸気管により,ぬいぐるみエアバッグの通気口と送風機との距離を保った横方向のずれが可能になるとともに,ぬいぐるみエアバッグの通気口と送風機との距離の変化も可能になることから,内部の人の軽快な動作という,ぬいぐるみ製造に携わる当業者が予測することができない顕著な作用効果を奏することができる,と主張する。
しかしながら,本件考案では,「エアバッグ内の人間がイベント実演のために軽快な動作を容易に行うこと」が必須の構成要件となっておらず,刊行物1には,「人間が中に入って自由に動き回れる」との記載があり,また「アメリカでは実際にステージ上で役を演じている」との記載があることを考慮すると,審決が,「エアバッグ内の人間がイベント実演のために軽快な動作が容易に行えるのを助けることは格別の作用ということはできない。」と判断した点に誤りはない。
(1)-3 吸気管の構造において,ベロー式,すなわち蛇腹式とすること自体は,当該「吸気管」が採用される電気掃除機等の技術分野の相違とは関係がなく,周知の技術的事項であり,ベロー式ないしは蛇腹式とすることによる効果は,管の両端の相対的な位置の変動に追随するように,伸び縮み自由に,あるいは可撓性を有するようにすることからくる自明の効果であるというべきである。
さらには,刊行物1には,前述したように,「人間が入って動く」との記載,「人間が中に入って自由に動き回れる」との記載があるほか,「アメリカでは実際にステージ上で役を演じているんですよ」(18頁第3段7〜9行)との記載もあり,刊行物1には,内部の人の軽快な動作をすることが記載ないしは示唆されているということができる。
してみれば,刊行物1,2の考案を組み合わせるに際し,刊行物1に記載されたように「人間が中に入って自由に動き回れ」,また「ステージ上で役を演じ」るという課題を解決するために,刊行物2において管の形状を有する吸入口52として周知のベロー式吸気管を採用することは,極めて容易に想到することができ,それによる効果も刊行物1に記載された課題と対応したものであるから,当業者が十分予測可能なものであるといわざるを得ない。
(1)-4 審決は,本件考案のベロー式吸気管の構造が奏する作用効果を看過ないしは軽視したものということはできない。
(2) 本件考案においては,ベロー式吸気管がぬいぐるみエアバッグの通気口から外部に突出しない,との点について 本件考案の実用新案登録請求の範囲では,「該送気ユニットの送風機の吸気口が通気口に係脱自在に嵌装固止されたベロー式吸気管」と規定されているにすぎず,「ベロー式吸気管がぬいぐるみエアバッグの通気口から外部に突出しないこと」との構成は本件考案で規定されていない。この構成のあることを前提とする原告の主張は,実用新案登録請求の範囲に基づかないものにすぎない。
結論
以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がないので,原告の請求は棄却されるべきである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 野輝久
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