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事件 平成 13年 (ワ) 11935号 損害賠償請求事件
原告X
被告 株式会社リコー
訴訟代理人弁護士 野上邦五郎
同 杉本進介
同 冨永博之
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/07/24
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件訴えを却下する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
被告は,原告に対し,199万4200円及びこれに対する昭和56年6月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,下記実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有していた原告が,別紙イ号製品目録,同ロ号製品目録及び同ハ号製品目録記載の各製品(以下,それぞれを「イ号製品」,「ロ号製品」及び「ハ号製品」という。)を被告が業として製造販売し,本件実用新案権を侵害したと主張して,被告の製造販売した上記各製品のうちの数台分について,不法行為による損害賠償請求権に基づき,実施料相当額及び民法所定の遅延損害金の支払を求めている事案である。
記 (1) 実用新案登録番号 第978602号 (2) 考案の名称 カッター装置付きテープホルダー (3) 出願年月日 昭和41年6月13日 (4) 出願公告年月日 昭和47年1月22日 (5) 登録年月日 昭和47年9月29日 1 原告の主張 被告は,昭和47年3月から同56年6月13日までの間にイ号製品16万1100台及びロ号製品9万1100台を,昭和47年2月から同56年6月13日までの間にハ号製品10万4700台を,それぞれ製造販売しているところ,そのうち,イ号製品につき当初の7台に係る実施料相当額37万3800円,ロ号製品につき当初の6台に係る実施料相当額32万400円,ハ号製品につき当初の5台に係る実施料相当額130万円の合計199万4200円及び遅延損害金の支払を求める。
当裁判所の判断
1 同種先行訴訟の存在 証拠(乙第1号証)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 昭和53年以降,原告は,被告に対し,被告の製造販売した複写機である「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」,「リコーPPC900及びセンタースリッター」及び「リコピーPL5000オート」につき,その製造販売が本件実用新案権の侵害に当たると主張して,実用新案権侵害を理由とする損害の賠償又は不当利得金の返還を求める訴訟を,内金請求又は一定の台数分の被告製品についての請求という形に細分化して多数回にわたり提起しており,これらの請求はすべて棄却されてきた。平成7年に原告が提起した訴訟(当庁平成7年(ワ)第115号。以下「平成7年訴訟」という。)につき,当裁判所は,同年7月14日,「原告の訴えは一部請求の名のもとにいたずらに同一の訴訟を蒸し返すものであり,これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするものであって,被告の地位を不当に長く不安定な状態におき,ことさらに被告に応訴のための負担を強いることを意に介さず,民事訴訟制度を悪用したものである」旨を理由として,原告の訴えは訴権の濫用に当たるものであって訴えの利益を欠き不適法であり,しかもその点を補正することができない旨判示して,訴え却下の判決をした。
原告は,上記判決に対して控訴したが(東京高等裁判所平成7年(ネ)第3271号),同年11月21日に控訴棄却の判決を受け,更に同判決に対して上告したが(最高裁判所平成8年(オ)第580号),平成9年10月17日に上告棄却の判決を受け,訴え却下の判決が確定した。
(2) 平成7年訴訟の1審判決の後も,原告は,被告に対し,本件実用新案権に基づいて,上記各製品の製造販売につき損害の賠償ないし不当利得金の返還を求める訴えを提起したが(当庁平成7年(ワ)第25729号,平成8年(ワ)1042号,平成9年(ワ)第2356号,同第2358号,平成10年(ワ)第7808号,平成11年(ワ)第1317号,平成12年(ワ)第6663号,平成12年(ワ)第16890号。なお,以下,平成12年(ワ)第16890号を「前訴」という。),いずれの訴えも,平成7年訴訟と同様の理由で却下されている。
2 先行訴訟と本件訴訟との関係 平成7年訴訟及び前訴を含む上記各先行訴訟と本件訴訟とは,実質的に重なり合う期間における同一の複写機の製造販売について,これを本件実用新案権の侵害に当たると主張する点で共通しており,そのうちどの台数分を対象とするかの点においてのみ異なるものであると認められる。
すなわち,本件訴訟において,原告は,被告の製造販売した「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」(イ号製品),「リコーPPC900及びセンタースリッター」(ロ号製品)及び「リコピーPL5000オート」(ハ号製品)をもって本件実用新案権の侵害品と主張しているところ,これらは,平成7年訴訟及び前訴を含む上記各先行訴訟において,原告が本件実用新案権の侵害品と主張していたのと,同一の製品である。
そして,証拠(乙第1号証)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成7年訴訟において,「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」及び「リコーPPC900及びセンタースリッター」につき昭和47年3月から同52年12月までの間に製造販売された物のうち当初の1万4245台を除くその後の各5台を,「リコピーPL5000オート」につき昭和47年2月から同53年7月までの間に製造販売された物のうち当初の1万2965台を除くその後の5台を,それぞれ対象とし,前訴において,昭和47年9月29日から同56年6月13日までの間に製造販売された上記三製品のうち「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」及び「リコピーPL5000オート」につき当初の各5台を,「リコーPPC900及びセンタースリッター」につき当初の6台を,それぞれ対象として請求している。これに対して,本件訴訟においては,原告は,「リコーPPC900及びB・Aチェンジャー」及び「リコーPPC900及びセンタースリッター」につき昭和47年3月から同56年6月13日までの間に製造された物のうち当初の7台及び6台を,「リコピーPL5000オート」につき昭和47年2月から同56年6月13日までの間に製造販売された物のうち当初の5台を,それぞれ対象として請求している。
3 本件訴訟の適法性について 以上によれば,本件訴えは,平成7年訴訟及び前訴を含む上記各先行訴訟と同様,請求棄却の判決が確定した事件と同一の紛争を蒸し返すものであって,金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した者が残部請求の訴えを提起することは原則として許されない旨の判例(最高裁判所平成9年(オ)第849号同10年6月12日第2小法廷判決・民集第52巻4号1147頁)の趣旨に照らしても,信義則に反するというべきであり,しかも,本件と実質的に同内容の前訴について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず,本件訴訟が提起されたことからすれば,原告の本件訴えは訴権の濫用に当たる不適法なものと判断するのが相当である。
4 結論 よって,本件訴えを却下することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 村越啓悦
裁判官 青木孝之