運営:アスタミューゼ株式会社
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 技術的範囲 /  構成要件充足性 /  禁反言 /  均等 /  損害額 /  実施料相当額 /  権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  図面 /  構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  先願考案 /  きわめて容易 /  先願 /  拒絶理由 /  先行技術 /  減縮 /  実施例 /  本質的部分 /  同一の作用効果 /  容易に想到 /  公知技術 /  特段の事情 /  置換 /  設計変更 /  先願 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 13年 (ネ) 2630号 実用新案権侵害差止及び損害賠償請求控訴事件
平成 13年 (ネ) 4959号 同附帯控訴事件
控訴人(附帯被控訴人) 株式会社ミツル
訴訟代理人弁護士 小海要吉
補佐人弁理士 小倉亘
被控訴人(附帯控訴人) 株式会社内山商会
訴訟代理人弁護士 原和弘
補佐人弁理士 吉井剛
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決中控訴人(附帯被控訴人)敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人(附帯控訴人)の請求及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴について (1) 控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。) ア 主文第1項と同旨 イ 被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)の請求を棄却する。
ウ 主文第3項と同旨 (2) 被控訴人 ア 本件控訴を棄却する。
イ 控訴費用は控訴人の負担とする。
2 附帯控訴について (1) 被控訴人 ア 原判決主文第二項を次のとおり変更する。
控訴人は、被控訴人に対し、金2059万5016円及びこれに対する平成9年5月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ 訴訟費用は、第1、2審とも、控訴人の負担とする。
ウ 仮執行の宣言 (2) 控訴人 ア 本件附帯控訴を棄却する。
イ 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は、三脚脚立についての実用新案権者である被控訴人が、控訴人に対し、控訴人による三脚脚立の製造販売行為が被控訴人の実用新案権の侵害に当たると主張して、損害賠償を求めた事案であり、被控訴人の請求を一部認容した第1審判決に対し、控訴人が控訴をして敗訴部分の取消しを求め、被控訴人が附帯控訴をして損害賠償額の増額を請求している。
本件の前提となる事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり、当審における当事者の主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。
1 控訴人の主張 (1) 補強杆の取付位置について ア 本件考案の補強杆の上端の取付位置は、本件考案の「台枠の側杆に上端が取り付けられて左右の脚杆に沿って設けられた補強杆」との構成要件に明示されているとおり、「台枠の側杆」である。しかし、イ号物件の補強杆の上端が、台枠の側杆ではなく後杆に取り付けられていることは、原判決添付のイ号物件目録の記載にあるとおりであり、また、イ号物件の写真(乙19)からも明らかである。この点について、原判決は、「証拠(乙8、検証結果)によれば、右補強杆4(注、
イ号物件の補強杆)の取付位置は、厳密には、台枠3の側杆3cと後杆3dの連接角部であることが認められ、これは側杆3cの後端角部と評価できるものである。
したがって、イ号物件の構成c′は本件実用考案(注、本件考案)の構成要件cを充足するものと認められる。」(原判決41頁末行〜42頁3行目)とするが、検証の目的物とされた第二検証物(本件考案実施例に係る脚立)を第一検証物(イ号物件)であると見誤ったものと思われ、明らかな事実誤認である。
イ 被控訴人は、補強杆の取付位置について、当審において新たに均等の主張をするが、補強杆の上端を台枠の側杆に取り付けるか、後杆に取り付けるかによって、脚立の強度や使い勝手が大きく異なり、作用効果の顕著な相違が生ずるから、置換可能性がなく、被控訴人の上記主張は失当というべきである。すなわち、
補強杆の上端を、イ号物件のように台枠の後杆に取り付けた場合、補強杆の上端から前杆までの距離が長くなり強度が向上すること、後杆に沿った軸受筒の摺動が補強杆の上端で規制されるため支持杆の回動が円滑になることという、補強杆の上端が台枠の側杆に取り付けられた構成のものからは得られない作用効果が奏される。
さらに、本件考案及びイ号物件のいずれの補強杆も、左右一対の脚杆に沿って設けられているところ、補強杆の上端の取付位置を側杆にした場合(本件考案の構成)、側杆の軸心と補強杆の軸心とが成す角度は鋭角になり、下向きの荷重に対して強度上の問題があるのに対し、補強杆の上端の取付位置を後杆にした場合(イ号物件の構成)、後杆の軸心と補強杆の軸心とを直角に維持した状態で補強杆の上端を後杆に固着することができ、強度の高い継手を得ることができる。
また、被控訴人が後記2(1)Cで主張する要件は、最高裁平成10年2月24日判決をそのまま当てはめたものにすぎないところ、同判決の根底にある考えは、均等論による登録実用新案の技術的範囲の拡張が当該実用新案登録の無効理由を含む結果となる場合には、そのような拡張は許されないというものであるのに、
このような理解が欠如している。補強杆の上端の取付位置を台枠の側杆とする構成とこれを後杆とする構成とが均等であるとすると、これによって技術的範囲が拡張された本件考案は、原判決添付の実願昭59-102827号(実開昭61-20800号)のマイクロフィルム(乙1。原判決のいう本件未公知先願考案に係るもの。以下「先願明細書」という。)記載の考案と同一となり、実用新案法3条の2本文の規定に該当する無効理由を含むこととなる。このような場合には、上記均等論は成り立たないというべきである。
(2) 外周溝付管の適用箇所について 本件考案は、脚杆及び台枠の中央杆が外周溝付管から成ることを規定するところ、これは、下記ア〜ウに述べる理由により、当該部分のみに外周溝付管を適用する趣旨に解すべきであって、脚杆及び台枠の中央杆のほか、台枠の前杆、補強杆、踏枠及び支持杆についても外周溝付管を適用しているイ号物件は、本件考案技術的範囲に属しない。
先願明細書記載の考案との関係 本件考案が、脚杆及び台枠の中央杆以外の部分に外周溝付管を使用するものを含むと解した場合、本件考案と、先願明細書記載の考案と同一となり、本件考案に係る実用新案登録は無効理由を有することとなる。そこで、本件実用新案権が権利として存続している現実を前提に、これを有効なものとするためには、本件考案技術的範囲に、脚杆及び台枠の中央杆以外の部分に外周溝付管を使用するものを含むとの解釈は採り得ない。
この点について、原判決は、本件考案先願明細書記載の考案とは、
「@本件未公知先願考案においては、支柱の上部に把手となるサブハンドルを上方に向けて着脱自在に添設しているのに対し、本件クレームにおいては右のようなサブハンドルは設けられていない、A本件クレームにおいては支持杆9の上部に把手兼作業用足掛が設けられているのに対し、本件未公知先願考案においては添支柱4(本件考案の支持杆9に相当)には右の把手兼作業用足掛が設けられていない、B本件未公知先願考案においては左右の支柱1(本件考案の脚杆2に相当)に沿って設けられている補強杆の上端が上部踏板3(本件考案の台枠3に相当)の後方に取り付けられているのに対し、本件クレームにおいては補強杆4の上端は台枠3の側杆に取り付けられている」(原判決47頁1行目〜10行目)との3点の相違点を理由に、上記主張を採用しなかったが、これらはいずれも相違点とはいえない。
すなわち、第1に、実用新案法3条の2本文において、実用新案登録出願に係る考案との同一性の判断対象とされるべきは、同条に規定する明細書又は図面に記載された内容であって、実用新案登録を受けようとする考案内容ではない。
そして、先願明細書の実用新案登録請求の範囲の記載には、把手となるサブハンドルを支柱の上部に設けたとの構成が規定されているものの、先願明細書には本件考案と同一の構成、すなわち、支柱1(本件考案の脚杆2に相当)、ステップ2(本件考案の踏枠5a〜5fに相当)、上部踏板3(本件考案の台枠3に相当)、添支柱4(本件考案の支持杆9に相当)に外周溝付管を適用した脚立、がすべて記載されているのであるから、上記@のサブハンドルの有無の点は、本件考案先願明細書記載の考案との相違点とはいえない。
第2に、上記Aの把手兼作業用足掛を設けることは、この種の脚立にあっては古くから採用されている慣用手段ないし常とう手段にすぎず、必要に応じて付設したり、省略したりするものにすぎないのであるから(乙第2号証添付の参考資料1、2)、把手兼作業用足掛の有無は、本件考案先願明細書記載の考案との同一性の判断に何ら影響を及ぼすものではない。
第3に、先願明細書記載の考案の補強杆の上端の取付位置については、
先願明細書の第1図によれば、台枠の後杆と側杆とのコーナー部に近い後杆の両側であることが分かるところ、原判決のいうように、「台枠3の側杆3cと後杆3dの連接角部・・・は側杆3cの後端角部と評価できるものである」(上記(1)ア参照)とすれば、この点も本件考案との相違点とはいえないというべきである。
イ 包袋禁反言の原則 被控訴人は、本件実用新案権についての実用新案登録異議申立事件において、実用新案登録異議答弁書(乙5)を提出し、その中で、本件考案は脚杆及び台枠にのみ限定して外周溝付管を用いたものであって、この点で先願明細書記載の考案とは異なる旨を釈明している。この釈明は、実用新案法3条の2本文の拒絶理由を免れるためのものであって、その結果として、異議申立てが排斥され、実用新案登録査定がされたことは明らかであるから、本訴においてこれに反する主張をすることは、信義則ないし禁反言の原則に照らして許されないというべきである。
ウ 被控訴人第二実用新案権との関係 被控訴人第二実用新案権に係る考案は、外周溝付管の使用箇所に係る構成でのみ、本件考案と相違している。このような後願考案に係る実用新案権を被控訴人が有していること自体、本件考案が外周溝付管を脚杆及び台枠の中央杆に限定して採用したことを示すものというべきである。
(3) 自由技術の抗弁 イ号物件は、先願明細書記載の考案を実施したものにすぎないところ、先願明細書に係る実用新案登録出願に対しては、拒絶査定がされ、これが確定している。したがって、先願明細書記載の考案は、何人も自由に実施することのできるものである。
この点について、原判決は、「仮に、右『自由技術の抗弁』が肯定されるとしても、イ号物件は、以下の@Aの点において本件未公知先願考案と相違している。すなわち、@本件未公知先願考案において開示された脚立の支持杆には『把手兼作業用足掛』が設けられていないが、イ号物件はこれを具備している上、A本件未公知先願考案明細書には『各部分をすべてアルミ製のパイプにて形成し、その外周には長手方向に突条5を設けて、滑り止めとする。』との記載があり、これに開示された脚立は、全ての部分を外周溝付管で構成した脚立であると考えられるのに対し、イ号物件の台枠3の側杆3cには外周溝付管が用いられていない」(原判決55頁7行目〜56行目4行目)とするが、把手兼作業用足掛が慣用手段ないし常とう手段であって、その有無が同一性の判断に何ら影響を及ぼすものではないことは上記(2)アで述べたとおりであるし、台枠の側杆に外周溝付管を使用するか否かによっても考案の同一性が左右されるものではない。
(4) 権利濫用の抗弁 本件考案が、外周溝付管の適用箇所を脚杆及び台枠の中央杆のみに限定したものでないとすると、本件考案先願明細書記載の考案が同一となることは、上記(2)アで述べたとおりである。そうすると、本件考案に係る実用新案登録には明らかな無効理由があることとなり、本件実用新案権に基づく本訴請求は権利の濫用として許されないというべきである。
(5) 附帯控訴について イ号物件が本件考案技術的範囲に属さないことが明らかである以上、附帯控訴は理由がない。
2 被控訴人の主張 (1) 補強杆の取付位置について 仮に、イ号物件の補強杆の上端が台枠の後杆に取り付けられているとしてしても、当該取付位置が台枠の後杆か側杆かということは、単なる設計変更というべきものであって、当該取付位置を台枠の側杆と規定する本件考案の構成と均等というべきである。
すなわち、@補強杆の上端の取付位置は、本件考案の作用効果に影響を与えない非本質的部分であり、A補強杆の上端の取付位置が台枠の側杆でも後杆でも同一目的の達成が可能であって、かつ、同一の作用効果を奏し、B補強杆の上端をどこに取り付けるかは単なる設計事項であって、イ号物件の製造時点において当業者が容易に想到することができたものであり、Cイ号物件は、本件考案の実用新案登録出願当時において、公知技術と同一又は当業者がこれから容易に推考できたものではなく、Dイ号物件が本件考案の実用新案登録請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もない。
なお、控訴人は、補強杆の上端を台枠の側杆に取り付けるか、後杆に取り付けるかによって、作用効果の顕著な相違が生じ、置換可能性がない旨主張するが、この主張は、本件考案実施例を念頭において、台枠が方形状であり、しかも、その後杆と支持杆との回動自在な連結構造を「支持杆の上端が固着された軸受筒を後杆に嵌挿(正確には「被嵌」)する構造」であることを前提としたものといわざるを得ない。考案によって奏される作用効果の対比は、実施例ではなく、実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて行われるべきであるから、上記主張は失当である。また、強度の相違をいう点は、採用する部材の材質や径によって変わるものであるところ、本件考案はこれらについて何も限定していないのであるから、強度の相違を持ち出すこと自体誤りというべきである。
さらに、控訴人は、均等論による登録実用新案の技術的範囲の拡張が無効理由を含む結果となる場合には、そのような拡張は許されない旨主張するが、対象製品が登録実用新案の技術的範囲に含まれるか否かの場面における議論である均等論と、無効理由の存在とは全く別個の問題であるから、失当といわざるを得ない。
(2) 外周溝付管の適用箇所について 控訴人は、先願明細書記載の考案との関係から、脚杆及び台枠の中央杆以外の部分に外周溝付管を使用するものは本件考案技術的範囲に属さない旨主張するが、先願明細書は本件考案の実用新案登録出願当時においてはいまだ公知でなかったのであるから、公知でない先行技術に基づいて本件考案技術的範囲を限定解釈すべき理由はないというべきである。未公知の先願明細書記載の考案との関係で問題が生じ得るとすれば、実用新案法3条の2本文に該当する無効理由を含むがゆえに権利行使が制約されるという場合であるが、本件がこのような場合でないことは、後記(4)のとおりである。
また、控訴人は、上記のような限定解釈をすべき根拠として、包袋禁反言の原則についても主張するが、本件考案に係る実用新案登録請求の範囲の記載は一義的に明確であって、包袋禁反言の原則を適用する余地はない。また、被控訴人が、実用新案登録異議答弁書中で、本件考案は脚杆及び台枠にのみ限定して外周溝付管を用いたものである旨述べた点は、本件考案先願明細書記載の考案とが同一でないことを強調するための主張にすぎず、結果的に補正等による実用新案登録請求の範囲減縮を経ることなく、本件実用新案権の登録が認められたのであるから、これを理由に被控訴人の権利行使が制限される理由はない。
外周溝付管の適用箇所に関する控訴人のその余の主張に対しては、原審で反論したとおりである。
(3) 自由技術の抗弁について 控訴人は、先願明細書に係る実用新案登録出願に対して、拒絶査定が確定していることを理由に、先願明細書記載の考案は何人も自由に実施することができる旨主張するが、出願が拒絶されたということは、その実用新案登録を受けようとする考案の権利化が認められなかったということにすぎないから、控訴人の上記主張は失当である。
(4) 権利濫用の抗弁について 控訴人は、本件考案先願明細書記載の考案とは同一であるとして、本件考案に係る実用新案登録には無効理由がある旨主張するが、外周溝付管の適用箇所に関して、先願明細書(乙1、原判決添付)には、「各部分をすべてアルミ製のパイプにて形成し、その外周には長手方向に突条5を設けて、滑り止めとする」(2頁15行目〜17行目)と記載されているにすぎないのに対し、本件考案は、外周溝付管を台枠の中央杆及び左右一対の脚杆に特定している点で相違する。加えて、
本件考案先願明細書記載の考案とでは、サブハンドルの有無、把手兼作業用足掛の有無等についても相違しているのであるから、これを同一ということはできない。
(5) 附帯控訴について 原判決は、本件実用新案権侵害による損害額の認定において、相当実施料率を3%として実施料相当額に基づく損害額を1235万7009円と算定したが、低廉にすぎるというべきである。一般的な実施料率は販売価格の5%を下回ることはない(甲22参照)から、平成4年10月29日から平成9年10月20日までの控訴人によるイ号物件の売上収入額4億1190万0333円(原判決別表3)に5%を乗じた2059万5016円が本件における損害額として認定されるべきである。
当裁判所の判断
1 イ号物件と本件考案の構成の対比 (1) 本件考案の構成要件が、実用新案登録請求の範囲の記載を分説した以下のとおりであることは当事者間に争いがない。
a 中央部に外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された1本ないし複数本の管からなる中央杆が付設されている台枠と、
b 前記台枠の前杆に上端が取り付けられ下方にゆくに従って側方に湾曲して拡がった形状を有する、外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管からなる左右一対の脚杆と、
c 前記台枠の側杆に上端が取り付けられて左右の脚杆に沿って設けられた補強杆と、
d 前記脚杆と補強杆の間に間隔をおいて取り付けられた踏枠とからなる梯子体と、
e 前記台枠の後杆に上端が回動自在に取り付けられ上部に把手兼作業用足掛を設けた支持杆と から構成されたことを特徴とする三脚脚立。
(2) イ号物件の構成が以下のとおりであることは当事者間に争いがない。
a′外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管からなる前杆及び中央部に外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された1本ないし複数本の管からなる中央杆が付設されている台枠と、
b′前記台枠の前杆に上端が取り付けられ下方にゆくに従って側方に湾曲して拡がった形状を有する、外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管からなる左右一対の脚杆と、
c′前記台枠の後杆両端部近傍に上端が取り付けられて左右の脚杆に沿って設けられ、外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管からなる補強杆と、
d′前記脚杆と補強杆の間に間隔をおいて取り付けられ、外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管で作られた踏枠からなる梯子体と、
e′前記台枠の後杆に上端が回動自在に取り付けられ上部に把手兼作業用足掛が設けられ、外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管からなる支持杆と から構成されたことを特徴とする三脚脚立。
(3) 上記の本件考案の構成要件とイ号物件の構成とを対比すれば明らかなように、両者は、@補強杆の上端の取付位置について、本件考案では台枠の側杆とされているのに対し、イ号物件では後杆両端部近傍とされていること、A「外周面の長さ方向に略等間隔で設けられた多数の突条の間に溝が形成された管(注、外周溝付管)からなる」との構成(以下「外周溝の構成」という。)について、本件考案でこれを明示的に規定しているのは台枠の中央杆及び左右一対の脚杆だけであるのに対し、イ号物件では、これらに加え、台枠の前杆、補強杆、踏枠及び支持杆についても外周溝の構成を備えること、以上の2点で相違するほか、他の構成はすべて一致する(別表参照)。そこで、以下、まず、補強杆の取付位置に係る上記@の点についての構成要件充足性(争点1)を検討する。
2 補強杆の取付位置に係る構成についての文言上の構成要件充足性 本件考案が、台枠の構成部分として、前杆、後杆、側杆及び中央杆をそれぞれ別個に区別して規定していることは、実用新案登録請求の範囲の記載から明らかである。そして、実用新案登録請求の範囲の記載に示されている三脚脚立の構造並びに「前杆」、「後杆」、「側杆」及び「中央杆」の用語自体の意義について考えると、本件考案にいう「前杆」とは、台枠中の梯子体側の構成部分、「後杆」とは、台枠中の前杆の反対側の支持杆側の構成部分、「側杆」とは、台枠中の前杆と後杆とを結ぶ両側部の構成部分であって、以上の前杆、後杆及び側杆が台枠の枠体を構成し、「中央杆」は台枠の枠体内に付設された構成部分であると解するのが相当である。なお、この解釈は、考案の詳細な説明の記載及び第1、第2図の図示と完全に符合する。
そこで、イ号物件のどの部分が上記「側杆」及び「後杆」に対応するかを見るに、証拠(原審における検証の結果及び乙19の写真)によれば、イ号物件の台枠(原判決添付のイ号図面第3、第5図参照)の枠体は、梯子体側及びその反対側の長いほぼ長方形状をなし、梯子体の反対側の辺の両端が曲率半径の小さな円弧状とされているほかは直線状であることが認められるから、少なくとも、イ号物件の台枠の梯子体の反対側の辺の直線状の部分は、本件考案にいう「後杆」に該当するものであって、これを「側杆」ということはできないというべきである。ところが、上記証拠によれば、イ号物件の補強杆の上端は、台枠の梯子体の反対側の直線状の部分の両端部(原判決添付のイ号図面第3、第5図において、「後杆」を示す3dの符号が示されている付近)に取り付けられていることが明らかである。
したがって、イ号物件の補強杆は、その上端が台枠の「後杆」に取り付けられているものであるから、当該取付位置を台枠の「側杆」と規定する本件考案の構成要件cを文言上充足せず、文言侵害は成立しないというべきである。
3 補強杆の取付位置に係る構成についての均等の成否 (1) 被控訴人は、補強杆の上端が台枠の後杆に取り付けられた構成は、これが側杆に取り付けられた構成と均等である旨主張するところ、まず、特許権侵害訴訟における均等の要件に関しては、明細書の特許請求の範囲に記載された構成中に他人が製造等をする製品と異なる部分が存在する場合であっても、@当該部分が特許発明の本質的部分ではなく、A当該部分を対象製品におけるものと置き換えても特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、Bそのように置き換えることに、当業者が、対象製品の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、C対象製品が特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、D対象製品が特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、当該対象製品は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解される(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁)。そして、上記Cの要件は、特許発明の特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれからその出願時に容易に推考することができた技術については、そもそも何人も特許を受けることができなったはずのものであるから(特許法29条参照)、
特許発明の技術的範囲に属するものということができないとの考えに基づくものである(上記最高裁判決参照)。以上の理は、実用新案権侵害訴訟においても異なるところはなく、その場合には、上記Cの要件を実用新案法3条2項の規定に対応させると、「C′対象製品が登録実用新案の出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時にきわめて容易に推考できたものではないこと」との要件が妥当するものと解される。
(2) ところで、控訴人は、上記C′の要件(非公知技術)に関し、上記最高裁判決の根底にある考えは、均等論による登録実用新案の技術的範囲の拡張が当該実用新案登録の無効理由を含む結果となる場合には、そのような拡張は許されないというものであるところ、補強杆の上端の取付位置を台枠の側杆とする構成とこれを後杆とする構成が均等であるとすると、これによって技術的範囲が拡張された本件考案先願明細書記載の考案と同一となり、実用新案法3条の2本文の規定に該当する無効理由を含むこととなるから、被控訴人の均等の主張は成り立たない旨主張する。
そこで、控訴人の上記主張について判断するに、上記C′の要件が、そもそも何人も実用新案登録を受けることができなったはずのものについて、登録実用新案の技術的範囲に属するものということができないとの考えに基づくものであることは前示のとおりであるところ、ある登録実用新案が、その出願日前の他の実用新案登録出願であって当該実用新案登録出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された考案と同一であるときも、実用新案法3条の2本文の規定により、当該考案は何人も実用新案登録を受けることができなかったはずのものであることに変わりはないから、このような場合には、上記C′の要件に規定する場合と同様、これを登録実用新案の技術的範囲に属するとすることは相当ではない。したがって、対象製品が登録実用新案の先願に係る実用新案法3条の2本文に規定する明細書又は図面に記載された考案と同一である場合には、出願時における公知技術に準じ、対象製品が実用新案登録請求の範囲に記載された構成と均等なものとしてその登録実用新案の技術的範囲に属すると解することはできないというべきである。控訴人の上記主張もこの趣旨をいうものと解されるのであり、対象製品が登録実用新案の技術的範囲に含まれるか否かの場面における議論である均等論と無効理由の存在とは全く別個の問題であるとする被控訴人の主張は採用することができない。
(3) 本件において、先願明細書(乙1、原判決添付)は、本件実用新案権の登録出願日(昭和59年10月18日)前である同年7月6日の実用新案登録出願であって本件実用新案権の登録出願後である昭和61年2月6日に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書又は図面であると認められ、本件考案との関係で実用新案法3条の2本文に規定する明細書又は図面に該当するから、以下、イ号物件が先願明細書に記載された考案と同一であるかどうかについて判断する。
先願明細書は、果実摘果用脚立に関する考案に係るものであって、実用新案登録請求の範囲には「支柱の上部に把手となるサブハンドルを上方へ向けて着脱自在に添設したことを特徴とする果実摘果用脚立」と記載されているものであるが、その第1図には、中央部に中央杆が付設されている「上部踏板3」(イ号物件の「台枠」に相当する。)と、その上部踏板3の前杆に上端が取り付けられて下方に行くに従って側方に湾曲して拡がった形状を有する左右一対の「支柱1、1」(同「脚杆」に相当する。)と、上部踏板の後杆両端部近傍に上端が取り付けられて左右の脚杆に沿って設けられた補強杆と、前記支柱1、1と補強杆の間に間隔をおいて取り付けられた「ステップ2」(同「踏枠」に相当する。)とからなる梯子体と、前記上部踏板3の後杆に上端が取り付けられた「添支柱4」(同「支持杆」に相当する。)と、支柱1の上部に上方に向けて添設されたサブハンドル7とから構成された三脚脚立が図示されていることは明らかである。
そして、先願明細書考案の詳細な説明中の〈実施例〉欄には、第1図の図示に基づく脚立全体の構造の説明に続いて、「以上の各部分をすべてアルミ製のパイプにて形成し、その外周には長手方向に突条5を設けて、滑り止めとする」(2頁15行目〜17行目)との記載があり、ここでいうパイプの外周の長手方向に突条を設けた構成が、外周溝の構成に相当することも明らかである。また、同欄の「添支柱4は後方へ自由に傾いて、支柱1、1を後より支える」(2頁14行目〜15行目)との記載によれば、支持杆に相当する支柱1、1の上端を回動自在に取り付けられた構成が記載されているといえる。
イ 以上認定の先願明細書記載の考案の構成を、前記当事者間に争いのないイ号物件の構成と対比すると、両者は、@イ号物件には支持杆の上部に把手兼作業用足掛が設けられているのに対し、先願明細書にはその記載がないこと、A外周溝の構成が、イ号物件では、台枠の前杆及び中央杆、脚杆、補強杆、踏枠並びに支持杆について採用されているのに対し、先願明細書には「各部分」としか記載されていないこと、B先願明細書記載の三脚脚立はサブハンドルが添設されているのに対し、イ号物件にはこれがないこと、以上の3点において形式的には相違するが、その余の点は、補強杆の上端の取付位置に係る構成を含め、一致することが認められる(別表参照)。
ウ しかし、まず、上記@の把手兼作業用足掛の有無の点は、以下のとおり、実質的には相違点とはいえないというべきである。
すなわち、イ号物件及び先願明細書記載の考案と同様の三脚脚立に係る考案に関する実公昭37-14057号公報(乙2添付の参考資料1)及び実開昭52-17127号公報(同参考資料2)には、前者の「足掛け5」、後者の「小足場板3」として、上記「把手兼作業用足掛」に相当することが明らかな部材が、
支持杆に相当する部材の上部に設けられた構成が図示されている。しかも、前者の公報には、考案の詳細な説明中に「特に果樹園等において使用する際片足を足掛5に足を掛け片足を踏板に掛けて果実を採取すれば作用は安全であると共に足掛けに籠等を吊持せしめれば採取した果実は迅速に収納せられ・・・」(1頁右欄10行目〜13行目)との記載があり、当該足掛け5を突設することが実用新案登録請求の範囲にも規定されているが、後者の公報に関しては、当該「小足場板3」は、実用新案登録請求の範囲には記載がなく、単に図面上で図示されているにすぎない。
そうすると、この種の三脚脚立において、支持杆の上部に把手兼作業用足掛を設ける構成は、遅くとも昭和52年ころまでには、当業者において必要に応じて適宜採用することのできた周知慣用の手段にすぎなかったと認めるのが相当である。
以上によれば、先願明細書には把手兼作業用足掛に関する明示の記載はないにせよ、上記の技術常識にかんがみれば、上記@の点は、イ号物件と先願明細書記載の考案との実質的な相違点とはいえないというべきである。
エ 次に、上記Aの外周溝の構成について見るに、先願明細書の「以上の各部分をすべてアルミ製のパイプにて形成し、その外周には長手方向に突条5を設けて、滑り止めとする」との記載(上記ア参照)によれば、先願明細書には、三脚脚立の「各部分」に「滑り止めとする」ための外周溝の構成を採用することが記載されているにすぎないというべきである。なお、上記記載中には「すべて」との文言もあるが、そもそも先願明細書の実用新案登録請求の範囲には外周溝の構成が規定されておらず、実施例の説明中に上記の記載があるにすぎないのであるから、外周溝の構成自体が任意的な構成にとどまることは明らかである一方、外周溝の構成を採用すべき具体的な部材の特定について特段の記載もない。そうすると、外周溝の構成自体の採否だけでなく、滑り止めという機能を果たすためにどの部分に外周溝の構成を採用するかという点を含め、いずれも設計事項にすぎないと解されるものであって、上記Aの点も、イ号物件と先願明細書記載の考案との実質的な相違点とはいえないというべきである。
オ また、上記Bのサブハンドルの有無の点については、先願明細書考案の詳細な説明中の「〈従来技術の欠点〉果実園などでは、脚立を使って果実の摘果を行っているが、従来の脚立では上部の踏板には、何らの把手もないため、この上に立って作業すると、作業者はつかまるところがないため、不安定で作業がしにくい。特に婦人の場合は、こわくて思うように作業ができない。〈考案の目的と構成〉この考案は上記の欠点を解消して、上部の踏板上に立っても安心して摘果作業等の仕事ができるように改良した脚立で、つぎのように構成する。すなわち支柱の上部に把手となるサブハンドルを上方へ向けて着脱自在に添設してなる果実摘果用脚立である」(1頁12行目〜2頁5行目)との記載に照らせば、先願明細書において実用新案登録を受けようとする考案は、着脱自在に添設されたサブハンドルを備えるものであるが、他方で、このようなサブハンドルを備えない「従来の脚立」についても記載されていることは明らかである。そうすると、上記Bの点も、イ号物件と先願明細書記載の考案との実質的な相違点ということはできない。
カ 以上の認定判断によれば、イ号物件と先願明細書記載の考案とは、実質的に同一というべきである。
(4) そうすると、上記(2)の判示によれば、補強杆の取付位置に係る構成につき、イ号物件が本件考案の構成と均等なものとしてその技術的範囲に属すると解することはできないから、均等侵害も成立しない。
4 権利濫用の抗弁の成否 イ号物件について、本件考案の文言侵害及び均等侵害が成立しないことは上記のとおりであるが、以下のとおり、被控訴人の本件実用新案権に基づく請求は権利の濫用に当たり許されないというべきであるから、この点からも本訴請求は理由がない。
(1) 本件考案の前記争いのない構成要件(1(1)参照)と、先願明細書記載の考案の前記構成(3(3)ア参照)とを対比すれば、両者は、@補強杆の上端の取付位置について、本件考案では台枠の側杆とされているのに対し、先願明細書記載の考案では台枠の後杆であること、A外周溝の構成の適用箇所が、本件考案では台枠の中央杆及び左右一対の脚杆についてのみ明示されているのに対し、先願明細書記載の考案では、「各部分」とされていること、B本件考案は把手兼作業用足掛を備えるのに対し、先願明細書にはその記載がないこと、C先願明細書記載の三脚脚立はサブハンドルが添設されているのに対し、本件考案にはこれがないこと、以上の4点で形式的には相違するほか、他の構成はすべて一致する(別表参照)。
しかし、このうちA〜Cの点については、イ号物件と先願明細書記載の考案との同一性に関して前記3(3)ウ〜オで述べたところと同一の理由により、いずれも実質的な相違点といえないことは明らかである。
(2) そこで、上記@の相違点について見るに、本件考案に係る明細書(甲2、
原判決添付)の考案の詳細な説明の〔従来の技術及びその問題点〕欄には「従来三脚脚立は建築・果樹園その他の作業において用いられているが、作業中に握持して身体を支えたり、また足場とする等作業者が最も多く接触する脚杆や台枠は一般に平滑な外周面を有するパイプや棒状体等で構成されており、作業時に滑りやすく安全上問題があった」(1欄20行目〜末行)との記載が、〔問題点を解決するための手段〕欄には「本考案はこのような問題に対処してなされたもので、脚杆及び台枠の中央杆を外周溝付管で構成することにより、作業者が滑ることなく安全に使用しうる金属製三脚脚立を提供するものである」(2欄2行目〜5行目)との記載が、〔考案の効果〕欄には「以上のように本考案の三脚脚立によって作業中に滑ることがなく安全に作業がしうるようになったものである」(4欄3行目〜5行目)との記載がある。以上の記載によれば、本件考案は、作業者が滑ることなく安全に使用することのできる三脚脚立を提供することを目的とするものであって、この目的を達するための手段として、脚杆及び台枠の中央杆を外周溝付管で構成することとしたものであり、その余の構成については、補強杆の取付位置を含め、従来から慣用されている周知の三脚脚立を踏襲したものと認めるのが相当である。他方、先願明細書(乙1、原判決添付)の前記引用の記載(3(3)ア、オ参照)及び「〈考案の効果〉この考案は以上説明したように、脚立の支柱の上部にサブハンドルを着脱自在に添設するという極めて簡単な改良であるが、このサブハンドルを取付けることによって上部踏板上に立って摘果のような作業をする場合、作業者が安心して働けるという大きな効果を奏するものである」(4頁2行目〜9行目)との記載によれば、その実用新案登録請求の範囲に記載の考案は、周知慣用の三脚脚立に着脱自在なサブハンドルを添設するという改良を施したものと認められる。
そうすると、補強杆の取付位置に係る構成について上記のような相違点はあるにせよ、本件考案及び先願明細書記載の考案における当該相違点に係る構成は、従来から慣用されている周知の三脚脚立の構成として採用されているものにすぎないと解され、現に、実開昭52-17127号公報(乙2添付の参考資料2)の第1図には、本件考案と同様、補強杆に相当する部材の上端が台枠の側杆に相当する部材に取り付けられている構成が図示されているところである。したがって、
補強杆の上端の取付位置を、台枠の側杆とするか後杆とするかということは、本件考案に係る実用新案登録出願時(昭和59年10月18日)において、当業者が適宜選択することのできた設計事項にすぎないというべきであり、この点も実質的な相違点ということはできない。
(3) 以上の認定判断によれば、本件考案は、先願明細書記載の考案と実質的に同一であって、本件考案に係る実用新案登録が実用新案法3条の2本文の規定に該当し、本件考案に係る実用新案登録には、平成5年法律第26号による改正前の実用新案法37条1項1号に規定する無効理由が存在することが明らかであるから、
被控訴人の本件実用新案権に基づく請求は、権利の濫用に当たり許されないというべきである(最高裁平成12年4月11日第三小法廷判決・民集54巻4号1368頁参照)。
5 以上のとおりであるから、被控訴人の請求は、附帯控訴に係る部分を含め、
その余の点について判断するまでもなく、失当としてこれを棄却すべきである。
よって、以上の判断と結論を異にする原判決中控訴人敗訴部分を取り消し、
被控訴人の請求及び本件附帯控訴をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条2項前段、61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利