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関連審決 無効2003-35036
関連ワード 考案 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  きわめて容易 /  容易に想到 /  公知技術 /  転用 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 15年 (行ケ) 476号 審決取消請求事件
原告 アグリテクノ矢崎株式会社
訴訟代理人弁護士 松本司
同 緒方雅子
同 弁理士 矢野 壽一郎
被告 サン機工株式会社
訴訟代理人弁護士 高橋浩文
同 弁理士 加藤久
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/11/29
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が無効2003-35036号事件について平成15年9月30日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,名称を「施肥播種機の位置調節装置」とする実用新案登録第1957711号考案(昭和61年4月15日実用新案登録出願,平成4年6月12日出願公告,平成5年3月24日設定登録,以下「本件実用新案登録」という。)の実用新案権者である。
被告は,平成15年2月3日,本件実用新案登録の無効審判の請求をし,無効2003-35036号事件として,特許庁に係属したところ,原告は,平成15年8月13日に本件実用新案登録出願の願書に添付した明細書の訂正請求をした。特許庁は,同事件を審理した結果,同年9月30日,「訂正を認める。実用新案登録第1957711号の考案についての実用新案登録を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同年10月10日に原告に送達された。
2 平成15年8月13日付け訂正請求書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の第1項に記載した考案(以下「本件考案」という。)の要旨 取付ビーム8上において,施肥播種フレーム58を左右に摺動可能に構成し,施肥・播種位置を調整する構成において,取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に,該取付ビーム8に施肥播種フレーム58を締め付け固定する締め付けブラケット58aを,枢支軸58cにより回動可能に支持し,該締め付けブラケット58aの略中央部に,播種位置と一致させて,該目盛8aの読み取り孔を開口したことを特徴とする施肥播種機の位置調節装置。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件考案は,実願昭59-46195号(実開昭60-156902号)のマイクロフィルム(甲3,以下「第1引用例」という。)及び実願昭56-21299号(実開昭57-134604号)のマイクロフィルム(甲7-1,2,以下「第5引用例」という。)に記載の考案並びに周知慣用技術に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものであるから,実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものであり,その登録は無効にすべきものであるとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本件考案と第1引用例に記載された考案(以下「引用考案」という。)との相違点Cとして認定した,「本件考案は,取付ビーム8上面に目盛8aを表示すると共に,締め付けブラケット58aの略中央部に,播種位置と一致させて,該目盛8aの読み取り孔を開口した構成を具備するのに対し,引用考案は,該構成を具備しない点」(審決謄本6頁第4段落)について,「・・・取付ビームに付属の農用作業機を連結する際に,その取付位置が判別できるように取付ビームの周辺に目盛を付することは周知慣用技術(・・・,以下『周知慣用技術C』という。)」(同7頁第3段落)であるから,「引用考案に示される,取付ビーム8に施肥播種フレーム58の締め付けブラケット58aにより播種機を取り付ける構成において,取付ビーム8上に目盛8aを直接に表示することは,前記周知慣用技術(注,周知慣用技術C)に基づいて当業者が適宜に採用する単なる設計的事項のものと認められる」(同頁第4段落)とし,「播種機の取付位置が判別できるように前記周知慣用技術Cを適用して目盛を付する場合に,該締め付けブラケット58aが被測定点を特定する目盛を隠してしまうことがないように,前記第5引用例に示される被測定点に目盛の読み取り孔を開口する構成を採用して,相違点Cに係る本件考案の構成のようにすることは,当業者がきわめて容易に想到できることである」(同頁最終段落)と判断したが,誤りである。
2 取消事由(相違点Cに関する判断の誤り) (1) 取付ビーム8に目盛8aを「直接」に表示することについて 取付ビームの「周辺」に目盛を付すことは周知慣用技術であるが,本件考案のように,目盛8aを取付ビーム8上に「直接」表記することは,周知慣用技術でも公知技術でもない。すなわち,取付ビームとは,締付金具により播種機のフレームを左右に摺動可能に装着するものであるところ,取付ビームに目盛を「直接」表記すると,該表記は締付金具の左右摺動により削られて消えてしまうという問題があったため,取付ビームの「周辺」に目盛を表記する構成が採用されていたのである。この「周辺」に目盛を表記する構成とは,取付ビームとは別部材に目盛を表記する構成であり,例えば,周知慣用技術Cの一つである実願昭56-37056号(実開昭57-149702号)のマイクロフィルム(甲5,以下「第3引用例」という。)の第3,4図で示される「スライド目盛板(39)」や,同じく実願昭58-156300号(実開昭60-64002号)のマイクロフィルム(甲6,以下「第4引用例」という。)の第3図で示されているような「補強フレーム(5)の前面」が取付ビームとは別に必要となるのである。
これに対し,本件考案では,「上下の締め付けブラケット58a,58bにより取付ビーム8を抱持して,締め付けハンドル37の螺子により締結しているのである。故に締め付けハンドル37を回動して緩めることにより,施肥播種フレーム58は取付ビーム8の上を左右に調節摺動することが出来るのである」(本件実用新案公告公報〔甲2,以下「本件公報」という。〕6欄41行目〜7欄2行目)と説明されているように,枢支軸58cにより回動可能に支持した締め付けブラケット58a(締付金具)を採用することによって,該ブラケットにより取付ビーム8に表記した目盛8aが削り取られないようにしたのである。ただ,この構成では,目盛8aを締め付けブラケット58aが「覆って隠してしまい,該施肥播種フレームの中央の位置が確認出来ないという不具合い」(本件公報2欄9行目,10行目)があり,正確な播種位置が確認できない。そこで,本件考案では,「該締め付けブラケット58aの略中央部に,播種位置と一致させて,該目盛8aの読み取り孔を開口」する構成を採用している。
このように,本件考案は,従来の取付ビーム上に「直接」目盛を表記する構成では締付金具の左右摺動により目盛りが削られて消えてしまうという問題点を,「枢支軸58cにより回動可能に支持した締め付けブラケット58a」の構成を採用することにより解決したが,今度は目盛りを締め付けブラケット58aが覆って隠してしまい,正確な播種位置を確認できないという不具合が生じるため,これを,「目盛8aの読み取り孔を開口した」構成により,解決している。
周知慣用技術Cでは,施肥播種フレームの中央の位置が確認できないという問題は発生しないし,意識すらされないのであるから,本件考案の取付ビーム8上に目盛8aを直接に表示することが当業者が適宜に採用する単なる設計的事項であるということはできない。
(2) 目盛の読み取り孔を設けることについて 審決は,締め付けブラケット58aの略中央部に目盛8aの読み取り孔を開口した構成について,第5引用例に基づき,当該構成は当業者がきわめて容易に想到し得るものであると判断したが,第5引用例は,本件考案の農業機械器具とは異なる技術分野(巻き尺)の技術であるから,本件考案の容易想到性について判断するに当たり,第5引用例を引用例として採用したこと自体が誤りである。
被告の反論
1 審決の認定判断に誤りはない。
2 取消事由(相違点Cに関する判断の誤り)について (1) 審決が認定するとおり,「一方の構造部材に他方の構造部材を接続固定する場合に,該他方の構造部材の端部に設けた締め付け固定用の取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構成とすることは,特定の技術分野に限定されない周知慣用技術・・・『周知慣用技術B』」(審決謄本6頁下から第2段落)であるから,引用考案に,周知慣用技術に示される「取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構造」を採用して相違点Cに係る本件考案の構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得ることであり,その支持部材に直接目盛を施すことも,適宜に採用し得る設計的事項にすぎない。
原告は,従来の取付けビーム上に「直接」目盛を表記する構成では目盛が削られてしまうという問題点を,本件考案では,「取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構成」により解決したと主張するが,本件考案のように取付ビームに「直接」目盛を表記する構成による効果は,「簡単に正確な播種位置の確認ができる」,「部材の兼用ができる」(本件無効審判における平成15年8月13日付け原告の意見書〔乙8〕)という当業者が当然に予測し得る程度のものにすぎないから,「目盛が削られて消えてしまう」という原告指摘の問題の有無にかかわらず,「取付け手段を枢支軸により回動可能に支持した構造」とすることは当業者にとってきわめて容易に想到し得る事項であり,取付ビーム上に目盛を「直接」表記することも,単なる設計的事項にすぎない。
(2) 目盛の読み取り孔を設けることについて 原告は,第5引用例は,本件考案とは技術分野が異なると主張するが,進歩性の判断で問題とされる技術分野の親近性とは,ある技術分野に属する当業者が,当該分野における技術開発を行うに当たり,技術的観点からみて,その機能や用途等について類似し,又は共通する他の技術分野がある場合において,その他の技術分野に属する技術を転用することを容易に着想し得るか否かを判断するための概念であり,両技術の社会・経済的な用途ないし利用状況には必ずしも共通性を要するものではない。
本件考案と第5引用例は「目盛」という点で共通しており,しかも本件考案中の「目盛8a」の機能は,正に位置を正確に出すという目盛本来の機能を発現させたものにすぎず,第5引用例は本件考案進歩性の判断基準である技術分野の親近性を有するものであって,しかも本件考案の「動機づけとなるもの」を有し,実用新案法3条2項にいう「その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる考案に基いてきわめて容易考案をすることができた」ものにほかならない。
当裁判所の判断
1 取消事由(相違点Cに関する判断の誤り)について (1) 原告は,相違点Cに係る本件考案の「取付ビーム8上面に目盛8aを表示するとともに,締め付けブラケット58aの略中央部に,播種位置と一致させて,該目盛8aの読み取り孔を開口した」構成は,当業者がきわめて容易に想到し得たものではないと主張する。
(2) そこで検討すると,まず,審決が本件考案と引用考案の相違点Bとして認定した「本件考案は,締め付けブラケット58aを枢支軸58cにより回動可能に支持した構成であるのに対し,引用考案は,ロの字型の締着金具23(締め付けブラケット58a)を把手付きの締付ボルトにより装着可能とした構成である点」に関して,取付け手段として,締め付けブラケットを枢支軸により回動可能に支持した構成が周知技術(周知技術B)であることは,原告の争わないところである。また,「農業機械の技術分野において,トラクターや耕耘機等の後部に固設した取付ビームに付属の農業用作業機を連結する際に,その取付位置が判別できるように取付ビームの周辺に目盛を付すること」が周知慣用技術(周知慣用技術C)であることも,同様に争いがない。
そうすると,引用発明において,周知技術Bを採用して,本件考案と同様に「取付け手段として締め付けブラケットを枢支軸により回動可能に支持した構成」とし,かつ,周知慣用技術Cに基づいて,「取付位置が判別できるように取付ビームの周辺に目盛を付する」構成とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得ることというべきであり,その際,取付ビーム上に目盛を直接に表記することは,当業者が適宜に採用し得る設計的事項にすぎない。
この点につき,原告は,従来の締付金具により播種機のフレームを左右に摺動可能にする構成では,取付ビームに目盛を直接に表記すると,目盛が締付金具との摺接により削られて消えてしまうという問題があったため,目盛を取付ビームに直接に表記することができなかったことをるる主張する。しかし,周知技術Bを採用すれば,取付ビームが締付金具に摺接しないで移動し得るようになることは自明であるから,周知技術Bを採用すると同時に,取付ビームの周辺に目盛を付する周知慣用技術Cに代えて,取付ビーム上に目盛を直接に表示するようにすることは,当業者が適宜に設計し得る程度のことというべきである。
(3) 原告は,また,本件考案が「締め付けブラケット58aの略中央部に,播種位置と一致させて,該目盛8aの読み取り孔を開口した」構成を有する点について,審決が,当該構成を当業者がきわめて容易に想到し得ると判断するに当たり,技術分野の異なる第5引用例を引用例として採用したこと自体が誤りであると主張する。
しかしながら,本件考案の「目盛8a」の機能は,位置を正確に確認ないし読み取るという目盛本来の機能を発現させたものにすぎず,この点で第5引用例の「目盛」と何ら異なるものではない。そして,取付ビーム上に目盛を表記した場合,取付け手段としての締め付けブラケットが目盛を覆って隠してしまうという不都合があることは,当業者にとって当然予想されることであるから,この問題を解決するために,「目盛」に関連する技術を参照することは至極当然のことというべきであり,審決が「目盛」に関する技術である第5引用例を引用例として採用したことに誤りはない。
したがって,審決が,第5引用例に「測定部材に目盛の読み取り孔を開口し」て,目盛を隠さないようにした構成が記載されているから,引用発明に同構成を採用して,本件考案の「目盛の読み取り孔を開口した構成」とすることは,当業者がきわめて容易に想到し得ることであると判断した点に,誤りはなく,原告の取消事由の主張は理由がない。
2 以上のとおり,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 古城春実
裁判官 岡本岳
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