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関連審決 無効2005-80101
訂正2006-39087
関連ワード 均等 /  考案 /  考案の要旨認定 /  構造 /  補正 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  きわめて容易 /  削除 /  請求項 /  実施例 /  容易に想到 /  転用 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 19年 (行ケ) 10029号 審決取消請求事件
原告王子製紙株式会社
訴訟代理人弁護士富岡英次,辻居幸一,竹内麻子,高石秀樹,外村玲子 奥村直樹
同弁理士平山孝二
被告大王製紙株式会社
訴訟代理人弁理士永井義久,湯浅正之
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2008/02/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が無効2005-80101号事件について平成18年12月13日にした審決中,「実用新案登録第2511428号の請求項1,2,5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」との部分を取り消す。
第2当事者間に争いのない事実1特許庁における手続の経緯原告は,考案の名称を「使捨ておむつ」とする実用新案登録第2511428号(平成2年7月11日出願,平成8年7月9日設定登録。以下「本件実用新案登録」という。)の実用新案権者である。
被告は,平成17年3月31日,本件実用新案登録の請求項1,2,6及び9について無効審判請求をした。特許庁は,上記審判請求を無効2005-80101号事件として審理した結果,平成18年1月18日,平成17年6月21日付け訂正請求書による訂正を認めた上で,「実用新案登録第2511428号の請求項1,2,6及び9に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」との審決をした。
原告は,上記審決の取消訴訟を提起するとともに,訂正審判請求(訂正2006-39087号)をしたところ,知的財産高等裁判所は,平成18年6月29日,上記審決を取り消す決定をした。特許庁において,上記訂正審判請求書記載のとおりに訂正請求がされたものとみなされた上で,原告は,同年10月23日付け手続補正書により,訂正請求書を補正した。特許庁は,無効審判請求事件についてさらに審理し,平成18年12月13日,上記訂正を認めた(この結果,無効審判請求の対象であった従前の請求項6は削除され,従前の請求項9は「請求項5」となった。)上で,「実用新案登録第2511428号の請求項1,2,5に係る考案についての実用新案登録を無効とする。」との審決をし,平成18年12月25日に審決の謄本が原告に送達された(送達の日は,弁論の全趣旨により認定)。
2実用新案登録請求の範囲上記1のみなし訂正請求による訂正後の本件実用新案登録の請求項1,2及び5は,次のとおりである(以下,本件実用新案登録の請求項1,2及び5に係る考案をそれぞれ「本件考案1,2及び5」といい,全部を「本件考案」という。訂正後の明細書(甲第19号証)を「本件明細書」という。)。
請求項1】液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に,表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより,外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り,この連結体を少なくともエンドフラップに接触して,外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して,かつ弾性糸の一部が吸収層に重なるように,吸収体に固定し,この連結体を環状に連結し,前記帯部材の外側縁を折返した事を特徴とするパンツ型使捨ておむつ。
請求項2】連結体は,吸収体の防漏層に固定した事を特徴とする請求項1記載のパンツ型使捨ておむつ。
請求項5】複数の弾性糸は,平行に設けた事を特徴とする請求項1,2または3記載のパンツ型使捨ておむつ。
3審決の理由別紙審決書の写しのとおりである。要するに,本件考案は,特開平1-298202号公報(甲第1号証)記載の考案(以下「甲1考案」という。)及び周知の技術に基づいて,当業者がきわめて容易考案をすることができたものであるから,本件考案に係る本件実用新案登録は,実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり,平成5年法律第26号による改正前の実用新案法37条1項1号の規定に該当するから,無効とすべきであるとするものである。
審決は,上記結論を導くに当たり,甲1考案の内容並びに本件考案と甲1考案との一致点及び相違点を次のとおり認定した。
(1)甲1考案の内容透水性のトップシートと非透水性のバックシートとの間に,トップシート及びバックシートよりも小面積の液吸収性の吸収体を介装することにより,吸収体の外周上下左右方向にトップシートとバックシートからなり両シートが接着される部分で接合して形成したおむつ本体と,複数本の糸ゴムを平行かつ幅方向に分布させて装着ベルトの長さ方向に固定し,止着部12により連結される装着ベルトとから成り,この装着ベルトを吸収体の外周上下方向のトップシートとバックシートとを接着した部分である上端部,下端部に接触して,装着ベルト7の上縁の下方付近にトップシート3の上縁を位置させて,おむつ本体のバックシートに固定し,装着ベルトは装着時には環状に連結される使捨ておむつである簡易立体おむつ(2)一致点液透過性の表面層と液不透過性の防漏層との間に,表面層および防漏層よりも小面積の液吸収性の吸収層を介装することにより,外周にエンドフラップおよびサイドフラップを形成した吸収体と,複数本の弾性の糸を幅方向に渡って設けて帯部材の長さ方向に固定した連結体とから成り,この連結体を少なくともエンドフラップに接触して吸収体に固定した使捨ておむつである点(3)相違点ア本件考案が,連結体を環状に連結したパンツ型使捨ておむつであるのに対し,甲1考案は,使捨てのおむつであり,装着ベルトが装着時には環状に連結されるものではあるが,環状に連結されたパンツ型の使捨ておむつではない点(以下,審決と同様に「相違点1」という。)イ本件考案が帯部材の外側縁を折返し,連結体が5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定されるものであり,外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置し,弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定するものであるのに対して,甲1考案においては折返しの記載はなく,装着ベルトは,複数本の糸ゴムを用いるもののその本数及び設けられる幅は特定はされず,装着ベルト7の上縁の下方付近にトップシート3の上縁を位置させる図示があるものの,装着ベルト7の上縁をトップシート3の上縁の外側とする明記はなく,おむつ本体のボトムシートに固定するものの糸ゴムの一部が吸収層に重なるように固定することは記載されない点(以下,審決と同様に「相違点2」という。)第3審決取消事由の要点審決は,相違点1についての判断を誤り(取消事由1),相違点2についての判断も誤った(取消事由2ないし4)ものであるところ,これらの誤りがいずれも結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1取消事由1(相違点1の判断の誤り)本件考案のような「パンツ型おむつ」の「弾性体」には,甲1考案のような「非パンツ型おむつ」の「弾性体」にはない,以下のような多くの特性が要求される。
?@非パンツ型は,テープの止着位置によりウエスト周りや脚周りの寸法が調節可能であるが,パンツ型は,装着前から寸法が決まっているため,装着時に寸法は調整不可能であるから,パンツ型は弾性糸の伸縮性を強くする必要があり,連結体の外側縁による腹部への食い込みという,非パンツ型には生じない特有の問題点が生じる。
?Aパンツ型は,はかせる際に,先ず腰よりも大きな臀部を通過させる必要があるから,非パンツ型に比べて弾性体の伸縮率を大きくする必要があり,収縮力の集中防止という特有の課題が生じる。
?Bパンツ型は比較的成長して歩行可能な動きの激しい幼児が装着者として想定され,吸収体のズレが発生しやすく,歩行してもズリ落ちないように保持するために弾性体の収縮力を強くする必要があり,この強い収縮力を腰回りの弾性体のみで得ることは困難であり,吸収体に重なって広い面積にわたって収縮力を分散させた弾性体を採用する必要がある。
甲第1号証記載の「非パンツ型」の使い捨ておむつにおいては,そもそも収縮力の集中とフィット性の悪さという本件考案が解決しようとした問題点自体が存在しないものであるから,甲第1号証に接した当業者が連結体の外側端による腹部への食い込みを防止し,収縮力の集中及び装着時のフィット性の悪さという課題を解決するためのいかなる教示ないし示唆も受けることはない。審決が相違点1についてした「甲1考案の装着ベルトを事前に連結せずに非パンツ型の使捨ておむつとするか,事前に連結しパンツ型使捨ておむつとするかは,その使い捨ておむつの設計にあたり,設計者が周知の形式の範囲で適宜選択し得た事項」であるとの判断は誤りである。
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)(1)審決は,「弾性糸が吸収層に重なる構成」を「連結体が吸収層に重なる構成」と同一であると認定しているが,これは,本件考案の要旨認定を誤ったものである。
本件考案の「弾性糸(の一部)が吸収層に重なるように,吸収体に固定」する構成とは,弾性糸を有する連結体の弾性糸が吸収層に重なり,吸収体を固定することを規定したものであり,弾性糸のない連結体又は連結体の弾性糸のない部分が吸収層に重なるように吸収体に固定されることを規定したものではない。したがって,審決がした「弾性糸の存否にかかわらず,『連結体』と『吸収層』との配置接続関係として,フラップのみならず『吸収層』に重なる配置が通常に行われるものであれば,設計にあたり,単なる通常の配置を採用する行為以上のものとは認められない」との判断は,本件考案の誤った要旨認定に基づくものであることは明らかである。
(2)実願昭60-142117号(実開昭62-50616号)のマイクロフィルム(甲第4号証)の帯状取付部(2),特開昭58-87303号公報(甲第16号証)のウエストシール(40),タブ(42,44)には,弾性糸が存在しないから,審決が「連結体を吸収層に重なるように吸収体に固定することは,甲第4号証,甲第16号証にもみられるように,周知の一配置形態であると認められる」とし,「弾性糸の一部が吸収層に重なるように吸収体に固定した点は,当業者が適宜なしえた設計上の事項と認め(られる)」としたことは誤りである。
(3)甲1考案は非パンツ型おむつであり,パンツ型おむつのように弾性体の設計が重要視されることはなく,弾性糸と吸収体の配置関係につき事細かに考えることはあり得ないから,甲第4及び第16号証により認められる周知技術を適用して,本件考案の上記構成を想到することはできない。
(4)弾性糸の一部が吸収層を超えて環状部材連結部まで延在している構成を採用することによって,吸収体の左右端部から連結体の環状連結部までの間に存在する弾性糸の弾性により,重なる部分の吸収層を被装着者に押し当てることによって,吸収体のずれやずり落ちを防止し,おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型にあわせた装着が可能になるとともに非装着者の体の運動を妨げることなく,尿等の漏れを防止することができるという顕著な作用効果を奏するものであるのに対して,甲第4及び第16号証にはこのような効果について何ら記載されておらず,審決は上記の顕著な効果を看過している。
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)審決は,本件考案における「帯部材の外側縁を折返した」構成について「肌着のゴム,袖口のゴム等の圧迫が不快である場合に,それを折返すことにより,全圧力が増しても圧迫感を弱めることは,着用者において適宜試みられることが知られる事項である」と「周知技術」を認定した上で,パンツ型の使捨ておむつにおいて外側縁を折返すことはきわめて容易であり「折返しによる腹部への食い込みを防止することは,当業者が予測しえる以上の格別の効果とすることはできない」と判断している。しかし,審決の判断は,以下のとおり誤りである。
(1)本件考案は,帯部材の外側縁に固定された弾性糸が飛び出すこと,帯部材端部の「ほつれ」などの「破損」が生じること,帯部材切り口の装着者の身体への食い込みが生じること,という問題点を見い出し,解決しようと種々工夫した結果,一対の帯部材外側縁の両方又は一方を折返すという技術手段を採用したことにより問題点を解決したものである。審決は,何らの証拠も摘示せず,周知技術を認定し,おむつとは無関係の抽象的な例を挙げた上で,それを「縫製一般において従来から普通に行われていた事項」とする過度の一般化・抽象化を行っている。また,「肌着のゴム,袖口のゴム等」の折返しが「圧迫感を弱める」ことを目的として行われているということについても,何ら証拠が摘示されていない。
(2)「収縮力の集中とフィット性の悪さ」は,非パンツ型にはない独自の課題であるから,甲第1号証の非パンツ型おむつに関する記載を参照した当業者が「連結体の外側縁による腹部への食い込みを防止」し,「収縮力」の「集中」及び「装着時のフィット性」の悪さという課題を解決するために,「帯部材の外側縁を折返した」構成を採用するための教示ないし示唆を受けることはない。
審決が認定した破損防止のための折返しの技術は,いずれも使捨ておむつとは全く異なる,被服(布製品)についての技術であり,本件考案に係るおむつとはその課題も技術原理も大きく異なる。したがって,審決は,甲1考案と周知技術の組み合わせの困難性を看過したものである。
審決が食い込み防止のための技術として例示した「肌着のゴム」「袖口のゴム」等の折返しは,必ずしも着用者によって圧迫感を弱めることを意図して行われるものではないから,当業者が圧迫感を弱めることを防止するために折返しの技術を採用することの契機となるものではない。また,これらの折返しは,何らかの理由から被服の着用によって一時的に採用される形態にすぎないものであって,本件考案にかかる「帯部材の外端縁を折返した」構成のように折返しが永続的に固定されている構成とは全く異なる。
4取消事由4(相違点2の判断の誤り3)審決は,相違点2に係る構成である「5本以上の弾性糸」及び「50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定」を個別に取り上げ,それぞれについて,「当業者であれば通常その選択に含める数値」,「50mm以上とすることを格別の幅と認めることはできない。」と判断している。
しかし,本件考案の構成は,連結体が「折り返してもなお,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って設けたもの」であり,弾性糸の本数及び配置幅を最小限の観点から規定することにより,従来の技術よりも効率よく「おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく,尿等の漏れを防止できる」という特有の効果を奏することができるものである。審決は,本件考案が弾性糸の本数とその配置幅の両者の数値の最小値を併せて規定したことを無視するものであって,明らかに誤りである。
第4被告の反論の骨子審決の認定判断はいずれも正当であって,審決を取り消すべき理由はない。
1取消事由1(相違点1の判断の誤り)について甲1号証に明示の記載はないものの,甲1考案には,二つの止着部12より更に広幅の装着ベルトによる弾性力を利用して,着用者に収縮力の集中を抑制し,着用者にフィットさせる思想が明らかにされているから,広幅の弾性糸部材により着用者へのフィット性を高める技術的思想は,本件の出願前において周知である。
実願昭62-153082号(実開平1-58610号)のマイクロフィルム(甲第15号証)には,広幅の弾性糸部材により着用者へのフィット性を高める技術的思想及び解決手段が記載されており,甲1考案又は甲第15号証記載の考案がパンツ型使捨ておむつについてのものではないとしても,パンツ型使捨ておむつにも,当然に適用することができる技術思想であるから,パンツ型使捨ておむつにおいて広幅の弾性糸部材を使用して着用者へのフィット性を高める程度のことは何らの工夫を要するものではないし,周知技術の単なる転用にすぎない。
訂正前の本件実用新案登録請求の範囲には,パンツ型おむつ以外のものも含まれていたのであり,本件明細書中の「従来の技術」や「考案が解決しようとする課題」の記載は,非パンツ(テープ)型おむつを含んだ「使捨ておむつ」に関する一般的な記載内容であるから,原告が主張する「パンツ型の使捨ておむつ」のみについて適用されるものではないし,パンツ型特有の技術内容ではない。
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)について(1)本件明細書における「弾性糸が吸収層に重なる構成」に係る第4図及び第5図の実施例とともに記載された事項は,弾性糸によるフィット性や伸縮性の向上に繋がるものとして記載されておらず,特有のものではない。審決は,「弾性糸の存否にかかわらず,『連結体』と『吸収層』との配置接続関係として,フラップのみならず『吸収層』に重なる配置が通常に行われるものであれば,設計にあたり,単なる通常の配置を採用する行為以上のものとは認められない」と判断しているのであって,原告主張のように,「弾性糸が吸収層に重なる構成」を「連結体が吸収層になる構成」と同一であるとは認定していないから,審決に要旨認定の誤りはない。
(2)原告は,甲第4及び第16号証に,弾性糸が存在しないと主張するが,弾性部材が吸収層に「重なった部分」にあれば,吸収層を着用者の肌に対してフィットさせるように機能することは明らかであるから,甲第4及び第16号証における弾性糸の存否は,「弾性糸が吸収層に重なる構成」が設計事項であることを覆す程度のものではない。また,弾性部材が吸収層に重なる構成は甲第15号証にも記載があり,その第3図には,明らかに弾性部材が吸収層に重なる構成が開示され,かつ,「着用者への圧迫という点からいえばこの伸縮性部材はこのましくは巾広く,弾性力の弱い弾性体を構成することが大切である」と記載されているから,幅広の弾性部材を使用し,その弾性部材の一部を吸収層に重ねる構成はおむつの分野において周知の技術事項である。
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)について(1)特開昭62-162001号公報(甲第9号証)及び特開昭57-77304号公報(甲第10号証)には,外カバー及び外被シーツの端部を折り返すという構造自体が開示されており,審決が指摘するように,「端部を折り返すという構造を採用する目的や当該構造の採用により解決することのできる」課題は,根拠を示すまでもなく,当業者であれば極めて自明なものである。
(2)本件実用新案登録請求の範囲においては,「帯部材の外側縁が折返されている」と規定されているにすぎず,帯部材に対して弾性糸がどこにあるかは規定されていない。折返しの態様も,「外側を破損のない強固なものとする」ための形態と「腹部への食い込みを防止」のための形態との両者を包含する。したがって,「帯部材の外側縁を折返した」構成は,「腹部への食い込みを防止」ではなく,単に「外側を破損のない強固なものとする」だけの効果を有するものも包含するのである。
(3)パンツ型,非パンツ型おむつ及び衣服は,いずれも着用者が装着するものであり,その装着に際し,「外側を破損のない強固なものとする」共通の課題を有するものであることは明らかであり,審決の判断は当を得たものである。
4取消事由4(相違点2の判断の誤り3)について「5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って」という数値の特定の効果について,本件明細書には各数値に関する特段の記載はなく,その数値自体には,臨界的意義は認められない。
甲第15号証や特開昭60-173101号公報(甲第17号証)のように,ウエスト部における弾性部材は幅広のものが望ましいことは周知技術であったから,本件考案において「50mm以上の幅」とすることになんらの工夫も要しない設計事項である。
第5当裁判所の判断1取消事由1(相違点1の判断の誤り)について(1)本件実用新案登録出願時の技術水準についてア特開昭62-231005号公報(甲第2号証)には,次の記載がある。
「パンツ本体1は,透水性トップシート2と,同大の不透水性バックシート3と,該両シートよりも小さい吸収性コア4とからなる。また,パンツ本体は,ウエストバンドにギャザーを作る伸縮部材5と,レッグホールにギャザーを作る伸縮部材6a,6b,6cとを有する。トップシート2には不織布,バックシート3にはプラスチックフィルムまたは該フイルムと不織布とのラミネートシート,コア4にはフラッフパルプまたは該パルプと高吸収性ポリマー粒子との混合物のマット状体とその上下面に配置する透水性シートなどが使用される。伸縮部材5には比較的広幅・・・のウレタンホームなど,伸縮部材6a,6bには糸状ゴムなど,伸縮部材6cには熱処理で伸縮性を発現する比較的広幅・・・のプラスチックフィルムなどが使用される。・・・パンツ本体1の前後領域(前身頃)7と背側領域(後身頃)8におけるトップシート2とバックシート3の縦方向対向端間,すなわち,ウエストバンド10中には,伸縮部材5a,5bが介在し接着されている。パンツ本体1の股下領域9におけるトップシート2とバックシート3の横方向対向側には,レッグホール11を形成するため,パンツ本体1を二分する横方向中心線Xよりも,前側領域8の側へ偏位する半楕円状の凹欠部12が設けられている。・・・前側領域7と背側領域8とにおけるトップシート2とバックシート3の横方向対向側縁であって該各領域における縦方向対向端間には,V状の凹欠部13が設けられている。凹欠部13は曲線で形成されていてもよい。・・・このようにして形成されたパンツは,横方向中心線を介してバックシート3が外側に位置するように縦方向に折り返され,前側領域7と背側領域8の横方向対向側縁15が好ましくは熱溶着で接合され,これにより,第1図に示すように,組み立てられる。」(3頁左上欄1行〜右下欄7行)イ特開昭57-77304号公報(甲第10号証)には,次の記載がある。
「第1図に,・・・使い捨ておしめ用のブリーフ1を示す。ブリーフ1の外被シーツ2の内側には長方形の当て布3が裏打ちされている。外被シーツ2はベルト部即ちウエスト部からふとももを通す開口部へ延びる2側縁部でブリーフ1の結合部4が出来るよう縫い合わされる。ブリーフ1のベルト部分のふちにはゴム5が縫い込まれている。」(5頁右上欄14行〜左下欄2行)「このブリーフ1を使用する場合,ブリーフ1の開口部に両足を夫々挿入して腰まで引き上げ,使用後ブリーフ1を捨てたい場合にはブリーフの側縁部に沿って外被シーツを引き裂くことにより容易に除去できる。」(5頁左下欄7行〜11行)「第2図の下部に示す上述の如きブリーフ材は中央の長手軸線X-Xに沿って折りたたまれる。この折りたたんだ状態を第3図の左側部に示す。・・・第3図の右側に示す最終製造工程では,加熱結合作業並びに切断作業により対称線10に沿って折り重ねたブリーフ材料が分断される。この最終作業でブリーフ1が個々に切離され,又ブリーフ1の側縁部はベルト部分から開口部12へ延びる各結合部4により閉鎖される。第3図に示すように切り離されたブリーフ1の各結合部4は対称線10の位置においてその両側に形成される。」(6頁右下欄1行〜7頁左上欄2行)ウ上記ア及びイの記載によれば,本件実用新案登録の出願日前において,長方形のシート状材料によりパンツ型使い捨ておむつを形成する場合に,シート状材料の長手方向を折り返して,一方を前身頃,他方を後身頃とし,その横方向端部同士を接合するようにすることは,周知のことであると認められる。
(2)甲1考案についてア甲第1号証には,次の記載がある。
「非透水性のバックシートと疎水性且つ透水性のトップシートの間にマット状態のパルプ等を主体とした吸収体を挟み込んでその主要部分を形成するおむつに於いて,トップシートは吸収体より幅の広いシートを使用し吸収体を被覆する部分の左右をシートの表面を内側にし且つその折込幅が上端で小さく下端で大きくなるようシートの側縁部に対し傾斜した直線の第1折目線で内方へに折込み更に折込部分を第2折目線より第1の折目の方向へ指返して第1折曲片および第2折曲片を形成し,両折曲片の相接した襞の第2折目線の近辺に第2折目線に平行に伸長状態のまま接着剤を塗布した糸ゴムを貼付けて形成し,バックシートはトップシートの輪郭とほぼ等しい台形状に形成し,トップシートとバックシートを少なくとも吸収体のその両縁の近傍に於いて接着剤を以て接合することにより吸収体を固定するとともに第1折目線の両側及びシートの両辺部等に於いて接合しておむつ本体を形成し,おむつ本体の幅より長い弾性体ベルトを弾性体の伸長状態でおむつ本体の上端部および下端部に固定して装着ベルトとした簡易立体おむつ。」(特許請求の範囲)「本発明は,トップシートおよびボトムシートを四角形状に近い形状とし,シートの両側部に二段折込みにより第1折曲片と第2折曲片を形成し,両折曲片の間に伸長状態のまま接着剤を塗布して糸ゴムを貼付けておむつ本体を形成し,該おむつ本体の幅より長い弾性ベルトを弾性体の伸長状態でおむつ本体の上端部および下端部に固定して装着ベルトとした簡易立体おむつを提供する。」(2頁左上欄11行〜18行)「第1図を参照して,合成繊維等疎水性の材料で形成した不織布等の長方形不透水性シート3′の両側の部分Xを折込み線aで内側へ折込み(第1図口参照),更にその折った部分Yを折込み線bで外側へ折返す(第1図ハ参照)。かくして第1折曲片4および第2折曲片5を形成せしめる。両折曲片4,5によりできた襞の間に折込線bに近くかつ平行に,伸長状態の糸ゴム8に接着剤を塗布して挟み込んで(第1図ニ参照)おむつのトップシート3とする。第2図を参照して,トップ-シート3の輪郭とほぼ同形の台形をなすポリエチレンフィルム等の水分不透過性のシートをもってボトムシート1を形成し,その中央に人体より排泄される尿等を吸収保持できる吸収体2をトップシート3の折込線aの幅よりやや狭く形成して搭載し,その上にトップシート3を重ねる。トップシート3とボトムシート1を吸収体の両側縁部に於いてホットメルト等の接着剤H により接着させ 1ることにより吸収体2の位置を固定し,更に第1折目線の両側H ,H ,シート 23の両辺部H に於いても接着させることによりおむつ本体10を形成する。おむつ 4本体10の上側および下側にポリウレタンバンド等の弾性バンドを伸長状態でホットメルト等接着剤を塗布ののち固定し装着ベルト7とする(第2図参照)。なお,装着ベルト7にはホットメルト等を利用した止着部12を形成することは公知である。第2図に於いてはウレタンシートを用いであるがこの場合第3図に示すごとく一本の弾性テープ9を長手方向に千鳥状に切り分は二分割しておむつ本体10の上下端に固定してあり,装着に際し臍を圧迫しない形状構造とした。第4図に於いては,ウレタンシートの代りに数本の糸ゴム7aを伸長状態でホットメルトを塗布ののちポリエチレン等の支持テープ7bに塗り合わせて形成した弾性ベルトを使用した例を示す。」(2頁右上欄2行〜左下欄19行)イ上記アの記載によれば,甲第1号証記載の「使い捨ておむつ」は,おむつ本体の長手方向を折り返して,一方を前身頃,他方を後身頃とし,おむつ本体の長手方向端部に貼着された装着ベルト7同士をテープにより連結することにより装着される(非パンツ型)使い捨ておむつであると認められる。
(3)甲第2及び第10号証記載の「パンツ型」使い捨て紙おむつと甲第1号証記載の「非パンツ型」使い捨て紙おむつとは,「パンツ型」が予め前後を連結した形としているのに対し,「非パンツ型」が前後を着用時にテープ等で連結するように構成しているものである点において相違する。「非パンツ型」の使い捨て紙おむつのおむつ本体の長手方向を折り返して,一方を前身頃,他方を後身頃とし,予め前身頃と後身頃の横方向端部を連結することで,パンツ型とすることができることは,前記(1)のとおり,「パンツ型」使い捨て紙おむつが,周知であることに照らせば,当業者にとって明らかである。
したがって,甲1考案の「非パンツ型」の使い捨て紙おむつの前後を予め連結して「パンツ型」とすることは,当業者が適宜行い得る程度のことである。
(4)原告は,甲第1号証記載の「非パンツ型」の使い捨ておむつにおいては,収縮力の集中とフィット性の悪さという本件考案が解決しようとした問題点自体が存在しないから,甲1考案の非パンツ型(テープ型)紙おむつに関する記載を読んだ当業者が,連結体の外側端による腹部への食い込みを防止し,収縮力の集中及び装着時のフィット性の悪さという課題を解決するためのいかなる教示ないし示唆も受けることはないと主張する。
しかしながら,審決が相違点1とした点は,本件考案がパンツ型使い捨ておむつであるのに対し,甲1考案がパンツ型使い捨ておむつではない点であるから,相違点1の判断に当たって検討すべきであるのは,甲1考案の「非パンツ型の紙おむつ」をパンツ型の紙おむつの構成にすることの想到容易性であって,甲1考案に,その他の構成を有するようにすることの想到容易性ではないから,原告の主張は本件考案の相違点1以外の構成を問題とするものであってそれ自体失当である。
念のため原告の上記主張について検討するに,パンツ型と異なり,非パンツ型おむつが装着時にサイズを調節可能であるとしても,甲第1号証によれば,甲1考案の装着ベルト7は,ポリウレタンバンドや,ポリエチレン等の支持テープに数本の糸ゴムを均等に貼り付けたものを用いていることが認められ,これによれば,甲1考案においても,装着ベルトが着用者の腹部に直接接するものであることを考慮し,収縮力の集中の緩和とフィット感の向上を図るものであるということができる。また,パンツ型のおむつ特有の特性として原告が挙げる前記第3の1?@ないし?Bは,いずれも技術常識からみて当業者に自明の課題にすぎないから,甲1考案をパンツ型として構成するに当たり,それらの点を考慮して,特性を定めることは,当業者が適宜なし得る程度のことである。
(5)以上のとおり,審決がした相違点1についての判断に,原告の主張する誤りはなく,取消事由1に理由はない。
2取消事由2(相違点2の判断の誤り1)について(1)実願昭60-142117号(実開昭62-50616号)のマイクロフィルム(甲第4号証)には,次の記載がある。
「おむつ主体部と,おむつ主体部を取付けて支持する帯状取付部を別体として上下二パート構成とし,帯状取付部を腰部に装着し,おむつ主体部をU字状としてその一端を帯状取付部の腰部背面接着部に,他端を前面装着部に取付け取外し自在に取付けておむつ主体部を股間部に装着する様にしたことを特徴とする紙おむつ」(実用新案登録請求の範囲)「図に於て(3)は帯状取付部を腰部に巻回して他側部に接着して環状として腰部に装着せしる両面テープ,(4)(4),(5)(5)はおむつ主体部を帯状取付部に取付け取り外し自在に取付ける両面テープを示すものである。」(3頁6行〜10行)第2図には,帯状取付部2がおむつ主体部1の吸収体に重ねて固定される配置が示されている。
(2)特開昭58-87303号公報(甲第16号証)には,次の記載がある。
「本発明の実施に於て,支持シートと,支持シート上の吸収パッドと,吸収体の上に位置する上方シートを有するほぼ砂時計型のおむつが形成される。相対する側方伸縮部材を支持シートに固定して所望のまた密閉を形成しうる。ウエストシールを形成する伸縮部材が備えられ,伸縮部材の延長部が伸縮性タブを形成して,おむつを幼児に固定する。・・・おむつ10はまた領域12と四つの幅の大きい輪郭形成耳14,16等を形成する砂時計型をなしている。おむつは液密性ポリエチレンその他の支持シート22を含む。好ましくは非織ポリエチレン又はポリプロピレン繊維の上方シート24がおむつ10の周縁に沿つて,好ましくは接着剤,或いは熱容融又は感圧で支持シート22に固定される。吸収パッド26が上方シート24と支持シート22の間に設けられ,それは木毛その他である。・・・伸縮部材40は線状又は点状の接着剤又は他の適当な手段により支持シート22に結合される。第1図から第3図に示す如く,伸縮部材40は支持シートの外側に結合されてもよい。或いは,又好ましくは第4図に示す如く,伸縮部材40は支持シートの内側に結合される。」(2頁右上欄1行〜左下欄11行)「おむつを幼児に固定するのに,タブ42と44が用いられる。これらのタブは第1図と第2図に示した実施例では,ウエスト伸縮部材40の一体延長部であり,・・・おむつを幼児に設置するのに,ウエストを所望の好適な引張りに引伸しタブ42と44をおむつの他の対の耳に固定しうる。」(2頁左下欄15行〜右下欄3行)FIG.1には,伸縮部材(ウエストシール)40が吸収パッドに重ねて固定される配置が示されている。
(3)上記(1)及び(2)の各記載からすれば,紙おむつの「連結体」と「吸収体」とを重ねて配置することは,本件実用新案登録の出願日前において周知の配置であると認められるから,上記周知技術に照らせば,甲1考案の「装着ベルト7」と「吸収体2」とを重ねて配置するようにすることは,当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことというべきである。そして,そのように構成した場合には,甲1考案の「装着ベルト7」の「糸ゴム7b」の一部が「吸収体2」に重ねて配置されるようになることは明らかである。そうすると,甲1考案に甲第4及び第16号証記載の周知の配置構成を適用することにより,「糸ゴム7b」を「吸収体2」に重ねて配置するように構成することは,当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。
(4)原告は,「弾性糸が吸収層に重なる構成」と「連結体が吸収層に重なる構成」は,同一の構成ではないにもかかわらず,審決は,両者が同一であると誤って認定したものであり,それを前提とする審決の判断は誤りであると主張する。
ア本件明細書(甲第19号証)には,次の事項が記載されている。
「また連結体を,吸収体の防漏層に固定すれば,吸収体の表面を被覆する事なく連結体を吸収体に固定できるので,おむつの吸収能力を妨げる事がない。
また連結体を,吸収体の表面層に固定すれば,吸収体の表面を被覆し,多少の吸収能力の低下はあるものの,エンドフラップへの尿のしみ上がりを連結体で防止でき,漏れ防止を可能とする。
また連結体を,エ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば,接着剤の使用量を少なくしながら,連結効果を高め,経済的で確実な固定が可能になるとともに連結体の伸縮性を妨げる吸収層部分への接着面積を小さくして,連結体の伸縮性を向上できる。
また連結体を,ロ字型の接着層を介して吸収体の防漏層または表面層に固定すれば,多少伸縮性を低するものの,さらに確実な固定が可能となる。
また連結体を,外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも外方に位置して吸収体に固定すれば,連結体の伸縮性を吸収体に妨げられる事が少なく,フィット性が向上し,さらに良好な装着が可能となる。
また連結体を,外方の長辺をエンドフラップの外端縁よりも内方もしくは面一に位置して吸収体に固定すれば,連結体と吸収体との固定が大きな固定面積で可能となり,丈夫なおむつの成形が可能となる。
また連結体の弾性糸の伸長率を,幅方向の中程を外側よりも小さく形成すれば,被装着者の腹部に当たる部分の弾性糸の弾性力を軽減して,腹部を無理に圧迫するような事がなく,連結体を被装着者の腹部に柔軟に係止する事が可能となる。
また複数の弾性糸を,平行に設ければ,連結体への弾性糸の固定方法が容易となり,おむつの容易な製造可能となる。
また複数の弾性糸を,互いに交差して連結体に固定する事により形成すれば,連結体は長さ方向の伸縮性ばかりではなく,幅方向の伸縮性も備わるものであるから,被装着者の動きに対応できる立体的なフィット性を得る事が可能となるものである。」(3頁16行〜4頁13行)「また,上記実施例では連結体(11)を,吸収体(1)の防漏層(3)に固定しているが,他の異なる実施例に於ては,第2図に示す如く吸収体(1)の表面層(2)に固定している。このように固定する事により,吸収体(1)の表面を被覆し,多少の吸収能力の低下はあるものの,背側および腹側エンドフラップ(6)(7)への尿のしみ上がりを連結体(11)で防止でき,漏れ防止を可能とする。
また上記実施例では連結体(11)を,外方の長辺が腹側および背側のエンドフラップ(6)(7)の外端縁(15)(16)よりも,内方もしくは面一に位置するように吸収体(1)に固定した。しかしながら他の異なる実施例に於ては,連結体(11)を第4図に示す如く,連結体(11)外方の長辺を腹側エンドフラップ(6),背側エンドフラップ(7)の外端縁(15)(16)よりも外方に位置して吸収体(1)に固定している。このように固定すれば,連結体(11)の伸縮性を吸収体(1)に妨げられる事が少なく,フィット性が向上し,さらに良好な装着が可能となる。
またさらに,連結体(11)の吸収体(1)への固定方法を,第6図に示す如く,吸収体(1)の表面層(2)部分を残して接着層(9)をコ字型に形成すれば,第7図に示す如く,連結体(11)と表面層(2)との間に,ポケット状の間隙部(22)を形成する事ができ,吸収層(4)の吸収能力を低下する事がないとともに間隙部(22)に尿等が侵入した場合にも,連結体(11)で被覆しているから,被装着者に不快感を与える事がない。また腹側,背側のエンドフラップ(6)(7)への尿のしみ上がりを防止し,尿等の漏れ防止を可能とする。
また連結体(11)の弾性糸(18)の伸長率を,外側よりも幅方向の中程を小さく形成すれば,被装着者の腹部に当たる部分の弾性糸(18)の弾性力を軽減して,腹部を無理に圧迫するような事がなく,連結体(11)を被装着者の腹部に柔軟に係止する事が可能となる。また上記実施例では連結体(11)の弾性糸(18)の伸長率を,外側よりも幅方向の中程を小さく形成したが,他の異なる実施例に於ては,第10図に示す如く,幅方向の外側の弾性糸(18)の固定間隔を小さく形成する事により,幅方向の中程の弾性力を小さくしても良い。また,連結体(11)の幅方向の外側の弾性糸(18)を第11図に示す如く,幅広状に形成しても,幅方向の中程の弾性力を小さくし,腹部への柔軟な係止を可能とする。
また上記実施例に於ては,連結体(11)の全幅に,平行に位置する弾性糸(18)を固定したが,他の異なる実施例に於ては,腹側連結体(12)や背側連結体(14)の弾性糸(18)を,第5図に示す如く,4mm間隔で平行に34本形成し,帯部材(17)の長さ方向に幅140mmで固定すれば,背側連結体(14)の延長部(13)に弾性糸(18)を固定しないから,被装着者の股部を強く締め付けるような事がなく,少ない本数の弾性糸(18)によって,廉価に尿等の漏れ防止効果を得る事ができ,おむつ(21)の良好な装着を可能とする。
また連結体(11)の延長部(13)を,ロ字型の接着層(9)を介して吸収体(13)の防漏層(3)または表面層(2)に固定すれば,延長部(13)には弾性糸(18)を固定していないので,接着面積が多少大きくなっても,連結体(11)の伸縮性を妨げる事がなく,吸収体(1)と連結体(11)の確実な固定が可能となる。
また上記実施例では,複数の弾性糸(18)を平行に設けているが,他の異なる実施例に於ては,第12図に示す如く,複数の弾性糸(18)を互いに交差して連結体(11)に固定する事により形成すれば,連結体(11)は長さ方向の伸縮性ばかりではなく,幅方向の伸縮性も備わるものであるから,被装着者の動きに対応できる立体的なフィット性を得る事が可能となるものである。」(5頁24行〜7頁13行)上記の記載によれば,本件明細書においては,「連結体を吸収層に重なるように配置すること」に関して記載されているのみであり,「弾性糸が吸収層に重なる構成」に関しては,特段その技術的意義が記載されているものではないから,本件考案における「弾性糸が吸収層に重なる構成」により,弾性糸を備える連結体が吸収層に重なるように配置することを超える新たな機能,作用が奏されるものとは認められない。したがって,弾性糸が吸収層に重なる構成により,特有の効果を奏するものとは認められない。
イ審決の判断は,甲1考案の「装着ベルト7」と「吸収体2」とを重ねて配置するようにすれば,弾性糸が吸収層に重なる構成となることを前提にしたものであり,甲第4及び第16号証によって甲1考案の「装着ベルト7」を「吸収体」と重ねて配置することが周知の配置形態の一つであると認定した上で,このような構成は当業者が適宜することができた事項であると判断したものである。したがって,審決に,本件考案の要旨認定を誤ったところはない。
(5)上記(3)のとおり,甲1考案の装着ベルト7を吸収体と重なるように配置することで,弾性糸の一部が吸収層に重なる構成となるのであるから,甲第4及び第16号証に弾性糸が開示されているか否かは,上記の判断に影響を与えるものではない。
なお,甲第16号証においては,伸縮部材40が吸収パッドに重ねて固定される配置が示されているのであるから,甲第16号証に弾性糸が記載されていないとしても,弾性力を有する伸縮部材が吸収層に重ねて配置される構成である点で本件考案の上記構成と共通するものである。
(6)原告は,甲1考案は非パンツ型おむつであり,パンツ型おむつのように弾性体の設計が重要視されることはなく,弾性糸と吸収体の配置関係につき事細かに考えることはあり得ないから,甲第4及び第16号証により認められる周知技術を適用して,本件考案の上記構成を想到することはできないと主張する。
しかし,甲第4及び第16号証記載の考案は,いずれも非パンツ型おむつについてのものであり,甲1考案も非パンツ型おむつであるから,甲第4及び第16号証記載の周知技術を甲1考案に適用するにつき,非パンツ型とパンツ型おむつの相違が適用を妨げる要因となるものではない。
(7)原告は,本件考案において,弾性糸の一部が吸収層を超えて環状部材連結部まで延在している構成を採用することによって,吸収体のずれやずり落ちを防止し,おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型にあわせた装着が可能となるとともに非装着者の体の運動を妨げることなく,尿等の漏れを防止することができるという顕著な作用効果を奏するのに対して,甲第4及び第16号証にはこのような効果について何ら記載されていないと主張する。
しかし,本件実用新案登録請求の範囲において,「弾性糸の一部が吸収層を超えて環状部材連結部まで延在している」ことは,何ら規定されていない。
また,前記(4)のとおり,本件明細書にも「弾性糸の一部が吸収層を超えて環状連結部まで延在していること」の技術的意義や弾性糸が吸収層に重なるように配置される構成についての技術的意義は,何ら記載されていないから,上記主張も採用することができない。
(8)以上のとおり,審決がした相違点2についての判断に,原告が取消事由2として主張する誤りはない。
3取消事由3(相違点2の判断の誤り2)について(1)原告は,審決が証拠によらずに,切断端部を折り返して折り目を端部とする周知技術を認定したものであると主張する。
ズボンの裾や手提げ袋の上縁において切断した端縁を折り返した折り線を製品の縁とし,切断した端縁自体が縁にならないようにしたものは,日常的に目にするところであり,布等の切断端部がほつれやすいため,ほつれが生じないように切断端部を折り返した折り目を端部とすることは,一般的常識として,広く国民の間に知られているところである。このように,広く国民の間に一般的常識と認められる程に浸透した技術的事項を周知技術として認定する場合においては,明示的な文献等の証拠を提示せずに認定したとしても,これによって不測の不利益を与えるものとはいえない。したがって,審決が証拠を挙示することなく,切断端部を折り返した折り目を端部とし,ほつれが生じないようにする技術が縫製一般において従来から普通に行われていた事項であると認定したことに誤りはない。
甲第1号証の第4図(b)によれば,甲1考案の装着ベルト7は,ポリエチレン等の支持テープ7bにより糸ゴム7aが挟まれて構成されているものであることが見て取れるし,「第4図に於いては,ウレタンシートの代りに数本の糸ゴム7aを伸長状態でホットメルトを塗布ののちポリエチレン等の支持テープ7bに塗り合わせて形成した弾性ベルトを使用した例を示す。」(2頁左下欄16行〜19行)との記載があるから,甲1考案の装着ベルト7の端部がほつれやすい構造であることは容易に看取することができる。
上記のとおり,課題の認識が容易であり,これに対する解決方法も周知であるから,当業者であれば,上記の周知技術を適用して,甲1考案の装着ベルトの端部を折り返して,ほつれが生じないようにすることはきわめて容易に想到し得ることというべきである。
(2)原告は,外側縁を折り返すことにより,連結体の外側縁による腹部への食い込みを防止する効果を奏することは,周知の技術とはいえないから,審決の判断には誤りがあると主張する。
ア本件明細書(甲第19号証)には,「連結体の外側縁の端部を折り返す」ことについて,次の記載がある。
「連結体(11)は,幅方向の外側縁(20)を折返す事なく平滑に形成し簡易な製造を可能にしても良いが,一対の帯部材(17)(17)の外側縁(20)(20)の両方を,第8図に示す如く一方側に折返して,外側を破損のない強固なものとする。
またこの外側縁(20)は第9図に示す如く,一対の帯部材(17)の一方の外側縁(20)を,他方側の外側縁(20)側に折返して,連結体(11)の外側による,腹部への食い込みを防止しても良い。」(5頁13行〜18行)この記載からは,「一対の帯部材の外側縁の両方を一方側に折り返す」という第1の態様により「外側を破損のない強固なものとする」こと,「一対の帯部材の一方の外側縁を他方側の外側縁側に折り返す」という第2の態様により「連結体の外側による腹部への食い込みを防止する」ことが記載されている。したがって,本件考案の「帯部材の外側縁を折り返した」構成には,上記「第1の態様」と「第2の態様」との両方が含まれているものと解される。
イ上記(1)のとおり,ほつれを防止するために,甲1考案の「帯部材」に相当する「装着ベルト」の「外側縁を折り返す」ようにするという「第1の態様」はきわめて容易に想到し得るものといえるから,「第2の態様」の想到容易性にかかわらず,本件考案の「帯部材の外側縁を折り返した」構成は,きわめて容易に想到し得るものということができる。
ウ原告は,本件考案が「帯部材切り口の装着者の身体への食い込みが生じるという問題点を見出し,解決しようと種々工夫した結果,一対の帯部材外側縁の両方又は一方を折返すという技術手段を採用したことにより問題点を解決したものである」と主張しているところからすれば,「連結体の外側による腹部への食い込み」とは,「帯部材の切り口」はそのままでは,角があるため「腹部に食い込む」ので,帯部材の端部を折り返すことで,角を丸くして食い込まないようにすることを意味すると解される。
同じ圧力で肌に触れる場合でも,「丸み」を持った部材と「角」のある部材とを比較すると,「角」のある部材の方が応力が集中して食い込みが大きくなることは,日常生活を通じて体験することである。帯部材の端部を折り返して,折り目を端部とすれば,端部が丸くなることは明らかであって,帯部材の端部をそのままとした場合に比べて,腹部への食い込みが防止されることは,当業者が予測し得る程度のことにすぎないというべきである。
したがって,「折返しによる腹部への食い込みを防止することは当業者が予測し得る以上の格別の効果とすることはできない。」とする審決の結論に誤りはない。
(3)原告は,「収縮力の集中とフィット性の悪さ」は,非パンツ型にはない独自の課題であるから,甲第1号証の非パンツ型おむつに関する記載を参照しても,当業者は,「帯部材の外側縁を折返した」構成を採用するための教示ないし示唆を受けることはないと主張する。
甲1考案のような非パンツ型(テープ)型おむつであっても,装着ベルトの損傷を防止する必要があることは明らかであるし,装着時には,装着ベルト7が弾性力をもって腹部に接するものであるから,腹部への食い込みを防止することも必要である。したがって,「帯部材の端部を折り返す」構成の想到容易性の判断について,非パンツ型とパンツ型の相違が影響するものではない。
(4)以上のとおり,審決がした相違点2についての判断に,原告が取消事由3として主張する誤りはない。
4取消事由4(相違点2の判断の誤り3)について(1)本件明細書(甲第19号証)には,弾性糸の本数と配置幅について,次の記載がある。
「このおむつは,連結体の帯部材の長さ方向に,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って幅広く固定しているので,おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型に合わせた装着が可能になるとともに被装着者の体の運動を妨げる事がなく,尿等の漏れを防止できる。」(3頁8行〜11行)「また連結体(11)は,撥水性不織布または防漏性フィルム等により形成された,一対の帯部材(17)(17)の間に,天然ゴム,ウレタンゴム等の弾性糸(18)を,帯部材(17)の長さ方向に4mm間隔で平行に形成し,腹側連結体(12)に34本,背側連結体(14)には54本固定して,連結体(11)の全幅に伸縮性を得る事を可能としている。」(5頁8行〜12行)「また上記実施例に於ては,連結体(11)の全幅に,平行に位置する弾性糸(18)を固定したが,他の異なる実施例に於ては,腹側連結体(12)や背側連結体(14)の弾性糸(18)を,第5図に示す如く,4mm間隔で平行に34本形成し,帯部材(17)の長さ方向に幅140mmで固定すれば,背側連結体(14)の延長部(13)に弾性糸(18)を固定しないから,被装着者の股部を強く締め付けるような事がなく,少ない本数の弾性糸(18)によって,廉価に尿等の漏れ防止効果を得る事ができ,おむつ(21)の良好な装着を可能とする。」(6頁26行〜7頁3行)「本考案は上述のごとく構成したものであるから,使捨ておむつを装着した場合に,連結体の帯部材の長さ方向には,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って幅広く固定しているので,おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型に合った装着が可能になる。またおむつの装着によって,被装着者の体の運動を妨げる事がなく,おむつが一方に偏るような事がないので,尿等の漏れ防止を可能とする。」(7頁15行〜20行)上記の記載によれば,連結体を50mm以上の幅とし,かつ,弾性糸を5本以上配置することによる技術的意義は,その効果として「おむつ装着時のフィット性が良好となり,被装着者の体型に合った装着が可能になる。またおむつの装着によって,被装着者の体の運動を妨げる事がなく,おむつが一方に偏るような事がないので,尿等の漏れ防止を可能とする」ことが記載されているだけであって,連結体の幅を50mm以上とすること及び連結体に5本以上の弾性糸を配置することを一体不可分の構成として検討しなければならない事情は見受けられない。
また,50mm以上の幅で5本以上配置することについては,それ以下の幅や本数とすることとを比較して,格別顕著な差異を生じることについて何ら記載されておらず,臨界的意義を認めることができない。したがって,50mm以上の幅で5本以上配置することが「弾性糸の本数及び配置幅を最小限の観点から規定する」ものという原告の主張は採用することができない。
(2)原告は,本件考案の連結体は,折り返してもなお,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って設けたものと解すべきものであると主張する。
しかし,本件実用新案登録の請求項1の記載においては,「5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って帯部材の長さ方向に固定した連結体」の「帯部材の外側縁を折り返した」と規定されているのであって,原告のいう「折り返してもなお,5本以上の弾性糸を50mm以上の幅に渡って設けたもの」に限定して解釈することはできない。原告の主張は,請求項1の記載に基づいておらず,採用することはできない。
(3)以上のとおり,審決がした相違点2についての判断に,原告が取消事由4として主張する誤りはない。
5結論以上に検討したところによれば,審決取消事由はいずれも理由がなく,審決を取り消すべきその他の誤りは認められない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中信義
裁判官 古閑裕二
裁判官 浅井憲
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