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事件 平成 16年 (ネ) 2033号 製造販売差止等請求控訴事件
控訴人(原告) 株式会社岩田レーベル
訴訟代理人弁護士 久世表士,上野泰好,補佐人弁理士 菅原正倫,高野俊彦
被控訴人(被告) 朝日印刷株式会社
訴訟代理人弁護士 大谷典孝,訴訟代理人弁理士 廣澤勲
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2005/01/25
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴人の求めた裁判
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙物件目録1(1)記載の包装ラベルを製造し,販売し又は販売の申出をしてはならない。
3 被控訴人は,前項の包装ラベルを廃棄せよ。
4 被控訴人は,原判決別紙物件目録1(2)記載のパンフレットを回収せよ。
5 被控訴人は,控訴人に対し,112万5000円及びこれに対する平成15年4月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
6 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。
事案の概要
本判決においては,原判決と同様の意味において又はこれに準じて,「本件考案」,「本件明細書」,「被控訴人製品」との略称を用い,本件考案の実用新案登録請求の範囲請求項1を分説した符号も原判決と同様とする。
1 本件は,控訴人が,被控訴人製品は本件考案の各構成要件を充足し,本件考案の実施にのみ使用するものであるから,被控訴人製品を製造,販売等している被控訴人の行為は,実用新案法28条1号の侵害とみなす行為に該当すると主張して,被控訴人に対し,同法27条に基づく被控訴人製品の製造,販売等の差止め,廃棄及びパンフレットの回収並びに損害賠償を請求した事案である。
原判決は,被控訴人製品は本件考案のうち争点となった構成要件C(紫外線吸収剤),D(収縮率),A及びH(細口瓶)を充足せず,被控訴人製品が本件考案均等であるともいえないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。
当事者の主張は,次のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」及び「第3 争点に関する当事者の主張」のとおりであるから,これを引用する(なお,控訴人は,被控訴人製品が本件考案均等とはいえないとの原判決の認定判断について,当審において新たな主張立証はしていない。)。
2 当審における控訴人の主張の要点(控訴理由の要点) (1) 構成要件C(紫外線吸収剤)について 被控訴人製品は,以下のとおり,紫外線吸収剤を含有若しくは塗布しているので,構成要件C(「該熱収縮フィルムに紫外線吸収剤を含有若しくは塗布し,」)を充足する。
(1-1) 「紫外線吸収剤」の技術的意義 原判決は,「紫外線吸収剤」の意味について,紫外線吸収効果を与えることを目的として,紫外線吸収効果を顕著に奏するように適用されるものをいうと解すべきであると判断している。
しかしながら,化合物から構成される剤においては,配合目的が異なっても,顕著な別の効果を発揮することは,通常起こり得る。これは,化学的常識的事項であり,客観的に紫外線吸収剤の効果があるにもかかわらず,主観的な配合目的が異なるからといって,「紫外線吸収剤」に当たらないとするのは誤りである。
また,原判決は,「剤」とは「その特定の効果を顕著に奏するように適用されるものを意味する」と判示するが,「顕著に奏する」といっても程度問題であり,100%完全に紫外線を吸収することを要件とすべきではない。例えば,10〜20%程度の紫外線をカットしただけでも,紫外線からの保護効果は確実に発揮されるのであるから,「紫外線吸収剤」といってよい。
原判決は,本件考案における「紫外線吸収剤」に該当するためには,「ラベルの透明性を維持し得るものであることを要する」と判示するが,ここにいう「透明性」とは,ラベルの一部分の透明性が維持されるか又は瓶の中味を確認することが可能であれば足りるというべきである。被控訴人製品は,UV白インキの酸化チタンをラベル全体に塗布したものでなく,その一部に塗布したにすぎないから,一部に透明部分が確保されており,また酸化チタンを塗布した部分についても,可視光線を100%遮断するものではないから,内容物を確認することができる(甲46,47)。したがって,被控訴人製品はラベルの透明性が維持されているというべきである。
(1-2) 酸化チタン 被控訴人製品に含まれる酸化チタンは,可視光を約40〜50%透過するので,中味を確認することができ,かつ紫外線を約60%遮断するので,内容物を紫外線から保護する機能を有する(乙8の2の2,195頁,図II.3.46)。また,「色材工学ハンドブック」(甲6)にも,酸化チタンが,波長360nmにおいて,ルチル形で90%,アナタース形で67%の紫外線吸収率を有する旨記述されている(252頁,表3・1)。
原判決は,紫外線吸収剤と紫外線散乱剤を区別するが,本件考案における紫外線吸収剤の目的は,瓶の内容物を紫外線から保護することにあり,内容物を紫外線から保護する限り,厳密な意味において「吸収」と「散乱」を区別して「紫外線吸収剤」の成否を判断する必要はない。
以上によれば,被控訴人製品に含まれる酸化チタンは「紫外線吸収剤」の要件を充足するというべきである。
(1-3) 光重合開始剤 原判決は,UVインキに含まれる光重合開始剤は,インキのビヒクルの重合に寄与するものであるから,紫外線吸収を目的とし,紫外線吸収効果を奏するように適用されるものとはいえないと判断している。しかし,インキのビヒクルの重合に寄与するものであったとしても,光重合開始剤は紫外線吸収剤そのものであり,紫外線によりラジカルが発生してラジカル重合を開始し,その一部が硬化ポリマー末端に結合することにより,ビヒクル重合後においても,高分子紫外線吸収剤として機能する場合がある。他方,重合にあずからない光重合開始剤はそのままの状態で硬化皮膜中に存在するのであるから,いずれにしても,UV硬化塗料を使用する限り,初期の目的を達した後,中味を紫外線から保護する紫外線吸収剤として機能する。
また,UVインキは,印刷速度が早く,短時間の紫外線照射により十分な硬化強度を維持することが優先されるため十二分に添加されるのが常識である。「プラスチックの塗装・印刷便覧」(甲5)には,「通常,光増感剤はビヒクルに対して1〜10%配合され,その増感剤の吸収波長帯と吸収強度によって塗料の特性が異なる」(79頁左欄下から5〜3行)と記載され,増感剤(光重合開始剤)が10%も配合される場合があることが示されている。そして,光重合開始剤を添加しても被控訴人製品は中味を確認できる透明性を維持している。
したがって,光重合開始剤を配合する当初の目的が内容物を紫外線から守ることではないとしても,光重合開始剤が本件考案の紫外線吸収剤に当らないとする判断は失当であり,光重合開始剤は「紫外線吸収剤」に該当するというべきである。
(1-4) 透明部分のフィルム 原判決は,「紫外線吸収剤」とは,熱可塑性樹脂が最も影響を受ける300〜400nmの波長の紫外線を吸収して大部分を熱エネルギーに変換して放散するものであると判断している。しかしながら,紫外線吸収剤によって吸収する紫外線の波長は異なり,典型的な紫外線吸収剤ですら,ある一定の波長以下の紫外線を100%吸収するものではない(甲59)。例えば,典型的な紫外線吸収剤であるパラアミノ安息香酸の紫外線吸収スペクトル(乙32,66頁の図2)を見ても330〜400nmまでは紫外線を全く吸収していない。したがって,紫外線吸収剤というためには,これを配合しないフィルムと比較して,400nm以下のある部分の波長の紫外線を吸収してその差があれば足りるというべきであり,ある特定の紫外線波長領域以下を100%カットする目的のために,複数の紫外線吸収剤を組み合わせて使用し,特別なUVカットフィルム(紫外線カットグレード)を提供できなければ,紫外線吸収剤とはなり得ないと理解すべきではない。 被控訴人製品に関する実験結果(甲36ないし39,48,49)は,被控訴人製品は400nm以下の特定波長の紫外線を吸収することを示している。また,控訴人が名古屋市工業研究所に依頼して行った紫外可視吸収スペクトルの測定結果(甲42ないし44)によれば,被控訴人製品の紫外線の吸収スペクトル(甲42)は,紫外線吸収剤が含有されていないPE(ポリエチレン)フィルムの吸収スペクトル(甲43,44)と比較して顕著な相違がある。甲42のラベル透明部分に紫外線吸収剤が配合されていることは明らかである。
原判決は,紫外線吸収剤を添加した市販のPVC(塩化ビニル)フィルム(乙39,図1のフィルムB,C)や,リンテック株式会社が製造する紫外線吸収機能のあるポリプロピレンフィルム OPP50C LS166G 8LK(乙40)と被控訴人製品の紫外線透過率を対比して,被控訴人製品は紫外線を十分に吸収しているとはいえないと判示するが,乙39図1のフィルムB,Cは複数の紫外線吸収剤とその配合量を極端に調節したUVカットグレードであり,紫外線吸収剤を配合した一般的な市販PVCフィルムは,同図のフィルムAである。つまり,乙39は,一般耐候性のフィルムA(一定のUV吸収を行う)と,極めて高いUV吸収性(100%近い)を有するUVカットグレードのフィルムB,Cを比較対比したものであり,このことは,一般耐候性を有しない非UVのフィルム(甲43,44)の紫外可視吸収スペクトルとの対比から明らかである。被控訴人製品は,紫外線吸収剤を配合した一般的な市販PVCフィルムである上記フィルムAに近いものである。
被控訴人製品の粘着剤に紫外線吸収剤が含有されているかどうかに関し,原判決はこれを否定するが,控訴人は第三者試験機関である株式会社日東分析センターに依頼し,被控訴人製品の@ラベル全体(透明部分),A粘着剤を除去したラベル,B粘着剤と表面コート層を除去したラベル,CPE標準(一般に市販されている日本ポリオレフィン工業組合規格袋として加工されたポリエチレンフィルム)のUV吸収スペクトルを測定した。すると,上記@は,AないしCと比較して顕著な紫外線吸収効果を示し,被控訴人製品の粘着剤には一般的な紫外線吸収剤の基本骨格である芳香族環を有するビニルトルエン系樹脂が含まれていることが明らかになった(甲60)。
以上のとおり,被控訴人製品の透明部分は紫外線吸収剤を含有し,構成要件Cを充足するということができる。
(2) 構成要件D(収縮率)について ア 収縮率の測定方法について 原判決は,本件考案における熱収縮率は,包装時の熱収縮工程において達成すべき収縮率を特定していると解されると判示する。しかしながら,容器の胴部に感圧接着剤で接着されたラベルの細かい皺を強制的に伸ばして除去する上では,45%以上の収縮能力をもったラベルが45%以上縮もうとする収縮力(実際にはわずか縮むだけ)により皺が伸ばされるのであり,また容器の栓部にラベルを密着させる際にも,45%以上の収縮能力を有していれば,実際に45%以上縮んだかどうかではなく,45%以上の(潜在的な)収縮能力により密着性が高まるのである。つまり,本件考案の収縮率45%以上とは,包装ラベルが45%以上の収縮性を物理的に有していることを意味するものであって,収縮工程でラベルが実際に45%以上収縮することを意味するものではない。
また,原判決は,熱収縮フィルムの加熱時間は2分を超えることはないと解すべきであると判断している。確かに,平成7年に作成されたJIS規格では120℃のグリセリンに20秒浸漬するとされているが,樹脂フィルムの融点は比較的低く,例えば被控訴人ラベルを構成するポリエチレンフィルムの融点は105〜115℃であるから(甲51),融点より低い100℃の液に入れて収縮を測定する場合には,分子間運動は120℃のような活発なものではなく,ゆっくり収縮が進行することに留意する必要がある。したがって,100℃のような比較的低温での収縮は,収縮完了させるために少なくとも10分又は20分といった加熱時間が必要となる。
収縮実験の試料の選定に関し,原判決は,いったん収縮が施されたフィルムを試料としている点において実験が不正確であると判示するが,いったん収縮が施されたフィルムがさらに45%以上収縮した事実は,未使用のフィルムからの収縮率はさらに高いことを示している。したがって,いったん収縮が施されたフィルムを試料としたとしても,その収縮率が45%以上であることが立証されれば,当然未使用のフィルムからの収縮率はそれ以上になるのであるから,45%以上という要件は一層確実に充足する。
以上のとおり,控訴人が行った液媒体収縮試験における加熱時間,試料等は相当であり,その試験で45%以上の収縮率が出ているのであるから,被控訴人ラベルは本件考案の収縮要件を充足する。
イ 熱風(気相)収縮実験 原審において控訴人が行った熱風(気相)収縮実験の方法は相当であるが,控訴人は,さらに厳密な条件の下で熱風(気相)収縮実験を実施するために,精密な熱風収縮試験機を使用し,愛知県産業技術研究所の職員の立会いのもと,同研究所で熱風(気相)収縮実験を行った(甲52ないし54。枝番を含む。)。この実験においては,メインター点眼薬瓶からはがされた被控訴人製品を試料として使用し,直径16.0mm×高さ48.0mmの円柱(大円柱)の上部に,直径8.4mm×高さ16.0mmの円柱(小円柱)を設けた段付円柱ホルダにこれを巻いた上,約10mmの距離から,試料が均一に加熱されるように段付円柱ホルダを回転しつつ,約5秒間熱風を吹き付けた。熱風の吹出口温度は220℃であり,試料の上部に貼り付けた示温ラベルで測定された加熱温度は92℃以上100℃未満であった。その結果,直径16.0mmの円柱が直径8.4mmの円柱に収縮・密着したのであるから,その収縮率は47.5%となる。以上の再実験によれば,被控訴人製品が本件考案の構成要件D(収縮率)を充足することは明白である。
(3) 構成要件A及びH(細口瓶)について そもそも「細口瓶」とは,「一般的にびん(瓶)の口部の外径が胴部に比べて小さいものをいう」(甲57)のであり,栓部の外径は関係がない。点眼薬瓶は,中味の点眼液が1滴とか2滴しか出ないように,極めて細口にする必要があるのであって,典型的な細口瓶なのである。このように「細口瓶」の概念が具体的かつ明確なものである以上,実用新案登録請求の範囲の記載を無視し,実施例に限定して解釈することは許されない。
原判決は,控訴人作成の審判請求補充書(乙12)に「なお,一般に細口瓶とは,栓の外径が胴部の外径の70%以下のものを言います(日本薬局方等)。」(4頁7〜8行)との記載があることを,細口瓶を実施例に限定して解釈する理由の一つにしているが,この記載は当時の誤解に基づくものであり,日本薬局方にそういった定義はない。また,原判決は,同補充書に「・・・細口部分が胴部分の70%以下の直径・・・」(10頁4行)との記載があることも指摘するが,「細口部分」は「栓部」とは異なる。
原判決は,ラベルの縦方向の熱収縮率が45%以上であることが意味を持つのは栓部と胴部の間に肩部がある細口瓶のみであると判示するが,瓶の胴部と栓部の直径が同じ場合であっても,栓部での45%以上の熱収縮力は被控訴人製品のラベルと蓋部とを密着する上で意味があり,栓部と胴部との間に肩部があろうがなかろうが,被控訴人製品が適用される瓶では栓部との密着や,キャップ頂部の包装のため,45%以上の収縮が必要となる。栓部が円錐又は二段ドーム状のものでは,その二段ドームの肩面に被控訴人ラベルを密着させる必要から,同様に45%以上の大きな収縮が要求される。
以上のとおり,細口瓶は栓と胴部間に肩部が生じるものに限定される理由はなく,口部が胴部より十分小さいものを字句通りに細口瓶というのであり,被控訴人ラベルが適用される容器はすべて細口瓶である。
なお,栓部と胴部間に肩部を生じるもののみが細口瓶であるとしても,被控訴人は,本件考案が登録実用新案であること,及び被控訴人製品が本件考案の実施に用いられること(細口瓶に装着される可能性あること)を知りながら,被控訴人製品の製造・販売・販売の申出等を行っているのであるから,実用新案法28条2号の規定にも該当する。
3 当審における被控訴人の主張の要点 (1) 構成要件C(紫外線吸収剤)に対して (1-1) 「紫外線吸収剤」の技術的意義 控訴人は,紫外線吸収剤を配合しない場合より,約10〜20%程度の紫外線をカットしただけでも,紫外線からの保護効果は確実に発揮されると主張するが,本件明細書(甲2)の〔考案の作用〕欄には「本考案に用いる紫外線吸収剤は紫外線を吸収して内容物の変質を防止するものであり」(4欄40〜42行)と記載され,審判請求理由補充書(乙12,12頁6〜9行)には,本件考案の紫外線防止作用は「単なる遮光性を付与した場合の当然の作用効果」ではなく「紫外線吸収剤を含有させて,透明性を維持しながら瓶内容物を紫外線から防止する」ことが特徴である旨の記載がされているのであるから,紫外線吸収剤とは,文字どおり紫外線を吸収するものであって,100%又はこれに近い紫外線吸収効果を有する必要がある。
控訴人は,ラベルの透明性に関し,被控訴人製品の非印刷部分に透明性があれば足りるなどと主張するが,透明性とは,単に光が通過するという透光性とは異なり,向こう側が明らかに見えることをいう。この点は,本件明細書の〔考案の効果〕欄において「紫外線吸収剤を適用することができ,透明な瓶の使用が可能となるので,内容物の変質の発見が容易であり,かかる利点は薬瓶の包装ラベルにおいて特に有用である。」(6欄20〜23行)と記載されているとおりであり,一般的な用語としても「透明」というのは透き通って向こう側が見えることであり,すりガラスのように向こう側が透き通って見えないものは「透明」とはいわない。
(1-2) 酸化チタン 被控訴人製品のラベルには白インキが使用され,その顔料として酸化チタンが含まれていることは認めるが,酸化チタン顔料の白インキは,半透明でもなく白色であり,瓶の中味を確認できるものではない。また,白色部分の透過スペクトルの測定結果も,紫外線が吸収されたのか散乱されたのか確定できず,むしろ不透明性から来る光遮蔽効果による測定結果とみるべきであって,紫外線吸収剤が含有又は塗布されているということはできない。
(1-3) 光重合開始剤 被控訴人製品のラベルに光重合開始剤が使用されていることは認めるが,これはラベル印刷上必要なインキ硬化のためにすぎない。控訴人は,被控訴人製品のラベルには光重合開始剤が残存しており,それが紫外線吸収効果をもたらしているとも主張するが,控訴人の推論にすぎず,そのことを示す具体的な証拠は存在しない。
(1-4) 透明部分のフィルム 控訴人は,被控訴人製品の透明部分又は塗布された粘着剤に紫外線吸収剤が含有されていると主張するが,被控訴人はそのような製品を納入先に発注した事実はない。
原判決は,控訴人が行った被控訴人製品に使用されたフィルムの透明部分の光線透過測定実験や被控訴人が行った実験を十分検討して,結局,被控訴人製品に使用されているフィルムは,紫外線領域の波長を十分吸収しているとはいえないとし,紫外線吸収剤が含有又は塗布されてはいない,と判断しているのであり,正当である。
控訴人は,乙39図1のフィルムAは,紫外線吸収剤を含む一般耐候性フィルムであると主張するが,仮に塩化ビニル(PVC)である乙39図1のフィルムAに紫外線吸収剤がわずかに含まれていたとしても,ポリエチレン(PE)からできている被控訴人製品とは材料が異なり,逆にPVCフィルムと比較して紫外線に対する耐候性の高いPEフィルムを用いた被控訴人製品には,紫外線吸収剤を含ませる必要がないということができる。
控訴人は,名古屋市工業研究所作成に係る成績書(甲42ないし44)の透過率曲線のうち,被控訴人製品の紫外線透過率を示す曲線(甲42)が,他のPEフィルムやシュリンクPEフィルムの紫外線透過率曲線(甲43,44)と異なり,紫外線領域の一部の波長を吸収していると主張する。しかし,甲42の曲線は,粘着剤が塗布された状態の被控訴人製品の透過率曲線であり,この曲線は大日本インキ化学工業株式会社による測定結果(乙39の図2,4,5)に示された市販PEフィルムの紫外線透過率の曲線と同様に,300〜400nmの紫外線を十分に吸収していない。甲43,44の紫外可視吸収スペクトルは,乙39の図3,4,5の粘着剤を除去した被控訴人製品及び市販PEフィルムの光線透過率と同様に,300nm付近から紫外線吸収効果が出始める曲線となっている。したがって,甲42と甲43,44との違いは,単に粘着剤の有無によるものであり,被控訴人製品のラベルに用いられているPEフィルム自体に紫外線吸収剤が含まれていないことは明らかである。
控訴人は,被控訴人製品に貼付された粘着剤には一般的な紫外線吸収剤の基本骨格である芳香族環を有するビニルトルエン系樹脂が含まれていると主張する。確かに,被控訴人製品のラベルに芳香族系化合物が含まれていることは認めるが,被控訴人製品に含まれるビニルトルエン系樹脂は,粘着剤に一般的に必要とされるタッキファイヤー樹脂にすぎず,「紫外線吸収剤」には当たらない。
(2) 構成要件D(収縮率)に対して 控訴人は,フィルムの加熱時間に関し,100℃のような比較的低温での収縮の場合には,少なくとも10〜20分といった加熱時間が必要であると主張するが,本件明細書では加熱時間が1〜2分となっていること,JIS規格での加熱時間が20秒であること,生産ラインでの収縮加熱時間は数秒であることに照らすと,控訴人の主張する10〜20分という長時間の加熱時間は不合理というほかない。
被控訴人は,原審段階から,双方立会いの下での実験を提案していたが,控訴人はこれを受け入れず,自ら各実験を繰り返した結果,原判決において,いずれも採用し難い実験結果であるとされた。控訴人は,当審においても,新たな実験を行っているが,上記のような経緯に照らせば,原判決後の新たな実験に基づく証拠(甲52ないし54(枝番を含む。))は遅きに失し,民事訴訟法157条1項の時機に後れた攻撃方法として却下されるべきである。
仮に,かかる攻撃方法の提出が認められたとしても,加熱条件については,本件明細書に記載のとおり,100℃のシュリンクトンネルで1〜2分で収縮する方法によるべきであり,これを変えることは,本件考案技術的範囲を逸脱する。また,控訴人が新たに行った熱風(気相)収縮実験は,JIS規格による実験と異なり,温度管理が困難であり,220℃もの高温の空気を吹き付けによりラベルに送れば,吹き付けられる気流が変化して乱流となり,少なくとも部分的には200℃程度となる部分が存在する。示温ラベルによる温度表示は,熱収縮フィルムの周囲の雰囲気温度を表示するものではない。また,使用する試料も不適切であり,当該実験が愛知県産業技術研究所の職員の立会いの下で行われたとしても,測定機器,測定方法,測定結果等は,控訴人の関係者主導で行われたものであるから,客観性を認め難く,信用し得ない。
(3) 構成要件A及びH(細口瓶)に対して 控訴人は,構成要件A,Hにいう「細口瓶」とは,胴部に対して口部の内径が一定以上細くなっているものであり,栓の外径は無関係であると主張する。しかしながら,本件考案は包装方法の一つであり,栓をした状態での包装が想定されているのであるから,栓の外径と対比しないと意味がなく,控訴人自身,審判請求理由補充書(乙12)において「細口瓶とは,栓の外径が胴部の外径の70%以下のものを言います(日本薬局方等)。」(4頁7〜8行)と説明している。
また,控訴人は,本件考案の作用効果として45%以上の収縮が必要となるのは,貼付したラベルの皺を取ることに意味があると主張しているが,本件明細書(甲2)の〔考案の作用〕欄には「本考案ラベルは,細口瓶の胴体部分に殆ど密着させて巻き付けて使用する。そのため,胴部分に関しては,ラベルの皺を取ることができる程度の熱収縮率があれば十分である。しかし,細口瓶の栓部分を密着包装するためには,45%以上の熱収縮率が必要となる。」(4欄9〜14行)と記載されており,45%の熱収縮率が必要となる本質的な意義は,胴部と比較して格段に細くなった栓部を密着包装するためにあると考えられる。したがって,原判決の認定のとおり,細口瓶とは,栓部と胴部の径に顕著な差がある結果,栓をした状態での瓶に肩部が認められるような瓶を意味すると解すべきである。被控訴人のラベルが貼付された細口瓶をみれば,いずれも栓部と胴部との外径に顕著な差がなく,栓部の上部の外径が細くなっているもの(甲10,11)についても,被控訴人製品のラベルは,栓全体を被包することなく,栓の一部で収縮させているにすぎず,栓自体が細口となった外径を有しているものではないので,「細口瓶」には該当しない。
なお,控訴人は,栓部と胴部間に肩部を生じるもののみが細口瓶であるとしても,被控訴人の行為は,実用新案法第28条2号間接侵害に該当すると主張するが,被控訴人は控訴人の主張を争う。
当裁判所の判断
1 当裁判所も,被控訴人製品は,構成用件C(紫外線吸収剤),D(収縮率),A及びH(細口瓶)の各要件を充足しないので,控訴人の本訴請求は理由がなく,これを棄却すべきものと判断するが,その理由は,下記2のとおり付加するほかは,原判決が「第4 当裁判所の判断」として説示するとおりである。
2 当審における控訴人の主張に対する判断 (1) 構成要件C(紫外線吸収剤)について (1-1) 紫外線吸収剤の技術的意義 本件考案の「紫外線吸収剤」の技術的意義に関し,控訴人は,@紫外線吸収を目的とするものでなくとも,紫外線を吸収する効果を発揮するものであれば「紫外線吸収剤」ということができ,Aその効果も一定の波長の紫外線をある程度吸収すれば足りるというべきであり,B透明性についても,ラベルの一部が透明であるか,又は内容物の確認ができれば「透明」ということができると主張する。
しかしながら,原判決も摘示する「紫外線吸収剤」に関する本件明細書(甲2),控訴人が特許庁に提出した拒絶査定に対する審判請求理由補充書(乙12),その他の刊行物(甲41,乙8の2の4,32,34,35)の記載によれば,本件考案にいう「紫外線吸収剤」とは,光学的に有害な300〜400nmの紫外線を吸収して,その大部分を熱エネルギーとして放出するために適用されるものであり,具体的には,サリチル酸誘導体,ベンゾフェノン系,ベンゾトリアゾール系等の化合物をいうと解すべきであって,単に他の用途の剤に含まれて紫外線吸収効を有する物質や,紫外線を散乱・反射する効果を有するにすぎない物質は,本件考案にいう「紫外線吸収剤」には該当しないというべきである。
また,その効果についても,確かに紫外線吸収剤にはそれぞれ特性があり,300〜400nmの紫外線を100%吸収する必要はないとしても,市販のPEフィルム又はシュリンクPEフィルムとは顕著に異なる紫外線吸収効果を示すことが必要であることはいうまでもない。
さらに,本件明細書,審判請求理由補充書の記載によれば,本件考案の「紫外線吸収剤」はラベルの透明性を維持し得るものであると解すべきところ,「透明」の通常の意味は,「すきとおること,くもりなく明らかなこと。」(広辞苑第五版)であり,本件考案において,これを別異に理解すべき理由はない。したがって,ラベルの一部でも透明であり,また内容物の確認ができれば「透明」といえるという控訴人の主張は採用できない。
(1-2) 酸化チタン 本件考案における「紫外線吸収剤」の技術的意義を上記のとおりと解すると,被控訴人製品の白インキの顔料として含まれている酸化チタンは,光学的に有害な300〜400nmの紫外線を吸収して,その大部分を熱エネルギーとして放出するために適用されるものではなく,また「透明」なものでもないから,一般的性質として紫外線吸収機能を有しているとしても,本件考案の「紫外線吸収剤」には該当しない。
(1-3) 光重合開始剤 インキに含まれる光重合開始剤も,ラベル印刷上必要なインキ硬化のため使用され,紫外線吸収を目的とするものではないから,光重合開始剤が本件考案の「紫外線吸収剤」に該当するということはできない。また,そもそも被控訴人製品に重合に使用されなかった光重合開始剤が残存していると認めるに足る的確な証拠もない。したがって,いずれの観点からも,被控訴人製品のラベルに使用される光重合開始剤が紫外線吸収剤に該当するとの控訴人の主張は採用できない。
(1-4) 透明部分のフィルム ア 控訴人は,被控訴人製品の透明な部分にも紫外線吸収剤が含まれていると主張する。確かに,証拠(甲36〜39,42,48,49,60,乙39)によれば,被控訴人製品のラベルの透明部分の光線透過率は,概ね,波長400nm付近で50%以上であり,波長300〜400nmの領域において低下し,250〜280nmでほぼ0%となると認められ,紫外線吸収率が最大でも40%を超えていない甲43,44の市販PEフィルムと比較すると,被控訴人製品は紫外線吸収効において優れているといえなくはない。
しかしながら,他方,大日本インキ化学工業株式会社による光線透過率測定結果(乙39)によれば,被控訴人製品の300〜400nmにおける紫外線吸収率は,市販シュリンクPE粘着シート(乙39の図2のフィルムF,なお,このシートが紫外線吸収剤を含有すると認めるに足る証拠はない。)とほぼ同程度であり,被控訴人製品が市販のPEフィルムと比較して,一般的に顕著な紫外線吸収効を有するとは認め難い。また,被控訴人製品の上記同様の波長における紫外線吸収率は,紫外線カットを目的とする市販シュリンクPVCフィルム又は市販シュリンクPVC粘着シート(乙39の図1のフィルムB,C)やリンテック株式会社が製造する紫外線吸収機能のあるポリプロピレンフィルム OPP50C LS166G 8LK(乙40)に比べると,顕著に低いものと認められる。これについて,控訴人は,乙39図1のフィルムB,Cや乙40のフィルムは高い紫外線吸収力を有する特殊なフィルムであり,むしろ一般的な紫外線吸収効を有するのは同図のフィルムAであるから,被控訴人製品と比較すべきは同Aのフィルムであると主張するが,フィルムAは一般耐候性グレードの市販PVCフィルムというにすぎず,これが紫外線吸収剤を含有していると認めるに足る証拠はないのであるから,フィルムAとの対比から被控訴人製品の透明部分に紫外線吸収剤が含まれていると推認することはできない。
以上によれば,被控訴人製品の透明部分が紫外線吸収剤を含む他のフィルムと同等の紫外線吸収効を有し,あるいは,市販のPEフィルムと比較して顕著な紫外線吸収効を有するとの控訴人の主張は認められない。
イ 控訴人は,被控訴人製品のラベルの粘着剤に紫外線吸収剤が含まれているとも主張する。確かに,証拠(甲60,乙39)によれば,粘着剤の塗布された被控訴人製品は,粘着剤を除去した場合と比較して,高い紫外線吸収率を示しており,控訴人の主張するとおり,被控訴人製品の粘着剤に含まれるビニルトルエン系樹脂が紫外線吸収に影響を及ぼしている可能性は否定できない。しかしながら,被控訴人製品の粘着剤に含まれるビニルトルエン系樹脂が,本件考案の「紫外線吸収剤」,すなわち光学的に有害な300〜400nmの紫外線を吸収することを目的とするサリチル酸誘導体,ベンゾフェノン系,ベンゾトリアゾール系等の化合物に当たると認めるに足る証拠はなく,かえって,粘着剤を含むフィルムの方が紫外線吸収効が高いのは被控訴人製品に限られないと認められること(乙39図4,5)に照らすと,粘着剤を構成する物質の中に紫外線吸収効を有する物質が含まれているにすぎないとも考えられる。したがって,被控訴人製品のラベルの粘着剤に本件考案にいう「紫外線吸収剤」が含有又は塗布されていると認めることはできない。
(1-5) 以上によれば,被控訴人製品が,構成要件C(「該熱収縮フィルムに紫外線吸収剤を含有若しくは塗布し,」)を充足するということはできない。
(2) 構成要件D(収縮率)について 本件実用新案登録請求の範囲には「縦方向の100℃における収縮率が45%以上であり,横方向の100℃における伸縮率が10%以下である」と記載されている。被控訴人製品が構成要件Dを満たしているというためには,相当な測定方法により,被控訴人製品が上記収縮率又は伸縮率を有することを控訴人において立証する必要がある。
収縮率又は伸縮率の具体的な測定方法については,本件実用新案登録請求の範囲及び本件明細書中には記載されていない。このように,収縮率又は伸縮率の具体的な測定方法が明細書等に記載されていない場合には,相当と認められる測定方法によるほかないが,収縮包装用フィルムの収縮率の試験方法については,JIS規格(日本工業規格。甲8,乙14)が存在する。同規格は,本件考案後の出願後である平成7年に作成されたものであるが,客観的で相当な試験方法として参照することができるというべきである。同規格の定める試験方法は,以下のとおりである。
「2 用語の定義 (5) 収縮率 フィルムを拘束せず,加熱によって自由に収縮させたときの寸法変化をいい,一般に百分率で表す。
6 試験 6.1 収縮率及び収縮比 6.1.2 試験装置 装置及び器具は,次のとおりとする。
(1) 恒温浴槽 フィルム支持具を容易につけこめる大きさで,測定温度80℃から160℃の範囲で±1℃の恒温に保てるものであること。
(2) 浴液 恒温浴槽内に熱媒液を満たす。液体はフィルムを可塑化したり,反応したりするものを避け,一般にエチレングリコール又はグリセリンなどを用いる。
(3) フィルム支持具 ステンレス製金網などで,熱媒液が自由に還流でき,かつ試験片が浮き上がらないように軽く押さえる構造のものであること。
6.1.3 試験方法 試料をフィルム支持具内にその側面に触れないような位置に平らにおく。次いで所定の温度(1)に保った熱媒液中に手早く浸せきし,所定時間(2)加熱し,自由に収縮させた後取り出して,別に用意した常温の浴液に浸し,約5秒間冷却した後取り出し,平らに静置して30分以内に縦,横の寸法を測る。
注(1) 最大収縮を生じる温度は,フィルムによって異なるが,この規格では120℃を基準とする。
(2) 最大収縮を生じる浸せき時間は,フィルムの種類,加工条件及び厚さなどによって差異があるが,この規格では20秒を基準とする。」 原審及び当審において,控訴人及び被控訴人が行った実験のうち,JIS規格が定める上記試験方法のように,熱媒液に浸漬する方法による実験を挙げると,甲15〜18,20,21,乙16,18,19,41〜43である。このうち,乙16は,東京都立産業技術研究所が,収縮前の被控訴人製品を試料とし,これを2枚の金網間に配置して,シリコンオイルバス中に所定時間浸漬し,その収縮率を測定したものであり,100℃の浸漬温度で20秒間浸漬した場合の収縮率は約15〜17%であり,100℃で3600秒浸漬した場合の収縮率でも約31%であるとの結果が出ている。この試験は,使用した試料,浸漬時間,熱媒液の温度,実験の実施機関の中立性等に関し,何ら不相当な点はなく,採用することができる。
他方,控訴人の行った熱媒液に浸漬する方法による実験は,実験結果が構成要件Dの収縮値を充足せず(甲7,15),あるいは,構成要件Dの収縮値は充足するものの,試料を浸漬する温度が本件実用新案登録請求の範囲に記載された100℃を超え(甲16),試料を浸漬する時間が前記JIS規格の20秒よりはるかに長い10分ないし20分である(甲16,17,18,20,21)など,その測定方法が相当とはいえず,いずれも採用することができない。控訴人は,試料を浸漬する時間について,ポリエチレンフィルムの融点が120℃より低いことを考慮すれば,収縮を完了させるために少なくとも10分又は20分加熱することが必要であると主張する。しかしながら,フィルムの浸漬時間は,フィルムの種類,加工条件及び厚さなどによって差異があることを考慮しても,控訴人の主張する加熱時間はJIS規格で基準とされた加熱時間(20秒)よりはるかに長い時間であり,ポリエチレンフィルムについて10〜20分の浸漬時間が必要であると認めるに足る適切な証拠も存在しない。仮に浸漬時間を10分とすることが許容されるとしても,乙16,41〜43のように,収縮前の被控訴人製品を試料として,約100℃の熱媒液に10分間浸漬した場合の収縮率がいずれも45%に達しなかったとの測定結果も存在し,控訴人の行った実験については熱媒液の温度測定方法に疑問もあること(乙42)も考慮すると,被控訴人製品を100℃の熱媒液に10分浸漬した場合に収縮率が45%以上となるとする実験結果を示す上記証拠はいずれもにわかに採用し難いものであり,他に10分浸漬した場合の収縮率が45%以上となるとの控訴人の主張を認めるべき証拠はないから,控訴人の主張は採用することができない。
控訴人は,さらに,被控訴人製品の熱風(気相)収縮実験も行い(甲35,52〜56(枝番を含む。)),その結果に基づいて,被控訴人製品は構成要件Dを充足すると主張する。しかしながら,控訴人の行った熱風(気相)収縮実験は,熱媒液の中で試料を自由に収縮させ,加熱後の試料の縦,横の寸法を測るJIS規格の測定方法とは大きく異なり,フィルムを疑似容器に巻き付け,その一部に熱風を吹き付け,容器を回転しながらフィルム全体を加熱した上で,試料を巻き付けた容器の大円柱の外径と加熱後に試料が巻き付いた小円柱の外径の差を大円柱の外径で除するという計算方法により収縮率を測定するというものであり,その加熱方法,熱風温度の管理,収縮率の計算方法に照らすと,測定結果の正確性には疑問がある。
したがって,控訴人の行った熱風(気相)実験の結果は,いずれも採用できない(なお,被控訴人は,控訴人が当審で提出した甲52〜56(枝番を含む。)は時機に後れた攻撃方法であり,却下されるべきであると主張するが,原審における審理の経過や甲52〜56(枝番を含む。)に記載された実験内容に照らすと,時機に後れた攻撃方法であるとはいえない。)。
以上によれば,被控訴人製品は構成要件D(収縮率)を充足するということはできない。
(3) 構成要件A及びH(細口瓶)について 控訴人は,構成要件A及びHの「細口瓶」について,瓶の注入口部の外径が胴部に比べて小さいものをいうと主張する。しかしながら,本件考案に係る細口瓶は瓶の胴部及び栓部の上からラベルで包装することが想定されていることは明らかであり,ラベルの縦方向に45%の収縮率が必要となるのも,「細口瓶の栓部分を密着包装するため」(本件明細書の4欄13行)であるから,胴部の外径と比較すべき細口部分は栓部の外径と理解するのが合理的である。控訴人自身,審判請求理由補充書(乙12)において「細口瓶とは,栓の外径が胴部の外径の70%以下のものを言います(日本薬局方等)。」(4頁7〜8行)と説明し,本件明細書図3にも,栓部と胴部の径に顕著な差がある瓶が例示されているように,本件考案にいう「細口瓶」とは,瓶の胴部と栓部の径に顕著な差がある結果,栓をした状態での瓶に肩部が形成される瓶を意味するというべきである。被控訴人製品が付された瓶には,栓部の先端の一部分の外径が小さいものもあるが,いずれも栓をした状態での瓶に肩部はなく,また被控訴人製品は外径の小さくなった部分には包装されていないのであるから,本件考案にいう「細口瓶」に当たるとは認められない。
なお,控訴人は,栓部と胴部間に肩部を生じるもののみが細口瓶であるとしても,被控訴人の行為は実用新案法28条2号の規定に該当すると主張するが,上記判示のとおり,被控訴人製品は本件実用新案登録に係る物品の製造に用いる物であるとは認められないのであるから,実用新案法28条2号にも該当しないことは明らかである。
3 結論 以上によれば,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないので,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 田中昌利
裁判官 佐藤達文
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