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関連審決 無効2005-40009
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  物品 /  物品の構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  一致点の認定 /  相違点の認定 /  新規性(3条1項) /  きわめて容易 /  請求項 /  容易に想到 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10428号 審決取消請求事件
原告レジーナ・ミラクル・インターナショナル・リミテッド
訴訟代理人弁理士谷義一
同 阿部和夫
同 新開正史
同 窪田郁大
同 小林武彦
被告翔 佳億企業有限公司
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/05/31
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2005−40009号事件について平成18年8月29日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は被告の負担とする。
3この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求主文同旨。
第2事案の概要本件は,原告が,現在は被告が名義人である後記実用新案登録(請求項の数4)の無効審判請求をしたところ,特許庁が 「本件審判の請求は,成り立た ,ない 」旨の審決をしたことから,原告がその取消しを求めた事案である。 。
第3原告の主張(請求原因)1特許庁における手続の経緯Aは,平成14年1月8日,名称を「一体成型によるブラジャーの構造」とする考案について実用新案登録出願(優先権主張・平成13年〔2001年〕1月10日,台湾)をし,平成14年4月24日,日本国特許庁から実用新案登録第3087144号として設定登録を受けた(以下「本件実用新案登録」という。甲6 。)本件実用新案登録の権利者はその後吉尚企業有限公司となったが,原告は同公司を被請求人として,平成17年11月11日,同登録の無効審判請求を行い,特許庁はこれを無効2005-40009号事件として審理することとした。本件実用新案登録の権利者はさらに被告(翔佳億企業有限公司)に変更されたが,特許庁は,平成18年8月29日 「本件審判の請求は,成り立たな ,い 」旨の審決をし,その謄本は平成18年9月8日原告に送達された。 。
2考案の内容本件実用新案登録は,請求項1〜4から成り,その考案(以下,各請求項に対応して「本件考案1」などといい,併せて「本件各考案」ということがある )の内容は,下記のとおりである。 。
記【請求項1】外カップ層,内綿層,定型管,肩紐,背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において,一体成型されており,且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と,一体成型であり,該外カップ層の外形に対応しており,カップ部及び背帯を含む該内綿層と,該外カップ層と該内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられている該定型管と,を含み,高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とする一体成型によるブラジャーの構造
請求項2】該外カップ層と内綿層の間のカップ部内側にはパットが設置されて胸部の張り出た感覚が強調されることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造
請求項3】高温によりプレスを経た後,該定型管個所の外カップ層及び内綿層間にはまだ貼合されていない欠け口が残されて,ワイヤが装入される個所が提供され,該ワイヤが装入された後には同様に高温でプレスされて該欠け口が貼合されることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造
請求項4】該型紐は高圧プレスによって該カップ部及び背帯一端上に貼合され,該背フックにおいては,高圧で背帯末端個所に貼合されていることを特徴とする請求項1記載の一体成型によるブラジャーの構造
3審決の内容審決の内容は,別添審決写しのとおりである。その理由の要旨は,本件各考案は,@下記の甲1,2に記載された考案(以下「甲1考案 「甲2考案」と」いう )であるとすることはできず(実用新案法3条1項3号 ,かつ,Aこ 。 )れらに基いて当業者がきわめて容易考案をすることができたともいえない(同法3条2項 ,また,B下記の甲3に記載された発明(以下「甲3発明」 )という )と同一の考案とすることもできない(同法3条の2 ,というもの 。 )であった。
記甲1:特開平10-88405号公報甲2:特開2000-34604号公報甲3:特開2002-201505号公報4審決の取消事由(1)取消事由1(本件考案1の認定の誤り)審決は,本件考案1の「一体成型」につき 「各々一つのものとして形づ ,くられている」ことに加え 「貼合するだけでブラジャーとなる程度に,カ ,ップ部がカップ状に成型されている」ことを意味しているとする(6頁5行〜6行 。)しかし,本件考案1の「一体成型」は,次に述べるとおり,それが「各々一つのものとして形づくられている」ことを意味するとは言いえても 「カ,ップ部がカップ状に成型されている」こと(すなわち,プレス前にカップ部がカップ状に立体化されていること)までは意味しない。
ア 「一体成型」についての審決の認定の誤り審決は,本件明細書(甲6)における効果欄の「…外カップ層及び内綿層は一体成型であるため,生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく,…見た目にも美しい製品が完成し,…」との記載(段落【0007,及び課題欄の「…公知構造のブラジャーにおいては,…縫製の過 】)程においては左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせなければならず,…」との記載(段落【0003 )を根拠として 「一体成型」の語が, 】,プレス前にカップ状に成型されることを意味するものとする(6頁19行〜21行 。)@しかし,まず「…高温によるプレスで貼合させるだけで…製品が完成…」の記載についてみると,プレス前にカップ状にされその後に貼合される場合と同様に,プレス工程において貼合とカップ部の立体化とが同時に行われる場合にも,左右カップ部と背帯とが一体でさえあれば「高温によるプレスで貼合させるだけで製品が完成」することに変わりはない。したがって 「高温によるプレスで貼合させるだけでよ ,く」との記載は 「一体成型」をプレス前にカップ状に立体化させる趣 ,旨と限定的に解すべき根拠とはなり得ない。
A次に 「左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる必要」の記載 ,についてみると,プレス前にカップ状にされその後に貼合される場合と同様に,プレス工程において貼合とカップ部の立体化とが同時に行われる場合にも,左右カップ部と背帯とが一体でさえあれば「左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる必要」を解消できる点に変わりはない。
すなわち 「左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる必要」と ,の技術的課題は,左右のカップ部と背帯とが「一体」か否かの問題であるから,内外層の貼合と立体化とが同時か否かの問題とは,そもそも本質的に無関係である。したがって課題欄の当該記載もまた 「一体,成型」をプレス前に立体化させる趣旨と限定的に解すべき根拠とはなり得ない。
Bしたがって,本件明細書(甲6)の「考案の効果」欄及びこれに対応する「考案が解決しようとする課題」欄の記載は,縫製の不要化を示唆するものではあっても,審決の言うようなプレス前の立体化を一切示唆していない。それにもかかわらず審決は,本件明細書(甲6)の段落【0007】の「…貼合させるだけでよく,…」と「…見た目にも美しい製品が完成し,…」とを,文脈を無視してあえて結合させた上で解釈したものであって,誤りである。
イ 「一体成型」の意義についての検討本件明細書(甲6)の実用新案登録請求の範囲欄には 「一体成型」の,意味内容を直接定義する記載はなく,カップ部がプレス前にカップ状に変形されることを要するかについて不明瞭である。したがって,その意義は明細書考案の詳細な説明及び図面の記載,ならびに出願時の技術常識を考慮して検討する必要がある。
@考案の詳細な説明欄及び図面の記載からの検討aところで,本件明細書(甲6)の考案の詳細な説明欄には 「一体,成型」の語義を直接定義する記載はなく,且つこれを説明ないしサポートする記載も全く存在しない。また,カップ部がプレス前にカップ状に立体化される旨の具体的記載自体が,明細書に全く存在せず,その示唆もないものである。
b一方,図面について見ると,図1には,平坦なカップ部111を有する外カップ層11,及び平坦なカップ部121を有する内綿層12が記載されているから,これら外カップ層11及び内綿層12はプレス前にカップ状に立体化されていないことが明らかである。同様に,図3はパット16を用いる実施形態の分解説明図であるが,パット16が立体的に描かれている一方,外カップ層11及び内綿層12は平坦に記載されているから,この実施形態においても外カップ層11及び内綿層12はプレス前にカップ状に変形されていないことが明らかである。
以上の図面の記載からみて,本件考案1における外カップ層及び内綿層の「一体成型」とは,それが「各々一つのものとして形づくられている」ことを意味するとは言い得ても 「カップ部がカップ状 ,に成型されている」こと(すなわち,プレス前にカップ部がカップ状に立体化されていること)までは意味せず,むしろ請求項1にいう「一体成型」された外カップ層・内綿層は,図1及び図3に示されるようにプレス前にカップ状に立体化されていないことを意味するか,少なくともプレス前にカップ状に立体化されていないものを含むというべきである。
cさらに,考案の詳細な説明中の「高温によるプレスで貼合させるだけでよく」及び「左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる必要」の各記載については,上記のとおり 「一体成型」をプレス前に ,立体化させる趣旨と限定的に解すべき根拠とはなり得ない。
A作用効果上の観点からの検討aまた,高温のプレスによる外カップ層と内綿層との貼合には,繊維を構成する樹脂の溶融を要するものであるところ,溶融温度であれば樹脂は当然に軟化するのであるから,高温によるプレス工程において貼合とカップ部の立体的な変形とを同時に行うのが1工程で済む点でむしろ合理的であり,これを敢えてカップ部の立体化を内外層で個別に行ってから,後工程で外カップ層と内綿層との貼合を行うとする審決認定の製法では,少なくとも外カップ層のカップ部の立体化,内綿層のカップ部の立体化,及び内外層の溶着の3工程を要するため,全体の工程数,エネルギー消費,及び製造装置の数は減少せず,むしろ増大することになる。このことは製品のコスト高を招き,本件明細書(甲6)の段落【0003】に「…低コストで見た目に美しく,着け心地のよい・・・ブラジャーの構造を提供する 」と記載された本件考案1の目的ないし課題と相容れないもので 。
ある。
すなわち,カップ部の立体化のみを事前に行って貼合を後に行うとする審決認定の製法は,貼合と立体化とを同時に単一工程で行う製法に比べて無駄が生ずるのみであって具体的な利点が見出せず,低コスト化を目的とする本件考案1において敢えてコスト高になるような不自然かつ不合理な解釈というほかないから,このような製法を前提として行われた点においても審決の本件考案1の要旨認定には誤りがある。
bまた,カップ部の立体化のみを事前に行って貼合を後に行うとする審決認定の製法では,既に立体化された外カップ層と内綿層とを正確に重ね合わせなければならないが,立体化された柔軟な布地を「しわ」を寄らせることなく相対的に位置決めし正確に重ね合わせて貼合する工程は少なくとも熟練を要するものと考えられ,不自然かつ不合理な解釈というほかない。したがって,このような不合理な製法を前提として行われた点においても審決の本件考案1の要旨認定には誤りがある。
cまた,そもそも「内綿層」との部材名称からみて,当該部材は綿(cotton)からなると解すべきところ,綿からなり化学繊維を含まない布地は,合成樹脂層などの他の層の支持なしには,変形によって得られた立体的形状を維持することが困難である。このことは,被服の製造についての一般文献の記載,例えば「…延伸又は縮退が可能でなければならないため,布地が編地であることが必須である;合成物の含有量が少なくとも65%なければならない( Carr。」「, and Latham's Technology of Clothing Manufacture」Third EditionRevised by David J. Tyler, Blackwell Science.〔甲17〕の237頁11〜13行抄訳)といった記載からも明らかである。また,本件考案1の内綿層が綿のほかに合成樹脂繊維を含有すると解しても,内綿層は肌に触れる部材として一定の柔軟性が要求されるから,そのような内綿層の立体形状の維持は,図1に記載のように中央にカップ部121から背帯122にわたる空隙を有する枠状の内綿層12にあっては困難であるし,これを外部からの支持なしに立体形状が維持できるほど硬質かつ肉厚に形成することは,製品の使用目的からみてあり得ないというべきである。したがって,内綿層の立体化を事前に行って貼合を後に行うとする審決認定の製法は,この内綿層が綿のみからなると解すればそもそも実施不可能であるし,綿に合成樹脂を含有すると解すれば製品として非現実的というほかないから,このような製法を前提として行われた点においても審決の本件考案1の要旨認定には誤りがある。
B要旨認定に方法的要素を考慮した点からの検討a審決は 「…その製造方法,製造手順の特定が製品としての物品の ,構造として何らの差異・痕跡を残さないものであるのであればまだしも,本件特徴構成のように,一体成型を行った2物品を貼合したことは,それが他の手順で作成された構造物品の構造として区別して認識されることは当然であり,これを物品の構造特定する構成とみることが通常である…」と認定している(7頁3行〜8行 。)bしかし,外カップ層及び内綿層のカップ部がプレス前すなわち事前に立体化されている場合と,貼合と同時に立体化される場合とで,結果物としてのブラジャーの構造は同一である。審決は,プレス前に立体化することで製品にどのような差異・痕跡が残るのか,どのように区別して認識されるのかを具体的に示していない。また,プレス前に立体化することの影響は,プレスに用いられる上型と下型との相対的な寸法関係やプレス時の相対変位方向,温度分布・圧力分布など,実施上の設計的事項によっていかようにも変化しうるものであって,少なくとも当該影響は,プレス前の立体化の有無自体から画一的に導出しうるような共通の固有の性質を有するものではない。
C一般的語義からの検討「一体成形」の語は当業者に普通に用いられているが 「一体成型」,の語は使用頻度が比較的低く,樹脂成形分野の文献(小川伸著「英和プラスチック工業辞典」昭和60年(1985年)6月10日株式会社工業調査会発行〔甲18 )にも,財団法人日本規格協会編「JI 〕S工業用語大辞典第5版」平成13年(2001年)3月30日財団法人日本規格協会発行〔甲19 )にも掲載されていない。 〕広辞苑第4版(甲20)によれば 「成型」は「成形」と同義であ ,って「形をつくること。形成 」を意味するが,その処理の結果物が 。
立体的な形状をなすものに限られるとの語義は有しないから 「成,型」の語が,その処理の結果物が平面的であるものを排除していないことは,少なくとも一般的語義において明らかである。
審決は 「成型」の語に含まれる「型」の文字が「鋳型 (mold)を , 」連想させること,及び,処理される対象物が一般に平面的な布地であることから 「一体成型」が布地に立体形状を付与する処理を指すも ,のと解したことが窺われる。しかしながら 「型」には鋳型のような ,流し型のほか 「打ち抜き型」のように,平面的な対象物を平面的な ,まま,その輪郭形状のみ所望の形状に変化させるものも多数存在するから 「型」の文字の存在を根拠に「成型」の語が立体形状を付与す ,るものに限られると解すべき理由はない。
以上のとおり 「一体成型」の語の一般的語義からみても 「成型」 , ,の語が立体形状を付与するものに限られると解した審決の本件考案1の要旨認定は誤りである。
(2)取消事由2(甲2考案の認定の誤り)審決は,表地を折り返して接合することを理由に,裏地は「表地の外形に対応した形状」ではないと認定する(13頁18行〜20行 。)しかし,このような構成は,社会通念上,裏地が実質的に「表地の外形に対応した形状」であるものと言いうるから,表地を折り返すことのみを根拠に裏地が「表地の外形に対応した形状」でないとする審決の認定には誤りがある。
(3)取消事由3(甲5の1,2の認定の誤り)審決は,甲5の1(実公昭53-3867号公報)及び甲5の2(実開昭62-44010号公報)について 「…甲第5号証の1〜2に,ブラジャ ,ーに係る技術として一体成型が記載されるが,何れも,本件特徴構成を示すものではない(16頁19行〜20行)とするだけで,周知技術として, 。」外カップ層や内綿層を一枚の布状片によってシームレスに形成する構造について具体的に認定しなかった誤りがある。
(4)取消事由4(甲4の1〜5の認定の誤り)審決は,甲4の1(実開昭54-54436号公報 ,甲4の2(実開昭)54-54437号公報 ,甲4の3(実用新案登録第3023567号公 )報 ,甲4の4(米国特許第3114374号明細書 ,甲4の5(米国特 ) )許第5873768号明細書)につき,周知技術として,定型管及びその配置について具体的に認定しなかった誤りがある。
(5)取消事由5(本件考案1と甲1考案の対比<一致点の認定,相違点の認定・判断>の誤り)審決は,前記(1)(取消事由1)のとおり本件考案1の要旨認定を誤ったことなどに起因して,本件考案1と甲1考案との対比(一致点の認定,相違点の認定・判断)を誤った結果,本件考案1が甲1考案に基づいて容易に想到することができないとしたものである。
(6)取消事由6(甲3発明の認定の誤り)審決は,甲3発明について 「…身頃構成部片は,前身頃2Aの身頃構成 ,部片3c1と,後身頃2Bの身頃構成部片3d1,3d2であるから,一体のものではなく,これらを接合シートにより接合したものであり,カップ部も,別体のカップ部11を接着するのであるから,一体成形により身頃構成部片に形成されたものではない(14頁下2行〜15頁3行)とするが, 。」かかる認定は,甲3(特開2002-201505号公報)の【図面の簡単な説明】の【図12【図13】の説明の欄,段落【0036】〜【00 】,38】の記載等に照らし,誤りである。
(7)取消事由7(本件考案1と甲3発明の同一性判断の誤り)審決は,上記カ(取消事由6)のとおり甲3発明の認定を誤ったことなどに起因し,本件考案1の「外カップ層」に相当する甲3記載の部材は,図12に示す身頃構成部片全体であることを見落とすなどした結果,本件考案1と甲3発明との同一性判断を誤ったものである。
第4被告は,公示送達による呼出しを受けたが,本件口頭弁論期日に出頭しない。
第5当裁判所の判断1請求原因1(特許庁における手続の経緯 ,2(考案の内容 ,3(審決の ))内容)の各事実は,証拠(甲1〜3,甲4の1〜5,甲5の1〜2,甲6〜14)及び弁論の全趣旨により,これを認めることができる。
2取消事由1(本件考案1の認定の誤り)について(1)本件考案1の内容は,前記第3,2に記載したとおりであり,これを分説すると,以下のとおりである(以下「構成A」などという 。)A.外カップ層,内綿層,定型管,肩紐,背フックより構成される一体成型によるブラジャーの構造において,B.一体成型されており,且つカップ部と背帯とを含む該外カップ層と,C.一体成型であり,該外カップ層の外形に対応しており,カップ部及び背帯を含む該内綿層と,D.該外カップ層と該内綿層との間のカップ部内側下縁に設けられている該定型管と,E.を含み,高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とするF.一体成型によるブラジャーの構造
(2)本件明細書(甲6)の記載ア本件明細書(甲6)の〔考案の詳細な説明〕には,以下の記載がある。
(ア)考案の属する技術分野本考案は一体成型によるブラジャーの構造に係り,特に高温によるプレスを施して一体成型されることより,低コストで外観が美しく,また着け心地の良いブラジャーの構造に関わる (段落【0001 ) 。】(イ)従来の技術現在ブラジャーは女性にとって胸を包む機能だけでなく,胸の形がよく見えること,また着け心地の良さ等が追求されている。
図6に示すような公知構造のブラジャー50においては,二つのカップ51の下方に下側部52を縫い付け,該下側部52の両側には背帯53を縫い付け,該背帯53には背フック531を縫い付け,更に肩紐54を縫い付けてブラジャー50がほぼ完成する。
このように,それぞれのパーツを縫い合わせることにより,公知構造のブラジャー50は,カップが立体的で円弧形を描いていることから胸を綺麗に見せると同時に,胸を理想の位置までアップさせる効果を提供している (段落【0002 ) 。】(ウ)考案が解決しようとする課題しかし上述のような公知構造のブラジャーにおいては,それぞれのパーツを裁断してから,人手によって縫製されるのであり,縫製の過程においては左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせなければならず,比較的難しい作業であることによりコストが必然的に高くなっている。
またこのようなブラジャーの使用においては,縫い跡のために着け心地が悪かったり,糸がほつれ易くて寿命が短い等の欠点もある。
そこでこれらの欠点に鑑み,低コストで見た目に美しく,着け心地のよい本考案の一体成型によるブラジャーの構造を提供する (段落【0。
003 )】(エ)課題を解決するための手段カップ部及び背帯を含み一体成型で製造されている外カップ層と,カップ部と背帯とを含み形状が該外カップ層の外形に対応しており且つ一体成型で製造されている内綿層と,該外カップ層と内綿層との間のカップ部内側下縁個所に設けられた定型管,並びに背フックと一対の肩紐とより構成し,高温によりプレスを施して該外カップ層及び内面層を緊密に貼合し,該肩紐及び背フックを高圧でブラジャー上に貼合する (段。
落【0004 )】(オ)考案実施の形態図1,2に示すように,本考案は主に外カップ層11と内綿層12,定型管13,肩紐14及び背フック15より構成されている。
該外カップ層11は一体成型されており,カップ部111と背帯112を含み,該内綿層12は該外カップ層11の外形に対応するべく一体成型されており,カップ部121及び背帯122を含む。また該定型管13においてはゴム質の空洞管であり,該外カップ層11と内綿層12との間のカップ部111,121内側下縁個所に設けられている。更に該外カップ層11と内綿層12との間のカップ部111,121内側にはパット16が設けられ (図3,4参照)該カップ部111,121 ,の突き出した感覚を強調している。
高温によるプレス処理が施されて,該外カップ層11と内綿層12が緊密に貼合し,該型紐14は高温によるプレス方式で該ブラジャー10のカップ部111,121及び背帯112,122の一端に貼合され,該背フック15は同様に高温によるプレスで該背帯112,122の末端個所に貼合される (段落【0005 ) 。】図5に示すように,プレスを経て貼合された外カップ層11及び内綿層12の内,定型管13個所の外カップ層11及び内綿層12間には,貼合されていない欠け口131が残されており,ワイヤ132を装入する個所を提供しており,該ワイヤ132が装入された後の該欠け口131は更にプレスが施されて貼合され,該ワイヤ132が該欠け口13から出ないように加工される (段落【0006 ) 。】(カ)考案の効果本考案によると,外カップ層及び内綿層は一体成型であるため,生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく,公知構造のように複雑な縫製作業を行わなくともよいことで不良品の出る率が下がり,同時に人件費が省かれることからコストが下がり,また完成時には縫製の跡が見えなくて着け心地もよく,当然糸がほつれる心配もなく,見た目にも美しい製品が完成し,使用上の寿命も長くなり,更にゴム質の定型管を採用したことにより,ワイヤの硬い感触を好まない使用者にとって着け心地がよく,しかも該定型管にワイヤを装入して胸部を固定する機能を提供することもできるなど,多くの目的が一挙に達成された (段落。
【0007 )】イ上記ア(ア)〜(カ)の各記載によれば,従来,二つのカップ・下側部・背帯・肩紐等のパーツを縫い合わせてブラジャーを完成させていたが,左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる作業が比較的難しいためにコストが高くなり,また,縫い跡のために着け心地が悪かったり糸がほつれ易くて寿命が短い等の欠点があったところ,本件考案1は,これらの欠点に鑑み,低コストで見た目に美しく,着け心地のよいブラジャーの構造を提供する(段落【0001】〜【0003 )もので,請求項1記載の構成を 】課題解決手段として(段落【0004,生産時には,一体成型された 】)外カップ層及び内綿層を高温によるプレスで貼合させるだけでよく,複雑な縫製作業を行わなくともよいことでコストが下がり,また完成時には縫製の跡が見えなくて着け心地もよく,当然糸がほつれる心配もなく,見た目にも美しい製品が完成し,使用上の寿命も長くなり,更にゴム質の定型管を採用すれば,ワイヤの硬い感触を好まない使用者にとって着け心地がよく,しかも該定型管にワイヤを装入して胸部を固定する機能を提供することもできるなどの効果を奏する(段落【0007 )ものとされている】ことが認められる。
(3)以上を前提として,以下判断する。
ア審決は 『…各々,一体であり,かつ,成型されている「外カップ層」 ,と「内綿層」とについて,請求項1の記載をみれば,E.には 「一体成,型された該外カップ層と内綿層」とが 「高温でプレスされて 「緊密に ,」貼合され」ることでブラジャーとなることを記載している。これは,段落番号【0007】に 「 考案の効果】本考案によると,外カップ層及び ,【内綿層は一体成型であるため,生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく,…,見た目にも美しい製品が完成し」と,明細書中に「一体成型」の意味を記載することと符合している。したがって 「外カップ,層」と「内綿層」とは,それぞれ一体であり,E.にある「高温でプレスされて 「緊密に貼合され」ることだけでブラジャーとなる程度に,それ 」ぞれ形作られていることを請求項1は特定している(5頁下12行〜。』下2行『…請求項1の記載は 「一体成型された該外カップ層と内綿 ),,層」とが,各々一つのものとして形づくられていることをB.C.に「一体成型」であると記載するものである。そのことは,B.のカップ部を有する外カップ層は,貼合するだけでブラジャーとなる程度に,カップ部がカップ状に成型されていると解することが通常の解釈であり,C.の「内綿層」も,貼合するだけでブラジャーとなる程度に外カップ層の外形に対応して成型されていると解される(6頁2行〜8行『…「一体成型」 。』),は,貼合させるだけで製品が完成するように,事前に成型されることを意図する用語として,本件明細書は,その意味を定めている(6頁19。』行〜21行『…本件請求項1に係る考案の一体成型によるブラジャー ),のこの本件特徴構成は,一体成型された,即ち,一体でありカップ部が成型された「外カップ層」及び一体でありカップ部が成型された「内綿層」を有し,それらを「高温でプレス」という手段で緊密に貼合された構造を意味するものである(6頁下9行〜下5行)と説示する。 。』イそこで,まず本件考案1の文言について検討する。
請求項1は,前記第3,2に記載したとおり,外カップ層の構造について,カップ部と背帯とが一体成型されたものであること(構成B ,内綿)層の構造について,カップ部と背帯とが外カップ層の外形に対応するように一体成型されたものであること(構成C ,及び,これらの接合構造に )ついて,高温でプレスされて緊密に貼合されていること(構成E)を要件としているから 「一体成型」については,各部材が複数の部材片に分か ,れるものではなく,左右等が「一体」であることを記載したものということができる。
しかし,本件考案1の構成E.「を含み,高温でプレスされて一体成型された該外カップ層と内綿層とが緊密に貼合されていることを特徴とする」との文言は,一体成型された外カップ層と内綿層との接合構造が,高温でプレスされて緊密に貼合されているものであると理解することはできるが,その文言の内容自体から見ても,これを超えて,外カップ層のカップ部が,高温プレスによる貼合の前にカップ状に成型されたものであるとか,内綿層が,貼合するだけでブラジャーとなる程度に外カップ層の外形に対応して成型されていることまで記載していると読み取ることはできず,「一体成型された外カップ層と内綿層」とが「高温でプレスされて 「緊」密に貼合され」ることでブラジャーとなることまで記載していると解することはできないというべきである。このことは 「一体成型」の一般的な ,意味内容について 「成型」とは,一般に「形を作ること。形成(広辞 , 。」苑第5版)を意味するものであるから,本件考案1の「一体成型」もかかる一般的な語義と同様に「一体」のものとしての形を作ることを意味すると解されるに止まることからも裏付けられる。
ウまた,本件明細書(甲6)の「 考案の効果】本考案によると,外カッ 【プ層及び内綿層は一体成型であるため,生産時には高温によるプレスで貼合させるだけでよく,…見た目にも美しい製品が完成し (段落【000」7 )との記載は,前記(2)ア(カ)に認定した段落【0007】の記載全体 】を読めば,一体成型された外カップ層と内綿層とが高温プレスで貼合されることにより,従来必要とされた二つのカップ・下側部・背帯・肩紐等のパーツを縫い合わせる作業を不要としたことに基づく効果をいうものであることが明らかであるから,本件考案1が 「一体成型された外カップ層 ,と内綿層」とが 「高温でプレスされて 「緊密に貼合され」ることでブ ,」ラジャーとなることを記載していることの裏付けとなるものではない。
また,本件明細書(甲6)には,左右の対称や位置などを注意深く縫い合わせる作業が比較的難しいためにコストが高くなることが従来技術の欠点として挙げられている(段落【0003。しかし当該記載も 「一体 】),成型」の文言が,上記イに記載したとおり,各部材が複数の部材片に分かれるものではなく左右等が「一体」であるという意味を有すると見ることと符合するとはいえるが,前記(2)ア(ウ)に認定した段落【0003】の記載全体を読めば,それを超えて,本件考案1が 「一体成型された外カッ ,プ層と内綿層」とが「高温でプレスされて 「緊密に貼合され」ることで 」ブラジャーとなることまで記載していることの裏付けとまでなるものとはいえない。
エまた,本件考案1の構成B.のカップ部を有する外カップ層が,貼合するだけでブラジャーとなる程度に,カップ部がカップ状に成型されていることについては,請求項1にも,本件明細書(甲6)の考案の詳細な説明にも何ら記載がなされていない。
かえって,図3をみると,外カップ層11のカップ部111,内綿層12のカップ部121がカップ状に成型された様子を示すものとは認められず,一見しただけでは,これらの部分は平面状にもみえるから,むしろ,貼合する際の高温プレスによってカップ状に成型されるものと解する余地もある。また,図1をみると,内綿層12のカップ部121は,枠状部分の内側に形成された単なる空間のようにもみえることからすれば,外カップ層,内綿層の「カップ部」とは,カップとなることが予定される部分と解する余地もある。
したがって,請求項1においては,外カップ層のカップ部が,高温プレスによる貼合の前にカップ状に成型されたものであるとか,内綿層が,「貼合するだけでブラジャーとなる程度に」外カップ層の外形に対応して成型されているということは,何ら特定されていないといわざるを得ず,本件考案1のB.C.E.の各構成は,外カップ層の構造について,カップ部と背帯とが一体成型されたものであること,内綿層の構造について,カップ部と背帯とが外カップ層の外形に対応するように一体成型されたものであること,及び,これらの接合構造について,高温でプレスされて緊密に貼合されているものであることを特定するにとどまり,それ以上の事項は特定していないというほかない。
オ以上によれば,審決が,前記アのように,本件考案1の構成について,一体であり「カップ部が成型された」外カップ層,及び,一体であり「カップ部が成型された」内綿層を有し,それらを「高温でプレス」という手段で緊密に貼合された構造を意味するものと認定したことは誤りというべきであるから,審決は,本件考案1の要旨の認定を誤ったものである。
(4)以上によれば,原告主張の取消事由1は理由がある。したがって,特許庁は,前記判示を前提として,改めて無効審判請求人たる原告主張の無効理由の有無について審理すべきである。
3結論以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由があり,その誤りが結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,その余の点について判断するまでもなく,審決は違法として取消しを免れない。
よって,原告の本訴請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 中野哲弘
裁判官 森義之
裁判官 田中孝一
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