• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

この判例には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ネ10001実用新案権侵害差止等請求控訴事件 判例 実用新案
平成20ネ10029実用新案権使用差止等請求控訴事件 判例 実用新案
平成15ワ13028実用新案権侵害差止等請求事件 判例 実用新案
平成18ワ1139不当利得返還等請求事件 判例 実用新案
平成18ワ1304意匠権侵害差止等請求事件 判例 実用新案
関連ワード 技術的範囲 /  出願経過 /  考案 /  請求項 /  実施例 /  数値限定 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 平成 17年 (ネ) 10115号 損害賠償請求控訴事件
控訴人グンゼ株式会社
訴訟代理人弁護士松本司
同 山形康郎
同 緒方雅子
被控訴人日 本写真印刷株式会社
訴訟代理人弁護士岡田春夫
同 辻淳子
同 森博之
同 中西淳
同 長谷川裕
補佐人弁理士植木久一
同 菅河忠志
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2006/09/12
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1本件控訴を棄却する。
2控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
全容
第1当事者の求めた裁判1控訴人(1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は控訴人に対し,10億円及びこれに対する平成15年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
2被控訴人主文同旨第2事案の概要控訴人は,「タッチスイッチ及びタッチスイッチ付ディスプレイ」の考案に係る実用新案権(昭和63年12月6日出願,登録番号第2148710号。
平成15年12月6日存続期間満了)を有していた。
控訴人は,被控訴人が遅くとも平成12年8月1日から製造販売しているパーム社製モバイル端末「Palmm100」用タッチスイッチ及び遅くとも平成14年3月1日から製造販売している同社製モバイル端末「Palmm130」用タッチスイッチ(以下,これらを併せて「被告物件」という。)が,いずれも,上記実用新案権に係る明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲請求項1記載の考案(以下「本件考案」という。)の技術的範囲に属し,被告物件の製造販売が上記実用新案権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,被控訴人が平成15年12月6日までに被告物件500万台を製造販売したことによる損害(実用新案法29条2項)10億円及び遅延損害金の支払を求めた。
原判決は,被告物件は,本件考案技術的範囲に属しないとして,控訴人の請求を棄却したため,控訴人は,これを不服として,控訴を提起した。
1当事者の主張は,次の2及び3のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」の「第2事案の概要」の「1前提となる事実」「2争点」のとおりであるから,これを引用する。
当裁判所も,上記の「本件考案」,「本件明細書」等のほか,「構成要件CA」,「1982年JIS規格」などの語を,原判決の用法に従って用いる。
2控訴人の当審における主張の要点(1) 原判決は,本件考案の構成要件CAにおいて,基板の凹凸の平均粗さを「0.5〜50μm」としていることについて,1982年JIS規格(甲7,乙1。以下「甲7」のみを表示する。)における「区間表示」すなわち,同規格の「3.6.4十点平均粗さの区間表示」の項に,「十点平均粗さをある区間で指示する必要があるときは,その区間の上限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さい方)に相当する数値を表6から選んで併記する。」とされている表示と解し,「上限50μmRz,下限0.5μmRzとして十点平均粗さの区間が指示されているもの,すなわち‥‥‥基準長さ8mmで測定した十点平均粗さが50μm以下であり,基準長さ0.25mmで測定した十点平均粗さが0.5μm以上であることを意味するものと解すべきである」(原判決14頁9行〜13行)としている。
(2) しかし,1982年JIS規格にいう「区間表示」とは,「‥‥‥その区間の上限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さい方)に相当する数値を表6から選んで併記する」ものであり,「例1:‥‥‥上限6.3μmRz,下限1.6μmRzのときの区間表示は(6.3〜1.6)Zと表示する。‥‥‥」とされているのであるから(1982年JIS規格「3.6.4」の例1。甲7の7頁20行〜21行),仮に本件考案の構成要件CAのRz値が,1982年JIS規格にいう「区間表示」を意味するのであれば,その表記は「(50〜0.5)Z」とされるべきものであるが,請求項1には,「0.5〜50μm」としか記載されていない。また,1982年JIS規格では,上限と下限に相当する数値は「表6から選んで併記する」と説明されているが,「表6」の数列中の数字には構成要件CAのRz値の上限値「50」は存在するものの,下限値「0.5」は存在しない。「区間表示」とは,「基準長さ」の指定を伴う表記方法であるから,上記した1982年JIS規格の規定する形式で表記されていなければならないが,本件考案請求項1の記載(表記)は「0.5〜50μm」であるから,「区間表示」でなく,原判決の認定が誤っていることは明白である。
(3) 本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」については,1982年JIS規格及び同規格制定当時(昭和57年)の技術常識に照らせば,対象物の表面の相当長い断面曲線をとって,その断面曲線からRz値を推定し,該Rz値に対応する「基準長さ」を同規格の表5から決定し,その「基準長さ」だけの部分を断面曲線から抜き取り,Rz値を算出したものが,「0.5〜50μm」の間にあることを意味するものである。
すなわち,1982年JIS規格の解説には,基準長さの抜き取り方法に関して,「‥‥‥実際の測定では測定される表面全体としての表面粗さを求めたいわけである。このような場合は,まず断面曲線を基準長さより相当長く,できれば表面の数箇所でとる。その断面曲線の中できずのような大きな山又は谷があるとか,曲線が全体として曲がっているような部分は避けて,平らな部分を目測によって計算結果としての表面粗さが大体の平均値になりそうな部分から基準長さだけの部分を抜き取る。この断面曲線の抜き取り部分で,Rmax又はRzを求める。特に,表面粗さが小さく出そうな所を抜き取ってはならない。‥‥‥」(甲7の13頁末行〜14頁4行)と記載されている。
また,Rz値を測定するに当たって,上記のような方法によるべきことは,博士作成の「0601 1982 表面十点平均粗さRzの測定に関する回NJIS B-答」と題する書面(甲16の1)及び博士作成の「0601 1982 表面 TJIS B-粗さ測定方法に関して」と題する書面(甲17)によっても,明らかである。
(4) 仮に本件考案の構成要件CAの「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」を,原判決のように1982年JIS規格の「区間表示」と解すると,本件考案実施例1のRzを「5μm」とした基板(本件明細書(甲2)5欄42行〜43行),実施例2のRzを「3μm」とした基板(同6欄12行)を使用した構成も,本件考案実施例ではなくなる可能性が出てくることになる。すなわち,「0.5〜50μm」が1982年JIS規格の「区間表示」であるなら,「例2:上限と下限の基準長さの標準値(表5)が異なる場合」(甲7の7頁)であるから,50μmに対応する基準長さ8mmで測定した結果が50μm以下で,0.5μmに対応する基準長さ0.25mmで測定した結果が0.5μm以上であることを意味するが,これは,基準長さ8mmと0.25mmの2個の「基準長さ」しか測定に使用しないことを意味することでもある。換言すれば,「0.8μm超で6.3μm以下の範囲内のRz」に対応する基準長さ0.8mm,及び,「6.3μm超で25μm以下の範囲内のRz」に対応する基準長さ2.5mmは測定に使用しないことを意味する。
一方,Rzとは「十点平均粗さは,断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において,平均線に平行,かつ,断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。」(甲7の5頁)のであるから,基準長さの範囲内で山谷が5個以上ずつ存在しなければならない。例えば,本件明細書実施例として挙げられている「5μm」及び「3μm」は,「0.8μm超で6.3μm以下」の範囲内のRzであるから,基準長さは0.8mmを標準値としているため,0.5μmのRz(0.8μm以下のRz)の基準長さ0.25mm内には山谷は5個以上ずつ存在するとは限らず,Rzは求められないことになってしまうのである。
すなわち,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」の記載を「区間表示」と解釈することは「0.8μm超6.3μm以下」及び「6.3μm超25μm以下」のRzにつき,対応しない基準長さ0.25mmで測定することを意味し,実施例1及び2で掲げられた「5μm」及び「3μm」のRzも,本件考案技術的範囲に属さないかのような結果を導くことになるのである。
(5) したがって,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」とは,1982年JIS規格にいう区間表示ではなく,控訴人主張の測定方法による数値と解釈しなければならない。
これを具体的にいうと,@0.5μm以上で0.8μm以下のRzの基板とは,基準長さ0.25mmで測定したRzが,例えば0.6μmの基板,A0.8μm超で6.3μm以下のRzの基板とは,基準長さ0.8mmで測定したRzが,例えば3μm,5μmの基板,B6.3μm超で25μm以下のRzの基板とは,基準長さ2.5mmで測定したRzが,例えば10μmの基板,C25μm超で50μm以下のRzの基板とは,基準長さ8mmで測定したRzが,例えば30μmの基板を意味するのである。
(6) 本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」を控訴人主張の測定方法による数値と解釈しなければならないことは,Rz値と本件考案の作用効果との関係からも明らかである。
すなわち,そもそもRz(十点平均粗さ)とは「山谷の平均標高差」のみを要素とする概念ではなく,「山谷の密度」をも要素とする概念である。そして,本件考案においては,この山谷(凹凸)の平均標高差と密度を限定すること,すなわちRzの範囲を限定する構成を採用することで,所定の作用効果を奏するのである。以下,詳述する。
Rz(十点平均粗さ)とは,「‥‥‥断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において,平均線に平行,かつ,断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。」(1982年JIS規格。甲7の5頁)のであるから,基準長さの範囲内に山谷が5個以上ずつ存在しなければならない。
例えばRzが「0.6μm」である場合は,対応する(標準)基準長さ0.25mmの範囲内に5個以上の山谷を有することを意味する。すなわち,1mm間隔で20個ずつ以上の山谷(凹凸)が存在することを前提としている。
これを山谷の「密度」(20個/mm以上)と表現すれば,Rzとは,山谷の平均標高差だけではなく,山谷の密度をも要素とする概念である。
したがって,本件考案の「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」とは,@Rzが「0.5μm以上で0.8μm以下」(基準長さ0.25mm)のRz,例えばRzが「0.6μm」とは,山谷の平均標高差0.6μm山谷の密度20個/mm(5/0.25)以上ARzが「0.8μm超で6.3μm以下」(基準長さ0.8mm)のRz,例えばRzが「3μm」とは,山谷の平均標高差3μm山谷の密度6.25個/mm(5/0.8)以上BRzが「6.3μm超で25μm以下」(基準長さ2.5mm)のRz,例えばRzが「10μm」とは,山谷の平均標高差10μm山谷の密度2個/mm(5/2.5)以上CRzが「25μm超で50μm以下」(基準長さ8mm)のRz,例えばRzが「30μm」とは,山谷の平均標高差30μm山谷の密度0.625個/mm(5/8)以上を意味する。
山谷の平均標高差が大きくなれば(例えば「0.6μm」から「3μm」になれば),山谷の密度は低くなる(「20個/mm」から「6.25個/mm」になる)という関係にある。
そして,例えば,平均標高差「0.5μm」の山谷が,0.25mmの基準長さ内に5個以上存在するから,換言すれば,山谷の密度は「20個/mm」以上であるから,明縞の発生本数が最も少ない波長830nm(0.83μm)の赤い光でも,5個の山谷で,最低でも10本(なお最高は20本)の明縞が発生する。この場合でも,明縞の平均間隔は25μm(0.25mm/10)となり,人間の目の識別可能距離(分解能力)である75μmより小さいため,各明縞は区別できないことになるのである。
このことは,本件考案のRzの範囲である「0.5〜50μm」の,いずれの場合であっても当てはまり,山谷の平均標高差と山谷の密度の関係で,発生する各明縞は区別できないことになり,本件考案の作用効果を奏するのである。すなわち,本件考案の作用は,Rzの山谷の平均標高差のみで奏するのではなく,もう1つの要素であるRzの山谷の密度が関係するのである。
(7) 控訴人は,昭和57年以降平成5年出願分までの公開公報を調査した結果,Rzの範囲を規定した公開公報として合計90件を得た(平成6年以降は,1982年JIS規格(JIS-82)の改定版であるJIS-94が適用されるからである。)。このうち,1982年JIS規格の適用が明記されているか,あるいは適用される可能性のあるものは80件であったが,この80件の中には,1982年JIS規格で「区間表示」の表示として説明されている「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」とする表示で,かつ,【大きい数字】も【小さい数字】も表6の数字を使用した表示は存在しなかった。【大きい数字】を先に,【小さい数字】を後に記載し,かつ,両方の数字とも表6の数字を使用した公報は2件のみで,他の公報はいずれも【小さい数字】を先に,【大きい数字】を後に記載したものであり,また,上下限とも表6の数字を使用している例はなかった。
被控訴人は,区間表示と数値限定との2種類があるとすれば,被控訴人の調査した昭和56年から平成17年に公開された公開公報では,両方の表記が存在するはずであるのに,「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」と記載されたものが存在しなかったから,本件考案の場合も区間表示である旨主張する。しかしながら,公開公報には必ず2種類の表記が存在するとはいえないばかりか,調査結果が1種類しかないとすれば,区間表示かそれとも控訴人主張の測定方法による数値かは不明なはずである。むしろ,1982年JIS規格に規定する形式の表示がないなら,控訴人主張の測定方法による数値であって,区間表示を記載した例ではないと解するのが通常の結論である。
(8) そして,1982年JIS規格及び同規格制定当時(昭和57年)の技術常識に基づくなら,被告物件のRz値を測定する「基準長さ」は,原判決の認定した0.25mmではなく,0.8mmとしなければならなかったのである。
すなわち,博士は,原審での鑑定嘱託の資料(断面曲線)からすれば,N被告物件のRz値算出のための「基準長さ」は0.8mmであるとしている(甲16の1)。
なお,控訴人が原審において主張した「基準長さ」の決定に予備測定を採用する手順(甲14),すなわちRz値が予測できない被測定面の場合は,表5の「基準長さ」とされている「0.25」,「0.8」,「2.5」,「8」及び「25」のうちの,中央の値である「2.5mm」からその3倍の長さである2.5〜7.5mm程度の長さで予備測定を行い,この予備測定されたRz値から基準長さを決めるという手順も,相当長い断面曲線をとり,その断面曲線の平均値になりそうな部分からRz値を推定して「基準長さ」を決定するという,1982年JIS規格の方法及び博士の説明とN符合(むしろ,より正確性が高い。)するものであるところ,原審の鑑定嘱託における基準長さ2.5mmにおける測定結果を予備測定として使用すれば,その「基準長さ」は,「0.8mm」となる。次のとおり,いずれのサンプルも「0.8μmRz」を超えるが「6.3μmRz」以下の値を示しているからである。
サンプル.(1)1.227Noサンプル.(2)1.409 Noサンプル.(3)1.607 Noサンプル.(4)1.269 Noサンプル.(5)0.968 Noサンプル.(6)1.158 Noサンプル.(7)1.325 Noサンプル.(8)1.409 No(9) そして,基準長さ0.8mmにおける被告物件の各サンプルのRz値は下記のとおりであり,いずれも本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」の範囲内である(なお,サンプル.(7)の5つの測定点のうち,とNo A以外のすべての測定点で山谷は各5個以上存在している。)。 Eサンプル.(1)0.825 Noサンプル.(2)1.039 Noサンプル.(3)0.896 Noサンプル.(4)0.863(2回目の測定) Noサンプル.(5)0.698 Noサンプル.(6)0.760 Noサンプル.(7)0.663 Noサンプル.(8)0.851 No(10)よって,基準長さを0.25mmとして,被告物件のRz値は「0.5〜50μm」の範囲内にはないと判断した原判決は誤りである。
3被控訴人の当審における主張の要点(1) 本件考案の構成要件CAの「基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」との記載が1982年JIS規格の区間表示を意味することは,1982年JIS規格の記載内容,十点平均粗さが基準長さにより大きく変動するという性質を有していること,本件考案の作用効果(下限値である0.5μmの有する技術的意義)等の観点から明らかである。そして,被控訴人の主張の正当性は特許(実用新案登録)請求の範囲における十点平均粗さの範囲の指示の記載の実務によって実証されている。以下,これらについて詳述する。
(2) 1982年JIS規格の「3.6.2」及び「3.6.4」(甲7の7頁)には,ある測定対象物の十点平均粗さが,ある範囲で指示された場合に,その範囲にあるか否かを判断する際の判断方法について明確に記載されている。
すなわち,上限と下限に対応する基準長さの標準値が異なる場合には,@上限に対応する基準長さで測定を行い,当該基準長さに基づく十点平均粗さが上限値以下であること,かつ,A下限に対応する基準長さで測定を行い,当該基準長さに基づく十点平均粗さが下限値以上であることのそれぞれを充足する必要がある旨述べられている(「3.6.4」の例2)。さらに,上限と下限の基準長さの標準値が異なる場合であっても同じ基準長さを用いる場合には,かかる旨を明記するように記載されている(「3.6.4」の備考1)。
本件明細書の実用新案登録請求の範囲には,「基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm‥‥‥」と記載されているものであって,これは,正にある測定対象物の十点平均粗さが,ある範囲で指示された場合にほかならないから,1982年JIS規格の区間表示の記載に基づき,当該区間表示の要件を充たすか否かを判断すべきである。
本件考案の構成要件CAの十点平均粗さの下限は0.5μmで,上限は50μmであって,下限値と上限値の基準長さの標準値が異なる場合に該当するところ,本件明細書には,同じ基準長さを用いて十点平均粗さを求める旨は一切記載されていない。したがって,本件においては,下限値0.5μmに対応する基準長さの標準値である0.25mmを基準長さとして十点平均粗さを算出し,当該十点平均粗さが0.5μm以上であること,上限値50μmの基準長さの標準値である8mmを基準長さとして十点平均粗さを算出し,当該十点平均粗さが50μm以下であることのそれぞれを充足するかについて判断をすべきである(なお,本件訴訟においては,被控訴人は上限値の充足性については特に争っていないため,下限値のみの問題となる。)。
以上述べたとおり,1982年JIS規格を素直に読めば,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」との記載は,同規格の区間表示を意味すると解すべきである。
(3) この点に関して,控訴人は,本件考案の構成要件CAのRz値が1982年JIS規格の区間表示を意味するなら,その表記は「(50〜0.5)Z」と大きい数字から小さい数字の順に記載されるべきであり,また,標準数列が用いられるべきであるなどと主張する。
しかし,大きい数字から小さい数字の順に記載したもの以外は区間表示でないと解すべき合理性は全くないし,1982年JIS規格においても,そのような順番を要求するものとは読めない。また,標準数列についても,当該数字のみを使う旨規定されているのではなく,特に必要がある場合には標準数列以外の数値を使用する旨が述べられているのである。本件考案においては,極めて狭い間隔で多数の干渉縞を発生させるという作用効果の観点から標準数列以外の0.5μmという数値が指定されているのであって,標準数列の数値が用いられていないのは極めて当然であり,何ら1982年JIS規格の記載に反するものではない。
被控訴人の上記主張が正しいことは,後述するように,678件の公開公報の特許(実用新案登録)請求の範囲の記載において,標準数列の数値を用いているか否かの点を不問にしても,控訴人が区間表示の記載方法であると主張する「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」と記載されたものが,1件たりとも存在していないことからも明らかである。
(4) 次に述べるとおり,十点平均粗さにおける範囲の指示は,区間表示の考えに基づく必要がある。
(ア)1982年JIS規格の解説には,基準長さが大きくなれば十点平均粗さも大きくなる旨及び基準長さは測定の目的によって異なるべきである旨が明確に述べられている(解説「4.1」及び「5.3」。甲7の12頁12行〜20行,13頁24行〜30行)。
また,基準長さが大きくなれば十点平均粗さも大きくなることは,技術的な面からも明らかである。すなわち,十点平均粗さは,基準長さの全領域を測定した上で,最も高いものから順に5つの山頂と最も深いものから順に5つの谷底をそれぞれ採って平均するものであり,基準長さが長ければ長いほど,平均の対象となる5点の山頂と谷底につき,より高い山頂とより深い谷底を選択することができるようになるものであるから,当然その平均値である十点平均粗さも大きくなるのである。
このことは,原審における鑑定嘱託の結果からも,実証される。すなわち,同鑑定嘱託におけるサンプル1において,基準長さが0.25mm,0.8mm,2.5mm,8mmと長くなるにつれて,十点平均粗さも0.231μm,0.825μm,1.227μm,1.562μmと大きくなっており,その変動の度合いも極めて大きいものがある。そして,同鑑定嘱託における他のサンプルも,すべて,同様に基準長さが長くなるにつれて十点平均粗さが大きくなるという結果を示しているのである。
このように,1982年JIS規格の記載,技術的理由及び鑑定嘱託の結果から,十点平均粗さは,基準長さが長くなればなるほど,大きくなるものであることが明らかである。
上記のとおり,十点平均粗さは基準長さにより大きくその数値が変動するため,下限値と上限値にそれぞれ対応する基準長さの標準値が同一である場合を除き,十点平均粗さがある範囲に入っているか否かを確認するには,上限値に対応する基準長さにおける十点平均粗さが上限値以下であり,下限値に対応する基準長さにおける十点平均粗さが下限値以上であることを確認するという,基準長さがあらかじめ確定されている方法によるしかない。だからこそ,1982年JIS規格は,十点平均粗さにおいて範囲の指示があった場合には,かかる方法により判断する旨を明記しているのである。
(イ)区間表示の考えによるべきであるとの上記結論は,数値限定における上限及び下限の有する意味からも当然の帰結といえる。
すなわち,A≦x≦Bというのは,@A≦x作用効果Xに対応Ax≦B作用効果Yに対応を一般的に意味するものであって,@及びAのそれぞれの充足が重要であることを意味している。よって,@及びAのそれぞれを充足しているか否かを確認する必要がある。
さらに,@の数値以上であることの意味(作用効果Xとの関連),Aの数値以下であることの意味(作用効果Yとの関連)が異なる場合には,それぞれ異なる意味(作用効果)との関係から来る限定であるため,それぞれの条件を充足しているか否かの確認がとりわけ必要となる。
既に述べたように,1982年JIS規格の解説の「4.1」において,「基準長さは,測定の目的によって異なるべきであるという考え方をとっている」(甲7の12頁13行)と明示されているが,正にこの観点に立てば,上記に述べた区間表示の考え方に従うべきであることは当然の帰結となる。
本件において,上記@,Aの技術的意味について検討するに,@の0.5μm以上であることの技術的意味は,後述のとおり,「光の干渉縞が極めて狭い間隔で多数発生していることになり,人間の目で見た場合,判別できなく,干渉縞が発生していないと同じこととなる」との作用効果に関連する(本件明細書5欄25行〜31行参照)。すなわち,光の干渉縞を極めて狭い間隔で多数発生させるためには,十点平均粗さが0.5μm以上であることが必要であるという点にある。他方,Aの技術的意味については,基板の電極間で短絡が生じないように50μm以下であることが必要であるという点と考えられる(本件明細書4欄12行〜14行参照)。
このように,本件考案数値限定は,上限と下限で異なる理由(作用効果)により設けられている。したがって,本件考案においても,@の数値以上であること,Aの数値以下であることの確認がそれぞれ必要かつ絶対であり,本件で争いとなっているのは,@の数値の充足の有無,すなわち,@の数値以上であるか否かが重要なのであるから,当該数値に対応する基準長さで十点平均粗さを測定し,当該十点平均粗さの数値が@の数値以上か否かをみるべきであることは当然である。すなわち,@の数値限定の持つ意味(作用効果)からすれば,とりわけ上記に述べたように,基準長さ0.25mmで行うべきなのである。
このように,数値限定のもつ技術的意味からしても,区間表示の考えに沿って判断すべきであることが明確に裏付けられる。
(5) 上記のうち,Rz値が0.5μm以上であることの技術的意味を,本件考案の作用効果との関連で詳述する。
本件明細書においては,〔作用〕欄及び〔考案の効果〕欄において,以下に指摘するように,本件考案の技術的意義が光の干渉縞を極めて狭い間隔で多数発生させ,人間の目で干渉縞を見えなくすることであることが明確に記載されており,また,出願経過において,「本願考案では,数μmのオーダーで凹凸があるため,1/2波長の数十倍になり,光の干渉縞が極めて狭い間隔で多数発生,例えば100μm(=0.1mm:被控訴人が記入)の幅の間で20本発生していることになる」旨述べられており(乙4の4,4頁下から3行〜5頁1行参照),十点平均粗さが0.5μm以上であるか否かは,光の干渉縞が極めて狭い間隔で多数発生しているか否かの作用効果と直接関連するメルクマールであり,その幅も重要である旨述べられている。
このように,本件考案は,ある幅において,一定の凹凸があることを前提にして,極めて狭い間隔で多数の干渉縞を発生させる点に作用効果がある旨明示しており,「いかなる幅」に一定の凹凸があるのかが重要である。
そして,被控訴人が主張する区間表示の考えによった場合には,本件考案の構成要件CAの技術的意味は,基準長さ0.25mmという一定の幅において,5つ以上の凹凸が平均して0.5μm以上の高さを有するか否かを判断することになり,本件考案の極めて狭い間隔で多数の干渉縞を発生させるという作用効果に直接関連することが明らかである。
このような本件考案の作用効果(技術的意義)の観点からは,仮に本件考案の構成要件CAの「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」の記載が厳密な意味で1982年JIS規格の区間表示ではないとしても,本件考案の下限値(0.5μm)の充足の有無については,いずれにしても0.25mmを基準長さとして測定した数値を用いるべきである。
(6) 本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」との記載が1982年JIS規格の区間表示を意味するとの被控訴人の主張は,実用新案の考案の創作の実務に照らせば,実施例として控訴人が指摘する特定の数値が記載されていることと何ら矛盾するものではない。
すなわち,本件考案は,まず,ある特定の条件下で,ある透明電極付基板の凹凸の十点平均粗さが「約3μm」(本件明細書6欄12行)や「約5μm」(本件明細書5欄43行)であるものにおいて,干渉縞が人間の目で見えないことをまず発見し,その後,本件考案技術的範囲の外延を確定すべく,本件考案請求項において,下限値を0.5μmまで拡げるとともに,上限値を50μmまで拡げ,その過程で本件考案の技術的意義が確定され,考案が完成したものと考えられる。逆に言うと,本件考案技術的範囲の外延を確定するに際し,十点平均粗さが,0.5μm未満の場合には,極めて狭い間隔で多数の干渉縞を発生させ干渉縞を見えなくするという作用効果が得られず,50μmを超える場合には,基板の電極間で短絡が生じる問題があることが分かり,本件考案技術的範囲が確定し,考案が完成したものと考えられる。
その結果,完成した本件考案は,基準長さ0.25mmで,十点平均粗さが0.5μm以上であり,かつ,基準長さ8mmで十点平均粗さが50μm以下である透明電極付基板となり,その技術的範囲が確定したものである。
このような過程を経て本件考案が創作されたと考えられるのであって(数値による限定を含む考案は,このようにして考案技術的範囲の外延が確定し,考案が完成する場合が多々あると考えられる。),実施例において控訴人が指摘する特定の数値が記載されているからといって,本件考案が「0.5〜50μm」のようにある範囲で特定され,完成した以上,被控訴人の主張する区間表示等の解釈を妨げるものでは全くない。
(7) 十点平均粗さが範囲で指示されている場合には区間表示の考えによるべきであるとの被控訴人の主張が正しいことは,被控訴人が行った特許(実用新案登録)請求の範囲の記載方法の実務に関する調査結果からも明確に裏付けられる。
被控訴人において昭和56年〜平成17年の公開公報(より多くのサンプルを集めるために,実用新案に加え特許も含めた。)について,「Rz」及び「十点平均粗さ」という語句で明細書の全文の検索を行ったところ,当該語句が含まれている明細書の中で「上限値及び下限値」が,「特許(実用新案登録)請求の範囲」に記載されているものは678件存在した。これらについて,特許(実用新案登録)請求の範囲に,控訴人が主張するような「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」と表示されているものが存在するかどうか確認を行ったが,そのような記載がされたものは1件も存在しなかった(なお,控訴人は区間表示というためには,さらに,標準数列にある数字を用いることが必要であるとしているが,この点の充足の有無を考慮しなくとも,結果は同じであった。)。この調査結果は,被控訴人の「十点平均粗さが範囲で指示されている場合には,区間表示の考えによるべきである」という主張を正に裏付けている。
すなわち,十点平均粗さがある範囲で指示された場合に,ある対象物の十点平均粗さがその範囲内にあるか否かを判断する際に,1982年JIS規格の区間表示の方法で確認する方法と控訴人主張の測定方法の2種類があり得るとすれば,当然「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」と記載されたものと「○〜△μm」と記載されたものの2種類の記載が,それぞれ相当数存在するはずである。これに対し,被控訴人が主張するように区間表示の考えが必然であるとすれば,2種類の記載がそれぞれ相当数存在することにはならないはずである。そして,被控訴人の公開公報の調査結果によれば,十点平均粗さがある範囲で指示された場合において,「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」と記載されたものは678件中に1件も存在しなかったのである(なお,「(△【小さい数字】〜○【大きい数字】)Z」との記載も678件中1件たりとも存在しなかった。)。このように,「(○【大きい数字】〜△【小さい数字】)Z」及び「(△【小さい数字】〜○【大きい数字】)Z」という記載が1件も存在しなかったことは,控訴人の主張が誤りであり,被控訴人の主張(十点平均粗さが範囲で指示されている場合には区間表示の考え方によるべきである。)が正しいことを正に裏付けているのである。
(8) 控訴人は,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」につき,予備測定として対象物の表面の断面曲線からRz値を推定し,該Rz値に対応する「基準長さ」を1982年JIS規格の表5から決定し,その上で本測定として当該「基準長さ」だけの部分を断面曲線から抜き取り,Rz値を算出したものが,「0.5〜50μm」の間にあることを意味すると主張する。
しかし,控訴人の主張は,1982年JIS規格の記載に基づくものではなく,また本件明細書及び本件考案出願経過のどこにも記載されていないものであり,本件考案の出願時における技術常識でもない。
控訴人は,あたかも控訴人主張の測定方法が1982年JIS規格に記載されているかのように主張するが,控訴人主張の測定方法は同規格に記載されたものではない。1982年JIS規格は,単に,十点平均粗さを測定する際に,表面粗さが小さく出たり大きく出そうな箇所ではなく大体の平均的な値になりそうな部分を抜き出すように述べているのみであり,控訴人の主張するような測定方法については何ら言及していない。かえって,1982年JIS規格の解説「5.3」には,基準長さに関する記載として,「‥‥‥今までのところ,各種加工面に対し,どのような基準長さを採ればよいのかということについては定説もないので,‥‥‥」(甲7の5頁32行)と記載されており,基準長さの決定方法には定説がないことが明記されているのである。
本件明細書には,基板の凹凸の平均粗さを十点平均粗さとして測定する際の基準長さにつき,全く記載がなく何らの指定もない。このことは原判決の認定するとおりであり,控訴人の主張は,本件明細書の記載に基づくものでもない。また,本件考案出願経過における資料(乙4の1ないし18)においても,基準長さの設定方法等についての記載は一切存在しない。
このように,控訴人の主張が1982年JIS規格の記載や本件明細書の記載に何ら基づくものではないことから,控訴人は,博士や博士作成NTの書面(甲16の1,甲17)を提出して,控訴人の主張内容が,あたかも1982年JIS規格の制定当時の技術常識であったかのように見せかけようとしている。しかし,控訴人の主張内容が技術常識ではないことは,上記のとおり,1982年JIS規格の解説「5.3」に「各種加工面に対し,どのような基準長さを採ればよいのかということについては定説もない」と明記されていることに加えて,第1審,控訴審を通じて控訴人の基準長さに関する主張内容が大きく変遷していること,さらに次に述べるとおり控訴人の主張内容が不合理であることに照らせば,明らかである。
すなわち,控訴人の主張する予備測定により基準長さを決定するという方法は,1982年JIS規格にも本件明細書にも何ら記載がないものである。
また,基準長さにより十点平均粗さが大きく変動するものであることに照らせば,当該予備測定により算出される十点平均粗さも大きく異なる数値が算出される可能性が高く,当該数値に基づき決められる基準長さも極めてあいまいなものとなるといわざるを得ない。
現に,原審における鑑定嘱託の結果によれば,基準長さ0.8mmにおける被告物件の各サンプルのRz値は,サンプル.(5),(6),(7)についてはNoいずれも0.8μm未満であるから,控訴人の主張に従えば,これらのサンプルについては,基準長さを0.25mmとしてRz値を再度測定しなければならないはずである(控訴人は,原審においては,予備測定により決定された基準長さに基づく本測定によるRz値が当該基準長さに対応するRz値の範囲に入っていなかったとしても,当該Rz値を最終的な測定値として用いると主張していたが(原審における原告第5準備書面4頁),控訴審に至って,前記2(5)のとおり主張を変更した(控訴審における控訴人第3準備書面3頁,第3準備書面の訂正書1頁〜4頁,第4準備書面1頁〜3頁))。
そして,基準長さを0.25mmとしてRz値を測定すれば,これらのサンプルについては,Rz値が「0.5〜50μm」を充たさない結果となることは原判決の判示するとおりである。この点からみても,控訴人主張の測定方法が不合理であることは明らかである。
(9) 控訴人は,控訴審に至って,突然,本件考案の作用効果を各明縞の平均間隔や山谷の密度と関連付けて主張することで,控訴人主張の測定方法を根拠付けようとしている(前記2(6)参照)。しかし,「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」という本件考案の要件が,控訴人の主張するような各明縞の平均間隔や山谷の密度に基づくものであることは,本件明細書に一切記載も示唆もないことはもちろん,出願経過においても全く指摘も示唆もされていない。控訴人の主張は,考案の内容を第三者に開示することの対価として独占権が付与されるという実用新案権の本質を忘れた主張であり,理由がないことは明らかである。
仮に,控訴人主張のような理由により,本件考案において構成要件CAの「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」と規定されているというのであれば,当該事項は全く明細書に記載も示唆もされていないから,明細書のサポート要件(実用新案登録を受けようとする考案は,詳細な説明に記載した考案であることを要すること)を充足せず,本件考案は無効事由を有することになる(平成2年法律第30号による改正前の実用新案法5条4項1号,37条1項3号)。
第3当裁判所の判断1当裁判所も,控訴人の請求は理由がなく,棄却すべきものであると判断する。
その理由は,次のとおり付加するほか,原判決の「第3当裁判所の判断」のとおりであるから,これを引用する。
2控訴人は,本件考案の構成要件CAにおいて,基板の凹凸の平均粗さが「0.5〜50μm」とされている点について原判決の判断を争うので,この点について補足して説明する。
(1) 本件明細書(甲2)における実用新案登録請求の範囲請求項1の記載は,「2枚の透明電極付基板を電極面が相対向するように5〜200μm程度の間隔を置いて設置したタッチスイッチにおいて,少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に,その高さが基板間隔よりも小さく,基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μmとされている微細な凹凸を形成してなることを特徴とするタッチスイッチ」というものである。
そこで,本件明細書をみるに,上記の「基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」に関しては,「考案の詳細な説明」欄に「この微細な凹凸は,少なくとも基板間隙の間隔よりも低い高さの凹凸とされ,上下の基板の電極間で短絡が生じないようにされる必要がある。一般的には,基板間隙の間隔の半分以下程度とされる。より具体的には,JISB0601に基づく凹凸の平均粗さ(Rz)を,0.5〜50μmとする。また,基板間隙を周辺のシールと面内におけるスぺーサーを含有した支柱によって保持する場合には,最大粗さ(Rmax)は両基板間隙を保つためのスぺーサー径とRzとの和より小さくなければならない。」(甲2の4欄12行〜20行)との記載があり,他に,基板の凹凸の平均粗さの測定方法についての記載は見当たらない。
(2) 他方,上記「JISB0601」に該当するものであることにつき当事者間に争いのない1982年JIS規格(甲7)には,前記引用に係る原判決認定(10頁19行〜13頁22行)のとおり,「3.6.4十点平均粗さの区間表示」の項に,「十点平均粗さをある区間で指示する必要があるときは,その区間の上限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さい方)に相当する数値を表6から選んで併記する。」とされ,当該記載に続けて「例」が挙げられ,「例2」として「上限と下限の基準長さの標準値(表5)が異なる場合上限25μmRz,下限6.3μmRzのときの区間表示は(25〜6.3)Zと表示する。この場合は,基準長さ2.5mmで測定した十点平均粗さが25μmRz以下であり,基準長さ0.8mmで測定した十点平均粗さの値が6.3μmRz以上であることを意味する。」とされ,更に続けて「備考1」として「上限及び下限に対応する基準長さを同一にする必要がある場合又は表5の標準値以外の基準長さを用いる場合には,基準長さを併記する。例2:において,上限及び下限に対応する基準長さを2.5mmとするときは,(25〜6.3)Z,L2.5mmと表示する。」とされ,1982年JIS規格の解説(甲7)には,「4.1表面粗さ」の項に「‥‥‥表面粗さを指定し,又は測定する場合“カットオフ値”(又は基準長さ)が最も重要な要素となるが,カットオフ値(基準長さ)は,測定の目的によって異なるべきであるという考え方をとっている。‥‥‥一般にカットオフ値(基準長さ)が長いと,表面粗さの値は大きく出る。
この規格を適用した表面粗さを求める場合,カットオフ値又は基準長さはあらかじめ関係者によって決定されるべきであるが,今までの多くの経験から,ある程度の大きさが決まっていることと,計測器を製作する立場からは数種類に限定されていることが望ましいことなどから,規格としてはISOやその他の外国の規格とも合うような数種類に限定した。」とされ,「5.3基準長さ」の項に「一定のピッチで山形が並んでいるような規則的な表面では,基準長さの採り方に注意しなくても粗さの値はほぼ一定に定まるが,研削やラップ仕上げのような不規則な山形の並んだ表面や,大きなピッチのうねりのある表面では基準長さを大きくすれば,得られた表面粗さの値が大きくなることが知られており,これが生産現場での粗さの測定の大きな問題点であった。‥‥‥この規格で,断面曲線から粗さを求めるには,まず,基準長さが定められるべきであるとしていることは前述のとおりである。…基準長さの選定は,表面粗さの測定を始める前に,測定を企画する側から指定されるべきである。しかし,今までのところ,各種加工面に対し,どのような基準長さを採ればよいのかということについては定説もないので,ここでは基準長さの種類だけを規定してある‥‥‥」とされている。
また,同解説の「5.7最大値表示,区間表示について」の項には,「区間表示(6.3〜1.6)aの意味は,カットオフ値の標準値0.8mmで測定した中心線平均粗さの値が,1.6μmRa以上で6.3μmRa以下であることを指示している。また,(25〜6.3)aの場合には,25aに対するカットオフ値の標準値は2.5mmであり,6.3aに対するカットオフ値の標準値は0.8mmであるから,カットオフ値2.5mmで測定した加工面内の多数の箇所での値の算術平均値が25μmRa以下で,カットオフ値0.8mmで測定した値が6.3μmRa以上であることを意味している。もし,(25〜6.3)aの場合に,同一のカットオフ値を使用したい場合には,カットオフ値を指定する必要がある。すなわち(25〜6.3)aλc2.5mmのように使用するカットオフ値を記入する。最大高さ,十点平均粗さの区間表示についても同様である。」(甲7の16頁7行〜14行)との記載がある。
(3) 上記によれば,本件明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1に「基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μmとされている微細な凹凸を形成してなる」と記載されているのであるから,本件考案の構成要件CAの「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」は,基板の凹凸の平均粗さ(Rz)について下限値と上限値を規定したものと解するのが相当であるところ,本件明細書に「より具体的には,JISB0601に基づく凹凸の平均粗さ(Rz)を,0.5〜50μmとする。」と記載されているのであるから,それは,1982年JIS規格に定められた「十点平均粗さ」について下限値と上限値を示したもの,すなわち1982年JIS規格にいう「十点平均粗さの区間表示」に該当するものと解するのが相当である。そして,1982年JIS規格によれば,「上限及び下限に対応する基準長さを同一にする必要がある場合又は表5の標準値以外の基準長さを用いる場合には,基準長さを併記する」ものとされているところ,構成要件CAにおいては,そのような基準長さは併記されていないから,下限値である0.5μmについては対応する標準値である0.25mmを基準長さとして,上限値である50μmについては対応する標準値である8mmを基準長さとして,それぞれ測定するものと解するのが相当である。これは,具体的には,基準長さ0.25mmで測定した加工面の多数の箇所での値の算術平均値が0.5μm以上で,基準長さ8mmで測定した加工面の多数の箇所での値の算術平均値が50μm以下であることを意味する。
(4) 1982年JIS規格の「3.6.4十点平均粗さの区間表示」の項には,確かに,控訴人の指摘するように,「その区間の上限(表示値の大きい方)及び下限(表示値の小さい方)に相当する数値を表6から選んで併記する。」と記載され,また,例2として「上限25μmRz,下限6.3μmRzのときの区間表示は(25〜6.3)Zと表示する。」ことが示されており,上記の表記例にならえば,「(50〜0.5)Z」と記載すべきものである。また,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」における「0.5μm」は表6に標準数列として掲げられた数値ではない。
しかしながら,前記引用に係る原判決認定のとおり,1982年JIS規格の「3.6.2」には「十点平均粗さによって表面粗さを指定するときは,特に必要がない限り,表6の標準数列を用いる。」と記載されているのであって,これによれば,上限値及び下限値として必ず表6の標準数列から選んだ数値を用いなければならないものではなく,必要に応じてそれ以外の数値を用いることもできるというべきである。また,請求項1の記載は,確かに1982年JIS規格に掲げられた表記方法によるものではないが,控訴人の主張に係る昭和57年から平成5年出願分までの公開公報の調査結果及び被控訴人の主張に係る昭和56年から平成17年の公開公報の調査結果によれば,本件考案の出願当時,十点平均粗さの区間表示を行うに際して同規格の掲げる「(上限値〔大きい数字〕〜下限値〔小さい数字〕)Z」という表記方法によるべきことが,当業者の間における一般的な理解であったと認めることはできないところ,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄には「JISB0601に基づく凹凸の平均粗さ(Rz)を,0.5〜50μmとする。」と記載されているのであるから,この記載から請求項1の「0.5〜50μm」が,1982年JIS規格に定められた方法により平均粗さ(Rz)の上限値及び下限値を画したもの,すなわち同規格の定める区間表示であることを理解することに困難はないというべきである。なお,甲19の1(特開昭59-61196号公報),19の2(特開昭63-15916号公報),19の3(特開昭59-28239号公報)及び19の4(特開昭62-259221号公報)は,いずれも特許請求の範囲に,1982年JIS規格に基づく十点平均粗さの区間表示による平均粗さの上限値及び下限値を規定しているものと解されるところ(このうち,甲19の1及び19の2には,いずれも基準長さを用いて1982年JIS規格の定める測定を行うべきことが明記されている。なお,平均値の代わりに中央値を用いている〔1982年JIS規格「3.5.1」の備考1参照〕。),これらはいずれも,同規格の掲げる「(上限値〔大きい数字〕〜下限値〔小さい数字〕)Z」という表記ではなく,「下限値〔小さい数字〕〜上限値〔大きい数字〕」という表記をしている。
(5) 控訴人は,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」を1982年JIS規格の「区間表示」と解すると,本件考案においてRzを「5μm」とした基板を用いた実施例1及びRzを「3μm」とした基板を用いた実施例2が,いずれも本件考案実施例でなくなる可能性があると主張する。すなわち,上記実施例における「5μm」及び「3μm」は,「0.8μm超で6.3μm以下」の範囲内のRzであるから,基準長さは0.8mmを標準値としているため,0.5μmのRz(0.8μm以下のRz)の基準長さ0.25mm内に山谷が5個以上ずつ存在するとは限らず,Rzは求められないことになってしまうというのである。
しかしながら,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」を1982年JIS規格の「区間表示」と解する場合には,上記実施例は,いずれも基準長さ0.25mmで測定した結果が0.5μm以上で基準長さ8mmで測定した結果が50μm以下という要件を満たしているはずであるから,上記実施例にいう「5μm」及び「3μm」は,基準長さ0.25mmで測定した結果も基準長さ8mmで測定した結果もそれぞれ当該数値となることをいうものと解するのが相当である。したがって,控訴人の主張するような矛盾は生じない。なお,1982年JIS規格の解説の「5.3基準長さ」の項には,前記のとおり,「一定のピッチで山形が並んでいるような規則的な表面では,基準長さの採り方に注意しなくても粗さの値はほぼ一定に定まる」と記載されているところ,本件明細書には,基板の表面に微細な凹凸を形成する方法として,基板自体を化学的又は物理的に加工する方法や基板上に酸化ケイ素等の物質を凹凸状に形成する方法が記載されているが(甲2の4欄21行〜27行),甲19の1ないし4及び弁論の全趣旨によれば,本件考案出願当時,所望の基準長さ内に所望の数値の凹凸を形成する技術が公知であったと認められるから(控訴人自身が,そのように主張している。控訴人第3準備書面5頁,第5準備書面7頁参照),本件明細書実施例における「5μm」及び「3μm」が,基準長さ0.25mmで測定した結果も基準長さ8mmで測定した結果もそれぞれ当該数値となることを記載したものと解することは,技術的な点からも裏付けられる。
そもそも,控訴人の上記主張は,本件明細書実施例における「5μm」及び「3μm」を控訴人主張の測定方法により特定することを前提とした上で,構成要件CAの「0.5〜50μm」を1982年JIS規格の「区間表示」と解する場合に矛盾が生じ得ることを述べるものであり,その前提が不合理であって,主張自体,採用の余地のないものというべきである。
(6) また,本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」を1982年JIS規格の「区間表示」と解することは,本件考案の作用効果との関係からみても,相当である。
すなわち,前記引用に係る原判決の認定及び説示(20頁22行〜21頁14行)のとおり,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄には,「問題を解決するための手段」の項に「本考案では,タッチスイッチの一対の透明電極付基板の,少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に,その高さが基板間隙よりも小さい微細な凹凸を形成しているので,基板間隙が微細な状態では大きく変動していることになり,光の干渉縞はほとんど発生しない。」,「作用」の項に「本考案のタッチスイッチでは,その一対の透明電極付基板の,少なくとも一方の透明電極付基板の電極側の表面に,その高さが基板間隙よりも小さい微細な凹凸を形成しているので,基板間隙が微細な部分で見れば,数μmのオーダーで大きく変動していることになる。ところで,光の干渉縞は,光の波長の1/2で1本発生する。しかし,本考案では,前述の如く,数μmのオーダーで凹凸があるため,1/2波長の数十倍になるため,光の干渉縞が極めて狭い間隔で多数発生していることになり,人間の目で見た場合,判別できなく,干渉縞が発生していないと同じことになる。」とそれぞれ記載されており,これらの記載に照らせば,本件考案の構成要件CAにおいて,基板の凹凸の平均粗さ(Rz)が0.5〜50μmとされている微細な凹凸を形成していることとした技術的意義は,人間の目で判別することができない程度の狭い間隔で光の干渉縞を多数発生させるための凹凸を基板の表面に形成することにあると解される。
そうすると,本件考案の上記作用効果を奏する範囲を画するためには,所定の基準長さ内に一定の密度及び高低の山谷が存在するか否かにより判断すること,すなわち平均粗さ(Rz)の下限値については常に0.5μmに対応する基準長さ0.25mmをもって判断することが合理的というべきである。
(7) 本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」につき,控訴人は,対象物の表面の相当長い断面曲線をとって,その断面曲線からRz値を推定し,該Rz値に対応する「基準長さ」を1982年JIS規格の表5から決定し,その「基準長さ」だけの部分を断面曲線から抜き取り,Rz値を算出したものが,「0.5〜50μm」の間にあることを意味するものであると主張する。
(ア)しかしながら,控訴人の主張する測定方法は,1982年JIS規格(甲7)には,その解説部分を含めても,何ら記載も示唆も見当たらない。
また,控訴人の主張する上記測定方法によるときには,対象物により本測定に用いるべき基準長さが異なることになり,その結果,基準長さの長短によって測定結果たる平均粗さの数値が変動し,当該数値が意味する内容も異なることになるが,このようなことは,前記のとおり,1982年JIS規格の解説の「4.1表面粗さ」の項に「表面粗さを指定し,又は測定する場合“カットオフ値”(又は基準長さ)が最も重要な要素となるが,カットオフ値(基準長さ)は,測定の目的によって異なるべきであるという考え方をとっている。‥‥‥この規格を適用した表面粗さを求める場合,カットオフ値又は基準長さはあらかじめ関係者によって決定されるべきである」と記載され,「5.3基準長さ」の項に「この規格で,断面曲線から粗さを求めるには,まず,基準長さが定められるべきであるとしていることは前述のとおりである。…基準長さの選定は,表面粗さの測定を始める前に,測定を企画する側から指定されるべきである。」と記載されていることと相容れないものであり,また,上記(6)のような本件考案の作用効果を奏する範囲を画するという観点にも合致しないこととなる。
本件考案の構成要件CAの「0.5〜50μm」につき,控訴人主張の上記測定方法による測定結果の数値を意味するものとは到底解することができない。
(イ)1982年JIS規格の解説中,控訴人が,その主張に係る上記測定方法を記載ないし示唆するものとして挙げる部分は,正確に引用すれば,「なお,基準長さを定めても,理論上はその基準長さより長い波長の周期性のあるうねりの影響が完全に除かれるとは限らない。また,実際上うねりの頂上や谷底の部分で表面粗さを求めるときと,うねりの斜面の部分で表面粗さを求めるときで,結果の数値は異なる。これは,結果の数値が測った部分(抜取り部分)の値にすぎないからで(本体3.3.1及び3.5.1参照),実際の測定では測定される表面全体としての表面粗さを求めたいわけである。このような場合は,まず断面曲線を基準長さより相当長く,できれば表面の数箇所でとる。その断面曲線の中できずのような大きな山又は谷があるとか,曲線が全体として曲がっているような部分は避けて,平らな部分を目測によって計算結果としての表面粗さが大体の平均値になりそうな部分から基準長さだけの部分を抜き取る。この断面曲線の抜取り部分で,Rmax又はRzを求める。特に,表面粗さが小さく出そうな所や大きく出そうな所を抜き取ってはならない。この操作を厳密にするには,測定表面上で無作為に数箇所をとり,その部分の断面曲線から基準長さだけ抜き取って,各々の部分のRmax又はRzを求めて平均とする。この方法でも,やはり測定値に任意性が残るが,これを避けるためにはRaを採用し,かつ,上述のように多くの場所で測定した表面粗さの値の平均を求めることが好ましい。」(甲7の13頁37行〜14頁7行)というものであり,あらかじめ決定された基準長さの下において,抜き取り箇所を適切に選定するための方法について説明したものであって,控訴人主張のような予備測定及び本測定を行う方法が記載されているものではない。
控訴人は自らの主張を根拠付けるものとして,博士作成の書面(甲1N6の1)及び博士作成の書面(甲17)を挙げる。しかし,博士作T N成の書面(甲16の1)が,「Rz測定に際し,基準長さが明記されていない場合,基準長さはどの様に決めて測定すればよいでしょうか」という質問に回答したものであり,回答の(注1)に「・大量に生産を続けている工業製品のように予め,表面粗さが予想できる場合には,予め定めた基準長さでRzを測定していました。・測定依頼品やサンプル試験品作成時の測定の場合のように,事前に情報がなく,Rz値が予想できない場合には,アナログ電気式測定器で断面曲線を描き,この断面曲線からRzを推定し,表5から基準長さを決め,Rzを手計算する方法で求めていました。」と記載されていること,博士作成の書面(甲17)も,「以上が,T事前に被測定対象物のRz値に関する情報がない場合の基準長さの決定方法である。」と記載されていることから分かるように,これらの書面は,いずれも事前に基準長さの指定が全くされていない状態において,事前に情報なく与えられた測定対象物につき十点平均粗さを測定する方法について説明したものであって,本件考案の構成要件CAにおけるように,1982年JIS規格に基づくRz値として上限値と下限値による範囲があらかじめ指定されている場合における測定方法について論じたものではないから,これらをもって控訴人主張に係る測定方法を根拠付けることはできない。なお,前記のとおり,甲19の1(特開昭59-61196号公報),19の2(特開昭63-15916号公報),19の3(特開昭59-28239号公報)及び19の4(特開昭62-259221号公報)は,いずれも特許請求の範囲に1982年JIS規格に基づく十点平均粗さの区間表示による平均粗さの上限値及び下限値を規定していると解されるものであるが,これらを見ても,控訴人主張に係るRz値の測定方法は一切記載も示唆もされていない(このうち,甲19の1及び19の2には,いずれも基準長さを用いて1982年JIS規格の定める測定を行うべきことが明記されているが,それに先だって基準長さ決定のための予備測定を行うことは記載されていない。)。
(ウ)控訴人は,本件考案の作用効果は各明縞の平均間隔や山谷の密度と関連するものであって,控訴人主張の測定方法はこれに基づくものであると主張する。しかし,「平均粗さ(Rz)が0.5〜50μm」という本件考案の構成要件が,控訴人の主張するような各明縞の平均間隔や山谷の密度に基づくものであることは,本件明細書には記載も示唆もされておらず,出願経過において問題とされたような事情も認められない。控訴人の主張は,採用できない。
3結論以上によれば,控訴人の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。よって,控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,当審における訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 三村量一
裁判官 古閑裕二
  • この表をプリントする