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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成18ワ1139不当利得返還等請求事件 判例 実用新案
平成18ワ1304意匠権侵害差止等請求事件 判例 実用新案
平成17ネ10115損害賠償請求控訴事件 判例 実用新案
平成18ネ10001実用新案権侵害差止等請求控訴事件 判例 実用新案
平成17ネ1514実用新案権侵害差止等請求控訴事件 判例 実用新案
関連ワード 権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  図面 /  組合せ /  実体審査 /  評価書 /  技術評価 /  請求項 /  特段の事情 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 15年 (ワ) 13028号 実用新案権侵害差止等請求事件
原告久鼎金屬實業股 ? 有限公司
訴訟代理人弁護 士松村信夫
同 塩田千恵子
同 坂本優
補佐人弁理 士板垣孝夫
同 笹原敏司
同 原田洋平
被告株式会社古川
訴訟代理人弁護 士高橋浩文
補佐人弁理 士加藤久
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2006/04/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
3この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
全容
第1請求被告は,原告に対し,金717万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成15年12月20日から支払済みまで,年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要本件は,被告による,いわゆるキックスケーターの輸入販売行為について,原告の有する実用新案権を侵害することを理由とする損害賠償請求訴訟である。
1基礎となる事実(証拠等によって認定した事実は末尾に証拠を掲げた。それ以外は争いのない事実である。)(1)原告の実用新案権原告は,次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,その考案を「本件考案」という。)を有する。
ア登録番号第3071713号イ考案の名称二輪車の取り外し可能ハンドルウ出願日平成12年3月14日(実願2000‐1482)エ登録日平成12年6月28日オ実用新案登録請求の範囲請求項1】自転車またはハンドル付スケートボードの取り外し式ハンドル部分である,ハンドル支え棒及びハンドルを係合するT字型連接管から構成される二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて,縦管には,横管まで延びた導入溝が形成され,上記ハンドル支え棒上段の導入溝に対応する突起部を有し,位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられ,上記二輪車の取り外し可能ハンドルに嵌合されている定位体は,弾性ロープによって連接された左右ハンドルを横管内部の接合孔から外した後,ハンドルの接合管を係止するための,左右に夫々半円弧形のハンドルホルダーを有することを特徴とする二輪車の取り外し可能ハンドル。
(2)被告は,平成15年4月ころから,別紙物件目録記載の商品(以下「被告商品」という。)を輸入,販売していた(輸入販売開始月については,乙25の1)。
原告は,被告に対し,平成15年9月8日付けで技術評価書を提示した警告(以下「本件警告」という。)をし,本件警告は同月11日までに被告に到達した。
(3)本件考案の構成要件の分説本件考案を構成要件に分説すると,以下のとおりである。
ア自転車またはハンドル付スケートボードの取り外し式ハンドル部分である,ハンドル支え棒及びハンドルを係合するT字型連接管から構成される二輪車の取り外し可能ハンドルにおいて,イ縦管には,横管まで延びた導入溝が形成され,ウ上記ハンドル支え棒上段の導入溝に対応する突起部を有し,エ位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられ,オ上記二輪車の取り外し可能ハンドルに嵌合されている定位体は,弾性ロープによって連接された左右ハンドルを横管内部の接合孔から外した後,ハンドルの接合管を係止するための,左右に夫々半円弧形のハンドルホルダーを有することを特徴とするカ二輪車の取り外し可能ハンドル。
(4)被告商品の構成被告商品は,本件考案の構成要件アないしウ,オ,カを充足する。
2争点(1)被告商品が,本件考案の構成要件エを充足するか。
(原告の主張)本件考案の構成要件エにいう「快速取り外し装置」は,位置調節をするための連接管(4)の縦管(5)とハンドル支え棒(2)との組合せを「取り外し」する行為自体が「快速」にできることに主眼がある。すなわち,位置調節の際にネジを外すなどの繁雑な作業をしなくても,レバーを動かすというワンタッチの行為のみによって,締め付けて固定し,緩めて移動させることができ,上記組合せの「快速」な「取り外し」が可能になるということである。
被告商品は,「導入溝に対応する突起部が設けられている」という特徴を有し,快速取り外し装置のレバーを動かして締め付ける,すなわち,締め付けて固定し,緩めて移動させることのみにより,「連接管の縦管とハンドル支え棒を組み合わせた場合,がたつきが生じない」という機能を有する点で同じであるため,位置調節をするための連接管(4)の縦管(5)とハンドル支え棒(2)との組合せを「取り外し」する行為自体が「快速」にできるという「快速取り外し装置」を備えているから,本件考案の構成要件エを充足する。
(被告の主張)本件考案の構成要件エにいう「快速取り外し装置」は,取り外し装置の締め付け機能のみによって,2段階のみならず特に制約なしに縦管の上下移動・位置調節を簡便にする装置を意味する。
被告商品においては,縦管5の移動は,同取り外し装置によってではなく,ハンドル支え棒に存する2つの穴に同縦管の丸ボタン状の小突起が出入りすることによって調節されるものである。それゆえ,同縦管の移動範囲も同穴二つの間の2段階に限られているし,かかる位置調節は,取り外し装置の締め付け機能のみによって調節することに比べ,煩雑であり,時間もかかる。
被告商品においては「位置調節が」が可能な「取り外し装置」というべきものは存在するが,それは「快速」取り外し装置ではない。
したがって,被告商品は,本件考案の構成要件エを充足しない。
(2)原告の損害(原告の主張)ア実用新案法29条1項による損害3600万円の内金600万円(ア)本件実用新案登録以降の損害被告は,平成12年5月ころから同年10月ころまで,原告製造の商品であって本件実用新案権の実施品であるキックボード「RAZOR」「JDRAZOR」(以下「原告商品」という。)の国内販売代理店であり,本件実用新案権の登録時である同年6月28日には,既にその代理店としての立場から当然に,本件実用新案権の存在と権利性を認識していた。したがって,それ以降の被告商品販売について,被告には過失がある。
原告は,訴外ジェイディジャパン株式会社に対し,原告商品を1台25ドルで販売しているが,製造原価は1台14ドルである。したがって,原告が,被告の行為がなければ販売することができた物の1個当たりの利益は11ドル,すなわち約1200円である。被告が被告商品を本件実用新案登録日以降に販売した数量は,3万台を下らないため,原告の損害は,3600万円(1200円×3万)を下らない。
(イ)上記(ア)のうち,本件警告以降の損害原告が被告に対し,技術評価書提示の上でした本件警告が被告に到達した平成15年9月11日以降の被告商品の販売数量は,5000台を下らないため,同日以降の原告の損害は600万円(1200円×5000)を下らない。
イ本訴弁護士費用117万円(被告の主張)ア実用新案法29条1項による損害について(ア)本件実用新案権に関しては,本件警告により初めて警告を受けたものであるから,被告は,これを受け取った平成15年9月11日に初めて本件考案の存在と技術の内容・その権利性を認識し得た。したがって,その時点より前の被告商品の販売について,被告には過失がない。
(イ)被告は,被告商品は,遅くとも平成15年7月1日より新規販売をしておらず,同年9月以降は被告を通じて店頭販売されている被告商品は基本的に存在しない。
被告は,上記時点以降は,被告商品の状態では販売しておらず,これからハンドルホルダー14を取り外した状態でのみ販売している。そして,ハンドルホルダー14のないものは,本件実用新案権の実施品ではないから,原告に損害はない。
イ本訴弁護士費用は争う。
第3当裁判所の判断1争点(1)(構成要件エの充足性)について本件考案に係る構成要件エは,「位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられ,」というものであり,「快速」は「取り外し装置」を修飾しているから,「快速取り外し装置」とは,取り外しが快速に行える装置を指すものと解される。また,証拠(甲2)によれば,本件明細書の記載は,快速取り外し装置については,「快速取り外し装置6の締め付けに依るもので,縦管51の位置移動を可能とする。」として,位置移動が可能だから位置調節ができることを説明している程度であることが認められ,上記認定に反するものではない。
被告は,「快速取り外し装置」について,取り外し装置の締め付け機能のみによって,2段階のみならず特に制約なしに縦管の上下移動・位置調節を簡便にする装置を意味すると主張する。しかし,実用新案登録請求の範囲の記載からすれば,「快速取り外し装置」の意義は前認定のとおり解すべきものであって,本件明細書及び図面を考慮しても,段階の制約なしに位置調節ができる趣旨までに限定したものと解することはできない。
一方,弁論の全趣旨によれば,被告商品においても,取り外し装置9のレバーの操作によって簡単快速にハンドル支え棒2とT字型連接管4の締め付けが取り外せることが認められるから,取り外し装置9は,快速取り外し装置というべきである。そして,この取り外し装置9の締め付けが取り外せることによって位置の調節が可能になることは明らかであるから,被告商品には,位置調節が可能な快速取り外し装置が設けられているということができる。
2争点(2)(損害)について(1)本件警告より前の被告の過失についてア実用新案権者は,その登録実用新案に係る技術評価書を提示して警告した後でなければ,自己の実用新案権の侵害者に対し,その権利を行使することができないとされている(実用新案法29条の2)。これは,実用新案権が実体審査なしで権利が付与されることから,警告をする際には評価書の提示を義務づけるということによって,権利行使に先立って自分の権利の有効性について客観的な評価を権利者自身が十分に認識してもらうということで権利の濫用を防止するということとともに,権利行使を受けた第三者の過度な調査負担を防いで適切な権利行使を担保するという趣旨と解される。したがって,評価書を提示しない警告がされたとしても,そのことから直ちに,その後の侵害行為について相手方に過失があるということになるものではない。また,このことからすれば,相手方が,実用新案権の存在を知っていたとしても,既に第三者に対する警告において提示された技術評価書を知っている等の特段の事情がない限り,相手方において,直ちに当該実用新案権の侵害について過失があるということはできないものと解すべきである。
イ証拠(甲43)によれば,原告商品のハンドルホルダーには,小さく「PAT.PEND」との文字が刻まれていることが認められるが,上記記載は「特許出願中」と理解されるものであり,これを見たことにより,原告の実用新案権の内容,査定の有無,権利の有効性についての調査義務を負うとか,上記特段の事情があるとか,ということはできない。
ウかえって,以下の点からすれば,被告が自らの調査により本件実用新案権の存在を知ったと自認する同年5月ないし6月ころ以前には,被告において本件実用新案権を知っていたと認めることもできないから,上記特段の事情はなおさら認めることが困難である。すなわち,(ア)前記のとおり,原告商品のハンドルホルダーの「PAT.PEND」の文字は「特許出願中」と理解されるが,それだけではハンドルホルダーのいかなる技術が特許出願中であるのか,またそれが特許されたかどうかも分からないから,このことから,被告が本件実用新案権の内容を知っていたとはいえないこと。
(イ)証拠(甲42)によれば,被告が原告の代理店であった時期に開催され,被告の担当者が出席した平成12年6月の代理店会議において本件実用新案が登録出願中であることを口頭での説明で聞いたという者もいることが認められるものの,書面にも記載せず口頭で多少触れた程度では,そのことに関心を持たずに聞き流したり忘れたりする可能性もあり得るため,このことから直ちに,被告が本件実用新案権の内容を知ったとはいえないこと。
(ウ)証拠(甲37ないし41,乙45,46)及び弁論の全趣旨によれば,原告から配布された書面では「ショルダーストラップP.T」の表示やハンドルホルダーが識別できない写真について「マルチマウントクリップpat.p」の表示はされていたものの,本件実用新案権の登録番号や技術内容を明示した書面も配布されておらず,平成15年5月ころに被告商品についてした知的財産権侵害の主張でも本件実用新案権には言及していなかったことが認められること。
(エ)他に,被告が,本件実用新案権の内容を知っていたと認めるに足りる証拠がないこと。
エそして,他に,本件警告より前に,被告について上記特段の事情を認めるに足りる証拠はないから,本件警告より前の被告商品の販売について,被告に過失があったということはできない。
(2)本件警告後の被告商品の販売数量についてア被告は,原告が平成15年4月28日付で被告の販売先である小売店に対してした被告商品についての警告書を入手して,同年5月6日に弁理士に相談し,弁理士が念のためという趣旨で調査したところ本件実用新案権の存在を知り,トラブル防止の目的で同年7月1日以降は被告商品からハンドルホルダー14を取り外して販売してきたと主張する。
そして,証拠(乙24ないし26,39ないし44(枝番のあるものは枝番も含む。以下同じ。))によれば,被告は,@販売先であるサンクスジャパン株式会社に対しては,同年5月より,販売済みで不良品でもない被告商品について,「本部指示」「不正競争行為に当たる恐れがあるそうです(本部指示)」などとの理由でいったん返品を受けてハンドルホルダー14を撤去し,同年6月末ころから,ハンドルホルダー14を外したものを再納品し,サンクスジャパン株式会社は,同年7月以降はハンドルホルダー14のないものを販売していること,A販売先である株式会社ミスターマックスからは,同年9月ころに,「本部指示」という理由で多数の被告商品の良品の返品を受けていることが認められ,以上の事実によれば,被告は,同年夏ないし秋ころには,原告の知的財産権侵害となることを避けようとしていたものと認められる。被告の前記主張は,上記証拠により認められる事実とも整合性があり,また,被告商品からハンドルホルダー14を取り外してもキックスケーターとして使用は可能であるから,その内容自体も不合理なものではなく,あながち否定できないところである。
イ原告は,被告が遅くとも平成15年7月1日以降はハンドルホルダー14を外した商品を納品したのであれば,今後の返品の受付けの許否を判断するためにも,販売台帳などに,従来納品していたハンドルホルダー14付きの商品(被告商品)と区別したコードを記載するなど,何らかの区別を台帳に記載するはずであると主張する。しかし,被告が被告主張のとおりある時期以降ハンドルホルダー14を外した商品のみを販売していたのであれば,コードの記載等により区別しなくとも,販売時期から,ハンドルホルダー14付きか否かは判明するのであるから,被告の台帳にハンドルホルダー14付きとそうでないものの区別を示すコード等の記載がないとしても,このことをもって,被告がハンドルホルダー14付きのもの(被告商品)を平成15年7月1日以降も販売していた証左とすることはできない。
ウ証拠(乙24ないし26,39ないし44)によれば,被告商品は,一般消費者向けに販売されている卸売価格1000円以下の安価な商品であって,大手量販店等に大量に販売されていたことが認められるから,もしも,本件警告以後もハンドルホルダー14付きのもの(被告商品)の販売が大量にかつ長期間継続されていたとすれば,原告においてこれを探知してその旨の証拠を提出することがさほど困難とは思えない。しかし,原告からは,そのような証拠は提出されていない。
エ以上の点に鑑みれば,本件全証拠によっても,本件警告後には,被告が被告商品を販売していたと認めるに足りる証拠はないものというほかはないから,原告に損害が発生したと認めることはできない。
(3)弁護士費用について前記(1),(2)のとおり,被告に不法行為があったと認めることはできないから,弁護士費用の損害賠償請求も,理由がない。
3結論以上の次第で,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山田知司
裁判官 高松宏之
裁判官 守山修生
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