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関連審決 審判1978-3006
関連ワード 考案 /  図面 /  きわめて容易 /  削除 /  容易に想到 /  頒布 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 55年 (行ケ) 174号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1983/09/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が同庁昭和五三年審判第三〇〇六号事件について昭和五五年五月七日にした審決を取消す。
訴訟費用は、被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告らは、主文同旨の判決を求め、被告は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は、原告らの負担とする。」との判決を求めた。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告らは、名称を「車両の行先案内表示装置」とする考案(以下、「本願考案」という。)につき、昭和四七年一二月二九日実用新案登録出願をしたところ、昭和五二年一二月一二日拒絶査定を受けたので、昭和五三年三月九日これに対する審判を請求し、特許庁昭和五三年審判第三〇〇六号事件として審理されたが、昭和五五年五月七日右審判の請求は成り立たない旨の審決があり、その謄本は同年五月二八日原告らに送達された。
二 本願考案の要旨 複数の停車駅が表示された一又は二以上の表示幕を有すると共に、この表示幕の駅表示位置に対応した複数の点滅器を有する表示器と、車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器と、この指令器からの信号が与えられる度に切換動作して所定数を一単位として循環動作することにより前記点滅器を切換える切換器と、この切換器が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて前記表示器の表示幕を交換する表示幕制御器とをそなえた車両の行先案内表示装置。
(別紙図面(一)参照)三 本件審決の理由の要点 本願考案の要旨は、前項記載のとおりである。
これに対し、本願考案の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実用新案出願公告昭四一ー一六〇二七号公報(以下、「引用例」という。)には、「複数の停車駅が表示された一又は二以上の表示幕を有すると共に、この表示幕の駅表示位置に対応して移動する指針を有する表示器と、車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器と、この指令器からの信号が与えられる度に歩進して所定数を一単位として往復動作する機構と、この機構が一単位の動作を行なうごとに表示幕を交換する表示幕制御器とをそなえた車両の行先案内表示装置」(別紙図面(二)参照)が記載されている。
本願考案と引用例記載のものとを対比すると、(1)本願考案では、複数の点滅器が切換えられるのに対し、引用例のものでは、指針が移動する点、(2)本願考案では、点滅器は左から右というように常に一方向に表示を行なうのに対し、引用例のものでは、左から右、右から左、左から右と交互に反転している点で両者相違するほかは、一致している。
そこで、これらの相違点について検討すると、行先を表示するために行先表示のすぐ上にあるランプを順次に点滅させることは、例えばエレベータの表示装置において、本願出願前より周知であり、これを本願考案のように車両の行先案内表示装置に用いることは当業者がきわめて容易に想到し、実施しうるものと判断されるので、相違点(1)に考案があるということはできない。また、進行方向について常に一方向に表示を行なうことは当業者がきわめて容易になしうる単なる設計上の問題であると判断されるから、相違点(2)に考案があるということはできない。
以上のとおり、本願考案は、引用例及び周知事実に基づいて当業者がきわめて容易考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
四 本件審決の取消事由 本件審決には、次のとおり、これを違法として取消すべき事由がある。
1 審決は、引用例記載の技術内容の認定を誤つている。
すなわち、審決は、引用例には、「車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器」をそなえた車両の行先案内表示装置が記載されているという。
しかし、引用例第二頁左欄第八行以下、同欄第一九行以下の記載から明らかなように、引用例のものにおいては、車両の進行につれて指針を移動させるための信号を発するものとしては、単に押ボタン26が存在するにすぎない。押ボタン26と連係して動作するものとして、カム21とマイクロスイツチ23が存在するが、これらは、押ボタン26を押したことによつて始まるモーター17及び指針9の動作を停止させるものであつて、何ら「指令信号を発する」ものではない。したがつて、引用例のものでは、車両が次の停車駅に向けて発進したときには、車掌又は運転士が一々押ボタン26を押さなければならない。
これに対し、本願考案における指令器は、本願明細書第四頁第二行以下に記述するように、例えばドアの開閉と電車速度の一定値超過のアンド条件によつて、自動的に信号を形成し、切換器を通して点滅器や表示幕制御器を動作させるものである。これらはすべて自動的に行なわれる。
両者を比較すれば、引用例記載のものには、「車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器」を備えているものとは到底いえない。
2 審決は、本願考案と引用例記載のものとの相違点を看過している。
本願考案は、「切換器が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器」をそなえる構成であるが、右構成は、次の二つの構成に分説しうる。
@ 切換器が一単位の切換動作を行なうごとに表示幕を交換する表示幕制御器であること。
A 切換器が(一単位の切換動作を行なうごとに)発する桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器であること。
これに対し、引用例記載の技術内容は、次の構成である。
@′ 往復動作する機構が一単位の動作を行なうごとに表示幕を交換する表示幕制御器であること。
本願考案と引用例記載のものとを対比すると、@′の構成は@の構成に相当し、
@′の構成中にはAの構成は全く含まれていないことは明らかである。
Aの構成は、切換器が一単位の切換動作を行なうごとに表示幕を交換する場合の交換の制御についての具体的解決手段であり、その特徴は、切換器と表示幕制御器とを電気的に結びつけることによつて一単位の切換動作と表示幕の交換とを連動させ、一単位の切換動作が終ると自動的に表示幕が交換されるようにした点にある。
ところが、引用例にはこのようなAの構成が明示的に記載されていないことはもちろん、それを示唆する記載も見当らない。引用例に記載されたものは、「駅名が二行以上にわたるときは手動捲取器により表示幕を捲いて二行目の駅名を表わし」(第一頁左欄第一九行ないし第二一行)、「左室イに設ける捲取装置は従来から使用されている公知の手動或は電動の捲取装置を用いますので図示及び詳細な説明を省略します。」(第一頁左欄第三九行ないし第四一行)、「次に東神奈川駅を発車するに際して表示器13を捲いて第二行目の駅名……を窓2に現わし」(第二頁左欄第二二行ないし第二四行)等の記載から明らかなとおり、手動又は電動の捲取装置が指針9を往復動作させる機構と全く切り離されており、表示幕の交換はその都度操作者が手動又は電動の捲取装置を操作して行なうものである。
被告の陳述
一 請求の原因一ないし三の事実は、いずれも認める。
二 同四の主張は争う。審決に原告ら主張のような誤りはない。
1 本願考案における「車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器」とは、手動的であつても自動的であつても車両が次の停車駅に向う途中で指令信号を発する指令器であればよいのであつて、「自動的に指令信号を発する指令器」に限定されるものではない。
このことは、本願明細書考案の詳細な説明に「この指令信号は、車内放送用テープに予じめ記録しておきこれを読出しても、または運転者等の操作によつて形成してもよい。」(第四頁第五行ないし第八行)と記載されていることからも明らかである。
したがつて、引用例のものも、「車両が次の停車駅に向う過程において指令信号を発する指令器」をそなえているということができる。
2 本願考案における表示幕については、実用新案登録請求の範囲に「複数の停車駅が表示された一又は二以上の表示幕」とあるように、本願考案に係る装置は表示幕を一つしかもつていないものをも含んでおり、その場合には、「表示幕を交換する表示幕制御器」は必ずしも必要ではなく、したがつて表示幕制御器の存在が本願考案の必須の構成要件であると解することはできず、
審決が本願考案と引用例との比較において桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器について言及しなかつたとしても、これをもつて誤りとすべきではない。
なお、表示幕が二以上ある場合の表示幕制御器について言及するならば、引用例の装置では、指針9が端まで来て一単位の動作を終了すると、指針は次段の表示幕に対応するように自動的に反転復行するものであるから、引用例のものでも一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に対応して表示幕の交換を自動的に行なわせるようにすることは可能である。ただ、引用例においては、表示幕を捲上げる機構について、指針の動作と関連せしめることが明確には開示されていないが、
その程度のことは、当業者であれば、容易に考案できることであると考えられる。
しかも、本願考案明細書では、切換器と表示幕制御器との相互間の具体的構成については、特に開示するところがなく、明細書中には「表示幕の移動は、例えば相互に連結した表示幕を巻取軸に巻取ればよく、この場合表示幕制御器CONは巻取軸駆動用のモータを制御する。これには桁上げ信号により表示幕制御器CONをセツトし、例えば表示幕の所定個所に設けたマーク検出信号によりセツトすればよい。」(第五頁第三行ないし第八行)との例示があるのみであり、従来公知のいずれの構成をもとりうるであろうことは、容易に類推しうるところであるから、本願考案の「切換器が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器」という構成は、引用例に開示されているに等しいと解される。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決にこれを取消すべき違法の点があるかどうかについて判断する。
成立について争いのない甲第二号証(本願考案明細書)によれば、本願考案の実用新案登録請求の範囲は、請求の原因二のとおりであり、これによると本願考案は、「切換器がー単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器」をそなえることを一つの構成要件とするものであると認められる。
一方成立について争いのない甲第三号証によれば、引用例に記載された車両の行先案内表示装置は、駅名を表示する指針が一単位の動作を行なうごとに表示幕を交換するものではあるが、その交換は駅名を表示する指針が一単位の動作を行なうごとに操作者が手動又は電動の捲取装置を操作してするものであつて、指針が一単位の動作を行なうごとに発せられる桁上げ信号に基づいてされるものではないことが認められる。
そうすると、引用例のものは、本願考案の前記の構成要件を備えておらず、本願考案と引用例とはその点でも相違しているものというべきであるにかかわらず、審決はこれを看過し、これを両者の相違点として挙げていない。
被告は、本願考案における表示幕については、明細書の実用新案登録請求の範囲に「複数の停車駅が表示された一又は二以上の表示幕」とあるように、本願考案に係る装置は表示幕を一つしかもつていないものをも含んでおり、その場合には「表示幕を交換する表示幕制御器」は必ずしも必要ではなく、したがつて、表示幕制御器の存在が本願考案の必須の構成要件であると解することはできず、審決が本願考案と引用例との比較において桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器について言及しなかつたとしても、これをもつて誤りとすべきではないと主張する。
なるほど、本願考案明細書の実用新案登録請求の範囲中には、被告指摘のとおり、本願考案に係る装置は表示幕を一つしかもつていないものをも含むものであるかのごとく記載されている部分があることを認めることができる。しかし同じ右実用新案登録請求の範囲中の他の箇所の記載によれば、本願考案は「表示器の表示幕を交換する表示幕制御器」をそなえることを考案の必須の構成要件とするものであり、表示幕が一つしかないものは表示幕を交換するということはあり得ず、表示幕を交換する表示幕制御器は必要がないから、前記実用新案登録請求の範囲中の「一又は二以上の表示幕を有する」とある部分の「一又は」の語は錯誤によつて挿入されたものであつて、本来削除すべきものであつたと認むべきである。なぜならば、
もし本願考案が表示幕を一つしかもたないもの、及び二つ以上もつものをも含むものとすれば、本願考案は桁上げ信号発生器及び表示幕制御器を除いたその他の器機をそなえた装置に係る考案と桁上げ信号発生器及び表示幕制御器をもそなえた装置に係る考案との二つの考案を含むものとしなければならないが、そうなると本件実用新案登録出願は実用新案法第6条に違反するものとなるからである。被告が真実本願考案は表示幕を一つしかもつていないものをも含むと考えるならば、本件出願を右実用新案法第6条第11条第3号に基づいて拒絶すべきである。本願考案は、明細書及び図面の記載全体の趣旨からすれば、複数の表示幕を有し、その表示幕を桁上げ信号に基づいて交換する表示幕制御器をもそなえた装置に関するものであると解せられ、したがつて、実用新案登録請求の範囲に記載された「一又は二以上の表示幕を有する」のうちの「一又は」は誤記によるものと認むべきものであるところ、その記載は実用新案法第5条第4項に違反するものであるから、同法第11条第3号により本件出願は拒絶され得べきものではあるが、実用新案登録請求の範囲に右のような記載があるからといつて、これを根拠に本願考案に係る装置は表示幕を一つしかもつていないものを含むとすることはできない。被告の主張は理由がない。
右のとおりであつて、引用例のものは、本願考案における「切換器が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて表示器の表示幕を交換する表示幕制御器」をそなえておらず、その点において引用例は本願考案と異なるにもかかわらず、審決は右相違点に言及もせず、且つ右の相違点における本願考案と引用例との比較もしていないのであつて、違法である。
被告は、また、引用例のものでも、一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に対応して表示幕の交換動作を自動的に行なわせるようにすることは可能であり、その程度のことは当業者であれば容易に考案できることである旨主張する。
もちろん、引用例のものでも、往復動作機構が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に対応して表示幕の交換動作を自動的に行なわせるようにすることは可能であると認められるが、そのこと自体は引用例にはなんら示唆されておらず、またそのような構成をとることは当業者であれば容易に考案できたことであると認めるに足る証拠はない。被告の右主張は理由がない。
被告は、さらに、本願考案明細書では、切換器と表示幕制御器との相互間の具体的構成については、特に開示するところがなく、この点は従来公知の構成をとりうるものであるから、本願考案の「切換器が一単位の切換動作を行なうごとに発する桁上げ信号に基づいて表示幕を交換する表示幕制御器」という構成は、引用例に開示されているに等しい旨主張する。
しかし、本願考案の右構成が引用例には開示されておらず、その示唆もないことは前説明のとおりであり、引用例に開示があるかどうかの問題と、本願考案明細書における記載の具体性の程度の問題とは、直接の関係はないから、被告の右主張は採用できない。
三 よつて、本件審決の取消を求める原告らの本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条の規定を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 高林克巳
裁判官 杉山伸顕
裁判官 八田秀夫
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