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関連審決 審判1982-8701
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  進歩性(3条2項) /  新規性(3条1項) /  拒絶理由 /  先行技術 /  実施例 /  公知技術 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 61年 (行ケ) 90号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1987/07/29
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が、昭和五七年審判第八七〇一号事件について、昭和六一年二月二七日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた判決
一 原 告主文同旨二 被 告1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「袋詰包装機における挾持腕対の開度調節装置」とする考案(以下「本願考案」という。)につき昭和五三年三月一○日実用新案登録出願をしたところ、昭和五七年二月二○日拒絶査定を受けたので、同年四月三〇日審判を請求した。特許庁はこれを同年審判第八七〇一号事件として審理し、昭和六一年二月二七日「本件審判の請求は成り立たない。」との審決をし、その謄本は同年三月二六日原告に送達された。
二 本願考案の実用新案登録請求の範囲 施回軸に固定された施回円板7の外周部分に一定の角度間隔で複数組の挾持腕対を軸支し、その各挾持腕対に互に反対方向に連動する連動装置を設けてなる袋詰包装機において、開度調節用の調節円板10を施回円板7と同心に装着し、各挾持腕対の一方の挾持腕を施回円板7に設けた軸21aに軸支して、その一方の挾持腕に軸21aを越えて直線上に突出する突片27を設け、さらに、前記の軸21aに他方の挾持腕の軸21bの方向に突出する揺動腕28の基端を軸支すると共に、突片27の突出端に、前記の揺動腕28とほぼ平行にした第一リンク29を軸連結し、
第一リンク29の自由端と揺動腕28とを前記突片27とほぼ平行に配した第二リンク30により軸連結し、調節円板10の縁部の軸子15に一端を連結したリンク16の自由端を第一リンク29と第ニリンク30との連結軸32に連結したことを特徴とする袋詰包装機における挾持腕対の開度調節装置。(別紙図面参照)三 審決の理由の要点1 本願考案の実用新案登録請求の範囲は前項のとおりである。
2 昭和六〇年九月二六日付拒絶理由通知書で指摘した明細書の記載の不備について検討すると、同年一二月一四日付の全文を訂正した明細書(以下「本願明細書」という。)には、「本願の考案は、実開昭五一-一五九六八四号公報に開示されている装置を改良し、円板に相当する調節板によつて送りねじ等を介することなく揺動腕対の開度を調整できるようにしたものである」旨の記載があることは認められる。
3 しかし、右明細書には、実開昭五一-一五九六八四号公報(以下「引用例1」という。)及び特開昭四九-九六八九四号公報(以下「引用例2」という。)に記載された考案との異同、長短等に関する説明、記載は存在しないし、右「送りねじ等を介することなく」と記載された部分は、送りねじ等の代りとなる別の要素(部材、部品)を必要としないことを明確に意味するものではないから、依然として漠然としたものにすぎない。
4 そうだとすると、前記拒絶理由通知書で指摘したとおり、本願明細書は、本願のリンク機構が引用例1に記載されたピニオン付送りねじ等や引用例2に記載されたローラ及びレバー等と区別される独特の効果は何かという点の記載を欠き、実用新案法5条3項の要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
四 審決の取消事由1 審決の理由の要点1、2は認めるが、3、4を争う。
2 本願明細書(甲第二号証)及び願書添付図面(甲第六号証の三)には、本願考案に特有なリンク機構を有する「袋詰包装機における挾持腕対の開度調節装置」の構造と作用効果が明記されており、引用例1(甲第七号証)のピニオン付送りねじ等による構造及び引用例2(甲第八号証)のローラー及びレバーによる構造との相違と本願装置のリンク機構による特有な効果が必要十分に記載されている。
したがつて、実用新案法5条3項の要件を満たしていないとした審決の認定は誤つており、取り消されるべきである。
すなわち、本願考案の実用新案登録請求の範囲には、二に記載したとおり、図面の記載を引用して本願挾持腕対の開度調節装置を構成する調節円板10、施回円板7、挾持腕軸21a、21b、突片27、揺動腕28、第一リンク29、第二リンク30、
連結軸32等の要素と関連機構が記載されている。また、本願明細書考案の詳細な説明の項には、本願考案の対象について、「この考案は袋詰包装機が備える包装袋支持の挾持腕対の開度を、使用する包装袋の巾に合わせて任意に調節するようにした操作の極く簡単な開度調節装置に関する。」(甲第二号証二頁一一行ないし一四行)と説明したうえ、包装袋の横巾に応じて挾持腕対の開度を調節する必要があることが記載され、ついで、公知技術として、実開昭五一―一五九六八四号公報(引用例1)の円板及び歯車の回転によりピニオンを介した送りねじ等の複雑な連動機構を有する挾持腕対の開度調節装置が説明され、本願考案がかかる公知装置を改良し、「調節板によつて送りねじ等を介することなく揺動腕対の開度を調整できるようにしたもので」あることが説明されている(同四頁三行ないし六行)。
そして、右明細書には、従来のピニオン付送りねじ等の機構あるいはローラ及びレバー等の機構と全く別異のリンク機構(ただし、リンク機構自体は周知である。)を有する本願開度調節装置の具体的実施例が添付図面を引用して詳細に記載されている(同五頁四行ないし一一頁四行)。
さらに、同明細書に「本考案は以上の説明で明らかなように、各挾持腕対の一方の挾持腕を施回円板7に設けた軸21aに軸支して、その一方の挾持腕に軸21aを越えて直線状に突出する突片27を設け、さらに、前記の軸21aに他方の挾持腕の軸21bの方向に突出する揺動腕28の基端を軸支すると共に、突片27の突出端に前記の揺動腕28とほぼ平行にした第一リンク29を軸連結し、第一リンク29の自由端と揺動腕28とを前記突片27とほぼ平行に配した第二リンク30により軸連結し、調節円板10の縁部の軸子15に一端を連結したリンク16の自由端を第一リンク29と第二リンク30との連結軸32に連結した構成からなり、調節円板10を施回円板7に対して相対的に回転することにより、該調節円板10の前記の軸子15が挾持腕対24a、24bの一方の挾持腕24aの旋回円板7に設けた軸21aに対して近づいたり遠ざかつたりする移動を生ずるが、前記一方の挾持腕24aには軸21aを越えて直線状に突出する突片27を設けてあり、その突片27の突出端に、第一リンク29の一端を軸連結し、該第一リンクの他の一端の連結軸32に前記の軸子15に一端を連結したリンク16の他の一端を連結しているので、」(同一一頁五行ないし一二頁一二行。以下(a)の記載という。)と本願考案に特有な構造が説明され、つづいて「前記のように軸子15が移動すると、
第一リンク29及び突片27を介して一方の挾持腕24aが揺動し、公知の連動装置及び引張ばねが設けてある挾持腕対の開度を包装袋の巾に応じて可成りの範囲で一斉にかつ無段階に調節できる特有の作用効果を生じて、袋詰包装機に用いる包装袋の横巾の変化に適応させ得る効果をもつ。」(同一二頁一二行ないし一三頁三行)と記載され、かかる構造としたことによる特有な効果が説明されている。この記載は、まさに、引用例1、同2記載の発明、考案にない本願に特有の効果を記載したものである。
請求の原因に対する認否及び主張
一 請求原因一ないし三は認めるが、四の主張は争う。
二 原告主張の審決取消事由は失当であり、審決には違法の点はない。
原告のいう「本願考案の効果」は、引用例1のピニオン付送りねじ等によつても得られる効果、換言すると、本願考案のリンク構機によらずとも得られる、きわめてありふれた周知の効果でしかない。
目的及び効果を重くみる一つの側面では引用例1の考案と同一でありあるいは進歩性を有せず、構成を重くみる別の側面ではリンク機構を必須要件とする点で引用例1の考案と相違する考案であるような本願の考案にあつては、送りねじ等でなく、ローラー及びレバー等でもない、まさにリンク機構であることの効果(リンク機構自体は周知であるから、この効果は送りねじ等と対比して容易に明確になるものと認められる)、つまり独特の効果を記載してはじめて実用新案法5条3項の「考案の効果」が記載されたことになるのである。
「『考案の効果』には、当該考案によつて生じた特有の効果をなるべく具体的に記載する。
」とする実用新案法施行規則2条の様式第三の備考13ハも右の趣旨を支持するものである。
また、構成が異なると通常はそれに基づく独特の効果が存在し、その効果の存在によりその構成の相違による意味が明確となり、ひいてはその考案が明確になるものである。本件の場合も、従来のピニオン付送りねじ等やローラー及びレバー等に代えてリンク機構を用いているのであるから、その相違に基づく独特の効果を記載することよつてはじめてそのように構成を変えたことの意味、したがつて本願考案が明確になるものと認められ、その意味で、リンク機構が、ピニオン付送りねじ等(引用例1)やローラー及びレバー等(引用例2)と区別される独特の効果は何か、この点の記載を欠く点で明細書の記載は不備である旨の拒絶の理由を通知したものである。しかるに、これに対して、本願考案がリンク機構を用いたことによる効果を従来のものと対比して記載することなく、本願考案の独特の効果には全く触れず、単に「送りねじ等を介することなく」としたのでは、本願考案は、送りねじ等に代えてリンク機構を用いているのであるから、送りねじを介していないのは理の当然であつて、拒絶の理由にこたえたことにはならない。
証拠関係(省略)
理 由一 特許庁における手続の経緯、本願考案の実用新案登録請求の範囲、審決の理由の要点が原告主張のとおりであることは当事者間に争いがない。
二 そこで審決の取消事由の存否について検討する。
(一)成立に争いのない甲第二号証及び同第六号証の三によれば、本願明細書考案の詳細な説明の項には、本願考案の属する技術分野として、「この考案は袋詰包装機が備える包装袋支持の挾持腕対の開度を、使用する包装袋の巾に合わせて任意に調節するようにした操作の極く簡単な開度調節装置に関する。」(二項一一行ないし一四行)と記載され、先行技術である引用例1記載の考案の技術内容につき、
「従前の同目的の調節装置で旋回円板と同心に設けた円板に環状の歯車を設け、その歯車にピニオンを係合した送りねじを設け、その送りねじに、一方の挾持腕に連結した揺動アームの端部のナツトを螺合し円板及び歯車の小回転によりピニオンを介して送りねじを連動回転し、その回転で前記ナツトを送り、揺動アームを介して一方の挾持腕を移動させると共に、連動機構を介して他方の挾持腕を反対方向に連動し、それらによつて挾持腕対の開度を調整するようにした装置」(三頁七行ないし四頁一行)であると説明したうえ、本願考案の目的、効果として、「本考案はかかる公知技術を改良し、前記の円板に相当する調節板によつて送りねじ等を介することなく揺動腕対の開度を調整できるようにしたもので」(四頁三行ないし六行)あることが記載され、つづいて添付図面を引用して本願考案の構成及びその作用が実施例により説明され、原告引用の(a)の記載の後に、本願考案の効果として、
「前記のように軸子15が移動すると、第一リンク29及び突片27を介して一方の挾持腕24aが揺動し、公知の連動装置及び引張ばねが設けてある挾持腕対の開度を包装袋の巾に応じて可成りの範囲で一斉にかつ無段階に調節できる特有の作用効果を生じて、袋詰包装機に用いる包装袋の横巾の変化に適応させ得る効果をもつ。」(一二頁一二行ないし一三頁三行)と記載されていることが認められる。
以上の記載によれば、本願考案はリンク機構を用いた袋詰包装機における挾持腕対の開度調節装置にかかるものであり、その目的、効果は引用例1記載の考案の送りねじ等を介することなく揺動腕対の開度を調整することであることが明らかである。そして、リンク機構自体が周知であることは当事者間に争いがなく、本願明細書のリンク機構の構成及びその作用についての前記記載に不備な点はないので、当業者が本願明細書記載のリンク機構をみればリンク機構を用いたことによる効果は容易に理解することができるものと認められる。
したがつて、本願明細書考案の詳細な説明の項には当業者が容易に実施することができる程度に本願考案の目的、構成及び効果が記載されているということができる。
(二) 被告は、本願明細書の目的、効果についての前記記載(四頁三行ないし六行)は、本願考案が送りねじ等に代えてリンク機構を用いるものであるから本願考案の特有の効果とはいえない、本願明細書の効果についての前記記載(一二頁一二行ないし一三頁三行)は引用例1の考案によつても得られる効果であるから本願考案の特有の効果ではない旨主張し、実用新案法施行規則2条の様式第三備考13ハを援用する。
右様式第三備考13ハにいう「当該考案によつて生じた特有の効果」は先行技術と対比して当該考案だけが生ずる効果の意味に解すべきことは被告主張のとおりである。しかし、実用新案法5条3項は当業者が容易にその考案の実施をすることができる程度に出願人に考案の内容を開示させるために、明細書考案の詳細な説明にその考案の目的、構成と並んで効果の記載を要求していると解すべきであるから、右の特有の効果は必ずしも技術的に高度な意味を有するものである必要はなく、当業者において考案の目的、構成の記載から効果が容易に理解することができ、考案を容易に実施することの妨げとならないときは、先行技術と区別する特定の事項を効果として記載することで足りると解するのが相当である。本願明細書においては、前叙のとおり、リンク機構の構成、作用の記載からリンク機構を用いたことによる効果は容易に理解することができるのであるから、仮に本願明細書の効果についての前記記載(一二頁一二行ないし一三頁三行)が被告の主張するとおり引用例1の考案の効果と同一であるとしても、前記「送りねじ等を介することなく」との記載をもつて本願考案の効果の記載があると認めて差支えないというべきである。
もつとも、考案の効果の記載はその考案新規性進歩性があるか否かの判断の重要な資料となることがあることは被告主張のとおりであるが、前叙の実用新案法5条3項の立法趣旨に照らせば、効果の記載が右の判断の資料として不十分であるときは、明細書の記載の不備の有無の問題として判断すべきではなく、新規性進歩性の有無の問題として判断すべきである。
したがつて、被告の右主張は採用できない。
(三) そうすると、本願明細書が実用新案法5条3項の要件を満たしていないとした審決の判断は誤りであるから、審決は違法として取り消しを免れない。
三 よつて、原告の本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判官 瀧川叡一
裁判官 清野寛甫
裁判官 木下順太郎
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