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関連審決 抗告審判1964-203
関連ワード 技術的範囲 /  考案 /  図面 /  構造 /  進歩性(3条2項) /  先願 /  拒絶理由 /  削除 /  実施例 /  先願 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 41年 (行ケ) 148号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1969/02/26
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
原告訴訟代理人は、「昭和三九年抗告審判第二〇三号事件について、特許庁が昭和四一年八月四日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、請求原因として、つぎのように述べた。
一、原告は、昭和三四年五月二六日「電気発光装置」の考案につき特許庁に実用新案登録の出願をしたが(同年実用新案登録願第二九、八三四号)、昭和三九年四月一三日拒絶査定を受けたので、これを不服として同年五月二六日抗告審判の請求をしたところ(同年抗告審判第二〇三号事件)、特許庁は昭和四一年八月四日抗告審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本が同年九月一〇日原告に送達された。
二、この実用新案登録願の説明書の「登録請求の範囲」の記載は、「不透明の中心電極1の外周を発光性誘電体層2が囲繞し更にその上に透光性の外被電極3が積層されて一体となり軸方向に延びて成る電気発光装置の構造」である。
三、前記抗告審判の「審決の理由」は、末尾添付の審決写の該当欄に記載のとおりである。
四、しかし、この審決はつぎの点で判断を誤つた違法があるから、その取消を求める。
(一) 拒絶査定に先願として引用された登録実用新案第五一二、五三八号「電気発光筒」(昭和三一年六月一九日登録出願、同三五年一月八日出願公告。以下、単に引例という)は、最内側に透明電極つき透明絶縁物質筒を有するのに対し、本願のものは最内側に不透明の中心電極を有する点について、審決は、両者の構成上の差異を認めながら、その点に効果の差異がないからこれは単なる構造上の微差にすぎない、と判断している。
イ、しかし、引例における筒外発光光線の強度の増大の効果は、螢光物質層3から透明絶縁物質筒5の内方へ向う発光光線が、右透明絶縁物質筒5を透過しさらに直進して対向側の透明絶縁物質筒5に入り、これを通過して順次螢光物質層3、導電物質の透光物質層2、透明絶縁物質筒1を透過して、直接筒外方向に投射される発光光線とは逆の方向において筒外方向に投射される結果、この位置において直接筒外方向に向う発光光線を強めるという効果を奏するものである。
これに対し本願のものは、装置内方向に発する発光光線は、中心電極1が不透明であるが故に、その表面(必要に応じて表面を研磨、電鍍等による処理または酸化チタンのごとき物質を塗布して発光光線の反射率をよくすることができる)にて反射され、これが再び発光性透電体層2および外被電極3を順次透過して外部へ投射されるという作用を営み、その結果、装置外方に向う発光光線を強めるという効果を奏するものである。
すなわち、引例は透明電極つき透明絶縁物質筒を有することに伴い、発光光線の「透過作用」により筒外への発光光線の増強の効果を奏するものであるのに対し、
本願は不透明の中心電極を有することに伴い、発光光線の「反射作用」により装置外への発光光線の増強の効果を奏するものである点において、両者は構造とこれに基づく作用を異にするのである。
そして、本件のように、引例と本願とが先願と後願の関係にある場合に、両者が旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第4条にいう同一または類似の実用新案であるとされるのには(引例が公知文献となるような場合と異なり)、本願の引例との間の進歩性の有無は問題とならず、本願の技術的範囲が引例のそれと同一であるか、引例のそれに含まれることを要するのであるから、この両者間に右のとおり構成上の差異があつて、これに伴い作用の相違がある以上、そこから生じる効果において両者間に差異がなくよしんば本願の方が効果において劣るものであつても、
両者は右規定にいう同一または類似の実用新案とはいえないのである。したがつて、右の差異を単なる構造上の微差にすぎないとし、ひいて本願の実用新案が引例のものと類似であるとした審決の判断は誤りである。
なお、不透明物質が必ずしも高反射物質でないことは事実であるけれども、本願は電気発光装置としての構造上、装置外方へ投射される発光光線を強めうるように中心電極1に高反射性のものを適用することを企図していることは(本願実用新案の説明書中に明記されていなくても)、工業目的からして自明のことであり、一方において、かりに中心電極1自体が高反射性を有していない場合でも、その表面に高反射性の別の層を設けることによりこれに高反射性を付与して同一の効果が得られるのであるから、これらいずれの場合にも共通する構造上の特徴として、本願は中心電極1が「不透明」であることを限定したものである。
ロ、また、本願においては不透明の中心電極1を金属で構成する場合は、(イ)加工前に常温下で任意の形状に変形しうるので、複雑な形状の各種文字、図案を表示する装置を容易に得られ、(ロ)ガラス筒等に比し簡単に小径で強度の大なものを得られ、(ハ)さらに高温処理が可能になるので、発光性誘電体層2および外被電極3をホーロー技術の適用により形成することができ、したがつて引例のガラスを基体するプラスチツク型のものに比し、防湿性が良好で長寿命のホーロー型の装置が得られるのである。本願は、前記構成上の差異にもとづき、このように引例にみられない効果を奏するのに、審決はこれを看過し前記の誤つた判断をするにいたつたのである。
(二) つぎに、引例は最外側に透明絶縁物質筒を有するのに対し、本願はこれを有しない点についても、審決は両者の構成における実質上の差異とはならず、構造上の微差にすぎない、と判断している。
しかし、引例において透明絶縁物質筒1の存在は、直接筒外に投射される螢光光線を強めるという効果の面では必須のものではないこと審決のいうとおりであるけれども、それは機械的に十分な強度を有し、装置の保護層としての機能のほか、装置の支持体としての役割をも果たしているものである(この点について被告は、引例における透明絶縁物質筒1が支持体として作用する等については公報上の記載はないというが、引例において透光物質層2、4および半透明螢光物質層3は透光の必要上おのずから薄層であることが要求されるので、これらが支持体としての機能を有しないことは明らかであるから、その機能は透明絶縁物質筒1および5が有するのであり、したがつて引例においては公報に記載はなくても、これらがこのために十分な機械的強度を有することが必要条件である。)から、引例の構成要素として不可欠のものであり、したがつてその登録請求の範囲にも明記されているのであつて、これを除外して引例を考えることはできない。
これに対し本願のものは、例えば装置全体をシリコンオイル等の絶縁油中に浸漬する場合など、必ずしも外被電極3の外側に保護膜を必要とするものではないから、保護膜は必須の構成要素とされていないのである。かりに、本願のものにその実施上保護膜を設ける場合でも、中心電極が前記のとおり強度をもち支持体としての機能を果たすので、保護膜は薄い膜で足り、この点において、支持体としての役割を果たし、その機械的強度を要求される引例の透明絶縁物質筒1とは、型としての構成上ならびに機能上明確に区別されるべきものである。
また、この点の構成上の差異に基づいて、本願の保護膜は、中心電極1の外周に発光性誘電体層2、外被電極3を順次積層した上に、さらに積層形成するものであるから、装置が長大であつても屈曲状であつても製造が容易であるのに反し、引例のものは前記のように支持体として十分な機械的強度を有する透明絶縁物質筒1および5を有する関係上、装置が長くなれば加速度的に製造困難となり、とくに彎曲した発光装置を得ることは至難である。このように長大ないし特に彎曲した装置の製造が容易であるという点においても本願は引例にない効果を有するのである。
このように、最外側の構成上の差異にもとづき、作用効果の点で本願は引例との間に顕著な差異を有するのに、審決がこれを看過し、単に装置の破壊防止、危険防止という効果の一端の共通性にのみ着目して本願の実用新案が引例のものと類似であるとしたのは誤りである。
(三) 右(一)、(二)の差異が、個々には本願と引例とを非類似とするに足る相違点ではないとしても、これらを総合して考察してみれば、本願は全体として引例との間にその目的、構成および作用効果において異なるものがあり、旧実用新案法にいう型として別異なものであるというべく、これを類似であるとした審決の判断は誤りである。
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、請求原因に対する答弁としてつぎのように述べた。
一、原告の主張一ないし三の事実は認めるが、同四の審決が違法であるとする主張は争う。
二、原告の主張四、(一)について。
(一) 本願は、「棒状または帯状をなす電気発光装置」を得ることを目的とした考案であつて、出願当初の説明書、とくにその「登録請求の範囲」の記載では、中心電極1は「透明または不透明」とされていたところ、審査の段階で引例が拒絶理由として引用された結果、この「透明または」の記載が削除され、中心電極1は不透明なものに限定されるにいたつたのである。しかし、本願の目的とする前記のような電気発光装置を構成するには、その中心電極は説明書に記載されているように、中空または無空の導電体であればよく、それが透明であるか不透明であるかの相違による作用効果上の差異についても、またとくに本願において中心電極を不透明とすることによる作用効果についても、説明書にはなんらの記載がなく、また通常の技術常識にてらしてそれが明白であるということもできない。したがって、本願において中心電極1を不透明とすることによる効果はなにもなく、その限定は無意味な限定にすぎないから、この点に引例との構成上の差異があつても、それは構造上の微差にすぎない。
(二) なお、「不透明」であることは、光がその物質を通過しないことを意味するだけで、その表面における反射とは無関係であるから、本願における中心電極1が不透明であることから、それが高反射性であることは自明であるとする趣旨に出る原告の主張には根拠がなく、現に本願の説明書にも「不透明電極の外表面を研磨、電鍍等による処理または酸化チタンのごとき物質を塗布して発光光線の反射率をよくして発光効率を増大せしめることもできる」と任意選択的に、記載されているだけで、「不透明の中心電極1」の反射性能についても、その材料についてもなんら記載されていないのである。また、屈折率を異にする物質との境界面において光が反射および屈折することは光学上の常識であるから、引例においても、螢光物質層3と蒸着層4との境界面、同4と内側透明絶縁物質筒5との境界面および同5と中心部空間との境界面においてそれぞれ光が反射されることは明らかで(この最後の境界面における反射を別にしても、なお右のその他の境界面における反射作用の存在は争えない。)、引例に反射作用がないというのも誤りである。したがって、本願が反射作用による光線増強の効果をもつものであるとしても、引例もまた反射作用によるこの効果をもつものであり、これに併せて透過作用による光線増強の効果をもつものであつて、一般に発光装置において発光層の内側に反射面を配置して発光効率を高めることが本願出願当時周知の技術手段にすぎないことを考慮すれば、螢光層から装置内方へ発せられる光線を装置外部へ指向させることによつて、右螢光層から直接装置外部へ投射される光線を強めるという目的を達するうえで、本願のように反射作用のみを利用するか、引例先願のように反射作用と透過作用を併用するかの差異に格別の意義があるものとは認められないから、両者のこの点の差異は構造上の微差としかいえないのである。
(三) また、本願において中心電極の材料についてはなにも限定がなく、その材質が金属であることは登録請求の記載とは無関係であるから、中心電極が金属であることを前提とする原告の主張は根拠がない。
三、原告の主張四、(二)について。
引例における外側透明絶縁物質筒1が、支持体として作用するとか、そのために十分な機械的強度を有するとかという公報上の記載はないのであり、そしてまた引例において、原告の主張と異なり、その必然性は全くない(内側または外側のいずれか一方の絶縁物質筒が支持体機能をもてば十分である。)のであるから、これを前提としての装置製造上の本願の利点等をいう原告の主張は誤りである。そして原告のいうように、本願のものが装置全体をシリコンオイル等に浸漬する場合など、
保護膜を必要としないとしても(具体的にどのような場合に該当するか不明であるが、)、このようなきわめて特殊な場合にのみ保護膜の必要がないということ自体、少なくとも一般用途の場合には保護膜を必要とすることの証左にほかならない。(原告は本願のものにおいて保護膜を必要としない場合の具体的使用例については、これを明らかにしないが、かりにそのような例があるとすれば、引用先願のものも保護膜(外側絶縁物質筒1)なしで使用され得るものと考えられるのであつて、通常の技術常識上、本願のものが保護膜を必要としないのに、引用先願のものがこれを必要とするような使用例はあり得ないのである。)本願の説明書にも、外被電極の破損防止のためにその外表面にグラスライニング、透明プラスチツク等の膜を設けた方がよい旨の記載があり、実際上の工業的製品としては、破損防止、危険(感電、漏電等)防止のためにこれらの膜または層を設けるのが通常であろう。
引例においては実際上の製品を想定して外側に絶縁物質筒1を設けることを登録請求の範囲に記載し、本願においてはこれを記載しなかったというに止まるものと見られ、両者間に実質上の差異はなく、これを構造上の微差と認定した審決は正当である。
四、原告の主張四、(三)について。
以上二点の差異は機能上相互に関連のあるものではないから、たといこれらを総合して判断しても、引例と本願とは全体として類似であるといわざるをえない。
証拠(省略) 理 由1、原告の主張一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
2、本願の説明書に、「登録請求の範囲」として、原告がその主張二でいうとおりの記載があることは、右のとおり当事者間に争いがなく、また甲第三号証(本件で提出された甲号証は、すべて、その成立につき争いがない。)によれば、引例は「電気発光筒」の考案にかかり「ガラス等の透明絶縁物質筒1の内面に順次に酸化錫等の蒸着による導電物質の透光物質層2、半透明螢光物質層3および2層と同様の酸化錫等の蒸着層4、最内側に透明絶縁物質筒5を設けて成る電気発光筒の構造」であることが認められる。
そして右によれば、引例は最内側に透明電極つきの透明絶縁物質筒を有するのに対し、本願は不透明の中心電極を有する点および引例は最外側に透明絶縁物質筒を有するのに対し、本願はこれを有しない点において構造上一おうの差異が認められるだけで、その他の点では一致しているといえる。
3、原告の主張四、(一)について。
まず甲第一号証および甲第四号証によれば、本願の説明書の「実用新案の説明」の項には、本願考案の目的は、従来の電気発光装置が発光性誘電体層を間に挾んだ二個またはそれ以上の相対する平板または彎曲板など板面状の電極を具備した構造であるのに対し、特に直線状または任意の形状に彎曲した棒状または帯状をなす電気発光装置を提供しようとするものであり、この装置が任意の断面形状の軸線方向に延びた発光体であつて任意の成型をなしうる特徴を有するので、例えば各種文字、図案を形づくることが容易であるため従来のネオンサインと同一用途に、また軸に垂直な切断面の外被電極がエンドレスであるのを利用して理髪店用の回転回筒広告灯にも適用できる、という効果をもつものである旨記載されていることが認められる。
そこで、このような本願考案の目的、効果との関係において、前記「登録請求の範囲」の記載のうち「不透明の中心電極1」の部分における「不透明の」という限定について考えてみると、前記甲号各証によれば本願の説明書には、中心電極1が不透明であること自体による作用効果についてはなにも記載がなく、単に、「不透明電極の外表面を研磨、電鍍等による処理または酸化チタンのごとき物質を塗布して発光光線の反射率をよくして発光効率を増大せしめることもできる。」との記載により、特別の高反射処理を施こして反射による発光効率を増大させるような任意的な一実施例を示しているにすぎないことが明らかであり、そしてまた、前記のような本願考案の目的および効果からすれば、中心電極1が不透明でなければ、右目的および効果が達成できないという技術上の必然性も考えられないところである。
したがつて、本願の「登録請求の範囲」に中心電極1を「不透明の」ものに限定していることは、考案の目的、作用効果との関係では意味のない限定を附したにすぎないものであつて、それは本願考案の特徴事項とするにあたらないことであり、この意味で右の限定内容は本願の考案を構成する必須の要件ではないといわねばならない(なお、前記甲号各証によれば、本願の出願当初の説明書には、その「実用新案の説明」および「登録請求の範囲」のいずれの項にも「透明または不透明の中心電極1」と記載されていたところ、特許庁の審査の段階で「本願において中心電極を透光性とした場合」には引例の「先願との関係に疑義を生ずるおそれがある」ためこれとの類似関係を回避するため(この点につき甲第四号証中の「意見書」参照)、原告において右の「透明または」の文字を削除する訂正をして、不透明のものに限定したという経過にあること、そして、右の訂正にかかわらず、本願の当初の明細書の「実用新案の説明」の項の他の部分には何の訂正も加えられていないこと(出願当初の明細書のこの項の記載は、限定のない中心電極を有する場合についての記載であるから、これを不透明のものに限定した以上、その限定に作用効果上格別の意味があつて、考案の構成上意味ある限定であるならば、その作用効果に関連して当然右部分の記載に訂正が加えられるものと考えられる。)が認められるのであつて、出願の経過にあらわれている右の事跡は、訂正による中心電極の限定が、作用効果とは関係のない、すなわち考案の構成上格別の意味のないものであることを物語るものであるといえよう。)。
したがつて本願と引例との考案としての異同を対比判定するにあたり、本願の中心電極1が不透明である点は、格別に意味あることすなわち考案構成上の独自の要件として考慮するに値しないことというべく、この点で原告の四、(一)イの主張はすでに失当であつて、結局この部分における本願の引例との差異は設計上の微差であると見るべきに帰する(附言するに、原告は、本願は、電気発光装置としての構造上、装置外方へ投射される発光光線を強めうるように、中心電極1に高反射のものを用いることは工業目的上自明のことであり、かりにそれが高反射性を有しない場合には、表面に高反射性の層を設けてこれに高反射性を付与し、同一の効果をえられるのであるから、本願において中心電極1を「不透明の」と限定したこと自体本願が中心電極1の表面における反射による主張の如き効果を有することをあらわしているとして「不透明の中心電極1」による引例との差異を主張する。しかし、たとえこの種装置において、一般に装置外方に投射される発光光線を強めうるように、反射その他の光学上の原理を利用するよう企図すること自体は通例であるとしても、本願の明細書には、中心電極1を「不透明」にすることによる作用効果についてはその記載がないこと前記のとおりであつて、すなわち具体的に「不透明の中心電極1」の表面の部分においての反射ということについては説明されていないのであり、しかも右の「不透明の」という限定が、技術上当然その表面における反射作用に関係しての限定とは解されない以上(「不透明」はその表面における反射とは関係がない。)中心電極1を不透明にしたことが、あたかもこの部分の表面の反射を目途しているものと即断し、この目的にそう格別の選択ないし操作を当然のことであるとしたうえこれによる作用効果を本願の作用効果であるとする原告の右主張は、説明書に基づかない独自の主張というほかなく、採用の限りではない。)。
なお、また、不透明の中心電極を金属で構成する場合の効果に関する原告の主張ロは、本願が中心電極の材質について限定するところがなく、その説明書の「実用新案の説明」の項に「中心軸の電極としては例えば中空または無空の金属がよくその他導電性ガラス、導電性プラスチツクが使用できる」として、単なる一実施例として金属をあげているにすぎないのであるから、一実施例のもつ作用効果をとり上げて本願考案の作用効果を論ずる誤りがあり、その主張自体採用できないものである。
4、原告の主張四、(二)について。
甲第三号証(引例の公報)によれば、引例の電気発光筒において装置支持体としての機能を外側透明絶縁物質筒1に依拠することについて直接触れるところがなく、技術上そのことを窺わせるものはない(技術的には、内側透明絶縁物質筒5にこの機能をもたせることもできるであろう。)。したがつて、引例の透明絶縁物質筒1が十分の機械的強度を必要とする支持体となることを前提とし、本願との構成上の相違をいう原告の主張は、すでにその前提において失当であつて採用できない。ひいてまた、引例の右外側透明絶縁物質筒1が十分の機械的強度を有することを前提とし、本願の装置との間に各種製品の製造上難易の差があるとして、この点に本願と引例との作用効果上の差異があるとする原告の主張ももとより前提を欠くもので理由がない(なお附言するに本願の説明書と引例の公報とによれば各構造の記述の順序が、本願においては内側から外側へ、引例においては外側から内側へという順序に記載されているのであるが、それらが単なる記述の順序にすぎないもので、構造形成の順序を示すものでないことは実用新案の構造の記載であることから当然である。)。
そして装置全体をシリコンオイル等の絶縁油中に浸漬し、保護膜を用いないような特殊な使用方法がありうるとしても、本願の説明書に例示する「ネオンサインと同一の用途」ないし「理髪店の回転円筒広告灯」等に用いる装置の通常の使用方法において、外被電極3の外側に感電漏電防止ないし装置の被損防止のための保護層を設けることは、この種装置としてむしろ当然のことであり、本願の説明書にも「外被電極の表面が破損するのを防止するため、その外表面にグラスライニング、
透明プラスチツク等の膜を設けた方がよい」旨記載されているのであつて、引例における外側透明絶縁物質筒1もこのような保護層としての役割を果たすものと認められる。
以上のとおりであるから引例が外側に透明絶縁物質筒1を有し本願が格別これを掲げていないことは、両者の考案としての差異をもたらすような相違ではなく、構造上の微差にすぎないというべきである。
5、原告の主張四、(三)について、
原告の主張四の(一)および(二)に指摘された本願と引例との差異が、いずれも構造上の微差にすぎず、これらを総合してみても、両者が考案として別異のものであると認めえないことは、すでに説明したところから明らかであるから、原告のこの主張も採用できない(なお、さきに認定した本願のもつ効果、すなわち本願の装置が、従来の相対する平板または彎曲板など板面状の電極を具備した電気発光装置に対し、棒状、帯状等任意の断面形状の軸線方向に延びた発光体であるため任意の成型をなしうる特徴を有するという点については、引例のものも筒状の軸線方向に延びた発光体であつて任意の成型をなしうることがその構成上容易に窺われ、したがつて両者はその点の技術思想においても共通であると解することができる。)。
6、以上、本願は考案として引例の域を出ないものであるから、引例と類似の実用新案というべきであり、かつ、本願の出願日が引例のそれよりものちであることは、弁論の全趣旨により明らかであるから、実用新案法施行法第21条の規定によりなお効力を有する旧実用新案法第4条を適用して本願を登録すべきでないとした審決には誤りがない。
よつて、審決の取消を求める原告の請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第89条を適用して、主文のとおり判決する。
追加
(別紙)昭和三九年抗告審判第二〇三号審決主文本件抗告審判の請求は成り立たない。
審決の理由本件は、実用新案施行法第21条第1項の規定により、なお従前の例によつて審理する。
本願は昭和三四年五月二六日の出願であつて、その実用新案の要旨は図面、説明書、及び昭和三七年一〇月一〇日付提出の訂正書の記載からみて、訂正された登録請求の範囲に記載されるとおりの「不透明の中心電極1の外周を発光性誘電体層2が囲繞し更にその上に透光性の外被電極3が積層されて一体となり軸方向に延びて成る電気発光装置の構造」にあるものと認められる。
一方、原査定の拒絶理由に引用された登録実用新案第五一二五三八号(実公昭三五―二三〇)は昭和三一年六月一九日の出願であつてその実用新案の要旨は、その登録請求の範囲に記載されるとおりの、「ガラス等の透明絶縁物質筒1の内面に順次に酸化錫等の蒸着による導電物質の透光物質層2、半透明螢光物質層3及び2層と同様の酸化錫等の蒸着層4、最内側に透明絶縁物質筒5を設けて成る電気発光筒の構造」にあるものと認められる。
そこで、本願の実用新案(以下前者という)と引用登録実用新案(以下後者という)とを対比すると、両者は、後者では最外側に透明絶縁物質筒を有するに反し前者ではこれを有しない点、後者では最内側に透明電極付きの透明絶縁筒を有するに対し前者では不透明の中心電極を有する点で、構造上一応の差異が認められるだけで、その他の点では一致していることが認められる。
そして上記差異第一点については、筒内方向に発する螢光光線が螢光物質層を通過して筒外に出て、直接筒外に投射する螢光光線を強めるという効果を奏する上には、後者の透明絶縁物質筒が必須のものとは認められず、一方前者の説明書(第二頁第九〜一二行)には「此の場合その(外側の透明導電層のことと認められる)表面が破損するためにその外表面にグラスライニング、透明プラスチツク等の膜を設けた方がよい」との記載が認められるので、この点は両者間の実質上の差異をなさず、構造上の微差にすぎないものと認められる。
つぎに上記差異第二点については、請求人も請求書においてその差異を述べ、さらにこれによる効果として、後者において筒内方へ出る発光の経路を内側発光点→蒸着層4→透明絶縁物質筒5→(反射)→透明絶縁物質筒5→蒸着層4→螢光物質層3→蒸着層2→透明絶縁物質筒1→外部であるとし、前者においては上記4→5→(反射)→5→4の透過経路が省略できるから、その分だけ発光強度が増すという趣旨の主張をしているが、たとえ光線経路が上記主張のとおりであるとしても、
上記の各構成部材はいずれも透明であつてこれらによる光の吸収は極めて小さいものと認められ、一方前者の不透明中心電極については、「不透明」という用語が必ずしも光の反射率の大なることを意味するものではなく、不透明体表面の反射率はそこに反射層を設けてあればともかく、一般には可成り小さいものと認められるので、筒内に出る螢光光線による筒外発光強度の増大が、後者におけるよりも前者において格段に大きいものとは到底認められず、また環状発光体の内側に反射層を設けることも螢光灯等において周知であるので、上記第二点の差異も単なる構造上の微差にすぎないものと認める。
その他請求人は請求書において、後者は外側から内側に向つて順次に製作するに反し前者は逆に内側から外側に向つて順次に製作するので、前者の方が製作容易であるとも主張しているが、後者についても、それを前者同様に内側から外側に向つて順次に製作することが不可能であるとする根拠は何ら認められないので、結局請求人のこの点の主張も採用するに足りないものと認める。
以上のとおりであつて、本願の実用新案は上記登録実用新案と全体として類似であると認められるので、これを旧実用新案法第4条の規定により登録すべきものでないとした原査定は妥当なものと認める。
よつて主文のとおり審決する。
裁判官 古原勇雄
裁判官 杉山克彦
裁判官 楠賢二
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