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事件 昭和 43年 (ヨ) 579号
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裁判所 京都地方裁判所
判決言渡日 1971/05/07
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事仮処分
主文 申請人の本件仮処分申請を却下する。
訴訟費用は申請人の負担とする。
事実及び理由
当事者の申立
申請人は、「被申請人は別紙第一ないし第三目録に示す組立ブロツク玩具を生産し又は譲渡してはならない。被申請人の右組立ブロツク玩具の完成品、半製品に対する占有を解き、京都地方裁判所執行官にその保管を命じる。右の場合執行官はその保管にかかる旨を公示するため適当な方法をとらなければならない。」との裁判を求め、被申請は主文同旨の裁判を求めた。
申請の理由
一、被保全権利(一) 申請人の本件実用新案 申請人はデンマーク国の法律により設立された法人であつて、「レゴ」という商標により組立ブロツク玩具を我が国に輸出し、販売しているものであるが、右組立玩具に関し、登録第五八〇二二六号実用新案権(以下「本件実用新案」という。)を有している。しかして、右実用新案はパリ同盟条約に従い、一九五八年一月二八日、同年三月三日、同年三月二五日いずれもデンマーク国で出願された特許出願の優先権を主張し、我が国で昭和三七年七月二六日同年第一八八四七号をもつて出願公告された上、同年一二月二二日登録されたものである。
(二) 本件実用新案の登録請求の範囲 本件実用新案の登録請求の範囲は別紙第一実用新案公報の該当欄記載のとおりである。
(三) 本件実用新案の構成要件及び作用効果(構成要件)(い)底壁と四個の側壁とを有し、一面で開口する側壁平行の中空体からなること。
(ろ)底壁から垂直外方に突出して二列に並んだ主突起をその二組の隣接突起対の各々が正方形を郭成するように設けること。
(は)ブロツク凹窩内に少くとも一個の副突起を有すること。
(に)この少くとも一個の副突起は一個の上記正方形の中心線と同軸に配置されていること。
(ほ)これら一個または数個の副突起を上記底壁に垂直に幾何学的に組み込むときに、副突記の周面が四個の正方形を郭成する主突起の周面と接触するように構成されていること。
(作用効果) 本件実用新案の作用効果は、
別紙第一実用新案公報の一頁左欄二六行目から二九行目まで、及び同右欄一九行目から三一行目までに記載されているように、右(い)、(ろ)、(は)、(に)、
(ほ)の各要件に示すごとき主突起Pと副突起Sの相対的な位置と寸法の設定により、一ブロツクAの少くとも一個の主突起Pの側面が隣接するブロツクBの少くとも一個の副突起Sの側面に当てて締着されるようになつており、その結果従来既知の構造では到底不可能であつた広範囲のブロツク同志の組合せが可能となつた点にある。
(四) 本件実用新案の登録に至るまでの経過 本件実用新案は、当初は昭和三四年一月二一日特許出願されたが、これについて拒絶理由通知が発せられ、これに対する申請人の意見書も採用されなかつたため、
これを三つの実用新案登録出願に出願変更した。これが(A)昭和三六年三三〇六四号、(B)同年第三三〇六五号、同年第三三〇六六号の各実用新案登録出願である。右(A)出願が本件実用新案となつた出願で、原特許出願明細書の第一ないし第五図、第九図及び第一〇図の副突起が円筒形状のものであり、右(B)出願が原特許出願明細書の第六図及び第七図の副突起が十字形状等で同筒形状と異るものであり、右(C)出願が原特許出願明細書の第一一図ないし第二二図に該るもので後に登録第五七七一一五号として実用新案登録されているものである。そして、
(A)(B)両出願については互いに類似であるとの理由で両出願とも拒絶理由通知が発せられたため、申請人は(B)出願は拒絶されてもやむを得ないと上申し、
(A)出願の登録請求の範囲を前記のとおりに訂正した結果、(B)出願は拒絶査定され、(A)出願については本件実用新案登録がなされるに至つたのである。
(五) 被申請人の製品 被申請人は業として別紙第一ないし第三目録に記載する組立ブロツク玩具(以下総称して「被申請人製品」といい、それぞれを「第一製品」「第二製品」「第三製品」という。)の製造及び販売をしている。
(六) 被申請人製品の構造の特徴及び作用効果(構造の特徴)(い)底壁(a1又はa2若しくはa3)と四個の側壁(b1b1c1c1又はb2b2c2c2若しくはb3b3c3c3)とを有し、一面で開口する側壁平行の中空体からなること。
(ろ) 底壁から垂直外方に突出して一列四個又は一二個若しくは二〇個二列に並んだ主突起(P1又はP2若しくはP3)をその二組の隣接する突起対の各々が正方形を郭成するように設けられていること。
(は) ブロツクの凹窩内には一個の副突起(S1又はS2若しくはS3)が設けられていること。
(に) この一個の副突起(S1又はS2若しくはS3)の半円形断面部分及び四分の三円形断面部分は、それぞれ対応する主突起(P1又はP2若しくはP3)の上記正方形の中心線と同軸に配置されていること。
(ほ) この副突起(S1又はS2若しくはS3)を上記底壁(a1又はa2若しくはa3)に組み込むときに、右副突起の周面が四個の正方形を郭成する主突起(P1又はP2若しくはP3)の周面と接触するように構成されていること。
(作用効果) 右の構造の結果、被申請人製品はいずれもそれぞれ一対ブロツクA1、A2、A3及びB1、B2、B3において、一ブロツクの少くとも一個の主突起の側面が隣接するブロツクの少くとも一個の副突起の側面に当てて締着されるようになつており、本件実用新案の出願前公知であつたブロツクとは異り、広範囲のブロツク同志の結合が可能になつている。
(七) 本件実用新案と被申請人製品との比較 被申請人製品は、次に述べるとおり本件実用新案の考案の要件をすべて備えており、その上作用効果においても同一であるから、本件実用新案の技術的範囲に属する。
(構成の比較) 本件実用新案と被申請人製品とはいずれも底壁と四個の側壁とを有し、一面で開口する側壁平行の中空体からなり、底壁から垂直外方に突出して二列に並んだ主突起をその二組の隣接突起対の各々が正方形を郭成するように設けられ、ブロツクの凹窩内に少くとも一個の副突起を有しているのであつて、被申請人製品が本件実用新案の前記(い)ないし(は)の各要件を充足していることは疑いがない。
ただ、被申請人製品の副突起と本件実用新案公報に示す実施例の副突起とがその形状において同一ではないので、被申請人製品が本件実用新案の前記(に)及び(ほ)の要件を充足ているかどうかは多少検討を要するが、被申請人製品の副突起の断面は実質的に四分の三円と半円と平坦部分とで構成されており、右円形の中心点の垂線方向の中心線と、主突起の二組の隣接突起の郭成する正方形の中心点の垂直方向の中心線とが一致するので、前記(に)の「同軸に配置」するという要件を充足し、かつこの副突起を底壁に垂直に幾何学的に組み込むときに、副突起の周面が四個の正方形を郭成する主突起の周面に必ず一個所において接触するから、前記(ほ)の要件をも充足していることになる。かりに、被申請人製品の副突起の断面が四分の三円と半円と平坦部分とに分断するのは無理で単一の一体的副突起であるとしても、右副突起は、空所の長手方向幅方向の双方の中心点から左右対称に設けられていることは目して明らかであり、この中心的が対応する主突起の郭成する正方形の垂線方向の中心線上にあることも疑いがないので、いずれにしても右(に)の要件を充足するのである。
(作用効果の比較) 本件実用新案と被申請人製品との作用効果は、前記(三)及び(六)において述べたとおり両者全く同一である。
二、保全の必要性 以上のとおり被申請人製品は本件実用新案の侵害であるから、申請人は被申請人を被告として実用新案権侵害の停止及び予防等を求める本案訴訟を提起しているが、被申請人製品は本件実用新案の実施品である申請人の製品と寸法が同一であり、形状、外観、色彩等も酷似し、互換性があり、その価格も申請人の製品の二分の一以下である等のため、取引業者の間では申請人の製品を被申請人製品と置き換えたり、申請人の総代理人店である申請外朝日通商株式会社に対し値引きを要求したりする傾向が顕著に増大しつつあり、さらに被申請人製品は申請人の製品に比し、その素材、加工の精密度においてはるかに劣つているので、申請人の製品がそのように品質粗悪であるかのごとく顧客に誤解されるおそれもあり、このまま事態を放置すれば申請人が甚大な損害を蒙ることは明白でありこの損害はその範囲、金額を確定し立証することが極めて困難であつて、前記本案訴訟で勝訴しても、この間に回復することのできない損害を蒙る危険があるから、緊急に被申請人の所為の差止の仮処分を求める外はない。
被申請人の答弁並びに主張
一、認否 申請の理由一、の(一)ないし(五)の事実は認める。ただし、申請の理由一、
の(三)の(い)ないし(は)の要件は公知のブロツクの持つ構造と異なるところがないので、(に)及び(ほ)の要件が本件実用新案の特徴である。
申請の理由一の(六)のうち構造の特徴(い)ないし(は)は認めるが、その余の事実を否認する。同一、の(七)の事実を否認する。同二、の事実中申請人が被申請人に対して本案訴訟を提起していること、被申請人製品が申請人の製品と互換性があることは認めるが、その余の事実は争う。
二、被申請人実用新案について 申請人は被申請人製品が本件実用新案の権利範囲に属していると主張するが、権利範囲に属していないことは次項以下に述べるとおりであるのみならず、被申請人製品は本件実用新案とは別個の登録実用新案権(以下「被申請人実用新案」という。)の実施品であつて、申請人から本件実用新案の侵害として差止請求を受けるいわれはない。
すなわち、被申請人の第一製品と同一製造のブロツクを実施例として申請外【A】及び同【B】により特許庁に対し実用新案出願中であつた組立ブロツク玩具について昭和四四年五月一四日出願公告決定、同年九月一八日別紙第二の実用新案公報のとおり出願公告、昭和四五年一月一九日登録査定、同年三月三一日実用新案登録第八九七四九〇号として登録に至つたので、右出願人両名は右考案にかかる組立ブロツク玩具を実施する権利を専有するが、被申請人はすでに右登録実用新案につき専用実施権設定登録を受くべき約旨のもとに、被申請人製品の製造販売当初より右両名の許諾により実施事業を営んでいるのである。
三、副突起の数、形状、結合方式の差異 申請人の主張する本件実用新案の構成要件の文言、別紙第一実用新案公報の図面及び申請人の主張するごとくその作用効果がブロツク同志の広範囲な結合を可能にする点にあるというところにより見れば、本件実用新案の副突起は、一個の副突起が二組の隣接する主突起をもつて形成される一個の正方形ごとに配列されており、
この正方形一個に対応する一個の副突起が正方形の中心点を通りその正方形の面に対し直角に伸びる線と同軸に配列され、かつ副突起の周面が正方形を郭成する四個の主突起と接触するように構成されていることを要し又その副突起の形状は円筒形であることが必要であり、その結合方式は前記公報の図面に示されているとおり、
四個の主突起によつて郭成された正方形の中心線と同軸に一個の円筒形副突起を設け、この副突起が正方形を郭する四個の主突起の内側に割り込まされることによつて四個の主突起の周面との間に生じる接触圧力のために組合せ保持が行われるものでなければならない。かりに、百歩を譲り本件実用新案の副突起が厳格に円筒形に限られないとしても、その構造は円筒形の場合と同様に正方形を郭成する四個の主突起の内側の周面に対称的に生じる圧力(包圧)による保持形式のものに限るというべきである。
右のように解してはじめて本件実用新案は新規性を有するものであり、これに反して被申請人製品はその副突起の数は必ず一個であり、その形状は円筒形ないしこれと実質的に同視できるようなものとは全く異り、その結合方式も包圧ではなくして挟圧である。つまり、被申請人製品のブロツクの結合は副突起の円周面を四個の主突起の間に割り込ませて締着することにより生じる四方から来る圧力(包圧)によるのではなくして、その向きが互い違いになつている非対称の半円が水平方向に並んでいるために生じる挟圧すなわち非対称圧力によるものである。
申請人は被申請人製品の副突起は、実質的に四分の三円と半円とから成るものと主張しているけれども、被申請人製品の副突起は不可分の一体をなしていてこれを分割し分断することは許されない。かりに分割して考察できるとしても、四分の三円の部分は主突起三個と接しているのみであり、半円の部分は主突起のわずか二個と接しているのみであつて、これらの接触だけによつては何らの結合力を惹起しないのは明らかであるから、本件実用新案の結合方式とは全く別異のものである。被申請人製品は何よりも別紙第二実用新案公報図面のLの平坦部分のもつ水平方向の連繋的作用により生じる挟圧こそ結合の要点なのである。
また、申請人は本件実用新案の前記構成要件(に)の「同軸」に関し、被申請人製品のブロツクの空所の長手方向幅方向の双方の中心点が、その対応する主突起の郭成する正方形の垂線方向の中心線上にあるから、同軸の要件を充足すると主張する。しかし、同軸となるべき副突起は二組の隣接する主突起が郭成する正方形ごとに配列されていなければならないことは前述のとおりであるのみならず、軸には回転軸と対称軸とが考えられるけれども、被申請人製品の副突起の場合はそのいずれにも該当する軸は存在しないのであつて、申請人の主張するブロツクの長手方向幅方向の双方の中心点は軸とは何ら関係がない。
以上のとおり、いずれにしても被申請人製品は本件実用新案の構成要件を充足するものではない。
四、作用効果の差異 申請人は本件実用新案の作用効果として広範囲のブロツク同志の組合せが可能になつた点にあると主張している。しかしながら、これはこの種の組立ブロツク玩具が共通の課題とされているものであつて、特に強調さるべきものではない。
被申請人製品は本件実用新案と比べて実質的に次のような作用効果を有する。すなわち、申請人の製品の結合方式は前述のとおり四個の主突起の内側との接触による包圧力であるから、副突起を四個の間に割り込ませることを要するため、製造上の正確さを絶対要件としているのであり、又使用材料の持つ弾圧に依存する度合いが極めて高いので材料の選択に限度があり、したがつて過度の締着という欠陥が解消しないとともに、製作上のコストが高くなることを余儀なくされる欠点がある。
これに対して、被申請人製品は挟圧方式に基くためこれらの欠陥をことごとく解消したのであつて、主突起と副突起との接触個所が少いため(被申請人製品の接触個所をnとする申請人の製品は2n-4となる。)、過度の締着による不便がなくなり、金型製作上の寸法誤差の許容範囲が広くなる利点があり、製作自体も容易になり、製作に使用するプラスチツク材料の選択の幅が大となり、従来構造弾性が少くブロツクとして使用し難いとされていたものも選択し得る結果、コストが軽減され、副突起が一個として成型されるためプラスチツクの射出成型が本件実用新案よりも一段と容易になる。
したがつて、作用効果の面においても本件実用新案とは全く異るのである。
五、保全の必要性について 本件仮処分申請が被保全権利を欠くことはすでに述べたけれども、保全の必要性も全くない。すなわち、我が国では本件実用新案のごとき組立ブロツク玩具を製造するメーカーは実に三〇社を越えているし、申請人は世界的メーカーであるから、
被申請人製品が発売されても申請人は殆んど影響を受けることもなく、たとえ何らかの損害が生じるとしても金銭的補填される性質のものである。他方、被申請人は組立ブロツク玩具の三三種の部品を発売しているけれども、被申請人第一ないし第三製品はその内の主力三種であつて、多大の資金を投じ完備した生産設備をもつて製造し順調な売れ行きを示しているのに、仮処分をもつてこれの製造販売を止められると、回復不能の損害を蒙ることは明らかである。
被申請人の主張に対する申請人の反論
一、被申請人実用新案について反論 被申請人実用新案が昭和四五年三月三一日登録され、申請外【A】及び同【B】がその実用新案権者であることは認める。しかし、被申請人は被申請人第一ないし第三製品のすべてが被申請人実用新案の実施品であると主張するけれども、第一製品についてはその実施品であることは認めるが、第二及び第三製品はその実施品ではない。すなわち、別紙第二実用新実公報の登録請求の範囲欄によると、「半円壁Gと両側の開口円壁Q、Qを、互い違いに位置せしめ直線壁L、Lで一連に連結した一体的での嵌合壁7」と記載されており、Q、G、Q、G、Q、G……のごとくQとGが互い違いに位置する副突起であることが要件の一つとなつている。しかるに、被申請人第二及び第三製品の副突起は両端にQがあるのみで中間部はGのみであるから右要件を充足せず、被申請人実用新案の実施品とは到底いえない。
かりに、被申請人第一ないし第三製品のすべてが被申請人実用新案の実施品であるとしても、被申請人実用新案は本件実用新案の構成要件をすべて具備し、作用効果も同一であること前述のとおりであるから、当然実用新案登録を拒絶さるべきであつた。たまたま申請人が外国法人であつたため被申請人実用新案出願公告に際しこれに気付かず異議申立期間を徒過したものであつて、申請人は目下その登録無効審判を請求すべく準備中である。
しかしながら、被申請人実用新案登録を無効とする審決があるまでは、本件申請において無効を主張することができず、一応有効として取り扱うべきだとすれば、
被申請人実用新案を利用するものであるといわざるを得ない。
すなわち、被申請人実用新案の技術的範囲に属するが、その技術的範囲において副突起の形状を別紙第二実用新案公報図価7のごとき構造にし本件実用新案と同一の効果が生じるものとして、特許庁はその改良に実用新案としての登録適格を与えたものと解する。このように被申請人実用新案が本件実用新案を利用するものである以上、実用新案法第17条により申請人の通常実施権の許諾を得るか、或は同法第22条により特許庁長官の裁定を得なければ、被申請人実用新案を実施することはできないものである。
二、副突起の形状、結合方式についての反論 被申請人は、本件実用新案の副突起の形状は円筒形又はそれに類似する形状のものであることを要し、その結合方式は二組の隣接する主突起の正方形を郭成する四個の主突起の内側の周囲に対称的に生じる圧力すなわち包圧によるものでなければならないと主張しているけれども、前述第二の一、の(四)に示した十字形の副突起さえも本件実用新案と類似するとの理由で拒絶査定されているところにより見れば、被申請人製品の副突起のごとき形状のものであつても何ら差し支えないものというべく、また本件実用新案には結合方式としての包圧という思想は全く表現されていないのみならず、その概念自体不明確であつて、被申請人製品が本件実用新案と異る挟圧による結合方式であるとの被申請人の主張は無意味である。
かりに本件実用新案の副突起が円筒形又はこれに類似する形状のものであることを要するとしても、被申請人製品の副突起は、二組の主突起に対応する部分を一単位として考えるならば、@四分の三円形部分と四分の一円形部分と平坦部分で接いた部分からなる単位とA半円形部分とその左右にある四分の一円形部分とをそれぞれ平坦部分で接いだ部分からなる単位とから構成されていると考えられるところ、
右四分の三円形部分、半円形部分及び四分の一円形部分は、それぞれ完全な円形であつた場合にはその円の中心が二組の隣接する主突起が郭成する正方形の中心線と同軸に位置し、かつその周面が接触点の位置は本件実用新案の実施例と異つているにしても、四個の主突起の周面にいずれも接触すべき寸法に形成されているので、
右@、Aの単位はそれぞれ円形の副突起と置換可能である。しかも、被申請人製品の作用効果は本件実用新案のそれと同一であり、同種の技術分野に属する通常の知識を有する点が当然右のごとき副突起を推考し得るのであるから、右@、Aの単位は本件実用新案の副突起と均等であるというべきである。
三、作用効果についての反論 被申請人は、被申請人製品の作用効果として申請人実用新案に比べて主突起と副突起との接触個所が少く過度に結合力が働かないことを挙げているが、このことはブロツク同志が組み立てやすいが同時にはずれやすいことを意味し、決して本件実用新案に優る作用効果ではない。又、製作上の寸法誤差の許容範囲が広くなるともいうが、接触個所が少いということから寸法誤差が大きくなればますますはずれやすいという欠陥を暴露することになり、却つて被申請人製品では精密な製作が要求されることになる。
疎明関係(省略)
理 由一、
申請人が組立ブロツク玩具に関し昭和三七年一二月二二日登録第五八〇二二六号実用新案権(本件実用新案)を有していること、本件実用新案の登録請求の範囲が別紙第一実用新案公報の該当欄に記載されているとおりであり、その構成要件が申請人主張のとおりであること、本件実用新案の登録に至るまでの経過が申請人の主張するとおりであること、被申請人が別紙第一ないし第三目録に記載する組立ブロツク玩具を製造及び販売していること、被申請人製品が前述本件実用新案の(い)ないし(は)の構成要件を充足していること、以上の各事実は当事者間に争いがない。
二、しかして、被申請人は被申請人製品が本件実用新案の権利範囲に属するとの申請人の主張を否認し、被申請人において同じ組立ブロツク玩具に関する昭和四五年三月三一日登録八九七四九〇号実用新案権(被申請人実用新案)の実用新案権者である申請外【A】及び同【B】からその専用実施権設定登録を受くべき約旨のもとに右実用新案出願前よりその承諾を得て実施事業を営んでいるのであつて、別紙第一ないし第三目録記載の被申請人製品はこれの実施品であるから、申請人より本件実用新案権の侵害ありとして差止請求を受ける理由はないと主張している。
右主張事実のうち、申請外【A】【B】両名が主張の如き実用新案の登録を受けたこと、被申請人第一製品が右実用新案の実施品であることは申請人において認めるところであり、被申請人が右【A】【B】両名との間の主張の如き専用実施の契約に基づいてこれを実施してきたことは申請人において明らかに争わないところである。
被申請人の実施する製品が申請人の本件実用新案に抵触し、権利を侵害するものであるか否かは当面判断を要するところであるが、被申請人が別個の後願の実用新案の専用実施権に基づき製造販売している事実を看過し得ない。先願の実用新案と抵触する後願の考案が登録されることは、特許庁審査官の過誤による場合を除いてはあり得ない道理で、その審査につき特別の権限を有する専門機関の判定の結果は尊重すべく、抵触するものでないとしたその審査結果は一応正当と推認すべきであるが、
仮りにそうでないとしても、実用新案法第37条第1項第1号による実用新案無効審判により無効の審決がなされて確定しない限りは後願実用新案権を否定することができず、先願の実用新案権を有していることの故に被申請人実用新案の効力を制限し、その権利行使を禁止することは許されない。したがつて被申請人第二、第三製品が被申請人実用新案の実施品と云えるか否かにつき考察する。
三、成立に争いのない疎乙第二一号証(別紙第二実用新案公報)の登録請求範囲の記載に基づいて考察すれば、被申請人実用新案は次の構成要件からなるものと解される。
(イ) 天床と四個の側壁を有する中空体の合成樹脂製の矩形ブロツクからなること。
(ロ) 天床の外面に二列に等間隔に突設された主突起を設けること。
(ハ) ブロツク内の内室の天床の内面に、半円壁と両側の開口円壁を互い違いに位置せしめ直線壁で一連に連結した一体的な嵌合壁である副突起を設けること。
(ニ) 右副突起は主突起と各一点のみで接触するように設けられていること。
右構成要件のうち(ハ)及び(ニ)が被申請人実用新案の副突起の形状を規定したものと解されるから、右各要件に基づいて検討をすすめる。右各要件によれば、
副突起はブロツクの内室の天床に内面に一個のみ設けられ、それは半円壁(G)と開口壁(Q)と直線壁(L)とを一体的に連結したものであり、この副突起が主突起と各一点のみで接触するように設けられている必要があり、その上G、Q、Lの連結の態様については「Gと両側のQを互い違いに位置せしめLで一連に連結した」ものでなければならない。
そこで、問題は各「Gと両側のQを互い違いに位置せしめ」の意味を解明することに尽きるが、まずQ又はGの門口部の向きについて考える。前記疎乙第二一号証並びに当事者間に被申請人第二及び第三製品であることに争いのない検甲第二及び第三号によれば、かりにQとそれに隣接するG、或は相隣接するG、Gのそれぞれの開口部の向きを同じにしてLをもつて連結した場合、
二つのブロツクを結合させたときに全く副突起に接触しない主突起と二点で副突起に接触する主突起とが生じることが明らかである。これに反して、相隣接するQとG或はGとGの開口部の向を異にして連結すれば、各主突起は副突起と各一点のみで接触するので、被申請人実用新案の副突起は相隣接するQ又はGの開口部の向きを互い違いにすることが必要であることが分る。次に、QとGの副列について考える。いまかりに開口部の向きが互い違いになつているQ、GQ、G、Qという配列の副突起にした場合、二つのブロツクを結合させたときに中間部のQの部分についてのみ二点で副突起に接触する主突起が生じることが明らかであるので、中間部(両端以外の部分)にQを配置するのは誤りであることが分る。それ故中間部のQの代わりにGを配置すると、主突起は各一点で副突起に接触することになり、はじめて前記要件を充足する。
以上の検討により「Gと両側Qを互い違いに位置せしめというのは、要するに矩形ブロツクの両端にはQを、その中間部には単数又は複数のGを配置し、かつそのGの又はQの開口部の向きは互い違いになつていることを要するという意味になる。
ところで、いうまでもなく被申請人第二及び第三製品は、その副突起につき、両端にQを配置し、その中間に九個又は一七個のGを配置し、その開向部の向きが互い違いになるように構成されているが、これは右に述べた被申請人実用新案の構成要件を完全に充足するものであることが明らかであつて、結局申請人第一ないし第三製品はすべて被申請人実用新案の実施品ということになる。
四、申請人は、さらに被申請人実用新案は本件実用新案を利用するいわゆる利用考案になるから、申請人の通常実施権の許諾を得るか、特許庁長官の裁定を得なければ実施できないと主張する。しかしながら、両者の間には右のような関係も認められない。すなわち、利用考案とは先行実用新案の構成要件に新たな技術的要素を加えたものをいうのであるから、利用考案は先行実用新案の構成要件全部を含み、これをそのまま利用したものでなければならないと解されるところ、被申請人実用新案の構成要件は前述のとおりであつて、これを申請人の主張する本件実用新案の構成要件と対比して見ても、被申請人実用新案は本件実用新案をそつくり利用した上、さらに何ものかを付加したものとは到底いうことはできないから、両者に利用関係はないものというべきである。
五、以上のとおりであるとすれば、被申請人製品は申請人実用新案を侵害しているものとは云えず、申請人は被申請人製品の製造販売の停止又は予防を請求する権利を有しないものというべく、申請人の本件仮処分申請はその被保全権利を欠くのでこれを却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第89条を適用して主文のとおり判決する。
追加
(別紙第一目録)第一目録説明書図面はトイビルデイングブロツクを示すもので、第一図は二個のブロツクを重ね合わせた状態で示す第二図T-Tの線縦断面図、第二図は第一図のU-U線に沿つて取つた水平断面図、第三図は第一図とは異つた重ね合わせ方法を示す斜視図である。
第一図および第三図において、上方のブロツクはA1で、また下方のブロツクはB1で、夫々示してあり、各ブロツクは長方形の平面形状を有し且つ一面即ち第一図および第三図において上面e1が開口した直方体状の中空ブロツクで夫々底部a1およびこの底部a1に対し直角に延びる四個の側壁b1、b1およびc1、c1を有する。
各ブロツクの底部a1の外側の面即ち開口した面e1と反対側の面には、主突起P1が各列四個づつ二列に合計八個形成されている。
各主突起P1は、比較的高さの低い円筒形状であつて、長手方向に平行な二列をなし、かつ長手方向と横断方向とに等距離に離隔されている。
更に、各ブロツクには、底部a1の内側の面即ちブロツクの空所内に一個の副突起S1が形成されている。
この副突起S1は、第二図に明瞭に示すように、長方形平面形状の長さ方向中央部に配置された半円形断面部分x1とその両側に配置された四半分の切欠かれた円形断面部分即ち四分の三円断面部分y1と、これら各部分を一体に接続する平坦な断面部分z1からなる。
副突起S1の半円形断面部分x1、3/4円形断面部分y1、平坦断面部分z1と主突起、側壁の内面との関係位置並びにそれらの形状は別図第一図乃至第三図のとおりである。
第1目録<11661-001>(別紙第二目録)第二目録説明書図面はトイビルデイングブロツクを示すもので、第一図は二個のブロツクを重ね合せた状態で示す第二図のT-T線縦断面図、第二図は第一図のU-U線に沿つて取つた水平断面図、第三図は第一図とは異つた重ね合わせ方法を示す斜視図である。
第一図および第三図において、上方のブロツクはA2で、また下方のブロツクはB2で、夫々示してあり、各ブロツクは長方形の平面形状を有し且つ一面即ち第一図および第三図において上面e2が開口した直方体状の中空ブロツクで夫々底部a2およびこの底部a2に対し直角に延びる四個の側壁b2、b2およびc2、c2を有する。
各ブロツクの底部a2の外側の面即ち開口した面e2と反対側の面には、主突起P2が各列十二個づつ二列に合計二四個形成されている。
各主突起P2は、比較的高さの低い円筒形状であつて、長手方向に平行な二列をなし、かつ長手方向と横断方向とに等距離に離隔されている。
更に、各ブロツクには、底部a2の内側の面即ちブロツクの空所内に一個の副突起S2が形成されている。
この副突起S2は、第二図に明瞭に示すように、長方形平面形状の長さ方向中央部に配置された半円形断面部分x2とその両側に配置された四半分の切欠かれた円形断面部分即ち3/4円形断面部分y2と、これら各部分を一体に接続する平坦な断面部分z2からなる。
副突起S2の半円形断面部分x2、3/4円形断面部分y2、平坦断面部分z2と主突起、側壁の内面との関係位置並びにそれらの形状は別図第一図乃至第三図のとおりである。
第2目録<11661-002>(別紙第三目録)第三目録説明書図面はトイビルデイングブロツクを示すもので、第一図は二個のブロツクを重ね合わた状態で示す第二図のT-T線縦断面図、第二図は第一図のU-U線に沿つて取つた水平断面図、第三図は第一図とは異つた重ね合わせ方法を示す斜視図である。
第一図および第三図において、上方のブロツクはA3で、また下方のブロツクはB3で、夫々示してあり、各ブロツクは長方形の平面形状を有し且つ一面即ち第一図および第三図において上面e3が開口した直方体状の中空ブロツクで夫々底部a3およびこの底部a3に対し直角に延びる四個の側壁b3、b3およびc3、c3を有する。
各ブロツクの底部a3の外側の面即ち開口した面e3と反対側の面には、主突起P3が各列二十個づつ二列に合計四十個形成されている。
各主突起P3は、比較的高さの低い円筒形状であつて、長手方向に平行二列をなし、かつ長手方向と横断方向とに等距離に離隔されている。
更に、各ブロツクには、底部a3の内側の面即ちブロツクの空所内に一個の副突起S3が形成されている。
この副突起S3は、第二図に明瞭に示すように、長方形平面形状の長さ方向中央部に配置された半円形断面部分x3とその両側に配置された四半分の切欠かれた円形断面部分即ち3/4円形断面部分y3と、これら各部分を一体に接続する平坦な断面部分z3からなる。
副突起S3の半円形断面部分x3、3/4円形断面部分y3、平坦断面部分z3と主突起、側壁の内面との関係位置並びにそれらの形状は別図第一図乃至第三図のとおりである。
<11661-003><11661-004><11661-005><11661-006><11661-007><11661-008><11661-009><11661-010><11661-011>
裁判官 林義雄
裁判官 蒲原範明
裁判官 山田敦生
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