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審判番号(事件番号) データベース 権利
昭和54ネ825 判例 特許
平成14受1100損害賠償,商標権侵害差止等請求事件 判例 商標
昭和42行ツ28審決取消請求 判例 特許
平成6オ1102商標権侵害禁止等 判例 商標
平成6オ1083特許権侵害差止等 判例 特許
関連ワード 技術的範囲 /  出願経過 /  均等 /  損害額 /  実施料相当額 /  権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  図面 /  構造 /  物品 /  物品の構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  先願 /  拒絶理由 /  通常実施権 /  専用実施権 /  独占的通常実施権 /  同一の作用効果 /  公知技術 /  置換 /  先願 /  明細書 /  請求の範囲 /  利益額 / 
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事件 昭和 52年 (ワ) 2236号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1979/02/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一(一) 被告八光商事株式会社は別紙(イ)号図面及び同説明書記載の人工植毛用植毛器を製作販売してはならない。
(二) 被告株式会社シンエイ、同和光商事株式会社は同器を販売してはならない。
(三) 被告らは右人工植毛用植毛器を廃棄せよ。
二(一) 被告和光商事株式会社、同八光商事株式会社は各自原告Aに対して金四三万二、〇〇〇円、原告興亜産業貿易株式会社に対して金三八八万八、〇〇〇円及び被告和光商事株式会社においては、右金員に対する昭和五二年六月八日から、被告八光商事株式会社においては、昭和五二年七月八日から各支払済みに至るまで各年五分の割合による金員を支払え。
(二) 被告株式会社シンエイは、以下の金額の限度で前記(一)の金員と各自払いの関係で、原告Aに対して金一一万二、〇〇〇円、原告興亜産業貿易株式会社に対して金一〇〇万八、〇〇〇円及びこれらに対する昭和五二年六月八日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その余は被告らの各負担とする。
五 この判決は一、二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
差止請求について
一 請求原因(一)項中、原告Aが本件実用新案権の権利者であることは当事者間に争いがなく、原告会社が原告ら主張の日以降右実用新案権につき専用実施権者となつたことは原告本人尋問の結果によつて真正に成立したと認める甲一七号証、成立に争いない同一九号証によつてこれを認めることができる。
又、請求原因(二)、(三)項は当事者間に争いがなく、右(三)項における本件考案の構成要件の分説及び作用効果についての見解は相当である。
二 原告らが被告らにおいて製作販売してきたと主張する(イ)号製品が別紙(イ)号図面及び同図面説明書記載のとおりのものであることも当事者間に争いがない。
そして、右事実によれば(イ)号製品の構造上の特徴を分説すると、原告らが請求原因(五)の1で主張するとおり(1)ないし(3)の三つの構成部分になると解するのが相当で、そのうち、(1)と(3)の構成が(イ)号製品の特徴となつていることは被告らも自認するところである。
被告らは(2)の構成が(イ)号製品の特徴となつている点を争つているが、
(イ)号製品の特徴を本件実用新案との関係を念頭におきながら文章によつて表現した場合右(2)の構成は欠かせない特徴であると解されるから被告らの右主張は理由がない。
三 そこで、右(イ)号製品の構成を本件考案の構成要件に照らし検討する。
(一) まず、(イ)号製品における(1)の構成を本件実用新案の(1)の構成要件に照らし検討するに、両者はいずれも筒形器体の上端部に被蓋を取外し自在に装着する構成をとつている点において共通しているが、その装着手段として本件考案にあつては嵌着することをクレームしているのに対し、(イ)号製品は螺着の手段を採用している点で相違する。
しかし、成立に争いない甲二号証(本件実用新案公報)によると本件考案において筒形器体に被蓋を嵌着することとしたのは、普段は器体を被蓋によつて蓋をし器内の短毛(義毛)がみだりに散逸しないようにする一方、器内に短毛を補充し収容する場合のことをも考えてそのさいの作業をも容易にするため被蓋を取外し自在としたものにほかならず、他意はないことが認められる(同公報1欄三六行目から同2の一行目までと2欄二行目から一四行目まで参照)。
そうすると、本件実用新案において「嵌着」というのは必らずしもその字義どおりに解する必要はないのであつて、前示と同一の目的に適い、同一の機能を示す装着方法で「嵌着」に似た慣用の技術手段を用いている場合をも包含した趣旨、換言すると前記と異なる作用効果を示すたとえば「固着」のような取外し不可能または取外しに格別の努力を要するような方法は含まないが、「螺着」のような該被蓋が取外し自在で、「嵌着」と比較し単なる設計上の微差としか思えないような装着方法まで厳格に除外する趣旨のものではないと解するのが相当である。そして、本件においては叙上の説示と別異に解さなければならない事情(本件実用新案の出願経過、公知または先願の技術等で、右の点について限定解釈をしなければならないと考えられる事情)は見出せない。
しかるところ、(イ)号製品の被蓋装着の構成が「螺着」であることは前記のとおりであるから、結局、(イ)号製品の(1)の構成は本件実用新案の(1)の構成要件を充足するものである。
(二) (イ)号製品の(2)の構成が本件考案の構成要件(2)に該当することは格別の説示を要しない。
(三) そこで次に、(イ)号製品の(3)の構成について検討する。
1 ここでは、本件考案は短毛3の通過する網目5を穿設している網棚6を器体内部下端に取着することを構成要件としているのに対し、(イ)号製品においては、
同様短毛(人造毛)Eの通過する網目Bを穿設している冠栓Aを有している点では共通しているが、ただ、右冠栓の装着位置が筒形器体の上端部であつて、それも取外し自在に被せられている点において相違している。
しかし、本件考案において網棚6の取着位置を器体1の内部「下端」とする構成をとつているのは「短毛3は集合して収容されるのと、網棚6が静止しているのとで使用前に網目5より短毛3が器体外に脱出することはない」(前掲甲二号証公報二欄二行目から五行目まで)ことに関連して、使用時の短毛落下口を短毛収納口と反対側にしたにすぎないもので、他の格別の効果に着目して設計されたというほどのものではないと解される。また装着方法を「取着」とした点も前記のような構成をとつた必然の結果としてもはや網棚を取外す必要がないから取着としたまでであると考えられる。これを要するに、右構成要件(3)の要旨は「使用に際し器体1を片手に持ち薄毛頭の地肌に対し垂直に上下振動を行えば、短毛3」が「網目5を通過して」適量「落出」することを目的として、器体1の内部一方の端に網棚6を装着する構成をとつたところにあると解される(前掲公報二欄五行目から七行目までの記載参照)。
そうすると、(イ)号製品の(3)の構成における前記相違点は単なる字義上のものにすぎず、前記のような要旨を具現している点においては相違がなく、かつ前記のような目的(作用効果)をそのまま実現している点でも全く同一であると認められる。換言すると、本件考案のように器体の構成上短毛の収容口と使用時の落出口とを別にし短毛の出し入れをいわば一方通行のものとするか、(イ)号製品のように両者を一方の口だけで行うようにし、他方を密閉する構成をとるかは単なる設計上の微差または慣用技術の置換にすぎない。また後者の構成をとつた場合冠栓Aを取外し自在としなければならないことも必然の結果であつて特段別異の技術思想を具現した構成とは考えられない。
なお、両者の作用効果について強いていえば前者の場合は使用時に器体をそのままの位置で上下振動させれば足りるのに対し、後者ではこれを転倒させて使用しなければならない点に相違があるといえなくはないが、この程度の相違は僅か一挙手の動作に関するものであつて実質的な相違とはいえない。
また、被告らは右の点に関連して本件考案では網棚が下端部にある為使用時でない時にも短毛がそこから落出するおそれがあるのに対し、(イ)号製品では下端部が有底であるためそのようなおそれはない点で作用効果上相違点が存する旨主張するが、本件考案はそのようなおそれがないことを前提としていることは前示のとおりであり、右前提は経験則に照らして妥当であると考えられるから、右主張も採用することができない。
(なお、以上の説示に関しては、(1)「下」端の解釈につき、上といい下といつてもそれは所詮互いに相対的な概念であることにも想到すべきである。東京地裁昭和三八年九月二一日判決判例タイムズ一五四号一三八頁がビジビルレコーダー用台紙事件について「縦方向から挿入口を設けた台紙」の構成は「横方向から挿入しうるように挿入口を設け」たクレームに該当するとしている点も参照。(2)また、「取着」の解釈については前示構成要件(1)における「嵌着」の解釈に関する説示も参照。(3)さらに叙上の説示全体につき最高裁昭和三九年八月四日判決民集一八巻七号一三一九頁も参照)2 ところで、(イ)号製品は以上のほか器体@の上方部に、比較的大き目の穴Dを多数穿設されたフランジ付キヤツプ状の内栓Cを取外し自在に嵌めこむ構成をも採用しており、右のような構成は本件考案がその要件としていないところである。
そこで、被告らは右内栓C(中棚)の存在によつて人造毛の落出量が適度に調節され、目づまりを防止することができる格別の作用効果がえられる旨主張して(イ)号製品の構成の相違を強調している。そして、(イ)号製品が右のような内栓を設けたことによつて、被告主張のような作用効果をあげうることは経験則上容易に窺知しうるところである。
しかし、右のような構成部分および作用効果は本件考案にとつては単なる付加的なものと解すべきであつて、右のような付加によつて(イ)号製品が本件考案とは異なる別異の技術思想に基く物品となつているとは到底考えられないところである。したがつて、被告らの前記主張も失当である。
もつとも、成立に争いない甲六号証、丙一号証の一ないし六、丙四号証によると、(ア)原告Aは、本件実用新案の出願に際し、当初はその明細書請求の範囲として「底面に毛髪の通過する極細目の網棚(1)を設けた短毛(2)用筒形器体(3)と、底面に極細目の網棚(1)を設けたその上方に中細の網棚(4)を設けた中長毛(5)用筒形器体(6)と、底面に極細目の網棚(1)とその上方に中細の網棚(4)との外に更にその上方に荒目の網棚(7)を設けた長毛(8)用筒形器体(9)とを一セツトとしてなる人工植毛用植毛器」と記載していたが、その後拒絶理由通知を受けたため、組合わせに係る考案を捨て、これを一段網棚のもの一個の物品の構造に係る考案補正し、本件考案として登録査定を受けたこと(丙一号証の一ないし六)、(イ)そして原告Aはこれとは別に「増毛器」の特許出願公告を得(特公昭四八ー四〇〇三六、丙四号証)、また「3段網棚付人工植毛用植毛用器」の実用新案出願公告も得ており(実公昭五三ー九四二四、甲六号証)、これらにおける請求の範囲にはそれぞれ網棚二段または三段の増毛器または植毛器に関する記載があることがそれぞれ認められ、以上のような事実に照らすと、(イ)号製品は一見本件考案とは別異の技術思想に基づく物品であるかのように思われる。
しかし、前掲甲六号証、丙四号証によつて、右各発明、考案の詳細な説明をみると、これら多段網棚式のものはいずれも中細毛(長さ一ないし五ミリメートル)、
長毛細毛(六ないし一〇ミリメートル)または五ないし一〇ミリメートルの義毛(以上、丙四号証の四欄三ないし四行目と甲六号証の二欄三〇ないし三一行目参照)に関するもので、本件のように短毛(本件考案の詳細な説明では長さ〇・三ミリメートルと記載しているー甲二号証の二欄二〇行目ー)に関するものではなく、
そのいわゆる中棚の構成はこのような長毛のもつれ毛又は玉毛となつているのをほぐしこれを撰別して順次落下させるという長毛の落出には必要であるが、短毛には必ずしも必要でない格別の効果を目的とした構成技術であることが明らかであつて(丙四号証の四欄二〇行目から四三行目までと甲六号証の二欄五行目から一六行目まで各参照)、本件(イ)号製品における内栓Cの構成および作用効果(この場合は前示のとおり単に適量落下に資するという付加的効果である。)とは全く異なり、したがつてその技術思想も別異であると考えられる。
そうすると、本件においては前記のような事実も前記判断を左右するものではない。
3 はたしてそうだとすれば、(イ)号製品における(3)の構成も本件考案の(3)の構成要件を充足するものということができる。
(四) (イ)号製品が本件考案にいう人工植毛用植毛器であることは多言を要しないところである。
四 次に、被告らは、本件実用新案は味の素、食塩等のふりかけ容器と同一の技術思想に関するものであるから全部公知である旨主張している。しかし、右のような容器と本件実用新案にかかる物品とはその用途が全く異なるものであり、その現わしている技術も全く別の分野に関するものであることが明らかであるから、前記のような主張は首肯することができない。また他に本件実用新案が出願前公知、公用のものであつたとの主張を裏付けるに足る証拠もない。
したがつて、公知公用を前提とする被告らの限定解釈の主張は失当である。
五 以上のとおりであるから、本件(イ)号製品は本件実用新案の技術的範囲に属し、それゆえ被告らがこれを業として製作販売することは原告Aの本件実用新案権および原告会社の専用実施権を侵害するものである。
また、前記四の説示からして、原告らが(イ)号製品の製作販売差止請求、損害賠償請求をすることを権利濫用であるということもできない。
六 よつて、原告らの被告和光商事、同シンエイに対する(イ)号製品販売禁止、
被告八光商事に対する同製品製作販売禁止および被告らに対する同製品の廃棄請求は理由があるが、ただ被告和光商事に対する同製品の製作禁止請求は同被告が何らこれを製作したこともなくそのおそれもないこと後に説示するとおりであるから失当である。
損害賠償請求について
一 原告Aが本件実用新案権者であることは前示のとおりである。
原告会社はその損害賠償請求期間中右実用新案につき独占的通常実施権を有していた旨主張するが原告本人尋問の結果およびこれにより真正に成立したと認める甲一六号証によつても右のような事実は認められず、かえつて、原告会社は昭和四九年一一月一日原告Aとの契約で実施品売上金の一割相当額の実施料を支払うのと引換に右実用新案につき通常実施権を取得したものであることが認められる。ただし、さらに前掲証拠および弁論の全趣旨を総合すると、原告会社は昭和二三年五月二一日原告Aを代表者として設立された株式会社であるが、その実質は同原告の個人経営に等しいもので、その規模も従業員十数名を擁するていどであり、本件実用新案についてもその出願人を原告Aとした関係上、前記のような自己契約を締結してはいるが、その実質は同原告が自らの権利を実施しているに等しく、かつ他の者に通常実施権を許諾したこともないことが認められる。したがつて、原告会社は損害賠償請求の関係においては実質上専用実施権者と同視して差支えのない独占的通常実施権者と解するのが相当で、結局、原告会社の前記主張は右に説示の趣旨で理由があると考える。また、通常実施権または独占的通常実施権の法的性質が債権であるからといつて右権利侵害を理由とする損害賠償請求を否定するいわれはない。
そして、被告らが過失によつて前記のような原告らの各権利を侵害していることは実用新案法30条、特許法103条によつて推定することができる(原告会社との関係では右法条を類推適用するか、少くとも後記認定のような事情および弁論の全趣旨を勘案して事実上これを推定するのが相当である。)。
二 そこで、すんで損害額について検討する。
(一) 原告会社の損害1 被告八光商事関係 被告八光商事代表者本人尋問の結果によれば、同被告は原告ら請求の期間中に(イ)号製品を少くとも一、二〇〇本を製作し、これを全部被告和光商事に代金一本当り一万二、〇〇〇円または一万三、〇〇〇円で卸売一手販売したことが認められ、これによると被告八光商事は低目に見積つても一、四四〇万円の売上金を得たことが認められるところ、その売上利益は少くとも右総売上額の三割すなわち四三二万円はあつたと解すべきである(被告八光商事代表者は一般経費である人件費を差し引くと純利益は一本につき二、〇〇〇円余であると供述しているが、同被告は少くとも前記期間中は全部被告和光商事にこれを卸売りしていたというのであるから、宣伝費その他人件費がそれほどになるとは考えられない。かえつて、前掲原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したと認める甲一五号証によると、原告会社の場合(イ)号製品と同種のものを製作販売しているが、その販売形態は週刊誌、新聞等の広告による通信販売であつて販売経費の占める割合が計算上売上額の二八パーセントないし四六パーセントを占め製作原価割は微少であるにもかかわらず、その利益率はなお一本三万円のもので二四パーセント、一本四万円のもので四三パーセントあることが認められー同号証の表3および4参照ー、被告八光商事の前記利益率は少すぎても多すぎはしないことが裏付けられる。)。
しかるところ、原告会社を実質上専用実施権者とみて支障のないこと前示のとおりであるから、ここでは実用新案法29条1項を類推適用するのが相当で、そうすると、同被告の前示利益額四三二万円は原告会社の受けた損害額と一応推定することができる。しかし、原告会社はその主張において原告Aとの関係を考慮して右利益額から実施料相当額を控除しているから、その手法をここに採用すると、結局、
原告会社の受けた損害額は右の一割減(前記原告ら間の契約参照)すなわち三八八万二、〇〇〇円となる。
2 被告和光商事関係 前記のとおり被告和光商事は原告ら主張の期間に被告八光商事から少くとも一、
二〇〇本全部の(イ)号製品を一手販売の形で買受けたことが認められ、弁論の全趣旨によるとこれを全部販売したものと推認することができる。しかして、前記1の認定事実および判断に従うと被告和光商事もまたこれにより少くとも三八八万八、〇〇〇円の利益を得て同額の損害を原告会社に与えたと考えられる。
3 被告シンエイ関係 成立に争いない甲一一号証および被告シンエイ代表者本人尋問の結果によると同被告は原告ら主張の期間中に被告和光商事から仕入代金総額少くとも二八〇万円の(イ)号製品を仕入れ購入し、これを主として理容店へ訪問販売したこと、その代金は一本当り仕入代金一万六、五〇〇円のものは二万三、〇〇〇円(利益率三九パーセント)、仕入代金一万一、〇〇〇円のものは一万六、〇〇〇円(利益率四五パーセント)であつたこと、なお同被告は昭和五二年一月二六日付「奥さま新聞」にはいずれの(イ)号製品かは明らかではないがこれを一本三万三、〇〇〇円の高額で小売りする旨の広告宣伝をしていること、以上のような事実が認められ、これらの事実に弁論の全趣旨を総合すると同被告は少くとも前記仕入総額二八〇万円の四割少くとも一一二万円の利益を得たものと解するのが相当で、これを基礎として前示1と同様の見解と手法によつて原告会社の損害を算出するとそれは結局前記金額の一割減一〇〇万八、〇〇〇円となる。
なお、原告らが被告らに対する損害金請求を各自請求として構成していることからすると、被告シンエイに対する請求はあるいはその余の被告らの不法行為について共同不法行為責任を問うているやに解されないでもないが、被告八光商事と同和光商事との関係の場合は格別、被告シンエイについては被告和光商事が被告八光商事から買受けた(イ)号製品一、二〇〇本をそのまま全部仕入購入した事実その他何らかの形で右被告らの違法侵害行為に共同加巧したと認めるに足る確証がないから右の構成による問責は右の点ですでに相当でないと解する。
(二) 原告Aの損害 原告本人尋問の結果によると原告Aは本件実用新案を実施していない権利者であるからその損害額の算定につき実用新案法29条1項の推定規定を適用するのは相当ではなく、同法条二項によつて実施料相当額損害額として請求するのが相当で、げんに同原告の請求も同趣旨に出たものと解されるところ、前記(一)によつて明らかになつた帰結をここに参照すると、結局、原告Aの受けた損害額は被告八光商事、同和光商事関係について各自四三万二、〇〇〇円、同シンエイ関係について一一万二、〇〇〇円と解される。
(三) 補足 原告らの損害金請求が権利濫用に該当するとの確証がないことはすでに第一の五後段で説示したとおりである。
三 よつて、原告らの被告らに対する損害金請求はその各自請求の範囲で(1)原告Aにおいて被告和光商事、同八光商事に対し各金四三万二、〇〇〇円、同シンエイに対し金一一万二、〇〇〇円、(2)原告会社において被告和光商事、同八光商事に対し各金三八八万八、〇〇〇円、同シンエイに対し金一〇〇万八、〇〇〇円と以上の各損害金に対する各支払ずみまで民法所定年五分の割合による附帯の遅延損害金の支払いを求める部分は理由があるが、その余は失当である。
結論
よつて、原告らの請求は上来説示の範囲で認容し、その余はこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法92条93条を、仮執行宣言につき同法196条を各適用して主文のとおり判決する。
追加
別紙(イ)号図面説明書一図面の説明第一図は容器の外観斜面図、第二図は被蓋を取下した容器の一部切欠きの斜面図、第三図は容器の内部構造を示す半部縦断面図である。
図面の詳細な説明上端部に被蓋Fを取外し自在に螺着し、下端部が閉塞され、上端部に開口部を有し、その開口部の近くにねじ溝Gを有し、且つ開口部の外周辺に突起Hを設けた筒形器体@を形成し、その筒形器体@の上方部に、比較的大き目の穴Dを多数穿設されたフランジ付キヤツプ状の内栓Cを取外し自在に嵌め込み、更にこの内栓の上端部に内栓の穴より細かい穴Bが多数穿設され且つその周辺部に、器体開口部の突起と係合する為の、突起Iを設けた冠栓Aを取外し自在に被せてなる人造毛ふりかけ器である。
以上(イ)号図面<12116-001>
裁判官 畑郁夫
裁判官 中田忠男
裁判官 小圷眞史