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関連ワード 技術的範囲 /  均等 /  考案 /  図面 /  構造 /  組合せ /  物品 /  きわめて容易 /  実施例 /  同一の作用効果 /  置換 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 56年 (ネ) 116号
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裁判所 名古屋高等裁判所
判決言渡日 1982/03/23
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の申立
(控訴人)一 原判決を取消す。
二 被控訴人Aは原判決添付別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを使用してはならない。
三 被控訴人株式会社サンスイは原判決添付別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを製造販売及び使用してはならない。
四 被控訴人株式会社サンスイは控訴人に対し、その製造にかかる前項記載の物件を廃棄せよ。
五 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
六 第四項につき仮執行の宣言(被控訴人ら) 主文同旨
当事者の主張及び証拠関係
当事者双方の主張、証拠の提出、援用、認否は、次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決九枚目表二行目の「公告され」の次に「る」を加入し、同一一枚目裏五行目の「防上」を「防止」と改める。)。
(控訴人)一 本件考案の構成要件(3)の密閉構造につき、本件登録請求の範囲には掩被密閉の具体的手段の記載がない。原判決は明細書考案の詳細な説明の項及び図面の記載を参酌して、その具体的手段は、袖縁4の付いた覆蓋5を基体内側上方の段2に当嵌させることにあると認められるとする。しかし、これによれば本件考案技術的範囲実施例に限定されてしまうことになるから、これは登録請求の範囲の解釈を誤つたものである。登録請求の範囲には密閉構造の特色構造が記載されていないのであるから、この点につき本件考案には公知の蓋付の箱と比べて相違するような特異な構造はないものとみるべきである。
二 第三者が実用新案の作用効果を低下させる以外に何らすぐれた作用効果を伴わないのに、専ら権利侵害の責任を免れるために、考案の構成要件のうち比較的重要性の少い事項を省略した技術を用いるときは、その行為は考案の構成要件にむしろ有害な事項を付加してその技術思想を用いるにほかならず(不完全利用)、考案の保護の範囲を侵害するものと解すべきである。
被控訴人は、イ号物件は本件考案の構成要件(1)のうち「段2」を欠いていると主張するところ、右「段2」は基体に覆蓋をするため(覆蓋を支持するため)の手段であるが、イ号物件は右「段2」を省略して、基本底部にわざわざ突出部を設けてこの部分で覆蓋を支持する方法をとつている。これは被控訴人株式会社サンスイにおいて専ら本件実用新案権侵害の責任を免れるためにとつた構成であり、右突出部を新たに設けることによつて特異な作用効果を発揮するわけではない。また、
イ号物件においては覆蓋と基体との嵌着の仕方が本件考案におけるよりも若干緩いのであるが、イ号物件におけるこのような構成は、本件考案の作用効果を低下させる以外何らのすぐれた作用効果を伴わないものである。結局イ号物件は本件考案の構成要件にむしろ有害な事項を付加して本件考案の技術思想を用いるものであり、
本件考案の保護範囲を侵害するものである。
(被控訴人)一 控訴人の不完全利用の主張は争う。
二 被控訴人株式会社サンスイは本件考案について無効審判を請求しており、その理由の要旨は、本件考案の構成要件(1)及び(2)は出願前公知であること、構成要件(3)は「掩被密閉」による細菌の侵入防止の作用効果がないことを控訴人自身が認めていること、右(1)(2)(3)の構成の組合せは当業者がきわめて容易考案できる(実用新案法3条2項)ものであることである。そして、本件考案は無効とされる蓋然性が高いから、本件考案技術的範囲はその明細書(実用新案公報)に記載されている字義どおりの内容をもつものとして最も狭く解するのが相当である。具体的には本件考案技術的範囲実施例に限定されるので、明らかにこれから外れるイ号物件は本件考案技術的範囲に属しない。
理 由一 当裁判所も、控訴人が本件実用新案権を有するところ、被控訴人らが製造、販売、使用するイ号物件は本件考案の構成要件(1)(正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること)のうち「発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合せたものであること」という部分及び構成要件(2)(基本1の内側をビニールシーツで掩つたものであること)を具備するが、構成要件(1)のうち(基本の正面背面の内側上方に段2を設けた」との部分及び構成要件(3)(基本1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること)を具備していないと認めるが、その理由は、次のとおり改めるほか、原判決理由説示(原判決一四枚目裏九行目から一七枚目裏一〇行目まで)と同一であるから、これを引用する。
原判決一七枚目裏一行目から五行目の「認められるところ、」までを次のとおり改める。
「そして、本件登録請求の範囲中「(基体の)正面背面の内側上方に段2を設けた」との記載及び「基本1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、」との記載によれば、構成要件(3)にいう掩被密閉の具体的手段は、段2によつて覆蓋5を支持することを内容とするものであることが明らかなところ、」二 (均等の主張について) 控訴人は、本件考案の構成要件のうち構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせたものであること」が必須的要件であり、その余は付随的要件に過ぎないから、イ号物件が右の必須的要件を具備する限り、構成要件(3)の密閉構造を欠いても、本件考案技術的範囲に属し、そうでないとしても本件考案均等である旨主張する。
しかし、実用新案法5条4項によれば、登録請求の範囲には「考案の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならない」のであるから、実用新案の登録を受けた者は登録請求の範囲の記載の全部が考案の構成に欠くことができないものとして実用新案権を取得したものというべきである。従つて、登録実用新案の技術的範囲は登録請求の範囲記載の構成要件の全部に基いて定めなければならず(実用新案法26条、特許法70条)、たとえ実用新案権者が登録請求の範囲考案の構成に欠くことができない事項でない事項を記載した場合であつても、その記載が付随的要件に過ぎないことを理由として、これを具備しない物品考案技術的範囲に属することは許されないといわなければならない。そうだとすると、本件考案の構成要件(3)の密閉構造が付随的要件に過ぎないことを理由として、これを欠くイ号物件が本件考案技術的範囲に属し、または本件考案均等であるとする控訴人の主張は主張自体失当である。
ところで、一般に或る物品が登録実用新案(にかかる物品)と均等であるというためには、両者の構成が技術的目的を同じくし、相違する構成は互に置換してみても同一の作用効果を生じ、その置換が登録出願時において通常の専門家の当然なし得る程度のものであることを要する。そして、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設けた」構成及び構成要件(3)が細菌の侵蝕防止という課題の解決を目的としそれに副う作用効果を生ずるものであることは前認定(原判決引用)の明細書の記載特に「ビニールシーツで掩被密閉するために、細菌の侵蝕を防ぎ、」との記載に照らし明らかであるところ、イ号物件は前認定(原判決引用)のとおり、基体の正面背面の内側上方に段を欠き、基体の底部に突出部を設けて覆蓋をこれに乗架し、基体に内装したビニールシーツの周縁を基体の上端部に引掛けてその外側に垂下されており、これで覆蓋の外縁を掩被密閉する構造になつていない。そうすると、本件考案とイ号物件の右各構成はその目的、作用効果が異なることが明らかであるから、本件において均等論を適用する余地はない。
従つて、控訴人の均等の主張は採用の限りではない。
三 (不完全利用の主張について) 第三者が実用新案権侵害の責任を免れるために、考案の構成要件のうち比較的重要性の少い事項を省略し、その代りに考案の作用効果を低下させる以外に何らの作用効果を伴わない事項を付加した技術を用いて登録実用新案の類似品を製造、販売、使用するときは、右の行為がいわゆる不完全利用として考案の保護の範囲を侵害すると解すべきことは控訴人主張のとおりである。
そして、控訴人は、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設け」る構成は右段2によつて覆蓋を支持する手段であるところ、イ号物件は右段2を省略して、基体底部にわざわざ突出部を設けてこの部分で覆蓋を支持する構成をとつているが、右突出部を設けることは本件考案の作用効果を低下させる以外に何らの作用効果を伴わない旨主張する。しかし、原審における被控訴人株式会社サンスイ代表者本人尋問の結果によれば、イ号物件の基体低部に突出部(畝)を設けこれによつて覆蓋を支持することにより、(1)突出部(畝)の間を水が流れるので水耕液が少量で足りる、(2)水耕液を間欠的に供給して覆蓋と基体底部との間に空気層を形成させ、苗の根が直接空気から酸素を吸収することを可能にする、(3)基体両端上縁で支持するのに比ベ苗の重量によつて覆蓋が割れることを少なくする等の本件考案にはない独自の作用効果が生ずることが認められる。
従つて、控訴人の不完全利用の主張はこの点において既に失当であるから採用できない。
四 よつて、控訴人の本訴請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき民訴法95条89条を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 瀧川叡一
裁判官 早瀬正剛
裁判官 玉田勝也
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