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事件 昭和 52年 (ワ) 5686号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1983/05/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 被告モノレール工業株式会社は、別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」記載のゴルフコース用ゴルフバッグ搬送循環軌道装置を製造・販売してはならない。
二 被告モノレール販売株式会社及び被告野村貿易株式会社は、前項記載のゴルフコース用ゴルフバッグ搬送循環軌道装置を販売してはならない。
三 被告モノレール工業株式会社及び被告野村貿易株式会社は、各自原告ハンコウ興産株式会社に対し、金一二七万二〇〇〇円及び右金員に対する昭和五六年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告モノレール工業株式会社は、原告【A】に対して金一〇七〇万六八三四円、原告ハンコウ興産株式会社に対して金二五四万四〇〇〇円、及び、右各金員に対する昭和五六年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
五 原告らの被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用はこれを五分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。
七 この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、それぞれ仮に執行することができる。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨1 被告モノレール工業株式会社(以下「被告モノレール工業」という)は、別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」、「被告装置(二)の図面及び説明書」記載の各ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道装置(以下それぞれ「被告装置(一)」、「被告装置(二)」という)を製造・販売してはならない。
2 被告モノレール販売株式会社(以下「被告モノレール販売」という)及び被告野村貿易株式会社(以下「被告野村貿易」という)は、被告装置(一)、(二)を販売してはならない。
3 被告モノレール工業及び被告野村貿易は、各自原告ハンコウ興産株式会社(以下「原告会社」という)に対し、金七三五五万円及びこれに対する昭和五六年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
4 被告モノレール工業は、原告【A】(以下「原告【A】」という)に対して金七九七二万二〇〇〇円、原告会社に対して金五七八〇万九八〇〇円、及び、右各金員に対する昭和五六年九月二二日から完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。
5 訴訟費用は被告らの負担とする。
6 仮執行宣言。
二 請求の趣旨に対する答弁(被告モノレール工業)1 原告らの被告モノレール工業に対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(被告モノレール販売)1 原告会社の被告モノレール販売に対する請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告会社の負担とする。
(被告野村貿易)1 原告会社の被告野村貿易に対する請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告会社の負担とする。
請求の原因
一1 原告会社は、次の実用新案権(以下これを「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を有している。
考案の名称 ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道装置出願 昭和四七年五月一九日(実願昭四七ー五九一五五)公開 昭和四九年二月一四日(実開昭四九ー一七三五一)公告 昭和五二年一月二〇日(実公昭五二ー二五三一)登録 昭和五六年七月三一日(第一三九〇一九六号)実用新案登録請求の範囲 「ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱上に、ゴルフバツグを運搬する自走車輛を前記ゴルフコースに沿つて巡回走行させる軌条を敷設したゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置。」2 本件考案は原告【A】が実用新案登録出願をしたものであるが、同原告は、昭和五二年八月一日本件考案につき実用新案登録を受ける権利を原告会社に譲渡し、
原告会社は、実用新案法9条2項が準用する特許法34条4項の規定に基づき、同年八月五日特許庁長官に出願人名義を原告会社に変更する届出をして本件考案につき仮保護の権利(以下「本件仮保護の権利」という)を取得し、次いで前記登録に伴い本件実用新案権を取得するに至つた。
二 本件考案の構成要件及び作用効果は次のとおりである。
1 構成要件 ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、
(一) ゴルフコースに沿つて多数の支柱を立設してあること。
(二) 右支柱上に軌条を敷設してあること。
(三) 右軌条上をゴルフバツグを運搬する自走車輛を巡回走行せしめるようにしてあること。
2 作用効果(一) プレーヤー又はキヤデイがゴルフバツグを楽にしかも安全にコースに沿つて巡回搬送できる。
(二) プレー可能なゴルフコース芝生面を十分に確保できる。
(三) ゴルフコースの芝の育生、保全管理に要する労力・費用が軽減できる。
三 被告モノレール工業は、被告装置(一)、(二)を業として製造・販売し、被告モノレール販売、被告野村貿易は、それぞれ右各装置を業として販売している。
四 被告装置(一)、(二)は、いずれもゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、被告装置(一)は別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」中、二のA、B、
C、Dの構成(但し構成Bを更に、(@)ゴルフコースの一番ホールから九番ホールまで順次循環して一・五メートル以内の間隔ごとに多数の支柱(5)を立設すること、(A)軌条(2)は、支柱(5)に対して、軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)を支柱(5)と直交させ、かつ支柱(5)の上端部一側方に上下方向調節可能に固定することにより、支柱(5)と軌条(2)とに間隔を設けて取り付けてあること、に分説する)よりなり、被告装置(二)は、別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」中二のA′、B′、C′、D′の構成よりなり、被告装置(一)、(二)はともに本件考案同一の作用効果を奏する。
五 被告装置(一)、(二)は、以下のとおり本件考案の構成要件を充足し、前記のとおり本件考案同一の作用効果を奏するから、本件考案技術的範囲に属する。
1 被告装置(一)(一) 被告装置(一)の構成AないしDのうち、Aは、支柱を地上に立設し、該支柱上に軌条を固定するための支柱自体の構造に関するものであり、Dは、自走車の車輪が軌条を挟持緊締するための自走車の車輪の構造に関するものであるから、
本件考案の構成要件とは無関係である。
また、構成Cは、軌条上を走行する自走車の車輪の構造特定と動力源がバツテリーであることを表示したもので、支柱に設けられた軌条上をゴルフバツグを運搬する自走車輛を巡回走行せしめることに尽きるから、本件考案の構成要件(三)を充足する。
そして、構成B(@)が本件考案の構成要件(一)を充足することは明らかである。
(二) 被告装置B(A)の構成を本件考案の構成要件(二)と対比する。
被告装置(一)の軌条を支柱の上端部一側方に取り付けてあるところ、本件考案の構成要件(二)の「支柱上に軌条を敷設し」とは、地面に軌条を敷設するのではなく、ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱上方の適当な高さの「中空」に軌条を保持することを意味する。すなわち、跨座式自走車輛を地面に接触することなく走行させるためには、軌条を中空に保持する必要があり、このため本件考案は構成要件(二)の構成を採つている。したがつて、該軌条が支柱の上端面にあると被告装置(一)の如く支柱の上側方にあるとを問わず、軌条を中空に保持せしめるものである以上、構成要件(二)の、支柱上に敷設された軌条であることに変わりはない。
右のとおり、構成B(A)は構成要件(二)を充足する。
2 被告装置(二)(一) 被告装置(一)の軌条(2)は、地上に立設した支柱の側面に取付部材(10)により取り付けられた連結棒(12)が軌条の両側壁を貫通することによつて支持されているのに対し、被告装置(二)における軌条(2)は、U字溝の側壁に取付部材(10)により取り付けられた連結棒(12)が軌条の両側壁を貫通することによつて支持されているものであり、この点においてのみ両装置は相違する。そして、被告装置(一)、(二)における右各構成は、いずれも、自走車輛が単軌条を跨座して走行するためのもので、その際自走車輛の車輪や車体が地面に接触することを避けるため軌条を中空に保持させるためのものであることに変わりはなく、両装置は等しく本件考案と同様ゴルフバツグとこれを積載した自走車が一体となつてプレーヤーに随伴してゴルフコースを巡回移動するものである。
したがつて、被告装置(二)は、U字溝内の溝底に被告装置(一)の支柱を立設し、その側面に軌条を貫通する連結棒を取り付けた構造のものと同様の構成で、両装置は均等であり、結局本件考案と被告装置(二)とは均等の関係にある。
(二) 被告装置(二)の如きU字溝方式は、軌条が地表に突出しておらず、離れた場所から眺めた場合には軌条が視界に入らないという長所を有するところ、仮にこの点に考案性が認められるとしても、前(一)記載のとおり、被告装置(二)における軌条の取り付け方と、本件考案と同一の被告装置(一)における取り付け方に均等関係が認められるのであるから、被告装置(二)は本件考案の利用考案に当たる。
六 そうすると、被告モノレール工業が被告装置(一)、(二)を業として製造・販売し、被告モノレール販売・同野村貿易がそれぞれ右各装置を業として販売する行為は、原告【A】・原告会社の本件仮保護の権利を侵害し、原告会社の本件実用新案権を侵害するものである。
七1 被告モノレール工業は、別紙「被告販売目録(一)」番号1ないし12記載のとおり、本件考案の公開後公告までの間、本件考案が出願公開にかかる考案であることを知りながら、被告装置(一)を業として製造販売したのであるから、原告【A】に対し、後記のとおり実施料相当の補償金支払義務があり、かつ、本件考案の公告後は同目録番号13ないし15記載のとおり、右装置を業として製造・販売することが、原告【A】の本件仮保護の権利を侵害する違法な行為であることを知りながら又は過失により知らないで、これを行つたものであるから、原告【A】に対し、これによつて同原告が蒙つた後記損害を賠償する義務がある。
2 被告モノレール工業は、原告会社が本件考案につき実用新案登録を受ける権利を譲り受けた後、別紙「被告販売目録(二)」番号1ないし18記載のとおり、被告装置(一)、(二)を業として製造・販売することが原告会社の本件仮保護の権利を侵害する違法な行為であることを知りながら又は過失により知らないで、これを行つたものである。また、被告野村貿易は、「被告販売目録(二)」番号1、
3、5ないし9、15、18記載(以下「野村貿易販売分」という)のとおり、右各装置を販売することが原告会社の本件仮保護の権利を侵害する違法な行為であることを知りながら又は過失により知らないで、被告モノレール工業から買受けてこれを販売したものである。したがつて、被告モノレール工業及び被告野村貿易は原告会社に対し、各自野村貿易販売分を製造・販売又は販売したことにより原告会社の蒙つた後記損害を賠償する義務があり、また被告モノレール工業は、同目録番号2、4、10ないし14、16、17記載の被告装置(一)、(二)を製造・販売したことにより原告会社の蒙つた後記損害を賠償する義務がある。
八1 被告モノレール工業は、別紙「被告販売目録(一)」記載のとおり、昭和四九年一二月から昭和五二年七月までの間、原告会社の販売価格にして合計九億九六五二万五〇〇〇円相当の被告装置(一)を製造・販売したところ、同被告の販売価格は原告会社のそれの八〇パーセントすなわち七億九七二二万円である。
そして、本件実用新案権の実施料としては販売価格の一〇パーセントが相当であるから、原告【A】が被告モノレール工業に対して請求し得る補償金(別紙「被告販売目録(一)」1ないし12記載の販売分に関するもの、六六一五万四四八〇円)及び損害賠償金(同目録13ないし15記載の販売分に関するもの、一三五六万七五二〇円)の合計額は七九七二万二〇〇〇円となる。
2 原告会社が原告【A】より本件考案につき実用新案登録を受ける権利の譲渡を受けた後、被告モノレール工業が製造・販売した被告装置(一)、(二)は、別紙「被告販売目録(二)」記載のとおりで、原告会社の販売価格にして合計一三億一三五九万八〇〇〇円である。
そして、原告会社の昭和四九年から昭和五三年までの純利益率は一三パーセントないし一六パーセントで平均一四パーセントとなるから、原告会社は、少なくとも右総販売価格の一〇パーセントに相当する一億三一三五万九八〇〇円の得べかりし利益を喪失したこととなる。
また、別紙「被告販売目録(二)」のうち番号1、3、5ないし9、15、18記載の分七億三五五五万四〇〇〇円は、野村貿易販売分であるから、右逸失利益のうち七三五五万円(野村貿易販売分の販売価格の一〇パーセント弱)は、被告野村貿易と被告モノレール工業が連帯して支払うべき原告会社の損害である。
九 よつて、原告会社は、被告モノレール工業に対して被告装置(一)、(二)の製造・販売の差止めを、被告モノレール販売、同野村貿易に対して右各装置の販売の差止めを、被告モノレール工業、同野村貿易に対して各自損害金七三五五万円、
被告モノレール工業に対して損害金五七八〇万九八〇〇円、及び右各金員に対する遅い被告野村貿易への訴状送達の日の翌日である昭和五六年九月二二日から各完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告【A】は、被告モノレール工業に対し、補償金・損害金合計七九七二万二〇〇〇円及びこれに対する右同日から完済まで右同率の割合による遅延損害金の支払を求める。
請求原因に対する認否
一 請求原因一1の事実は認める。同2のうち原告【A】が本件考案につき実用新案登録出願をしたことは認め、その余の事実は不知。
二 同二の事実、主張は否認し争う。
三 同三の事実は認める。
四 同四のうち被告装置(一)、(二)がいずれもゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、被告装置(一)が別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」中、二のA、B、C、Dの構成よりなり、被告装置(二)が別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」中、二のA′、B′、C′、D′の構成よりなることは認め、その余の事実は否認する。
五 同五の事実、主張は否認し争う。
六 同六の主張は争う。
七 同七1のうち被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(一)」中番号2、4ないし15記載のとおり、被告装置(一)を業として製造・販売したことは認め(但し、納入年月の若干のずれにつき別紙「被告モノレール工業販売状況」記載のとおり)、価格の点を含めその余の事実は否認する。
なお、別紙「被告販売目録(一)」記載の番号1、3に設置されている装置は、
被告装置(一)と同一の構造を有しているが、これらは被告モノレール工業が元請人からの注文に応じて製造し、販売業者である元請人に納入したに止まる。
同2のうち被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(二)」番号1ないし18記載のとおり、被告装置(一)、(二)を業として製造・販売したこと(但し、納入年月の若干のずれにつき別紙「被告モノレール工業販売状況」記載のとおり)、
被告野村貿易が野村貿易販売分を被告モノレール工業から買受けてこれを販売したことは認め、価格の点を含めその余の事実は否認する。
八 同八1のうち被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(一)」記載のとおり昭和四九年一二月から昭和五二年七月までの間被告装置(一)を製造・販売したことは認め、その余の事実は否認する。同2のうち被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(二)」記載のとおり被告装置(一)、(二)を製造・販売したこと、同目録番号1、3、5ないし9、15、18記載の被告装置(一)、(二)が野村貿易販売分であることは認め、その余の事実は否認する。
九 同九は争う。
被告らの主張
一 本件考案の構成要件は次のとおり分説するのが相当である。
ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置であつて、
@ ゴルフコースに沿つて多数の支柱が立設せられていること。
A 右支柱上に、ゴルフバツグを運搬する自走車輛を前記ゴルフコースに沿つて巡回走行させる軌条を敷設してあること。
二 構成要件A中の「支柱上に、…軌条を敷設し」の意味1 本件考案出願前の公知技術(一) 省力化を目的とする小型貨物搬送用モノレールが開発・使用されていたこと 昭和四一年一〇月、急傾斜地のみかん山において、従来専ら人力に頼つていた小型貨物(肥料・各種小型資材・収穫みかんなど)の運搬手段を、狭い設置面積において省力化・機械化することを目的として、小型貨物搬送用モノレールが開発市販され(乙第一一号証、昭和四一年一〇月二四日付農機具しんぽう)、果樹園に設置使用されるようになり、昭和四二年には学問的にもモノレールの運搬能率に関する研究がなされ、学会で発表された(乙第一号証の一・二、昭和四二年一一月三〇日付総合農学。)(二) みかん山における小型貨物の運搬手段に対する技術的課題 みかん山は、急傾斜地が多く地表面の凹凸が随所にみられるうえに岩石等の地上障害物も多く、適当間隔ごとにみかんの木が枝を拡げて植栽されているが、このような場所で小型貨物の運搬手段を省力化・機械化するためには、前後左右の適当間隔ごとに植栽されているみかんの木が邪魔にならないような運搬手段すなわち設置幅の狭い運搬手段が望ましく、また整地されないままの地山に随所にみられる地上障害物に接触するなどによつて事故が発生することを防止する必要があり、これらの要求は、支柱によつて地上の適宜高さに支持させた一本のレール上に運搬車を自走走行させるモノレール方式を採ることにより充たされる。このような地山の木々を縫つて一本のレール上を走行する自走車は、その転倒を防止し、かつ急傾斜地を左右にカーブして敷設せられるレール上を脱線せず確実に駆動走行させるために、
まず一本のレールの上下面を複数組の上下車輪で全面的に緊締挾持させることが機構上要請され、更に地表面の随所の凹凸を整地しないままレールを敷設するためには、地表からレールの位置までの高さを支柱の長さによつて随時適宜調節可能なことが要請された。
(三) 課題に対する解決手段と作用効果上の問題点ーレールと支柱との位置関係についてー これらの要請を充たすためには、まず支柱上部の一側方にボルト等を介して支柱と間隔を置いてレールを支持させる必要があり、これによつて支柱のない側から二組の上下車輪でレールの上下面を全面的に挾持緊締することが可能となるとともに、レールの取付部材を支柱の上下方向に位置調節可能とすることにより、凹凸の多い地表面からレールまでの支柱の長さを適宜随時調節できる。
実公昭四八ー三九二六実用新案公報(昭和四八年一月三一日公告、乙第六号証)に開示されている考案は、みかん山などの急傾斜地に敷設するにふさわしい右の構成を採るモノレールのレール支持支柱に関するものである。
他面、支柱の上部の側方において支柱と間隔を置いてレールを支持するタイプのモノレールは、急傾斜地のみかん山などで設置使用する場合に右長所を有するものの、支柱及びレール取付部材に対しレール及び自走車の重い荷重が偏荷重として作用し、この偏荷重に耐えるために、一・五メートル間隔ごとに数多くの支柱を使用せねばならないという短所を有していた。
(四) モノレールはあらゆる小型貨物を搬送対象としていたこと モノレールは、その後搬送対象を問わず、平地におけるあらゆる各種小型貨物を搬送するために使用されるべきものとして宣伝され(乙第一二号証の一・二、共栄産業株式会社のカタログ、昭和四六年七月二九日付日本工業新聞)、かつ構造自体が本来有する諸効果、すなわち省力化性、安全搬送性、設置幅の狭小性(レールが一本であること)、地上物に対する非干渉性(レールが地上の適宜高さに露出した支柱によつて支持されていること)などの点において有利な搬送装置と考えられていた。
(五) モノレールの設置形式 モノレールを現場に設置するについて、具体的な使用目的に応じて直行状又は蛇行状に、あるいは循環状に設置することは、公知であつた(乙第一三号証の一・二、昭和四一年四月一日発行機械化農業。)(六) ゴルフコースにおけるモノレールの設置使用 昭和四六年一〇月、高知市所在の朝倉パブリツクのゴルフコースにおいて、ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱の上部の一側方で、支柱と一定の間隔を置いて軌条を水平方向のボルトで支持したモノレール(軌条と支柱の関係につき、被告装置(一)の構成A、Bと同一のもの)が設置使用されていた。この装置は、設置以来軌条上を走行する自走車輛に芝生や補修用資材を積み込んだ上、公知の発進停止装置を用いて軌条上の所望の位置で自走車輛を停止させ、積芝の一部や補修用資材を再び積み込んで更に自走車輛を前進させ、同様の作業を繰り返す仕方で使用されていた。
(七) 本件考案の出願前に、ゴルフ練習場に設置されたモノレールを利用することにより、随所の位置に停止してゴルフボールを積み込み運搬する装置が存在していた。
2 右1のとおり、本件考案は、本来無限のモノレールの利用範囲をゴルフコースに沿つてのゴルフバツグ運搬の利用に特定しただけのことで、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえず、出願前の公知技術に開示されているか、さもなくば、公知技術から極めて容易に推考できた新規性進歩性のない考案であるから、
本件考案技術的範囲は、明細書及び図面実施例として具体的に明示されたところに限定して解釈されるべきである。
そこで、本件考案明細書及び図面(本件考案の実用新案公報、以下「本件実用新案公報」という、甲第一号証参照)をみると、唯一の実施例である第3図には、
支柱の上端面において支柱の軸線上に軌条を戴置固定して敷設する構成を明示している。
したがつて、本件考案の構成要件A中の「支柱上に、…軌条を敷設し」とは、支柱の上端面において支柱の軸線上に軌条を戴置固定して敷設されている構成を意味する、というべきである。
3 前記公知技術に照らすと、ゴルフバツグを一番ホールから九番ホール又は一八番ホールまで順次巡回搬送しうるように、ゴルフコースに沿つてモノレールを循環状に設置して用いることには、なんらの新規性進歩性がない。
そして、前記のとおり、本件考案の出願時に公知であつたモノレールは、すべて支柱の一側方において支柱と間隔を置いてレールを支持するタイプのものであり、
このタイプのものは支住や取付部材に対してレール・自走車の重い荷重が偏荷重として作用する短所を有していたところ、ゴルフ場のコースに沿つてモノレールを敷設する場合は、みかん山に比べると、地表面がほぼなだらかなためにレールの地上高さを随所で調節する必要がほとんどなく、総延長距離の長いゴルフコースに右のような従来技術の軌条を敷設するとすれば、偏荷重の問題を解決するに要する支柱の本数もかなり増大することとなる。
そこで、本件考案は、ゴルフコースにおいてゴルフバツグをモノレールにより搬送するに当たり、出願時公知であつた従来技術の短所である偏荷重の問題を、本件考案明細書第3図の実施例図のとおり、支柱上面端部において支柱の軸心上にレールを敷設することにより解決したもので、この構造のモノレールを用いたからこそ考案性が認められたというべきである。
したがつて、前記「支柱上に、…軌条を敷設し」とは、支柱の上端面に軌条を設けることを意味する。
4 前1(六)記載のとおり、ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱の上部の一側方で、支柱と一定の間隔を置いて軌条を水平方向のボルトで支持したモノレールが設置され、軌条上を走行する自走車輛に芝生や補修用資材を積載し、公知の発進停止装置を用いて軌条上の所望の場所に随時これらの積載物を積み降ろしすることは、本件考案の出願当時における公知技術である。
公知技術たる小型貨物搬送用モノレール装置にゴルフバツグを積載し、環状に配置されているゴルフコースに沿つて環状モノレールを敷設することは、公知技術そのものか又は公知技術から極めて容易に推考しうる自由技術に属する。
ところで、実用新案の技術的範囲を確定するに当たつては、公知技術又はこれから極めて容易に想到しうる技術、すなわち自由技術についてまで技術的範囲を及ぼしてはならず、しかも右公知技術・自由技術には均等論の適用をすべきではない。
したがつて、本件考案の構成要件Aの「支柱上」とは、右の自由技術を除外した構成すなわち「支柱上」という文言の字義どおり、又は本件実用新案公報第3図に示すとおり、軌条が支柱の上端面によつて支えられている構成のみを意味し、公知技術である朝倉パブリツクコースに敷設されていたモノレールのように、支柱の上部の一側方で支柱と一定の間隔を置き水平ボルトで軌条を支持する構成のものは、
「支柱上」に含まれないというべきであるし、右構成のものは均等論の適用から除外されるべきである。
三 本件考案の作用効果について1 本件考案の作用効果に関する原告らの主張は、以下のとおり失当である。すなわち、モノレールは、その本来有する技術的構造に由来して、@搬送物を楽に搬送できる、A搬送物を軌条上において安全に搬送できる、Bモノレール設備の地上占有面積が比較的小である、Cモノレールと地上物とは互いに干渉し合わない、という一般的特性を通有しているところ、原告らの主張する本件考案の作用効果は、右のとおりモノレールをゴルフコース用ゴルフバツグの搬送装置として用いた場合におけるモノレールの一般的特性に基づく一般的作用効果を論ずるにすぎず、本件考案に固有の作用効果ということはできない。
2 結局、本件考案の作用効果上の特徴は次のとおりである。
(一) 本件考案においては、軌条直下に支柱が存する構成となつているため、軌条上を走行する自走車輛の荷重を支柱の軸心線上で垂直に支持することができるから、支柱を二メートル以上の間隔ごとに立設しても右荷重を支持でき、したがつて従来のモノレールにおける軌条支持手段に比べて支柱の数を大幅に減らすことが可能である。
(二) 軌条が支柱上に敷設せられていて、その直下に存する支柱が邪魔になるため、上下の車輛が軌条の上下面を全面的に緊締挾持する方法によつて、重心が高くて重い自走車輛を、側方に転倒しないように強く支えることができない構造である。
しかし、軌条及びこれを支持する支柱に対して自走車輛を跨座する姿勢を維持させるようにすれば、構造上脱線することなく走行させることができる。
(三) 一方本件考案は、軌条を支柱上端に戴置固定する構成となつているため、
モノレールの設置に当たつて軌条の地上高さを調節するには、支柱自体の地上高さを直接調節する以外に方法がなく、コースの途中やコース間の連絡路の起伏地形においては軌条を簡単に敷設することができず、また一たん立設した支柱の不等沈下を復元する作業が容易でないという欠点がある。
四 被告装置(一)、(二)の作用効果上の特徴1 被告装置(一)は、A、Bの構成を採ることにより、本件考案出願前から一般に使用されていたモノレールと同様に、次の作用効果上の特徴を有している。
(一) 軌条(2)自体及び軌条(2)上を走行する自走車の大きい荷重を支柱(5)の軸心線上に支持することができず、支柱(5)の地上高さ一五ないし二〇センチメートルに対して支柱(5)と軌条(2)との軸芯間隔が七・五センチメートルもあるために、支柱(5)及びこれと直交する連結棒(12)に対して大きな偏荷重が生じることとなり、これらの荷重を支持するためには一・五メートル以内の間隔ごとに多数の支柱を立設することを要し、数千メートルの長大な軌条を支持するために、本件考案に比べて非常に多くの支柱の立設を必要とする。
(二) 軌条(2)が支柱の上部付近の一側方に設けられているため、被告装置(一)のC、Dの構成に示すように、上下の車輪で軌条(2)の一側方向から軌条(2)の上下面を全面的に緊締挾持する方法によつて、重心が高くて重い自走車が軌条上から転倒しないような機構上の特別の工夫を必要とする反面、傾斜地においてもスリツプすることが少なく走行状態が安定している。
(三) 軌条(2)は、連絡棒(12)を介して支柱(5)の上部付近の一側方に上下方向調節可能にボルト(11)で固定するようになつているために、軌条(2)の地上高さを適宜調節することができ、コースの途中やコース間の連絡路の起伏地形においても軌条(2)を簡単に敷設することができ、また立設した支柱(5)の沈下を復元する作業も極めて容易である。
2 被告装置(二)は、A′、B′の構成を採ることにより次の作用効果上の特徴を有する。
(一) 被告装置(二)は、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接な地域においては、軌条(2)を支持するために排水溝として雨水を集水排出するべく土中に埋設するU字溝(5)の側壁を使用しており、その構造によつて軌条(2)はU字溝の溝内において地表面とほぼ同じレベルに敷設されることとなつて、従来使用されている地上露出(支柱上部側方支持)のモノレールにはみられない次のような優れた作用効果を有する。
(1) モノレールを走行させても、その敷設箇所におけるプレーの障害にならない。
(2) フエアウエイに最も近い地域に敷設しえてゴルフクラブの出し入れが迅速となり、プレーの進行を早める。
(3) モノレールが敷設されていても、敷設されていない場合と同様、芝刈車輛を走行させてゴルフ場の所要の管理をなしうる。
(4) U字溝は、付近一帯の雨水を集水排出するためにゴルフコースにおける雨水などの滞留や湿潤化を避けえ、プレーと比較的密接な地域においてコースコンデイシヨンを良好に保ちうる。
(5) 軌条(2)及び軌条(2)上を走行する自走車の大きい荷重をU字溝(5)の側壁上に支持することができず(U字溝(5)の側壁と軌条(2)との間の軸芯間隔は一二センチメートルある。)、U字溝(5)の側壁及びこれと直交する連結棒(12)に対して大きな偏荷重が生じることとなり、これらの荷重を支持するためには一・五メートル以内の間隔ごとに多数の取付部材を設けることを要する。
(6) 軌条(2)がU字溝(5)の側壁の上部付近の一側方に設けられているため、被告装置(二)のC′、D′の構成に示すように、上下の車輪で軌条(2)の一側方向から軌条(2)の上下面を全面的に挟持緊締する方法によつて、重心が高くて重い自走車が軌条上から転倒しないよう、機構上特別の工夫を必要とする。
(二) 被告装置(二)は、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接でない地域において、軌条(2)を支持するために地上に立設する支柱(5)を使用しているが、同部分は、被告装置(一)と全く同様に、前四1(一)、(二)(但し、「被告装置(一)のC、Dの構成」とある部分を、「被告装置(二)のC′、D′の構成」と読みかえる)、(三)記載の作用効果を有する。
五 本件考案と被告装置(一)、(二)との対比1 被告装置(一)(一) 本件考案と被告装置(一)とは、ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置(モノレール)であり、ゴルフコースに沿つて立設した多数の支柱によつて、ゴルフバツグを運搬する自走車輛を前記ゴルフコースに沿つて巡回させる軌条を、支持させている点において共通するけれども、本件考案において軌条は、「支柱上」に敷設されているのに対し、被告装置(一)において軌条(2)は、支柱(5)の上部一側方に上下方向調節可能に支柱(5)と直交する連結棒(12)を介して固定することにより、支柱(5)の地上高さ一五ないし二〇センチメートルに対して支柱(5)と軌条(2)との間に七・五センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けて取り付けられている点において著しく構成を異にしている。
右のような両者の構成上の相違による作用効果上の相違は次のとおりである。
被告装置(一)は、本件考案に比べて、コースに沿つて敷設される長大な軌条を支持させるための支柱の設置間隔を狭めて、支柱の所要数量を増やさなければならない点、軌条に対する自走車の支持形態は、被告装置(一)では上下車輪による緊締挾持方式を採るのに対し、本件考案では、右の方式を採れない結果レール上の走行性能に各種の質的差異をきたす点、被告装置(一)では軌条を支柱の上下方向に対して調節自在としうるのに対し、本件考案ではそれができない点(起伏地形における軌条の設置と保守管理に大きな影響を及ぼす)などにおいて、作用効果の面においても両者間に著しい相違がみられる。
(二) 右(一)のとおり、被告装置(一)は、本件考案とは支柱と軌条との位置関係に関する構成を異にするから、本件考案の構成要件Aを充足せず、この構成上の相違に基づいて著しく作用効果を異にするので、本件考案技術的範囲に属しないことが明らかである。
2 被告装置(二)(一) 本件考案と被告装置(二)とは、ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置(モノレール)である点において共通するけれども、本件考案においては、ゴルフコースに沿つて立設した多数の「支柱(5)」によつて、ゴルフバツグを運搬する自走車輛を前記ゴルフコースに沿つて巡回させる軌条(2)を支持させており、軌条(2)は「支柱(5)上」に敷設されているのに対し、被告装置(二)の軌条(2)は、被告装置(二)の構成B′Tのとおり、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接な地域では、排水溝として雨水を集水排出するべく土中に埋設されたU字溝(5)の側壁を使用し、U字溝(5)の溝内において地表面(グランドレベル)とほぼ同レベルに敷設されている点、U字溝(5)の側壁の上部一側方に該側壁と直交する連結棒(12)を介して固定することにより、該側壁と軌条(2)との間に一二センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けている点において著しく構成を異にする。
次に被告装置(二)の構成B′Uのとおり、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接でない地域の軌条(2)は、支柱(5)の上部一側方に上下方向調節可能に支柱(5)と直交する連結棒(12)を介して地上一五ないし二〇センチメートルの高さに固定することにより、支柱(5)と軌条(2)との間に七・五センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けて取り付けている点において著しく構成を異にしている。両者の右構成上の相違により、被告装置(二)は、ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接な地域においてモノレールを敷設支持させるために土中に埋設されたU字溝の側壁が使用されているので、モノレールが走行するにかかわらずプレー上の障害にならない点、フエアウエイに近接してモノレールを設置しうるので、クラブの出し入れが迅速簡便でプレーの進行を早める点、ゴルフ場の芝生管理などが迅速容易となる点、ゴルフコースにおける雨水などの滞留や湿潤化を避けえて泥濘化を防止しうるので、プレーと比較的密接な地域においてコースコンデイシヨンを良好に保ちうる点において優れている反面、ゴルフプレーヤーのプレーと密接でない地域を含めて、コースに沿つて敷設される長大な軌条を支持させるための支柱(支柱立設地域)や特殊な取付部材(U字溝埋設地域)などの軌条支持部材の数量を、本件考案のものよりも増やさなければならない点、軌条に対する自走車の支持形態が上下車輪による緊締挾持方式を採るのに対し、本件考案では右方式を採りえない点、被告装置(二)のうち構成B′Uの支柱立設地域では、軌条を支柱の上下方向に対して調節自在となしうるのに対し、本件考案ではこれをなしえない点において作用効果上も著しく相違する。
(二) 右(一)のとおり、被告装置(二)は、本件考案とは、軌条を支持するための支持部材の構成及び該支持部材と軌条との位置関係に関する構成のみならず、
プレーと比較的密接な地域において軌条の地表面からの高さに関する構成(U字溝使用部分)をも異にし、本件考案の全構成要件を充足せず、この構成上の相違に基づいて著しく作用効果を異にするので、本件考案技術的範囲に属しないことは明らかである。
六 原告らの損害額について 原告【A】は、別紙「被告販売目録(一)」番号1ないし15の装置を原告会社が販売した場合を想定し、原告会社の販売価額の八〇パーセントが被告モノレール工業の販売価額であるとして、これに実施料率として一〇パーセントを乗じて得られた数額をもつて、同被告の支払うべき補償金・損害金であると主張し、また原告会社は、別紙「被告販売目録(二)」番号1ないし18の装置を原告会社が販売した場合を想定し、原告会社の販売価額の一〇パーセントが同原告の純利益であるとし、これを前提として、被告モノレール工業、同野村貿易の支払うべき逸失利益相当の損害金を主張するけれども、右各主張は以下のとおりいずれも失当である。
1 原告会社は、自ら本件考案にかかる「ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道装置」の販売をしているわけではなく、右のうちレールを訴外三洋電機電装機器株式会社(以下「サンヨー」という)に販売しているにすぎず、サンヨーにおいて自走車を製造し、右レールと自走車をセツトとして「サンヨーモノレールカート」の商品名でサンヨーが売主として各ユーザーに販売している。原告らが権利実施品と主張するゴルフコース用モノレールシステムの設置・販売の主体がサンヨーであり原告会社でないことは、サンヨーモノレールシステム装置敷設工事契約がサンヨーと旭国際開発株式会社との間でなされていること(甲第二二号証の一)、サンヨーゴルフカートモノレールシステム(一八H)モノレール装置敷設工事の見積がサンヨーからユーザーである旭国際開発株式会社に対して提出されていること(甲第二二号証の二)、サンヨーモノレールシステム装置敷設工事契約がサンヨーとユーザーである六甲国際株式会社との間になされていること(乙第一八号証)、などにより明白である。更にパンフレツト(乙第五号証・乙第一七号証の一ないし六)の記載よりみても、原告らが実施品であると主張するモノレールシステムの販売・設置は、すべてサンヨーがユーザーとの契約に基づき行つているのであり、原告会社は、サンヨーの下請としてレールを製造し、これをサンヨーに納入しているにすぎない。
したがつて、原告らが主張する「原告会社の販売価額」なるものは現実には存在しないものであり、原告会社の利益率一〇パーセントはもとより、原告会社の逸失利益も全く根拠のない架空の主張といわざるをえない。
2 更に、サンヨーの販売している右装置と被告モノレール工業が製造・販売している「モノカート」とは、その構造・形状・機能を異にし、一方の商品がなければ他方を必然的に選択して設置するという関係にはなく、しかも、ゴルフコース用モノレールシステムを製造・販売する業者は、サンヨー及び被告モノレール工業以外にも被告装置の販売当初より多数存在していたから、被告モノレール工業、同野村貿易による被告装置(一)、(二)の販売のすべてが直ちに原告会社の得べかりし利益の侵害に結びつくわけではない。
3 別紙「被告販売目録(一)」(番号1、3を除く)、「被告販売目録(二)」記載の被告装置の実際の販売価格は、別紙「被告モノレール工業販売状況」記載のとおりであつて、同被告の販売価格が原告会社の販売価格の八〇パーセントである、との原告らの主張にはなんらの根拠もない。
4(一) 本件における実施料相当額は、以下のとおり、国有特許権の実施料算定方式により、被告装置についての考案の応用部分と装置全体の価格との割合などを具体的に分析して算定すると、被告モノレール工業の販売価格の一・五パーセント(基準率三パーセント×利用率五〇パーセント)を上限とすべきである。
(二) 現在我国において国有特許権に関し適用されている実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の内容は、民間における一般の特許発明の実施許諾の場合にも参考とすべきものとされている。国有特許権実施契約書における実施料算定方法では、基本額を選定し、これに実施料率を乗じて得るが、実施料率は、基準率、利用率、増減率、開拓率を総合して、
実施料率=基準率×利用率×増減率×開拓率という数式により算定する。
そして、基本額の選定基準としては、(1)販売価格及び生産数量の明確なものには販売単価に生産数量を乗じたもの、(2)販売価格及び販売数量の明確なものには販売単価に販売数量を乗じたもの、(3)発明考案によつて得た価値又は価値の増加(費用の低減を含める)を全額に見積つてこれに利用件数を乗じたもの、
(4)発明考案によつて得た価値又は価値の増加(費用の低減を含める)を全額に見積つてこれに生産数量を乗じたもの、(5)発明考案によつて得た価値又は価値の増加(費用の低減を含める)を全額に見積つてこれに販売数量を乗じたもの、
(6)製品を販売することによつて得た利益金額、の六項目のうちそれぞれ事業に適したものを基本額として選定することになつているが、本件では、右(1)及び(3)ないし(6)は極めて不明確で把握しえないので、明確な(2)の販売価格を基本額として選択すべきである。
基準率としては、実施価値「上」のもの四パーセント、実施価値「中」のもの三パーセント、実施価値「下」のもの二パーセントとされており、本件では実施価値「中」のものとして三パーセントを選択するのが事案に即すると考えられる。
利用率については、発明又は考案(以下発明という)がその製品において占める割合であつて発明がその製品の全部であるときは一〇〇パーセントとする。但し、
方法又は方式の応用が製品の一部分であつても、その製品全体が創意的で装置又は物として特許価値が認められるときは利用率を一〇〇パーセントとする、とされ、
改良発明又は部分発明の利用率は、製品全部の価格を基礎とすることが適当であるものは、発明の応用部分と製品全体の価格との割合を利用率とする、とされており、本件では、本件考案と関係のない諸施設(例えばモノレール格納庫、充電施設、各種交叉施設等)その他実施態様に鑑み、考案の応用部分は製品全体の価格の五〇パーセントを上限と考えるべきものであるから、利用率の上限は五〇パーセントとみるのが妥当である。
増減率については、増減率は一〇〇パーセントを基準とするが、公益上特に必要であるとき、実施価格が特に大であるか小であるとき、既に実施され相当高度に実用化されたものを更に他に実施を許諾するとき、その他特殊の事情があるとき、に当たる場合には五〇パーセント以内を増し、五〇パーセント未満を減ずる、とされているが、本件においては増減事由は特に考慮する必要がないものとして増減率を一〇〇パーセントとみることとする。
開拓率については、一〇〇パーセントを基準とするが、工業化研究に多額の費用を要するとき、普及宣伝に多額の費用を要するときに五〇パーセント以内を減ずることができる、とされているが、本件においては減率はないものとして開択率を一〇〇パーセントとみることとする。
以上検討したところを総合判断すると、本件における実施料額は、
被告モノレール工業の現実の販売価格の総額×三%(基準率)×五〇%(利用率)×一〇〇%(増減率)×一〇〇%(開拓率)(但し右販売価格が最終ユーザーに対する小売価格である場合には右基準率は中間業者に対する卸売価格を基礎として計算する場合よりは低減されるべきである)をもつて算定された額を上限とするべきである。
原告らの反論
一 被告らの主張二について1 本件考案出願前の公知技術(一) 一般貨物用モノレールと本件考案との対比 みかん山におけるモノレールは、従来の交通機関たる大型モノレールを急傾斜地におけるみかん運搬用の小型モノレールとして応用した点に新規性進歩性が存し、従来の索道ケーブルに取つて代わる運搬機として普及し始め、その運搬性ゆえに、次第に農業用・土木建築用・林業用・鉱山用と用途を拡げた。しかし、これらはあくまで純然たる貨物運搬用としての用途の拡大であつて、それ以上考案性の発展はなかつた。被告らが公知技術の資料として挙げる、昭和四六年七月二九日発行の日本工業新聞(乙第一二号証の二)に掲載された運搬用モノレールの用途の拡大と汎用化についての記事は、純然たる貨物運搬用としての汎用化の域を出ていないのであつて、当時におけるモノレールに関する一般の認識が、ある地点よりある地点への単なる搬送機の領域に止まつていたことを示している。
これに対して本件考案は、ゴルフバツグの搬送とはいえ、ある地点からある地点に貨物を運搬する単なる搬送機ではなく、ゴルフコースを巡回するプレーヤーに随伴してそのプレーの補助をするためのものであるから、みかん収穫用や土木建築資材運搬用のモノレールから容易に想到しうるものではない。
(二) 朝倉パブリツクのモノレール(乙第九号証の一ないし七)について 右は、ゴルフ場におけるコース整備のための芝や資材運搬用のモノレール装置であつて、一般の土木工事用のモノレールと同じ技術思想の範囲内にあるもので、作業現場がたまたまゴルフ場であつたにすぎない。
(三) ゴルフ練習場におけるボール搬送車について ゴルフ練習場におけるゴルフボールの搬送車は、ゴルフボールという大量の貨物を一度に運搬する点にのみ主眼が置かれ、あたかも貨物列車の如く、モノレール上を牽引車に引かれた複数の貨車が走行するものであつて、巡回するプレーヤーに随伴する本件考案とは技術思想を異にする。
(四) キヤデイカートと本件考案との対比 本件考案の出願前から存在していたキヤデイカートは、カート走行用専用路が必要であるところ、カートの車幅以上の幅のある同専用路は、ゴルフコースに沿つて相当の面積を要するうえに打球が落下すると飛び跳ね、カート自体、人による操縦が必要で危険を伴うのであるが、本件考案にはこのような欠点がない。
2 右1のとおり、本件考案は、その出願前に、モノレールを、ゴルフコースで巡回するプレーヤーに随伴するゴルフバツグ搬送装置として利用する技術がなかつたから、新規性を有する。このことは、本件考案の実施品が昭和四八年八月八日大岡山ゴルフコースにおいて完成するや、業界雑誌「ゴルフ場セミナー」をはじめ、朝日・毎日・読売その他の新聞において、「ゴルフカート・モノレール開発」、「モノレール、ゴルフ場に登場」、「キヤデイー不足に“新兵器”」などの見出のもとで、その意外性について報道していること(甲第一四号証、第一五号証の一ないし六)によつても明らかである。
また、本件考案は、その出願前における電気カートなどの有する欠点を除去するために考案されたもので、請求原因二1記載の構成要件を採ることにより同二2記載の作用効果を有することから、進歩性をも有する。
したがつて、本件考案公知技術そのもの、あるいは、公知技術から推考容易の考案であることを前提とする限定解釈の主張は失当である。
3 本件考案明細書に、「従来、果樹園等における集果運搬手段として集果運搬車を走行させる軌道運搬装置があり、またゴルフコースの途中に横たわる谷、河川又は湖沼等に架設された橋上に運搬車を走行させる軌道運搬装置があり、更にまた傾斜地の登降用に運搬車を昇降走行させる軌道運搬装置があるが、…」(本件実用新案公報一欄二四行目ないし二九行目参照)と記載されているように、従来の軌道運搬装置をゴルフコースに応用したのが本件考案であり、本件考案の願書添付の図面(第3図)に示す軌条及び被告装置(一)の軌条はこれら軌条に噛み合う自走車の車輪とともに、本件考案の出願時既に先行技術として公知の構造であつた。そして、本件考案の「実用新案登録請求の範囲」にはもとより、「考案の詳細な説明」にも、軌条の取付位置を支柱の上端面上に限定し、自走車を跨座式に限定する記載はない。
したがつて、本件考案におけるモノレール方式の軌条は、本件考案出願時に公知であつたモノレール方式のすべてを含むのであるから、支柱上方の側面に軌条を取り付けた構造のものは、先行技術であれ被告装置(一)・(二)であれ、地上に立設した支柱に軌条を敷設している以上、本件考案の「実用新案登録請求の範囲」にいう、支柱上に敷設した軌条であることに変わりはない。
二 損害について1 別紙「被告販売目録(一)」番号1・3記載の被告装置(一)について、被告らは、被告モノレール工業が下請として製造して元請先に納品したにすぎないというが、右各ゴルフ場の被告装置(一)の資材納入・施工はすべて被告モノレール工業が行つたものであり、同被告が元請先に販売したことに変わりはない。
2 サンヨーが製造販売業者であるとの主張について カタログ(甲第二四号証の一)末尾に、三洋電機株式会社、三洋電機電装機器株式会社と並んで「レール設計・施工ハンコウ興産株式会社」と明記されているとおり、軌道装置の設計・施工はすべて原告会社において行つており、三洋電機電装機器株式会社は三洋電機株式会社の販売部門として専ら売込と契約を担当しているために、見積も同社名義で実際は原告会社が行つている。
そして、三洋電機株式会社は自走車輛のメーカーであつて、原告会社はその代理店として自走車輛の販売についても手数料収入を得ている。原告会社の営業実績(甲第二八号証)確定申告書控(甲第二九号証の一ないし五)、決算報告書(甲第三〇号証)によつて、昭和四九年度ないし昭和五四年度の本件考案の実施装置の売上高合計が二三億三一五三万円、粗利益が合計七億二六二〇万八〇〇〇円、純利益が合計三億四九九四万三〇〇〇円であるから、結局粗利益率は三〇パーセント、純利益率は一四パーセントとなる。
証拠(省略)
理 由一 請求原因一1の事実(原告会社が本件実用新案権を有していること)は当事者間に争いがない。また、同2のうち原告【A】が本件考案につき実用新案登録出願をしたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一七号証、弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第四号証の一ないし四、弁論の全趣旨を総合すると、原告【A】は、昭和五二年八月一日本件考案につき実用新案登録を受ける権利を原告会社に譲渡し、原告会社は、同年八月五日特許庁長官に対して出願人名義変更届出をすることにより本件考案につき仮保護の権利を取得し、次いで昭和五六年七月三一日の登録(第一三九〇一九六号)に伴い本件実用新案権を取得するに至つたことが認められる。
そして、右争いのない「実用新案登録請求の範囲」の記載、及び成立に争いのない甲第一号証(本件実用新案公報、別添の実用新案公報と同じ)によると、本件考案の構成要件は、請求原因二1のとおり分説するのが相当である。
二 前掲甲第一号証によれば、本件考案の解決すべき課題は、「ゴルフコースに植成された芝生を損傷させることなく、しかも人手を省いてゴルフバツグを運搬する」(本件実用新案公報一欄一九行目ないし二一行目)こと、すなわち「ゴルフコースにおいては、全コースに亙つてよく手入れをした芝が植生され、該芝生を最良の状態に保全管理するためには多大の労力時間および費用を必要としているにも拘らず、ゴルフアのプレーに際しては、クラブを入れたゴルフバツグ運搬車(別名カートという)がゴルフアとともにゴルフコース内を巡回しなければならないため、
該運搬車は前記芝生上を牽引又は自走により走行移動するので、折角手入れされた芝生をその車輪によつて著しく損傷している。そしてこの損傷した芝生を植生育成することは自然条件に委ねざるを得ないので相当の日数を要する。」(本件実用新案公報一欄三四行目ないし二欄七行目)という従来のゴルフバツグ運搬車の欠点を除去することにある、と認められる。
そして、前掲甲第一号証、成立に争いのない甲第二五号証によると、本件考案の作用効果は次のとおりである。
(一) 自走車は循環軌道を人力を要することなく操向移動するので、プレーヤー又はキヤデイは操向移動に対して労力及び注意力を全く払うことなく円滑かつ安全に操作することができる。そのためプレーヤーは、自らゴルフバツグを円滑に搬送しながら本来のプレーに専念でき、コースを巡回できる。
(二) 自走車は、軌条に案内されて正しい姿勢で走行しているので、特に起伏のあるゴルフコースにおいても逸走・転倒する虞れがなく、安全にコースに沿つてプレーヤーと随伴して巡回走行できる。
(三) 自走車は、芝生上でなく軌条上を走行移動するので、
芝生に損傷を与えることがなく、ゴルフコースを最良の状態に保全して芝の育成、
保全管理に要する労力・費用などを著しく軽減できる。
(四) 軌条は支柱によつて架設されているから、地上障害物に阻害されることなく円滑に自走車を走行させることができる。
(五) 従来のゴルフバツグ運搬車のように、その走行移動のためにコースの芝生を削り取つて専用道を造成する必要がないから、プレー可能な芝生面を十分確保できる。
三 被告モノレール工業が被告装置(一)、(二)を業として製造・販売し、被告モノレール販売、同野村貿易がそれぞれ右各装置を業として販売していることは当事者間に争いがない。
そして、それぞれ被告装置(一)、(二)を説明したものであることにつき当事者間に争いのない別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」、「被告装置(二)の図面及び説明書」の各記載によれば、被告装置(一)の構成は、ゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、別紙「被告装置(一)の図面及び説明書」中、二に記載のA、B、C、Dのとおり分説(但し、構成Bを更に、(@)ゴルフコースの一番ホールから九番ホール又は一八番ホールまで順次循環して一・五メートル以内の間隔ごとに多数の支柱(5)を立設すること、(A)軌条(2)は、支柱(5)に対して、軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)を支柱(5)と直交させ、かつ支柱(5)の上端部一側方に上下方向調節可能に固定することにより支柱(5)と軌条(2)とに間隔を設けて取り付けてあること、に分説)するのが相当であり、
被告装置(二)の構成は、ゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」中二のA′、B′、C′、D′のとおり分説するのが相当である。
四 そこで、被告装置(一)、(二)が本件考案技術的範囲に属するか否かについて判断する。
1 被告らは、本件考案にはその出願前に構成要件のすべてを充足する公知技術が存在し、あるいは本件考案が出願前の技術から極めて容易に推考できた旨主張する。
ところで、本件考案は、物品の形状構造又は組合わせに係る考案であつて、前判示のように複数の構成要件から成り立つているものであるが、それは各構成要件の単なる集合ではなく、各構成要件を一定の技術思想のもとに不可分有機的に結びつけたもので、一体性ある技術思想の創作である。各構成要件の結合関係もまた無視することのできない構成要件である。このような点に留意してみると、「実用新案登録請求の範囲」に記載された考案の技術思想がその出願前そのまま公知であつたいわゆる全部公知のような例外的な場合はともかく、考案がその各構成要件個々について出願前各公知技術が存在し、それらを組み合わせることが極めて容易に推考できたこと、あるいは、当該考案が出願前の一個の技術から極めて容易に推考できたことを理由として、考案技術的範囲の認定に当たり被告ら主張の限定解釈をすることは許されないと解するのが相当である。
右観点のもとに、被告らの指摘する公知技術について検討する。
(一) みかん山などの小型貨物搬送用モノレールについて いずれも成立に争いのない乙第一号証の一、二、第一一号証によると、昭和四一年一〇月頃から傾斜地のみかん園などにおいて使用されていた小型貨物搬送用モノレールは、みかん園などの樹間のレール上を自走式搬器を運行させて、農道や索道の基点から生産資材を運び上げたり、園内から収穫物を農道や索道の基点又は貯蔵庫まで降ろすのに用いられる装置で、その構成は、牽引車(エンジンセツト)とトロツコ及びレールよりなること、右装置の主な目的は、みかんなどの果樹園経営上最も労力割合の高い収穫の運搬作業を機械化することにより人力の負担を軽減するにあることが認められる。
ところで、前記二の判示事実及び成立に争いのない甲第一〇号証によると、本件考案は、ゴルフコースに植成された芝生を損傷させることなく、しかも人手を省いてゴルフバツグを運搬するという目的を達成するために、本件考案出願前に存在していた小型貨物搬送用モノレール装置を、ゴルフコースに沿つて走行させることにより、ゴルフバツグの搬送に転用した点に新規性進歩性ありとして特許庁より登録を許された考案であることが認められる。したがつて、右小型貨物搬送用モノレールは、本件考案とは達成すべき技術的課題を異にし、そもそも本件考案の、「ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置」なる構成要件を充たさない、というべきである。
(二) 朝倉ゴルフセンターのモノレールについて 証人【B】の証言によりいずれも真正に成立したものと認められる乙第九号証の一ないし三、同号証の五ないし七に右証言を総合すると、昭和四六年一〇月朝倉ゴルフセンターに、芝補修などの工事機材搬送を主たる目的としてモノレール運搬装置が設置されたが、モノレールの構成は支柱の側方で軌条を支持する方式のもので、自走車は動力車と台車からなつていること、同ゴルフ場は九ホールのシヨートコースからなり、軌条は、一番ホールのテイーグランドの後方にあるクラブハウスの上の道路を始点として、九番ホールのグリーン後方を、一番ホールのコースに沿つて二番ホールのフエアウエイを通り、同ホールのグリーン右側方を通過し、三番ホールのテイーグランドの後方に至り、この地点で軌条は二方向に分かれ、その一方は三番ホール、四番ホール、五番ホールのフエアウエイ及びグリーンに至つて終末となつており、他方は六番ホール、七番ホール、八番ホールに沿い八番ホールのグリーン側方に至つて終末となつていること、一番のグリーンは、クラブハウスに近接しかつ平坦なために、クラブハウスから芝刈機を運転してその手入れ補修を行い、二番以下はモノレールの台車に芝刈機・芝などを積載した上、適宜補修箇所にて機材を降ろして補修を行い、終末に至ると動力車を分岐点まで逆走運転した後、
他方の軌条を走行して同様の作業を繰り返し、終末に至ると再度逆走して出発点に戻る手順で行われていたことが認められる。
ところで、本件考案の構成要件のうちの「ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道」の意味について考える。
前掲甲第一号証によれば、本件考案明細書図面には、第1図及びその説明として、「8は前記単位ホールおよび多数の単位ホールを順次連結した連絡通路からなるゴルフコースに沿つて循環敷設した軌条であつて、第2図に示すゴルフコースに沿つた一定の経路上に立設した多数の支柱の上に連続して架設され、ゴルフクラブを入れたゴルフバツグ10を取り出し易いように傾架したゴルフバツグを運搬する自走車11等を巡回走行させるものである。」(本件実用新案公報二欄一九行目ないし二六行目参照)との記載、本件考案実施例の使用に関する、「ゴルフアはクラブハウス7からスタートホールのテイーインググランド1へ、そしてテイーインググランド1にて打球終了後にスルーザグリーン2へ、更にスルーザグリーンにて打球後グリーン3へと進み、グリーン3でバツテイング終了後に、連絡通路6を経て次のホールのテイーインググランドへと移動し、以下順次上記の動作を繰返えして9ホールズのプレーを完了すると、次位の9ホールズのスタートホールのテイーインググランド又はクラブハウスへと進むとともに、かかるプレーヤーの移動に随伴してプレーヤー又はキヤデイの電動機制御操作により自走車11は全ゴルフコースに沿つて軌条8上を発進、走行、停止を繰返しながら巡回移動する。」(本件実用新案公報三欄五行目ないし一八行目参照)との記載のあることが認められる。
右本件考案明細書図面の記載、前記二で判示の本件考案の作用効果(一)、
及び構成要件中の「循環軌道」の文言自体をあわせ考慮すると、「ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道」とは、自走車が出発点から順次ゴルフコースに沿つて走行し、特段の逆走を要することなく全コースを一周して出発点に戻ることのできるように、循環状に敷設してある軌条、を意味するものと解するのが相当である。
そうすると、朝倉ゴルフセンターのモノレール搬送装置は、解決すべき課題を異にするばかりでなく、本件考案の如く循環軌道の構成を採つていないから、本件考案の構成要件(一)、(三)及び「ゴルフコース用ゴルフバツグ搬送循環軌道装置」を充足しないといわなければならない。
(三) ゴルフ練習場におけるゴルフボール搬送車についていずれも成立に争いのない甲第九号証の一・二によると、昭和四七年三月八日千葉県成田市所在の成田ゴルフセンターに、練習場フイールドに散乱するゴルフボールを回収し運搬するのを目的として、フイールドから管理室に至るモノレール形式の運搬装置が敷設されたが、右装置は、練習場フイールド内に立設した多数の支柱上に単軌条を敷設し、同軌条上を原動機を塔載した牽引車がゴルフボール搬送用の荷台車を牽引して走行する搬送軌道装置であることが認められる。
右搬送装置は、本件考案とは解決すべき課題を異にし、設置場所も異なるから、
本件考案の構成要件(一)、(三)及び「ゴルフコース用ゴルフバツグの搬送循環軌道装置」を充足しないといわなければならない。
(四) キヤデイカートについて 前掲甲第一号証、成立に争いのない甲第七号証によると、本件考案の出願前に存在していたキヤデイカートは、本件考案の如くゴルフバツグ搬送装置が軌条の上を走行する構成のものでないことが認められるから、本件考案とはその技術思想を異にすることが明らかである。
右(一)ないし(四)で判示のとおりであるから、公知技術の存在などを理由とする被告らの限定解釈の主張は採用の限りでない。
2 次に、被告らは、本件考案の構成要件(二)の「右支柱上に軌条を敷設してあること」について、軌条を支柱上部の一側方において支柱と一定の間隔を置いて水平ボルトで軌条を支持する構成のものが本件考案の出願前公知の技術であるから、
右構成のものを除外した上、本件考案技術的範囲が定められるべきであるとし、
あるいは、軌条を支柱上端面の軸線上で支えることにのみ本件考案新規性進歩性があるとして、右構成要件は、「支柱の上端面において支柱の軸線上に軌条を戴置固定して敷設すること」と解釈すべきである旨主張する。
しかしながら、本件考案は、右1で認定・説示したとおり、その出願前に存した小型貨物運搬用モノレールをゴルフコースに沿つて巡回するゴルフバツグ搬送装置に転用した点に考案性ありとして特許庁より登録を許されたもので、本件考案明細書の「実用新案登録請求の範囲」はもとより「考案の詳細な説明」の記載(前掲甲第一号証の本件実用新案公報参照)をみても、軌条の支柱に対する取付位置を被告ら主張の如く限定すべき記載は見当たらないし、被告らのいう軌条を支柱上端面の軸線上で支える構成を採ることによる特有の作用効果なるもの(被告らの主張三2)についての記載も見当たらない。
3 右1、2で判示したところによれば、本件考案の構成要件(二)の「支柱上」とは、支柱の上端面のみを意味するのではなく、支柱の上端面はもとより支柱の上部側面をも含む「支柱の上方」を指称し、したがつて、構成要件(二)は、支柱の上部一側方で軌条を支えるものをも含むと解するのが相当である。
4 そこで、本件考案の構成要件(一)、(二)、(三)と被告装置(一)の構成A、B(@)、(A)、C、Dとを対比すると、いずれもゴルフバツグ搬送循環軌道装置であつて、右構成のうちAは支柱(5)の具体的構造に関するもので本件考案との対比においては判断の要をみない。次に構成B(@)、B(A)はそれぞれ構成要件(一)、(二)を充足することが明らかである。
そして、構成Cのうち「ゴルフバツグ(1)を積載して該軌条(2)上を走行する自走車」の部分、及び構成Dのうち「右自走車は」「該軌条(2)上を走行する」との部分は、本件考案の構成要件(三)を充足するものであり、構成C・Dのその余の部分は、自走車の動力源及び車輪の構造などに関するもので本件考案との対比においては無視して差支えない。
右のとおりであつて、被告装置(一)は本件考案技術的範囲に属する。
5 被告装置(二)の構成A′、B′T、U、C′、D′と本件考案の構成要件(一)、(二)、(三)とを対比する。
本件考案の軌条が、構成要件(一)、(二)のとおりゴルフコースに沿つて立設された多数の支柱上に敷設してあるのに対して、被告装置(二)においては、構成B′T、Uのとおり、軌条(2)はゴルフコースの一番ホールから九番又は一八番ホールまで順次循環して、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接な地域では、土中に連続して埋設されたU字溝(5)に沿つて一・五メートル以内の間隔ごとに、軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)をU字溝(5)の片側側壁と直交させ、かつU字溝(5)の溝内部において該側壁の上部側方に固定することにより該側壁に取り付けてあり(以下「U字溝方式」という)、また、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接でない地域においては、被告装置(一)と同じく、一・五メートル以内の間隔ごとに立設した多数の支柱(5)に対して軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)を支柱(5)と直交させることにより取り付けてある(以下「オープン方式」という)。そして、別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」の記載(これが同装置を説明するものであることにつき当事者間に争いのないことは前示のとおり)によれば、同装置中U字溝方式の占める総延長距離は相当の長さとなることが認められる。
原告らは、被告装置(二)のU字溝方式は、本件考案のオープン方式と同様の構成であり、両装置は均等であると主張する。
本件考案の構成要件(一)の、ゴルフコースに沿つて「多数の支柱を立設してある」とは、その文言自体及び前記二で判示の本件考案の作用効果(四)、(五)のほか、本件考案明細書(前掲甲第一号証の本件実用新案公報参照)には、U字溝方式を示唆する記載・図示が皆無であることをも考慮すると、支柱をゴルフコースの地表面より上方に突出させて設置することを意味し、被告装置(二)のU字溝方式の如く、軌条をU字溝の側壁に取り付けるものを含まないと解するのが相当である。
そして、被告装置(二)の構成B′で明らかなとおり、同装置の軌条は、ゴルフコース中ゴルフプレーヤーのプレーと比較的密接な地域においてはU字溝方式により支持され、比較的密接でない地域においてオープン方式により支持されて全ゴルフコースを循環しているものであつて、U字溝方式の部分はその敷設箇所からみても同装置に必要不可欠なものというべきであるから、右部分を除くと同装置は循環すらしていないことに帰着し、結局同装置は、本件考案の全構成要件を充足しないというべきである。
そして、別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」の記載に鑑みると、被告装置(二)のU字溝方式は前記二で判示の本件考案の作用効果(四)、(五)を奏し得ないことが明らかである。のみならず、別紙「被告装置(二)の図面及び説明書」の記載、成立に争いのない甲第一九号証に弁論の全趣旨を総合すると、U字溝方式には、オープン方式にない次のような作用効果を奏することが認められる。
(一) U字溝方式は、軌条及びそれを支える支柱が地表に露出していないのでゴルフコースの美観が損われず、またオープン方式に比べてプレーの障害になりにくい。
(二) 軌条が敷設されていても、敷設されていない場合と同様芝刈車輪を走行させてゴルフ場の所要の管理ができる。
(三) U字溝は、付近一帯の雨水を集水排出するため、ゴルフコースにおける雨水などの滞留や湿潤化を避け、プレーと比較的密接な地域におけるコースコンデイシヨンを良好に保つことができる。
右のとおり、被告装置(二)は、循環軌道の相当距離にわたり、本件考案とは構成並びに作用効果を異にするU字溝方式を採用しているのであるから、本件考案均等の装置であるということはできない。
また、原告らは、被告装置(二)が本件考案の利用考案であると主張するけれども、右判示のとおり同装置が本件考案の構成要件を充足しない以上、本件考案との間に利用関係の成立する余地のないことは明らかである。
6 以上説示のとおりであつて、被告装置(一)は本件考案技術的範囲に属するので、被告モノレール工業が業として被告装置(一)を製造・販売し、被告モノレール販売、同野村貿易がそれぞれ業として同装置を販売することは、原告【A】及び原告会社の本件仮保護の権利及び原告会社の本件実用新案権を侵害するものであり、被告装置(二)は本件考案技術的範囲には属しない、というべきであるから、被告モノレール工業が業として同装置を製造・販売し、被告モノレール販売・同野村貿易がそれぞれ業として同装置を販売することは、原告【A】及び原告会社の本件仮保護の権利、原告会社の本件実用新案権を侵害するものではない。
五 そこで、以下、補償金・損害金請求の当否につき検討する。
1(一) 被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(一)」番号2、4ないし12記載のとおり本件考案の公開後公告までの間に被告装置(一)を業として製造・販売したことは当事者間に争いがなく(但し、販売価格につき争いのあることは後記のとおり)、同目録番号1、3に設置されている装置が被告装置(一)と同一の構造を有しており、これらを被告モノレール工業が製造したことについては同被告の自認するところである。被告モノレール工業は、元請人からの注文に応じて製造し、販売業者である元請人に納入したに止まると反論するけれども、仮に被告モノレール工業の右製造行為が請負契約に基づく義務履行としてなされたとしても、実用新案法2条3項所定の「製造し」たことに変わりがないというべきである。
そして、いずれも成立に争いのない甲第一四号証、第一五号証の一ないし六、第二七号証の二、原告代表者本人の供述により真正に成立したものと認められる甲第一三号証、原告代表者本人の供述を総合すると、原告会社は、昭和四七年九月サンヨーと共同して本件考案の実施品を製品化することに着手し、昭和四八年四月一〇日、兵庫県城崎郡の大岡山ゴルフコースにおいて右実施品設置工事に着手し同年八月八日これを完成したこと、翌八月九日朝日、毎日、日本経済、日本工業、日刊工業の各新聞紙上にサンヨーが原告会社の協力のもとで右設置工事を完成したとの報道がなされ、同日及び昭和四八年一〇月の二回にわたり被告モノレール工業、訴外久保田鉄工株式会社(以下「久保田鉄工」という)などが大岡山ゴルフコースに設置された本件考案の実施品を見学に訪れていること、同年一一月頃には被告モノレール工業がゴルフコースに沿つてゴルフバツグを循環搬送するためのオープン方式のモノレール式ゴルフカーを製造し、右ゴルフカーが「グリーンレール」の名称で久保田鉄工から販売されていることが認められる。
右で認定のとおり、本件考案が公開された昭和四九年二月一四日より前に本件考案の実施品の見学に訪れており、その後オープン方式のゴルフバツグ搬送用のモノレールカーを製造している事実によれば、被告モノレール工業は、別紙「被告販売目録(一)」番号1の被告装置(一)を製造した時点において、既に本件考案が公開にかかる考案であることの認識があつたものと推認することができる。
のみならず、いずれも成立に争いのない甲第二号証の一・二、第三号証に弁論の全趣旨を総合すると、原告【A】は、被告モノレール工業に対し、昭和五〇年三月六日付その頃到達の書面をもつて、本件考案の公開実用新案公報写を添付の上、同原告が本件考案につき実用新案登録出願中であつて既に実開昭四九ー一七三五一として出願公開されていること、本件考案の実施をすると後日本件考案につき公告の暁には実用新案法による法的措置に及ぶ用意があることを、実用新案法13条の3の規定に鑑み告知する旨の警告を行つていることが認められる。
右事実からすると、被告モノレール工業は、原告【A】に対して実施料相当の補償金を支払う義務がある。
ところで、本件考案についての許諾実施料の事例、同種ゴルフバツグ搬送装置についての業界における慣行的実施料などについての証拠はない。
そこで、被告らの主張する国有特許権方式に準拠して、本件考案の実施料額を算定することとする。
当裁判所に顕著な国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の記載中、「三、実施料算定方法」によれば、国が普通財産として有する特許権の実施料の算出基準は、被告らの主張六4(二)記載のとおりであることが認められる。
右で認定のとおり、販売価格を基礎とする場合の実施料算出基準率は、考案の実施価値が上のものは販売価格の四パーセント、中のものは三パーセント、下のものは二パーセントであり、本件では全証拠によるも、本件考案の実施価値が高いとも低いとも認めるべき資料がないので、右基準のうち「中」を選択して基準率を販売価格の三パーセントとする。
ところで、右で認定したところによれば、国有特許権の実施料の算定に当たつては、右基準率に当該考案が装置に占める割合、
すなわち利用率を考慮すべきことになる。
そこで、被告装置(一)のうちで本件考案の占める割合について考えるに、被告らは、被告装置(一)の価格中には本件考案と関係のない施設すなわちモノレール格納庫、充電施設、各種交叉施設などが含まれていることを考慮して利用率を五〇パーセントとすべきである、と主張するけれども、右主張を肯認するに足りる証拠はない。
右の点につき、原告会社の実施品における総販売価格に対する右各施設価格の割合についてみるに、原告代表者本人の供述により真正に成立したものと認められる甲第一六号証によれば、標準ゴルフ場(一八ホール)におけるレール装置の販売価格は四八七四万円であり、そのうち@カートハウス内格納操車設置工事費は二一一万円、A開口部及び道路交叉部工事費は三二〇万円であること、カート(自走車)販売価格は二六二一万円であり、そのうちB「充電器」の価格が三六〇万円であること、したがつて、右レール及びカートの合計価格七四九五万円中@・A・Bの施設・機器価格合計八九一万円の占める割合は約一二パーセントであることが認められる。
右で認定した原告会社の実施品価格における本件考案の実施といえない諸設備価格の占める割合に鑑みると、被告装置(一)における本件考案の利用率は少なくとも八〇パーセントを下らないとするのが相当である。増減率、開拓率については、
本件において減ずべき特段の事情が認められないので、一〇〇パーセントとする。
算式 実施料率=三%(基準率)×八〇%(利用率)×一〇〇%(増減率)×一〇〇%(開拓率)右算式により算出すると、実施料率は二・四パーセントとなる(国有特許権実施契約書三、実施料算定方法の二、の但書は採用しない)。
右で判示したところによれば、被告モノレール工業の支払うべき実施料額は、同被告の被告装置(一)の販売価格に実施料率二・四パーセントを乗じて得られる金額となる。原告らは、原告会社の販売価格の八〇パーセントをもつて被告モノレール工業、同野村貿易の販売価格であると主張するけれども、これを首肯するに足りる証拠はないので、被告らの自認する別紙「被告モノレール工業販売状況」の「販売金額」欄記載の金額をもつて、被告モノレール工業の販売価格とする。
なお、原告【A】の被告モノレール工業に対する補償金請求のうち、「被告販売目録(一)」番号1・3記載の被告装置(一)に関する部分は、被告モノレール工業の販売金額についての立証がなく、算定が不能であるので、理由がない。
そうすると、別紙「被告販売目録(一)」番号2、4ないし12記載の被告装置(一)の販売金額を別紙「被告モノレール工業販売状況」番号1ないし10記載により算出すると、三億三一五八万四九三三円となり、これに前認定の実施料率二・四パーセントを乗ずると七九五万八〇三八円(円未満四捨五入、以下同じ)となり、これが原告【A】の被告モノレール工業に対し請求しうる補償金の額である。
(二) 被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(一)」番号13ないし15記載のとおり、本件考案の公告後原告【A】から原告会社に本件考案の実用新案登録を受ける権利が譲渡されるまでの間に被告装置(一)を業として製造・販売したことは当事者間に争いがなく(但し、販売価格につき争いのあることは後記のとおり)、被告モノレール工業の右製造・販売が原告【A】の本件仮保護の権利を侵害する違法行為となることは前判示のとおりであり、同被告は右侵害行為について過失があつたものと推定される(実用新案法30条、特許法103条)。
そうだとすると、被告モノレール工業は、原告【A】に対して前記侵害行為によつて同原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。
原告【A】は、実施料相当の損害額を主張するが、被告モノレール工業の販売価格及び実施料率に関する同原告の主張が失当であることは前(一)で判示のとおりであるので、右損害額も前(一)と同様、被告モノレール工業の自認する別紙「被告モノレール工業販売状況」番号11ないし13記載の販売価格に二・四パーセントの実施料率を乗じて算出するのが相当である。
算式 一億一四五三万三一五〇円×〇・〇二四=二七四万八七九六円 右のとおり、被告【A】が被告モノレール工業に請求しうる損害金額は二七四万八七九六円となる。
2 原告会社が原告【A】から本件考案の登録を受ける権利を譲り受けた昭和五二年八月五日から登録までの間、被告モノレール工業が別紙「被告販売目録(二)」番号1、2、4記載のとおり、被告装置(一)を業として製造・販売したこと、被告野村貿易が右のうち番号1の同装置を被告モノレール工業から買受けてこれを販売したことは当事者間に争いがなく(但し、価格の点につき争いのあることは後記のとおり)、被告モノレール工業の右製造・販売、被告野村貿易の右販売が原告会社の本件仮保護の権利を侵害する違法行為となることは前判示のとおりであり、右被告らは右侵害行為について過失があつたものと推定される。
そうだとすると、被告モノレール工業、同野村貿易は、不真正連帯の関係で、原告会社に対して別紙「被告販売目録(二)」番号1記載の被告装置(一)を製造・販売又は販売したことにより原告会社の蒙つた損害を賠償する義務があり、また、
被告モノレール工業は、同目録番号2、4記載の同装置を製造・販売したことにより原告会社の蒙つた損害を賠償する義務があるというべきである。
被告らは、原告会社自身が本件考案の実施品を販売しておらず、原告会社はゴルフコース用モノレールシステムのうちレールをサンヨーに販売しているにすぎず、
サンヨーがこのレール及び自ら製造する自走車をセツトとして「サンヨーモノレールカート」の商品名で、売主として各ユーザーに販売しており、原告会社の得べかりし利益の喪失による損害なるものは架空のものにすぎない旨反論する。
いずれも成立に争いのない乙第五号証、第一七号証の一ないし六、第一八号証、
弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第二二号証の一、
二を総合すると、本件考案の実施品は、「サンヨーモノレールゴルフカート」、
「SANYO GOLFCARTMONORAIL SYSTEM」などの名称でカタログに登載され、また右実施品敷設工事に関し、訴外旭国際開発株式会社、訴外六甲国際株式会社との間で作成された各請負契約書における請負人名義はいずれもサンヨーであり、工事費用の見積りもサンヨー名義で行われていることが認められる。しかし、他方いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三一号証、第三二号証の一・二によると、原告会社とサンヨーは、本件考案の実施品の製造・販売に関し基本契約書を取り交わし、その中でカートはサンヨーが、モノレール装置部の製造は原告会社がそれぞれ行い、両部分を組み合わせて販売すること(第2条)、右実施品の販売は原則としてサンヨーが行い、モノレール装置の施工は原告会社が行うが、両者協議の上原告会社が右実施品を販売することもできること(第3条)、両者のいずれが右実施品の販売・請負をする場合でも金額の確定は両者協議の上決定すること(第4条)、サンヨーは原告会社をサンヨーの代理店として承認すること(第5条)、サンヨーは原告会社に対し、原告会社を販売代理店として経由せずに販売される本システムの全部につき一定の手数料を支払うこと(第6条)などの合意をしていること、現に原告会社は、右契約書第3条但書に基づき、訴外大有開発株式会社を注文主とするサンヨーモノレールシステム装置敷設工事を請負つていることが認められる。
右で認定のとおり、本件考案の実施品の販売・請負の対外的主体は、原則としてサンヨーであるけれども、モノレール装置部の製造は原告会社が行い、サンヨーが販売し請負う右実施品の価格についても原告会社に協議決定権があること、原告会社が右実施品全部の敷設工事を請負う場合もあることに鑑みると、原告会社が本件考案を実施しているものと認めるに十分である。
そうすると、原告会社は、被告モノレール工業の被告装置(一)の製造・販売及び被告野村貿易の同装置の販売によつて同原告が喪失した利益相当の損害金を同被告らに対し請求しうる筋合である。
そこで、右損害額につき検討するに、原告会社は、本件考案の実施品の売上げによる利益率が一〇パーセントであることを前提に、被告装置(一)を原告会社の販売価格に則して評価した上同価格の一〇パーセントをもつて損害額である旨主張する。
弁論の全趣旨によりいずれも真正に成立したものと認められる甲第二八号証、第二九号証の一ないし五、第三〇号証を総合すると、原告会社代表者作成にかかる「当社事業年度別営業実績」と題する書面には、原告会社における昭和四九年四月から昭和五四年三月まで五年間の各事業年度ごとの売上高、粗利益、利益金(税引前)、利益率などが記載されており、そのうち利益金の額は各事業年度の確定申告書の数値に一致すること、右表に示す売上高(五年間累計)二四億〇三三五万円のうち約九七パーセントに当たる二三億三一五三万円が本件考案の実施品の製造・販売によるものである、と記載されていることが認められる。
右で認定のとおり、各事業年度ごとの利益額は、確定申告書に一致するので採用できるとしても、本件考案の実施品の製造販売額並びに右販売額の総売上高に対する割合に関する記載部分は、客観的な裏付けとなる証拠がないので、結局採用し難いといわなければならない。
そうだとすると、原告会社の総売上高に対する平均利益率が一四パーセントであることから、直ちに本件考案の実施品の販売による利益率が一〇パーセントである、と推定することは困難であるというべきである。
次に、被告モノレール工業、同野村貿易の被告装置(一)販売による利益額から原告会社の損害額を推定すること(実用新案法29条1項)の可否について考えるに、本件においては、被告モノレール工業の販売価格については同被告及び被告野村貿易が別紙「被告モノレール工業販売状況」記載のとおり自認しているものの、
その利益額についてはこれを認めるに足りる証拠がない。
したがつて、右被告らが被告装置(一)を製造・販売し、又は販売したことによる原告会社の損害は、右推定による算定はできないので、結局同被告らの自認する右販売価格に前1で判示した実施料率二・四パーセントを乗じて算出される限度に止めざるをえない。
そうすると、別紙「被告販売目録(二)」番号1記載の被告装置(一)について、被告モノレール工業、同野村貿易が自認する別紙「被告モノレール工業販売状況」番号14記載の販売金額五三〇〇万円に、二・四パーセントを乗じて得られる一二七万二〇〇〇円が同被告らが各自原告会社に対して支払うべき損害金となる。
同様に、別紙「被告販売目録(二)」番号2、4記載の被告装置(一)について、被告モノレール工業が自認する別紙「被告モノレール工業販売状況」番号15、17記載の販売金額合計一億〇六〇〇万円に二・四パーセントを乗じて得られる二五四万四〇〇〇円が、同被告が原告会社に対し支払うべき損害金となる。
3 被告らの主張六2については、右判示とはその前提を異にするものである。
六 以上のとおりとすると、原告らの本訴請求は、原告会社が被告モノレール工業に対して被告装置(一)の製造・販売の差止め、被告モノレール販売、同野村貿易に対して右装置の販売の差止め、被告モノレール工業、同野村貿易に対して各自損害金一二七万二〇〇〇円、被告モノレール工業に対して損害金二五四万四〇〇〇円、及び右各金員に対する遅い被告野村貿易への訴状送達の日の翌日である昭和五六年九月二二日から各完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告【A】が被告モノレール工業に対して補償金七九五万八〇三八円・損害金二七四万八七九六円の合計一〇七〇万六八三四円及びこれに対する右同日から完済まで右同率の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるが、その余の部分は理由がないというべきである。
よつて、原告らの本訴請求を右の限度で認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法89条92条93条を、仮執行の宣言につき同法196条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
追加
別紙被告販売目録(一)、(二)及び「被告モノレール工業販売状況」(省略)被告装置(一)の図面及び説明書一、図面の説明第1図は連結棒を介して多数の支柱の側方に支持されたモノレールと該モノレール上の自走車の側面図、第2図はその正面図、第3図はその斜視図、第4図はゴルフコースにモノレールを敷設した状態を示す模式平面図である。
図面中、(4)はバツテリーを動力源とする自走車の後部上面に設けた発進停止用スイツチ、(6)はテイーインググランド、(7)はスルーザグリーン、(8)はグリーン、(9)は自走車を収納するカートハウスをそれぞれ示すものである。
二、被告装置(一)の構造次のAないしDの構造を備えた図面に示すとおりのゴルフバツグ搬送循環軌道装置A、支柱(5)には、その上下方向調節可能に、軌条(2)を固定するための取付部材(10)と、支柱(5)の地上の高さを規制固定するための位置規制部材(13)とをそれぞれボルト(11)・(11)により取り付けてある。
B、軌条(2)は、ゴルフコースの一番ホールから九番ホールまたは一八番ホールまで順次循環して一・五メートル以内の間隔ごとに地上一五ないし二〇センチメートルの高さに立設した多数の支柱(5)に対して、軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)(この連結棒(12)は右取付部材(10)と構造上一体である。)を支柱(5)と直交させ、かつ支柱(5)の上端部一側方に上下方向調節可能に固定することにより、支柱(5)と軌条(2)との間に七・五センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けて取り付けてある。
C、ゴルフバツグ(1)を積載して該軌条(2)上を走行する自走車は、バツテリーを動力源とし、前後二組の上下各二個の車輪のうち上部側二個の車輪は車台側板自体に、また下部側二個の車輪は車台から軌条(2)の一側(支柱(5)のない側)下方に突出させた二個の揺動アーム(14)の先端にそれぞれ車軸を介して取り付けてある。
D、右自走車は、端車台下方にある前後二組の各上下二個の車輪がバネ(15)の働きにより軌条(2)の上下を挾持緊締することによつて支持され、該軌条(2)上を走行する。<12362-001><12362-002><12362-003><12362-004>被告装置(二)の図面及び説明書一、図面の説明第1図の1は、土中に埋設されたU字溝の溝内において片側側壁の側方に連結棒を介して支持されたモノレールと該モノレール上の自走車の側面図、第1図の2は、多数の支柱の側方に支持されたモノレールと該モノレール上の自走車の側面図、第2図の1、2は、それぞれの正面図、第3図の1、2は、それぞれの斜視図、第4図は、ゴルフコースにモノレールを敷設した状態およびU字溝埋設部分と支柱立設部分の配置を示す模式平面図である。
図面中、(4)はバツテリーを動力源とする自走車の後部上面に設けた発進停止用スイツチ、(6)はテイーインググランド、(7)はスルーザグリーン、(8)はグリーン、(9)は自走車を収納するカートハウスをそれぞれ示すものである。
二、被告装置(二)の構造次のA′ないしD′の構造を備えた図面に示すとおりのゴルフバツグ搬送循環軌道装置A′、土中に埋設されたU字溝(5)の溝内部に敷設する軌条(2)を固定するための取付部材(10)は、型の凹部をU字溝(5)の片側側壁に上方から嵌合したうえボルト(11)・(11)・(11)により取り付けてある。なお、該取付部材(10)は、U字溝の外側壁に沿つて地中に埋設されたパイプ(16)をボルトにより保持している。
支柱(5)には、その上下方向調節可能に、軌条(2)を固定するための取付部材(10)と、支柱(5)の地上高さを規制固定するための位置規制部材(13)とをそれぞれボルト(11)・(11)により取り付けてある。
B′、軌条(2)は、ゴルフコースの一番ホールから九番又は一八番ホールまで順次循環してU字溝(5)の溝内または地上一五ないし二〇センチメートルの高さにそれぞれ次のI又はUのとおり取り付けられている。
T、ゴルフコース中ゴルフプレイヤーのプレイと比較的密接な地域において、土中に連続して埋設されたU字溝(5)に沿つて一・五メートル以内の間隔ごとに、軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)(この連結棒(12)は該取付部材(10)と構造上一体である。)をU字溝(5)の片側側壁と直交させ、かつU字溝(5)の溝内部において該側壁の上部側方に固定することにより、該側壁と軌条(2)との間に一二センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けて該側壁に取り付けてある。
U、ゴルフコース中ゴルフプレイヤーのプレイと比較的密接でない地域において、
一・五メートル以内の間隔ごとに立設した多数の支柱(5)に対して軌条(2)の両側壁を貫通する連結棒(12)(この連結棒(12)は該取付部材(10)と構造上一体である。)を支柱(5)と直交させ、かつ支柱(5)の上部一側方に上下方向調節可能に固定することにより、支柱(5)と軌条(2)との間に七・五センチメートルの間隔(芯芯間隔)を設けて取り付けてある。
C′、ゴルフバツグ(1)を積載して該軌条(2)上を走行する自走車は、バツテリーを動力源とし、前後二組の上下各二個の車輪のうち上部側二個の車輪は車台側板自体に、また下部側二個の車輪は車台から軌条(2)の一側(支柱(5)のない側)下方に突出させた二個の揺動アーム(14)の先端にそれぞれ車軸を介して取り付けてある。
D′、右自走車は、車台下方にある前後二組の各上下二個の車輪がバネ(15)の働きにより軌条(2)の上下面を全面的に挟持緊締することによつて支持され、該軌条(2)上を走行する。
<12362-005><12362-006><12362-007><12362-008><12362-009><12362-010><12362-011><12362-012><12362-013><12362-014><12362-015>
裁判官 金田育三
裁判官 鎌田義勝
裁判官 若林諒
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