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事件 昭和 59年 (モ) 2907号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1984/09/20
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事仮処分
主文 一 当裁判所が昭和五九年三月一六日当裁判所昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令申請事件についてなした仮処分決定は、申立人において金五〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消す。
二 申立人のその余の申立を却下する。
三 申立費用は被申立人の負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
全容
一 当事者の求めた裁判1 申立人(一)大阪地方裁判所が昭和五九年三月一六日同裁判所昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令申請事件についてなした仮処分決定は、申立人において金三〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消す。
(二)訴訟費用は被申立人の負担とする。
(三)仮執行宣言2 被申立人(一) 申立人の本件申立を棄却する。
(二) 訴訟費用は申立人の負担とする。
二 申立人の申立の理由1 被申立人(債権者)は申立人(債務者)を相手方として、申立人の製造・販売する別紙第一目録記載の物件(以下「イ号物件」という)が、被申立人の有する実用新案登録第一一六六三二二号(別紙第二の実用新案公報記載のとおり)の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という)を侵害するとして、大阪地方裁判所に昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令の申請をしたところ、同裁判所は右申請に基づき昭和五九年三月一六日、
「申立人はイ号物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。」旨の仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という)を発した。
2 しかし、以下述べるとおり本件仮処分決定の被保全権利は不存在である。
(一) 本件仮処分決定発令後に、本件実用新案権を無効とすべき公知資料である米国特許第二九一二一二九号(以下「米国特許」という)の存在が明らかとなつた。右米国特許には次のことが示されている。
(1) 車輛10(符号は別紙第三米国特許明細書図面の符号による。
以下同じ)は床の下張13の上でかつ側壁15の内部に配置された一対の縦長のサイドレール12を備えるように示されている。ルーフ16は側壁15に連結され、
従来用いられている貨物車の縦の隔室を構成する。
(2) 所望のモーター47を使用し、車輛の動力装置とは別個の独立した電気あるいはガソリン駆動力により減速ユニツト45を作動する。
(3) 荷物をスラット25および隔壁27によつて形成された床上において、隔壁27が車輛の反対側に向かつてゆつくり動くようにモーター47を駆動する。この動作は積込作業に応じて間欠的又は連続的に行う。隔壁27は全車輛に荷物を積み込んでいるときは最も奥の位置まで移動している、車輛から荷物を積み下ろしたときには最も手前の位置に移動している。
(二) 本件考案の実用新案登録請求の範囲は、「車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめ、上記コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の搭載バツテリーからなる駆動装置を設け、上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミツト・スイツチと、上記電動機の正逆転制御回路に組込んだ上記各リミツト・スイツチにそれぞれ各別に接続された操作スイツチとを有する駆動制御装置を設けてなるコンベアー付き自走車」であり、米国特許は本件考案の構成要件の重要部分を充足している。
ただ、米国特許は、リミツト・スイツチおよび操作スイツチ等により構成される駆動制御装置については明確に示していないが、当然これらの機構を設けるべきであることを示唆している。すなわち、「隔壁が車輛の反対側に向かつてゆつくり動くようにモーターを駆動する。この動作は積込作業に応じて間欠的又は連続的に行う」と明記しており、当然リミツト・スイツチ等の駆動制御装置を必要とし、米国特許ではそれに関する明確な記載がないが、それは権利の限定をなさなかつたにすぎないと考えられる。更に、そもそも本件考案の出願過程において、特許庁が昭和四九年九月一二日付の拒絶理由通知書で、「リミツト・スイツチを設けてモーターの駆動制御を行わせることは一般に行われている技術的手段にすぎない」旨述べており、かかる技術は公知公用のものであつたことを示している。
なお、被申立人は、米国特許はおけるモーターは、車輛の主動力装置とは独立別個の装置であることが明記されているから、米国特許をもつてしても、車輛の搭載バツテリーをしてコンベアーを駆動せしめるという本件考案進歩性は毫もゆるがないと主張する。しかし、本件考案の出願時点において、自動車にセル用のバツテリーが搭載されていることは公知の事実であり、しかもかかるバツテリーを米国特許の駆動源に用いることは、当業者ならずとも通常の常識人ならば直ちに想起するはずのものであり、特別の考案を要するものではない。
(三) 申立人は本件実用新案権の無効審判の請求をしており、本件実用新案権は早晩無効審判により無効とされる運命にあること明らかであるが、かかる無効原因を内包する権利に基づく差止請求権には被保全権利がないと解すべきである。
仮に本件実用新案権を無効なものとして取扱えないのであれば、本件考案の権利解釈として最も厳格に解し、実施例に限定して最も狭く解すべきである。右の限定解釈の立場から本件考案をみるならば、その権利範囲は、「コンテナーケース内に設けたコンベアーの上に仕切板を直接載せた構造であり、かつコンテナーケースの前部および後部に仕切板の移動に応じて開閉する二個のリミツト・スイツチを設けた構造」に限定して解釈される。しかるに、イ号物件は、コンベアーなる構造を有していないこと、コンベアーの上に仕切板を直接載せた構造となつていないこと、
前部にはリミツト・スイツチを設置していないことから、本件考案とはその構成を異にするものであり、その技術的範囲に属していないこと明らかである。
3 本件仮処分決定については、仮処分によつて申立人が通常受けるよりも異常な損害を受ける事情があるうえ、被申立人は金銭的補償によつて仮処分の目的を達しうる事情があるので、これを取消すべき特別事情がある。
(一) 申立人側の事情 申立人は従業員五名を雇用してイ号物件の製造・販売を業としているものであるが、本件仮処分決定によりイ号物件の製造・販売を禁止されたため重大な損害を蒙つている。
申立人はイ号物件のみの製造・販売をしており、本件仮処分決定により申立人の従業員は稼働不可能となり、これによる損害は一か月金二五〇万円、更に得意先との受注契約も解約され販売実績は一挙に皆無となつたうえ、下請先から購入した部品も無価値なものとなり、その損害は一か月金二〇〇万円にも達する。
本件実用新案権は早晩無効審判により無効とされる運命にあるが、いかに右審判の審理の迅速化を促進しても通例では少なくとも半年ないし一年はかかり、その間申立人がイ号物件の製造・販売を禁止されていればその損害は莫大なものとなり、
申立人は到底負担に耐えられるものではない。申立人は緊急融資を受けて当面を乗り切るつもりであるが、この先旬日をいでずして、従業員の給料支払もおぼつかない状態となり、かくては企業倒産は必至である。
申立人はイ号物件を開発するために血のにじむような努力を重ね、その開発および企業化に金二七六八万円もの製品開発費をかけたうえ、やつと企業化に成功して今から利益を得ようとする矢先にある。しかも、イ号物件は、その性能の良さから中小企業局新技術企業化の推薦を受け、中小企業金融公庫から金八八五〇万円もの融資を受けており、イ号物件の企業化には国家資金が投入され、国の技術開発の目標の一つに指定されているのであるから、申立人が倒産することは国家利益の損失ともなる。
なお、被申立人は、バツテリーを駆動源とする自動荷役装置(イ号物件)から、
エンジンを駆動源とするPTO方式の自動荷役装置へと生産を切り換えることによつて、異常損害の発生をきわめて容易に回避できると主張する。しかし、PTO方式の自動荷役装置は、製品価格が二〇ないし三〇パーセント程度高くなり市場性を有しないこと、荷役作業時にエンジンを駆動させる必要があり、車輛暴走の危険があるうえ排ガス、騒音による公害を発生する虞れがあること、行政法上の制約を受け短期日に許可を取るのは不可能であることから、PTO方式の自動荷役装置に変更することは不可能である。
(二)被申立人側における事情 被申立人は本件考案の実施品である「オートコン」を製造・販売しているが、その販売高は昭和五八年度において金二億一五〇〇万円であり、被申立人の総営業販売高二〇〇億円に対する割合はたかだか一パーセントであつて、本件仮処分決定が取消されたとしてもその受ける損害はごく軽微なものであり、単に被申立人の販売額が幾分低下するにすぎないから、金銭的に補償すれば足るものと考えられる。
申立人は、その販売するイ号物件が被申立人の販売するオートコンと混同されるのを防止するため、従前使用していた「株式会社オートコンベ国際輸機」なる商号を「株式会社国際輸機」と変更し、イ号物件に使用している商標も「オートコンベ」から「ブルフアー」に変更しており、両商品が混同されることはない。更に、
イ号物件は性能が非常にすぐれており、その優秀性は通商産業局の認めるところであつて、顧客からも大好評を受けており、本件仮処分決定を取消し申立人がイ号物件の製造・販売を再開しても、被申立人の名誉・信用を害することはない。
本件仮処分決定が取消されても、申立人が製造・販売するイ号物件の台数・価格についての被申立人の調査はそれほど困難ではなく、被申立人の損害額の立証は困難ではない。申立人の営業規模は小さく、かつイ号物件は大型であり、そのうえ顧客は共通であるから、台数は比較的容易に把握されるし、申立人と被申立人とはほとんど同種のものを製造・販売しているから、利益の推定も容易である。
本件実用新案権は昭和六一年四月二八日にて権利が消滅するので、本件仮処分決定の取消により被申立人が蒙るべき損害はたかだか数百万円の得べかりし利益の喪失にすぎず、その他に被申立人が蒙るべき損害は考えられない。しかも、本件仮処分決定は、被保全権利が不存在となる可能性が甚しく大きい。
4 以上の次第であるから、申立人は民事訴訟法759条に基づき、特別事情による本件仮処分決定の取消を求める。
三 申立の理由に対する被申立人の認否1 申立の理由1項は認める。
2 同2項は争う。
3 同3項(一)のうち、申立人はイ号物件の製造・販売を業としているものであるが、本件仮処分決定によりイ号物件の製造・販売を禁止されたことは認め、イ号物件については、その性能のよさから中小企業局新技術企業化の推薦を受け、中小企業金融公庫から金八八五〇万円の融資を受けたことは不知、その余は不認する。
4 同3項(二)については、申立人が商号および商標を変更したこと、被申立人が本件考案の実施品「オートコン」を製造・販売していることは認めるが、イ号物件は性能が非常にすぐれており、その優秀性は通商産業局の認めるところであつて、顧客からも大好評を受けていることは不知、その余は否認する。
四 被申立人の主張1 被保全権利について 申立人は本件実用新案権を無効とすべき決定的な公知例として米国特許を引用する。しかし、米国特許の自動荷役装置はモーターによりコンベアーを駆動せしめる構成をとつてはいるが、右モーターは車輛の主動力装置とは別個独立の装置であることが明記されており、右モーターの駆動源は車輛の搭載バツテリーではなく、この目的のために特に設けられた駆動源であることが明らかである。従つて、米国特許をもつてしても、車輛に標準装備されている搭載バツテリーをしてコンベアーを駆動せしめるという本件考案進歩性は毫もゆるがない。
2 申立人側の異常損害について 申立人の代表取締役である【A】は、昭和四三年頃からエンジンを駆動源とするPTO方式の自動荷役装置に関する発明ないし考案を多数出願しており、申立人は、PTO方式の自動荷役装置の生産を行うことは技術的には可能である。
申立人はPTO方式の自動荷役装置の製造・販売は経営的に成り立たないと主張するが、株式会社とね製作所および光洋機械産業株式会社は現在もPTO方式の自動荷役装置の製造・販売をしており、現在でも充分に実用に耐え商業的生産における採算も成り立ちうるものである。
申立人は本件仮処分決定によつて異常な損害を蒙つている旨主張するが、申立人がPTO方式の自動荷役装置の生産を行うことは技術的に可能であり、しかもその製造・販売は経営的にも充分成り立ちうるものであるから、申立人の損害は、車輛の搭載バツテリーを駆動源とする自動荷役装置(イ号物件)から、エンジンを駆動源とするPTO方式の自動荷役装置へと生産を切り換えることによつて、極めて容易に回避できるものであつて、異常損害ということはできない。
3 被申立人側における金銭補償満足について 工業所有権は人間の精神的創作活動の所産であるから、単にその侵害に対する金銭的賠償を求めうるだけでなく、むしろその侵害そのものの排除を求めうる利益を有するのであり、このような工業所有権の本来的性質から立法上侵害に対する差止請求権が明定されているのである。従つて、本件仮処分決定のように実用新案権に基づく差止請求権を被保全権利とする場合には、この権利の性格からして、被申立人が仮処分にかわる金銭的補償により満足を得ることは不可能である。
また、工業所有権の侵害による損害の範囲はきわめて漠然としており、しかも本案訴訟におけるその立証は著しく困難であるから、仮に、工業所有権に対する侵害を金銭補償により代替せしめることが抽象的には可能のようにみえても、実際には、本案訴訟において権利者が侵害による損害の範囲ないし金額を立証することができずに泣き寝入りをせざるを得ない場合が多く、本件もその例に漏れない。すなわち、被申立人は、日本国内において本件考案の実施品を独占的に製造・販売しているところ、本件仮処分決定の取消によつて申立人のイ号物件の製造・販売が開始され、それによつて申立人が利益を受けた場合、右利益相当分は被申立人の損害と推定されるべきであるとしても(実用新案法29条1項)、申立人のような非上場会社の利益額を証明することはほとんど不可能であり、結局、被申立人は申立人による侵害を甘受せざるをえない立場に追い込まれるのである。このように、本件仮処分決定においては、実際上被申立人が金銭的補償によつて満足を得ることは不可能である。
4 両当事者の公平について 被申立人は、昭和四五年四月本件考案の開発に着手し、昭和四六年四月からその実施品「オートコン」の製造・販売を始めたものの、当初の販売台数は二、三台で昭和五二年頃まで赤字が続いた。それにも拘わらず、被申立人はオートコロンの改良、販売促進に努力した結果、昭和五三年に至りようやく黒字に転換したのであるが、その間の累積赤字は約一億円にも上つた。被申立人は、このような努力の末にようやく現在のような安定した売上をあげるまでになつたのである。
これに対し、申立人は、PTO方式の自動荷役装置の製造・販売を目的として昭和五七年二月に設立されたが、昭和五八年四月から車輛の搭載バツテリーを駆動源とする自動荷役装置(イ号物件)の製造・販売を開始したのである。昭和五八年四月以前に、日本国内において車輛の搭載バツテリーを駆動源とする自動荷役装置の製造・販売を行つていたものは、被申立人のみであること、昭和五四年五月、申立人代表取締役【B】は顧客を装つて被申立人の事務所を訪れ、オートコンについて説明を受けていること、被申立人の発行にかかるオートコンのカタログには、本件考案について明記されていること等を考え合わせると、申立人は被申立人が本件実用新案権を有している事実を知つていたにもかかわらず、駆動源をPTO方式から車輛の搭載バツテリーに切り換えることによつて、本件考案を盗用したことが明らかである。
なお、申立人は本件仮処分決定によつて莫大な損害を蒙つている旨主張するが、
その損害額のほとんどは人件費であり、しかもその人件費は申立人の経営を担当する四名の給料であるから、実際に申立人が支出を余儀なくされている支出は数百万円にすぎないと推定される。
以上のように、申立人が本件仮処分決定により蒙つている損害はまさしく権利の盗用者が当然に蒙るべきものであり、しかもその損害の程度も大きいものではないから、このような場合、本件仮処分決定を取消すことが、権利者の正当な利益の犠牲の下に権利の盗用者を保護することになり、特別事情による仮処分の取消制度の指導理念である公平の観念に反することは明らかである。
五 疎明(省略) 理 由一 本件仮処分決定の存在等について 被申立人(債権者)が申立人(債務者)を相手方として、申立人の製造・販売するイ号物件が被申立人の有する本件実用新案権を侵害するとして、当裁判所に昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分命令の申請をしたところ、当裁判所は右申請に基づき昭和五九年三月一六日、「申立人はイ号物件を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。」旨の本件仮処分決定を発したこと、申立人はイ号物件の製造・販売を業とするものであるが、本件仮処分決定によりイ号物件の製造・販売を禁止されたことは、当事者間に争いがない。
二 本件実用新案権の無効審判請求の帰趨について1 申立人は、本件仮処分決定発令後に本件実用新案権を無効とすべき公知資料である米国特許の存在が明らかとなつたので、本件実用新案権は早晩無効審判により無効とされることが明らかであると主張するところ、証人【C】の証言により成立が認められる甲第一二号証の一によれば、申立人は特許庁に対して、昭和五九年一月二五日本件実用新案権の無効審判の請求をし、更に同年三月三〇日新たに発見した米国特許に基づき理由補充をして、本件実用新案権は、米国特許その他の公知資料に基づき当業者がきわめて容易考案できたものであるから、実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものに該当し、同法37条1項1号の規定により無効とされるべきであると主張し、現在右無効審判請求事件が特許庁に係属中であることが一応認められる。そこで、まず、本件実用新案権が無効審判により無効とされる可能性の有無およびその程度について考察する。
2 成立に争いのない乙第二〇号証(別紙第二の実用新案公報)によれば、本件考案(昭和四六年四月二八日出願)の構成要件およびその作用効果は次のとおりであることが一応認められる。
(一) 構成要件(1) 車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめること。
(2) 上記コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の搭載バツテリーからなる駆動装置を設けること。
(3) 上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミツト・スイツチと、上記電動機の正逆転制御回路に組込んだ上記各リミツト・スイツチにそれぞれ各別に接続された操作スイツチとを有する駆動制御装置を設けること。
(4) 上記(1)(2)(3)の構成からなるコンベアー付き自走車であること。
(二) 作用効果(1) 車輛の搭載バツテリーをコンベアーの駆動源として利用するので、車輛のパワー・エンジンを利用する公知システムに比し、荷役作業時にエンジン排気ガスおよび騒音などを発生して作業性を阻害する虞れがない。
(2) コンベアーに設けられた仕切板は、荷物の荷崩れを防止するほか、積載する荷物の多少にかかわらず、この仕切板とコンテナーケースの後部とで荷物を挟んで安定に保持することができる。
(3) コンベアーの前後進により仕切板がコンテナーケースの前部もしくは後部位置に移動すると、リミツト・スイツチが作動してコンベアーの駆動を停止せしめるので、作業者の操作ミスなどによつて仕切板およびコンベアー部分を破損せしめるという虞れを解消し、安全かつ確実なコンベアーの駆動を行なわせることができる。
(4) コンベアーの前後進動作は、遠隔から操作スイツチを操作して任意規制することも可能であるから、この種の荷役作業に対する利用分野を広げて能率ならびに作業性を一層高めうる。
(5) 本考案のコンベアー付き自走車は、コンベアーならびにその駆動機構を容易に車輛に装備可能なごとく構造、制御ならびに調節がきめわて簡単であるので、
きわめて経済的に実施することが可能であり、軽量小型荷物の荷役作業の合理化に資することが少くない。
3 成立に争いのない甲第一〇号証の一、二(米国特許明細書及びその訳文)並びに同じく甲第二一号証(無効審判請求書)によれば、米国特許(昭和三四年一一月一〇日特許、特許庁資料館昭和三五年三月七日受入)は別紙第三に図示されるようなトレーラーおよびトラツク上に荷物を積み下すための装置に関する発明であり、
その発明の目的とするところは、「荷積み下し作業に際し荷物を車輛の全長にわたつて運ぶ必要はなく、車輛の開放端から直接右作業を行うことができる車輛内蔵形の荷積み下し装置を提供すること、構造および操作がきわめて簡単かつ効果的な装置を提供すること、荷物を車輛の一端から他端まで運び、かつ、この目的のために特に設けられた別の動力装置によつて駆動される車輛の床レベルに沿つたコンベアーシステム形式の車輛用の荷積み下し装置を提供する」ことにあるところ、その構成は左記のとおりである。
(一) 右コンベアーシステムは、別紙第三米国特許明細書図面4図、5図に示されるように、車輛の長手方向に配設された一対のエンドレスチエイン21、21と、同じく車輛の長手方向に回転自在に支持され、クロスヘツド32を介してチエイン21、21を駆動させるねじ軸37と、該軸を正逆回転させるためのモーター47とを備えている。チエイン21、21については、その上方送路には隔壁27(別紙第三の4図、5図、8図)がそのベース26を介して取付けられているとともに、このベース26に連接して、チエイン21、21の下方送路にかけてリブプレート25……がチエイン21、21間に取付けられ、上方送路から下方送路に至る一連の荷物載置床が形成されている。チエイン21、21の下方送路には、上記載置床の後端側にクロスヘツド32が取付けられているとともに、このヘツド32に設けられたねじ孔35を介してねじ軸37と噛み合つている。従つて、クロスヘツド32は、正逆回転するねじ軸37に沿つて前後に移動し、エンドレスチエイン21、21を正逆回転させる。
(二) 減速機45を作動するための動力を供給するために、車輛の主動力装置から独立した電動装置又はガソリン駆動ユニツトのような任意所望の型式のモーター47を使用してもよい。
(三) 実用においては、モーター47を動かすと、ねじ軸37が回転して隔壁27が車輛の開放端に向つて動く。
荷物をリブプレート25および隔壁27によつて形成された床上に置いて、モーター47を反対方向に動かすと、隔壁27は車輛の反対側に向つてゆつくりと動く。
この動作は、荷積作業の形態に応じて連続的あるいは間欠的に行うが、いずれにせよ、作業者は荷物を積み込む間は車輛の開放端に立つていることが必要なだけである。隔壁27は、車輛への荷物の積み込みとともに最も内部の位置まで動かされ、
車輛から荷物を下ろすときには車輛の開放端に向つて動かされる。
4 米国特許は、本件考案と同じコンベアー付き自走車であり、そのコンベアーシステムは、車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに隔壁、すなわち仕切板を直立せしめた構成であり、本件考案の前記構成要件(1)を具備しており、又この隔壁によつて本件考案の前記作用効果(2)を達成することも明らかである。
次に、右コンベアーシステムを駆動するための動力については、米国特許では、
「減速機45を作動するための動力を供給するために、車輛の主動力装置から独立した電動装置又はガソリン駆動装置のような任意所望の型式のモーター47を使用してもよい」と示されていて、このことは、コンベアーの動力伝達機構、すなわち減速機45、およびスプロケツト44、41とチエイン42に連結されるモーター47には、車輛の主動力装置とは別個の電気駆動ユニツトを駆動源として使用する技術思想が開示されている。そして、右技術思想の下に、その駆動源に車輛の搭載バツテリーを選択するときは、本件考案の前記作用効果(1)を当然達成しうるものである。
米国特許は、リミツト・スイツチおよび操作スイツチ等により構成される駆動制御装置(本件考案の前記構成要件(3))については、明確には開示していないが、前記3の(三)の技術内容が示されていて、当然右駆動制御装置を設けるべきであることを示唆している。しかも、成立に争いのない甲第一八号証(昭和四三年四月一五日発行の「機械工業便覧」)によると、物上げおよび運搬の編には安全装置および運動装置としてリミツト・スイツチが用いられることが明示されていて、
搬送機械において二個のリミツト・スイツチを用いて物体を自由に移動させたり停止させたり任意の位置に停止させることは、本件考案の出願時において既に公知の技術的手段となつていた。
5 ところで、被申立人は、米国特許における自動荷役装置はモーターによりコンベアーを駆動せしめる構成をとつてはいるが、右モーターの駆動源は車輛の搭載バツテリーではなくこの目的のために特に設けられた駆動源であり、米国特許をもつてしても、車輛の搭載バツテリーをしてコンベアーを駆動せしめるという本件考案進歩性は毫もゆるがないと主張する。しかし、米国特許明細書中には、前記のとおりコンベアーの駆動源を車輛の主動力装置から独立した駆動源に求める技術手段が開示されているのであり、そのことは既に本件考案の前記構成要件(2)の同一の技術手段の開示にあたると認められなくもないが、少くとも、米国特許明細書中にも、車輛に標準装備されているセル用のバツテリー以外に、自動荷役装置用の専用バツテリーを特別に搭載することによる特別の作用効果については何ら記載されていないうえ、本件考案出願時点においては、自動車にセル用のバツテリーが搭載されていることは公知の事実であつたと考えられるから、上記米国特許明細書においてその駆動源を車輛の主動力装置から独立した駆動源に求める手段が開示された後においては、これに自車搭載バツテリーを選択することは、当業者ならば直ちに想起し得えて、何ら特別の考案を要しないものとみなければならない。現に本件考案考案者らも、「一般に、自走車に積載せるコンベアーは、軽量小型の荷物の荷役に使用されるだけであるので、運転時間が短かく、搭載バツテリーのごとく限定された容量の電源に依存しても十分に電動機を作動せしめ」得る(公報5欄5行目以下)として、上記想到が一般的に容易であつたことを開陳しながら、本件考案のコンベアー装置の駆動源を左様に自車搭載バツテリーに求めながら、バツテリー容量との関係においてその負担を軽減せしめる構成を採る技術手段の開示は全くしていないのである。
6 以上によれば、本件考案は、既に米国特許明細書中にその全部が開示されたとはいえないまでも、少くともその考案からきわめて容易に推考し得たものと考えられるから、本件実用新案権については、実用新案法3条2項の規定に違反して登録されたものに該当し、同法37条1項1号の規定により無効とされるべきであるとして、特許庁の無効審判により無効とされる可能性が大である。
三 本件仮処分決定を取消すべき特別事情の有無について1 前掲乙第二〇号証、成立に争いのない甲第三号証、甲第四号証の二、甲第二三号証、乙第一ないし第九号証、乙第一一号証、証人【C】の証言により成立が認められる甲第二号証、甲第九号証、甲第一四号証、甲第二二号証、証人【D】の証言により成立が認められる乙第一〇号証、乙第一三号証、乙第二一・第二二号証の各二、同証言により被申立人社員【E】が昭和五九年七月に撮影したPTO方式による自動荷役装置付自走車の写真であることが認められる乙第二一・第二二号証の各一、証人【C】及び同【D】の各証言、及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が一応認められる。
(一) 申立人側の事情 申立人は、昭和五七年二月に自動荷役装置の製造・販売を行うために設定された資本金一六〇〇万円の会社であり、設立当初はエンジンを駆動源とするPTO方式の自動荷役装置を開発し、試作品を製造してその試験販売を試みたが、一台も売れなくて中止した後、昭和五八年四月から車輛の塔載バツテリーを駆動源とする自動荷役装置であるイ号物件の製造・販売を開始し、申立人の代表取締役以下総勢五名でイ号物件のみの製造・販売を業としていた。
申立人は、イ号物件の開発および企業化に金二七二八万円の製品開発費をかけており、その性能を認められて大阪通商産業局長から新技術の企業化に必要な資金融資の推薦を受け、中小企業金融公庫から昭和五八年一二月に金三五〇〇万円、昭和五九年二月に金五〇〇〇万円の融資を受けて、本件仮処分決定が発せられた同年三月一六日当時は、ようやく企業化に成功する見通しがつきこれから利益を得ようとする矢先にあつた。
申立人はイ号物件の製造・販売のみをしていた会社であるので、本件仮処分決定により、全面的な操業停止を余儀なくされたうえ、得意先との受注契約も解約されて販売実績は一挙に皆無となつて、申立人の企業活動全体が休止状態に立至つており、下請先から購入した部品も他に活用の途はなく、借入金に対する利息金の支払も相当の額に達し、この先旬日をいでずして従業員の給料支払もおぼつかない状態となつている。
申立人の代表者である【A】は、昭和四三年頃からPTO方式の自動荷役装置に関する発明ないし考案を多数出願しており、申立人は、PTO方式による自動荷役装置の生産を行うことは技術的には可能であり、しかも、光洋機械産業株式会社がライセンシー、株式会社とね製作所がライセンサーとなつて、現在でもPTO方式による自動荷役装置の製造・販売がなされていて、その自動荷役装置は実際にも使用に供されている。しかし、PTO方式による自動荷役装置は、バツテリーを駆動源とする自動荷役装置に比較して構造が複雑となつて製品資材コストが二割ないし三割も高くなるうえ、荷役作業中終始エンジンを駆動させておかなければならないため、騒音が発生して早朝および夜間の荷役作業が困難であり、又排気ガスの発生によつて倉庫内や工場内等での荷役作業には支障を来たすという欠点がある(別紙第二の実用新案公報の2欄7行目ないし14行目参照)。従つて、申立人がバツテリーを駆動源とする自動荷役装置(イ号物件)から、PTO方式の自動荷役装置へと生産を切り換えることについては、技術的には可能であるとしても、一旦、前者を発売しその販売ルートを開拓しつつあつた申立人が、再び後者に切り換えることによつて顧客を失う危険があるなど、商業的生産ベースに乗るかは大いに疑問があり、右切り換えによつて本件仮処分決定による損害を回避するに有効な方策ということはできない。
(二) 被申立人側の事情 被申立人は、昭和二五年六月に設立された資本金四三億八六〇〇万円、東京証券取引所第二部上場会社であり、昭和四五年四月頃本件考案の開発に着手し、昭和四六年四月頃からその実施品「オートコン」の製造・販売を始めたものの、当初の販売台数は年間二、三台で昭和五二年頃まで赤字が続いた。それにもかかわらず、被申立人はオートコンの改良、販売促進に努力した結果、昭和五三年に日本郵便逓送株式会社への大量かつ継続的な売込みに成功したことが直接のきつかけとなつて、
同年から黒字に転換したのであるが、その間の累績赤字は約一億円にも上つた。
申立人がイ号物件の製造・販売を開始した昭和五八年四月までは、日本国内で車輛の塔載バツテリーを駆動源とする自動荷役装置の製造・販売を行つていたのは、
被申立人のみであつたのに、申立人がイ号物件の製造・販売を始めてからは、神鋼商事株式会社を発売元として、被申立人の最大の顧客である日本郵便逓送株式会社をはじめとして、各自動車販売会社、外食産業、航空会社等に対して販売攻勢をかけ、しかも申立人のイ号物件の方が被申立人のオートコンよりも価格が相当安かつたために、被申立人は顧客を奪われ営業上相当の影響を受けたのであり、もし本件仮処分決定が取消され、申立人が再度イ号物件の製造・販売を開始すれば、被申立人は再度営業上少なからぬ損害を蒙ることが予想される。
もつとも、本件実用新案権の存続期間は昭和六一年四月二八日まであと一年数か月しかないうえ、申立人は代表取締役以下五名の小企業にすぎず、イ号物件の発売元であつた神鋼商事株式会社についても本件仮処分決定と同じ決定中でイ号物件の販売を禁止されたため、申立人に対する関係でのみ本件仮処分決定を取消しても、
申立人が右一年数か月間にどれ程のイ号物件を製造・販売できるのか、相当疑問が残る。又、被申立人の事業活動のなかでのオートコンの占める割合は極端に低く、
昭和五八年度におけるオートコンの売上高は金二億一五〇〇万円であり、被申立人の同年度の総売上高に対する割合はわずかに約一パーセント程度にすぎない。
2 右疎明された事実によれば、(一)申立人はイ号物件のみの製造・販売を業とする小企業であり、多額の製品開発費をかけてやつと企業化に成功する見通しがつきこれから利益を得ようとする矢先に、本件仮処分決定により申立人の企業活動全体が停止され、このまま推移すれば、旬日を出ずして倒産に至る虞れは極めて大でありうるところ、申立人がイ号物件をPTO方式に切り換えることも、右危険を回避する手段としての実効性が疑わしく、本件仮処分決定の存続は、申立人に対し著るしい損害を蒙らしめるものということができるが、他方、(二)被申立人側においても、長年の歳月と莫大な費用をかけてオートコンの企業化に成功したのに、本件仮処分決定が取消され申立人が再度イ号物件の製造・販売を開始すれば、顧客を奪われ営業上少なからぬ損失を受けることは予想されるが、被申立人の営業活動のなかでのオートコンの占める割合は極端に低いうえ、申立人は代表取締役以下五名の小企業にすぎず、しかもイ号物件の発売元であつた神鋼商事株式会社がイ号物件の販売を禁止されているため、申立人が本件実用新案権の存続期間の一年数か月間に製造・販売できるイ号物件の数にも限度があり、本件仮処分決定を取消しても、
前記損失は、申立人の蒙る前記損害に比較してそれほど大きなものではないと思われる。
3 そのように、本件仮処分決定により申立人の蒙る損害と、本件仮処分決定を取消すことによつて被申立人の蒙る損害を比較すれば、明らかに前者がはるかに大であると認め得るが、この様な場合民訴法759条の特別の事情の存否に当り、前記本件実用新案権が早晩特許庁において無効とされる可能性が大であると一応認められる事情は、なお無視することはできない。蓋し、それは現時においては被申立人の本案請求権(差止請求権)は現存するものではあるけれども、それが覆滅する虞れが大である以上、左様な本案請求権の現存することの一事を以て、申立人に前記倒産の虞れを伴う著るしい損害の発生を甘受せしめることは相当でなく、結局申立人側に異常な損害を生ぜしめるものというを妨げず、他方被申立人側においては、
仮処分取消によつて蒙る損害は、将来本件実用新案権が無効となることにより発生しなかつたことに帰する可能性が大であり、すでに左様な将来遡つて消滅する可能性が大である本案請求権につきその仮の満足を遂げしめることの問題性をも考慮すれば(なお本案訴訟ならば訴訟手続を中止して審判結果を待つのを相当とする場合にあたるが)、被申立人の主張の3項所論の点を考慮に入れても、被申立人側の損害は金銭補償に代え得る損害と認めるのが相当である。
四 結論 以上のとおり、本件仮処分決定にはこれを取消すべき特別事情があるので、申立人が金五〇〇万円の保証を立てることを条件としてこれを取消すこととし、申立人のその余の申立を却下し、民事訴訟法759条89条92条但書、756条ノ二、196条を各適用のうえ、主文のとおり判決する。
追加
イ号物件目録、実用新案公報及び米国特許明細書図面(省略)仮処分決定右当事者間の昭和五八年(ヨ)第三七五四号実用新案権侵害差止仮処分申請事件について、当裁判所は申請人の申請を理由があると認め、申請人に被申請人両名に対する共同の保証として金一、〇〇〇万円を供託させて次のとおり決定する。
主文一、被申請人株式会社国際輸機は、別紙目録記載の自動荷役装置付自走車及び自動荷役装置を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
二、被申請人神鋼商事株式会社は、別紙目録記載の自動荷役装置付自走車及び自動荷役装置を販売し、又は販売のために展示してはならない。
当事者目録、目録及び第1〜3図(省略)仮処分命令申請申請の趣旨債務者株式会社国際輸機は、別紙図面および説明書に示す自動荷役装置付自走車および自動荷役装置を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
債務者神鋼商事株式会社は、別紙図面および説明書に示す自動荷役装置付自走車および自動荷役装置を販売し、又は販売のために展示してはならない。
申請の理由一、被保全権利(一)債権者は、大正一四年法律第三〇号により設立された日本無線電信株式会社を前身として、昭和一三年に国際電話株式会社を吸収して、国際電気通信株式会社となり、その後、昭和二五年企業再建整備計画変更の認可により設立された会社であり、各種の電気通信施設、高周波応用機械等の製造販売に従事している。(疎甲第九号証参照)(二)債権者は、登録第一一六六三二二号実用新案権(以下「本件実用新案権」又は「本件実用新案」という。)の実用新案権者であり、その詳細は左のとおりである。(疎甲第一号証参照)(1)考案の名称・「コンベアー付き自走車」(2)実用新案出願・昭和四六年四月二八日、実願昭和四六年第三三四五一号(3)実用新案出願公告・昭和五一年六月二五日、実用新案出願公告昭和五一年第二四八八四号(4)実用新案登録・昭和五二年三月三一日(三)本件実用新案の実用新案登録請求の範囲には次のとおり記載されている。
(疎甲第二号証参照)(1)「車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめ、上記コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の塔載バッテリーからなる駆動装置を設け、上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミット・スイツチと、上記電動機の正逆転制御回路に組込んだ上記各リミツト・スイツチにそれぞれ各別に接続された操作スイツチとを有する駆動制御装置を設けてなるコンベアー付き自走車。」(2)なお、右実用新案登録請求の範囲のうち、「上記コンテナーケースの前部および後部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ開閉するリミツト・スイツチ」とは、「上記コンテナーケースの前端部および後端部に仕切板が移動するに応じてそれぞれ作動するリミツト・スイツチ」を意味する。このことは、疎甲第三号証中「考案の詳細な説明」において、「11と12は、それぞれコンテナー内壁の前部と後部の下端に取りつけられたリミツト・スイツチであり、コンベアーのスラツト群の先端がコンテナー・ケースの最前部と最後部に到達したときにスイツチング動作を行なうように位置ぎめされており、具体的には、例えば、仕切板10がコンテナーの最前端と最後端に到達したときに前記の仕切板10によつて前記のリミツト・スイツチ11と12が作動するよう設けられてさしつかえない。」と説明されているところを参酌すれば、明らかである。
また、「電動機の正逆転制御回路」とは、コンベアを所望により前進させあるいは後進させるために、電動機の回転方向を切り換える電気回路を意味する。
右電気回路としては、励磁方式により直巻式、分巻式および複巻式等が存し、使用される電動機の特性に応じて、右のうちのどれかが適宜用いられている。本件実用新案明細書第四図には、分巻式のものが実施例として開示されているが、右に述べた方式のうちいずれを使用するかは、専ら設計上の問題に過ぎず、本件考案における正逆転制御回路が直巻式および複巻式のものを含むものであることはいうまでもない。
(四)右により明らかなとおり、本件実用新案はコンベアー付き自走車に係るものであつて、次のことを構造上の特徴としている。すなわち、
(1)車輛の荷台上に積載されたコンテナーケース内に配装したコンベアーに仕切板を直立せしめていること。
(2)右コンベアーの動力伝達機構に連結した電動機および該電動機に給電する車輛の搭載バツテリーからなる駆動装置を設けていること。
(3)(イ)右コンテナーケースの前端部および後端部に上記仕切板が移動するに応じてそれぞれ作動するリミツト・スイツチを設けていること。
(ロ)右電動機の正逆転制御回路に右各リミツト・スイツチが組み込まれていること。
(ハ)右各リミツト・スイツチにそれぞれ各別に接続された操作スイツチを有していること。
(ニ)このようにして、右各リミツト・スイツチおよび各操作スイツチからなる駆動制御装置を設けていること。
(五)上記の構成に係る考案は、以下に述べるとおりの作用効果上の特徴を有している。(疎甲第二号証中「考案の詳細な説明」参照)すなわち、
(1)自走車に搭載したバツテリーを駆動エネルギー源とするので、自走車のエンジンを駆動エネルギー源とする公知のシステムに比べ、エンジンの排気ガスおよび騒音などによつて荷役作業を阻害する虞がないこと。
(2)コンベアーに設けた仕切板によつて、慣性のため積み込まれた荷物がくずれたり、あるいは荷物が滑動してコンベアー上に積み残されることを防止する他、
積載する荷物の多少に拘わらず、この仕切板とコンテナーケースの後部とで荷物をはさんで安定に保持することができること。
(3)コンベアーの前後進によつて仕切板がコンテナーケースの前部もしくは後部位置に移動すると、リミツト・スイツチが作動してコンベアーの駆動を停止せしめるので、作業者の操作ミスなどによつて仕切板およびコンベアー部分を破損せしめるという虞を解消し、安全かつ確実なコンベアーの駆動を行わせることができること。
(六)本件実用新案のコンベア付自走車は、右に述べたように、従来のコンベア付自走車の着想に比し、一段と進歩したものであり、貨物運搬作業の実際に則したものであるため、物流業界において広く採用され、各種貨物の集配の合理化効率化において、少なからざる貢献をなしているものと自負している次第である。(疎甲第九号証参照)二、債務者らの行為(一)債務者株式会社国際輸機は、荷役運搬機の製造・販売等を目的とする株式会社であり、「オートコンベ(AUTOーCONVE)」と称する別紙図面および説明書に記載の自動荷役装置(以下「本件自動荷役装置」という。)を生産し、
これを自動車に取り付けて、別紙図面および説明書に記載の自動荷役装置付自走車を生産している。
債務者神鋼商事株式会社は、産業機械等の売買及び輸出入業を目的とする株式会社であり、債務者株式会社国際輸機と本件装置の継続的販売契約をなし、本件装置の販売に従事している。しかして同社は、本件装置の販売に当り、本件装置を自動車のシヤーシに取付けることにより、自動荷役装置付自走車を生産することもある。
右販売および生産の業務は、本社はもとより東京支店(東京都中央区<以下略>)においても、実施されている。(疎甲第三号証参照)債務者らは、昭和五八年五月二四日から同月二八日まで東京国際貿易センターにおいて開催された国際物流機械展においても、本件荷役装置付自走車の展示を行つた。(疎甲第一〇号証の一ないし四)(三)ところが、本件自動荷役装置付自走車は以下に述べるとおり、本件実用新案の技術的範囲に属するものである。
(1)本件自動荷役装置付自走車の構造の詳細は別紙目録の図面および説明書に示すとおりであつて、次の構成を有している。
(1)’車輛(1)の荷台(2)上に積載されたコンテナーケース(3)内に配装したコンベアー(4)に仕切板(10)を直立せしめていること。
(2)’右コンベアーの動力伝達機構(14、15、16)に連結した電動機(13)および該電動機に給電する車輛の搭載バツテリー(B)からなる駆動装置を設けていること。
(3)’(イ)’右コンテナーケース(3)の前端部および後端部に上記仕切板(10)が移動するに応じてそれぞれ作動するリミツト・スイツチ(11、12)を設けていること。
(ロ)右電動機(13)の正逆転制御回路に右各リミツト・スイツチ(11、12)が組み込まれていること。
(ハ)’このようにして、右各リミツト・スイツチ(11、12)および各操作スイツチ(17)からなる駆動装置を設けていること。
(2)したがつて、前記本件実用新案の構造上の特徴、一の(四)の(1)、
(2)、(3)の(イ)’、(3)’の(ロ)’、(3)’の(ハ)’と前記本件自動荷役装置付自走車の構造上の特徴、二の(三)の(1)の(1)’、
(2)’、(3)’の(イ)’、(3)’の(ロ)’、(3)’の(ハ)’とをそれぞれ対比すると、本件自動荷役装置付自走車が本件実用新案の構成要件をすべて具備していることが明らかである。また、作用効果上の特徴においても、本件自動荷役装置付自走車のそれ(疎甲第三号証参照)は、前記本件実用新案のそれ一の(五)の(1)ないし(3)と異なるところがない。よつて、本件自動荷役装置付自走車は、本件実用新案の技術的範囲に属するものである。
(四)さらに、本件自動荷役装置は、その構造上および作用効果上の各特徴から明らかなように、もつぱらトラツク、トレーラー等の自動車に装備され、自動荷役装置付自走車を生産するためにのみ使用される物である。したがつて、債務者らが、右自動荷役装置を生産・販売するときは、本件実用新案権の間接侵害を構成する。
三、仮処分の必要性(一)よつて、債権者は債務者株式会社オートコンベ国際輸機に対し、昭和五八年五月二六日付の内容証明郵便(疎甲第六号証)によつて、本件実用新案権に基づき、前記自動荷役装置の製造等の中止とともに、債権者の有する「オートコン」なる商標権に基づき、商標「オートコンベ(AUTOーCONVE)」の使用禁止、
さらに不正競争法に基づき商号中「オートコンベ」の部分の削除を求めたが、右債務者は、商標および商号についてはその変更を約束したものの、本件実用新案権侵害については実質的な回答をしていない。(疎甲第八号証)なお、商号については約束どおり、昭和五八年六月一六日に、「株式会社オートコンベ国際輸機」から「株式会社国際輸機」に変更された。
(二)また、債権者は債務者神鋼商事株式会社の本店および東京支店に対し、昭和五八年五月二五日付内容証明郵便(疎甲第四号証、同第五号証)によつて、同様の要求をしたものの、右債務者は、本件実用新案権の侵害についてはこれを争い、
債権者の要求を拒否している。(疎甲第七号証)(三)債権者は、本件実用新案につき、昭和四五年より開発を開始し、翌四六年試作機完成同時に新開発表して販売を開始し、以後研究改良を重ねるとともに、宣伝、販売の促進を行い、昭和五三年度より販売実績が伸び、昭和五四年度からは二億円を超える売上高を示している。(疎甲第九号証参照)(四)これに対し、債務者株式会社オートコンベ国際輸機は、昭和五七年一一月頃より、従来のエンジンを駆動源とする装置から、バツテリーを駆動源とする装置に変更して、債務者神鋼商事株式会社を発売元として、各自動車販売会社に販売攻勢をかけてきている。そのため、債権者は、顧客を奪われ、営業上重大な影響を受ける危険にさらされている。(疎甲第九号証)債権者は、本件実用新案権に基づき債務者らの前記侵害行為を差止めるべく、本訴を提起すべく準備中であるが、このまま本案判決の確定を待つにおいては、到底回復しがたい損害を受けることは前記事情からみて明らかである。よつて、債権者はここに本申請に及んだ次第である。
裁判官 潮久郎
裁判官 紙浦健二
裁判官 徳永幸藏
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