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関連審決 審判1979-7058
関連ワード 技術的範囲 /  考案 /  考案者 /  図面 /  実施例 /  特段の事情 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 昭和 59年 (行ケ) 168号
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裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1985/10/23
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
三 この判決に対する上告期間につき附加期間を九〇日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
原告は、「特許庁が、昭和五四年審判第七〇五八号事件について昭和五九年二月二日にした審決を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、被告は、主文第一、二項同旨の判決を求めた。
請求の原因
一 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「二重ヒンジ連結体および中央焦点調節装置を持つ双眼鏡」とする考案につき、一九七四年五月二二日ドイツ連邦共和国においてした特許出願に基づく優先権を主張して、昭和五〇年五月一五日特許庁に対し、実用新案登録出願をした(以下、この考案を「本願考案」という。)ところ、昭和五四年二月二一日拒絶査定を受けたので、同年六月二六日審判を請求した。特許庁は、これを同庁昭和五四年審判第七〇五八号事件として審理した上昭和五九年二月二日右審判の請求は成り立たない旨の審決をし、その謄本は、同年同月二八日原告に送達された(なお、出訴期間として九〇日が附加された。)。
二 本願考案の要旨 二重ヒンジ連結体および中央焦点調節装置を持ち、中央焦点調節装置は横材または類似のものおよび長手方向に可動に設けた二つの伝道腕を介して鏡筒中の焦点合わせ装置に作用する双眼鏡であつて、伝道腕(11、12)の軸受(19a、19b)は二重ヒンジ連結体(3)内に固定して形成され、しかも二重ヒンジ連結体(3)と鏡筒(1、2)との間のヒンジ(21―23、24―26)の間にあることを特徴とする双眼鏡。(別紙(一)図面参照)三 審決の理由の要点1 本願考案の要旨は前項のとおりである。
2 これに対し、本願考案の優先権主張日前の特許出願(優先権主張日一九七二年七月五日)であつて本願の出願後である昭和四九年五月二五日に出願公開された公開特許公報(特開昭四九―五三八五三号、特にその第一二図及びその関連説明部分、以下「引用例」という。)には、次の記載がある。
「ダブルジヨイント結合ブリツジ(二重ヒンジ結合体)及び中央焦点調節装置をもち、中央焦点調節装置はウエツブ(横材)又は類似のもの及び長手方向に設けた二つのバー(伝動腕)を介して鏡筒中の焦点合わせ装置に作用する双眼鏡であつて、
バーの軸受は鏡筒の突出部に固定した中空軸(ヒンジ)に形成され、しかもダブルジヨイント結合ブリツジと鏡筒との間のヒンジ間にある双眼鏡」3 そこで本願考案と引用例に記載のものとを比較すると、両者は、「二重ヒンジ連結体及び中央焦点調節装置をもつ双眼鏡であつて、中央焦点調節装置は横材又は類似のもの及び長手方向に可動に設けた二つの伝動腕を介して鏡筒中の焦点合せ装置に作用している点及び伝動腕の軸受は二重ヒンジ連結体と鏡筒との間のヒンジの間にある点」で一致し、伝動腕の軸受は、前者では二重ヒンジ連結体内に固定され、しかも二重ヒンジ連結体と鏡筒との間のヒンジの間にあるのに対し、後者では鏡筒とダブルジヨイント結合体(二重ヒンジ連結体)との間は鏡筒の突出部に設けた中空軸で形成されている点で一応相違する。
4 そこで右相違点について検討するに、鏡筒と二重ヒンジ連結体との間のジヨイントを引用例のものにおける管軸受とする代りに、本願考案のように球及び環軸受とすることは、軸受としていずれも周知のものであり、本願考案明細書をみても格別の作用効果も認められず、当業者にとつて自明の事項である。そして、伝動腕の軸受を鏡筒側の突出部に固定する代りに、二重ヒンジ連結体側に固定することも、軸受が両者のジヨイント間に設けられるものでありどちら側に軸受を固定するかは設計上の事項であつて、この点についても、本願考案明細書をみても格別の特徴は認められず、当業者にとつて自明の事項である。
5 よつて本願考案は引用例に記載の発明と同一であり、かつ、本願考案考案者が引用例の発明者と同一でなく、本願出願時においてその出願人が引用例の出願人とも同一でないから、本願は実用新案法3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない。
四 審決の取消事由 審決は、本願考案と引用例のものとを対比するに当たり、以下に主張するとおり、両者間には二つの重要な相違点があるのにかかわらず、これを看過した結果、
本願考案が引用例に記載の発明と同一であるとの誤つた結論に至つたものであるから、違法として取消されるべきである。
1 相違点その一 審決は、本願考案と引用例のものとを比較し、両者は、伝動腕の軸受が二重ヒンジ連結体と鏡筒との間のヒンジの間にある点で一致している旨認定するが、これは誤りである。
(一) 本願考案では、伝動腕(11、12)の軸受(19a、19b)は、ヒンジ(21―23、24―26)の間にある。すなわち、本願考案では、一方のヒンジは、うろ(22、23)の間の球(21)として、また他方のヒンジは、軸受(25、26)の間の環(24)として独立に存在し、伝動腕の軸受は、明確に右の各ヒンジとは独立して右両ヒンジの間に存在しているのである。
(二) これに対し、引用例のものは、その第一二図(別紙(二)図面)に示されているとおり、一方の中空軸(2a)(対物レンズ側の中空軸)がバー(30)の軸受であると同時にその案内装置でもあり、かつヒンジとしても作用する。そして他方の中空軸(接眼レンズ側にあり、前記の中空結合軸(2a)の上方に図示されているもの。同図には特に符号が付されていないが、以下これを「中空軸(2)という。)は、ヒンジとしてのみ作用する。したがつて引用例のものでは、伝動腕軸受は、結合ブリツジとボデーとの間のヒンジの間にはないのである。
(三) 本願考案は、右に述べた構成及び後記2の構成(伝動腕を二か所で支承する構成)と相まつて、伝動腕と軸受とはその長さをいくらでも小さくすることができ、したがつて双眼鏡の高さを小さくすることができるとの作用効果を奏するものである。これに対し、引用例のものは、前述のとおりバー(30)を一個の軸受(中空結合軸2a)で支え、かつ右軸受が案内を兼ねるために、安定した案内機能をもたせるのに十分な長さを必要とし、その結果双眼鏡の高さをある程度以下にすることはできないのである。
2 相違点その二 本件考案にあつては、伝動腕の軸受は、二か所に設けられているのに対し、引用例のものにあつては、本願考案の伝動腕に相当するバー(30)の軸受は、中空結合軸(2a)の一か所で支持されており、両者は明確に相違しているのにかかわらず審決はこれを看過している。
(一) 本願考案の実用新案登録請求の範囲には、「伝動腕11、12の軸受19a、19bは二重ヒンジ連結体(3)内に固定して形成され、」と記載されている。この記載は、軸受(19a)と軸受(19b)とが二重ヒンジ連結体内に形成されると共に伝動腕はこの二つの軸受19a及び19bとによつて支持されていることを示すものであり、したがつて、右の記載は、本願発明にあつては、伝動腕の軸受が二個存在することが必須の要件であることを示している。この点については、本願考案明細書考案の詳細な説明にも、伝動腕は、「連結体3の穴19a、19bの中を変位可能に設けられている」(四ページ一五〜一六行)、「横材の両端は穴19a、19bの中を滑る伝動腕と連結されている」(五ページ一八〜一九行)と記載され、これらの記載からも伝動腕が連結体の穴19a、19bの二か所で支持されていることは明らかである。
(二) 被告は、この点について、実用新案登録請求の範囲の記載のうち図面において使用した符号は本願考案の構成要件ではない旨主張する。しかし、実用新案登録請求の範囲に符号を用いるのは、その記載内容の理解に必要があるからにほかならない。いうまでもなく、考案技術的範囲は実用新案登録請求の範囲の記載に基づいて定められるのであるから、同範囲における記載は符号といえども、これを無視することはできず、符号が実用新案登録請求の範囲の記載内容を理解するために必要である以上これを考慮に入れるべきは当然である。
本願考案明細書考案の詳細な説明の項には、伝動腕を軸受19a及び19bの二か所で支持する実施例の記載はあるが、それ以外の実施例の記載はなく、右軸受を一つだけ設けた場合の構成、作用効果についての記載は全くない。しかも、本願考案において伝動腕の軸受が一つのみである場合を仮定すると、軸受に十分な長さを持たせることが是非とも必要となり、連結体及び鏡筒の全高をできるだけ低くするとの本願考案の目的ないし作用効果と矛盾することとなるのである。このように明細書の詳細な説明の項にも全く記載がなく、しかも考案の目的と矛盾するような事項に基づいて実用新案登録請求の範囲の記載を解釈することは許されない。
請求の原因に対する被告の認否及び主張
一 請求の原因一ないし三の事実は認める。
同四のうち本願考案の実用新案登録請求の範囲に原告主張の記載があることは認めるがその余の主張は争う。以下に述べるとおり原告の右主張は失当であり審決には違法の点はない。
二1 相違点その一の主張について(一) 引用例のものは、ボデーの二つの突出部にそれぞれ中空軸(2a)と中空軸(2)を固定し、これらを結合ブリツジの孔に嵌入してヒンジを構成し、結合ブリツジとボデーとを相対的に回転させている。したがつて、引用例のものにおける結合ブリツジとボデーとの間のヒンジは、中空軸(2a)及び中空軸(2)の外周面が結合ブリツジの孔に接触していることによつて形成されている。そして、伝動腕(バー30)の軸受は中空軸(2a)の内周面に形成されているものであるから、伝動腕の軸受は、結合ブリツジとボデーとの間のヒンジの間にあるものといえる。
2 相違点その二の主張について(一) 実用新案法施行規則第2条関係様式第三備考一二のロの規定によれば、実用新案登録請求の範囲のうちの図面において使用した符号は実用新案登録請求の範囲の記載の内容を理解するため必要があるときに用いられるものであるから、本願の実用新案登録請求の範囲の記載のうちの図面において使用した符号は本願考案の構成要件ではない。
そうすると、本願考案の実用新案登録請求の範囲に記載されている「伝動腕(11、12)の軸受(19a、19b)は二重ヒンジ連結体(3)内に固定して形成され、」のうちの本願考案の構成要件は、図面において使用した符号を除いた「伝動腕の軸受は二重ヒンジ連結体内に固定して形成され、」であると認められる。
このような本願考案の構成要件によれば、伝動腕の軸受は二重ヒンジ連結体内に固定して形成されれば足りるのであつて、伝動腕の軸受の数について限定しているものではない。また、本願の実用新案登録請求の範囲の記載において他に伝動腕の軸受の数について限定している記載はない。
したがつて、本願考案は、伝動腕の軸受が一つの場合を含むのであり、この点において引用例のものと差異がない。
証拠関係(省略)
理 由一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由について検討する。
1 相違点その一について(一) 本願考案において、伝動腕の軸受とヒンジとの位置関係については、実用新案登録請求の範囲に、「伝動腕(11、12)の軸受(19a、19b)は……二重ヒンジ連結体(3)と鏡筒(1、2)との間のヒンジ(21―23、24―26)の間にある」と記載されていることは当事者間に争いがない。そして成立に争いのない甲第二、第三号証によると、右伝動腕及びヒンジの具体的構成並びに両者の位置関係について、本願考案明細書及び図面には、唯一の実施例として次のようなものが記載されていることが認められる。
すなわち、鏡筒(1)と連結体(3)とのヒンジ部は、接眼レンズ側にあつては、連結体(3)及び鏡筒(1)のそれぞれ当接部に形成された二つのうち(22及び23)並びにこの間に介在する球(21)によつて構成され、また対物レンズ側にあつては、連結体(3)と鏡筒(1)との当接部に形成された二つの軸受25、26並びにその間に介在する環(24)によつて構成されている。そして、伝動腕(11)が挿通してこれを案内する部分は、接眼レンズ側では、連結体(3)に設けた穴(19a)、対物レンズ側では連結体(3)に設けた穴(19b)、環(24)の内面部及び鏡筒(1)の突出部であるヒンジ支持体(28)の挿通孔であるが、特に伝動腕の軸受と指称された部分は、連結体(3)に設けられた穴(19a及び19b)の部分である(別紙(一)図面参照)。
(二) 一方、成立に争いのない甲第四号証によると、引用例の第一二図に図示されたものは、次のようなものであることが認められる。
すなわち、本願考案の鏡筒(1)及び連結体(3)に相当するボデー(1)及び結合ブリツジ(3)を結合するヒンジ部は、接眼レンズ側では結合ブリツジ(3)とボデー(1)の当接部とこの当接部を連結する中空軸(2)の外周面によつて構成され、また、対物レンズ側では結合ブリツジ(3)とボデー(1)の当接部とこの当接部を連結する中空軸(2a)の外周面によつて構成されるが、右中空軸(2)及び同(2a)は、いずれもボデー(1)と結合ブリツジ(3)の当接部近傍のみでなく、この部分から右各中空軸の軸方向に向けて外方に延び、ボデー突出部を貫通して設けられ、本願考案の伝動腕に相当するカバー(30)は対物レンズ側の中空軸(2a)の内周面によつて支持案内されている(別紙(二)図面参照)。
右認定の事実によれば、引用例のものにおいて本願考案の「伝動腕の軸受」に相当する部分は対物レンズ側の中空軸(2a)の内周面であり、本願考案の「二重ヒンジ連結体と鏡筒との間のヒンジ」に相当する部分は中空軸(2)及び同(2a)のうち結合ブリツジとボデーを連結する両当接面近傍部分の外周面であるということができる。もつとも、右中空軸(2)及び同(2a)その余の延長部分は、右ヒンジ部と一体に形成されているためこれを截然と区別することはできない。
(三) そうであるとすれば、引用例のバー(30)の軸受は結合ブリツジ(3)とボデー(1)との間のヒンジの間にあることが明らかである。もつとも、右軸受とヒンジが一体に形成されている点において引用例のものは前認定の本願考案実施例とは異なるが、伝動腕の軸受が二重ヒンジ連結体と鏡筒との間のヒンジとは独立の部材として形成されていることは前記当事者間に争いのない本願考案の要旨に含まれないことは明らかであるから、本願考案の技術思想は引用例のものと異るところがない。
(四) したがつて、原告の相違点その一の主張は採用できない。
2 相違点その二について(一) 前認定の事実によれば、引用例のものにおいては、本願考案の伝動腕に相当するバー(30)は対物レンズ側の中空結合軸(2a)の一か所で支持されていることが明らかである。一方本願考案の実用新案登録請求の範囲には、伝動腕の軸受に関し、「伝動腕(11、12)の軸受(19a、19b)は二重ヒンジ連結体(3)内に固定して形成され」と記載されていることは当事者間に争いがない。また、前掲甲第二号証によると、本願の願書添付図面には、本願考案実施例として、伝動腕の軸受が二か所に設けられたものが図示されており(別紙(一)図面参照)、右図面の説明として、明細書考案の詳細な説明の項には、「伝動腕11、
12はそれぞれ連結体3の穴19a、19bの中に変位可能に設けられている。」(四ページ一五〜一七行)及び「横材10の両端は穴19a、19bの中をすべる伝動腕と連結されているので、これらは一諸に駆動される。」(五ページ一八〜二〇行)と記載されていることが認められる。
(二) そこでまず、実用新案登録請求の範囲に記載の符号について考えるに、実用新案法施行規則2条による様式第三の備考12のロには、『「実用新案登録請求の範囲」の記載の内容を理解するため必要があるときは、当該願書に添付した図面において使用した符号をかつこをして用いる。』と規定されている。このことからすると、実用新案登録請求の範囲の文言下にかつこをもつて付加された符号は、他に特段の事情がない限り、これに記載された内容を理解するための補助的機能を有するにとどまり、その範囲を越えて右符号のみから、実用新案登録請求の範囲に記載された内容を限定するような機能までは有しないものと解すべきである。
ところで、前記(一)に認定した事実関係からすれば、本願考案の実用新案登録請求の範囲にいう「軸受(19a、19b)」との記載は、まさに前掲実用新案法施行規則2条所定の方式に基づいてされたものであることは明らかであるから、
「軸受」の文言下にかつこをもつて二個の符号「19a、19b」が付されているからといつて、この一事をもつて直ちに本願考案にあつては、伝動腕は二個の軸受によつて支持されるものに限定されると解することはできず、他に本願の明細書図面を検討してもこのように限定解釈すべき特段の根拠を見出すことはできない。
(三) 原告は、本願考案において伝動腕の軸受が一つのみである場合を仮定すると、考案の目的ないし作用効果と矛盾することとなる旨主張する。
しかし、本願の明細書及び図面を検討しても、原告の主張する連結体及び鏡筒の全高をできるだけ低くするとの考案の目的ないし効果が、伝動腕の軸受を二か所に設けることによつてのみ達成されるものであるとの記載は見当らないし、またそのように解すべき根拠も明らかでない。なるほど、一般に棒状体を長手方向に移動する場合に、これを一か所で支持するには、その支持部(軸受部)をある程度長くしないと安定的に支持できないが、これを二か所で支持するときは、支持部の長さは短かくても安定的に支持できることは明らかである。しかし、一か所で支持する場合の支持部(軸受部)の長さが二か所で支持する場合の各支持部の間の長さより常に長くしなければ、安定的な支持がえられないといえるかどうかは明らかではない。したがつて、原告の右主張は前述の判断を左右しない。
(四) そうすると、原告の相違点その二の主張も採用できない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、審決にはこれを取消すべき違法の点はない。
三 よつて、原告の本訴請求を失当として棄却し、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条158条2項を適用して主文のとおり判決する。
裁判官 瀧川叡一
裁判官 牧野利秋
裁判官 清野寛甫
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