• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 禁反言 /  考案 /  図面 /  構造 /  物品 /  物品の形状 /  新規性(3条1項) /  公然実施 /  通常実施権 /  専用実施権 /  特段の事情 /  請求の範囲 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
元本PDF 裁判所収録の別紙1PDFを見る pdf
事件 昭和 62年 (ヨ) 527号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 神戸地方裁判所
判決言渡日 1989/12/12
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事仮処分
主文 債権者の本件仮処分申請を却下する。
申請費用は債権者の負担とする。
事実及び理由
本件考案について
一 本件実用新案権に基づく差止請求権の発生について1 申請理由(1)イ、ロは、当事者間に争いがない。
2 本件考案が昭和六〇年六月二〇日出願公告されたことは、当事者間に争いがない。
3 右認定事実によれば、債務者がその主張にかかる通常実施権を取得しない限り、債権者は、債務者に対し、債務者が本件第一物件を製作し、販売し、据付工事をする等の行為について本件実用新案権による実用新案法27条所定の差止請求権を取得しうることが明らかである。
二 職務考案による法定実施権の発生について 債務者は、本件実用新案権につき職務考案による通常実施権を取得した旨主張するので検討する。
1 職務考案とは、@従業者、法人の役員(従業者等)が行なつた考案で、Aそれが性質上当該使用者、法人(使用者等)の業務範囲に属し、Bかつその考案をする行為が、従業者等の現在又は過去の職務に属するものをいうと解するのが相当である(実用新案法9条3項、特許法35条1項)。
2 そして、職務考案について従業者等が実用新案登録を受けたときは、使用者等は、その実用新案権について通常実施権を取得することができる(実用新案法9条3項、特許法35条1項)。
3 抗弁事実(1)イは、当事者間に争いがない。
4 成立に争いない疎甲第二三号証、疎乙第二九号証、第三一、第三二号証と審尋の全趣旨によれば抗弁事実(1)ロ及び債務者が昭和四四年八月設立以来現在まで(本件考案及び本件意匠の完成時を含む。)法人としての実体を継続して有していたことが疎明される(従つて債権者の主張(二)(2)ロは失当である。)。
5 抗弁事実(1)ハは、当事者間に争いがない。
右認定事実によれば、右(一)@の要件が充足されることが明らかである。
6(一) 前掲疎甲第二三号証によれば、債務者会社は、終始水門その他の水路構造物の設計・製作・据付工事等の業務を行なつてきたことが一応認められる。
(二) 審尋の全趣旨によれば、債務者会社の目的が水門その他水路構造物の設計・製作・据付工事等であることが一応認められる。
(三) 前記一1認定事実によれば、本件考案の対象はいずれも水門その他の水路構造物であることが明らかである。
(四) 右(一)ないし(三)の各事実によれば、本件考案が債務者会社の業務範囲に属することが明白である。
(五) 右認定事実によれば債権者は、前記(一)Aの要件が充足されることが明らかである。
7(一) 本件考案の完成時期について、債務者は昭和五六年二月と主張し、債権者はこれを昭和五二年であると主張する。
(二) そして、前記5認定のとおり、債権者は、昭和四四年八月以来右いずれの時期までも債務者会社の代表取締役社長の地位にあつたものである。
(三) 会社の設立当初より継続して代表取締役社長として会社の経営にあたるとともに、会社の技術部門担当の最高責任者であつた者は、後者の地位に基づき、会社の人的・物的資源を総動員しても生産技術の改良考案を試みてその効率を高めるように努力すべき具体的任務を有していると解されるから、その者が右技術につき考案や意匠の創作を完成した場合には、具体的な便益供与の有無・程度について検討するまでなく、その考案や意匠は、会社の役員としての職務に属する行為であると推定すべきである。
そして、右最高責任者以外の従業者等については、考案や意匠の創作をするに至つた行為が創作者の職務に属する場合とは、特に会社から考案や意匠の創作を命ぜられ、あるいは具体的な課題を与えられている場合に限られず、結果からみて考案や意匠の創作の過程となりこれを完成するに至つた思索的活動が使用者等との関係で従業者等の義務とされる行為の中に予定され期待されてその創作を容易にするため使用者等が従業者等に対し相当の便宜供与をした場合をも含むと解するのが相当である。
(四) 前掲疎甲第二三号証と審尋の全趣旨によれば、債権者は、債務者会社の設立以来少くとも昭和五六年二月まで会社の技術部門担当の最高責任者たる地位にあつたことが一応認められる。
(五) そして、本件実用新案権の実用新案公報の「考案の詳細な説明」によれば、本件考案は、河川の水位調査等に使用する油圧式倒伏ゲートの改良に係り、ゲートの設置に付随して生ずる河床落差を僅小にすると共に、ゲートの据付並びに保守管理の容易化を可能とした油圧式倒伏ゲートに関する技術的創作であることが認められる。
(六) 右(三)の法理に鑑み、右(一)、(二)、(四)、(五)の各認定事実によれば、債権者は、前記(一)Bの要件が充足されることが明らかである。
8(一) なお、債権者は、再抗弁として、本件考案が完成したのは河川機工の時代であつてその当時債務者会社は債権者の完全な個人会社で、債権者と別個の法人格を有しなかつた旨主張するけれども、前掲疎甲第二三号証、成立に争いない疎甲第二六号証によつてはこれを一応認めるに足りず、他にこれを疎明するに足りる証拠はない。
却つて、債務者は、前記4認定のとおり法人としての実体を有していた。
(二) また、債権者は、再抗弁として、日工株式会社の資本参加により日工ゲート株式会社(債務者)は、河川機工株式会社とは別個の法人格になつた旨主張するけれども、前掲疎甲第二三号証によつては未だこれを一応認めるに足りず他にこれを疎明するに足りる証拠はない。
従つて、債権者の右再抗弁は失当である。
(三) さらに、債権者は、再抗弁として、本件考案につき債務者から職務考案の成立を肯定するに相応しい便益の供与を受けなかつたから債務者は通常実施権を取得しえない旨主張する。
しかし、債権者は、前記認定のとおり終始債務者会社の技術部門の最高責任者の地位にあつた者であるから、右7(三)の法理に鑑みると、全く会社から便益供与を受けず、独力で創作を行なつたというような特段の事情が存しない限り、再抗弁は成り立たないと解するのが相当である。
しかし、本件全証拠を検討しても、これを一応認めるに足りる疎明はない。
従つて、債権者主張の再抗弁はすべて失当である。
9 以上の次第であるから、債権者の本件考案は、いわゆる職務考案に該当するといわねばならないから、債務者は、実用新案法9条3項、特許法35条1項により、本件考案につき通常実施権を取得したことが明らかである。
本件意匠について
一 本件意匠権に基づく差止請求権の発生について1 申請理由(1)ニ、ホは、当事者間に争いがない。
2 右認定事実によれば、債務者がその主張にかかる通常実施権を取得しない限り、債権者は、債務者に対し、債務者が本件第二物件を製作し、販売し、据付工事をする等の行為について本件意匠権による意匠法37条所定の差止請求権を取得しうることが明らかである。
二 職務意匠による法定実施権の発生について 債務者は、本件意匠権による通常実施権を取得した旨主張するので検討する。
1 職務意匠とは、@従業者等が創作した意匠で、Aそれが性質上使用者等の業務範囲に属し、Bかつその意匠を創作する作為が、従業者等の現在又は過去の職務に属するものをいうと解するのが相当である(意匠法15条3項、特許法35条)。
2 そして、職務意匠について従業者等が意匠登録を受けたときは、使用者等は、
その意匠権について通常実施権を取得することができる(意匠法15条3項、特許法35条1項)。
3 債権者は、前記第一の二3ないし5のとおり、右1の@の要件が充足されることが明らかである。
4 前記第一の二6(一)、(二)の認定事実、右一1の認定事実によれば、本件意匠が債務者会社の業務範囲に属することが明らかであるから、債権者は、右1のAの要件が充足されるということができる。
5(一) 本件意匠の完成時期について、債務者は昭和五九年八月と主張し、債権者はこれを昭和五八年夏頃と主張する。
(二) そして、前記認定のとおり債権者は、昭和四四年八月以来右いずれの時期までも債務者会社の代表取締役の地位にあつたものである。
(三) 前記第一の二7(三)のとおり。
(四) 前掲疎甲第二三号証と審尋の全趣旨によれば、債権者は、債務者会社の設立以来少くとも昭和五八年夏頃まで会社の技術部門担当の最高責任者たる地位にあつたことが一応認められる。
(五) そして、本件意匠権の対象たる物品は水門扉であることは前記認定のとおりであるから、仮に債権者が会社から具体的な課題として本件意匠の創作を命ぜられていなかつたとしても、本件意匠は、結果からみて意匠の創作の過程となりこれを完成するに至つた思索的活動が使用者等との関係で従業者等の義務とされる行為の中に予定され期待されている場合に含まれていると解されるのである。
(六) 右(一)ないし(五)の各事実によれば、債権者は、右1、Bの要件が充足されることが明らかである。
6 以上の次第であるから、債権者の本件意匠は、いわゆる職務意匠に該当するといわねばならないから、債務者は、意匠法15条3項、特許法35条1項により、
本件意匠につき通常実施権を取得したことが明らかである。
結論
結局、債権者は、本件実用新案権及び本件意匠権に基づく差止請求権を取得するに由ないから、右各差止請求権の取得を前提とする本件仮処分申請は、その前提たる被保全権利の存在を欠き、かつ事案の性質上疎明に代わる保証を立てさせて右申請を認容することも相当でないからこれを却下することとし、申請費用の負担につき民訴法89条を適用して、主文のとおり決定する。
追加
第一目録別紙図面Aは油圧式倒伏ゲートの縦断側面図、図面Bはその部分的断面図であり、これらの図面に示すように水路底壁2に適宜の横方向間隔で並設した複数の支持枠3と前記支持枠3の前部に載置固定され且つ適当な横方向間隔で複数の螺着ブラケツト5を取付けた横置桁材4と前記各ブラケツト5にゲート枢軸7によりその下縁を起伏自在に枢着され、且つ上部後面側にブラケツト6aを固設した略平板状のゲート6と前記ブラケツト6aにシリンダー本体8bがシリンダー枢軸9により回動自在に枢着された単筒式油圧シリンダー8と前記支持枠3の後方部に固着されてピストンロツド10の先端をピストンロツド枢軸12により回動自在に枢着すると共に、前記ゲート6が所定の最大仰角度で完全に起立したときにはピストンロツド枢軸12が前記シリンダー枢軸9の中心を通る垂直線と前記ゲート枢軸7の間に位置し且つ前記ゲート6が完全に倒伏したときにはピストンロツド10の軸線が水平線に対して角度αだけ上向きに傾斜する位置に前記ピストンロツド枢軸12を支持する取付金物11と前記ゲート6の裏面側に固着され、前記ゲート枢軸7と同軸線上に配設したスイベルジヨイント14aを介して油圧作動源へ接続すると共に、
前記シリンダー枢軸9と同軸線上に配設したスイベルジヨイント14bを介してシリンダー本体8bへ接続した油圧配管13とより構成した油圧式倒伏ゲート。
以上<12807-001><12807-002>第二目録別紙図面cに示すような形状を有する水門用扉以上<12807-003><12807-004>第三目録実用新案名称油圧式倒伏ゲート出願昭和五六年四月九日(同年第五一八三七号)出願公告昭和六〇年六月二〇日(同年第二〇六五六号)登録平成元年四月四日(同年第一七六五七六五号)登録請求の範囲別紙実用新案公報の「実用新案登録請求の範囲」記載のとおり以上<12807-005><12807-006><12807-007><12807-008><12807-009><12807-010><12807-011><12807-012><12807-013><12807-014><12807-015>第四目録意匠権意匠に係る物品水門扉出願昭和六〇年一〇月一一日(同年第四二八一七号)登録昭和六二年四月七日(同年第七〇九三六四号)登録意匠の範囲別紙意匠公報記載のとおり以上<12807-016><12807-017><12807-018>第五目録旧実用新案名称水門扉の油圧開閉装置出願昭和四二年一二月二一日(第一〇七二六五号)出願公告昭和五〇年七月一九日(同年第二四〇二九号)登録請求の範囲別紙実用新案公報の「実用新案登録請求の範囲」記載のとおり以上<12807-019><12807-020><12807-021><12807-022><12807-023><12807-024>第六目録意匠権意匠に係る物品水門用扉出願昭和四三年一二月一三日(同年第三七四九四号)登録昭和四六年三月三一日(同年第三二九八四四号)登録意匠の範囲別紙意匠公報記載のとおり以上<12807-025><12807-026>
裁判官 辰巳和男
  • この表をプリントする