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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10085審決取消(実用新案)請求事件 判例 実用新案
平成17行ケ10061審決取消(実用新案)請求事件 判例 実用新案
平成17行ケ10151審決取消(実用新案)請求事件 判例 実用新案
関連ワード 構成要件充足性 /  禁反言 /  均等 /  権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  新規性(3条1項) /  きわめて容易 /  本質的部分 /  容易に想到 /  公知技術 /  寄せ集め /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 17年 (ネ) 10033号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件
控訴人 京葉化成工業株式会社
同訴訟代理人弁護士 浅見雄輔
補佐人弁理士 大野克躬
被控訴人 日本総合住生活株式会社
同訴訟代理人弁護士 生田哲郎
同 名越秀夫
同 山田基司
同 森本晋
同 美和繁男
同訴訟代理人弁理士 落合稔
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2005/05/25
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人は,原判決別紙物件目録(2)記載の商品を製造し,販売の申出をし,販売してはならない。
(3) 被控訴人は,その所有に係る原判決別紙物件目録(2)記載の商品,その構成部品,及びその製造に供する金型を廃棄せよ。
(4) 被控訴人は,控訴人に対し,3023万円及びこれに対する平成10年1月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5) 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(6) 仮執行宣言 2 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
1 事案の要旨 本件は,配管被覆構造についての実用新案権を有する控訴人が,被控訴人によるカバー付き配管装置の製造販売行為は上記実用新案権を侵害すると主張して,被控訴人に対し,上記実用新案権に基づき,@上記装置の製造,販売等の差止め,A上記装置等の廃棄,B損害金3023万円及びこれに対する平成10年1月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,控訴人の本訴請求をいずれも棄却したため,これを不服とする控訴人が本件控訴を提起したものである。
2 前提となる事実,争点及びこれに関する当事者の主張 次のとおり当審における追加的な主張の要点を付加するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2,3及び「第3 争点に関する当事者の主張」に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決3頁8行目の「実願昭-160156号」を「実願昭62-160156号」と,同5頁15行目の「被告各製品の構成要件充足性」を「被控訴人各製品についての文言侵害及び均等侵害の成否」と,同頁23行目の「争点(1)」を「争点1」と,同14頁17行目の「争点(2) 被告各製品の構成要件充足性」を「争点2 被控訴人各製品についての文言侵害及び均等侵害の成否」と,それぞれ改める。)。なお,以下,原判決と同様の略語を用いるが,各略語中「原告」とある部分は「控訴人」と,「被告」とある部分は「被控訴人」と,それぞれ改める。
(1) 当審における控訴人の追加的な主張の要点 ア 争点1(被控訴人各製品の具体的構成)について 被控訴人各製品は,壁等に設置して使用するものであるところ,その設置のためには,ベース本体のV溝にアンカーボルト(螺子)をねじ込んで固定する。そのため,被控訴人各製品の実際の使用状態では,螺子の頭の部分の出っ張りの高さだけ下部断熱材が押し上げられて,パイプ下半部と接着することになるから,下部断熱材とパイプ下半部との間に控訴人の主張するような間隙はない。
イ 争点2(被控訴人各製品についての文言侵害及び均等侵害の成否)について (ア) 仮に,被控訴人各製品の下部断熱材とパイプ下半部との間に約1oの間隙があるとしても,「挟持」とは,挟持する物と挟持される物の間に間隙がある場合をも含む文言であるから,被控訴人各製品は,構成要件C及びDを充足する。
(イ) 仮に,被控訴人各製品の下部断熱材とパイプ下半部との間に約1oの間隙があり,その結果,被控訴人各製品が,構成要件C及びDを充足しないとしても,被控訴人各製品は,本件考案の構成と均等である。
すなわち,原判決40〜41頁の説示する均等の要件@については,本件実用新案権の出願時点における従来技術を考慮すると,本件考案本質的部分とは,アンカーピンと別個独立し,それだけでパイプを固定することが可能であり,かつパイプの嵌着も容易となる,開口幅がパイプ径より狭い断面U字型のパイプ受け面を有する複数の固定座をベース本体上に設置したこと,及びパイプを取り囲む断熱材を左右に分けるのではなく上下に分けて,上記固定座と固定座の間に配設したことということができる。したがって,下部断熱材とパイプ下半部との間に約1oの間隙があるか否かは,本質的部分ではないから,上記要件を充足する。
同要件Aについては,上記間隙を設けても,取付けを迅速容易にかつ安価に行うという本件考案の目的を達成することができるから,上記要件も充足する。
同要件Bについては,単に上記間隙を設ける程度のことは,特段新しい発想ではなく,当業者であれば容易に想到できることであるから,上記要件も充足する。
同要件C,Dを充足することは明らかである。
(ウ) 仮に,被控訴人製品(新タイプ)の突嘴が配管ベース立ち上がり部の頂部にないと解され,その結果,被控訴人製品(新タイプ)が,構成要件Aを充足しないとしても,被控訴人製品(新タイプ)は,本件考案の構成と均等である。
すなわち,原判決40〜41頁の説示する均等の要件@については,上記のとおり,突嘴の位置は本件考案本質的部分ではないから,上記要件を充足する。
同要件Aについては,突嘴の位置を配管ベース立ち上がり部の頂部から中間部に変えても,取付けを迅速容易にかつ安価に行うという本件考案の目的を達成することができるから,上記要件も充足する。
同要件Bについては,部材の防護,強度の補強等のために新たな部材を継ぎ足す程度のことは,特段新しい発想ではなく,当業者であれば容易に想到できることであるから,上記要件も充足する。
同要件C,Dを充足することは明らかである。
ウ 争点5(権利の濫用)について (ア) 本件考案と実開昭53-152255号考案の構成を比較すると,原判決が認定した以外にも相違点が存する。
すなわち,本件考案においては,断熱材は,ベースないしカバーから取り外すことができる別の部材として構成されているが,実開昭53-152255号考案においては,配管カバー本体ないし蓋体と保温・遮音材は,固着し一体となった構成である。
また,本件考案においては,ベース両側の立上がり部にある突嘴は,その両側で被係止体を係止できるように矢じり形をしており,そのうち,突嘴の外側は,カバー側板部先端のフックと係止する機能を有し,突嘴の内側は,固定座の基部を係止する機能を有し,固定座のベースへの取付けは,内側の突嘴への係止によるのみで,適宜,間隔を設けることができるようになっている。これに対し,実開昭53-152255号考案においては,配管カバー本体両側の立上り部の係止受片は外側のみにしかなく,蓋体の側板端部の係止片と係止めをする機能しか有しておらず,配管カバー本体内の配管挟持体は,別の方法により,配管カバー本体に取り付けるようになっている。したがって,本件考案においては,突嘴と固定座基部とが係止していることから,固定座取付け後も,突嘴と固定座基部間を摺動させることによって適宜,位置の変更ができるのに対し,実開昭53-152255号考案の配管挟持体は,一度取り付けた後は,自由にその位置を変更することができないのであって,両者は構造及び作用が明らかに異なる。
(イ) 本件考案の課題は,より単純な構成からなり,取付けを迅速容易にかつ安価に行うことのできる配管被覆構造を得ることであるのに対し,実開昭53-152255号考案の課題は,屋外に露出されている配管について外観を良くし,保温性及び遮音性を良くすることであり,両者の解決しようとする課題,発想の出発点,着想の原点は全く異なる。したがって,当業者が,実開昭53-152255号考案に基づき本件考案の構成をきわめて容易に想到できるものではない。
(ウ) 特許庁において複数の審査官の審査を経て本件実用新案権が登録されている以上,その判断は尊重されなければならず,同登録実用新案が無効事由を有することが明らかであるということはできない。
(エ) 被控訴人は,被控訴人特許権の出願手続において,被控訴人発明が本件考案と実質的に同一であることを認めながら,被控訴人発明については新規性及び進歩性がある旨主張して,被控訴人特許権の登録を受けたものであるから,本件において,本件考案に係る登録実用新案が無効事由を有することが明らかである旨主張することは,禁反言の原則に反して許されない。
(オ) 原審においても主張したとおり(原判決37頁3〜7行),本件考案以前には,本件考案と同じ技術思想を有する製品が開発販売されていなかったことからすれば,本件考案公知技術からきわめて容易に想到できたものでないことは,明白である。
(2) 当審における被控訴人の追加的な主張の要点 ア 争点1について ベース本体の固定は,その頂部が平らないわゆる「皿ねじ」で行うのが通例であり,その場合,「皿ねじ」の頭部は,ベース本体の表面からほとんど出っ張ることはない。仮に,「丸ねじ」を用いたとしても,施工に際して,その上に下部断熱材を押し込めば,下部断熱材がくぼみ変形して,「丸ねじ」の頭部の出っ張りを吸収するので,下部断熱材がパイプと密着することはあり得ない。
イ 争点2について (ア) 「挟持」とは,挟持する物と挟持される物の間に間隙がある場合を含まない。
(イ) 本件明細書の記載及び本件実用新案権の出願当時の公知技術によれば,上部断熱材と下部断熱材の両方によりパイプを挟持するという要件も本件考案本質的部分であることは明らかである。また,被控訴人各製品の下部断熱材とパイプ下半部との間には間隙があるから,断熱材が固定部材として機能するという本件考案の作用効果を果たしていない。さらに,上記の間隙を設ける構成は,下部断熱材の製造条件のばらつきにより,パイプ及び上部断熱材が浮き上がるという不具合を防止する独自の効果があり,当業者が容易に想到できるものではない。したがって,被控訴人各製品は,前記均等の要件の@ないしBを充足しない。
(ウ) 本件考案は,公知技術寄せ集めにすぎないから,仮に,新規性進歩性が認められたとしても,突嘴が配管ベース立ち上がり部の頂部にある点を含むすべての構成が本質的部分である。また,突嘴を配管ベース立ち上がり部の頂部から中間部に置き換えることにより,ベースのたわみを防止し,施工の際に作業員が下部断熱材の上側縁部を破損するのを防止するなどの顕著な効果を有する。さらに,上記置き換えが容易に想到できるという証拠はない。したがって,被控訴人製品(新タイプ)は,前記均等の要件の@ないしBを充足しない。
ウ 争点5について (ア) 本件考案に係る実用新案登録請求の範囲には,断熱材をベースないしカバーから取り外すことができる別の部材として構成する旨の記載はないから,本件考案をそのようなものと解することはできない。
また,本件考案に係る実用新案登録請求の範囲には,突嘴の内側が固定座の基部を係止する機能を有するものとして構成する旨の記載はないから,本件考案をそのようなものと解することはできない。
(イ) 実開昭53-152255号考案の構成は,配管挟持体を備えたことにより,取付けを迅速容易にかつ安価に行うという本件考案の課題を当然達成しており,そのことを前提にして,さらに外観,保温性及び遮音性を良くするという課題を解決しようとしたものと解すべきである。また,仮に,本件考案と実開昭53-152255号考案の課題が異なるとしても,取付けを迅速容易にかつ安価に行うという本件考案の課題は,建築設備分野の構造体一般についての自明な課題にすぎない。
(ウ) 本件考案が複数の審査官により審査されたものであっても,そのことは,裁判所における本件実用新案権の有効性についての判断に何ら影響を与えない。
(エ) 被控訴人特許権の出願手続と本件訴訟手続とは,全く対象が異なるから,上記出願手続に基づく禁反言をいう控訴人の主張は失当である。
(オ) 他の当業者が本件考案の出願以前に本件考案を実施していないとしても,その一事をもって,本件考案公知技術からきわめて容易に想到できたものではないということはできない。
当裁判所の判断
当裁判所も,本件実用新案権に基づく本訴請求は権利の濫用に当たりいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は,次のとおり補正付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第4 当裁判所の判断」の「3 争点5(本件考案に係る実用新案登録の無効理由)について」の(2),(3)記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の補正 (1) 原判決43頁6行目の「配水管B」を「排水管B」と改める。
(2) 原判決43頁9〜14行目を次のとおり改める。
「(ア) 実開昭53-152255号考案における「配管カバー本体1」は,その両上縁部を折曲した係止受片6を有し,「蓋体5」は,両側縁部を折曲した係止片7を有しており,配管カバー本体1の開口面部に蓋体5を装着するには,係止受片6及び係止片7の弾性を利用して,係止受片6に係止片7を係止させることにより装着するのであるから,上記考案における「配管カバー本体1」は本件考案における「配管ベース」に,上記考案における「蓋体5」は本件考案における「カバー」に,それぞれ対応している。」 (3) 原判決44頁8〜18行目を次のとおり改める。
「ウ そうすると,本件考案と実開昭53-152255号考案とは,「頂部に突嘴を有する立上がり部を両側端部に設けた配管ベース上に開口幅がパイプ径より狭い断面U字形のパイプ受け面を有する固定座を複数設け,配管ベース及びカバーの内周面部に上・下の断熱材を配設し,前記両断熱材をカバーで覆い,前記立上がり部の突嘴とカバー端部の突嘴とを互いに係合して該配管ベースとカバーとを一体に係止したことを特徴とする配管被覆構造。」である点で一致する。
エ 他方,本件考案と実開昭53-152255号考案とは,本件考案においては,上・下の断熱材が,固定座と固定座との間に位置して上縁にパイプ挟持用の凹部を有する下部断熱材を立上がり部間に配設し,前記下部断熱材上に載置され下縁にパイプ挟持用の凹部を有する上部断熱材との両断熱材によりパイプを挟持するものであるが,実開昭53-152255号考案は,そのような構成を備えていない点で相違する。」 2 当審における控訴人の主張に対する判断 (1) 控訴人は,本件考案と実開昭53-152255号考案の構成を比較すると,@前者においては,断熱材がベースないしカバーから取り外すことができる別部材とされているが,後者においては,配管カバー本体ないし蓋体と保温・遮音材は,固着し一体とされている点,A前者においては,ベース両側の立上がり部にある突嘴は,その両側で被係止体を係止できるように矢じり形をしており,突嘴の内側は,固定座の基部を係止する機能を有するのに対し,後者においては,配管カバー本体両側の立上り部の係止受片は外側のみにしかない点が異なっている旨主張する。
しかしながら,@の点については,本件考案に係る実用新案登録請求の範囲の記載のうち断熱材に関する部分は,「…下部断熱材を前記立上がり部間に配設し,前記下部断熱材上に載置され(た)…上部断熱材との両断熱材によりパイプを挟持し,前記両断熱材をカバーで覆い…」というものであるところ,上記記載によれば,本件考案は,必ずしも,断熱材がベースないしカバーから取り外すことができる別部材とされているものに限定されず,断熱材がベースないしカバーと固着された一体の部材となったものも含まれると解すべきであるから,控訴人の上記主張は,実用新案登録請求の範囲の記載に基づかないものであり,理由がない(なお,仮に,本件考案が,断熱材がベースないしカバーから取り外すことができる別部材とされているものに限定されるとしても,配管ベース及びカバーの内周面部に配設された断熱材を,配管ベースないしカバーから取り外すことができる別部材とするか,固着された一体のものとするかは,当業者が必要に応じて適宜設計する事項にすぎないというべきであるから,実開昭53-152255号考案に引例1記載の考案を組み合わせることにより,当業者が本件考案の構成を極めて容易に想到することができたことに変わりはない。)。
また,Aの点については,本件考案に係る実用新案登録請求の範囲の記載のうち,配管ベース両側の立上がり部にある突嘴に関する部分は,「前記立上がり部の突嘴とカバー端部の突嘴とを互いに係合して該配管ベースとカバーとを一体に係止した」というものにすぎないから,本件考案において,上記突嘴が,その両側で被係止体を係止できるように矢じり形をしており,突嘴の内側は,固定座の基部を係止する機能を有する旨の控訴人の上記主張は,実用新案登録請求の範囲の記載に基づかないものであり,理由がない。
(2) また,控訴人は,本件考案の課題は,取付けを迅速容易にかつ安価に行うことのできる配管被覆構造を得ることであるのに対し,実開昭53-152255号考案の課題は,屋外に露出されている配管について外観を良くし,保温性及び遮音性を良くすることであり,両者の解決しようとする課題等は全く異なるから,後者の考案に基づき本件考案の構成をきわめて容易に想到できるものではない旨主張する。
しかしながら,取付けを迅速容易にかつ安価に行うことのできる配管被覆構造を得るということは,配管被覆構造の分野において,いうまでもなく自明の課題であるから,本件考案がこのような課題を有するからといって,本件考案の構成がきわめて容易に想到できるものではないということは到底できない。
(3) さらに,控訴人は,特許庁において複数の審査官の審査を経て本件実用新案権が登録されている以上,その判断は尊重されなければならず,同登録実用新案が無効事由を有することが明らかであるということはできない旨主張する。
しかしながら,前記引用に係る原判決説示のとおり,当業者であれば,実開昭53-152255号考案及び引例1記載の考案に基づいて,本件考案の構成をきわめて容易に想到することができたものである以上,特許庁において複数の審査官の審査を経て本件実用新案権が登録されているとしても,本件考案に係る登録実用新案が無効理由を有することが明らかであることに何ら変わりはない。
(4) 控訴人は,被控訴人が,被控訴人特許権の出願手続において,被控訴人発明が本件考案と実質的に同一であることを認めながら,被控訴人発明については新規性及び進歩性がある旨主張して,被控訴人特許権の登録を受けたから,本件において,本件考案に係る登録実用新案が無効事由を有することが明らかである旨主張することは,禁反言の原則に反して許されない旨主張する。
しかしながら,被控訴人特許権の出願手続と,本件実用新案権に基づく本件訴訟とは,審査,審理の対象を異にする全く別個無関係の手続であるから,同出願手続における被控訴人発明の特許性に関する被控訴人の主張によって,本件における被控訴人の権利濫用の主張が制約されると解することはできないというべきである。
(5) また,控訴人は,本件実用新案権の出願前である平成元年ころから,意匠性及び施工性のより優れた配管被覆構造が,市場において強く求められていたのであるから,仮に本件考案公知技術から容易に想到できるものであれば,本件考案と同様の製品が開発販売されていたはずであるのに,そのような事実がなかったことからすれば,本件考案公知技術からきわめて容易に想到できたものでないことは,明白である旨主張する。
しかしながら,本件考案に係る配管被覆構造を実際に開発し販売するか否かは,製造コストや市場価格,経済状況の変動等の種々の現実的諸条件を考慮して決定されるものであるから,仮に,本件実用新案権の出願当時,控訴人以外の当業者が本件考案と同様の製品を開発販売していなかったとしても,このことから直ちに,本件考案公知技術からきわめて容易に想到できたものではないということはできない。
3 結論 以上によれば,控訴人の被控訴人に対する本訴請求をいずれも棄却すべきものとした原判決は相当であって,控訴人の本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 佐藤久夫
裁判官 若林辰繁
裁判官 沖中康人
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