関連審決 |
審判1995-22822 |
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関連ワード | 均等 / 考案 / 図面 / 構造 / 補正 / 設定登録 / 公然実施 / 実施例 / 特定 / 明細書 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
9年
(行ケ)
326号
審決取消請求事件
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原告 フルタ電機株式会社代表者代表取締役 【A】 訴訟代理人弁護士 高橋譲二 同 弁理士 【B】 被告 渡邊機開工業株式会社代表者代表取締役 【C】 訴訟代理人弁護士 塩見 渉 同 弁理士 【D】 同 【E】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 1999/07/08 |
権利種別 | 実用新案権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成7年審判第22822号事件について平成9年11月7日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文同旨 |
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請求の原因
1 特許庁における手続の経緯 被告は、考案の名称を「生海苔洗滌脱水装置」とし、昭和59年4月11日に実用新案登録出願、昭和62年7月27日に設定登録された実用新案登録第1689047号考案(以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。 原告は、平成7年10月16日に本件考案に係る実用新案登録の無効の審判を請求し、同請求は平成7年審判第22822号事件として審理が開始されたところ、被告は、願書に添付した明細書の訂正(以下「本件訂正」という。)を請求した。特許庁は、上記事件について、平成9年11月7日に「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本を同年11月13日に原告に送達した。 2 本件考案の実用新案登録請求の範囲1の項(別紙図面1参照)(1) 本件訂正前 有底外槽内へ、多数の微小通水孔を有する内筒を縦設し、前記内筒内へ繊維の植設よりなる螺旋羽根を所定間隔毎に分断し、隣接分断部が連通しないように断続的に突設した回転軸を架設し、前記有底外槽の上部へ内筒と連通する生海苔排出口を連設すると共に、底部へ排水溝を設け、前記内筒の下部には生海苔を荒切りする為の切断器と連通する生海苔送入口を設けてなる生海苔洗滌脱水装置。 (2) 本件訂正後 有底外槽内へ、多数の微小通水孔を有する内筒を縦設し、前記内筒内へ繊維の植設よりなる螺旋羽根を所定間隔毎に分断し、隣接分断部が上下方向に連通しないように螺旋羽根を断続的に突設した回転軸を架設し、前記有底外槽の上部へ内筒と連通する生海苔排出口を連設すると共に、底部へ排水口を設け、前記内筒の下部には生海苔を荒切りする為の切断器と連通する生海苔送入口を設けてなる生海苔洗滌脱水装置。 3 審決の理由 別添審決書の理由の写のとおりである(ただし、4頁6行の「内筒内に」は「内筒内へ」の、同頁11行の「排出口を設け」は「排水口を設け」の、18頁12行ないし13行の「生海苔のみ上下し乍ら、」は「生海苔のみ上下しつつ上昇し乍ら、」の各誤記と認める。また、18頁15行及び20頁1行の「生海苔のみ上下し乍ら」は、「生海苔のみ上下しつつ上昇し乍ら」の「つつ上昇し」を省略したものと認める。)。以下、審決と同様に、本件考案の実用新案登録に係る出願を「本件出願」、本件出願時の願書に添付した明細書及び図面を「当初明細書」、昭和61年6月27日付手続補正書により補正された明細書を「補正明細書」という。 4 審決の取消事由 審決の理由第1は認める。同第2のうち、1は認め、2は争う。同第3、第4は認める。同第5の1のうち、当初明細書が補正された経緯が審決認定のとおりであることは認め、その余は争う。同第5の2のうち、審決の認定する構造のAT-U型海苔移送分離機が昭和58年ころ公然実施されていたことは認め、その余は争う。同第6は争う。 審決は、補正明細書による補正が当初明細書の要旨を変更したものであるのにこれを看過し、また、要件を欠く訂正を認めた結果、原告主張の無効理由(1)、(2)は採用することができないと判断したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。 (1) 取消事由1(要旨の変更) 審決は、被告が昭和61年6月27日付手続補正書によってした、当初明細書の「生海苔の押し上げは断続的に行われる」との記載を「水と生海苔の混合物は、 攪拌洗浄され、生海苔のみ上下しつつ上昇し乍ら脱水される。」とする補正について、要旨を変更したものではないとした。 審決は、「当初明細書に記載された生海苔洗滌脱水装置おける螺旋羽根の形状及びそれによる生海苔のこの洗滌脱水装置における作用」からして「生海苔は、前記螺旋羽根上にあるときは、これにより上昇されつつ洗浄脱水されるが、螺旋羽根の分断部にあるときは、螺旋羽根による支えがなくなり、生海苔は、その自重により下降しようとする。そのため、生海苔は、前記分断部において、上昇速度はそれまでの速度に対し負の状態となり、少なくとも、それまでその生海苔を上昇させていた螺旋羽根を仮想延長した場合に上昇するであろう位置より下の位置に動く、即ち前記仮想延長した螺旋羽根の位置に対して、相対的に下降する。」旨判断した。 しかし、上記判断は、本件考案における生海苔の動きを誤解している。 すなわち、螺旋羽根が回転を始めると、別紙図面2の第1図のとおり、螺旋羽根上にあった生海苔は螺旋羽根との相対的位置関係では螺旋羽根の植設方向(正面からみて左斜め上方)に沿って移動を始める。 次に、同図面第2図のとおり、生海苔が螺旋羽根1の左上部先端に到達し、当該分断部に移ると、確かに生海苔は下方へ下降するかに思えるが、既に螺旋羽根1の回転により生海苔には左斜め上方向(螺旋羽根の仮想延長方向)にかなりの速度が与えられているため、螺旋羽根の回転数(回転速度)、植設部の長さ、角度等によっては、上記第2図のとおり、左斜め上方向の速度のうち、真上への方向の速度が自重によって生ずる真下への落下速度を上回り(上記第2図イの場合)、ロのように下降することなく次の螺旋羽根の植設部に到達することが考えられる。 まして、本件考案においては、内筒の円筒内には下部から水が供給され続ける上、螺旋羽根が回転することにより円筒内の水がこれにつれて回転を始めることを忘れてはならない。つまり、下部から水が供給され続けることにより、水は円筒内を上昇し、これにつれて水の中の海苔も水の動きに押されて上昇する速度が与えられる。更に、螺旋羽根が回転することにより、海苔に対して真上方向への上昇速度が与えられたのと同じく、別紙図面2の第3図のように、円筒内の水に対しても真上方向への上昇速度が与えられることも疑う余地がない。したがって、水とともに上昇する生海苔にその水圧・水流によって一層左斜め上方向への速度が与えられることは間違いないのである。 すなわち、本件考案においては、生海苔が上下することなく断続的に押し上げられながら上昇することもあるということになる。してみると、本件考案の構造からして生海苔の動きが上下することが自明などとは到底いえないから、これを「「生海苔のみ上下し乍ら」は、その文言のみからは生海苔は垂直方向において下降すると解されるが、前記螺旋羽根の構造・・・から自明のことと導かれる前記生海苔の動きを意味しているものと理解できる。」とした審決の判断は誤りである。 (2) 取消事由2(本件訂正を認めた誤り) 訂正を認めた審決は、生海苔が分断部において下降することを前提としている。つまり、本件考案では、生海苔が分断部において下降はするものの、次の螺旋羽根に拾われ、支持されて再び上昇を開始するから、分断部が上下に連通していなければ生海苔のみ上下しつつ上昇しながら脱水されるとの作用効果が実現されるし、また、それで足りるというものである(別紙図面3の第1図参照)。 しかし、前記(1)に詳述したように、生海苔は下降するわけではない。また、仮に、生海苔が下降するとしても、生海苔が降下するまでの時間に、螺旋羽根は生海苔よりも早い速度で右方向に回転して移動しているから、生海苔が次の螺旋羽根2の上に到達するとき、その到達地点Aは、水平方向でみると、螺旋羽根1の左端Bより相対的に左に位置することは疑いない(別紙図面3の第2図参照)。 したがって、分断部が上下に連通していても、上記作用効果を実現し得ることは間違いないのである。もちろん、具体的にいかなる螺旋羽根の構成が上記作用効果を実現するのか不明としかいいようがないが、審決のいうように「「上下方向に」とすることにより、文言上当該連通方向を明瞭にしたもの」(5頁7行ないし8行)とか「上下方向に隣接する分断部としか考えられない。」(6頁11行ないし12行)などと断ずることは物理的に明白な結論に真っ向から反する。隣接分断部について、多様な解釈が可能なのであり、したがって、訂正を認めた審決は誤りである。 審決は、隣接分断部が上下に連通していないAT-U型海苔移送分離機の存在が無効理由とならない旨判断した。しかし、上記のとおり、隣接分断部が上下方向に隣接する分断部であると解した審決の判断には誤りがあるから、上記無効理由の有無については、あらためて検討されるべきである。 |
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請求の原因に対する認否及び被告の主張
1 請求の原因1ないし3は認める。同4は争う。 2 被告の主張(1) 取消事由1についてア 原告は、「生海苔の押し上げは断続的に行われる」との作用効果をもたらす構成ないし技術的事項と、「水と生海苔の混合物は、攪拌洗浄され、生海苔のみ上下し乍ら脱水される。」との作用効果をもたらす構成ないし技術的事項とは全く異なることになり、要旨の変更に当たると主張する。 イ しかし、本件考案の要旨は審決認定のとおりであるが、その中には原告主張に係る「」内の記載は全くない。したがって、作用効果の記載が前記のように変更されたとしても、本件考案の要旨には何らの影響がないので、要旨の変更とはならない。 ウ 本件考案において、生海苔と水との混合物は、螺旋羽根により、回転方向、内筒壁方向、上昇方向の三方への力を受けてほぼ螺旋状に上昇するが、水に係る上昇力は比較的小さく(実際上水は水位以上にならない。)、主として生海苔のみ上昇する。生海苔は螺旋羽根により上昇させられるのであるが、水とともに内筒内壁へ付着し、脱水されて螺旋羽根で押し上げられる。要するに、浮游状態の時も、内筒壁に付着した時も螺旋羽根により上昇力を得るので、螺旋羽根がない部分では、当然のことながら上昇力が得られなくなり、多少自重下降することはいうまでもない。特に、内筒壁に付着している生海苔には慣性は働かないので、付着力が強ければ現状維持であるが、水中で内筒壁に付着している状況を想定すれば、螺旋羽根がない部分で下降することは否定できない。 本件考案における生海苔の動きは、次のようなものである。 @ 別紙図面4の第1図の場合に、生海苔粒N1は、植毛部4aの矢示23aのように押し上げられるが、生海苔粒N2は分断部4nにより、一旦下段の植毛部4bに捕らえられ、上段の植毛部4aまで上昇して内筒壁に到達する。この場合に生海苔は、第2図中矢示30のように回転軸5の回転につれて、曲線状32のように移動し、内筒壁に付着しする。 A 内筒壁に付着した生海苔の塊N3は、第4図図示のように、植毛部4aが矢示31の方向へ移動することにより、矢示23bのように押し上げられる。しかし、 分断部4nの生海苔の塊N4は上昇力を得ないので、分断部4nから下へ移動し、 下段の植毛部4bにより押し上げられて上段の植毛部4aに達した点でこれにより押し上げられるのである。 (2) 取消事由2についてア 原告は、隣接分断部については多様な解釈があると主張するが、そうであるならば、本件考案の実施例に関する図面に明記されているように、「上下方向の分断部」も当然前記多様な分断部の一つということができる。したがって、多様な解釈ができる場合に、これを「上下方向」のみに明確にしたことは、不明瞭な記載を釈明したものであるから、審決が訂正を許可したことに誤りはない。 イ 審決は、昭和58年ころ株式会社親和製作所が制作したAT-U型海苔移送分離機は、公然と実施され、この海苔移送分離機の海苔と水を分離する分離器具には、断続する螺旋状のブラシが設けられていたと認定した。しかし、断続する螺旋状のブラシを有するAT-U型海苔移送分離機は、昭和59年5月14日以後に同社によって製造販売されたものであり、審決の上記認定は誤りである。 |
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証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録のとおりであるから、これを引用する。 理 由 |
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請求の原因1ないし3の事実は、当事者間に争いがない。
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本件考案の概要
甲第2号証(本件公告公報)によれば、補正明細書に記載された本件考案の概要は、以下のとおりと認められる。 1 (産業上の利用分野) この考案は、採取した原藻を切断、洗滌、熟成、調合海苔抄きなどの生海苔処理機の分野に属し、この考案の装置は、生海苔を洗滌、脱水することを目的とする生海苔洗滌脱水装置に関する。 (従来の技術) 従来生海苔の処理に際し、洗滌と脱水とを別装置に分離したものと、洗滌と脱水を一連の装置で行う機械(特公昭44-13987号)が知られているけれども、スクリューが連続していると回転軸の回転速度によっては、移動量に過不足を生じるおそれがあり、洗滌と脱水とが円滑に進行しない場合がある。 (考案が解決する問題点) この考案は、多孔筒内へ螺旋羽根を断続的に突設した回転軸を架設し、生海苔送入側へ切断器を連設したので、送り量を自動的に調節し、かつ、水分の分離も良好となって、前記従来の問題点を解決したのである。(2欄2行ないし20行)2 本件考案は実用新案登録請求の範囲1の項の構成を備える。(1欄2行ないし10行)3 (作用) この考案は、採取した生海苔を吸入口より送り込み、切断機の切断刃を回転することによって、長い原藻を適度に切断した後、送入ホースにより内筒内へ水とともに送り込む。ついで内筒を回転することによって、生海苔は水面下では攪拌、洗滌され、逐次上昇し、水面上に出てから能率よく脱水される。前記の螺旋植毛によって、生海苔を上昇させながら、内筒の目詰りを防止することができる。したがって、汚れは内筒の小孔から均等に排水される。(3欄26行ないし36行) (考案の効果) この考案によれば、外槽内へ設置した多孔壁内筒の内側へ、外壁に繊維よりなる螺旋羽根を断続的に設けた回転軸を回転自在に架設したので、内筒内へ送入された水と生海苔の混合物は、攪拌洗滌され、生海苔のみ上下しつつ上昇しながら、脱水される効果がある。(5欄4行ないし9行) |
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審決の取消事由について判断する。
1 取消事由1について(1) 乙第4号証(当初明細書)によれば、当初明細書には、「(作用) この考案は、採取した生海苔を吸入口より送り込み、切断機の切断刃を回転することによって、長い原藻を適度に切断した後、送入ホースにより内筒内へ水と共に送り込む。 ついで内筒を回転することによって、生海苔は水面下では攪拌、洗滌され、逐次上昇し、水面上に出てから能率よく脱水される。前記の螺旋植毛によって、生海苔を上昇させ乍ら、内筒の目詰りを防止することができる。従って、汚れは内筒の小孔から均等に排水される。」(4頁14行ないし5頁4行)、「(実施例) 有底外槽1内へ所定間隔を保って、側壁に無数の微小孔2を有する内筒3を同心円的に縦設し、前記内筒3内に、外壁螺旋羽根4を断続的に突設した回転軸5を回転自在に架設する。」(5頁6行ないし10行)、「ついで内筒3内へ入った生海苔は、螺旋羽根4によって攪拌されつつ、矢示23の方向へ押し上げられる。この場合に、回転軸5の螺旋羽根4は繊維束が所定間隔で螺旋状に植設されているので、水は残って生海苔のみ押し上げられる。また螺旋羽根は二口ねじ状に設けられており、所々に無植設部24が設けられているので、生海苔の押し上げは断続的に行われる。」(6頁末行ないし7頁8行)、「(考案の効果) この考案によれば、外槽内へ設置した多孔壁内筒の内側へ、外壁に繊維よりなる螺旋羽根を断続的に設けた回転軸を回転自在に架設したので、内筒内へ送入された水と生海苔の混合物は、攪拌洗滌された後、引続き脱水される効果がある。」(7頁末行ないし8頁4行)として、 別紙図面1の各図が記載されていることが認められ、上記記載によれば、当初明細書の実施例においては、内筒内へ送入された水と生海苔の混合物は、内筒下部から上部へと押し上げられるが、内筒3は側壁に無数の微細孔2を有するから、水はそこから内筒外へ排水されること、それに伴い生海苔の一部は、内筒壁に移動してそこに付着すること、内筒壁に付着した生海苔の塊は、別紙図面4の第4図のように、N3の位置にあるものは、螺旋羽根の植毛部4aが矢示31の方向へ移動することにより、矢示23bのように押し上げられるけれども、螺旋羽根の分断部4nの位置にある生海苔の塊N4は、螺旋羽根4aによる上昇力を得ないので、自重により分断部4nから降下するうち、下段にある螺旋羽根の植毛部により押し上げられ、上段の植毛部の高さまで達した時点でこれにより押し上げられることが認められる。 そうすると、生海苔は、螺旋羽根の上端から、更に上段の螺旋羽根へ上昇することなく、分断部を降下し一段下の螺旋羽根に到達する場合もあるというべきである。 (2) もっとも、原告は、@螺旋羽根の回転により生海苔には左斜め上方向(螺旋羽根の仮想延長方向)にかなりの速度が与えられており、Aしかも、下部から水が供給され続けることにより、水は円筒内を上昇し、これにつれて水の中の海苔も水の動きに押されて上昇する速度が与えられ、更に、螺旋羽根が回転することにより、 円筒内の水に対しても真上方向への上昇速度が与えられるから、生海苔にもその水圧・水流によって一層左斜め上方向への速度が与えられるから、螺旋羽根の回転数(回転速度)、植設部の長さ、角度等によっては、真上への方向の速度が自重によって生ずる真下への落下速度を上回り、下降することなく次の螺旋羽根の植設部に到達することが考えられると主張する。 しかし、内筒壁に付着している生海苔は、水流の影響をほとんど受けないものと認められるし、まして、水上に出て脱水中のものは水流の影響は皆無である。そうすると、螺旋羽根の分断部にあるものは、螺旋羽根の回転による慣性力は与えられないから、結局、自重によって下降することになるものと解されるのである。 なお、水中にあって浮遊している生海苔について検討するに、螺旋羽根によって上方に押された水は重力によって下降してくるため、波立ち、乱流を形成し、水中に浮遊している生海苔は、乱流に流されて(これによって攪拌洗滌されるものと認められる。)、時には上昇し、時には下降するものと認められる。 そうすると、別紙図面4の第1図や第4図のような螺旋羽根の一部位について考えた場合には、一部の生海苔は上下することなく断続的に押し上げられることがあるけれども、一部の生海苔は上下しながら上昇するものであり、これを全体としてみると、螺旋羽根の特定部位では下降しなかった生海苔も、螺旋羽根の他の部位では下降する可能性があるのであるから、結局、内筒内全体をみれば、生海苔は上下しつつ上昇してゆくものというべきである。 (3) 以上のとおりであるから、当初明細書の「生海苔の押し上げは断続的に行われる」との記載を「水と生海苔の混合物は、攪拌洗浄され、生海苔のみ上下しつつ上昇し乍ら脱水される。」と補正したことは、考案の要旨を変更したものではないというべきである。 2 取消事由2について(1) 原告は、生海苔が下降するとしても、生海苔が降下するまでの時間に、螺旋羽根は生海苔よりも早い速度で右方向に回転して移動しているから、生海苔が次の螺旋羽根2の上に到達するとき、その到達地点Aは、水平方向でみると、螺旋羽根1の左端Bより相対的に左に位置するため、分断部が上下に連通していても、生海苔のみ上下しつつ上昇しながら脱水されるとの作用効果を実現し得るから、隣接分断部については多様な解釈が可能であり、訂正を認めた審決は誤りである旨主張する。 しかし、原告の主張は、螺旋羽根が生海苔が重力により落下又は下降するまでの時間に、螺旋羽根2の右端Bが回転によって生海苔の到達地点Aより相対的に右に位置できる程度に隣接分断部が上下方向に連通している部分の幅(別紙図面3の第2図中央の2つの点線の間隔)が狭いか、螺旋羽根の回転速度が速いという特定の条件を満たした場合に上記作用効果を奏する場合があり得るというものであることは、その主張自体から明らかである。一方、隣接分断部が上下方向に連通しない場合には、上記特定の条件にかかわらず上記作用効果を奏することは明らかであるから、隣接分断部が上下方向に連通する場合としない場合とが、作用効果において同一ということはできない。そして、隣接分断部が上下方向に連通する場合には、必ずしも上記作用効果を奏するとは限らないのであるから、上記作用効果を奏することのみから、直ちに隣接分断部が上下方向に連通する場合も、本件訂正前の本件発明であるということはできない。 そして、甲第2号証によれば、本件発明の特許願書添付図面第1、第3図には隣接分断部が上下方向に連通しない螺旋羽根が記載されていることが認められ、右記載に、本件明細書の上記作用効果に関する記載を総合すれば、隣接分断部が連通しない方向は、上記第1、第3図に記載されたように上下方向であるものと解される。そうすると、「隣接分断部が連通しないように」との記載を「隣接分断部が上下方向に連通しないように」と訂正することは、不明瞭な記載の釈明に当たるというべきである。 (2) したがって、本件訂正を認めた審決の認定判断には誤りはないから、原告の主張は、採用することができない。 2 以上のとおりであるから、原告の主張した無効理由(1)、(2)を排斥した審決の認定判断は相当であって、審決には原告主張の違法はない。 |
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よって、原告の本訴請求は、理由がないから、これを棄却することとし、訴
訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結日・平成11年6月24日) |
裁判長裁判官 | 清永利亮 |
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裁判官 | 山田知司 |
裁判官 | 宍戸充 |