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関連ワード 技術的範囲 /  考案 /  構造 /  減縮 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 16年 (ネ) 3810号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(1審原告) 株式会社アルス
訴訟代理人弁護士 中嶋邦明
同 平尾宏紀
訴訟代理人弁理士 東尾正博
同 鳥居和久
同 田川孝由
同 北川政コ
被控訴人(1審被告) 川万水産株式会社
被控訴人(1審被告) 株式会社エフネット
被控訴人ら訴訟代理人弁護士 小野明
被控訴人ら訴訟代理人弁理士 永田豊
被控訴人ら補佐人弁理士 増子尚道
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2005/05/31
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨等
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、2000万円及びこれに対する平成14年12月27日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は、1、2審とも被控訴人らの負担とする。
4 仮執行宣言
事案の概要
1 本件は、考案の名称を「食品蒸機」及び「魚貝類処理装置」とする二つの実用新案権を有する控訴人が、被控訴人らが魚貝類の加工業務において使用する食品蒸機及び魚貝類解凍洗機が、それぞれ上記各実用新案権に係る考案技術的範囲に属するとして、被控訴人らに対し、食品蒸機の使用の差止め及び廃棄を求めるとともに、両機械の使用による損害賠償を請求した事案である。
原審は、控訴人の請求をいずれも棄却したので、控訴人が控訴を提起した。
なお、控訴人は、当審において、本件請求のうち差止請求については、上記実用新案権の存続期間の終了を理由に、同請求に係る訴えを取り下げ、損害賠償請求については、請求を減縮した。
(以下、控訴人を「原告」、被控訴人川万水産株式会社を「被告川万」、被控訴人株式会社エフネットを「被告エフネット」、被控訴人らを「被告ら」といい、
引用に係る原判決中の「別紙」をいずれも「原判決別紙」と読み替える。)。
2 争いのない事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、次のとおり訂正等するほかは、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1、2及び「第3 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 2頁13行目の「被告川万水産株式会社(以下「被告川万」という。)」を「被告川万」と、同14行目から15行目にかけての「被告株式会社エフネット(以下「被告エフネット」という。)」を「被告エフネット」と各改める。
(2) 6頁17行目から18行目にかけての「訂正後の本件考案1」を「前記(2)ウの訂正後の本件考案1(以下「訂正後の本件考案1」という。)」と、同19行目から20行目にかけての「訂正後の本件考案2」を「前記(3)ウの訂正後の本件考案2(以下「訂正後の本件考案2」という。)」と各改め、7頁10行目の「本件考案2」の前に「本件考案2の実用新案登録請求の範囲の記載は不明瞭か又は」を加える。
(3) 20頁18行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 原判決イ号物件目録の開口部から入口までの間の傾斜搬送部にも熱せられた蒸気が充満している(甲第18号証。なお、乙第16号証に示されたデータは不自然であり、信憑性を欠く。)から、イ号物件における往路の開始先端部分に当たるのは上記開口部であり、傾斜搬送部と蒸し釜部は両者一体のものとして、訂正後の本件考案1にいう「トンネル式蒸し釜」に相当する。したがって、イ号物件は、トンネル式蒸し釜内の入口付近に煮沸槽を設けたものとはいえない。」 (4) 20頁22行目末尾の次に改行の上、次のとおり加える。
「 イ号物件の傾斜搬送部は、蒸し釜入口側に傾斜部を接続するように設けて蒸し釜内への外気の進入を抑制し、また、蒸気が外部に逃げることを回避するためのもので、従来のトンネル式蒸し釜で一般に採用されてきた周知の形態を採用したものにすぎない(乙第26号証)。原告は、乙第16号証のデータが不自然であると主張するが、イ号物件においては、蒸し釜内からの蒸気は、蒸し釜よりも下方に位置する傾斜搬送部の中間部や下部には到達しないから、上記データがこれらの部分の温度が低いことを示しているのは当然のことにすぎず、他方、甲第18号証は、本件考案1に係る蒸機(同号証添付の図1参照)に関する温度測定データであるから、イ号物件には当てはまらない。
なお、原告は、被告らが煮沸後の蒸し工程が意味を持たないことを自認した旨主張しているが、被告らは、いったん煮沸処理をした後に蒸し処理をしても「茹で蛸」が「蒸し蛸」に変化することはないことを述べたにすぎず、煮沸後の蒸し工程については、別途、「煮沸後の再度の蒸し処理は、煮沸処理での加熱が充分なものであれば省略できるが、充分な加熱のために煮沸槽での煮沸時間を長くすると、コンベアの速度が遅くなり、処理効率が低下する。そのため実際には、煮沸槽での煮沸は「茹で蛸」として認められる範囲で実施し、その後の蒸し工程で補助的な加熱を行い、全体として充分な加熱をすることで、効率的な処理を行っている。」旨主張している。」 (5) 24頁12行目から13行目にかけての「本件考案2」の前に「本件考案2の実用新案登録請求の範囲の記載は不明瞭か又は」を加える。
(6) 35頁12行目の「支えている」の次に「(ロ号物件においても、ドラムを上記支持ローラによって下方から支持しなければ、連結部16と係合してその状態を保持することはできないから、その意味では、支持ローラと組み合わせることによって初めて取り外しを容易にしたものということができる。)」を加える。
(7) 36頁18行目末尾の次に「 原告は、ロ号物件においても、支持ローラと組み合わせることによって初めて取り外しを容易にしたかのごとく主張するが、
上記のように、ロ号物件においては、板部材(連結部16)が軸受9に食い込むということはないから、その取り外しは、食い込みを防止するための手段を講じるまでもなく容易である。」を加える。
当裁判所の判断
1 当裁判所も、原告の被告らに対する本件請求は、いずれも理由がないものと判断する。
その理由は、次のとおり訂正等するほかは、原判決の「事実及び理由」中の「第4 争点に対する判断」1ないし8に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 45頁15行目の「膨大」を「増大」と改める。
(2) 52頁1行目から2行目にかけての「本件明細書1」を「訂正後の本件考案1に係る明細書(甲第14号証、第19号証)」を加え、同8行目冒頭からから同19行目末尾までを次のとおり改める。
「(2) 原告は、イ号物件も、トンネル式蒸し釜内の入口付近ではなく、その出口付近に煮沸槽を設けるものである旨主張しているところ、前記のとおり、構成要件D’は、煮沸槽の位置をトンネル式蒸し釜内の出口付近に限定したものであるから、イ号物件の煮沸槽の位置がトンネル式蒸し釜内の入口付近か否かの点の議論は差し当たり必要ではなく、端的に、イ号物件の煮沸槽がトンネル式蒸し釜内の出口付近に設置されたものと認められるか否かを判断すれば足りるものというべきである。そして、イ号物件の特定として争いのない原判決別紙イ号物件目録によれば、イ号物件においては、食品は、その搬送往路において、ボイル槽10を通過した後も、食品出口3に至るまでの相当程度の距離にわたって搬送され、トンネル水平部1の内部において蒸し処理がなされるものであることが明らかであるから、イ号物件においては、煮沸槽(ボイル槽10)が「トンネル式蒸し釜内の出口付近」に設置されたものということはできない。
この点に関し、原告は、被告らは煮沸後の蒸し工程が意味を持たないことを自認しているとして、イ号物件の煮沸槽の位置をトンネル式蒸し釜内の出口付近と評価できる旨主張しているが、被告らが煮沸後の蒸し工程に何らの技術的意義もないと述べたものでないことは弁論の全趣旨(殊に、被告らの原審第6準備書面)に照らして明らかであるし、また、前記(1)でみたとおり、訂正後の本件考案1に係る明細書には、蛸について蒸し処理と煮沸処理を行う場合は蒸し処理を先にした後煮沸処理を行うこと、この処理順序により蛸の色つやが鮮やかになること、そのため、煮沸槽の位置を出口付近とすることが明記されていることからして、訂正後の本件考案1は、トンネル式蒸し釜内の入口付近に煮沸槽を設ける構造を明瞭に排除したものというべきであるから、上記原告の主張は採用することができない。
したがって、イ号物件は、訂正後の本件考案1の技術的範囲に属さない。」 (3) 65頁13行目冒頭から同21行目末尾までを次のとおり改める。
「オ 以上の事実に基づき、構成要件D’の意義を検討する。
まず、構成要件D’にいう「回転軸の軸端に設けた平板部材」は、
「ドラムの側端に設けたハの字状の受金具」の「内側に係合する」ものであり、かつ、ハの字状の受金具の内側に係合して駆動部の動力(回転駆動力)をドラムに伝達するものであるから、その形状は、受金具と同様の略ハの字状(楔状)の形状を備えるものと解されるところ、構成要件D’は、回転軸とドラムとの連結構成を、
そのような形状の平板部材と受金具とを組み合わせて連結する構造にすることによって、吊り上げられ又は吊り下げられるドラムに設けられた受金具と平板部材との着脱を容易かつ円滑(例えば、平板部材の先端部が底部に比して狭いため受金具の内側に入り込みやすいとともに、受金具の内側に衝突する等の不都合も生じにくくなると考えられる。)にする一方で、そのような構造とした場合は、楔状の平板部材が強く食い込むことにより、その取外しが困難となるという欠点をローラ支持構造によって解消する構成としたものであるということができる。そして、この場合、上記のような受金具及び平板部材の構成と食い込みを防止するための支持ローラの構成は、両者が有機的に結合して、初めて所定の作用効果を奏し得るものであり、その意味で、相互に不可分の構成ということができる。」 (4) 66頁3行目の「上記のような」の前に「したがって、構成要件D’の「平板部材」とはその点で既に構成を異にするのみならず、」を、同11行目末尾に「また、原告は、ロ号物件においても、ドラムを支持ローラによって下方から支持しなければ、連結部16と係合してその状態を保持することはできないから、支持ローラと組み合わせることによって取り外しを容易にしたものということができるとも主張しているが、前記のとおり、訂正後の本件考案2に係る上記連結構造(構成要件D’)と支持ローラ(構成要件C’)とは相互に不可分の構成というべきであるから、上記のようにその一方の構成を異にする以上、両者の支持ローラをもって同一の作用をするものということはできない。」を加える。
2 その他、原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし、原審で提出、援用された全証拠を改めて精査しても、引用に係る原判決を含め、当審の認定、判断を左右するほどのものはない。
結論
以上の次第で、原告の被告らに対する本件各請求は、いずれも理由がなく、
これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴はいずれも理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(平成17年3月15日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 小野洋一
裁判官 長井浩一