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関連審決 審判1997-7913
関連ワード 技術的範囲 /  考案 /  考案者 /  図面 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  拒絶理由 /  減縮 /  実施例 /  容易に想到 /  頒布 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 /  明瞭でない記載 / 
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事件 平成 10年 (行ケ) 345号 審決取消請求事件
原告 有限会社浪花昆布茶本舗代表者代表取締役 【A】 【B】
訴訟代理人弁理士 【C】 【D】
被告 株式会社マン・ネン 代表者代表取締役 【E】
訴訟代理人弁護士 神戸正雄弁理士 【F】 【G】 【H】 【I】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 1999/11/16
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成9年審判第7913号事件について平成10年8月21日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「昆布茶」とする登録第1996422号実用新案(平成2年8月29日実用新案登録出願、平成5年3月16日出願公告、平成5年12月15日設定登録。本件考案)の実用新案権者である。
被告は平成9年5月7日、原告を被請求人として、本件考案について無効審判の請求をし、平成9年審判第7913号事件として審理された結果、平成10年8月21日、「登録第1996422号実用新案の登録を無効とする。」との審決があり、その謄本は同年10月13日原告に送達された。
2 本件考案の要旨 (1) (訂正請求書に記載された登録請求の範囲の記載) 昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料とをパック詰めにして成る昆布茶。
(2) (登録時の登録請求の範囲の記載) 昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料とより成る昆布茶。
3 審決の理由の要点 (1) 被告(請求人)の審判での主張 被告は、下記の証拠方法を提示して、本件登録請求の範囲第1項記載の考案は、
実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができず、本件登録は、実用新案法37条1項1号(平成5年改正前実用新案法)の規定により、無効とすべきである旨主張する。
記 審判甲第1号証 実公昭56-44397号公報 審判甲第2号証 特公平1-41304号公報 審判甲第3号証 特公昭61-31966号公報 審判甲第4号証 特公昭52-50279号公報 審判甲第5号証 実願昭60-19185号(実開昭61-136892号)のマイクロフィルム (2) 訂正請求の適否 (a) 原告の提出した訂正請求書(平成9年11月4日付け)の内容は、次のとおりである。
@ 訂正事項a 本件登録明細書における登録請求の範囲の項を下記のとおり訂正する。
「昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料とをパック詰めにして成る昆布茶。」 A 訂正事項b 本件明細書2頁16行ないし19行(公告公報1頁2欄7行ないし10行)の「昆布1aを……(中略)……ものであって」を「昆布1aを文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片1と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料2とをパック詰めにして成るものであって、」と訂正する。
B 訂正事項c 本件明細書3頁2行(公告公報1頁2欄14行)の「熱湯」を「パックを開いて茶碗等の容器に入れて熱湯」と訂正する。
C 訂正事項d 本件明細書4頁4行ないし8行(公告公報2頁3欄11行ないし15行)の「容器……(中略)……すれば、」を「1パック内に一つの字模様昆布片1が入っているようにパック詰めにされて出荷される。従って、」と訂正する。
D 訂正事項e 本件明細書5頁12行(公告公報2頁3欄39行)の「茶碗3」を「1パックを開いて茶碗3」と訂正する。
E 訂正事項f 本件明細書5頁18行(公告公報2頁4欄1行)の「容器やパック」を「パック」と訂正する。
F 訂正事項g 本件明細書7頁15行ないし8頁9行(公告公報2頁4欄38行ないし3頁6欄1行)の「叙述のように……(中略)……ものである。」を「叙述のように……(中略)……パック詰めして成るので、パックを開いて容器に入れて……(中略)……提供でき、しかも、字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにして成るので、予め昆布茶を作ってその中に字模様昆布片を入れるような手間を掛けることなく、パックを開いて茶碗等の容器に入れて熱湯を注ぐだけで簡単且つ手早く字模様昆布片入りの昆布茶が出来上がるものである。」と訂正する。
(b) まず、訂正事項aについてみると、この訂正は、前記のように登録請求の範囲において「パック詰めにして」の構成を付加するものであり、本件明細書4頁3行ないし11行に1パック内に1つの字模様昆布片が入るようにし、1パックを開いて茶碗等の容器に一人分を入れて熱湯を注いで復元する旨の記載があることを根拠とするものであるから、登録請求の範囲減縮に該当する。また訂正事項b〜gは、訂正事項aと整合するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。
そして、前記訂正は、願書に添付された明細書及び図面に記載した事項の範囲内であり、実質上登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(c) 次に、訂正後において登録請求の範囲に記載された考案(訂正考案)が、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものであるか否かを検討する。
(d) 訂正拒絶理由に引用され、本件出願前に頒布された刊行物である実公昭56-44397号公報(審判甲第1号証。刊行物1)、同じく特公平1-41304号公報(審判甲第2号証。刊行物2),同じく特公昭61-31996号公報(審判甲第3号証。刊行物3)、同じく実願昭60-19185号(実開昭61-136892号)のマイクロフィルム(刊行物4)、同じく実願昭52-41867号(実開昭53-137183号)のマイクロフィルム(刊行物5)をみてみると、
これらには、次の事項が記載されている。
刊行物1: @ 「乾燥した昆布を茶葉や茶茎に似せて繊切りしてできる昆布細片を昆布粉に混入して成る昆布茶」(登録請求の範囲) A 「昆布細片2は乾燥した昆布を茶葉や茶茎に似せて幅が略2mm以下長さが長くて2cm程度の繊維状に繊切りされ、200〜230メッシュ程度の昆布粉1に重量比1/10〜1/100程度で混入して本考案の昆布茶が得られるものである。昆布粉には更にグリタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム或いはグアニル酸ナトリウムといった呈味物質、塩及び砂糖が適宜添加してある。」(2欄2〜10行) B 「しかして得られる昆布茶はこれに熱湯または番茶を注いで飲用に供するものであり、昆布粉1が溶けた液体内に昆布細片2が存在して恰も茶葉や茶茎のような外観を呈し、日本茶の如き風情を醸し出すものであって、乾燥した昆布細片2自体が有するうま味が溶け出して独特の香りを発散させると共にこくのある風味を作り出すものである。」(2欄10〜17行) C 「本考案は以上のように、乾燥した昆布を繊切りしてできる昆布細片を昆布粉に混入しているものであるから、……(中略)……を呈し、乾燥した昆布細片が湯水に溶けて昆布細片の固形的舌ざわりがあって、単調な昆布茶の舌ざわりと異なった舌ざわりを呈せしめ且つその昆布の風味と相まって、趣きのある風情を醸し出すのである。」(2欄18〜26行)刊行物2: @ 「昆布を8〜10時間冷水に浸漬させてから、模様状に形成した刃型の上に載せ、圧力を加えて昆布を有型に打ち抜き、次いで25〜30℃の恒温で昆布を乾燥して得られた含水率15〜20%の模様出汁昆布。」(特許請求の範囲第5項) A 「本発明は吸い物や煮物に入れる出汁昆布に係り、特にお祝い文字や模様状の出汁昆布に形成しておき、吸い物や煮物に適宜入れて料理する模様出汁昆布とその製造方法に関する。」(1頁左欄23〜26行) B 「本発明は、・・・形のある昆布を料理の席に出させて視覚的な側面において有効に活用していくことを目的にしている。」(1頁右欄18〜21行) C 「復元した出汁昆布は、第5図の様に冠婚葬祭に適した文字である寿16や模様にできるので汁器14に入った吸い物や煮物15の中に入れて出汁を出して味を良くすると同時に見た目に感動を与えることもできるものである。」(2頁右欄38〜42行) D 「本発明による模様出汁昆布の用途は上述の吸い物、煮物に限定されるものでなく、この他に「御膳の水物」、「昆布茶」、「桜湯」及び結納の際に取り交す「酒杯」のなかにいれることができ・・・ある。」(2頁右欄43行〜3頁5行) E 「これを入れた吸い物や煮物の料理は昆布出汁の美味が与えられ食べて美味しく、見て感動を与えることが可能になり、料理を作る人にも食する人にも大きな使用効果を奏するものである。」(3頁左欄13行〜同頁右欄1行) F 第5図には、「寿」の字型をあしらった昆布16が示されている。
刊行物3: @ 「粉末状或いは顆粒状の昆布を要素とする昆布茶において、0.5mm以下の肉厚にスライスした昆布の小片に水を含ませかつ該小片を凍結乾燥して生成した昆布スライスを混合したことを特徴とする昆布茶」(特許請求の範囲第1項) A 「粉末状あるいは顆粒状の昆布を有する基礎材料を所定量収容するパッケージと、0.5mm以下の肉厚にスライスした昆布の小片に水を含ませかつ該小片を凍結乾燥して生成した昆布スライスを所定量収容するパッケージとを備えたことを特徴とする昆布茶セット」(特許請求の範囲第2項) B 「上記の説明では昆布スライスを予め基礎材料と混合させて昆布茶とした場合を示したが、昆布スライスと基礎材料を各々別のパッケージに収容しておき、使用する際に夫々所定量ずつ混合させて飲むことも可能である。こうすれば任意に好みの味とすることができよう。」(3欄末行〜4欄5行)刊行物4: @ 「60乃至180メッシュの抹茶、約30%(体積比)の中に煎茶の適当な粒度の破砕片約70%(体積比)を混合したものを、該見掛け体積の約5.5倍以上の不活性ガス中に密封包装した粉末緑茶。」(登録請求の範囲) A 「本考案実施例を図を用いて説明する。不活性ガス体(4)を封入包装したアルミ箔包装体(5)を、数回振った後開封し、容器に取り出し、該混合粉末緑茶(3)に熱湯を注いだところ、煎茶破砕片(1)が熱湯中に周囲の抹茶(2)を分散させつ々膨潤し、分散を促進したので、容器を多少揺動したのみで容易に飲用に供することが出来た。」(2頁(E)実施例)刊行物5: インスタントコーヒー、シュガー、クリーミーパウダーを、それぞれ一杯分ずつ包装し、それらをコーヒー一杯用としてパックしたインスタントコーヒー。
(e) 訂正考案と刊行物1記載の考案とを比較する。訂正考案における「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」とは、その訂正明細書には「例えば粉状または顆粒状の昆布粉が使用される。この昆布粉にはグルタミン酸ナトリウム、
イノシン酸ナトリウム、あるいはグアニル酸ナトリウムなどの化学調味料、食塩、
砂糖等、あるいはその他のものが適宜量添加してある。」と記載されている(訂正明細書2頁24〜27行)。一方、刊行物1記載の「昆布粉」は、刊行物1のAの項に記載されるように昆布粉に更にグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムあるいはグアニル酸ナトリウムのような呈味物質、食塩、砂糖が適宜量添加したものである。そうすると、両者は、成分、形態において変わるものではなく、刊行物1記載の考案の「昆布粉」は、訂正考案の「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」に相当するので、両者は、昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料から成る昆布茶、である点で一致し、(イ)昆布片が、訂正考案は、昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片であるのに対して、刊行物1記載の考案は乾燥した昆布を茶葉や茶茎に似せて繊切りしてできる昆布細片である点及び(ロ)訂正考案は、パック詰めされたものであるのに対して、刊行物1記載の考案はパック詰めされたものでない点で相違する。
(f) 前記相違点について検討する。
相違点(イ)について 刊行物2の@,A,C,Fの項には、昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片が記載されており、そして刊行物2のDの項にはこの昆布片を昆布茶に入れることができる旨の記載もあることから、刊行物1記載の昆布細片として刊行物2記載の昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片に代えることは当業者において極めて容易になし得る程度である。
そして、訂正考案において、このような昆布片を採用したことによる効果である味の良い飲み物とすると同時に、字模様を現出して視覚的効果を与えること、字模様昆布片の独特の歯ごたえを楽しませることは、刊行物1のCの項及び刊行物2のC、Eの項にそれぞれ示唆されており、訂正考案の前記効果は、刊行物1及び2記載のものから予期し得るものと認められる。
相違点(ロ)について 本件出願前粉末飲料を水や湯に溶かして1杯分となる量でパック詰めすることは周知である(要すれば、刊行物4,5など参照)ので、刊行物1記載の熱湯等を注いで飲用に供する粉末飲料である昆布茶を、パック詰めすることは当業者において極めて容易になし得る程度のことである。
そして、訂正考案は、このようなパック詰めとすることによって、刊行物1及び周知のことから予期し得ない格別の効果を奏するものとも認められない。
さらに、訂正考案は、上記相違点(イ)及び(ロ)を組み合わせることによって、格別顕著な効果を奏するものとも認められない。
してみると、訂正考案は、刊行物1及び2並びに周知事実に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。 したがって、訂正考案は、実用新案法3条2項の規定により、この出願の際独立して実用新案登録を受けることができないから、本件訂正は、実用新案法附則(平成5年法律第26号)4条2項の規定により準用する旧実用新案法40条2項が読み替えられるところの同法40条5項の規定により準用する同法39条3項の規定に違反し、認められない。
(3) 本件考案 本件考案は、訂正が認められないので、訂正前の、すなわち本件登録時の明細書及び図面に記載されたものであり、その記載からみて、その登録請求の範囲に記載された次のとおりであると認める。
「昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料とより成る昆布茶。」 (4) 対比 刊行物1及び刊行物2には、前記(2)の(d)に記載のとおりの考案が記載されている。
本件考案と審判甲第1号証記載の考案とを比較すると、本件考案における「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」とは、本件明細書には「例えば粉状または顆粒状の昆布粉が使用される。この昆布粉にはグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、あるいはグアニル酸ナトリウムなどの化学調味料、食塩、砂糖等、あるいはその他のものが適宜量添加してある。」と記載されている(本件明細書4頁12〜16行)。一方、審判甲第1号証記載の「昆布粉」は、審判甲第1号証(刊行物1のAの項)に記載されるように昆布粉に更にグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムあるいはグアニル酸ナトリウムのような呈味物質、食塩、砂糖が適宜量添加したものである。そうすると、両者は、成分、形態において変わるものではなく、審判甲第1号証記載の考案の「昆布粉」は、本件考案の「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」に相当するので、両者は、昆布片と、粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料から成る昆布茶、である点で一致し、昆布片が、本件考案は、昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片であるのに対して、刊行物1記載の考案は乾燥した昆布を茶葉や茶茎に似せて繊切りしてできる昆布細片である点で相違する。
(5) 相違点についての検討 刊行物2(刊行物2の@,A,C,Fの項)には、昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片が記載されており、そして刊行物2のDの項にはこの昆布片を昆布茶に入れることができる旨の記載もあることから、刊行物1記載の昆布細片として刊行物2記載の昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片に代えることは当業者において極めて容易になし得る程度である。
そして、本件考案において、このような昆布片を採用したことによる効果である味の良い飲み物とすると同時に、字模様を現出して視覚的効果を与えること、字模様昆布片の独特の歯ごたえを楽しませることは、刊行物1のCの項及び刊行物2のC、Eの項にそれぞれ示唆されており、本件考案の前記効果は、刊行物1及び2記載のものから予期し得るものと認められる。
したがって、本件考案は、刊行物1及び2証記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものである。
(6) 審決の結語 以上のとおりであるから、本件登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、実用新案法37条1項1号(平成5年改正前実用新案法)に該当し、無効とすべきである。
原告主張の審決取消事由
審決は、訂正考案に独立登録要件がないものと誤って判断し、これを前提にして本件考案を無効としたものであるから、違法であり取り消されるべきである。
1 取消事由1(訂正の適否についての独立実用新案登録要件の判断の誤りその1) 審決は、訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点(イ)について、刊行物1記載の昆布細片として刊行物2記載の昆布を文字や模様に型抜きして得た字模様昆布片に代えることは当業者において極めて容易になし得る程度であり、そして、訂正考案において、このような昆布片を採用したことによる効果は、刊行物1及び2記載のものから予期し得る旨認定しているが、この判断は誤りである。
確かに、刊行物2には汁器に入れた吸い物に浮かぶ「寿」の文字型に形成された模様出汁昆布が記載されており、吸い物以外に昆布茶に当該模様出汁昆布を入れることを示唆する記載がある。しかし、刊行物2のこの記載は単に茶碗等の容器に入れた昆布茶(液体の昆布茶)の中に当該模様出汁昆布を浮かべることを示唆するにすぎない。刊行物2は、昆布細片を昆布粉に混入したものをいかなる態様で提供するかについて、何ら記載していないし、示唆するものでもない。
被告は、刊行物2において「字模様昆布片と味覚原料とを混ぜたもの」が開示されていると主張するが、刊行物2に開示されている「昆布茶」は「液体の昆布茶」を意味しているのであり、この刊行物2に記載の考案にあっては、「字模様昆布片と固体の味覚用原料とを混ぜる」ことまで想定若しくは示唆していない。
2 取消事由2(訂正の適否についての独立実用新案登録要件の判断の誤りその2) (1) 審決は、訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点(ロ)について、本件出願前粉末飲料を水や湯に溶かして1杯分となる量でパック詰めすることは周知なので、刊行物1記載の熱湯等を注いで飲用に供する粉末飲料である昆布茶を、パック詰めすることは当業者において極めて容易になし得る程度のことである旨認定し、
訂正考案は、このようなパック詰めとすることによって、上記刊行物1及び周知のことから予期し得ない格別の効果を奏するものとも認められず、さらに、訂正考案は、上記相違点(イ)及び(ロ)を組み合わせることによって、格別顕著な効果を奏するものとも認められないと認定しているが、誤りである。
訂正考案は、「字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにした」ことを特徴とするものであり、この構成を採用したことにより、「パックを開いて茶碗などの容器に入れて熱湯を注ぐだけで味覚用原料及び字模様昆布片から味が抽出して味の良い飲み物とすることができるものであり、しかも、あらかじめ液体の昆布茶を作ってその中に字模様昆布片を入れるような手間を掛けることなく、パックを開いて茶碗などの容器に入れて熱湯を注ぐだけで簡単かつ手早く字模様昆布片入りの昆布茶が出来上がり、また、パック詰めすることにより、味覚原料に含まれる塩分によって字模様昆布片の保存性が良好となる」という作用効果を奏する。
そして、訂正考案は「字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにして有機一体的に結合する」ものである。
これに対して、刊行物1には、昆布細片を昆布粉に混入したものをいかなる態様にて提供するかについて何ら記載もされていなければ、示唆すらもない。
また、刊行物2には、訂正考案の「字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにした」構成は存在しない。
さらに、刊行物4、5及び審判甲第4号証には、いずれも粉末状の飲用物をパック詰めにするという技術的思想が記載されているだけであって、「粉状、顆粒状、
塊状等の味覚用原料と字模様昆布片とを一緒にパック詰めにして有機一体的に結合する」という訂正考案の技術的思想については何ら開示されていない。
このように、訂正考案は、刊行物1、2、4及び5並びに審判甲第4号証には存在しない「字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにした」構成を必須構成用件として具備しており、その効果も格別の効果であるから、刊行物1、2、4及び5並びに審判甲第4号証に記載の考案から極めて容易に想到し得るものではない。
仮にこれら刊行物に記載の考案を組み合わせることができたとしても、せいぜい昆布片と味覚用原料とをおのおの別にパック詰めして成る考案に想到するにすぎず、当業者といえども、訂正考案を想起することは到底なし得るものではない。
(2) 被告は、原告の「パック詰めすることにより、味覚原料に含まれる塩分によって字模様昆布片の保存性が良好となる」という作用効果の主張は、訂正考案の構成に基づかない主張である旨主張する。
しかし、訂正考案の味覚原料に塩分が含まれるのは当業者にとって自明のことであり、審決も、訂正考案における「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」とは、その訂正明細書には「例えば粉状または顆粒状の昆布粉が使用される。この昆布粉にはグルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、あるいはグアニル酸ナトリウムなどの化学調味料、食塩、砂糖等、あるいはその他のものが適宜量添加してある。」と記載されている(訂正明細書2頁24〜27行)と認めている。
たとえ明細書に明記されていない効果であっても、考案の目的、構成に関する記載から当業者がその効果を推論できるときは、意見書等におけるその効果に関する主張・立証を参酌することができる。
「パック詰め」の構成自体は周知・慣用技術であるが、この周知・慣用技術を昆布茶の技術分野に採用することにより、刊行物1、2、4及び5並びに審判甲第4号証に記載の考案からは予想だにできない上記作用効果が奏される。
審決取消事由に対する被告の反論
1 取消事由1について 「昆布茶」とは「液体の昆布茶」ばかりか「昆布を含む乾燥材料の混合物」をも意味する。刊行物2の発明が特許出願された昭和62年当時には、特許・実用新案の世界で「昆布茶」と言えば、液状のお茶を指すよりも、むしろ乾燥食品としての昆布茶を主として指すに至っていた。したがって、刊行物2の「昆布茶」を「液体の昆布茶」に限定するいわれはなく、刊行物2において「字模様昆布片と味覚原料とを混ぜたもの」が開示されていることは明らかである。
2 取消事由2について (1) パック詰めの中味である乾燥食品としての「昆布茶」については、次のような改良段階を経てきている。
a)「昆布の粉そのもの」(「原始的昆布茶」とでも呼ぶとする) ↓b)「昆布粉+昆布細片」(刊行物1) 又は 「粉末状又は顆粒状の昆布+0.5mm以下の肉厚の昆布スライス」(刊行物3) ↓c)「粉状、顆粒状、塊状等の味覚用原料+字模様昆布片」(本件の訂正前考案) このような改良段階を得てきたという経緯から、訂正考案におけるパック詰めの中味は前記「原始的昆布茶」の延長線上の技術ということができる。そして、刊行物4及び5並びに審判甲第4号証によれば、少なくとも原始的昆布茶及びそれに類する乾燥食品の分野では、パック詰めによる包装は当然のこととして行われてきていたことが明らかである。
それゆえ、パック詰めの中味である昆布茶の形態が改良されたとしても、その中味が乾燥食品の域を逸脱しないものである限り、従来から慣行的に行われてきたパック詰めによる包装形態を改良された昆布茶に採用することは、当然に思い付くことである。
すなわち、刊行物4,5及び審判甲第4号証には、パック詰めの中味として、粉末でない原料を入れる点の開示がないという理由だけでは、訂正考案の構成が容易に導けないとすることはできない。
また、刊行物4には、密封包装の中味として、粉状の抹茶と、煎茶の破砕片との混合物(登録請求の範囲参照)が記載されており、粉末状以外のものも粉末状のものと一緒にパック詰めされる点が開示されているのであり、「水や湯に溶かして飲物とする粉末状等を呈する食品をパック詰めにすることは周知である」ことは明らかといえる。
したがって、刊行物1、2と同4、5及び審判甲第4号証によれば訂正考案容易に想到することができるものである。
(2) 原告は、「パック詰めすることにより、味覚原料に含まれる塩分によって字模様昆布片の保存性が良好になる」という追加的主張をし、その主張の前提として、味覚原料には塩分が含まれることは当業者にとって自明なことである旨主張する。
しかしながら、この主張は、登録請求の範囲に記載された考案の要旨の認定方法を恣意的に曲解するものである。すなわち、訂正明細書2頁24〜27行の記載は、実施例についての説明であり、その実施例での「味覚用原料2」の具体例を単に例示するにすぎず、登録請求の範囲に記載された「味覚用原料」が常に食塩(塩分)を含むことを確定的に定義する記載ではない。
登録請求の範囲には、「味覚用原料」が必ず食塩(塩分)を含むものである旨の限定はないため、食塩(塩分)を全く含まない場合も登録考案技術的範囲に含める趣旨で、単に味覚用原料の形態のみを特定して、「粉状、顆粒状、塊状等の味を出すための味覚用原料」と表現されているものと解すべきである。
(3) 味覚用原料に塩分が含まれると仮定しても、刊行物1の右欄7行ないし10行には、「昆布粉(味覚用原料に相当)には…呈味物質、塩及び…が適宜量添加されている」ことが示されており、「パック詰めすることにより、味覚原料に含まれる塩分によって字模様昆布片の保存性が良好になる」という原告の追加的主張は、
独立特許性を肯定するものではない。
また、審判甲第4号証には、青じその葉や実に塩分を浸透させて乾燥させたものを粉末状にすることが開示されており(1頁2欄10行ないし18行)、これが塩分を含む「味覚用原料」に相当することは明らかである。そして、審判甲第4号証の2頁4欄4行目にパック包装云々の記載がある。
よって、乾燥昆布茶の分野において、塩分を含む原料をパック詰めすることは、
周知の手法であることは明らかである。そして、食品に塩を入れれば、入れない場合よりも保存性がよくなる云々の効果は、もとより、生活の知恵として太古より知られているところである。このように、「塩」による保存効果は予期せぬ効果ではない。
当裁判所の判断
1 甲第3、第4号証(本件訂正請求書及び全文訂正明細書)によれば、本件考案の技術的課題及び作用効果等について、次のとおり認めることができる。
(1) 本件考案は、湯に注いで飲用に供する昆布茶に関するものである。
(2) 従来から、種々の昆布茶が知られているが、これらの昆布茶は、昆布粉のみ、あるいは昆布粉に乾燥梅干しの果肉片やしその葉片等を混入したものであった。すなわち、いずれも味を楽しむだけのものであった。
(3) 本考案の目的は、味覚だけでなく視覚的にも楽しむことができ、しかも、字模様昆布片の歯ごたえも楽しむことができる昆布茶を提供することにある。
(4) 本件考案は、その構成を採用することにより、パックを開いて茶碗等の容器に入れて、熱湯を注ぐことにより味覚用原料から味が抽出し、字模様昆布片からも味が抽出し、さらに、字模様昆布片が熱湯により膨潤して原藻昆布から型抜きして得た状態に復元されて字模様を現出し、視覚的にも復元された字模様を見ながら飲用できるようになった。そして、字模様昆布片の歯ごたえも楽しむことができるようになった。
(5) 本考案にあっては、味、視覚、歯ごたえのある新規な昆布茶を提供することができ、しかも、字模様昆布茶を味覚用原料とをパック詰めにして成るので、あらかじめ昆布茶を作ってその中に字模様昆布片を入れるような手間を掛けることなく、パックを開いて茶碗等の容器に入れて熱湯を注ぐだけで簡単かつ手早く字模様昆布片入りの昆布茶が出来上がる。
2 原告は、訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点(イ)について審決がした判断を争うので、検討する。
(1) 原告は、刊行物2の記載は単に茶碗等の容器に入れた昆布茶(液体の昆布茶)の中に当該模様出汁昆布を浮かべることを示唆するにすぎず、昆布細片を昆布粉に混入したものをいかなる態様で提供するかについて、何ら記載していないし、
示唆するものでもない旨主張する。
(2) しかしながら、「昆布茶」とは「液体の昆布茶」のほか、「昆布を含む乾燥材料の混合物」をも意味するものであることは、技術常識であると認められる。
すなわち、甲第5号証(刊行物1)の登録請求の範囲の記載によれば、刊行物1に記載の考案の出願時である昭和53年当時から、「乾燥した昆布を茶葉や茶茎に似せて繊切りしてできる昆布細片を昆布粉に混入して成る」ものを「昆布茶」と呼称していたことが認められる(なお、刊行物1に記載の考案考案者及び出願人は、原告代表者の松田良夫である。)。この事実に、甲第7号証(刊行物3)からも認められるように、昭和58年の特許出願である刊行物3に記載の発明の明細書にも、昆布茶は粉末であることが当然のこととして記載されていることを合わせると、刊行物2(甲第6号証)の発明が特許出願された昭和62年当時には、特許、
実用新案の分野で「昆布茶」といえば、液状のお茶を指すよりも、むしろ乾燥食品としての昆布茶を主として指すに至っていたものと認めることができる。
(3) したがって、刊行物2に記載の「昆布茶」をもって「液体の昆布茶」に限定することはできず、刊行物2において「字模様昆布片と味覚原料とを混ぜたもの」が開示されていることは明らかである。原告の取消事由1における主張は、刊行物2には、昆布細片を昆布粉に混入したものをいかなる態様で提供するかについて、
何ら記載がないし示唆もないことを前提とするものであるが、上記判断に照らせば、原告主張のこの前提は理由がなく、相違点(イ)についてした審決の判断に誤りは認められない。
3 訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点(ロ)についてした審決の判断が誤りであるとする取消事由2について判断する。
(1) まず、甲第5号証(刊行物1)及び甲第7号証(刊行物3)によれば、パック詰めの中味である乾燥食品としての「昆布茶」については、被告が主張するように、次のような改良段階を経てきているものと認められる。
a)「昆布の粉そのもの」 ↓b)「昆布粉+昆布細片」(甲第5号証・刊行物1) 又は 「粉末状又は顆粒状の昆布+0.5mm以下の肉厚の昆布スライス」(甲第7号証・刊行物3) ↓c)「粉状、顆粒状、塊状等の味覚用原料+字模様昆布片」(本件訂正前考案) このような改良経緯からすると、訂正考案におけるパック詰めの中味は、a)の「昆布の粉そのもの」の延長線上の技術ということができる。
(2) そして、以下にみるところによれば、パック詰めすることは、乾燥茶の分野において、本件出願当時既に周知・慣用の技術であったことが認められる。
まず、甲第10号証(審判甲第4号証)によれば、審判甲第4号証に記載の発明は、使用直前に温湯に溶かして飲用する緑茶入り梅昆布茶の製法に関するものであるが、その2頁4欄2行ないし5行には「・・・包装に便利であるから1杯分をパックに包装したり・・・することが出来る。」との記載があることが認められ、梅昆布茶をパックにするという包装形態が示されている。
また、甲第8号証(刊行物4)によれば、刊行物4に記載の考案は、抹茶と煎茶の混合物を不活性ガス中に密閉包装した粉末緑茶に関するものであるが、その第1図には混合粉末緑茶3をアルミ箔包装体5内に密封することが図示されていることが認められる。
原告は、本件訂正考案は「字模様昆布片と味覚用原料とをパック詰めにして『有機一体的に結合する』という技術的思想によるもの」であると主張するが、「パック詰め」なる構成は、上記認定事実によれば、本件考案の出願時において、上記のように乾燥昆布茶の分野における周知・慣用の技術であったと認められ、「パック詰めにより手間が省ける」なる効果は、その周知・慣用の技術から当然に予期することができる程度の周知の効果であると認められる。したがって、原告の上記主張に係る本件訂正考案の技術的思想も、周知・慣用の技術から当然に予期し得る範囲のものにすぎず、格別のものとは認められない。
(3) 以上のとおり、少なくとも原始的昆布茶及びそれに類する乾燥食品の分野では、パック詰めによる包装は当然のこととして行われてきていたものであり、中味が乾燥食品の域を逸脱しないものであれば、従来から慣行的に行われてきたパック詰めによる包装形態を改良された昆布茶に採用することは、当然に思い付くことであったと認められる。
(4) 原告は、パック詰めすることにより、味覚原料に含まれる塩分によって字模様昆布片の保存性が良好になると主張する。
確かに、本件訂正考案の味覚原料に塩分が含まれるのは当業者にとっては自明なことであると認められるが、乾燥昆布茶の分野において、塩分を含む原料をパック詰めすることが周知の手法であることは、上記のとおりである。そして、食品に塩を入れれば、入れない場合よりも保存性がよくなるとの効果は、人類の歴史において古くから知られてきたことは明らかであり、塩による保存効果は予期せぬ効果ではないというべきである。
(5) したがって、相違点(ロ)に関する審決の判断にも、原告主張の誤りは認められない。
結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成11年11月2日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
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