• この表をプリントする
  • ポートフォリオ機能


追加

関連ワード 技術的範囲 /  出願経過 /  均等 /  考案 /  図面 /  構造 /  組合せ /  補正 /  新規性(3条1項) /  拒絶理由 /  実施例 /  公知技術 /  明細書 /  請求の範囲 / 
元本PDF 裁判所収録の全文PDFを見る pdf
事件 昭和 45年 (ワ) 359号
裁判所のデータが存在しません。
裁判所 名古屋地方裁判所
判決言渡日 1981/03/02
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の被告らに対する請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
申立
(原告)一 被告【A】は別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを使用してはならない。
二 被告株式会社サンスイは別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ベツトを製造販売及び使用してはならない。
三 被告株式会社サンスイは原告に対し、その製造にかかる前項記載の物件を廃棄せよ。
四 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決ならびに第三項につき仮執行の宣言。
(被告ら)主文同旨の判決。
主張
(原告)請求原因一 原告は次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。
登録番号 第一一二〇四八七号 考案の名称 水耕栽培用のベツト 出願日 昭和四五年九月三〇日 出願公告日 昭和四九年六月二一日 登録日 昭和五一年三月九日実用新案登録請求の範囲の記載(別紙「実用新案公報」参照) 「正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合せ、前記基体1の内側をビニールシーツで掩い、これに発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉して成る水耕栽培用ベツト」二 本件考案の構成要件は次のとおりである。
(1) 正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること。
(2) 基体1の内側をビニールシーツで掩つたものであること。
(3) 基体1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること。
三 本件考案の目的及び作用効果は次のとおりである。
従来の水耕栽培用のベツトはコンクリートあるいはプラスチツクを成形したものであるが、前者は重くて運搬取扱いが困難で、作業中、作業者が転倒した場合危険であるし、後者は軽いが成形費が高く、経済的でないなどの欠点がある。
本件考案は軽くて、断熱性の強い発泡スチロールでベツト及び覆蓋を成形したものであるから、施工が容易で安価多量に製造でき、農作業者の負傷の危険性は全くなく、ベツトを次々と並べてベツトの内側にビニールシーツを敷くので、水漏れを防ぎ、またビニールシーツの外周縁でベツトの基体内側の上段に当嵌された覆蓋の周縁を掩被密閉するために、細菌の侵襲を防ぐ効果がある。
四 被告株式会社サンスイは別紙イ号図面及び説明書記載の水耕栽培用ぺツト(以下「イ号物件」という。)を製造販売及び使用し、被告【A】はイ号物件を使用し、業としてみつばの栽培を行つている。
五 本件考案とイ号物件とを対比するに、イ号物件が本件考案の前記構成要件をすべて充足しており、イ号物件が本件考案技術的範囲に属することは明らかである。
なお、本件考案の構成要件(1)において、基体1の内側上方には単に「段2を設け」ることとされているが、本件実用新案公報中に記載されている実施例図面において、右「段」は二段の階段状となつている。
ところで、この「段」は基体1に覆蓋5を当嵌してビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するものであれば足り、別紙図面(イ)、(ロ)に図示するような一段のものも含まれることは明らかである。
また、本件考案の構成要件(3)において、「ベツドに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したこと」とされているが、本件考案においては、
前記「段」とビニールシーツと覆蓋との間には特別な緊締手段はないので、細菌の侵入する隙間は当然存在し、細菌侵入の阻止は不可能である。従つて、ビニールシーツと覆蓋の外縁との間に特別な緊締手段が構成要件とされていない限り、ビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するということは、細菌の大きさと対比して勘案すると、イ号物件のようにビニールシーツの周縁と覆蓋の外縁との間隙を若干設けたとしても、その間隙の大小は、細菌侵入阻止効果としては程度の差であり、設計上の微差にすぎない。
結局、イ号物件が覆蓋と内装ビニールシーツを備えている以上、その間隙の大小は作用効果として程度の差にすぎないのであつて、この点は、イ号物件は本件考案均等というべきである。
六 よつて、原告は被告らに対し、申立掲記の裁判を求める。
(被告ら)請求原因に対する認否 請求原因一、二、四の事実は認める。
同三、五の主張は争う。
被告らの主張一 本件考案の構成要件のうち、(イ)基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用したものであること、(ロ)基体を次々と継ぎ合わせたものであること、(ハ)基体の内側をビニールシーツで掩つたものであることは、以下述べるとおり本件考案出願当時公知の技術であつた。
(イ) 基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用したものであること 実公昭四〇-八二七号公報(乙第一二号証の一)には、栽培時の断熱保温効を達成するため、箱体及び箱がフオームポリスチレンにより成形された温床箱が、実公昭四〇-八三〇号公報(乙第一二号証の二)には、頗る軽量で取扱い易いものとして、鉢体及び蓋がポリスチレン粒子(発泡スチロール)で成形された水耕栽培鉢が、特公昭四四-二二四五九号公報(乙第一二号証の三)には、従前のセメント製栽培用器に伴なう不利益を解消し、断熱、保温効の向上に対処するものとして、水耕用器がポリスチレン発泡体より成形された蔬菜その他の水耕栽培装置が、特公昭四四-二五〇九六号公報(乙第一二号証の四)には、従前の木製、セメント製栽培用器の不利益を解消するものとして、水耕栽培用器を独立気泡の発泡体で構成する蔬菜その他の水耕栽培装置が、特公昭四五-五四一七号公報(乙第一二号証の五)には、従来のセメント製容器が有していた製作費が高く、重量が重いため設置にも多大の費用を要する難点を除去するためのものとして、独立気泡を有するポリスチレンなどの発泡体より成形された蔬菜類の水耕用器が、それぞれ開示されていること及び昭和四三年一一月一〇日株式会社誠文堂新光社発行の「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」の記載からしても、基体及び覆蓋に発泡スチロールを使用することが公知の技術であつたことは明らかである。
(ロ) 基体を次々と継ぎ合わせたものであること 昭和四〇年四月一〇日農業図書株式会社発行の「礫耕園芸」(乙第七号証の四)の二二頁には、ストレートベツトを並べて連結するようにした栽培用ベツトが記載されていること、実公昭三九-九七〇六号公報(乙第一一号証の一)には、従前の槽状縦長のコンクリートフレームまたは木製基体に代えて硬質合成樹脂製の基体を継ぎ板で長手方向に自在とし栽培装置を拡大できるものとして、礫耕栽培装置におけるフレームが、実公昭三九-三六九三三号公報(乙第一一号証の二)には礫耕栽培器の継目部を金具で係合させて連設する継目装置が、特公昭四〇-二五二〇五号公報(乙第一一号証の三)には、コンクリート製のU字溝を所有個数組み合わせることにより長大なベツトを得ることが可能であるとする礫耕トラフが、それぞれ開示されていることからして、基本を次々と継ぎ合わせることも本件考案出願当時公知の技術であつたことは明らかである。
しかも、本件考案において、「基体を次々と継ぎ合わせる」といつても、基体を継ぎ合わせる技術については何ら示唆するところはなく、単に基体を並べ置くという程度のものにすぎないのであるから、そもそも右の点は考案という技術思想の範疇にも入らないものである。
(ハ) 基体の内側をビニールシーツで掩つたものであること 基体の底部等内側にビニールシーツを敷設することが公知の技術であることは、
前記「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」の記載からも明らかである。
二 ところで、本件考案の出願当初において、原告は、本件登録請求の範囲につき、「水耕栽培用のベツトを発泡スチロールより正面背面の内側上方に段2を付けたる基体1を成型し、これに発泡スチロールの中央部に適宜の間隙を置きて栽培用の鉢入れ欠缺穴3を穿ち、その前後下端に袖縁4付掩い蓋を当嵌するようにして成る水耕栽培用の水槽ベツト」としていたのであるが、昭和四八年六月二七日前記「農耕と園芸別冊施設園芸資材ガイド」なる刊行物の存在を理由として、拒絶理由通知を受けた。
そこで、原告は、同年九月一二日意見書に代わる手続補正書を提出して、明細書の全文を補正し、本件登録請求の範囲を「正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を成形し、これに発泡スチロールの中央部に適宜の間隙を置きて水耕用の鉢入れ欠缺穴3を穿ちたる覆蓋の前後下端に袖縁4を設けた覆蓋5を当嵌して成る水耕栽培用のベツト」とした。
さらに、原告は、同年一二月一八日付で手続補正書を提出し、本件登録請求の範囲を本件実用新案公報記載のとおり補正し、公告されに至つたものである。
三 本件考案の構成要件のうち、前一項(イ)、(ロ)、(ハ)の各要件が出願前公知の技術であつたこと及び前項記載の出願経過によれば、本件考案における必須の構成要件は、(イ)発泡スチロールの基体正面背面の内側上方に段2を設け、
(ロ)発泡スチロールの覆蓋5を右段部に当嵌し(実施例図面第五図では基体に設けた段2に対応して蓋の左右下端に袖縁が設けられている)、(ハ)このようにすることによつて、基体に内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉するという点に存するものというべきである。
このことは登録異議の決定において、右のような段部の形成、ビニールシーツの内装、覆蓋の当嵌という密閉構造の故に「細菌の侵蝕を防ぐという明細書記載の効果がある」ことを殆ど唯一の理由として登録が認められている経過に照らしても明らかである。
四 これに対し、イ号物件は、本件考案における必須の構成要件である、基体に段部を形成し、これに蓋を当嵌し、内装したビニールシーツで密閉するという構造を有していないのであるから、イ号物件が本件考案技術的範囲に属しないことは明らかである。
五 原告は、本件考案における、基体の段部の形成及び密閉構造の点はさしたる作用効果を有するものではなく、イ号物件と本件考案均等である旨主張する。
しかしながら、本件考案のうち、「覆蓋を基体に当嵌する」ということは、基体に段部を形成しているからこそ可能なのであり、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものはいずれも「当嵌」には当たらない。そして、密閉構造の点も、基体に段部を形成しているからこそ可能であると考えられるのである。
なお、本件実用新案公報の図面の簡単な説明及び考案の詳細な説明中に、本件考案実施例として、覆蓋は両端下端に袖縁を設けたものであつて、基体に設けた段部に右覆蓋の袖縁を「嵌着」すると記載されているが、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものが、「嵌着」に当たらないことも明らかである。
さらに、前述したとおり、原告は、本件考案の出願当初において、密閉構造なる点は登録請求の範囲に示していなかつたのであるが、後に密閉構造による細菌の侵入防止という作用効果を加え、本件考案のとおりの登録請求の範囲に変更したのである。
従つて、右事実を無視して、密閉構造による作用効果はとるに足らないものである旨主張することは、自己の権利を自ら否定するものであり、本件考案の権利範囲を拡大解釈することになるのであつて、到底許されない。
イ号物件は、基体にビニールシーツを敷設し、蓋をかぶせるという点は、別紙図面(ロ)に図示されているものに近いが、蓋は右図面(ロ)のように浮いている状態ではなく、基体底部に設けられた畝部に乗架する状態となつている。
従つて、イ号物件においては密閉構造とはなつていないのであつて、このことは、基体横部に凹部(切欠部)を設けていることからも明らかである。
以上の次第で、原告の前記主張は理由がない。
六 その他、イ号物件は、本件考案とは異なつた次のような作用効果を有している。
1 蓋を基体畝部で多点支持するので、基体両側上縁で支持するのに比して、外力により蓋が折れたりすることがなく丈夫である。
2 基体底部に畝部を設けたことにより畝ごとに培養液が独立して流れることとなるので、(イ)液量が少量ですむ、(ロ)液の入れ代りがよい、(ハ)病気感染の場合早期発見して、独立した畝部分のみの被害で防止することができる。などの効果がある。
3 基体横部に設けた各凹部(切欠部)はトマト等果菜類について、この切欠部を利用して両外側から茎を入れ、内部で根付かせて栽培することができる。
(原告)被告らの主張に対する反論一 特許侵害訴訟における侵害成否の判断の基礎となる当該権利の技術的範囲の解釈にあたつては、当該考案の構成要件中新規性を有する(未公知)部分を必須的構成要件となし、新規性のない(公知)部分は付随的構成要件としてとらえるべきである。
ところで、本件考案の構成要件のうち、「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせる」という部分は、本件考案出願前には公知例は存在せず、右構成は原告においてはじめて考案、開示されたものであり、新規性を有するから、これを必須的構成要件と考うべきである。このことはその作用効果に徴しても明らかである。
即ち、明細書に、「容易に安価に多量に生産が出来、又作業者が施工は勿論、農作業中に於いてもベツト、覆蓋に、ころびて体を打ちつけて負傷する等の危険は全くなく安心して作業できる効果がある」とあり、また「運搬取扱いに軽くて、また施工が容易でベツトを次々と継ぎならべて……………」と記載されているように、
随時随所において単に基体を継ぎ合わせるだけで簡単に必要な大きさの水耕槽を製作することができ、本件考案の要部は、まさにこの点に存する。
そして、イ号物件は、「発泡スチロールの基体を継ぎ合わせる」構造を具有しているのであるから、本件考案技術的範囲に属することは明らかである。
被告は、本件考案の必須要件は密閉構造の点に存する旨主張する。
しかし、右密閉構造の構成要件については、本件登録請求の範囲の記載によれば、「段2」という手段が記載されているが、それがいかなる手段、態様により密閉させるかの具体的な構造については何らの記載がない。このことは、公知の蓋付の箱と比べて相違するような特異の構成でないことを意味するから、右密閉構造の点は、公知技術に属し、必須的構成要件とは認められず、付随的構成要件というべきであり、イ号物件が、これを有しなくとも、本件考案均等というべきである。
また、イ号物件が袖縁4を欠くことも設計上の微差にすぎない。
二 なお、被告らは、本件考案の登録異議の決定において、右密閉構造の故に「細菌の侵蝕を防ぐという明細書記載の効果がある」ことを理由にして登録が認められていることから、右構造が本件考案の必須的構成要件である旨主張する。
しかしながら、登録異議決定の理由は、あくまでも異議申立人の提示した公知文献の適否に対する判断という面においてのみ意味があるものであつて、当該考案における各構成要件相互の重要性の比較についてまで判断をしているわけではないから、被告らの右主張は理由がない。
証拠(省略)
理 由一 原告が本件実用新案権を有していること、本件考案の構成要件が次のとおりであることは当事者間に争いがない。
(1) 正面背面の内側上方に段2を設けた発泡スチロールの基体1を次々と継き合わせたものであること。
(2) 基体1の内側をビニールシーツで掩つたものであること。
(3) 基体1に発泡スチロールの覆蓋5を当嵌し、ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉したものであること。
そして、本件考案の目的及び作用効果について、本件実用新案公報(成立に争いのない甲第一号証)の「考案の詳細な説明」の項には、「この考案は、水耕栽培に用いるベツトに於ける基体並に覆蓋の改良に関する。」(第一段二〇、二一行目)、「この考案は、軽くて断熱性の強い発泡スチロールの基体の正面背面内側の上方に段を設けた基体を形成し、これに発泡スチロールの覆蓋の中央部に適宜の間隔を置きて水耕用の鉢入穿設孔を設けて水耕栽培用のベツトとしたものである。」(第一段二九行目から三三行目まで)、「水耕用のベツト及び覆蓋を発泡スチロールで成形したものであるから、運搬取扱いに軽くて、又施工が容易で、ベツトを次々と継ぎならべてベツトの内側にビニールシーツを敷き、水漏れを防ぎ、ベツトの基体の内側の上段にまで覆蓋の袖縁掩被当嵌し、ビニールシーツの外周縁で覆蓋の周縁を掩被して水耕すれば、ベツト及び覆蓋共に発泡スチロールであるから軽くて、また、ビニールシーツで掩被密閉するために、細菌の侵蝕を防ぎ、製作においても発泡スチロールを成形して成るものであるから、容易に安価に多量に生産が出来、又作業者が施工は勿論、農作業中に於いてもベツト、覆蓋に、ころびて体を打ちつけて負傷をする等の危険性は全くなく、安心して作業が出来る効果がある。」(第二段目一〇行目から二四行目まで)旨記載されていることが認められる。
二 被告株式会社サンスイがイ号物件を製造販売及び使用し、被告【A】がイ号物件を使用し、業としてみつばの栽培を行つていることは当事者間に争いがない。
三 そこで、本件考案とイ号物件を対比するに、イ号物件が本件考案の構成要件(1)のうち「発泡スチロールの基体1を次々と継ぎ合わせたものであること」なる部分及び構成要件(2)を具備することは明らかであるが、構成要件(1)のうち「基体の正面背面の内側上方に段2を設けた」との部分及び構成要件(3)を具備していない。即ち、イ号物件においては、基体1の正面背面の内側上方の「段」は、存在せず(別紙イ号説明書によれば、別紙イ号図面中2は「基体上部の段部」と表示されているが、右2は正確には「基体上端部」と表示されるべきものであつて、「段部」を形成しているものではない。)、覆蓋5は基体の底部に設けられた突出部に乗架している状態であつて、基体に当嵌していない。また、基体に内装したビニールシーツの周縁は、基体の上端部に引掛けたうえ、該上端部の外側に垂下していて、ビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉する構造とはなつていない。
ところで、原告は、本件考案における「段2」は、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものも含み、また本件登録請求の範囲の記載上密閉構造の点については、
その具体的手段、態様について明らかとはなされていず、細菌の侵襲阻止という効果においても、本件考案とイ号物件において特段の差異は存しないのであるから、
イ号物件の構造は設計上の微差にすぎない旨主張する。
しかしながら、本件考案において、「段2」は基体の正面背面の内側上方に設けられているところ、別紙図面(イ)、(ロ)に図示されるものやイ号物件においては、基体の正面背面の内側上方に「段」は全く設けられていないのであるから、イ号物件が本件考案における「段」を具備していないことは明らかである。
次に、本件登録請求の範囲の記載だけでは、構成要件(3)にいう掩被密閉の具体的手段は明らかではないから、前掲甲第一号証中明細書考案の詳細な説明の項及び図面の記載を参酌すると、その具体的手段は、袖縁4の付いた覆蓋5を基体内側上方の段2に当嵌させることにあることが認められるところ、イ号物件においては、前記のとおり、基体の内側上方に段はなく、覆蓋は基体の底部に設けられた突出部に乗架せしめられているにすぎず、掩被密閉の具体的手段を欠いていることは明らかであり、単なる設計上の微差にすぎないものと認めることは到底できない。
さらに、原告は、本件考案の構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせたものであること」という部分が必須的要件であり、構成要件(3)の密閉構造の点は付随的要件にすぎないから、イ号物件が構成要件(1)を具備する限り、構成要件(3)の密閉構造を欠いていても、本件考案均等である趣旨の主張をする。
しかしながら、前一項に認定のとおり、本件実用新案公報の考案の詳細な説明の項には、「ベツトに内装したビニールシーツの周縁で覆蓋の外縁を掩被密閉することによつて細菌の侵蝕を防ぐ効果がある」旨の記載がなされていることからすれば、右構成要件(3)は細菌の侵蝕の防止という課題の解決を図るためのものとして、本件考案の必須的構成要件を形成し、付随的構成要件にすぎないものとは認め難い。
のみならず、実公昭四〇-八二七号公報(成立に争いのない乙第一二号証の一、
第一四号証の二)には、植物栽培時の断熱保温効を達成するため、箱体、蓋などがフオームポリスチレンにより成形された温床箱が開示されていること、実公昭四〇-八三〇号公報(成立に争いのない乙第一二号証の二、第一四号証の三)には、鉢体と蓋が発泡融着したポリスチレン粒子よりなる植物水耕栽培鉢が開示されていること、特公昭四四-二二四五九号公報(成立に争いのない乙第七号証の七、第一二号証の三、第一四号証の四)には、従前のセメント製栽培用器に伴なう不利益を解消し、断熱、保温効の向上に対処するものとして水耕用器をポリスチレン発泡体により成形した蔬菜その他の水耕栽培装置が開示されていること、特公昭四四-二五〇九六号公報(成立に争いのない乙第七号証の六、第一二号証の四、第一四号証の五)には、容器を独立気泡の発泡体で構成する蔬菜その他の水耕採培装置が開示されていること、特公昭四五-五四一七号公報(成立に争いのない乙第一二号証の五、第一四号証の六)には、水耕容器が独立気泡をもつて構成するポリスチレン発泡体より成形された蔬菜類の水耕用器が開示されていること、実公昭三九-九七〇六号公報(乙第一一号証の一、第一四号証の一一)には、従来の槽状縦長のコンクリートフレームまたは木製フレームの代りに硬質合成樹脂製の幅広戸樋状のフレームを用い、継ぎ板で長手方向に自在に栽培装置を拡大できる礫耕栽培装置におけるフレームが開示されていること、実公昭三九-三六九三三号公報(成立に争いのない乙第一一号証の二、第一四号証の一二)には、継目部を接合防水材や金具で係合させた礫耕栽培器の継目装置が開示されていること、特公昭四〇-二五二〇五号公報(成立に争いのない乙第一一号証の三、第一四号証の一三)には、コンクリート製のU字溝を組合せることにより長大なベツトを得ることが可能であるとする礫耕トラフが開示されていること、昭和三九年九月一日株式会社養賢堂発行の「農業及園芸」第三九巻第九号(成立に争いのない乙第一四号証の七)、昭和四〇年十ニ月一日同社発行の「農業および園芸」第四〇巻第一ニ号(成立に争いのない乙第一四号証の八)及び昭和四三年一一月一〇日株式会社誠文堂新光社発行の「施設園芸資材ガイド」の九七ないし一〇〇頁(成立に争いのない乙第七号証の五、第一四号証の一〇)には、発泡スチロールよりなる覆蓋をした水耕栽培装置が示されていること、昭和四〇年四月一〇日農業図書株式会社発行の「礫耕園芸」(成立に争いのない乙第七号証の四、第一四号証の九)の二一、二二頁には、U字型をした成形スレートベツトを並べて連結するようにした栽培用ベツトが記載されているほか、同一一三、一一四頁には、板材などをもつて組立てた長いベツトの内側にポリシート(合成樹脂シート)を内装して発泡スチロール板よりなる蓋をした液耕ベツトが記載されていること、以上の事実が認められ、右事実によれば、本件考案中構成要件(1)の「発泡スチロールの基体を次々と継ぎ合わせる」という部分は、本件考案出願当時公知の技術であつたものと認めるのが相当であつて、構成要件(1)の右部分が新規性を有し、かつ必須的構成要件を形成していると認めることは困難である。
そして、以上に説示したところを総合すると、本件考案の必須的構成要件(いわゆる要部)は、むしろ構成要件(3)であると認められ(このことは、成立に争いのない乙第二号証ないし第四号証、第六号証、第七号証の一により認められる原告が本件考案につき、特許庁から拒絶理由通知を受け、被告ら主張のとおりの補正をなした経過事実からも明らかである。)、イ号物件が右要件を欠いていることは前記のとおりである。
してみると、本件考案の構成要件(1)のうち「基体の内側上方に段を設けた」との部分及び構成要件(3)を充足しないイ号物件は、本件考案技術的範囲に属しないことは明らかであり、均等論を適用する余地は存しないものというべきである。
右と同旨の見解に立つ成立に争いない乙第一五号証(鑑定書)の記載は正当と解される。
以上の説示に反する甲第二号証の記載部分及び原告本人尋問の結果部分はたやすく信用し難く、他に右認定を左右するに足りる証拠は存しない。
よつて、原告の前記主張はいずれも理由がない。
四 以上のとおり、イ号物件は本件考案技術的範囲に属しないのであるから、イ号物件が本件考案技術的範囲に属することを前提とする原告の被告らに対する本訴請求はいずれも理由がなく、棄却を免れない。
よつて、訴訟費用の負担について、民事訴訟法89条を適用して主文のとおり判決する。
別紙図面<88410-001>イ号説明書名称 水耕栽培装置図面の簡単な説明第1図は本装置の断面斜視図、第2図は本装置基体の接続部の部分拡大斜視図である。
構造の説明1は発泡スチロールの基体、
2は基体上部の段部、3は覆蓋5の穴で水耕用苗または苗鉢を設置するもの。4は基体1の底部に設けた突出部、6はビニールシーツ、7は基体1をつぎつぎとつぎ合せるための組合枠である。8は基体側壁上部に設けた凹部。
<88410-002><88410-003><88410-004><88410-005>
  • この表をプリントする