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関連審決 審判1998-35409
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  進歩性(3条2項) /  請求項 /  容易に想到 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 187号 審決取消請求事件
原告 日本コパック株式会社代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 杉浦 宏
被告 有限会社サンコ代表者取締役 【B】
訴訟代理人弁護士 中根秀夫、中根秀樹、弁理士 【C】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/03/16
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成10年審判第35409号事件について平成11年3月25日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 被告は、考案の名称を「被服用ハンガー」とする登録第2577654号実用新案(平成3年4月9日実用新案登録出願、平成10年5月15日実用新案登録。本件考案)の実用新案権者であるが、原告は、平成10年9月1日、本件考案について無効審判の請求をし、平成10年審判第35409号事件として審理されたが、
平成11年3月25日、本件審判の請求は成り立たないとの審決があり、その謄本は同年5月25日原告に送達された。
2 本件考案の要旨(別紙本件考案図面参照) 【請求項1】 中央部にフック5を有するハンガー本体2と、このハンガー本体の水平部3の左右に摺動可能に設けられた1対のピンチ4とから成る合成樹脂製被服用ハンガーに於いて、前記ハンガー本体の側壁3a、3bの少なくとも上縁部に前記ピンチのガイド用断面T字部状突壁7、7を形成し、またこれらの断面T字状突壁7、7よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突壁8を形成し、一方前記ピンチは長さ方向にバネ貫挿用窓11および挟持バネ15の両端部15a、
15aが係合するバネ係合用の外壁凹所12、12をそれぞれ有すると共に、内壁面に前記縁部の突壁7、7とそれぞれスライド係合する第1係合部13、13並びに前記直線状のガイド用突起8と係合スライドする第2係合部14、14を有する左右一対の挟着片9、10と、前記両端部15a、15aが前記窓11から貫挿され、かつ、前記外壁凹所に弾発的に係合圧接すると共に、非磁性体としての鉄分を有しない材料でU字型状に形成された前記挟持バネ15とから成ることを特徴とする被服用ハンガー。
請求項2】 請求項1に於いて、ハンガー本体2の水平部3は、縦断面がやや漢字の「王」の字に似た形状であることを特徴とする被服用ハンガー。
3 審決の理由の要点 (1) 審判における原告(請求人)の主張 原告は、本件請求項1及び2に係る考案は、次の審判甲第1号証及び審判甲第2号証ないし審判甲第4号証記載のものから当業者が極めて容易に考案できたものであり、実用新案法3条2項の規定に該当するから、同法37条の規定により本件請求項1,2及び3に係る実用新案の登録を無効とすべきである。」と主張した。
審判甲第1号証:実公昭54-43859号公報 審判甲第2号証:実公昭64-230号公報 審判甲第3号証:実開昭59-37054号公報 審判甲第4号証:特開平3-71083号公報 (2) 審決が認定した審判甲号各証の記載 審判甲第1号証には、ピンチハンガーにおけるピンチ取付構造の改良に関するものとして、「ピンチ4の上方部に形成した窓5の下側裏面に突起6を突設し、突起6の上方に凸部7を形成することにより突起6と凸部7の間に凹部8を形成し、上記ピンチ4を2枚1組とし、凹部8にバー2上縁のリブ3を遊嵌させると共に窓5に逆U字状とした板バネ9を通して外側よりピンチ4を挟着していることを特徴とするピンチハンガー。」(実用新案登録請求の範囲)が、また「この考案は・・・従来例の様な凹溝を全く構成していないため体裁が良いと共に、凹部8にバー2のリブ3を深く遊嵌合させるためピンチ4の装着状態が安定し、ピンチ4の位置ズレの生ずる虞れがなく、さらに凹部8とリブ3を嵌合させると共に板バネ9を挟着させる容易な作業でピンチ4を装着することができる等、この考案のピンチハンガーは実用的効果に優れている。」(1頁右欄22〜30行)ことが記載されている。
また、審判甲第2号証には、「この考案は、ハンガーの丸棒箇所とか洗濯挟みの軸といった取付軸面の両側から対をなす合成樹脂製クリップ本体を当てがって、両クリップ本体を逆U字状の合成樹脂製バネ体で挟みつけることで一体に構成されるクリップに関するものである。」(1頁左欄24行〜右欄1行)ことが記載されている。
さらに、審判甲第3号証には、「断面U状の挟圧片C」が図面と共に記載されている。
さらに 、審判甲第4号証には、「クリップ4は、アーム部3aを挟んで対向する一対のクリップ片5,5を有し、少なくとも片方のクリップ片5がその中間部においてアーム部3aに対し揺動可能に支持される。」(2頁左下欄8〜11行)こと、「本願発明においては、上記ハンガ1は、その全部品が非磁性材料で形成される。・・・上記クリップ4は、通常、そのクリップ片5やバネ6が金属で形成されることが多いが、本例においても、これらを樹脂で形成している。なお、バネ6の形成材料には、バネ材として好適な、ポリアセタール樹脂、あるいはガラス繊維強化樹脂や炭素繊維強化樹脂などを用いることが望ましい。」(2頁右下欄2〜12行)ことが図面と共に記載されている。
(3) 請求項1に係る本件考案についての審決の判断 審判甲第1号証記載の考案は、第1図によれば中央部にフックが、また、第2図によればピンチには板バネ両端部が係合するバネ係合凹所が備わっていることは明らかであり、スカートを挟着するものであるから被服用ハンガーに係るものと認められる。
そこで本件請求項1に係る考案と審判甲第1号証記載の考案とを対比すると、審判甲第1号証記載の考案の「本体1」、「バー2」、「リブ3」、「ピンチ4、
4」、「窓5」、「凹部8」及び「板バネ9」は、それぞれ本件請求項1に係る考案の「ハンガー本体1」、「水平部3」、「突壁8」、「挟持片9,10」、「貫通窓11」、「第1係止部13」及び「挟持バネ15」に相当するものと認められるから、
両者は、「中央部にフックを有するハンガー本体と、このハンガー本体の水平部の左右に摺動可能に、設けられた1対のピンチとから成る被服用ハンガーに於いて、前記ハンガー本体の側壁の少なくとも上縁部に前記ピンチのガイド用断面T字部状突壁を形成し、一方前記ピンチは長さ方向にバネ貫挿用窓および挟持バネの両端部が係合するバネ係合用の外壁凹所をそれぞれ有する左右一対の挟着片と、前記両端部が前記窓から貫挿され、かつ、前記外壁凹所に弾発的に係合圧接すると共にU字型状形成された前記挟持バネとから成ることを特徴とする被服用ハンガー。」の点で一致し、
(1)被服用ハンガーが、本件請求項1に係る考案では「合成樹脂製」であるのに対し、審判甲第1号証記載の考案では、材質が不明な点、
(2)本件請求項1に係る考案では、「断面T字部状突壁よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突起を形成し」たのに対し、審判甲第1号証記載の考案では、そのような構成を備えていない点。
(3)本件請求項1に係る考案では、「直線状のガイド用突起と係合スライドする第2係合部を有」して備えているのに対し、審判甲第1号証記載の考案では、そのような構成を備えていない点。
(4)挟持バネを、本件請求項1に係る考案では、「非磁性体としての鉄分を有しない材料」から成るのに対して、審判甲第1号証記載の考案では、その点が明記されていない点。
で相違しているものと認められる。
そこでこれら相違点について検討する。
審判甲第2号証には上記(4)の挟持バネを合成樹脂製とすることは記載されているが、上記(2)の「断面T字部状突壁よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突起を形成し」、上記(3)の「直線状のガイド用突起と係合スライドする第2係合部を有す」る点については何ら記載も示唆するところもない。
また審判甲第4号証には、上記(1)のハンガー本体を合成樹脂製とする点、及び(4)の挟持バネを非磁性体としての鉄分を有しない材料すなわち合成樹脂で形成する点について、また、側壁に突条が設けられたアーム部の記載(第1図)はあるものの、このアーム部の突条がガイドとなるのか否か、また、アーム部の突条と一対の挟持片とがどのような関係なのか何ら明記されておらず不明であるから、審判甲第4号証は、上記(2)、(3)の「断面T字部状突壁よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁には、直線状のガイド用突起を形成し」、「直線状のガイド用突起と係合スライドする第2係合部を有」する点については何ら示唆するところがない。
そして、本件請求項1に係る考案は、上記構成を備えることにより、「ピンチ4に衣服を挟持させた場合に、該品物の挟持によりU字型状の挟持バネ15が外拡変位しても、左右一対の挟着片9、10の第1係合部13、13がハンガー本体2のピンチのガイド用断面T字部状突壁7、7に、前記挟持バネ15のバネ力に抗して2点状態で圧接する。また、取付けた挟持片9(10)の位置を変えるために、例えばハンガー本体2を片手で持ち、一方、挟持片を水平方向に押したり引いたりすると、中央部の直線状ガイド用突起8と、これよりも上位に位置する断面T字部状突壁7により、ピンチ4は「上下の2点」で支持された状態で水平方向に移動する。」から、「専用車での運搬中に「偏り現象」が生じない。またピンチ4を水平方向に移動させる際に対向する前後の挟着片が上下または左右にずれない。」という明細書記載の効果を奏するものであり、該効果については審判甲第1号証ないし審判甲第4号証記載のものからは予期し得ないものである。
そうすると、上記構成を備えていない審判甲第1号証ないし審判甲第4号証に記載された考案を総合したところで、本件請求項1に係る考案が、審判甲第1号証ないし審判甲第4号証に記載された考案に基づいて当業者が極めて容易に想到できたものであるとは到底認められない。
なお、原告は上記相違点(2)、(3)に関し、審判請求書で「ハンガー本体の水平部の側壁に、直線状のガイド用突起8を形成し、また、ガイド用突起8と係合する第2係合部14、14を有するが、審判甲第1号証では、この機能を「リブ3の下側およびこれに係合する挟着片の突起6」が果たしているのであって、 単なる実施の形態上の相違でしかない。」と主張するが、審判甲第1号証記載のものは、
本件請求項1に係る考案の「突壁」に相当するリブを、本件請求項1の係る考案の「第1係止部」に相当する「突起と凸部」とで形成される凹部に遊嵌合するものであり、突壁を第1係合部の上下で単に挟持するものであって、本件請求項1に係る考案の、断面T字部状突壁よりも下位のハンガー本体の水平部の側壁に「直線状のガイド用突起を形成し」、さらに、この「直線状のガイド用突起と係合する第2係合部を有」する構成を備えてもいないし、その点を示唆するところもないから、これら相違点(2)、(3)は単なる形態上の相違である、という原告の主張は採用できない。
また、原告は、審判甲第3号証には「既に合成樹脂製の板バネ(これは明らかに非磁性体)が採用されていて、・・・」と主張するが、審判甲第3号証には挟圧片の材質に関しては何ら記載がなく、また示唆するところもない。
(4) 請求項2に係る本件考案についての審決の判断 請求項2に係る考案請求項1に係る考案を更に限定したものであるから、請求項1に係る考案についての判断と同様の理由により、審判甲号各証に記載の考案から当業者が極めて容易に想到できたものとすることはできない。
(5) 審決のむすび したがって、本件請求項1及び2に係る考案は審判甲第1号証ないし審判甲第4号証に記載の考案に基づいて当業者が極めて容易に考案することができたものとすることができない。
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は原告の主張する理由及び提出した証拠方法によっては無効とすることはできない。
原告主張の審決取消事由
1 審決は、以下のA、Bの2点につき、請求項1に係る本件考案の構成は審判甲各号証に記載されていないと認定している。
A ピンチ4に衣服を挟持させた場合に、該品物の挟持によりU字型状の挟持バネ15が外拡変位しても、左右一対の挟着片9、10の第1係合部13、13がハンガ本体2のピンチのガイド用断面T字部状突壁7、7に、前記挟持バネ15のバネ力に抗して2点状態で圧接する。
B 取付けた挟持片9(10)の位置を変えるために、例えばハンガー本体2を片手で持ち、一方、挟持片を水平方向に押したり引いたりすると、中央部の直線状ガイド用突起8と、これよりも上位に位置する断面T字部状突壁7により、ピンチ4は「上下の2点」で支持された状態で水平方向に移動するから、専用車での運搬中に「偏り現象」が生じない。またピンチ4を水平方向に移動させる際に対向する前後の挟着片が上下または左右にずれない。
2 しかし、実願昭47-143765号の明細書(甲第5号証)には、
「本体1の左右の肩部3において凸状とした上縁5の下方に一定間隔を有して凸状の枠8を形成することにより上縁5と枠8の間にガイド9を設け」ること、及び 「クリップ4は2枚1組の支持板11を相対向させ、バネ12により肩部3を挟んで2枚の支持板11を取り付けている。支持板11は上方にバネ12の貫挿通する窓13を形成すると共に前記ガイド9内を左右摺動する突起14及び下方にズボン等を挟着固定する挟着部15を凹凸歯状を成して形成している。」ことが開示されている(別紙甲第5号証図面参照)。
このハンガーでは、
「2枚の支持板11の上端部バネ12に抗してつまみ内方に押圧すると挟着部15が開き、ズボン等を挿入した後支持板11の上端部を放すとバネ12の弾発力によりズボン等が挟着固定される」ように作動する。
かかる挟着部15の開き作動では、2枚の支持板11に突出形成した突起14が肩部3のガイド9に2点状態で圧接する。
したがって、甲第5号証に記載のハンガーは、本件考案における上記Aと同一の作用を行う。ただ、甲第5号証に記載のハンガーでは、ハンガーの本体1側に凹状のガイド9を形成し、2枚の支持板11側に凸状の突起14、14を形成しており、凹凸が本件考案と逆となっているが、開き作動時に2点状態で圧接する作用は同一であり、実質的に同一である。
3 ガイド9及び突起14、14の係合に加えて、その第2図の符号7部分で示すように、2枚の支持板11、11にハンガーの肩部3が当接している。符号7は肩部3に凸状となって形成した下縁であり、この下縁7にクリップ4の制動作用を行う小凹部7a及び小凸部7bが交互に形成されている。かかる制動作用を行うには、凸状の下縁7にクリップ4の2枚の支持板11、11を当接させる必要があることは明白である。しかも、この下縁7と支持板11、11との当接は、上述したガイド9及び突起14、14の係合部分よりも下側となっており、これらは、本件考案上記Bの「上下の2点」で支持する構造と同一である。
したがって、この「上下の2点」での支持がなされることから、甲第5号証記載のハンガーにおいても「偏り現象」が生じないという本件考案と同一の作用を備える。
4 このように、前記A、Bの2点については、甲第5号証に記載のものなどから当業者が極めて容易になし得るものであり、審判甲第1号証ないし審判甲第4号証に記載された考案との対比において、請求項1に係る考案進歩性欠如を否定した審決の判断は誤りである。
5 したがって、請求項2に係る考案についての審決の判断も同様に誤りである。
6 なお、補完的な証拠なら新証拠でも認めるとする判例、あるいは、周知技術の立証のためなら審判段階で撤回した証拠であっても審決取消訴訟において新たな提出を認めた判例があり、補完的証拠として周知技術を立証するため、本訴において新たに甲第5号証を提出することは許される。
審決取消事由に対する被告の反論
1 原告が指摘するA及びBの内容は、本件考案の効果についてのものであって、本件考案の構成における相違点ではない。
2 原告は新たに、審決が引用しなかった甲第5号証を提出するが、甲第5号証をもって新たな引用例とし、本件実用新案の進歩性の不存在を立証しようとするものである。甲第5号証の記載をもって、審決の違法性を述べるのは許されない。
当裁判所の判断
1 原告は、審判で提出されていなかった、考案の名称を「ハンガー」とする実用新案登録出願(実願昭47-143765号)の明細書を甲第5号証として本訴で新たに提出する。
原告は、この甲第5号証の明細書は周知技術を立証するための補完的なものであると主張するが、これに基づく原告の技術的主張内容は周知技術を主張立証するものであるとは認め難く、原告は、この甲第5号証により、新たな公知文献の存在を立証し、これを新たな引用例として本件考案の構成が極めて容易に相当し得るものであると主張しているものとみることができる。
したがって、甲第5号証の明細書は、その提出自体審決取消訴訟の本訴では許されないものというべきであり、これを根拠とする審決取消事由は、前提を欠くものであるから、理由がない。
2 仮に、原告の主張立証が、甲第5号証の記載事項をもって周知技術についてのものであるとしても、本件考案の構成は、以下に説示するとおり、審判甲号各証に記載の考案に甲第5号証に記載の考案の構成を斟酌してみても極めて容易に想到することができたものと認めることはできない。
(1) 甲第5号証によれば、実願昭47-143766号の明細書には「クリップ4の組立は仕切り10より本体1の中央寄りで行うと便利であり、バネ12により本体1を中に挟み、2枚の支持板11を挟着した後、仕切り10上を越して突起14をガイド9内に遊嵌合させる。すると、クリップ4はガイド9に案内される範囲内において左右摺動することになり、このとき、小凹部7a及び小凸部7bの凹凸によりある程度の制動作用がなされる。」との記載(3頁10〜17行)があることが認められる(別紙甲第5号証図面参照)。
この記載によれば、下縁7と支持板11、11との当接は、左右の摺動に対しての制動作用を考慮したものであると認めることができる。もとより、この当接により支持板11、11は下縁7と接触するので、上下方向にも多少の支持作用を有するものと解されるが、これは下縁と板平面との接触にすぎないから、クリップの上下方向の移動を規制することができるものでもないし、左右の移動を案内することができるものでもないと認められる。
(2) これに対し、本件考案は、審決が相違点3に関して認定したように「直線状のガイド用突起と係合スライドする第2係合部を有」するという構成を備えるものである。
そして、甲第8号証(本件考案の実用新案登録公報)によれば、本件考案考案の詳細な説明として、「さらに、ピンチ4の位置を移動にさせる場合、左右一対の狭着片9、10は、ハンガー本体の上縁部のガイド用断面T字部状突壁7、7並びに側壁3a、3bのガイド用突起8の両方に案内されながらスライドする。したがって、互いに対向する前後の狭着片は、安定的に上下あるいは左右に移動する。」(5欄5〜10行)「またピンチを水平方向へ移動させる際に対向する前後の挟着片が上下または左右にずれない。」(7欄4〜5行)との記載のあることが認められる。
この記載によれば、本件考案においては、第1係合部に加え、第2係合部も「係合スライド」とする構成を採用することにより、ピンチを水平方向へ移動させる際に案内されながらスライドし前後の挟着片が上下または左右にずれないで安定的に移動することができるものと認められる。これに反し、甲第5号証に記載の考案においては、下縁7と支持板との間に「係合スライド」とする構成を欠くものであり、甲第5号証に記載の考案の構成を審判甲号各証に記載のものに当てはめてみても、本件考案の構成が極めて容易に想到することができるものと認めることはできない。
(3) なお、甲第8号証によれば、本件考案考案の詳細な説明として、「ところで、本発明の被服用ハンガーは、特にスカート、ズボンなどの衣服をピンチに挾持させ、かつ、業務用の専用車に設置された支持バーに多数の被服用ハンガーを吊り下げた状態で運搬する場合に於いて、品物の挾持によりU字型状の挾持バネ15が外拡変位し(て)も、左右一対の狭着片9、10の第1係合部13、13が、ハンガー本体2のピンチのガイド用断面T字部状突壁7、7に、前記扶持バネ15のバネ力に抗してかつ「2点状態」で圧接するので、走行中の専用車の加速又はブレーキ或いは振動に対応して、容易に一方向にスライドしない。」(4欄40〜50行)との記載があることが認められ、この記載には、偏り現象の防止に第2係合部が寄与しているとの説明はない。
原告の主張には、第2係合部が「偏り現象」が生じないことの作用に関係していることを前提にする部分もあるが、上記本件考案考案の詳細な説明の記載に照らせば、この前提に理由がないことは明らかである。
(4) 以上のとおりであり、甲第5号証に記載の事項を周知技術と解して審判甲第1ないし第4号証に記載の考案に適用しても、本件考案が当業者において極めて容易に考案することができたものとすることはできないから、いずれにしても原告主張の審決取消事由は理由がない。
結論
よって、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成12年3月2日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
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