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事件 平成 11年 (ワ) 5526号 侵害差止等請求事件
原告 日世株式会社右代表者代表取締役 【A】
原告 日世メリーランドカップ株式会社右代表者代表取締役 【B】 右両名訴訟代理人弁護士 山上和則
同 西山宏昭右補佐人弁理士 【C】
同 【D】
被告 ユナイスジャパン リミテッド 右代表者 【E】
被告 ユナイスインターナショナル リミ テッド 右代表者 【F】 右両名訴訟代理人弁護士 小西敏雄右補佐人弁理士 【G】
同 【H】
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2000/05/30
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
請求
一 被告らは、別紙物件目録一及び同二記載の各ソフトクリーム状食品用サーバーを販売し、使用し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその販売若しくは貸渡しの申出(販売又は貸渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
二 被告らは、その所有する前項記載のソフトクリーム状食品用サーバー及びその半製品を廃棄せよ。
三 被告らは原告らに対し、金一億円及びこれに対する平成一一年八月一一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、被告らが販売していると原告らにおいて主張する別紙物件目録一及び同二記載の各ソフトクリーム状食品用サーバー(以下それぞれ「イ号物件」、
「ロ号物件」といい、両者を併せて「被告製品」という。)が原告らの共有する実用新案権に係る登録実用新案の技術的範囲に属するとして、原告らが被告らに対し実用新案権に基づく侵害行為の差止め等と損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない事実 1 原告らは、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、実用新案登録請求の範囲請求項1に係る登録実用新案を「本件考案」、本件実用新案権に係る明細書を「本件明細書」という。)を共有している。
(一) 登録番号 第二〇九八一九四号 (二) 考案の名称 ソフトクリーム状食品用サーバー (三) 出願日 平成二年一〇月三日(平成二ー一〇四八五七号) (四) 出願公告日 平成七年五月一〇日(平成七ー一九二七四号) (五) 登録日 平成八年一月二六日 (六) 実用新案登録請求の範囲 別添実用新案公報該当欄記載のとおり。
2 本件考案の構成要件を分説すると次のとおりである。
A 小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置(ソフトクリーム状食品用サーバー)である。
B 押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する孔付水平台を備えている。
C 該水平台の上方に位置する押圧部材を備えている。
D 該水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備えている。
E 前記水平台と押圧部材は、両者の垂直方向に沿う相対的接近運動により圧縮された押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を前記喫食容器保持台上に載せられた喫食用容器内へ押し出すように構成されている。
3 本件考案の作用効果は次のとおりである。
(一) 一回量ずつのソフトクリーム状食品を充填されている小分け押出容器を押圧して内容物をコーン等の喫食用容器内へ正確に押し出すための簡便な装置が提供されるので、単にストッカーを準備するだけで、多種多様のソフトクリーム状食品を迅速かつ衛生的に提供することができる。
(二) 大型のバルク容器が不用なので、機械の増設や増員が不用で、多種多様の冷菓に適合できる。
(三) 大型のバルク容器が不用であるため、装置全体の構造が複雑でなく、
分解や手入れ手数がかからない。
4 イ号物件の構成は次のとおりである。
a 小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置(ソフトクリーム状食品用サーバー)である。
b 押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する孔付水平台を備えている。
c 該水平台の上方に位置する押圧部材を備えている。
d 落下するソフトクリーム状食品を、人手でコーン容器(容器ごと食べることが可能)に受ける。
e 前記水平台と押圧部材は、両者の垂直方向に沿う相対的接近運動により圧縮された押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を人手で保持された喫食用容器内へ押し出すように構成されている。
5 ロ号物件の構成は次のとおりである。
a 小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置(ソフトクリーム状食品用サーバー)である。
b 押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する孔付傾斜台を備えている。
c 該傾斜台の上方に位置する押圧部材を備えている。
d 落下するソフトクリーム状食品を、人手でコーン容器(容器ごと食べることが可能)に受ける。
e 前記水平台と押圧部材は、両者の垂直方向に沿う相対的接近運動により圧縮された押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を人手で保持された喫食用容器内へ押し出すように構成されている。
二 争点 1 被告らは被告製品を販売しているか。
【原告らの主張】 被告らは、遅くとも平成一〇年七月以降、被告製品を訴外株式会社マグナインターナショナル(以下「訴外会社」という。)に対して販売している。
訴外会社が頒布しているパンフレットによれば、訴外会社は、被告製品の日本における総代理店であることが明らかである。被告らは、訴外会社は被告ユナイス ジャパン リミテッド(以下「被告ユナイスジャパン」という。)から被告製品を輸入しているが、同被告は日本国内ではこれらを販売していないと主張する。しかし、外国法人が日本国内の業者を代理店として侵害品を輸出し、販売した場合には、日本国内において侵害品の販売があったとみて、実用新案法2条3項の「譲渡」に該当する行為をしたものと解すべきである。また、被告ユナイス インターナショナル リミテッド(以下「被告ユナイスインターナショナル」という。)のパンフレットには、被告製品について訴外会社が代理店として明記されており、被告ユナイスインターナショナルが輸出をしていることは明らかであり、同様に被告製品を日本国内で譲渡しているものというべきである。なお、被告ら両名は、実質的には一体の会社である。
【被告らの主張】 原告らの主張事実は否認する。被告ユナイスジャパンは被告製品を訴外会社との販売契約により日本に輸出しているが、同被告は日本国内ではこれらを販売していない。実用新案法は、外国法人の外国での行為には効力が及ばない。また、
被告ユナイスインターナショナルは被告製品の取引に関係していない。
2 被告製品は本件考案均等か。
【原告らの主張】 (一) イ号物件は、落下するソフトクリーム状食品を人手で喫食用容器に受ける構成になっている点で、「水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備えている」構成の本件考案の構成要件Dと異なっているが、その余の構成は本件考案の構成要件A、B、C及びEと同じである。
ロ号物件は、イ号物件と同じ相違点のほか、「押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する『孔付傾斜台』を備えている」点で、「押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する『孔付水平台』を備えている」構成の本件考案の構成要件Bと異なるが、その余の構成は本件考案の構成要件A、C及びEと同じである。
(二) 右のとおり、被告製品はいずれも本件考案の構成要件の一部を文言上は充足しないが、本件考案均等であり、その技術的範囲に属する。すなわち、
(1) 本件考案の技術的思想は、一回ずつの多種多様のソフトクリーム状食品を迅速かつ衛生的に提供するために、ソフトクリーム状食品が充填されている小分け容器を押圧して内容物をコーン等の喫食用容器へ押し出すことであるから、喫食用容器を保持するための手段として「喫食容器保持台」を用いて保持するか人手で保持するか、押出容器保持手段が「孔付水平台」か「孔付傾斜台」かは、いずれも非本質的なことである。
(2) 本件考案の「喫食容器保持台」の代替手段として、最も原始的な手法とされている「人手による作業」に置き換えても、本件考案の目的をそのまま達成することができ、かつ、同一の作用効果を奏することは明らかである。喫食容器を人手で保持して、サーバーから抽出されるソフトクリームを喫食容器内に手で盛り付ける手法は、ごく普通に行われていることである。また、本件考案の「孔付水平台」の代替手段として「孔付傾斜台」に置き換えることも、設計上の微差にすぎない。
(3) 当業者が被告製品を日本国内へ輸入又は販売した時点において、喫食用容器を保持する手段として、「喫食容器保持台」から「人手による作業」に置き換えること、押出容器を保持する手段として、「孔付水平台」から「孔付傾斜台」に置き換えることは、いすれも、侵害逃れを企図しようとすれば、当業者に限らず容易に想到できたことが明らかである。
(4) 本件考案の作用効果を達成する上で必要な構成要件はA、B、C及びEであるが、これらの構成を備えた考案(発明)は、本件考案の出願時に未公知であったのみならず、極めて容易に推考できたものでもなかった。被告製品も、本件考案の構成要件A、B、C及びEを備えている(ロ号物件は、構成要件Bの「孔付水平台」が「孔付傾斜台」に置き換えられているが、事情は同じである。)ので、
出願時における公知技術と同一ではなく、かつ、出願時に極めて容易に推考できたものでもない。
(5) 本件考案出願経過において、実用新案登録請求の範囲から、喫食用容器を保持する手段として「人手」に頼ることや、押出容器を保持する手段としての「孔付傾斜台」を意識的に除外するなどといった特段の事情は、全く存在しない。
以上のように、被告製品は、本件考案本質的部分をそっくりそのまま取り入れて模倣したものであり、単に、本質的部分でない構成の一部である「喫食容器保持台」を、侵害逃れを目的として意図的に「人手による作業」に置き換えたものに他ならない。
(三) 被告らの挙示する公知資料のいずれにも、本件考案の本質的な構成要件である「小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置」については開示されていない。乙第一号証、第三ないし第五号証に開示されているのは、ソフトクリームではなくハードアイスクリームを対象物とするものであり、また、乙第二号証、第一〇号証に開示されているのは、多数回分量用の大型バルク容器を用いた構成であり、まさに本件明細書で従来技術として例示されているものに他ならない。
本件考案は、新規性及び進歩性の登録要件を十分に備えている。
【被告らの主張】 (一) 本件考案の構成は、本件考案の出願前に頒布された刊行物である米国特許第二八八九九四九号明細書(乙第一号証)、米国特許第一四九四九八二号明細書(乙第二号証)、米国特許第一五七九六一二号明細書(乙第三号証)、米国特許第一五九七九五〇号明細書(乙第四号証)、米国特許第一七三八八一四号明細書(乙第五号証)及びPCT国際出願特許明細書国際公告番号WO89/05096(乙第一〇号証)にすべて開示されており、出願前に全部公知である。すなわち、
本件考案の構成要件A、B、C及びEはいずれも乙第一ないし第五号証、第一〇号証に、また、同Dは乙第二号証に開示されている。したがって、本件考案の構成は明細書に記載された文言どおりの内容として解釈すべきであり、均等論という拡張的解釈をすることは許されない。
(二) 被告製品は、コーン等の喫食用容器を人手で保持して受ける構成であるので、容器内に正確に押し出される構成ではない。喫食容器保持台を用いて保持するか、人手で保持するかは、本件考案本質的部分である。本件考案の構成要件Dの「水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備えている」との構成を欠く被告製品は、本件考案の目的を達せず、同一の作用効果を奏しないから、置換可能性がない。また、被告製品は、乙第一ないし第五号証記載の発明と同一か、又はこれから当業者が本件考案の出願時に極めて容易に推考できたものである。したがって、
被告製品は均等の要件を欠く。
3 原告らの損害額 【原告らの主張】 被告らは、遅くとも平成一〇年七月頃から、我が国において訴外会社に対し、少なくともイ号物件を五〇〇台(一台当たり約四〇万円)、ロ号物件を四五〇〇台(一台当たり約四〇万円)販売し、少なくとも合計二〇億円の売上を得た。被告らは、少なくとも右売上高の五パーセントに当たる一億円の実施料相当額を原告らに支払う義務がある。
【被告らの主張】 原告らの主張は争う。
争点に対する判断
一 争点2について 1 被告製品がいずれも、「落下するソフトクリーム状食品を人手で喫食用容器に受ける」点で、本件考案の構成要件Dの「水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備えている」という構成と異なることは、原告らの自認するところである。
2 均等について (一) 右相違点は本件考案本質的部分か否か。
(1) 本件明細書考案の詳細な説明には、次のような記載のあることが認められる(甲二)。
@ 本件考案は、「ソフトクリーム、ホイップドクリーム、ムース、ババロア等の冷菓(以下、ソフトクリーム状食品と呼ぶ)を、可塑性状態保持下に小分け用押出容器からコーン等の喫食用容器へ盛り付けるための装置に関する」(別添実用新案公報2欄一一〜一四行)考案である。
A 従来技術としては、「従来、これらの食品は、冷凍機を備えた大型のソフトクリーム専用フリーザーから、より最近では、大型のバルク容器内から、
夫々一回量ずつ直接喫食用容器(例えばコーン型容器)内へ押し出して盛り付けることにより提供されてきた。」(同3欄四〜八行) B 従来技術では、「専用フリーザーや冷凍機付大型押出機には簡便性がないため、多種多様の冷菓に適合できず、しかも盛り付け状態を任意に変化させるのも困難である。従って、今日の消費者の嗜好に合わせた多種多様の冷菓を提供するには、機械の増設や増員といった対策が必要である。加えて、装置全体の構造が複雑であるから、分解、手入れにも手数がかかり、ともすれば不潔になり易い」という問題点があった(同3欄八〜一五行)。
C 右の問題点に鑑みて、本件考案が解決しようとする課題は、「一回量ずつのソフトクリーム状食品を充填されている小分け押出容器を押圧して内容物をコーン等の喫食用容器内へ押し出すための簡便な装置を提供することによって」従来技術の問題点を解決しようとした(同3欄一七〜二二行)ものである。
D 本件考案に係るソフトクリーム状食品用サーバーは、右のような「課題を解決するための手段」として、前記構成要件AないしE記載のように構成したことを特徴とするものであり(同3欄二六〜三六行)、その結果、本件考案は、前記のような作用効果を奏するものである。
(2) 本件考案に係る実用新案登録請求の範囲においては、「喫食容器保持台」に関しては、孔付水平台の下方に位置すること(構成要件D)と、押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を喫食容器保持台上に載せられた喫食容器内へ押し出すように構成されている(構成要件E)ことが記載されている。しかし、
本件明細書の実用新案登録請求の範囲請求項は1から5まであり、請求項3は「喫食容器保持用台が、押出の進行につれ漸次水平台から垂直方向に沿って下降するように構成されている請求項1又は2記載のサーバー。」とされ、同5は「喫食容器が、該容器内の内容物の押出軸に対し偏心的に回動しうる請求項1又は3記載のサーバー。」とされており、請求項5自体には「喫食容器保持台」の語はないが、請求項1又は3の記載を引用している上、考案の詳細な説明から見ても、喫食容器の回動は喫食容器保持台にそれを可能とする構成を備えさせることによって実現するものであるから、請求項3及び5は「喫食容器保持(用)台」の存在を前提として、それに関する構成をより具体化したものということができる(なお、請求項2及び4は、請求項1の「押圧部材」に関する構成をより具体化したものである。)。そして、本件明細書考案の詳細な説明においても、請求項3及び5の「喫食容器保持台」に関する構成が、考案の好ましい実施態様として説明されており、そのような構成を採ることにより、喫食容器への盛付け状態を種々変化させたり、様々な形状の美麗な盛付けを自動的に行えるといった作用効果を奏することが記載されている(甲二)。
(3) 被告らは、本件考案の構成はその出願前に全部公知であったと主張し、その証拠として乙第一ないし第五号証、第一〇号証を挙示するので、検討する。
これら乙号各証は、いずれも本件考案の出願(平成二年一〇月三日)前に外国において頒布された刊行物である特許明細書であると認められるところ、
乙第一号証、第三ないし第五号証には、カップ型容器からアイスクリーム等の冷菓を喫食用容器に押し出す装置が開示され、それぞれの装置は容器入り食品を保持する孔付水平台及び該水平台の上に位置する押圧部材に相当する構成を備えているが、これらの装置には「喫食容器保持台」に当たる部材がない(例えば、乙第一号証では、カップから押し出されたアイスクリームを手で保持したアイスクリームコーンで受けることが示されている。)ことが認められる。また、これらの装置は、
明細書の記載及び図面に照らせば、直接にはアイスクリーム(ハードアイスクリーム)類の小分け装置であり、ソフトクリーム(ソフトアイスクリーム)ないしこれに類する食品(本件考案にいうソフトクリーム状食品)にも利用することを明示したものとはいい難い。
また、乙第二号証には、容器内に充填されたアイスクリームを小さな容器内へ小分けするための装置が記載されており(対象はアイスクリームであるが、漏斗状の排出口から押し出されているので、ソフトクリーム状になっていると考えられる。)、乙第一〇号証には、「ソフトアイスクリーム」を喫食用容器内へ小分けする装置が記載されており、これらの装置は孔付水平台や押圧部材に相当する構成を有していることが認められるが、これらの装置はいわゆるバルク容器であって小分け容器ではなく、本件明細書において従来技術として指摘された構成のものであるから、本件考案とは技術思想が異なる。なお、乙第二号証には、バルク容器の漏斗状排出口から流れ出るアイスクリームを受ける小容器が作業台上に置かれる構成が示されていることが認められる。
以上の公知技術からすれば、本件考案の構成要件のすべてを開示したソフトクリーム状食品用サーバーが記載された刊行物があるとはいえないが、アイスクリーム状冷菓に関していえば、喫食容器保持台の構成を除いて乙第一号証、第三ないし第五号証のそれぞれに開示されている。また、喫食容器保持台に関しては、単に人手でなく容器を置く台で足りると解するとすれば、乙第二号証にアイスクリーム(ソフトクリーム状)が流れ込む小容器が作業台上に置かれることが示されているから、本件考案の構成要Dも同号証に開示されているともいえる。
本件明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された登録実用新案は、
前記のとおり、ソフトクリーム状食品を一回量ずつ喫食用容器へ盛り付ける装置に関し、大型バルク容器を備えるといった従来技術の問題点を解決するために、小分け押出容器に入ったソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置を提供するものであるが、アイスクリームについては、小分け押出容器から孔付水平台や押圧部材の構成を用いて喫食用容器に押し出す技術は、本件考案の出願前に公知であったものである。しかも、本件明細書に本件考案の作用効果として記載されたもののうち、ソフトクリーム状食品を小分け押出容器から喫食用容器内へ正確に押し出すという点に関しては、アイスクリーム用の装置をソフトクリーム状食品用の装置に転用するに当たっての工夫を要するものと考えられるが、それ以外の作用効果は、従来技術に現われた通常のアイスクリーム用の小分け装置において既に達成されていたものといえる。
(4) 以上のような、本件明細書の記載と本件考案出願前の公知技術を参酌すると、本件考案においては、喫食容器保持台を孔付水平台の下方に備えるという構成にした点も、本件考案特有の課題解決手段を基礎付け、本件考案特有の作用効果を生じるための中核的部分に属し、本件考案本質的部分に当たるものと認めるのが相当である。すなわち、本件考案は、小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置として、押出容器入りソフトクリーム状食品を保持する孔付水平台と、該水平台上方に位置する押圧部材を備えて、水平台と押圧部材が両者の垂直方向に沿う相対的接近運動により圧縮された押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を喫食容器内へ押し出すように構成されているだけでなく、水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備え、押出容器から押し出されたソフトクリーム状食品を受ける喫食容器が喫食容器保持台上に載せられているという構成を採用することによって、押出容器の内容物が喫食用容器内へ正確に押し出されるという本件考案特有の作用効果を奏するものであり、右のような喫食容器保持台を備えることにより、更に請求項3及び5のような好適な実施態様を実用新案登録請求の範囲に記載することを可能とし、従来技術では実現できなかった盛付け状態を変化させるといった作用効果を奏することをも可能にしたものである。
喫食容器を手で保持することとせず、保持台を備えてその上に載せて押出容器からの内容物を受けるようにした構成に関しては、前記のとおり乙第二号証にも作業台上に小容器(喫食容器)を載せるようにすることは開示されているし(もっとも、
これは単に支柱で支えたアイスクリーム小分け装置を装着した作業台上に容器を置くだけのものであり、押出容器の内容物を正確に喫食容器内へ押し出すことを企図したものとも見られず、本件考案の喫食容器保持台と同視できるものかどうかは疑問がある。)、喫食容器を人手でなく保持する台等を設けること自体は、設計事項の範囲内のように考えられなくもない。しかし、本件考案の実施態様のように、喫食容器保持台を押出しの進行につれ漸次水平台から垂直方向に沿って下降するようにした構成(請求項3)や、喫食容器保持台を上に載せた喫食容器が押出軸に対し偏心的に回動するようにした構成(請求項5)は、本件考案の出願前の公知資料には見出せない。請求項2及び4に記載された実施態様を伴う押圧部材に関する構成と並んで、請求項3及び5記載のような実施態様の前提となる喫食容器保持台を備えることとした構成も、多くの従来技術が採用していたような人手で喫食容器を保持する構成と異なり、また、乙第二号証に開示されているような、単に喫食容器を作業台上に置いて押出容器から押し出される内容物を受けるというものとも異なる、従来技術には見られない構成である。したがって、喫食容器保持台の構成は、
本件考案特有の課題解決手段を基礎付け、特有の作用効果を奏する技術的思想の中核をなす本質的部分に当たるものというべきである。
原告らは、本件考案本質的部分は「小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置」であると主張するが、そのように解するとすれば、本件考案先行技術と対比して、単に公知のアイスクリーム用の小分け装置をソフトクリーム状食品用に転用したにすぎず、それだけでは従来技術の問題点を解決する手段を提供したものとはいい難いから、原告らの主張は採用することができない。
(5) そうすると、被告製品と本件考案の構成の異なる構成要件Dの部分は、本件考案本質的部分に当たるものというべきである。したがって、被告製品は、イ号物件、ロ号物件ともに、均等の要件を満たさず、本件考案技術的範囲に属しない(最高裁判所平成一〇年二月二四日判決・民集五二巻一号一一三頁参照)。
(三) 被告製品は、本件考案の出願時の公知技術と同一又は当業者かこれから右出願時に極めて容易に推考できたものか。
イ号物件の構成は前記のとおりである。そして、前記認定事実に照らせば、イ号物件の構成(要するに、本件考案の構成要件のうち喫食容器保持台がなく、代りに人手で喫食容器を保持する。)は、本件考案の出願前の刊行物である乙第一号証、第三ないし第五号証に開示された小分け押出容器入りアイスクリーム状冷菓の小分け分配装置の技術的構成を乙第一〇号証に開示されたソフトクリーム状食品の小分け分配装置(これは手で喫食容器を保持する。)に応用したものということができる。ソフトクリームも広義のアイスクリームの一種であり、かつ、イ号物件の構成のうちで本件明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1に係る本件考案の構成に相当する部分に関していえば、前記説示のとおり、アイスクリーム状冷菓用の小分け装置との対比上、特段ソフトクリーム状食品に特有の問題点を解決する具体的手段を提供したものともいえない。そうすると、右のようなイ号物件の構成は、本件考案の出願時に当業者が極めて容易に推考できたものと認めるのが相当である。
したがって、イ号物件に関しては、右の点からも本件考案均等であるということはできない(前掲最高裁判決参照)。
二 以上によれば、その余の争点について判断するまでもなく、原告らの被告らに対する請求はいずれも理由がない。
(平成一二年三月三一日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 高松宏之
裁判官 水上周
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