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関連審決 審判1998-40021
関連ワード 技術的範囲 /  考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  新規性(3条1項) /  請求項 /  容易に想到 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 180号 審決取消請求事件
原告 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
同 【C】
同 【D】
同 【E】
被告 株式会社ジェイアール東日本企画代表者代表取締役 【F】
訴訟代理人 【G】
同 【H】
同 【I】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/03/14
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成10年審判第40021号事件について平成11年4月12日にした審決のうち、登録第3038358号実用新案の明細書請求項第7項に記載された考案についての登録を無効とするとの部分を取り消す。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを7分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成10年審判第40021号事件について平成11年4月12日にした審決を取り消す。
前提となる事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、考案の名称を「乗物の広告装置」とする登録第3038358号実用新案(平成8年12月3日実用新案登録出願、平成9年3月26日設定登録。以下、
「本件考案」という。)の実用新案権者である。
被告は、平成10年10月16日、本件考案の登録を無効とすることについて審判を請求をした。
特許庁は、この請求を平成10年審判第40021号事件として審理した結果、
平成11年4月12日、本件考案請求項第1項ないし第7項に記載された考案についての登録を無効とする旨の審決をし、その謄本は、同年5月24日原告に送達された。
2 本件考案の要旨 (1) 請求項第1項に記載された考案(以下「本件考案1」といい、他の請求項考案についても同様に略称する。)の要旨 列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置において、
前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置。
(2) 本件考案2の要旨 列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置において、
前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートが着脱交換可能に装着され、
前記表示シートは剥離性粘着剤層を介して前記テーブルの裏面に装着されるようにしたことを特徴とする乗物の広告装置。
(3) 本件考案3の要旨 列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置において、
前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートが着脱交換可能に装着され、
前記表示シートは透明または不透明の合成樹脂製フィルムから成り、剥離性粘着剤層を介して前記テーブルの裏面に装着されるようにしたことを特徴とする乗物の広告装置。
(4) 本件考案4の要旨 前記表示シートは、前記テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして使用することを特徴とする請求項1〜3(本件考案1〜3)のいずれか1項に記載の乗物の広告装置。
(5) 本件考案5の要旨 列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置において、
前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートが着脱交換可能に装着され、
前記表示シートは前記テーブルの裏面に備えられた表示シート収納部に収納されるようにしたことを特徴とする乗物の広告装置。
(6) 本件考案6の要旨 旅客機、旅客車等の乗物の機内または車内に列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置において、
前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置。
(7) 本件考案7の要旨 列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席の前に配置されている座席の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席の前に配置されている座席側に臨む第1姿勢と、水平に開いた第2姿勢とに揺動可能な前記ひとつの座席に着座している人が使用するためのテーブルの広告装置であって、
前記座席はこの座席に着座する人の尻部を支えるクッション性を有した座部と前記着座する人の背中を支えるクッション性を有した背もたれ部と前記着座する人の腕および肘を支える肘掛け部とを含み、前記座席は座席の下側に設けられた脚部によって支持されるとともに、前記座席はリクライニング機構によって背もたれ部を着座する人の所望の傾斜角度に保持することが可能であって、前記肘掛け部は背もたれ部側の基端部を肘掛け部支持体に回動自在に取り付けられ、肘掛け部の先端部には吸い殻入れが設けられ、前記座席の背もたれ部の背面部には、金属製の枠体と前記枠体に取り付けられた合成繊維製の編とによって構成されるポケット部と、前記第1姿勢においてテーブルを背もたれ部の収納用凹部に保持することができる合成樹脂製の係止具を含む係止装置とが設けられ、
前記テーブルは合成樹脂製であって、テーブルの表面にはコップ置き用の凹部が設けられ、テーブルの裏面の前記第1姿勢において上側となる上端部中央付近には前記係止具が嵌合される係止用凹部が設けられ、乗物の進行方向に沿う面に略平行なテーブルの側面の前記第2姿勢におけるテーブルの前記背もたれ部側の基端部には合成樹脂製または金属製の支持アームの上端部に形成される支持ピン用凹部に嵌合する支持ピンと回動ピン用凹溝に嵌合する回動ピンが形成され、前記支持ピンおよび回動ピンによってテーブルが支持アームの上端部に回動自在に装着され、支持アームの下端部に形成された軸受によって支持アームは座席に揺動自在に装着され、支持アームは前記第2姿勢において支持アームの下端部に設けられた支持アーム規制ねじが座席内部に設けられた支持アーム規制片に当接することによってテーブルの表面が水平に保持されるような一定の傾斜を保持することができ、
前記テーブルの裏面に前記第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートが着脱交換可能に装着され、
前記表示シートは透明または不透明の合成樹脂製フィルムから成り、剥離性粘着剤層を介して前記テーブルの裏面に装着され、前記テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして使用することを特徴とする乗物の広告装置。
3 審決の理由 審決の理由は、別紙審決書の理由写し(以下「審決書」という。)に記載のとおりであり、審決は、本件考案の要旨を前記2のとおり認定した(なお、本件考案1ないし3及び5ないし7については、本件明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1ないし3及び5ないし7の各記載に一部誤記があると解釈して、前記2のとおり認定した。)上、
@本件考案1は甲第3号証(特開平6-259027号公報。審判甲第2号証)に記載された考案であるから、新規性を欠き、
A本件考案2ないし4は甲第3号証及び甲第4号証(「図解プラスチック用語辞典 第2版」日刊工業新聞社、1994年11月27日発行、607頁及び866頁。審判甲第3号証)により進歩性を欠き、
B本件考案5は甲第3号証及び甲第5号証(実開昭62-52542号公報。審判甲第6号証)により進歩性を欠き、
C本件考案6は甲第3号証に記載された考案であるから、新規性を欠き、
D本件考案7は甲第3号証、甲第4号証及び周知技術により進歩性を欠き、
いずれも実用新案法3条の規定に違反して登録されたものであり、その登録を無効にすべきである旨判断した。
審決の取消事由
1 審決の認否 (1) 審決の理由1(手続の経緯・本件考案)、同2(請求人(被告)の主張)、同3(被請求人(原告)の主張)及び同4(甲各号証)は認める。
(2) 同5(対比・判断)の@(本件考案1について)中、対比(審決書16頁7行ないし18頁8行)のうち、甲第3号証に記載のものにおける「着脱容易」が本件考案1における「着脱交換可能に装着」に、「広告物表示材及びこれに取り付けた乗物内露出物」が「乗物の広告装置」にそれぞれ相当すること(同17頁2行ないし4行)、及び両者は、「前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて所定状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置。」である点で一致」すること(同17頁末行ないし18頁4行)、相違点についての判断(同18頁10行ないし末行)及びまとめ(19頁1行ないし4行)は争い、その余は認める。
同A(本件考案2について)中、対比(審決書19頁6行ないし9行)、及び相違点についての判断のうち甲第4号証(審判甲第3号証の記載の認定(同19頁10行ないし18行)は認め、その余は争う。
同B(本件考案3について)中、対比(審決書20頁16行ないし19行)、及び相違点についての判断のうち「甲第2号証(本訴甲第3号証)中には、広告媒体が圧接密着されるシート状物に関し「シート状物21は表面が平滑なシートであればどのような材質でもよいが、通常合成樹脂フィルム例えば塩ビ、ポリエチレン又はポリプロピレンなどが最も簡便である」と記述されている」こと(同21頁2行ないし7行)は認め、その余は争う。
同C(本件考案4について)中、「本件考案4は、本件考案1乃至3のいずれか1の考案に、「表示シートは、テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして使用する」という構成を付加したものである」こと(審決書22頁7行ないし12行)は認め、その余は争う。
同D(本件考案5について)中、対比(審決書23頁9行ないし13行)は認め、その余は争う。
同E(本件考案6について)中、「本件考案6は、本件考案1に「旅客機、旅客車等の乗物の機内または車内に」という点を付加したものである」こと(審決書24頁10行ないし12行)は認め、その余は争う。
同F(本件考案7について)中、「本件考案7は、本件考案4に更に座席の構成を詳細に限定したものである」こと(審決書25頁6行、7行)は認め、その余は争う。
なお書の判断(審決書26頁6行ないし13行)のうち、被請求人の主張内容(同26頁6行ないし9行)は認め、その余は争う。
(3) 審決の理由6(むすび)は争う。
2 取消事由 審決は、本件考案1ないし7につき、新規性又は進歩性の判断を誤ったものであるから、違法なものとして取り消されるべきである。
(1) 取消事由1(本件考案1に関する新規性の判断の誤り) 審決は、本件考案1と甲第3号証(審判甲第2号証)に記載のものとを比較すると、「着脱容易」が「着脱交換可能に装着」に、「広告物表示材及びこれに取り付けた乗物内露出物」が「乗物の広告装置」にそれぞれ相当すること(審決書17頁2行ないし4行)、及び両者は、「前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて所定状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置である点で一致(する)」(同17頁末行ないし18頁4行)と認定するが、誤りである。
ア 構成要件a (ア) 本件考案1は、「第1姿勢での広告情報は、正立状態となること」(以下「構成要件a」という。)を構成要件とするものである。
これに対し、甲第3号証には、「正立状態」についての記載はない。
(イ) 被告は、テーブルの表面は、「前記ひとつの座席の背もたれ部に向け」て前記ひとつの座席側に臨んでいることになるから、本件考案1は、座席に着座する者への広告の効果を飛躍的に向上することができるという原告主張の効果を奏することはできない旨主張する。
しかしながら、実用新案の要旨は、考案の詳細な説明の項に開示された考案の性質、目的、所期の作用効果等を勘案して、実質的にこれを認定すべきであり、出願当時の平均的な当業者が実用新案登録請求の範囲から通常汲み取ることができた内容が、実用新案登録請求の範囲の意味内容として承認せられるべきであるところ、
本件では、実用新案登録請求の範囲の記載の誤記について、審決が解釈するとおり、誤記があり、何が正しい記載であるかを当業者が直ちに認識することができる場合であるから、審決の本件考案の要旨の認定は妥当なものである。
イ 構成要件b (ア) 本件考案1は、「表示シートは、それ自体が着脱交換可能であって、
テーブルの裏面に直接に設けられること」(以下「構成要件b」という。)を構成要件とするものである。
被告は、本件実用新案登録請求の範囲第1項には、表示シートを「直接」設けるものに限定した旨の記載はない旨主張するが、実用新案の技術的範囲の解釈に当たっては、技術的な意味を探求すべきであって、その考案が登録適格を具備しており、かつ登録無効の原因がないように解釈するように努めるべきであるところ、本件明細書考案の詳細な説明【0027】の記載から考案の効果を奏するように合理的に解釈して、本件考案1は、「直接」を構成要件としていると解することは妥当である。
(イ) 甲第3号証に記載のものは、表面状態が平滑でない部分への取り付けを目的としていることから、「着脱容易」との記載はあるが、本件考案1のように「着脱交換可能」ではなく、本件考案1の奏する効果を生じない。
(2) 取消事由2(本件考案2に関する進歩性の判断の誤り) ア 構成要件a及びb 前記(1)のとおりである。
イ 剥離性粘着剤等の点 (ア) 審決は、「粘着性を備えた感圧性接着剤、即ち、剥離性粘着剤を種々のシートに用いて貼り付けることは各種分野で採用されている周知慣用の手段であ(る)」(審決書19頁18行ないし20頁1行)と認定するが、誤りである。
審決認定の甲第4号証の記載(審決書19頁10行ないし18行)から、上記のように認定することはできない。
(イ) 被告は、乙第2、第3号証等を引用しているが、これらは審判段階において提出された証拠ではないから、本訴においてその提出が認められるべきではない。
(3) 取消事由3(本件考案3に関する進歩性の判断の誤り) ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 合成樹脂フィルムの採択の点 審決は、「表示シート(広告媒体)を合成樹脂フィルムとすることに格別の技術的困難性は何等見出すことができない。」(審決書21頁9行ないし11行)と判断するが、誤りである。
表示シートとして合成樹脂フィルムを採択するためには、表示シートとしての耐久性、量産性、加工容易性、質感、印刷性等の総合的な考察が必要であって、単に材料として任意に合成樹脂フィルムを採用するわけではない。表示シートの仕上がり状態は広告効果に大きな影響を及ぼし、製造コスト及び作業性は、乗物の広告装置の実施においては極めて重要な要素である。
ウ 透明または不透明の点 審決は、「「透明または不透明」という限定は透明性に関し、何等限定しないことと等価である。」(審決書21頁12行、13行)と判断するが、誤りである。
表示シートが透明な場合と、表示シートが不透明な場合とでは、奏する効果が異なるものであって、「透明または不透明」をもって、透明性に関し無限定と解するべきではない。
すなわち、表示シートが透明の場合には、テーブルの裏面の色調と剥離性粘着剤層の色調とを調和させて、例えば斬新な色調とすることによって、広告効果を増大させることができ、さらに、テーブル裏面に文字、図等が表示されている場合には、透明な表示シートを通して、テーブル裏面に表示された文字、図等を認識することができる。
表示シートが不透明な場合には、テーブルの裏面の色調に無関係に、表示シートの色調だけを考慮して、表示シートを製造することができる。
(4) 取消事由4(本件考案4に関する進歩性の判断の誤り) ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 剥離シートの点 審決は、「剥離シートをこのように(テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして)使用することは、甲第3号証(本訴甲第4号証)の「離型紙」の項に記載されているように周知慣用の技術である。」(審決書22頁12行ないし15行)と認定するが、誤りである。
審決認定の甲第4号証の記載(審決書22頁13行、14行)から、上記のように認定することはできない。
(5) 取消事由5(本件考案5に関する進歩性の判断の誤り) ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 収納部の点 審決は、「座席用の広告表示シート(印刷物)を収納部に収納することで着脱交換可能に装着することは、甲第6号証(本訴甲第5号証)に開示されているように周知の技術であるから、甲第2号証(本訴甲第3号証)に記載の表示シートをテーブルの裏面に装着する際に、収納部を用いて実現することは、当業者が極めて容易に想到しうるところである。」(審決書23頁14行ないし末行)と判断するが、
誤りである。
甲第5号証に記載のものは、乗物の座席のテーブルに適用されるものではなく、
本件考案5とは構成が異なる。
(6) 取消事由6(本件考案6に関する新規性の判断の誤り) 構成要件a及びbについて、前記(1)のとおりである。
(7) 取消事由7(本件考案7に関する進歩性の判断の誤り) ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 座席の点 審決は、「限定された構成は、文献を示すまでもなく、本件登録実用新案の出願前から存在する通常の鉄道車両の座席の構造を、座席の構成要素毎に単に羅列したものと解するのが相当であり、甲第2号証(本訴甲第3号証)に記載の座席をこのように限定すること自体に格別の考案力を要するとは認められない。」(審決書25頁7行ないし13行)と判断するが、誤りである。
(ア) 被告は、乙第9号証の1、2及び乙第10号証を引用して、本件考案7の進歩性を否定するが、乙第9号証の1には、本件考案7の重要な構成要件の1つである背面テーブルの構成が記載されていない。
(イ) また、乙第9号証の2及び乙第10号証は、本件出願後に撮影された写真であって、本件考案7の進歩性の判断に影響を及ぼすものではない。
(ウ) さらに、被告は「新幹線車両200系H5編成の座席(乙第10号証)」についての検証を申し立てているが、乙第10号証は、平成10年1月27日に写真撮影されたものであって、本件考案新規性進歩性の判断の根拠とはなり得ないものであるので、検証を行う必要はないものである。
前提となる事実及び審決の取消事由に対する認否及び反論
1 認否 原告主張の前提となる事実の中、「1 特許庁における手続の経緯」は認め、
「2 本件考案の要旨」は争い、「3 審決の理由」は認める。
原告主張の審決の取消事由は争う。
2 反論 (1) 取消事由1(本件考案1に関する新規性の判断の誤り)に対して ア 構成要件aについて (ア) 本件明細書の本件実用新案登録請求の範囲第1項([A]、[B]は引用者が付加した。)には、「列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席[A]の前に配置されている座席[B]の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席[A]の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席[A]側に臨む第1姿勢と、・・・前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席[A]に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置。」と記載されており、この記載からすると、テーブルの表面は、「前記ひとつの座席の前に配置されている座席[B]」ではなく、「前記ひとつの座席[A]の背もたれ部に向け」て前記ひとつの座席[A]側に臨んでいることになる。よって、第1姿勢において、「前記テーブルの裏面」は、「前記ひとつの座席[A]」に着座している者の方を向いていないので、本件考案1は、座席に着座する者への広告の効果を飛躍的に向上することができるという効果を奏することはできない。
(イ) 仮に上記(ア)が認められないとしても、甲第3号証には、「軸8、8の他端がほぼ方形のテーブル部6に緩挿されてテーブル部背面7が図1に示す座席の勾配に合わせた閉止位置と、図2に示す水平位置との間を揺動可能とされている。」(発明の詳細な説明【0010】)と記載され、「・・・テーブル部背面7を閉止位置に係止可能としている。この状態では、テーブル部表面10上に接着剤を介してシート状物21を貼着した広告物表示材9の表面に圧接密着された広告媒体23を後部座席に座った際に直視することができるようになっている。」(同【0011】)と記載されており、第1姿勢での広告情報は正立状態となることという構成要件aは、甲第3号証に記載されている。
イ 構成要件bについて (ア) 本件実用新案登録請求の範囲第1項には、「テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする」と記載されているだけで、表示シートを「直接」設ける旨の記載はないから、「直接」という文言が含まれていることを前提とする原告の主張は、誤りである。
(イ) また、甲第3号証には、「広告物の着脱が容易で簡易な広告物表示材」(発明の詳細な説明【0015】)と記載されており、構成要件bは、甲第3号証に記載されている。
(2) 取消事由2(本件考案2に関する進歩性の判断の誤り)に対して ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 剥離性粘着剤等の点について (ア) 甲第3号証には、「広告媒体23はその裏面に付着した接着剤22によりシート状物21の表面側の平滑面に容易にほぼ均一に圧接密着される。」(発明の詳細な説明【0007】)と記載され、「広告物の着脱が容易で簡易な広告物表示材」(同【0015】)と記載されているので、甲第3号証には、広告媒体が剥離性粘着剤によって取り付けられるという構成が記載されているといえる。
(イ) また、少なくとも乙第2号証(特開昭52-23139号公報)及び乙第3号証(特開昭59-58072号公報)に記載されているように、剥離性粘着剤は、本件出願時において既に周知であり、また、乗物の広告媒体に剥離性粘着剤を用いたステッカーが本件登録実用新案の出願以前から使用されていたので(乙第4ないし第8号証)、甲第3号証に記載された広告媒体に剥離性粘着剤を用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
(ウ) なお、乙第2、第3号証は、審判段階において提出された甲第4号証を補強する証拠として、その提出が認められるものである。
(3) 取消事由3(本件考案3に関する進歩性の判断の誤り)に対して ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 合成樹脂フィルムの採択の点 本件実用新案登録請求範囲第3項には、単に「表示シートは・・・合成樹脂製フィルムから成り」と記載されているだけで、耐久性、量産性、加工容易性、質感、
印刷性等の限定はされていない。さらに、甲第3号証には、「シート状物21は表面が平滑なシートであればどのような材質でもよいが、通常合成樹脂フィルム例えば塩ビ、ポリエチレン又はポリプロピレンなどが最も簡便である。」(発明の詳細な説明【0007】)と合成樹脂フィルムを広告媒体として使用することが開示されている。
したがって、この点の審決の判断に誤りはない。
ウ 透明または不透明の点 広告媒体を合成樹脂フィルムで構成することが本件出願当時既に公知であった以上、それを透明とするか不透明とするかは、二者選択にすぎず、「透明または不透明」という限定は、透明性に関し無限定と等価である。
(4) 取消事由4(本件考案4に関する進歩性の判断の誤り)に対して ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 剥離シートの点について 広告媒体としてステッカーを用いること(乙第4ないし第8号証)、及びステッカーの接着剤塗布面保護紙としてはく離紙を使用すること(甲第4号証の「はく離紙」の項)が、本件出願前から公知であるので、表示シートは、テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして使用することは、当業者が極めて容易に想到し得ることである。
(5) 取消事由5(本件考案5に関する進歩性の判断の誤り)に対して ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 収納部の点について 甲第5号証には、「広告用印刷物6を収納する二重袋1」の「袋部1bの表面」が「透明シート1c」で形成さることが記載されているので、甲第3号証に記載された「広告媒体23」を甲第5号証に記載された「袋部1b」に収納することは、
当業者が極めて容易に想到し得ることである。
(6) 取消事由6(本件考案6に関する新規性の判断の誤り)に対して 構成要件a及びbについて、前記(1)のとおりである。
(7) 取消事由7(本件考案7に関する進歩性の判断の誤り)に対して ア 構成要件a及びbについて 前記(1)のとおりである。
イ 座席の点について (ア) 本件の審判段階において、「E351系特急形直流電車説明書、平成7年12月東日本旅客鉄道株式会社運輸車両部車両課」(乙第9号証の1)、平成10年10月6日付けのE351系特急形直流電車の座席の写真撮影報告書(乙第9号証の2)及び平成10年10月6日付けの新幹線車両200系H5編成の座席の写真撮影報告書(乙第10号証)が、本件考案7の特徴とする構成が公知であることを立証する証拠として提出されているが、これらの証拠には、本件考案7の構成が開示されている。
(イ) これを詳細に検討すると、
@ 「前記座席は、この座席に着座する人の尻部を支えるクッション性を有した座部」という点、「前記着座する人の背中を支えるクッション性を有した背もたれ部」という点、及び「前記着座する人の腕および肘を支える肘掛け部」という点は、乙第9号証の2(3)、(4)、(8)及び(9)並びに乙第10号証(3)及び(4)に、
A 「前記座席は座席の下側に設けられた脚部によって支持される」という点は、乙第9号証の2(7)に、
B 「前記座席はリクライニング機構によって背もたれ部を着座する人の所望の傾斜角度に保持することが可能であ(る)」という点は、乙第9号証の2(8)及び乙第10号証(4)に、
C 「前記肘掛け部は背もたれ部側の基端部を肘掛け部支持体に回動自在に取り付けられ」という点、及び「肘掛け部の先端には吸い殻入れが設けられ」という点は、乙第9号証の2(5)、(6)及び(9)並びに乙第10号証(3)に、
D 「前記座席の背もたれ部の背面部には、金属製の枠体と前記枠体に取り付けられた合成繊維製の編とによって構成されるポケット部」という点、及び「前記第1姿勢においてテーブルを背もたれ部の収納用凹部に保持することができる合成樹脂製の係止具を含む係止装置とが設けられ」という点は、乙第10号証(4)及び(5)に、
E 「前記テーブルは合成樹脂であって、テーブルの表面にはコップ置き用の凹部が設けられ、テーブルの裏面の前記第1姿勢において上側となる上端部中央付近には前記係止具が嵌合される係止用凹部が設けられ(る)」という点は、乙第10号証(4)及び(5)に、
F 「乗物の進行方向に沿う面に略平行なテーブルの側面の前記第2姿勢におけるテーブルの前記背もたれ部側の基端部には合成樹脂製または金属製の支持アームの上端に形成される支持ピン用凹部に嵌合する支持ピンと回動ピン用凹溝に嵌合する回動ピンが形成され,前記支持ピンおよび回動ピンによってテーブルが支持アームの上端部に回動自在に装着され(る)」という点は、乙第10号証(4)及び(5)に、
G 「支持アームの下端部に形成された軸受によって支持アームは座席に揺動自在に装着され、支持アームは前記第2姿勢において支持アームの下端部に設けられた支持アーム規制ねじが座席内部に設けられた支持アーム規制片に当接することによってテーブルの表面が水平に保持されるような一定の傾斜を保持することができ(る)」という点は、乙第10号証(4)及び(5)に、
それぞれ開示されている。
(ウ) 審決は、これらの証拠を勘案して本件考案7の特徴とする構成は、
「本件登録実用新案の出願前から存在する通常の鉄道車両の座席の構造を、座席の構成要素毎に単に羅列したものと解する」と認定しているものであり、その認定に誤りはない。
(エ) 上記乙第9号証の1、2及び乙第10号証のみでは足りない点があれば、新幹線車両200系H5編成の座席(乙第10号証)の検証が採用されるべきである。
(オ) 原告は、乙第9号証の2及び乙第10号証は本件出願後に撮影された写真であって、本件考案7の進歩性の判断に影響を及ぼすものではない旨主張する。
しかしながら、乙第9号証の2は、本件出願前からE351系特急形直流電車説明書が存在することを立証するものであり、また、乙第10号証は、昭和56年3月26日から存在する新幹線車両200系H5編成の座席の構造を立証するためのものであるので、それらの写真撮影年月日が本件出願後であることは、これらの証拠を採用することができない理由とはならないものである。
理 由1 取消事由1(本件考案1に関する新規性の判断の誤り)について (1) 要旨認定について 甲第2号証によれば、本件明細書の本件実用新案登録請求の範囲第1項の記載([A]、[B]は、引用者が付加した。)は、「列を成して配置された複数の座席のうち、ひとつの座席[A]の前に配置されている座席[B]の背後に、テーブルの表面を前記ひとつの座席[A]の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席[A]側に臨む第1姿勢と、・・・前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席[A]に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置。」であることが認められるが、ここで、テーブルの装着位置は「ひとつの座席[A]の前に配置されている座席[B]の背後に、」が正しいとすると、
「テーブルの表面を前記ひとつの座席[A]の背もたれ部背面側に向け」との構成が意味をなさなくなり、実用新案登録請求の範囲の記載第1項の記載自体に矛盾が生ずるものとなる。
そこで、本件実用新案登録請求の範囲第1項の記載全体を矛盾なく理解しようとすると、本件考案1は「テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席[A]に着座している人からみて正立状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを・・・装着した」ものであるから、第1姿勢においてテーブルの裏面は、着座した乗客が認識可能なように、着座した乗客の方を向いていなければならず、必然的に、テーブルの表面は、「ひとつの座席[A]の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席[A]側に臨む」のではなく、「ひとつの座席[A]の前に配置されている座席[B]の背もたれ部背面側に向けテーブルの表面を前記ひとつの座席[A]の前に配置されている座席[B]側に臨む」ことになると理解せざるを得ないものと認められる。
したがって、これと同旨の「誤記と解釈されるため、本件考案を上記のように認定した」(審決書10頁2行、3行)との審決の認定に誤りはない。
これに反する被告の主張は採用することができない。
(2) 対比 本件考案1と甲第3号証に記載のものとの対比のうち、甲第3号証に記載のものの「着脱容易」が本件考案1の「着脱交換可能に装着」に、「広告物表示材及びこれに取り付けた乗物内露出物」が「乗物の広告装置」にそれぞれ相当すること(審決書17頁2行ないし4行)、及び両者は、「前記テーブルの裏面に第1姿勢で前記ひとつの座席に着座している人からみて所定状態となるシート状の広告情報が表示された表示シートを着脱交換可能に装着したことを特徴とする乗物の広告装置である点で一致」することを除く事実は、当事者間に争いがない。
(3) 構成要件aについて 甲第3号証には、「テーブル部表面10上に接着剤を介してシート状物21を貼着した広告物表示材9の表面に圧接密着された広告媒体23を後部座席に座った際に直視することができる」と記載されていること(審決書14頁2行ないし5行)は、当事者間に争いがない。
甲第3号証には「正立状態」との記載はないものの、後部座席に座った者が広告媒体を直視する場合に、表示すべき情報を正立状態で表示することは、特別の事情がない限り、当然のことであるところ、甲第3号証には、上記特別の事情があることをうかがわせる記載はないから、甲第3号証に記載のものにおいても、第1の姿勢での広告情報は正立状態にあると認められる。
そうすると、甲第3号証に記載のものも、構成要件aを備えているものと認められる。
これに反する原告の主張は、採用することができない。
(4) 構成要件bについて ア 原告は、本件考案1は、表示シートをテーブルの裏面に「直接」設けるものである旨主張するが、本件実用新案登録請求の範囲第1項には、「直接」なる文言はなく、考案の詳細な説明及び図面にもそのように限定して解すべきことを認めるに足りる記載はないから、本件考案1は、表示シートをテーブルの裏面に直接設けるものも間接的に設けるものも含むものと認められ、これに反する原告の主張は採用することができない。
イ 甲第3号証に記載のものの「表面に広告を印刷した広告媒体」が本件考案1の「シート状の広告情報が表示された表示シート」に相当することは、前記のとおり当事者間に争いがない。
そして、甲第3号証に、「本発明は、上記の点に鑑みて、乗物内において取り付け場所が狭く表面状態が平滑でなくても広告物の着脱が容易で簡易な広告物表示材及びこれを取り付けた乗物内露出物を得ることを目的とする。」(発明の詳細な説明【0003】)、「前記目的を得るため、表面側は平滑面を有するシート状物で裏面側は接着剤を介して乗物内露出物の表面に貼着されてなる広告物表示材により上記課題を解決した。また、シート状物が合成樹脂フィルムよりなる広告物表示材であるのが好ましい。また、前記広告物表示材が表面に貼着されてなる乗物内露出物により上記課題を解決した。」(同【0004】)と記載されていることは、当事者間に争いがなく、また、甲第3号証には、テーブル表面(本件考案1における「裏面」に相当)が乗物内露出物の例として挙げられていること(発明の詳細な説明【0009】ないし【0011】)も、当事者間に争いがない。
そうすると、甲第3号証記載のものも「表示シートはテーブルの裏面に設けられる」との構成を有するものである。
ウ また、本件考案1は「着脱交換可能」と規定するが、この要件は、ある表示シートを装着後剥がすことができ、その後別の表示シートを装着することができることを意味するものと認められる。
当事者間に争いのない甲第3号証の記載によれば、甲第3号証に記載のものは「着脱容易」なものであるところ、着脱容易である以上、表示シートを剥がすことができ、その後には当然別の表示シートを装着することができるものであるから、
本件考案1の「着脱交換可能」との要件を満たすものと認められる。
これに反する原告の主張は採用することができない。
(5) 乗物の広告装置の点について なお、原告は、審決が甲第3号証に記載のものにおける「広告物表示材及びこれを取り付けた乗物内露出物」が本件考案1の「乗物の広告装置」に相当し、両者が「乗物の広告装置」である点で一致すると認定した点も争うが、甲第3号証によれば、同号証に記載のものにおいては、乗物内露出物に貼着された広告物表示材に広告媒体が装着されるものであり、同号証に記載のものにおける「広告物表示材及びこれを取り付けた乗物内露出物」は本件考案1の「乗物の広告装置」であると認められるから、原告の上記主張は理由がない。
(6) まとめ よって、本件考案1は甲第3号証に記載された考案であるから、実用新案法3条1項3号の規定により実用新案登録を受けることができないとの審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由1は理由がない。
2 取消事由2(本件考案2に関する進歩性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 剥離性粘着剤等の点について ア 本件考案2と甲第3号証に記載のものとの対比(審決書19頁6行ないし9行)は、当事者間に争いがない。
イ 乙第2号証(特開昭52-23139号公報)、乙第3号証(特開昭59-58072号公報)及び弁論の全趣旨によれば、剥離性粘着剤を種々のシートに用いて貼り付けることは各種分野で採用されている周知慣用の手段であると認められる。
そうすると、このような周知手段を甲第3号証に記載された考案における表示シートの貼り付けに用いて着脱交換可能とすることは、当業者が極めて容易に想到し得ることと認められる。
ウ 原告は、乙第2、第3号証は、審判段階において提出された証拠ではなく、本訴においてその提出が認められるべきではない旨主張するが、上記乙号各証は、審決で本件考案2が甲第3号証及び第4号証に記載されたものに基づき進歩性を欠くと判断された前提理由として周知慣用の手段とされた周知技術が存在していたこと及びその内容を立証するためにのみ使用されるものであって、上記乙号各証の記載内容に照らしてみても、それらを新たな引用例とするものではないことが明らかであるから、それらの提出が許されないものと解することはできず、この点の原告の主張は採用することができない。
エ そして、本件考案2の「広告掲出期間が完了した場合に表示シートの交換が容易に行える」という効果は、甲第3、第4号証に記載のものから当業者が予測し得る範囲の効果にすぎないものと認められる。
(3) まとめ よって、本件考案2は甲第3、第4号証に記載された内容に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないとの審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由2は理由がない。
3 取消事由3(本件考案3に関する進歩性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 対比 本件考案3と甲第3号証に記載のものとの対比(審決書20頁16行ないし19行)は、当事者間に争いがない。
(3) 合成樹脂フィルムの採択の点について 相違点についての判断のうち、「甲第2号証(本訴甲第3号証)中には、広告媒体が圧接密着されるシート状物に関し「シート状物21は表面が平滑なシートであればどのような材質でもよいが、通常合成樹脂フィルム例えば塩ビ、ポリエチレン又はポリプロピレンなどが最も簡便である」と記述されていること(審決書21頁2行ないし7行)は、当事者間に争いがない。
この事実によれば、合成樹脂フィルムはシートの材質としてごく普通に選定されるものであり、表示シートを合成樹脂フィルムとすることに格別の技術的困難性はないものと認められる。
これに反する原告の主張は採用することができない。
(4) 透明または不透明の点について 本件考案3は「透明または不透明」を要件としているが、そのことは、透明な場合は不透明シートが奏する効果を奏さず、 不透明な場合は透明シートが奏する効果を奏さないことになり、結局、どの効果も本件考案3の効果と認めることはできないから、「透明または不透明」という限定は透明性に関し、何ら限定しないことと等価であると認められる。
これに反する原告の主張は採用することができない。
(5) まとめ よって、これらと同旨の審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由3は理由がない。
4 取消事由4(本件考案4に関する進歩性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 対比 「本件考案4は、本件考案1乃至3のいずれか1の考案に、「表示シートは、テーブルの裏面への装着前においては剥離性粘着剤層を介して剥離シートに貼着され、前記テーブルの裏面への装着に際して前記剥離シートを剥がして使用する」という構成を付加したものである」こと(審決書22頁7行ないし12行)は、当事者間に争いがない。
(3) 剥離シートの点について ステッカー等の接着剤塗布面保護紙としてはく離紙を使用することが甲第4号証の「はく離紙」の項に記載されていること(審決書19頁10行ないし15行)は、当事者間に争いがない。
そうすると、本件考案4のように構成することは、甲第3号証及び甲第4号証に記載された内容に基づいて当業者が極めて容易に想到し得ることと認められ、表示シートのテーブル裏面への装着前の取り扱いが容易である等の効果も、当然予測し得る範囲の効果にすぎないものと認められる。
(4) まとめ よって、これと同旨の審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由4は、理由がない。
5 取消事由5(本件考案5に関する進歩性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 対比 「本件考案5と甲第3号証に記載のものとを比較すると、本件考案5は、「表示シートはテーブルの裏面に備えられた表示シート収納部に収納されるようにした」点で甲第2号証(本訴甲第3号証)に記載のものと相違する。」こと(審決書23頁9行ないし13行)は、当事者間に争いがない。
(3) 収納部の点について 甲第5号証によれば、同号証(審判甲第6号証)には、実用新案登録請求の範囲に、「座席4の後部に取付ける座席用広告袋体であって、その広告用印刷物6を収納する二重袋1には外の袋部1bが低く段差を設けると共に前記袋部1bの表面を透明シート1cで形成し、前記二重袋1の下部にに紐5を取付け、上部にはヘッドレスト4aに被着可能なヘッドレスト被着部2を具備したことを特徴とする自動車の座席用広告袋体。」との記載があることが認められ、この記載によれば、甲第5号証には、座席の後部(すなわち、座席の背もたれ部背面側)に袋体を設け、該袋体に広告用印刷物を収納することが記載されているものと認められる。
そうすると、甲第3号証に記載の表示シートをテーブルの裏面に装着する際に、
収納部を用いて実現することは、当業者が極めて容易に想到し得ることであると認められ、表示シートのテーブル裏面への装着が容易に行えるとの効果も、甲第3及び第5号証に記載のものから当業者が予測し得る範囲の効果にすぎないと認められる。
(4) まとめ よって、これと同旨の審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由5は理由がない。
6 取消事由6(本件考案6に関する新規性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 対比 本件考案6は、本件考案1に「旅客機、旅客車等の乗物の機内または車内に」という点を付加したものである」こと(審決書24頁10行ないし12行)は、当事者間に争いがない。
(3) 設置場所の点について 甲第3号証によれば、同号証には、「本発明は、航空機、陸上又は海上用乗物・・・の座席、壁面、窓回り又は用品等・・・に好適な広告媒体の着脱容易で簡易な広告物表示材及びこれを取り付けた乗物内露出物に関する。」(発明の詳細な説明【0001】)と記載されていることが認められ、この記載によれば、上記付加した設置場所の構成が開示されているものであり、本件考案6と甲第3号証に記載のものとの間に実質的な構成上の差異はないものである。
(4) まとめ よって、これと同旨の審決の判断に誤りはなく、原告主張の取消事由6は理由がない。
7 取消事由7(本件考案7に関する進歩性の判断の誤り)について (1) 構成要件a及びbについて 前記1のとおりであり、この点についての原告主張は理由がない。
(2) 対比 本件考案7は、本件考案4に更に座席の構成を詳細に限定したものであること(審決書25頁6行、7行)は、当事者間に争いがない。
(3) 座席の点について 座席の構成について、審決は、「限定された構成は、文献を示すまでもなく、本件登録実用新案の出願前から存在する通常の鉄道車輛の座席の構造を、座席の構成要件毎に単に羅列したものと解するのが相当であり、甲第3号証(審決甲第2号証)に記載の座席をこのように限定すること自体に格別の考案力を要するとは認められない」旨判断している。そこで以下に座席の構成に関する審決の判断の当否につき検討する。
ア 弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な事実によれば、@ 前記座席はこの座席に着座する人の尻部を支えるクッション性を有した座部と前記着座する人の背中を支えるクッション性を有した背もたれ部と前記着座する人の腕および肘を支える肘掛け部とを含み、B 前記座席はリクライニング機構によって背もたれ部を着座する人の所望の傾斜角度に保持することが可能であって、C 前記肘掛け部は背もたれ部側の基端部を肘掛け部支持体に回動自在に取り付けられ、肘掛け部の先端部には吸い殻入れが設けられ(る)との点は、本件出願当時、特急電車、航空機等に広く採用されていた構成であると認められ、甲第3号証に記載の座席をこのように限定すること自体に格別の考案力を要するものとは認められない。
イ A 前記座席は座席の下側に設けられた脚部によって支持されるという点は、座席を支持する部分は当然座席の下側にあり、それを「脚部」と称したものと解されるから、このように限定すること自体に格別の考案力を要するものとは認められない。
ウ 弁論の全趣旨及び当裁判所に顕著な事実によれば、D 前記座席の背もたれ部の背面部には、金属製の枠体と前記枠体に取り付けられた合成繊維製の編とによって構成されるポケット部と、前記第1姿勢においてテーブルを背もたれ部の収納用凹部に保持することができる合成樹脂製の係止具を含む係止装置とが設けられ、E 前記テーブルは合成樹脂製であって、テーブルの表面にはコップ置き用の凹部が設けられ、テーブルの裏面の前記第1姿勢において上側となる上端部中央付近には前記係止具が嵌合される係止用凹部が設けられ(る)との点は、枠体の材質が金属であること、編の材質が合成繊維であること、係止具の材質が合成樹脂であること及びテーブルの材質が合成樹脂であることを除き、本件出願当時、特急電車、航空機等に広く採用されていた構成であると認められ、枠体、編及び係止具の材質についても、本件出願当時における常識的な選択事項と認められ、甲第3号証に記載の座席をこのように限定すること自体に格別の考案力を要するものとは認められない。
エ F 乗物の進行方向に沿う面に略平行なテーブルの側面の前記第2姿勢におけるテーブルの前記背もたれ部側の基端部には合成樹脂製または金属製の支持アームの上端部に形成される支持ピン用凹部に嵌合する支持ピンと回動ピン用凹溝に嵌合する回動ピンが形成され、前記支持ピンおよび回動ピンによってテーブルが支持アームの上端部に回動自在に装着され(る)との点について、技術常識に基づき判断すると、テーブルと支持アームの回動角を規制しつつ、回動自在とすることは当然に要求されることであり、回動自在とするにはテーブルと支持アームの一方に支持ピン、他方に支持ピン用凹部を設けた構成とすることが一般的であるところ、
テーブル側面に凹部を設けることが困難であることにかんがみれば、支持ピンを設ける側をテーブルとすることも通常であると認められる。さらに、第2姿勢で水平状態を維持する以上、テーブル重心は支持ピンよりも後ろ側になければならないから、支持ピン位置が「テーブルの第2姿勢における背もたれ部側の基端部」となることは必然であると認められる。また、回動角規制のためにはストッパ機構に相当するものが必要とされるところ、これを支持ピン回りに回動する回動ピン(支持ピン同様の理由により、テーブル側面に設けるのが自然である。)と回動ピンがその回動範囲においてのみ回動可能となるような凹部、すなわち回動ピン用凹溝により実現することも一般的と認められる。支持アームの材質の点についても、金属や合成樹脂は一般的である。したがって、Fのように構成された座席は、
本件出願当時の通常の座席の構成であり、そのように限定すること自体に格別の考案力を要するものとは認められない。
オ しかしながら、G 支持アームの下端部に形成された軸受によって支持アームは座席に揺動自在に装着され、支持アームは前記第2姿勢において支持アームの下端部に設けられた支持アーム規制ねじが座席内部に設けられた支持アーム規制片に当接することによってテーブルの表面が水平に保持されるような一定の傾斜を保持することができるとの点については、本件出願当時、特急電車、航空機等に採用されていた座席の構成であるとか、審決が説示するように、「文献を示すまでもなく、本件出願当時存在していた通常の鉄道車両の座席の構造を示したものであり、格別の考案力を要するものではない」と認めることは困難であり、これを認めるに足りる証拠は審決手続において提出されていなかった。
すなわち、上記Gの点のうち、弁論の全趣旨によれば、支持アームが座席に揺動自在に装着されること、及びその揺動角を規制する必要があることから何らかのストッパ機構が存在することは、本件出願当時、当業者が極めて容易に知り得たことと認められる。
しかしながら、ストッパ機構の構成については、上記の要件Fの支持ピンと支持ピン用凹部のような係合形態も可能であるから、本件考案7のように、支持アーム側部材を規制ねじとし、座席側部材を支持アーム規制片とすることが本件出願当時の通常の座席の構成であるとか周知慣用の構成であることを認め得る証拠はなく、
審判手続においてこの点に関する証拠は提出されていなかった。
被告は、本訴において、この点を立証するため、乙第10号証を提出し、新幹線車両200系H5編成の座席(乙第10号証)の検証を申し立てているが、審決は、前記のとおり、「本件登録実用新案の出願前から存在する通常の鉄道車両の座席の構造」(審決書25頁8行、9行)に基づいて判断したものであり、その限度においては正当なものとして是認し難いところである。そして、この点に関し、乙第10号証や新幹線車両200系H5編成の座席の検証の結果との対比における本件考案7の進歩性の有無は審決の判断を経ていないものであるから、当裁判所は、
乙第10号証に基づく認定、判断をせず、かつ上記検証の申立てを採用しないこととする。
(4) よって、審決の本件考案7についての判断には一部誤りがあり、原告主張の取消事由7は理由がある。
8 結論 以上によれば、原告の請求は、審決の結論のうち、本件考案7についての登録を無効とするとの部分の取消しを求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結の日 平成12年2月29日)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 市川正巳
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