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関連審決 審判1996-17296
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  新規性(3条1項) /  請求項 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 103号 審決取消請求事件
原告 【A】
訴訟代理人弁理士 【B】
被告 東急車輌製造株式会社代表者代表取締役 【C】
訴訟代理人弁護士 高西 金次郎
同 弁理士 【D】
同 【E】
同 【F】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/06/12
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた判決
1 原告 特許庁が、平成8年審判第17296号事件について、平成11年3月10日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「大型掘削機械用のトレーラ台車」とする実用新案登録第2061672号考案(平成1年7月26日実用新案登録出願、平成7年5月23日設定登録)の実用新案権者である。
被告は、平成8年10月11日、上記実用新案の登録を無効とする旨の審判を請求した。
特許庁は、同請求を平成8年審判第17296号として審理したうえ、平成11年3月10日に「登録第2061672号実用新案の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同月17日原告に送達された。
2 上記実用新案登録請求の範囲請求項1に記載された考案(以下「本件考案」という。)の要旨 グーズネックの基部から、後輪間を低床部、又後輪上を高床部としたトレーラ台車において、上記高床部の中央部分に前後方向に通ずる凹溝を設け、この部分にバケット背部のヒンジアームが陥入可能であるようにすると同時に、グーズネックの両側フレーム上面に低床部の道板を延設したことを特徴とする大型掘削機械用のトレーラ台車。
3 審決の理由の要点 審決は、別添審決書写し記載のとおり、審判検証物であるセミトレーラ(以下「検証物セミトレーラ」という。)が、本件考案と同一の構成を有し、かつ、その実用新案登録出願前に製造され、使用されたものと認定することができるから、
旧実用新案法3条1項1号又は2号に該当し、同法37条1項1号の規定により無効にすべきものとした。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、本件考案の要旨の認定(下記取消事由1に係る部分を除く。)、検証物セミトレーラの構造等の認定(審決書12頁17行〜13頁19行。下記取消事由2に係る部分を除く。)は認める。
審決は、本件考案の要旨の認定を誤るとともに(取消事由1)、検証物セミトレーラの構成の認定を誤った(取消事由2)結果、検証物セミトレーラが本件考案と同一の構成を有するとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消さなければならない。
1 取消事由1(本件考案の要旨の認定の誤り) 審決では、「なお付言すると、本件考案の要旨の一部である『ようにすると同時に』という事項が、大型掘削機のヒンジアームが凹溝に陥入している状態と、
キャタピラーの一部が延設部の道板上にある状態を同時に満たす構成を示すものでないことは願書に添付された明細書及び図面の記載に照らし明らかである。」(審決書28頁12行〜18行)と判断しているが、本件考案の本質を誤ったものであり、審決は取り消されるべきである。
すなわち、本件考案における「ようにすると同時に」という限定は、大型掘削機械を積載した場合には、キャタピラーの一部を延設部に道板上まで進出させ、
この状態において「同時に」掘削機械のバケットのヒンジアームが凹溝に陥入することを必須の要件とすることは明らかである。これを満足することによって「従来のこの種トレーラ台車では、通過不能であったトンネルやガード下あるいは侵入不可能な幅員の道路でも自由に通行できる」(甲第2号証公報4欄30〜33行)という効果を発揮しているものである。
2 取消事由2(検証物セミトレーラの構成の認定の誤り) 審決は、検証物セミトレーラは「高床部の中央部分に前後方向に通ずる凹溝・・・の部分にバケット背部のヒンジアームが陥入可能である」(審決書24頁9行〜12行)との構成を有している旨認定しているが、以下のとおり、誤りである。
(一) 本件考案のトレーラ台車は、「大型掘削機械用」のものであり、ここでいう「大型」とは、道路交通法等における大型の概念とは異なり、明確に当業者における定義は存在しないから、明細書及び図面に基づいて特定されるべきである。
そうすると、甲第2号証公報1頁左欄12行〜14行に「特に重量20トン前後のバックホータイプの掘削機械を搭載して運搬することを目的としたものである。」と特定されているように、この重量が基準とされるべきである。
(二) ところが、審判検証調書(甲第4号証)2頁では、検証物セミトレーラについて、「C重量20トンの掘削機械(写真1)のヒンジアームは、幅広部分に陥入可能である(写真12)が、凹溝には陥入できない。D写真1の重機より小型の掘削機械(写真4)のヒンジアームは、凹溝に陥入可能である(写真14)。」という結果を示している。すなわち、検証物セミトレーラは、「大型掘削機械」のヒンジアームを凹溝に陥入させることができないものであり、審決が採用する審判【G】証人の証言(小松製作所20HTクラスのパワーショベルのヒンジアームが製造当時の検証物セミトレーラの凹溝に陥入した旨の供述部分)は、上記検証結果と矛盾するものである。
なお、上記審判検証調書写真4に示す程度の小型掘削機械であれば、コスト面や操作容易という面から小型の車で運搬するのが通常であるから、小型掘削機械のバケットのヒンジアームが検証トレーラの凹溝に陥入したことは本件考案の成立要件には何ら影響を与えるものではない。
(三) 審決書17頁18行〜18頁1行において、「4台設計したというセミトレーラのうちの犬飼運送以外の1台について、落とし込み部にバケット背部のヒンジアームが入ったことを確認したことがあること」という認定が凹溝の用法としてバケットのヒンジアームが陥入するという重要な事実認定の根拠とされているが、そのセミトレーラがどのような構造であったかについては全く不明であり、しかも積載する掘削機械がどの程度の大きさであったかということについては全く確認すらできておらず、審理を尽くしていないというべきである。
(四) ところで、検証物セミトレーラの凹溝の幅は、製造当初は420oであったところ、【G】あるいは別の者が後日これを490oに広げたものであるが、
製造当時には20トンクラスのパワーショベルのヒンジアームは420oの凹溝幅に陥入することができなかったことが判明している。
例えば、コマツPC200型パワーショベルは、当時の小松製作所20HTと同等の型式であるが、そのヒンジアーム幅(ピンの長さに相当する)は435oである(甲第6号証の1)。神鋼コベルコ建機株式会杜の昭和57〜58年頃に製作したSK07-1型及びSK05-1型においては、ピンの長さはそれぞれ433oと392oであった。このうち、20トンクラス以上の大型機械に相当するものは433oのピン長さを有するSK07-1型であり、SK05-1型は、小型機種である(甲第6号証の2)。甲第6号証の3は日立建機株式会杜20トンクラスのパワーショベルのピン長さを示したものであり、ピン長さは415oである。この数値は、凹溝幅である420oよりは5o狭いが、大型のパワーショベルのアームを運転席から操作して420oの凹溝に対して415oのピンが緩衝しないように陥入させることは至難である。甲第6号証の4は、新キャタピラー三菱株式会杜の昭和59年前後の製造に係るパワーショベルのピン長さを示したものであり、MS180-3型及びMS180-8型のいずれも、検証物セミトレーラの凹溝よりも広い459oの長さを示している。
(五) 検証物セミトレーラを製造した当時、大型の掘削機械を運搬するに際して凹溝にヒンジアームを陥入するという考えがあれば、検証物セミトレーラでも設計が可能であった500o程度の凹溝幅を適用していたはずであり、このような思想がなかったからこそ、大型掘削機械を運搬するためのトレーラでありながら凹溝の幅が当時のパワーショベルのヒンジアームの一般的なピン長さよりも狭い、あるいは余裕がない不十分な構造としたのである。そして、後日、凹溝の用途に気づいた犬飼運送あるいは別の者が車体強度の劣化という危険を承知しながら凹溝の一部を70oも広げて490oとしたと理解すべきである。
しかも、凹溝の幅を広げた時期については証拠間に食い違いがあるため特定すら不可能である。いずれにしてもその時期が本件考案の出願より前であったという立証はなされていない。
なお、「改造自動車等届出書」(甲第7号証の1)、「改造自動車等審査結果通知書」(甲第7号証の2)及び「東急TD2511故セミトレーラ外観四面図」(甲第7号証の3)によっても、高床部は荷台として申請及び承認されていない。したがって、審判各証人の証言が事実であるとすれば、犬飼運送が荷台として承認されていない凹溝のある高床部に予定通りの積載を行った場合には道路交通法(55条第1項本文)に違反することとなるが、セミトレーラの一大メーカーである被告が上記法規違反の蓋然性を傍観し、あるいは検証物セミトレーラの販売に関与した2人の審判証人及び他の雇用者全員が、道路交通法を理解していないというのはあまりに不自然である。そうすると、検証物の凹溝は、バケットのヒンジアームを陥入させることを積極的な目的として設計されたものではなく、後日この用途に気づいた【G】が汎用的にバケットのヒンジアームを陥入することができるように凹溝の幅を広げたものと理解することが、全ての事実関係を齟齬なく整合させる唯一の解釈である。
被告の反論の要点
審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(本件考案の要旨の認定の誤り)について 原告の主張を争う。
2 取消事由2(検証物セミトレーラの構成の認定の誤り)について (一) 掘削機(掘削機械)の分類について建設機械業界では、通常、掘削機のバケットの容量に基づいて大型、小型の区分をしており、バケットの容量0.2立方メートル未満、重量6トン未満を「ミニシヨベル」と呼び、バケット容量0.2立方メートル以上、重量6トン以上を「大型掘削機」と呼んでいる。また掘削機の諸統計も、上記区分けでなされている。したがって、乙第2号証に示す小松20-HT(標準バケット容量0.7立方メートル、重量18.5トン)は大型掘削機であり、さらに、住友S-265(0.45立方メートル、11.9トン)も大型掘削機である。
本件実用新案でいう「大型掘削機械」とは、建設機械業界でいう11トン以上のものを含んでいると解釈されるべきである。
(二) 原告は、コマツPC200のヒンジアーム幅(ピンの長さに相当)は435oであり、これと小松20HTは同等の型式であるから、検証物セミトレーラの製造当時の凹溝幅では当該ヒンジアームは陥入できなかったはずであり、審判【G】証人の証言と審判検証結果に矛盾があると主張する。
しかし、審判検証で用いられたパワーショベルは、当時の小松20HTそのものではないから、証言と検証結果が相違するのは当然である。
さらに、乙第1号証の2に示すとおり、PC200-3(#20001〜#29205)のリングアッセンブリには、欠部を有する略台形状板を備え、それ以前に製造された「小松20-HT」と「PC200-1、2」にも同様な略台形状板を備えていることを示している。すなわち、「小松20HT」は、欠部を有する略台形状板を備えるため、ヒンジアーム取り付けピンそのものは凹溝に陥入しないが、ヒンジアームと一体となっている上記略台形状板の短辺部Aが接地するのである。
(三) 原告は、凹溝を拡幅した時期の立証がないと主張するが、同拡幅の時期は納車から3〜4年後であったとの審判【G】証人の証言が認められ、その時期が出願前である以上、検証物セミトレーラーが本件考案の実用新案出願前にこれと同一の構成を有していたといい得る。
(四) 被告は、犬飼運送から注文を受け(甲第5号証の2、006〜013)、検証物セミトレーラの設計時には、ヒンジアームが凹溝の底に着くことを考慮して設計している(甲第5号証の3、014、030、031、102〜109)。また、その設計者である審判【H】証人は、凹溝部が荷台として登録できないことは承知している(甲第5号証の3、083、084)。
したがって、被告は凹溝の機能について承知していたというべきであり、
原告が主張する「検証物の凹溝はヒンジアームを陥入させることを目的として設計されたものではなく、後日、この用途に気づいた【G】が幅を広げたものである」というようなものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件考案の要旨の認定の誤り)について 原告は、本件考案が、大型掘削機のヒンジアームが凹溝に陥入している状態と、キャタピラーの一部が延設部の道板上にある状態を同時に満たす構成を有するものではないとの審決の認定が誤りであると主張するが、この点の判断は、審決の結論に影響しないから、取消事由としては主張自体失当である(原告の指摘する審決の前記説示は傍論にすぎず、その当否は審決の結論を左右するものではない。)。
2 取消事由2について (一) 原告は、検証物セミトレーラの凹溝の幅は製造当初は420oであったところ、コマツのPC200型パワーショベル(当時の20HTと同等の型式)のピンの長さ(ヒンジアーム幅)は435oであり、凹溝に陥入することはできなかったと主張し、この点に関する審判【G】証人の証言との矛盾を指摘する。
たしかに、審判検証で「重量20トンの掘削機械」として用いられたコマツPC200型パワーショベルは、審判【G】証人が証言中で言及する20HTの後継機種であると認められる(乙第1号証の2)ものの、20HTのヒンジアームのピンの長さについては、これを直接示す証拠はない。そして、PC200シリーズがモデルチェンジの都度大型化している傾向にあること(甲第6号証の1)も踏まえると、20HTのヒンジアームのピンの長さが検証物セミトレーラの凹溝の幅である420oを超えていたかどうかは不明というべきである。
加えて、乙第1号証の1、2、同第2号証の1〜3によれば、20HTは、ヒンジアームの部品として乙第1号証の2の図面に示される略台形状部材が設置されていること、セミトレーラ搭載時にヒンジアームは、この略台形状部材で底面に接触すること、この部材の接地部となる短辺部(同図面A)の長さが190o、長辺部(同図面B)の長さ280oであることが認められる。そうすると、20HTのヒンジアームのうち、この略台形状部材の部分が420o幅の凹溝に陥入することは十分可能であったと認められ、しかも、このことはバケットのピンの長さいかんによって左右されるものではない。
そして、20HTは重量18.5トンであり(乙第2号証の3)、原告の主張(上記第3の2(一))によっても「大型掘削機械」に該当すると認められることからすると、審決が、大型掘削機械を搭載した検証物セミトレーラについて、
「高床部の中央部分に前後方向に通ずる凹溝・・・の部分にバケット背部のヒンジアームが陥入可能である」との認定を行ったことは正当というべきである。
(二) なお、原告は、検証物セミトレーラの凹溝が製造当初はヒンジアームを陥入させることを目的としていたものではなかったところ、後日その用途に気づいて拡幅したものであると主張するが、審判【G】証人の注文を出した経緯や、拡幅の理由と時期に関する証言(甲第5号証の1、027〜050、051〜054)、同【I】証人の注文を受けた経緯に関する証言(甲第5号証の2、006〜013)、同【H】証人の設計及び受注の経緯に関する証言(甲第5号証の3、012〜014、023〜043)から判断しても、検証物セミトレーラが、その設計、製造当初から、掘削用機械の搭載時にブームの高さを低く押さえるため、ヒンジアームを陥入させるための凹溝を高床部に設けるという技術思想を明確に有していたことは明らかというべきであり、そして、そのような技術思想を前提とすると、凹溝の幅をどの程度とするかは、搭載して運搬することを予定する掘削機械によって定まるもので、いわば設計事項の範囲内にあり、原告が主張する事情(上記第3の2(五)等)はこの認定を何ら妨げるものではない。
3 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 田中康久
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利
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