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関連ワード 損害額 /  考案 /  請求の範囲 /  利益額 / 
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事件 平成 11年 (ネ) 5647号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件
原告(控訴人、被控訴人) 株式会社 バルテック 代表者代表取締役 【A】
訴訟代理人弁護士 島田康男黒田彩霧
補佐人弁理士 【B】 【C】
被告(控訴人、被控訴人) 株式会社 マツヤ商会 代表者代表取締役 【D】
被告(被控訴人) 有限会社 ナック技研 代表者代表取締役 【E】
被告両名訴訟代理人弁護士 大野聖二復代理人弁護士 城山康文
被告両名補助参加人 株式会社 パル工業 代表者代表清算人 【F】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/09/26
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 本件各控訴を棄却する原告の控訴によって生じた当審の訴訟費用は、参加によって生じたものも含め原告の負担とし、被告株式会社マツヤ商会の控訴によって生じた当審の訴訟費用は、
参加によって生じたものも含め同被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
一 原告「被告株式会社マツヤ商会は原告に対し、五四〇〇万円及びこれに対する平成九年五月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
被告有限会社ナック技研は原告に対し、一二〇〇万円及びこれに対する平成九年五月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。」 との判決並びに仮執行宣言。
二 被告株式会社マツヤ商会「原判決中、同被告に関する部分を取り消す。
原告の同被告に対する請求を棄却する。」 との判決。
事案の概要
一 原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」に示されているとおり、原告において、被告物件(電動型スロットマシン「ラスターJ」)を製造、販売した被告らの行為が原告の本件実用新案権(考案の名称「電動型スロットマシンのリール停止時間間隔制御装置」。登録第二〇四三五一七号)を侵害するとして損害賠償を請求している事案につき、原判決が被告株式会社マツヤ商会の本件実用新案権侵害を認め、七五八万七二五〇円及び遅延損害金の損害賠償を命じる一方、被告有限会社ナック技研の侵害は否定したのに対し、原告が請求額全額の支払を求めて被告両名を被控訴人として控訴し、被告株式会社マツヤ商会が原判決の請求認容部分の請求棄却を求めて控訴した。
二 前提となる事実及び争点は、原判決の前記「第二 事案の概要」中に示されているとおりである。
原告は、被告株式会社マツヤ商会に関する損害額の算定につき、次のとおり主張を整理した(したがって、原判決一四頁一ないし四行目は当審における主張ではなくなった。)。
1 被告株式会社マツヤ商会による被告物件「ラスターJ」の販売台数は二七五九台である。
2 原告は「ラスターJ」と競合する電動型スロットマシンを製造、販売しているが、その一台当たりの利益は七万円を下らない(実用新案法29条1項の主張)。被告株式会社マツヤ商会は、「ラスターJ」の販売について、その部品、部材を安価に購入しており、同業者が取得する通常の販売利益以上の利益を得ており、一台当たり七万円以上の利益を得ている(実用新案法29条2項の主張)。
3 右利益額に被告株式会社マツヤ商会による「ラスターJ」の販売台数を乗じると、一億九三一三円を下らない。
4 よって、被告株式会社マツヤ商会の本件実用新案権侵害によって原告が被った損害は五四〇〇万円を下らない。
5 そうでないとしても、被告株式会社マツヤ商会は、「ラスターJ」を一台当たり少なくとも三六万円で二七五九台販売し、「ラスターJ」における本件考案の実施料率は五パーセントが相当であるから、被告株式会社マツヤ商会の本件実用新案権侵害によって原告が被った損害は四九六六万二〇〇〇円となる(実用新案法29条3項の主張)。
当裁判所の判断
当裁判所の判断は、次に補充、訂正するほか、原判決の一六頁一行目以下のとおりである(なお、原判決一六頁一行目の項目番号「三」は、論理上「第三」となるべきところである。また、原判決二二頁六行目の項目番号「四」を「4」に改める。)。
一 被告有限会社ナック技研の侵害の有無についての補充 この点の判断は原判決一六頁末行以下の(二)に説示のとおりであるが、原、当審の全証拠をもってしても、そこにおける前提事実を超えて、被告有限会社ナック技研の行為が、被告物件を組み立てる際に本件考案の構成要件を充足させるような態様のものがあったと認めることはできない。すなわち、被告有限会社ナック技研の行為は、原判決認定のとおり、被告株式会社マツヤ商会の注文を受けて、同被告が補助参加人株式会社パル工業から購入した電動型スロットマシン「スフィンクス7」の面取り部を除いた部分(本件考案の構成要件のすべてを充足する。)に「ラスターJ」用の面取り部を付けるなどの改造をしたものであり、要するに「スフィンクス7」に本件考案の構成要件以外の部分の改造を加えただけのものであるから、本件実用新案権を侵害したものということはできない。なお、乙第二七号証は、被告有限会社ナック技研が被告株式会社マツヤ商会に対して提出した「ラスターJ」の平成八年九月三〇日付け部品見積書であり、原告は、そこに記載されている部品からみると、被告有限会社ナック技研は「ラスターJ」につき本件考案の構成要件を構成する部分についても製造したことが裏付けられる旨主張する。
しかしながら、この見積書に記載されている部品が本件考案の構成要件のいずれに該当するものかを的確に認めることはできず、乙第二七号証をもってしても、被告有限会社ナック技研が本件実用新案権を侵害したものとは認められない。
したがって、原告の被告有限会社ナック技研に対する請求は理由がない。
損害額について 原判決の損害額についての判断を次のとおり改める(原判決一九頁末行から二二頁五行目までを次のとおり改める。)。
1 被告株式会社マツヤ商会の販売額 乙第一〇号証は、被告株式会社マツヤ商会が、平成九年一月一七日に、被告物件六五〇台を一台当たり二七万五〇〇〇円で、株式会社フクヤマ企画に販売した内容の売買契約書である。他方、甲第六、第七号証及び弁論の全趣旨によれば、日本電動式遊技機特許株式会社が株式会社萬両園を被告とする東京地方裁判所の訴訟(平成九年(ワ)第二〇六四一号)で、被告株式会社マツヤ商会が株式会社萬両園に対し被告物件一台当たり三七万〇八〇〇円として合計四〇七万八八〇〇円を返金したことを前提にして、平成一〇年三月一〇日に右訴訟当事者間で和解が成立したことが認められる。そうすると、前記乙第一〇号証における一台当たりの金額と格差が生じるので、乙第一〇号証を更に検討してみるに、同書証の売買契約書の備考欄に「納品期日につきましては、3月分として450台、4月分として200台。集金業務は、納品店舗支払い扱いとして販売手数料を集金後20日以内に決済」と記載されていることが認められるので、被告株式会社マツヤ商会から被告物件を購入した会社(乙第一〇号証の場合は、株式会社フクヤマ企画)は、販売手数料を上乗せした額で他に転売することを前提にしていたものと推認することができる。したがって、甲第六、第七号証によって認められる一台当たり三七万〇八〇〇円という返金額も、被告株式会社マツヤ商会からの買主がいわば販売代理店として受領した販売手数料を含むものであったことが推認されるのであり(被告株式会社マツヤ商会の代表取締役【D】の陳述書である乙第二二号証にもこの趣旨の記載がある。)、この三七万〇八〇〇円をもって、直ちに被告株式会社マツヤ商会の販売額と認めるのは相当ではなく、乙第一〇号証の売買契約書に記載の売買額一台当たり二七万五〇〇〇円をもって、被告株式会社マツヤ商会が被告物件二七五九台を販売した単価であったと認めるのが相当である。この認定を左右すべき証拠は他にない。
2 寄与度 次に、本件考案の内容は、電動型スロットマシンに関するリール停止時間間隔制御装置に係る考案であるが、従来の電動型スロットマシンにおいては、遊技者が、
誤って複数の停止スイッチをほぼ同時に押すと、それぞれのスイッチに対応したリールが一緒に止まっていたのに対し、本件考案は、ほぼ競技者が同時に停止スイッチを押した場合でも、いずれか一つのリールだけが止まり、他は止まらないようにすることを目的としたものであるが、右装置は、ステッピングモータに組み込まれて使用されるものである。他方、本件考案の登録請求の範囲によれば、本件考案は電動型スロットマシンのリール停止時間間隔制御装置に係るものであって、本件考案のリール停止時間間隔制御装置を組み込んだステッピングモータが電動型スロットマシンに搭載されることによって、電動型スロットマシンが完成するものであり、右ステッピングモータはスロットマシンの頭脳部として機能するものということができる。そうすると、本件考案のリール停止時間間隔制御装置を組み込んだステッピングモータなしでスロットマシンとして販売される場合の価格は、これが組み込まれた場合の価格と比べて相当低廉なものとなるものと推認することができる。本件において、この低廉となる度合が具体的にいかなるものかを明確に認めるべき証拠はないので、被告物件の売上に対する本件考案の寄与度は五〇パーセントを超えるものと認めることはできないし、また、これを下回るものと認めることもできず、結局、五〇パーセントをもって右の寄与度と認めるのが相当である。
なお、乙第二〇号証によれば、ステッピングモータは、独立の取引の対象になり得ること、スロットマシーンには、三個のステッピングモータが使用され、その価格は、概ね一個当たり一三〇〇円であったこと、原告は、日電協同組合の組合員に対して、本件実用新案権について、ごく低額の実施料で実施を許諾した例があったことなどの事実がうかがわれるが、右に判断したところに照らし、これらの事実関係も、五〇パーセントとの寄与度の認定を左右するに足りるものではない。さらに、電動型スロットマシンの制御に関して多くの実用新案権や特許権が存在することが認められるとしても(乙第二三ないし第二六号証)、被告物件に本件考案の寄与する割合にどの程度影響するかを具体的に認めることはできない。
3 実施料率 被告株式会社マツヤ商会は、本件考案の実施料が一台当たり五〇円とされた実績があると述べ、原告もそのような場合のあったことを否定しておらず、また、弁論の全趣旨によれば、このような低額の実施料は、電動型スロットマシンには前記のように多くの実用新案権や特許権などが関連していることの影響でもあって、その合意は電動型スロットマシンの業界で通常行われているものと認めることができる。これらの事情を総合勘案すると、本件考案の実施料率は二パーセントと認めるのが相当である。
4 実用新案法29条1項、二項に基づく損害額の主張について 原告は、当審において、「ラスターJ」と競合する電動型スロットマシンの製造、販売による一台当たりの利益は七万円を下らないと主張し、原告代表取締役の報告書である甲第八号証には、その趣旨の記載がある。しかしながら、この報告書にはその根拠が示されておらず、この報告書の記載をもって、原告の右主張の利益額と認めることはできず、他にこれを認めるべき証拠はない。また、被告株式会社マツヤ商会が「ラスターJ」の販売によって一台当たり七万円以上の利益を挙げたとの原告の主張事実についても、これを認めるべき的確な証拠はない。
したがって、実用新案法29条1項、二項に基づく原告の損害額の主張は理由がない。
5 損害額の結論 以上判断したところからすると、原告が被告株式会社マツヤ商会の本件考案の侵害により被った損害額は、次の算式による七五八万七二五〇円であると認めることができる(原判決の認定額と結論的に同額である。)。
二七万五〇〇〇×二七五九×〇・五×〇・〇二=七五八万七二五〇円
結論
よって、本件控訴はいずれも理由がない。
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 橋本英史
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