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事件 平成 12年 (ワ) 16890号 損害賠償請求事件
原告 【A】
被告 株式会社リコー右代表者代表取締役 【B】 右訴訟代理人弁護士 野上邦五郎
同 杉本進介
同 冨永博之
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2000/10/17
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 本件訴えを却下する。
二 訴訟費用は、原告の負担とする。
事実及び理由
原告の請求
被告は、原告に対し、一八八万七四〇〇円及びこれに対する昭和五六年六月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、左記実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有していた原告が、別紙イ号製品目録、同ロ号製品目録及び同ハ号製品目録記載の各製品(以下、
「イ号製品」、「ロ号製品」及び「ハ号製品」という。)を被告が業として製造販売し、本件実用新案権を侵害したと主張して、被告の製造販売した右各製品のうちの数台分について、主位的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、予備的に不当利得返還請求権に基づき、実施料相当額及び民法所定の遅延損害金の支払を求めている事案である。
記(一) 考案の名称 カッター装置付きテープホルダー(二) 出願年月日 昭和四一年六月一三日(三) 出願公告年月日 昭和四七年一月二二日(四) 登録年月日 昭和四七年九月二九日(五) 実用新案登録番号 第九七八六〇二号一 原告の主張 イ号製品、ロ号製品及びハ号製品は、昭和四七年九月二九日から昭和五六年六月一三日までの間にそれぞれイ号製品一五万台、ロ号製品八万台、ハ号製品一〇万台が製造販売された。そのうち、原告は、イ号製品につき当初の五台にかかる実施料相当額として二六万七〇〇〇円、ロ号製品につき当初の六台にかかる実施料相当額として三二万〇四〇〇円、ハ号製品につき当初の五台にかかる実施料相当額として一三〇万円の、合計一八八万七四〇〇円及び遅延損害金の支払を求める。
二 当裁判所に顕著な事実1 昭和五三年以降、原告は被告に対し、別紙第一目録ないし第三目録各記載の製品(以下「被告製品」と総称する。)の製造販売が本件実用新案権の侵害に当たると主張して、それによる損害の賠償又は不当利得金の返還を求める訴訟を、内金請求又は一定の台数分の被告製品についての請求という形に細分化して多数回にわたり提起しており、これらの請求はすべて棄却されていた。平成七年に原告が提起した訴訟(当庁平成七年(ワ)第一一五号。以下「前訴」という。)につき、当裁判所は、同年七月一四日、「原告の訴えは一部請求の名のもとにいたずらに同一の訴訟を蒸し返すものであり、これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするものであって、被告の地位を不当に長く不安定な状態におき、ことさらに被告に応訴のための負担を強いることを意に介さず、民事訴訟制度を悪用したものである」旨を理由として、右訴えは訴権の濫用に当たるものであって訴えの利益を欠き不適法であり、しかもその点を補正することができない旨を判示して、訴え却下の判決をした。原告は、右判決に対して控訴したが(東京高等裁判所平成七年(ネ)第三二七一号)、同年一一月二一日に控訴棄却の判決を受け、更に右判決に対して上告したが(最高裁判所平成八年(オ)第五八〇号)、平成九年一〇月一七日に上告棄却の判決を受け、訴え却下の判決が確定した。
2 前訴の一審判決の後にも、原告は被告に対し、本件実用新案権に基づいて被告製品の製造販売につき損害賠償ないし不当利得金の返還を求める訴えを提起したが(当庁平成七年(ワ)第二五七二九号、平成八年(ワ)一〇四二号、平成九年(ワ)第二三五六号、同第二三五八号、平成一〇年(ワ)第七八〇八号、平成一一年(ワ)第一三一七号、平成一二年(ワ)第六六六三号)、いずれの訴えも前訴と同様の理由で却下されている。
当裁判所の判断
一 本件訴えと前訴とは、実質的に同一期間内の被告製品の製造販売が本件実用新案権の侵害に当たると主張する点で共通しており、そのうちどの台数分を対象とするかの点においてのみ異なるものであると認められる(前記認定事実(前記第二、
二)、乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、本件で原告が主張するイ号製品、ロ号製品及びハ号製品は、それぞれ「リコーPPC九〇〇及びB・Aチェンジャー」「リコーPPC九〇〇及びセンタースリッター」及び「リコピーPL五〇〇〇オート」と認められ、期間については、原告は、前訴では「リコーPPC九〇〇及びB・Aチェンジャー」「リコーPPC九〇〇及びセンタースリッター」につき昭和四七年三月から昭和五二年一二月まで、「リコピーPL五〇〇〇オート」につき昭和四七年二月から昭和五三年七月までの間に製造販売されたと主張していたのに対し、本件ではいずれの製品についても昭和四七年九月二九日から昭和五六年六月一三日までの間に製造販売されたと主張して請求している。なお、そのうちどの台数分を対象とするかの点については、原告は、「リコーPPC九〇〇及びB・Aチェンジャー」「リコーPPC九〇〇及びセンタースリッター」につき、前訴では当初の一万四二四五台を除くその後の各五台を対象としていたのに対し、本件ではそれぞれ当初の五台、当初の六台につき請求しており、また、「リコピーPL五〇〇〇オート」については、前訴では当初の一万二九六五台を除いたその後の五台を対象としていたのに対し、本件では当初の五台につき請求している。)。
二 右事実によれば、本件訴えは、前訴と同様、請求棄却の判決が確定した事件と同一の紛争を蒸し返すものであって、金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した者が残部請求の訴えを提起することは原則として許されない旨の判例(最高裁判所平成九年(オ)第八四九号同一〇年六月一二日第二小法廷判決・民集第五二巻四号一一四七頁)の趣旨に照らしても、信義則に反するものというべきであり、しかも、本件と実質的に同内容の前訴について訴え却下の判決が確定しているにもかかわらず、本件訴訟が提起されたことからすれば、原告の本件訴えは訴権の濫用に当たる不適法なものと判断するのが相当である。
三 よって、本件訴えを却下することとし、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 三村量一
裁判官 和久田道雄
裁判官 田中孝一