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関連審決 異議1999-72070
関連ワード 国内優先権 /  考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  新規性(3条1項) /  請求項 /  実施例 /  頒布 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 59号 実用新案取消決定取消請求事件
原告 エスエムシー株式会社代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁理士 B
同 C
被告 特許庁長官D
指定代理人 E
同 F
同 G
同 H
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2000/11/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年異議第72070号事件について平成11年12月10日にした決定を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「スライドアクチュエータ」とする考案(以下「本件考案」という。)について、平成3年12月26日の国内優先権(優先権主張・実願平3-107509号)及び平成4年4月3日の国内優先権(優先権主張・実願平4-20194号、以下「先の出願」という。)を主張して、平成4年12月24日出願(実願平4-88434号、以下「本件出願」という。)をし、平成10年9月25日、設定登録(実用新案登録第2586276号)を受けた実用新案登録権者である。
株式会社コガネイは、平成11年5月27日、シーケーデイ株式会社は、同年6月2日、それぞれ本件実用新案登録につき登録異議の申立てをし、特許庁は、
この申立てを平成11年異議第72070号事件として審理した結果、平成11年12月10日、「実用新案登録第2586276号の請求項1ないし14に係る実用新案登録を取り消す。」との決定をし、その謄本は、平成12年1月17日、原告に送達された。
2 先の出願の願書に添付された明細書(以下「先の明細書」という。)及び本件出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲の記載 (1) 先の明細書の【請求項1】 流体圧によりシリンダボデイ内部のピストンを変位させるシリンダにおいて、
前記ピストンに一体的に係合し、一端部が前記シリンダボデイから突出するピストンロッドと、
前記シリンダボデイにスライド自在に構成されるとともに、ピストンロッドの一端部と係合するスライドテーブルと、
前記シリンダボデイに画成された第1の溝部と、
前記スライドテーブルに固着されたガイド部材と、
前記第1溝部と対向するように前記ガイド部材に画成された第2の溝部と、
前記第1および第2溝部によって形成される案内溝に90°ずつ交互に傾斜して嵌入される複数個の円柱形状のローラと、
を備えることを特徴とするスライドアクチュエータ。
(2) 本件明細書の【請求項1】(先の明細書のものと異なるのは、下線を付した部分である。) 流体圧によりシリンダボデイ内部のピストンを変位させるシリンダにおいて、
前記ピストンに一体的に係合し、一端部が前記シリンダボデイから突出するピストンロッドと、
前記シリンダボデイにスライド自在に構成されるとともに、前記ピストンロッドの一端部と係合するスライドテーブルと、
前記シリンダボデイ とスライドテーブル との 間に設けられた 案内機構 と、
を 備え、
固定用部材 を挿通 して 固定 するための 孔部 を前記 シリンダボデイ の略中央部に画成 し、一方 、前記固定用部材 が貫通 する 孔部 を前記 スライドテーブル の略中央部 に画成 し、前記 スライドテーブル がシリンダボデイ 上の所定位置 にあるとき 、
前記固定用孔部 に対して 前記貫通用孔部 の軸線 を一致 させて 固定用部材 により シリンダボデイ を他の部材 に固定 することを特徴とするスライドアクチュエータ。
(3) 【請求項2】〜【請求項14】は、先の明細書及び本件明細書とも、別添決定書写し(3頁14行目〜8頁11行目)記載のとおりである。
3 本件決定の理由の要旨 本件決定の理由は、別添決定書写し記載のとおりであり、本件明細書の実用新案登録請求の範囲中「固定用部材を挿通して固定するための孔部を前記シリンダボデイの略中央部に画成し、一方、前記固定用部材が貫通する孔部を前記スライドテーブルの略中央部に画成し、前記スライドテーブルがシリンダボデイ上の所定位置にあるとき、前記固定用孔部に対して前記貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボデイを他の部材に固定すること」の構成(以下「主要部の構成」という。)は、国内優先権主張の基礎とされた実願平3-107509号の願書に添付された明細書及び図面並びに先の出願に添付された明細書及び図面(以下「先の明細書等」という。)に記載されておらず、本件明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)において初めて開示されたものであって、国内優先権の主張を認めることはできないところ、請求項1〜14に係る本件考案は、本件出願の日である平成4年12月24日の前に日本国内において頒布された刊行物である「エアスライドテーブル, MXS Series φ6, φ8, φ12, φ16のカタログ」(平成4年4月30日初版、以下「刊行物1」という。)記載の考案と同一であるから、実用新案法3条1項3号に該当するというものである。
原告主張の決定取消事由
決定は、本件明細書に記載された主要部の構成が先の明細書等に記載されているかどうかについての判断を誤った(取消事由)結果、本件考案についての先の出願に係る国内優先権に関する判断を誤り、ひいては本件考案新規性を欠くとの誤った判断をしたものであるから、取り消されるべきである。
1 決定は、本件明細書に記載された主要部の構成が、国内優先権主張の基礎とされた先の明細書等(甲第5号証)に記載されていないと判断する。しかしながら、一般的に、この種のスライドアクチュエータでは、シリンダボデイを壁面等に固定する必要があり、これにねじ止め用の孔部を形成することは、従来から広く採用されている固定方法であるから、これを前提として先の明細書等をみると、主要部の構成中、「シリンダボデイ」が先の明細書等の図1及び図6の「シリンダボデイ12」に対応し、「固定部材を挿通して固定するための孔部」は、図1に示されている「ガイドレール34」を示す引出線の先端近傍の「大径な孔部」、図4の右端の「大径な二重円」に対応する。孔部が何らの機能を有することなく存在する理由はないから、当業者であれば、図1及び図4の大径な孔部及び大径な二重円を、スライドアクチュエータの取付け用の孔部であると直感的に認識することができる。そして、図1、図2、図4、図6等によれば、上記大径な孔部及び大径な二重円は、
シリンダボデイのほぼ中央部に画成されているから、この構成は、上記「孔部をシリンダボデイの略中央部に画成し」の構成に対応する。主要部の構成中、「スライドテーブルがシリンダボデイ上の所定位置にあるとき、前記固定用孔部に対して前記貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボデイを他の部材に固定すること」は、先の明細書等のシリンダボデイの3つの孔とスライドテーブルの3つの孔とが実質的に同一の位置に設けられていることに対応する。
2 先の明細書等(甲第5号証)の図6及び図7には、スライドアクチュエータの第2の実施例が示されているが、図6から明らかなとおり、シリンダボデイ12とスライドテーブル14とは、その長さが実質的に同じである。図7のハッチングのない3つの円は、シリンダボデイ12の取付け用の孔部と判断される。図6におけるスライドテーブル14の全長に対する孔部間又は孔部と端部間の割合である、16.2%、35.1%、35.1%、13.5%と、図7におけるそれらの割合である、14.8%、35.5%、35.1%、14.4%とを対比してみれば、シリンダボデイ12とスライドテーブル14の3つの孔は、それぞれ実質的に同一の位置に設けられているから、スライドテーブル14に設けた3つの孔は、シリンダボデイ12を固定するための固定用部材を挿通させる孔であることは、当業者であれば容易に認識することができる。
3 決定は、刊行物1(甲第6号証)について、「テーブル2がボデイ1上の所定位置にあるとき、前記下穴に対して前記通し穴の軸線を一致させてボルトによりボデイ2を他部材に取付けること・・・レール4には下穴と通し穴の軸線が一致したときにボルトが挿通される穴が形成されている」と判断する(決定書13頁2行目〜8行目)。しかしながら、刊行物1の2頁最上段の図面における「小型・軽量」との表示からの2つの矢印間に示された円が下穴であり、同図より2つ下の図面における「横取付形(通し穴使用)」との表示からの矢印の示す円が通し穴であるが、これらは、単なる円で描出されている。決定が認定するように、これらの円が通し穴又は下穴であると当業者が認識することができるのであれば、先の明細書等の図6及び7で描出された円も通し穴又は下穴であると、当業者が容易に認識することが可能である。
4 横浜国立大学教授Iの見解書(甲第8号証)には、先の明細書等(甲第5号証)において、図7の白抜きの円が固定用の穴であること、図6の白抜きの円を経て図7の白抜きの円からねじを挿入することができることは、当業者であれば当然に読み取れると述べられている。
また、登録意匠第858349号公報(甲第9号証)の正面図には、大径な二重円が上下に2つ配置されており、その背面図には、小径な二重円が上下に2つ配置され、その斜視図には、テーブルの長手方向に沿う端縁近傍に2つの大径な円が描出されている。この斜視図において、左側の大径な円の下方に半欠け状の長円が描出されており、この半欠け状の長円と前記左側の大径な円とは上下に対応する位置にある。これらの位置関係からすれば、上記意匠は、正面図及び斜視図のテーブル表面の大径な円の孔部から半欠け状の長円を通って、背面図の小径な二重円の孔部にねじを螺入させて流体圧シリンダを固着する構成であることは、当業者であれば容易に看取することができる。上記斜視図では、ねじ挿通用の孔部はテーブル上に単に円で示されているにすぎないが、この技術分野では、この円を流体圧シリンダを取り付けるための孔部であると、当業者は直感的に把握することができる。
被告の反論
1 先の明細書等の図1、図2、図4及び図6ないし図9には、円が描画されているにすぎず、当業者であっても、当該円が取付け用の孔部であると認めることはできないから、先の明細書等に「スライドテーブルがシリンダボデイ上の所定位置にあるとき、固定用孔部に対して貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボデイを他の部材に固定する。」という主要部の構成が記載されているとは認められない。
2 本件明細書等(甲第2号証)には、「【作用】本発明によれば、スライドテーブルがシリンダボディ上の所定位置にあるとき、固定用孔部に対して貫通用孔部の軸線を一致させて固定用部材によりシリンダボデイを他の部材に固定する。このように、軸線が一致するシリンダボデイの固定用孔部とスライドテーブルの貫通する孔部に対し、固定用部材を挿通することにより、シリンダボデイが他の部材に簡便に固定される。」との記載(5欄【0006】)及び「【考案の効果】本考案に係るスライドアクチュエータによれば、以下の効果が得られる。すなわち、スライドテーブルをシリンダボデイ上の所定位置に位置決めすると、シリンダテーブルの固定用孔部とスライドテーブルの貫通用孔部の軸線を一致させることができる。したがって、前記貫通用孔部から前記固定用孔部に固定用部材を挿入することにより、シリンダボデイを壁面等に簡便に固定することができ、しかも小型化できる」(10欄【0034】【0035】)との記載があるが、これらの作用効果は、主要部の構成を備えることにより奏されるものである。本件明細書等(甲第2号証)におけるこれらの記載は、本件明細書等において初めて開示されたものであって、
先の明細書等には記載されていない。
3 一般に、実用新案登録出願の願書に添付する図面は、定量的な寸法やその割合が正確に示される程に厳密に描かれることは要求されていないから、先の明細書の図6、図7等に描かれた円が孔部であるとしても、これら孔部の位置関係について図面を実測して求めた値によって考案の構成を特定することはできない。しかも、先の明細書等には、図6及び図7に記載された円がそれぞれ対応する位置関係にある旨の記載はないから、図面の表示のみにより、図6及び図7に記載された円がそれぞれ対応するものということはできない。
4 刊行物1(甲第6号証)2頁の下段中央には、「A横取付形(通し穴使用)」と表記して、基板とシリンダボディがボルトで固定され、スライドテーブルは図で左右方向に移動可能とされ、また、ボルトの頭部がスライドテーブル側にあって上記基板に固定されている状態が部分断面図として明瞭に記載されている。同頁中段には、「A横取付形(通し穴使用)」と表記した上、同頁中段中央の図において、通し穴が円として描かれている。決定は、刊行物1の2頁に描出された円からのみによってその記載事項を認定したのではなく、上記断面図、上記「A横取付形(通し穴使用)」の記載に加え、同頁下段の「自由度の高い取付方向 3方向からの取付が可能です。」との記載等を総合して、スライドテーブルに通し穴が形成されガイドレール及びシリンダボディに下穴が形成されていると認定したものである。これに対し、先の明細書等には、上記部分断面図に相当する記載及び断面形状を説明する記載がなく、そのため、3つの円として記載されたものが、ある深さを有する孔か、貫通する孔か、孔ではなく異種材料を埋め込んで円として表示されているものか、一切不明である。
5 I教授の見解書(甲第8号証)では、先の明細書等の図6及び図7に記載された円が固定用穴であることは当業者であれば理解できる旨の見解を示すが、その合理的説明は何らされていない。まして、主要部の構成が先の明細書等に記載してあるという根拠、理由は、何ら示されていない。
登録意匠第858349号公報(甲第9号証)の流体圧シリンダは、先の明細書等の記載事項に何ら関係がない。
当裁判所の判断
1 取消事由(主要部の構成が先の明細書等に記載されているかどうかの判断の誤り)について (1) 本件明細書等(甲第2号証)には、「本考案は、壁面等にシリンダボデイを簡便に固定することが可能なスライドアクチュエータに関する。」(4欄【0001】)、「本考案に係るスライドアクチュエータによれば、以下の効果が得られる。すなわち、スライドテーブルをシリンダボデイ上の所定位置に位置決めすると、シリンダテーブルの固定用孔部とスライドテーブルの貫通用孔部の軸線を一致させることができる。したがって、前記貫通用孔部から前記固定用孔部に固定用部材を挿入することにより、シリンダボデイを壁面等に簡便に固定することができ、
しかも小型化できる。」(10欄【0034】【0035】)との記載がある。これらの記載によれば、本件考案は、スライドアクチュエータにおいて、そのシリンダボデイを壁面等に簡便に固定すること及びこれを小型化することを目的とするものであると認められる。
そして、その目的を具現する手段について、本件明細書等(甲第2号証)には、「壁面等に装着する際の利便性を図った第4実施例に係るスライドアクチュエータを図10に示す。スライドアクチュエータ90は、シリンダボデイ12にねじ孔92a、92bを形成し、またその上部のガイドレール34に前記ねじ孔92a、92bよりも大径の孔部94を形成し、さらに、スライドテーブル14に前記孔部94と同径の孔部96a、96bを形成している。図示しないロッドがシリンダ室16a、16bに収納されている状態で、ねじ孔92aに対して孔部96aが、ねじ92bに対して孔部94,96bがその中心を一致するように構成されている。・・・このように本実施例のスライドアクチュエータ90では、ガイドレール34およびスライドテーブル14にねじ100a、100bの頭部102a、102bよりも大径の孔部94、96a、96bが形成されているため、シリンダボデイ12の底面を壁面等に装着する場合、スライドテーブル14側からねじ100a、100bをシリンダボデイ12のねじ孔92a、92bに螺入できる。したがって、シリンダボデイ12の底面を壁面等に簡単に装着することができる。」(9欄【0030】〜10欄【0033】。以下「第4実施例の記載」という。)」と記載されている。
(2) ところが、先の明細書等(甲第5号証)には、「本考案は、スライドアクチュエータに関し、一層詳細には、シリンダボデイとスライドテーブルとの間に画成された溝内にローラを配設し、スライドテーブルの移動に際して、耐荷重性を増し且つ小型化、軽量化が促進されるスライドアクチュエータに関する。」(【0001】)との記載はあるが、本件明細書等に記載されたような、シリンダボデイを簡便に壁面等に固定することは全く記載されていないし、第4実施例の記載も全くなく、図10も添付されていない。したがって、シリンダボデイの底面を壁面等の他の部材に装着する固定手段についての構成、すなわち、主要部の構成を含む請求項1に係る本件考案及びこれを引用する請求項2ないし14に係る本件考案は、いずれも先の明細書等に記載されてはいないから、本件出願について、先の出願に係る国内優先権は認められない。
(3) 原告は、先の明細書等について、当業者であれば、図1の大径な孔部及び図4の大径な二重円を、スライドアクチュエータの取付け用の孔部であると直感的に認識することができると主張する。
しかしながら、先の明細書等(甲第5号証)では、図1及び図2が第1実施例を開示し(【0009】【0010】)、図6及び図7が第2実施例を開示している(【0024】)が、本件明細書等(甲第2号証)においても、これらの図面は、同様に第1実施例、第2実施例を示している(【0008】【0009】【0023】)。図1では、ガイドレール34には、符合34の引き出し線の先端近傍に大径な孔部が形成されているが、この構造、機能、作用等について、先の明細書等には何も記載されていない。図4は、第1実施例のスライドアクチュエータの一部横断要部説明図であるが、ここで左右に延びた一点鎖線の上部に平面図が、下部に断面図が描写され、平面図の部分には、ガイドレール34に6個の二重円が、断面図の部分には、ガイドレール34に当該6個の二重円中、他の3個より径が大きい3個の二重円の内側の円のみが描写されているが、この構造、機能、作用等についても、先の明細書等には何も記載されていない。
仮に、図1における符合34の引出し線の先端近傍の大径な孔部が図4の右端の大径な二重円に対応するとしても、図4における右から3番目及び5番目の大径な二重円に対しては、図1のどの円が対応するのかは明らかでない。また、図6及び図7の第2実施例については、先の明細書等(甲第5号証)に「第2実施例に係るスライドアクチュエータ60について、図6、図7を参照して説明する。スライドアクチュエータ60において、第1実施例と略同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略し、以下、同様とする。」(【0024】)、「本実施例のスライドアクチュエータ60は、シリンダボデイ12の長手方向の側面にポート62、64を設けて、第1実施例のヘッドカバー18を不要にしたため、また、ガイドレール34の先端をエンドプレート30の孔部68に進入可能に構成したため、シリンダボデイ12の長手方向の長さが短縮され、スライドアクチュエータ60の一層の小型化が達成される。」(【0026】)と記載されている。これらの記載によれば、第2実施例は、第1実施例を基本構成として、ヘッドカバー18を省略し、ガイドレール34の先端をエンドプレート30内に進入させることにより、スライドアクチュエータの一層の小型化を達成することを特徴とするものと認められるから、スライドテーブルの構成については、第1実施例と変更がないものと解される。これを前提としてみると、図6のスライドテーブル14上の中央部に長さ方向に沿って配置された大径の円、楕円及び小径の円は、いずれも深度を示す方法で描画されていない上、
図1のスライドテーブル14上の二重円、楕円及び小径の円と比較して形状及び位置において相違し、また、図7では、合計6個の円の内の3個の円にハッチングがされている点で図2の合計6個の円と相違するが、これらの相違について何ら記載はない。
そうすると、先の明細書等には、その図面に上記二重円等がみられるとはいえ、その記載は、この種のスライドアクチュエータを壁面等に固定する手段について、主要部の構成を開示しているとは認められない。
(4) ところで、原告は、先の明細書等の図6に描かれているシリンダボディ12とスライドテーブル14の大径の3つの孔がシリンダボディ12を固定するための固定用部材を挿通させる孔であることは、当業者であれば容易に認識可能であると主張する。しかしながら、前示のとおり、図6及び図7が図示する、小径の円、大径の円及び楕円の技術的意義については、先の明細書等に何も記載されていない。
また、原告は、図6及び図7の実測結果について主張するが、これら図面は、実用新案登録出願の願書に添付する図面であって、設計図のように細部にわたるまで一定の縮尺により正確に描写されたものではないから、その図面を実測した割合に基づく主張は、上記判断を左右するものではない。
(5) 原告は、さらに、刊行物1の2頁最上段の図面における「小型・軽量」との表示からの2つの矢印間に示された円が下穴であり、同図より2つ下の図面における「横取付形(通し穴使用)」との表示からの矢印の示す円が通し穴であると当業者が認識できるのであれば、先の明細書等の図6及び7で描出された円も通し穴又は下穴であると当業者が認識可能であると主張する。
しかしながら、刊行物1(甲第6号証)の2頁中段には「A横取付形(通し穴使用)」、同頁下段には「自由度の高い取付方向 3方向からの取付が可能です。」との記載があり、同頁下段中央に「A横取付形(通し穴使用)」と表記して、頭部がスライドテーブル側にあるボルトがシリンダボデイを基板に固定していることを示す部分断面図が描写されている。これに対し、先の明細書等には、前示のとおり、図6及び図7が図示する円についての記載が一切ないのであるから、主要部の構成が先の明細書等に記載されていないとし、他方、刊行物1の通し穴がシリンダボディ12を固定するための固定用部材を挿通させる孔であるとした決定の判断に誤りはない。
(6) I教授の見解書(甲第8号証)は、先の明細書等の図7の白抜きの円が固定用の穴であること、図6の白抜きの円を経て図7の白抜きの円からねじを挿入することができることは、当業者であれば当然に読み取れるとする。しかしながら、
上記見解書には、そのように読み取れるとする根拠について具体的な記載はなく、
同見解書の内容は、当裁判所の上記判断を左右するものではない。
また、原告は、登録意匠第858349号公報(甲第9号証)の大径な円の孔部から半欠け状の長円を通って、小径な二重円の孔部にねじを螺入させて流体圧シリンダを固着する構成であることが、当業者であれば容易に看取できると主張する。しかしながら、この公報は、意匠に関するものであって、原告が主張する「大径な円」、「半欠け状の長円」及び「小径な二重円」についての説明は一切ないこと、正面図及び背面図には、原告主張の二重円のほかに、大小径の二重円が描出されているが、これらが何を示すものか、また、これらと原告主張の二重円との関係が不明であることに照らすと、この公報の記載も、当裁判所の上記判断を左右するものではない。
2 以上のとおり、原告主張の決定取消事由は理由がなく、他に本件決定を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 長沢幸男
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