関連審決 |
審判1997-40026 |
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関連ワード | 考案 / 組合せ / 物品 / 設定登録 / 進歩性(3条2項) / きわめて容易 / 請求項 / 明細書 / 請求の範囲 / |
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事件 |
平成
12年
(行ケ)
240号
審決取消請求事件
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原告 シンコハンガー株式会社代表者代表取締役 【A】 訴訟代理人弁理士 小谷悦司 被告 東京ハンガー株式会社代表者代表取締役 【B】 |
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裁判所 | 東京高等裁判所 |
判決言渡日 | 2000/12/25 |
権利種別 | 実用新案権 |
訴訟類型 | 行政訴訟 |
主文 |
特許庁が平成9年審判第40026号事件について平成12年5月23日にした審決中、請求項2、請求項3及び請求項4に係る各考案に関する部分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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原告の求めた裁判
主文と同旨 |
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原告の主張
1 特許庁における手続の経緯 被告は、名称を「衣服用ハンガーの掛止バー」とする実用新案登録第3038708号の考案(平成8年12月13日出願、平成9年4月9日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。 原告は、平成9年9月12日、本件実用新案登録についての無効審判の請求をした。 特許庁は、同請求を平成9年審判第40026号として審理した上、平成10年5月20日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をしたが、これを不服として原告から提起された審決取消訴訟(当庁平成10年(行ケ)第232号)において、平成11年9月30日に同審決を取り消す旨の判決(以下「前訴判決」という。)が言い渡され、これが確定したので、特許庁は、同請求につき更に審理し、平成12年5月23日に「実用新案登録第3038708号の請求項1及び請求項5に記載された考案についての登録を無効とする。請求項2、請求項3及び請求項4に記載された考案についての審判請求は成り立たない。審判費用は、請求人が5分の3、被請求人が5分の2を負担すべきものとする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は同年6月14日原告に送達された。 なお、審決の「結論」欄には、「本件審判の請求中、実用新案登録第3038708号の請求項2、請求項3及び請求項4に記載された考案についての請求は、成り立たない。」との記載はないが、同欄の審判費用の負担に関する部分及び「理由」欄の判断部分に照らすと、上記のとおりの結論が示されていることは明らかである。 2 本件考案の要旨 【請求項1】上衣を掛装するハンガー本体部の下部に着脱可能に取り付けた掛止バーに補助バーを着脱可能に組み合せ、該補助バーと前記掛止バーとでスラックス等衣類を挟持的に懸吊保持する衣服用ハンガーにおいて、前記掛止バーはハンガー本体部に係止するフック部を有する垂直腕部を水平なバー本体部の両端に備えると共に、前記補助バーはポリプロピレンにより前記掛止バーより十分長く且つ下方に弯曲した弧状体につくられ、両端に形設した長孔で前記垂直腕部に係合することにより掛止バーに付勢的に当接するようにしたことを特徴とする衣服用ハンガーの掛止バー。 【請求項2】前記補助バーは前記掛止バーに付勢的に当接する当接部の上面に、 有底溝状の模様を形設してあることを特徴とする請求項1記載の衣服用ハンガーの掛止バー。 【請求項3】前記補助バーは前記掛止バーに付勢的に当接する当接部の上面に、 貫通孔による模様を形設してあることを特徴とする請求項1記載の衣服用ハンガーの掛止バー。 【請求項4】前記補助バーは前記掛止バーに付勢的に当接する当接部の上面に、 有底溝状の模様と貫通孔による模様を混用的に形設してあることを特徴とする請求項1記載の衣服用ハンガーの掛止バー。 【請求項5】前記補助バーは幅方向の断面が上方に弯曲した形状をなすことを特徴とする請求項1乃至4記載の衣服用ハンガーの掛止バー。 3 本件審決の理由 本件審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし5に係る各考案は、実願昭48-60880号(実開昭50-9134号)のマイクロフィルム(審判甲第1号証、本訴甲第3号証、以下「引用例1」という。)、昭和46年1月20日東洋経済新報社発行の【C】「プラスチックの実際知識」157頁(審判甲第2号証)、平成3年10月14日発行の登録第820239号意匠公報(審判甲第3号証、本訴甲第4号証、以下「引用例2」という。)及び昭和61年3月10日発行の登録第674029号意匠公報(審判甲第4号証、本訴甲第5号証、以下「引用例3」という。)に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法3条2項の規定により登録を受けることができないものであって、同法37条1項2号の規定により無効とすべきであるとの請求人(原告)の主張に対し、請求項1及び請求項5に係る各考案については、上記のとおり、その実用新案登録を無効とする一方、 請求項2、請求項3及び請求項4(以下「本件係争請求項」という。)に係る各考案の実用新案登録については、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては無効とすることができないとした。 4 本件審決取消事由 本件係争請求項に係る各考案は、引用例1記載の考案に引用例2及び3記載の各事項を単に付加するだけできわめて容易に考案をすることができたものであり、この点の審決の判断は誤りである。 すなわち、まず、本件審決は、「審決取消訴訟判決の認定によれば、『補助バーが直線状のハンガーの方が、補助バーをあらかじめ下方に弯曲形成しておくハンガーよりも、下向きの付勢力が強い』のであるから、補助バーをあらかじめ下方に弯曲形成した本件請求項2に係る考案のハンガーの方が、少なくとも、可撓性が高く補助バーの撓み操作即ち手指操作が容易であるという点においては、甲第1号証に係る、補助バーが直線状のハンガーより有利な効果を奏するものというべきである。」(審決謄本5頁末行〜6頁6行目)と認定し、さらに、「本件請求項2に係る考案では、(T)補助バーをポリプロピレンにより掛止バーより十分長く且つ下方に弯曲した弧状体につくることによって、補助バーの掛止バーとの当接部の長さを長くすることができ、スラックス等衣類の安定保持性が向上することとともに、 (U)補助バーの当接部の上面に薄肉化及び軽量化を可能とする模様を付すことで、 『下向きの付勢力』をあえて弱め、これによって補助バーの可撓性を高め、もって補助バーの撓み操作即ち手指操作が容易になるという効果を奏するものであると認められるから、上記審決取消訴訟判決の判断は、少なくとも本件請求項2に係る考案にまで敷衍されることにはならない。したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件請求項2に係る考案が甲号各証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。」(審決謄本6頁15行目〜26行目)と認定判断する。 しかし、この認定中、上記(T)は、前訴判決において、既に請求項1に係る考案の進歩性を肯定すべき論拠とならない旨判示された事項であり、同(U)についても、前訴判決は、請求項1に係る考案の補助バーの下向きの付勢力が引用例1のものよりも弱いと認定しているところ、請求項1に係る考案に、更に有底溝状や貫通孔状の模様を付すれば一層付勢力が弱まり可撓性が高くなるのは当然であって、 これらの模様を付する構成を採用することに何らの困難性もないというべきである。 さらに、審決は、「その他の甲号各証、提出された参考資料等にも、上記本件請求項2に係る考案の効果を示す記載は何ら見あたらない。」(審決謄本6頁7行目〜8行目)とし、請求項3及び4に係る考案についても同様の認定をしている(審決謄本6頁35行目〜7頁5行目)が、引用例2には、平面図及びA-A断面図に示すとおり、補助バーの上面に有底溝状の模様が付されている衣服ハンガーの掛止桟が示されており、また、引用例3には、平面図及びA-A断面図に示すとおり、補助バーの上面に貫通孔状の模様を形設したハンガーの係止桟が示されている。これらはいずれも意匠公報なので、補助バーの上面に有底溝状の模様や貫通孔状の模様を形設した目的、効果については具体的に記載されていないが、当業者ならばその構成からきわめて容易にその目的、効果を把握することができるというべきである。 |
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被告は、適式の呼出しを受けながら本件弁論準備手続期日及び本件口頭弁論
期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しない。 |
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当裁判所の判断
1 原告の主張1(特許庁における手続の経緯)、同2(本件考案の要旨)及び同3(本件審決の理由)の各事実は、被告において争うことを明らかにしないから、自白したものとみなされる。 2 原告主張の審決取消事由について (1) 本件考案中、請求項1に係る考案については、前訴判決が、引用例1記載の考案から当業者がきわめて容易になし得るものにすぎないと判断したものであるところ、本件係争請求項に係る各考案は、請求項1に係る考案に従属する考案であって、請求項1の要件に、請求項2は「補助バーの上面に有底溝状の模様を形設する」との要件を、請求項3は「補助バーの上面に貫通孔による模様を形設する」との要件を、請求項4は「補助バーの上面に有底溝状の模様と貫通孔による模様を混用的に形設する」との要件を、それぞれ付加した考案である。 (2) そこで、上記付加された要件について検討するに、まず、引用例1(甲第3号証)記載のハンガーと引用例2(甲第4号証)及び引用例3(甲第5号証)記載の各ハンガーの各構成を対比すると、両者はいずれも基本構成を同じくし、前者の「押圧杆(8)」に相当する部材(補助バー)を後二者も備えていることが認められる。そして、引用例2(甲第4号証)には、「本物品は参考図に示す如く、両端に垂立する掛爪部をハンガー本体の適宜嵌孔などで嵌着し、衣服の掛止用に使用するものであり、広く嵌孔を有する本体に交換等も含め着脱自在に使用し得るもので、従って本物品は単一物品として単独取引の対象とされているものである。背面図は正面図と、左側面図は右側面図と同一にあらわれる。」と記載されているとともに、その平面図及びA-A断面図には、補助バーの上面に有底溝状の模様が付されている衣服ハンガーの掛止桟が図示されていることが認められ、また、引用例3(甲第5号証)の平面図及びA-A断面図には、補助バーの上面に貫通孔状の模様を形設したハンガーの係止桟が図示されていることが認められる。 以上の認定事実からすると、引用例1記載の考案における押圧杆(8)の上面に有底溝状又は貫通孔状の模様を形成することにより、請求項2及び3記載の各考案の構成を得ることは、当業者がきわめて容易にすることができるものというべきであり、また、これらの模様を混用して請求項4記載の考案の構成を得ることにも何らの困難性はないというべきである。 (3) なお、本件考案からもたらされる効果は、「特に、補助バーの当接部の上面に薄肉化及び軽量化を可能とする模様を付すことにより、ハンガーのデザイン性を高めると共に、補助バーの可撓性を高め、補助バーの撓み操作即ち手指操作が容易で、また、当接部の長さを長くすることができ、スラックス等衣類の安定保持性が向上する」(甲第2号証、本件実用新案公報8頁12行目〜16行目)点にあるものと認められるところ、本件審決は、このような効果は引用例に記載されていないとして(審決謄本6頁7行目〜8行目、7頁1行目〜2行目)、本件係争請求項に係る各考案の進歩性を肯定する論拠としている。しかし、上記の効果は、補助バーの上面に有底溝状又は貫通孔状の模様を形成するとの構成自体から当然に想定し得る程度のものであって、引用例1記載の考案と引用例2、3記載のものの組合せを困難とするような格別な効果ということはできないから、引用例1ないし3にそのような効果の記載がないことは、上記の認定判断を左右するものとはいえない。 3 以上のとおり、本件係争請求項に係る各考案は、引用例1ないし3記載の各考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、 本件審決中、本件係争請求項に係る各考案についての審判請求が成り立たないとした部分は取消しを免れない。 よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 篠原勝美 |
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裁判官 | 長沢幸男 |
裁判官 | 宮坂昌利 |