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関連審決 審判1996-2869
関連ワード 考案 /  図面 /  組合せ /  進歩性(3条2項) /  一致点の認定 /  きわめて容易 /  請求項 /  実施例 /  容易に想到 /  特段の事情 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 67号 審決取消請求独立当事者参加事件
平成11年(行ケ)第212号事件脱退前原告 ジロナ デンタール システムス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト 代表者 【A】
同 【B】 当事者参加人 ジロナ デンタール システムス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 代表者 【C】
同 【D】
訴訟代理人弁護士 加藤義明
同 鹿野直子
同 弁理士 矢野敏雄被参加人(平成11年(行ケ)第212号事件脱退原告脱退前の同事件被告) 特許庁長官 【E】
指定代理人 【F】
同 【G】
同 【H】
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/02/01
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1 当事者参加人の請求を棄却する。
2 訴訟費用は当事者参加人の負担とする。
3 この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 当事者参加人(以下「参加人」という。) 特許庁が平成8年審判第2869号事件について平成11年2月15日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被参加人の負担とする。
2 被参加人 主文1、2項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 シーメンス、アクチェン ゲゼルシャフト(以下「当初出願人」という。)は、1987年2月16日に西ドイツ国においてした特許出願に基づく優先権を主張して、考案の名称を「歯科用X線診断装置」とする考案(以下「本願考案」という。)につき昭和63年2月12日に実用新案登録出願(実願昭63-18059号)をしたところ、平成7年8月29日に拒絶査定を受けたので、平成8年3月4日に拒絶査定不服の審判を請求した。本願考案について実用新案登録を受ける権利は、平成10年2月に当初出願人から脱退前の平成11年(行ケ)第212号事件原告(以下「脱退前原告」という。)に譲渡され、この譲渡は、平成10年7月3日に被参加人に届出られた。上記審判請求は、平成8年審判第2869号事件として審理された結果、平成11年2月15日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は、平成11年3月17日に当初出願人に送達され、出訴期間として90日が付加された。なお、審決謄本の請求人の表示は、特許庁において同年7月12日に、当初出願人から脱退前原告に訂正された。
本願考案について実用新案登録を受ける権利は、平成10年3月31日に脱退前原告から参加人に譲渡され、この譲渡は、平成12年3月6日に被参加人に届出られた。
2 実用新案登録請求の範囲 1の項(以下、同項記載の考案を「本願第1考案」という。別紙図面参照) 患者の顎のパノラマ断層撮影のための歯科用X線診断装置であって、
a)垂直軸線を中心に回転可能であるユニット(1)を備えており、このユニットは一方ではX線源(3)の、他方では二次スリットを有する絞り(7)の保持体であり、
b)X線を可視光線に変換するための手段(9)を備え、
c)ビーム強度に比例する電気的信号を形成する1つまたは複数のCCDセンサ(11,12,13)から成る検出装置を備え、各CCDセンサは多数のセンサ行を含み、
d)該CCDセンサと接続されたクロック発生器(22)を備え、
e)CCDセンサのシフトレジスタ(11c)と接続されたA-D変換器(16)を備え、
f)計算機(21)を有するデータ処理装置を備え、
g)像メモリ(18)を備え、
h)像読出しユニット(19)を備え、
i)像再現装置(20)を備えるようになったものにおいて、
前記CCDセンサは、二次スリット(8)の像帯域の上に結像し得るように配置され、
その際スリットの長辺の方向の1つの線が1つのCCD行の上に結像されており、
前記CCDセンサは、クロック発生器(22)により関係式 fTakt =v/(n X・a) によりクロック制御されることによりTDI(Time-Delay-Integration)法により駆動され、
その際光像(LiB)に対応する電荷像(LB)は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像(LBges)に加算され、
像情報の積分は、シンチレータに生ずる光像(LiB)がCCDセンサの表面上に結像され、
それにより生ずる電荷像(LB)が前記のクロック列 fTakt =v/(n X・a) で像帯域からメモリ帯域へ伝送され、その後に行ごとにシフトレジスタ(11c)を介してクロックアウトすることにより行われ、
前記データ処理装置(21)は、A・D変換器(16)、像メモリ(18)および像読出しユニット(19)に相応する制御命令ないし読出し命令を導き、検出器装置(センサ11,12,13)により撮影進行中供給される信号から像再現装置(20)を介して光学的に表示可能な断層像を計算することを特徴とする 歯科用X線診断装置。
3 審決の理由 別紙審決書の理由の写しのとおり、本願第1考案は、特開昭57-166144号公報(以下「引用例1」という。)及び特開昭61-22841号公報(以下「引用例2」という。)各記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易考案することができたと認定判断した。
参加人主張の審決取消事由の要点
審決の理由1(手続の経緯・本願考案)、2(原査定の理由)、3(引用例)は認める。同4(対比・判断)は、一致点の認定につき、審決が16頁11行の「『患者の」から17頁5行の「されており、」までに述べる点で一致することを、相違点につき、本願第1考案には審決認定(17頁16行〜18頁9行)に係る構成があるのに対し、引用例1記載の考案にはその構成がないことを、それぞれ認め、その余は争う。同5(むすび)は争う。
審決は、一致点の認定を誤り(取消事由1)、相違点についての判断を誤った(取消事由2)ものであって、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(一致点の認定の誤り) 審決は、「光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され、」(17頁5行〜8行)を一致点と認定したが、誤りである。
(1) 本願第1考案は、CCDセンサからなる検出器において光像(LiB)に対して時点t0で電荷像(LBt 0)が生じ、時点t 1でこの電荷像はX方向にシフトされ、同時に新しい電荷像(LBt1)が生じるので、この時点でのCCDセンサ全体の電荷像はLBt1ges に積分される。それが時点t 2〜t 5でも同じように繰り返されて積分される。すなわち、電荷像の時間的に連続する場所的にずれた積分により1つの全電荷像が形成されるのである。
このように本願第1考案では、種々の被検体の対象領域からの画像情報をCCDセンサからなる検出器においてシフトして加算することにより、撮影したい所望の断層が検出器において直接選択され、検出器における電荷像はすでに完成した断層画像と同じ情報を含んでいる。
(2) 引用例1記載の考案では、一定の角度間隔ごとにイメージセンサ平面に生ずる瞬間撮影の光像がX線イメージセンサ12から直ちに読み出されている。このように、引用例1記載の考案は、CCDセンサのそれぞれの画素から直接加算せずに取り出しているものである。したがって、引用例1記載の考案は、「光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算」されていない。
(3) 被参加人は、引用例1記載の考案が、演算メモリ32上において、データの場所的にずれた重ね合わせによる加算により所望の断層軌道上にある画情報を合成再現していることを、一致点として記載したものであると主張している。
しかし、本願第1考案では、A-D変換以前に電荷の形で既に加算されているのであって、引用例1記載の考案とは加算位置が全く異なっているのである。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り) (1) 審決は、「引用例1に記載された『フィルムの送り速度との相対的関係』を考慮してデータを加算(積分)しようとすれば、それは仮想的なフィルムとの関係において必然的にfTakt =v/(n x・a)の関係で動かすことになるから、上記数式により限定された移動速度で電荷像をシフトする点は、単にアームの回転速度に対し、メモリ内の情報をシフトする転送距離を調整して映像すべき断層軌道面を設定することにより像情報の積分を行ったことにより生ずる、必然的な関係を記載したにすぎないものである。」(20頁8行〜18行)と認定判断したが、誤りである。
ア 本願第1考案は、電荷(情報)を検出器においてシフトするクロック周波数を時間的に変化させるものである。
引用例1記載の考案は、瞬間撮影画像を検出器から個々に読出しているから、初めからシフトの大きさが固定されており、1行間隔ずつしかシフトできない。したがって、引用例1記載の考案のデータ処理装置のように情報を変化する大きさで互いにシフトする代わりに、本願第1考案のように電荷を検出器においてシフトするクロック周波数を変化する思想は生まれない。
本願第1考案と引用例1記載の考案とは、電荷シフトの際のパラメータとしてクロック周波数を変化させるか(本願第1考案)、瞬間撮影画像のA-D変換されたデジタル信号のシフトの大きさを変化させるか(引用例1記載の考案)という点で相違している。クロック周波数の選択は本願第1考案の核心である。
イ 被参加人は、本願第1考案が、クロック周波数を時間的に変化させるという構成を備えていることを否定する。
しかし、本願明細書には、「通常15kHzであるCCDセンサの標準クロック列が、たとえば20msのCCD要素の像積分時間(tBA )の間に行が従来の撮影技術におけるフィルム速度に相応するクロックレート(fTakt )で像帯域のなかへシフトされるように変更される。像積分時間(tBA )の間に電荷像は像帯域のなかでたとえば0.1mmと1mmとの間変化する。」(甲第2号証18頁17行〜19頁3行)と記載されており、本願第1考案においてクロック列は従来の撮影技術におけるフィルム速度に相応するクロックレートで像帯域のなかへシフトされるように変更されることが明らかにされている。すなわちクロック列は変更すなわち変化されることが明白である。この記載から従来のフィルム速度が変化することが分かるのである。
被参加人は、本願明細書の記載から「30(mm/s)/(1・20μm)」の結果1500Hzが算出されるから、典型的なフィルム速度30(mm/s)が一定であることが必要であり、したがって引用例1がクロック周波数を時間的に変化させることを開示しているとは認められないと主張する。しかし、前歯部分に対する速度とか奥歯部分に対する速度とかというように種々の値を取るフィルム速度につき、前歯部の典型的な値を30mm/sと記載したからといって、一定速度であるということはできない。フィルムの速度がパターンに従って特定されている場合も、特定速度であって、それは一定速度とは意味が異なるのである。
また、患者の顎、すなわち歯列弓は、形が円弧ではないから、そのフィルム断層撮影には、フィルム速度が可変であることが必要である。
歯列弓の断層撮影においてフィルム速度を可変とすることが周知かつ自明であったことは、特開昭57―31844号公報(以下「甲第8号証刊行物」という。)、実公昭57―57690号公報(以下「甲第9号証刊行物」という。)、特公昭59―23207号公報(以下「甲第10号証刊行物」という。)、特開昭60―103943号公報(以下「甲第11号証刊行物」という。)、特開昭53―82285号公報(以下「甲第12号証刊行物」という。)、
(Vol.60.N:o 1,14-22,1964)(以下「甲第13号証刊行物」という。)からも明白である。
(2) 本願第1考案のクロック周波数fTakt =v/(n x・a)におけるvは断層撮影におけるフィルム速度と同一速度であり、このvは時間的に変化し、したがって、クロック周波数fTakt も時間的に変化する。
ところが、引用例2には、断層画像を作成するためにクロック周波数が変化するようにすることは全く示唆されていない。すなわち、引用例2記載の考案のTDI法を使用した透視画像作成における電荷のクロックシフトは、検出器の移動運動を相殺するために、検出器の運動速度と同期して検出器の運動速度と大きさが等しく方向が反対な速度で行われる。
したがって、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案のTDI法を適用しても、顎のパノラマ断層画像は得られないのである。
被参加人の反論の要点
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について 審決は、引用例1記載の考案の「メモリ制御器34はm-1番目の水平同期信号を検出すると、第m〜第n番目の走査線上にある画情報をA-D変換回路31を介してデジタルコード化した後演算メモリ32内のあらかじめ決定された走査線に対応するアドレスのデータと加算し、その加算結果を演算メモリ32の同一アドレスに書き込む操作を指令する」(4頁右上欄8行〜14行)、「論理演算回路3は、A-D変換器31より出力されるデジタルコード信号を順次シフトし乍ら重ね合わせによる加算を行なって所望の断層軌道上にある画情報のみを合成再現する」(3頁左下欄7行〜10行)との機能を有すること、すなわち、引用例1記載の考案が、演算メモリ32上において、第m〜第n番目の走査線上にある画情報とあらかじめ決定された走査線に対応するアドレスのデータとの場所的にずれた重ね合わせによる加算により、所望の断層軌道上にある画情報を合成再現していることを、
「光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され、」と認定したものである。
引用例1記載の考案は、CCDセンサの表面上において画像情報の加算が行われていないが、審決は、その点を相違点として明確に認定しているから、審決の上記認定に誤りはない。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について (1) 参加人は、本願第1考案が、クロック周波数を時間的に変化させるという構成を備えていると主張するが、誤りである。
ア 実用新案登録請求の範囲請求項1には、関係式fTakt = v/(n x・a)の記号の意味について何ら定義されていない。したがって、上記関係式は、単に「TDI(Time-Delay-Integration)法により駆動され」ることにより、「場所的にずれた積分により1つの全電荷像(LBges)に加算され」るとの技術的事項と理解されるのみであって、「クロック周波数を時間的に変化させる」との技術的事項と理解することはできない。
イ 仮に、考案の詳細な説明及び図面の記載を参酌したとしても、そこにはクロック周波数を時間的に変化させるという記載はない。
それどころか、逆に、考案の詳細な説明には、「x方向・・・の結像比は1:nx・・・である。」(甲第2号証14頁8行〜11行)、「従来の断層撮影技術ではフィルムは特定の速度で二次スリットの後ろを動かされる・・・またそれにより生ずる電荷像が特定のクロック列で像帯域からメモリ帯域のなかへクロックされ・・・クロック列は、電荷像が、二次スリット平面に関して、従来の断層撮影技術におけるフィルムの速度と同一の速度をx方向に有するように選定されている。求められるクロック周波数はフィルムの等価速度(v)に対して、下記の関係にある。fTakt = v/(n x・a) ここで、f Takt は毎秒の行数、また(nx・a)は二次スリット平面に関してのCCD行間隔である。30mm/sの典型的なフィルム速度および20μmの行間隔では、x方向に1:1の結像比の場合にクロック周波数は1500Hzとなる。」(同15頁18行〜16頁末行)として、従来のフィルムが特定の速度で動かされ、本願第1考案においてはそれと同一の速度を有するように、ある特定のクロック周波数である1500Hzで像帯域からメモリ帯域のなかへ移送されることが明確に記載されている。
すなわち、1500Hzという値は上記関係式に所定の値を代入した除算「30(mm/s)/(1・20(μm))」の結果算出されるものであり、ここでこの除算が成立するには、「典型的なフィルム速度30(mm/s)」が一定であることが必要である。
(2) 引用例1記載の考案と引用例2記載の考案組合せについて ア 引用例1には、CCDセンサから得られた画像の積算により断層選択を行うこと自体は記載されているから、引用例1記載の考案を、そこに示されたCCD上で、データをシフトさせ、対応した信号を増加させ画像の積算を行うものとすることがきわめて容易なことかどうかが、本願第1考案進歩性判断における要点である。
引用例2には、「CCDセンサに適用可能な走査型X線診断装置であって、検出装置組立体と接続されたクロック発生器を備え、該検出装置組立体のシフトレジスタと接続されたA-D変換器を備え、前記検出装置組立体は、クロック発生器によりTDI(Time-Delay-Integration)法により駆動され、像情報の積分は、シンチレータに生ずる光像が検出装置組立体の表面上に結像され、それにより生ずる電荷像が像帯域(光ダイオード)からメモリ帯域(シフトレジスタ)へ伝送されることにより行われる」(審決19頁17行〜20頁7行)ことが記載されている。TDI法とは、引用例2に「検出装置組立体14の動作は時には『時間遅延および集積(TDI)』と称する技術に従っている。・・・シフトレジスタSRはクロック回路56からのクロック信号によって制御される。各クロックパルスに応答してレジスタ素子X3,X2,X1中のデータは第3図に関して左へ1素子だけシフトされる。・・・信号がこれらの各記憶素子に存在する間該信号は関連した検出素子から次いで受けられる任意の信号によって増加される。」(9頁右下欄12行〜10頁右上欄8行)と記載されているように、CCDセンサ内において記憶素子中のデータをシフトさせ、次いで受けられる対応した信号によりシフトさせたデータを増加させ加算していくものである。また、引用例1に、「本発明においては、アーム1の回転に伴い、時系列的にA-D変換器31に順次入力される情報が変化する毎に、演算メモリ32内にストックされた情報をシフトさせ乍ら、加算による重ね合わせを行なって所望の曲面断層軌道面上の情報のみを合成して一枚の2次元平面画像を形成している。・・・メモリ内の情報をシフトする転送距離・・・を調整して映像すべき断層軌道面を設定しているのである。」(3頁左下欄19行〜右下欄13行)と記載されており、これによれば、引用例1のシフトによるデータの加算も、演算メモリ32内において記憶素子中のデータをシフトさせ、次いで受けられる対応した信号によりシフトさせたデータを増加させ加算していくものであって、引用例2記載の考案と同様の処理を行うものである。
したがって、画像の積算処理の類似性を考慮すれば、引用例2記載の考案のTDI法を、顎のパノラマ断層画像を得る引用例1記載の考案の画像の積算に適用し、CCDセンサにおいて像情報の積分を行うよう構成することによって、本願第1考案の技術的事項を得ることはきわめて容易になし得ることというべきである。
イ 参加人は、本願第1考案のクロック周波数fTakt =v/(n x・a)におけるクロック周波数fTakt が時間的に変化することを前提として、引用例2には、断層画像を作成するためにクロック周波数が変化するようにすることは全く示唆されていないと主張する。しかし、本願第1考案が「クロック周波数を時間的に変化させる」との技術的事項を有しないことは前述のとおりであるから、参加人の主張は失当である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(一致点の認定の誤り)について (1) 審決の理由3(引用例)認定に係る引用例1の記載、とりわけ、「メモリ制御器34はm-1番目の水平同期信号を検出すると、第m〜第n番目の走査線上にある画情報をA-D変換回路31を介してデジタルコード化した後演算メモリ32内のあらかじめ決定された走査線に対応するアドレスのデータと加算し、その加算結果を演算メモリ32の同一アドレスに書き込む操作を指令する。」(4頁右上欄8行〜14行)、「論理演算回路3は、A-D変換器31より出力されるデジタルコード信号を順次シフトし乍ら重ね合わせによる加算を行なって所望の断層軌道上にある画情報のみを合成再現する」(3頁左下欄7行〜10行)との記載によれば、引用例1記載の考案は、メモリ制御器において、「光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され」るものであることが認められる。したがって、審決が上記を一致点と認定したことに誤りはない。
(2) 参加人は、本願第1考案では、A-D変換以前に電荷の形で既に加算されているのであって、引用例1記載の考案とは加算位置が全く異なっていると主張する。
しかし、審決は、参加人主張の上記加算位置の相違を少しも否定するものではない。このことは、審決が、本願第1考案においては、「像情報の積分は、シンチレータに生ずる光像(LiB)がCCDセンサの表面上に結像され、それにより生ずる電荷像(LB)が前記のクロック列fTakt =v/(nx・a)で像帯域からメモリ帯域へ伝送され、その後に行ごとにシフトレジスタ(11c)を介してクロックアウトすることにより行われ」るのに対し、引用例1記載の考案においては、「像情報の積分は、アーム1の回転に伴い、時系列的にA-D変換器31に順次入力される情報が変化する毎に、演算メモリ32内にストックされた情報をシフトさせ乍ら、加算による重ね合わせを行なって所望の曲面断層軌道面上の情報のみを合成して一枚の2次元平面画像を形成するものではあるが、クロック発生器によりTDI駆動し、像情報の積分を、CCDセンサの表面上に結像されたことにより生ずる電荷像を像帯域からメモリ帯域へ伝送することにより行うという上記事項については記載されていない」として、この点を相違点として認定していることにより明らかである。
参加人の主張は、審決認定の「光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され、」との文言における「検出器平面における」の文言が「積分」にしかかかり得ないとの誤解に由来する審決の誤解を前提とするものという以外にない。
2 取消事由2(相違点についての判断の誤り)について (1) 本願第1考案の実用新案登録請求の範囲の「関係式 fTakt =v/( nx・a)」について ア 実用新案登録請求の範囲には、上記関係式の「v」、「(nx ・a)」の定義が記載されていないので、実用新案登録請求の範囲の記載からは、上記関係式の技術的意義を定めることができない。
イ 甲第2号証(本願明細書)によれば、本願明細書考案の詳細な説明の欄には、「クロック列は、電荷像が、二次スリット平面に関して、従来の断層撮影技術におけるフィルムの速度と同一の速度をx方向に有するように選定されている。求められるクロック周波数はフィルムの等価速度(v)に対して下記の関係にある。
fTakt=v/(nx・a) ここで、fTakt は毎秒の行数、また( nx ・a)は二次スリット平面に関してのCCD行間隔である。」(16頁9行〜18行)との記載があることが認められ、上記記載によれば、「(nx ・a)」は、二次スリット平面に関してのCCD行間隔であり、「v」は、従来の断層撮影技術におけるフィルムの速度と同一である電荷像の速度であるものと認められる。
上記認定の下では、上記関係式は、特定の行間隔(nx ・a)のCCDにおいて、従来のフイルムの速度と同一である電荷像の速度をvとすると、クロック周波数はv/(nx ・a)でなければならないことを意味するものと解する以外にない。しかし、そうでなければ像情報が正しく積分できないことは明らかであるから、上記関係式は、断層軌道面を設定することにより像情報の積分を行ったことにより生ずる、必然的な関係を記載したにすぎないものであることが明らかである。
ウ 引用例1に、「本発明においては、アーム1の回転に伴い、時系列的にA-D変換器31に順次入力される情報が変化する毎に、演算メモリ32内にストックされた情報をシフトさせ乍ら、加算による重ね合わせを行なって所望の曲面断層軌道面上の情報のみを合成して一枚の2次元平面画像を形成している。・・・メモリ内の情報をシフトする転送距離・・・を調整して映像すべき断層軌道面を設定しているのである。」(審決8頁16行〜9頁8行)との記載があることは当事者間に争いがなく、上記記載によれば、引用例1記載の考案のシフトによるデータの加算は、演算メモリ32内において記憶素子中のデータをシフトさせ、次いで受けられる対応した信号によりシフトさせたデータを増加させ加算していくものであることが認められる。
引用例2には、審決(12頁5行〜15頁3行)認定に係る記載があることは当事者間に争いがない。上記記載、とりわけ、「検出装置組立体14の動作は時には『時間遅延および集積(TDI)』と称する技術に従っている。」(審決13頁2行〜4行)、「第12図の実施例は、CCD素子から成る遅延積分回路を利用するためには特に適切であると考えられている。」(同14頁末行〜15頁2行)、「シフトレジスタSRはクロック回路56からのクロック信号によって制御される。各クロックパルスに応答してレジスタ素子X3,X 2,X 1中のデータは第3図に関して左へ1素子だけシフトされる。・・・次のクロックパルスに応答してQ1+Q 2はレジスタ素子X 3にシフトされる。・・・信号Q 3によって増加されてQ1+Q 2+Q 3になる。」(同13頁5行〜12行)、「第6図は光ダイオード82・・・の上には、入射X線を可視光線に変換する・・・蛍光体層がある。」(同14頁16行〜18行)との記載によれば、引用例2には、CCDセンサに適用することの可能な走査型X線診断装置であって、検出装置組立体と接続されたクロック発生器を備え、この検出装置組立体のシフトレジスタと接続されたA-D変換器を備え、この検出装置組立体は、クロック発生器によりTDI法により駆動され、
像情報の積分は、シンチレータに生ずる光像が検出装置組立体の表面上に結像され、それにより生ずる電荷像が像帯域(光ダイオード)からメモリ帯域(シフトレジスタ)へ伝送されることにより行われる考案が記載されているものと認められる。
以上の認定に係る引用例1、2各記載の考案における画像の積算処理の類似性を考慮すれば、引用例2記載の考案のTDI法を、顎のパノラマ断層画像を得る引用例1記載の考案の画像の積算に適用し、CCDセンサにおいて像情報の積分を行うよう構成することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものというべきである。
エ そして、特定の行間隔(nx ・a)のCCDにおいて、断層軌道面を設定することにより像情報の積分を行うには、従来のフイルムの速度と同一である電荷像の速度をvとすると、クロック周波数はv/(nx ・a)でなければならないことは明らかであるから、クロック周波数fTakt 、二次スリット平面に関してのCCD行間隔nx ・aと、従来の断層撮影技術におけるフィルムの速度vとの関係は、fTakt =v/( nx ・a)に設定されることになるものと認められる(ちなみに、引用例1に「曲面断層撮影の断層撮影軌道面は、被写体の周りを回動するX線源の移動速度と、透過X線を受けとめるフィルムの送り速度との相対的関係により規定されるが、本発明によればアームの回転速度に対し、メモリ内の情報をシフトする転送距離(・・・)を調整して映像すべき断層軌道面を設定しているのである。」(審決9頁2行〜8行)との記載があるとおり、引用例1記載の考案も、従来のフィルム送り速度との関係を認識していることは明らかである。)。
オ 以上のとおりであるから、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案を適用して、「CCDセンサと接続されたクロック発生器を備え、A-D変換器がCCDセンサのシフトレジスタと接続され、前記CCDセンサは、クロック発生器により関係式 fTakt =v/(nx・a) によりクロック制御されることによりTDI(Time-Delay-Integration)法により駆動され、像情報の積分は、シンチレータに生ずる光像がCCDセンサの表面上に結像され、それにより生ずる電荷像が前記のクロック列 fTakt =v/(nx・a)で像帯域からメモリ帯域へ伝送され、その後に行ごとにシフトレジスタ(11c)を介してクロックアウトすることにより行われる」との相違点に係る構成を得ることは、当業者がきわめて容易になし得たことというべきである。
(2) 参加人は、本願第1考案が、クロック周波数を時間的に変化させるという構成を備えていると主張し、これを前提として、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案を適用しても、クロック周波数を時間的に変化させるという構成にはならないと主張する。
ア 実用新案登録の要件を審理する前提としてされる実用新案登録出願に係る考案の要旨の認定は、当業者において実用新案登録請求の範囲の記載の技術的意義を一義的に明確に理解することができないとか、あるいは一見してその記載が誤記であることが明細書の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなど、考案の詳細な説明あるいは願書添付の図面の記載を参酌することが許される特段の事情のない限り、実用新案登録請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。これを本件についてみると、本願第1考案の実用新案登録請求の範囲には、クロック周波数を時間的に変化させるものに限定される趣旨の記載はなく、また、クロック周波数の時間的変化に関して、考案の詳細な説明あるいは願書添付の図面の記載を参酌することが許されるような特段の事情も認められない。したがって、参加人の主張は、
前提を欠くものであって、失当である。
イ のみならず、本願明細書考案の詳細な説明の欄あるいは願書添付の図面にも、本願第1考案が、クロック周波数を時間的に変化させるものに限定される趣旨の記載はない。参加人は、本願第1考案においてクロック列が時間的に変化することの根拠として、本願明細書の、「通常15kHzであるCCDセンサの標準クロック列が、たとえば20msのCCD要素の像積分時間(tBA )の間に行が従来の撮影技術におけるフィルム速度に相応するクロックレート(fTakt )で像帯域のなかへシフトされるように変更される。像積分時間(tBA )の間に電荷像は像帯域のなかでたとえば0.1mmと1mmとの間変化する。」(18頁17行〜19頁3行)との記載を挙げる。しかし、上記記載は、考案の詳細な説明の欄の実施例中の「二次スリットを通り過ぎるフィルムの積分挙動をCCDセンサにより電子的に模擬する第2の方法は下記の方法である。」(甲第2号証18頁14行〜16行)との記載に続くものであって、実施例の、しかも「第2の方法」についての説明にすぎないから、本願第1考案が、上記記載により説明されるものに限定されるということはできない。
ウ また、参加人は、甲第8ないし第12号証刊行物を根拠として、歯列弓の断層撮影においてフィルム速度を可変することが周知かつ自明であったと主張する。しかし、上記各証拠は、特許出願公開公報、特許出願公告公報や雑誌の論文であって、これらに記載されている「歯列弓の断層撮影においてフィルム速度を可変とすること」が周知であるということはできるけれども、これらの記載をもって、
「歯列弓の断層撮影」は「フィルム速度を可変とすること」に限定されるものと認めることはできない。
エ なお、「歯列弓の断層撮影においてフィルム速度を可変すること」は周知であるから、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案を適用するに当たり、従来の断層撮影技術におけるフィルムの速度vが可変であるという周知技術を前提に、クロック周波数を時間的に変化させる構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得たことというべきである。参加人の主張は、この点でも理由がない。
(3) また、参加人は、本願第1考案のクロック周波数が時間的に変化することを前提として、引用例2には、断層画像を作成するためにクロック周波数が変化するようにすることは全く示唆されていないから、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案のTDI法を適用しても、顎のパノラマ断層画像は得られないと主張する。
しかし、この主張が認められないことは、上述したところに照らして明らかである。
なお、引用例1記載の考案は、「患者の顎のパノラマ断層撮影のための歯科用X線診断装置であって、光像に対応する電荷像は検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され、」との構成を備えているのであるから、引用例1記載の考案に引用例2記載の考案のTDI法を適用すれば、電荷像が、検出器平面における時間的に連続する像の場所的にずれた積分により1つの全電荷像に加算され、断層像が計算されることになることは明らかである。
3 以上のとおりであるから、 参加人主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、本訴請求は、理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担並
びに上告及び上告受理の申立てのための付加期間の付与について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 山田知司
裁判官 宍戸充
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