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関連審決 審判1999-39038
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  相違点の認定 /  きわめて容易 /  請求項 /  実施例 /  容易に想到 /  設計変更 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 31号 審決取消請求事件
原告 日本鋼管継手株式会社
訴訟代理人弁理士鈴江孝一
同弁理士 鈴江正二
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 市野要助
同 村本佳史
同 大野覚美
同 大橋良三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/04/26
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第39038号事件について平成11年12月10日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,考案の名称を「樹脂管と金属管との変換継手」とする登録第2517890号の登録実用新案(平成2年10月16日出願,平成8年9月3日設定登録,以下「本件登録実用新案」という。)の実用新案権者である。
原告は,平成11年4月30日,本件登録実用新案の願書に添付された明細書を訂正すること(以下「本件訂正」といい,本件訂正に係る明細書を「訂正明細書」という。)につき訂正審判の請求をし,特許庁は,これを平成11年審判第39038号事件として審理した結果, 同年12月10日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同月27日,その謄本を原告に送達した。
2 訂正請求に係る実用新案登録請求の範囲(以下,請求項1に係る考案を「訂正考案1」,請求項2に係る考案を「訂正考案2」という。) 「1.金属管の端部に具備されたねじ部がねじ込み接続されるねじ部を一端部に備え,かつ他端部内周に所定ピッチで並設された複数の喰込みエッジが突設された筒状の金属管接続用口金と, 合成樹脂管の嵌合される筒状の樹脂層に発熱により上記樹脂層を溶融させて上記合成樹脂管と上記樹脂層とを熱融着させるための発熱体が設けられていると共に,上記樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブと, 上記口金の他端部に挿入された樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれ該筒部を拡げて上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込ませるためのスティフナーと, 上記喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングと,を有する樹脂管と金属管との変換継手。
2.金属管の端部に具備されたねじ部がねじ込み接続されるねじ部を一端部に備え,かつ他端部内周に所定ピッチで並設された複数の喰込みエッジが突設された筒状の金属管接続用口金と, 樹脂管接続用の筒状の樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブと, 上記口金の他端部に挿入された樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれ該筒部を拡げて上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込ませるためのスティフナーと, 上記喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングと,を有する樹脂管と金属管との変換継手。」(別紙図面(1)参照) 3 審決の理由 審決の理由は,別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに,訂正考案1及び同2は,特開平2-253089号公報(甲第4号証。以下「引用刊行物1」という。)に記載された技術(以下「引用考案1」という。),実願昭63-71485号(実開平1-174690号)のマイクロフィルム(甲第5号証。以下「引用刊行物2」という。)に記載された技術(以下「引用考案2」という。)に基づき,周知技術(特開昭62-4988号公報(甲第6号証),実願昭58-170314号(実開昭60-77889号)のマイクロフィルム(甲第7号証)及び特開昭50-77923号公報(甲第8号証)にその例がみられる。)を参酌して,当業者がきわめて容易考案することができたと認められるので,実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであり,本件訂正は平成5年法律第26号による改正前の実用新案法3条2項(以下「旧実用新案法3条2項」という。)に違反するとして,本件訂正を認めなかったものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中,「(1)請求の趣旨」,「(2)本件訂正後の考案」,「(3)引用例」を認め,「(4)当審の判断」のうち訂正考案1と引用考案1との一致点と相違点の認定を認め,引用考案2の認定を争わず,その余を争い,「(5)むすび」を争う。
審決は,訂正考案1につき,これと引用考案1との相違点1及び同2に関して,推考困難性の判断を誤り(取消事由1,同2),それが奏する顕著な作用効果を看過し(取消事由3),また,訂正考案2についても,訂正考案1と同様の誤りを犯し(取消事由4),その結果,本件訂正は,旧実用新案法3条2項に違反してなされたものであるとの誤った判断を導いたものであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,取り消されなければならない。
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り) 審決の行った次の認定が正しいことは認める。
@ 訂正考案1と引用考案1とを対比すると,金属管接続用口金と樹脂管接続用スリーブとの結合に関し,前者は,金属接続用口金の他端部内に所定ピッチで並設された複数喰込みエッジを突設し,樹脂管接続用スリーブの筒部を上記口金他端部に挿入し,上記樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれたスティフナーにより該筒部を拡げて,上記口金の喰込みエッジに喰い込ませて結合しているのに対して,後者は,上記スリーブに相当する「架橋ポリオレフィン層2」の内側に上記口金に相当する「接続部材6」の挿入部6aを挿入し,接着性材料により又はねじ部により固着結合されている点で相違する(相違点1。審決書19頁2行〜13行。
別紙図面(2)参照)。
A 引用刊行物2(甲第5号証)には,金属製継手本体1(訂正考案1の「金属管接続用口金」に相当する。)と,ポリエチレン管等の軟質管2(訂正考案1の「樹脂管接続用スリーブ」に相当する。)との結合手段に関し,継手本体1の端部(訂正考案1の「金属管継ぎ手用口金の他端部」に相当する。)に内周溝刻設部12を設け,該内周溝刻設部12の内面は環状の溝またはねじ(訂正考案1の「喰込みエッジ」に相当する。)が数条(訂正考案1の「複数」に相当する。)設けられており,その端部内面に延性金属管4(訂正考案1の「スティフナー」に相当する。)を装着した軟質管2を上記継手本体1の端部に挿入し,該延性金属管4を拡径して,軟質管2の外周を内周溝刻設部12に喰い込ませてなる軟質管用継手(引用考案2)が開示されている(審決書19頁末行〜14行。別紙図面(3)参照)。
(1) 審決は,相違点1について,引用考案2の軟質管用継手の結合手段を,引用考案1の管継手を構成する接続部材と管状の架橋ポリオレフィン層との結合手段に代えて採用し,訂正考案1のように構成することは,当業者がきわめて容易に想到し得たものである(審決書20頁末行〜21頁6行参照),と判断したが,この判断は誤りである。
引用考案1の樹脂管と金属管との結合手段を引用考案2のそれに代えるとすると,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2を接続部材6に挿入して,結合することになるので,架橋ポリオレフィン層2の外径は,接続部材6の内径より小さいものとなり,その結果,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2の全体を被接続体5(規格化される長尺の管)より小内径のものにしなければならない。そうすると,接続部材6の内径に比べて被接続体5の内径が小径になるから,流体の圧力損失が非常に大きくなり,流体の流せる量が大幅に減少し,末端側において所定量の流体を流すことができなくなる。したがって,長尺配管をつなぐ継手のために,本件でいえば,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2のために,引用考案1の被接続体5を小径に変更するということはあり得ないことである。
このように,変換継手として,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2に被接続体5をそのまま接続することが不可能である以上,当業者が引用考案1と引用考案2とを組み合わせようと考えることはあり得ない。
(2) この点について,被告は,単に架橋ポリオレフィン層2の被接続体5と接続する部分を拡径すればよい旨主張する。
しかし,引用考案1で開示されている構成は,あらかじめ設計で決められている配管長さ及び内外径寸法の被接続体5に対して,その被接続体5の先端に接続部材6の後端を当接させ,あるいは,被接続体5の先端に架橋ポリオレフィン層2の厚み程度のわずかな隙間をあけて接続部材6の後端を対向させているものであるから(別紙図面(2)参照),引用考案1の架橋ポリオレフィン層2を引用考案2のように挿入して拡径させて食い込ませる結合手段を採用すると,架橋ポリオレフィン層2の他方側は,被接続体5の先端側と接続しているから,その部位で架橋ポリオレフィン層2を拡げようとすれば,架橋ポリオレフィン層2とこれと交差して接続する被接続体5の先端側とを併せて拡げることになり,架橋ポリオレフィン層2とこれと交差して接続する被接続体5が重なってしまい,結局,拡げることができないことになる。したがって,引用考案1の上記構成によっては,引用考案2の結合手段を直ちに採用することができないのである。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り) 審決の行った,訂正考案1と引用考案1とを対比すると,前者は,喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングを有しているのに対して,後者は,この構成が何ら記載されていない点で相違する(相違点2)との認定が正しいことは認める。
審決は,相違点2について,引用考案2には,金属製継手本体1とポリエチレン管等の軟質管2との結合部の手前と奧にパッキン(シール)を適用することが開示されていることを前提に,内周溝刻設部12の内周溝にシールを適用しようとすることは,特開昭62-4988号公報(甲第6号証),実願昭58-170314号(実開昭60-77889号)のマイクロフィルム(甲第7号証)及び特開昭50-77923号公報(甲第8号証))によって示される周知技術を参酌すれば,当業者にとってきわめて容易に想到し得るものと認められる(審決書21頁17行〜23頁19行参照),と判断したが,上記判断は誤っている。
(1) 訂正考案1は,単なるシールリングによるシールではなく,いままでの常識を破って,食い込み結合箇所と同じところで,食い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールを可能にしたものである。一方,引用考案2の内周溝刻設部12に形成される環状の内周溝は,延性金属管4の拡径により軟質管2(ポリエチレン管)に亀裂が起こらないように,かつ,軟質管2が薄肉化されて強度不足にもならないように,軟質管2をわずかに拡径させて,その軟質管2の材料を充満させるものであるから,その内周溝は極小の内周溝である。このことは,引用刊行物2に,その環状の内周溝が「溝又はねじ」であると記載されていて(甲第5号証3頁12行),「ねじ」と同類に扱っていることからも明らかである。したがって,内周溝は,極小であって,軟質管2の材料を充満させるものしか想定されず,軟質管2の材料が充満されたときには,隙間がほとんど存在しないから,このような部位をシールリングの設け場所とすることは考えられない。
(2) 審決が周知技術を示すものとして挙げる特開昭62-4988号公報(甲第6号証)は,管26のねじ山30の結合箇所とは別の位置(前端部33側の位置)に密閉リング34(Oリング)を設けてシールさせようとしている技術であり,訂正考案1のように,軟質管2の材料が充満される内周溝刻設部12(内周溝)の箇所にシールリングを設けようとしているものではない(別紙図面(4)参照)。したがって,上記公報から,訂正考案1のように食い込み結合箇所と同一の箇所で,食い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールを行なおうとする発想に至ることはない。
また,実願昭58-170314号(実開昭60-77889号)のマイクロフィルム(甲第7号証)及び特開昭50-77923号公報(甲第8号証)に記載されている技術は,食い込み方式をやめて,外周面に形成された大きな喰込みエッジ間の逆直角三角形の溝空間に,抜け止めとシールを達成できるO-リング8(甲第7号証の場合),あるいは,Oリング状成形体r1〜r 4(甲第8号証の場合)を入れ,このO-リング8あるいはOリング状成形体r1〜r 4だけで,プラスチック製管3(甲第7号証の場合),あるいは,ホース1(甲第8号証の場合)の抜け止めと隙間のシールを行おうとする技術であり,内周溝刻設部の喰い込み結合箇所において,喰い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールを行なおうとする技術ではない。
以上のとおり,甲第6号証ないし第8号証は,訂正考案1のようなダブルシールの技術でないから,当業者は,これを参酌したからといって,きわめて容易に訂正考案1に想到することはできないのである。
3 取消事由3(顕著な作用効果の看過) 訂正考案1は,金属管接続用口金と樹脂管接続用スリーブとの食い込み結合により樹脂管接続用スリーブの抜け止め力を大きく確保しながら,その食い込み結合箇所において,食い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールを行うことができる樹脂管と金属管との変換継手を得ることができるので,安全性が第1とされるガスなどに対して,更に一層,気密信頼性を向上させることができる。
また,訂正考案1は,シールリングを嵌め込む,食い込みエッジ間の溝を,甲第7及び8号証に示されるような逆直角三角形の溝ではなく凹溝にしているので,樹脂管接続用スリーブの金属管接続用口金へ挿入したときに,仮に,上記スリーブの筒部がシールリングに当たっても,上記スリーブの食い込みや,その食い込みの抜け止め阻止力,その食い込みのシール力に悪影響を及ぼすようなシールリングの移動はされず,食い込みを適正に行うことができて,食い込みによるスリーブの抜け止めと,上記食い込み結合箇所におけるダブルシールとを確実に行うことができる。したがって,かえって気密信頼性を損ねるというようなこともなく,気密信頼性を確実に実行することができる。
さらに,訂正考案1では,口金とスリーブとの食い込み結合によりスリーブの大きな抜け止め力とシール力が確保され,しかも,その食い込み結合箇所において食い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールがなされるから,その食い込みエッジより奥側に装備させるシールリングを長いものにしなくても済む。そのため,そのシールリングの長さによって左右される口金及びスリーブも短くて済み,口金及びスリーブの小型化を達成することができる。
以上のような訂正考案1の作用効果は,引用考案1,同2及び審決の挙げる周知技術から予測し得る範囲を超えている。したがって,訂正考案1の顕著な作用効果を認めず,訂正考案1の進歩性を否定した審決は,誤っている。
4 取消事由4(訂正考案2についての進歩性の判断の誤り) 審決は,「本件実用新案登録の請求項2に係る考案は,本件第1考案において,樹脂管接続用スリーブが,合成樹脂管と樹脂層とを熱融着させるための発熱体を備えていない点でのみ相違するものである。しかしながら,当該発熱体を,捨象して,上記樹脂管接続用スリーブを構成することに格別の作用効果も認められず,この構成は当業者にとって単なる設計変更程度のものであって,格別のものとは認められない。」(審決書24頁7行〜15行)と認定判断した。
しかし,この認定判断が誤っていることは,前述したところと同様である。
被告の反論の要点
審決の認定判断はいずれも正当であり,審決を取り消すべき理由はない。
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について 原告は,引用考案1の樹脂管と金属管との結合手段を引用考案2のそれに代えた場合,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2の全体を被接続体5(規格化される長尺の管)より小内径のものにしなければならず,そうすると,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2と被接続体5との接続が不可能になって,変換継手として成立し得ない構成になるとし,これを根拠に,引用考案1と同2とを組み合わせて訂正考案1に思い至ることはきわめて容易ではない旨主張する。
しかし,引用考案1にいう被接続体5の外径は,必ずしも引用刊行物1に実施例として開示されている外径を有するものに限られるものではなく,この被接続体5の外径が小径のものであれば接続可能であることは明白である。
また,引用刊行物1の実施例に開示される外径を有するもの,あるいは,それ以上の外径を有するものに接続することも可能である。要するに,単に架橋ポリオレフィン層2の被接続体5と接続する部分を拡径すればよいのであり,このようにすることは,乙1号証(実願昭49-32804号(実開昭50-122915号)のマイクロフィルム),乙2号証(実願昭52-138214号(実開昭54-63515号)のマイクロフィルム)及び乙3号証(実願昭56-88676(実開昭57-200793号)のマイクロフィルム)に示されるように,当業者にとって技術常識の範囲内のことである。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について 原告は,引用考案2の内周溝刻設部12に形成される環状の内周溝は,延性金属管4の拡径により軟質管2(ポリエチレン管)に亀裂が起こらないように,かつ,軟質管2が薄肉化されて強度不足にもならないように,軟質管2をわずかに拡径させて,その軟質管2の材料を充満させるものであるから,その内周溝は,極小の内周溝であって,このことは,引用刊行物2に,その環状の内周溝が「溝又はねじ」であると記載されていて(甲第5号証3頁12行),「ねじ」と同類に扱われていることからも明らかである旨主張する。
しかしながら,原告の上記主張には何らの根拠もない。引用刊行物2は,「環状の溝又はねじ」との表現により,内周溝刻設部12の内面に形成される「溝」が,「環状の溝」又は「ねじのような溝」であることについて述べているにすぎず,形成される「溝」にシールリングが適用できる隙間が存在し得ないなどということにまで言及してはいない。
また,引用考案2の結合手段は,内周溝刻設部12に設けられた環状の溝又はねじ(の溝部分)が軟質管2に食い込み,しかも,上記刻設部の奥に装着された第3パッキン33(訂正考案1のシールリングに相当する。)によりシールを確実にしているのであるから,これも訂正考案1のようにダブルシールを行っていることは明白である。そして,甲第6ないし8号証に開示されている,本件出願前に周知となっている溝部分にシールリングを適用してシーリングするという周知技術を採用すれば,訂正考案1の構成となるのであり,しかも,引用考案2の上記構成に,上記周知技術を採用することは,当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
3 取消事由3(顕著な作用効果の看過)について シールリングを複数適用すればシール性が向上することは,当業者であれば,当然に予測できる技術常識である。
また,原告は,訂正考案1は,シールリングを嵌め込む食い込みエッジ間の溝を,甲第7及び8号証に示されるような逆直角三角形の溝ではなく凹溝にしているというが,訂正考案1は,溝について,凹溝としか限定していないから,溝の形状が逆直角三角形となることを除外するものではない。
さらに,訂正考案1が食い込みエッジより奥側に装備されるシールリングを長いものにしなくても済むという点についても,引用考案2は,シールリングが長いか短いかについて何らの記載もなく,短いものを排除しているわけではないから,引用考案2の構成を引用考案1に適用するに際し,その継手構造を小型化することについて何らの支障もないものである。
4 取消事由4(訂正考案2についての進歩性の判断の誤り)について 訂正考案2は,実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。その理由は,訂正考案1について述べたのと同様である。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点1についての判断の誤り)について (1) 次の事実は,当事者間に争いがない。
@ 訂正考案1と引用考案1とを対比すると,金属管接続用口金と樹脂管接続用スリーブとの結合に関し,前者は,金属接続用口金の他端部内に所定ピッチで並設された複数喰込みエッジを突設し,樹脂管接続用スリーブの筒部を上記口金他端部に挿入し,上記樹脂管接続用スリーブの筒部に嵌め込まれたスティフナーにより該筒部を拡げて,上記口金の喰込みエッジに喰い込ませて結合しているのに対して,後者は,上記スリーブに相当する「架橋ポリオレフィン層2」の内側に上記口金に相当する「接続部材6」の挿入部6aを挿入し,接着性材料により又はねじ部により固着結合されている点で相違する(相違点1)。
A 引用刊行物2(甲第5号証)には,金属製継手本体1(訂正考案1の「金属管接続用口金」に相当する。)と,ポリエチレン管等の軟質管2(訂正考案1の「樹脂管接続用スリーブ」に相当する。)との結合手段に関し,継手本体1の端部(訂正考案1の「金属管継手用口金の他端部」に相当する。)に内周溝刻設部12を設け,該内周溝刻設部12の内面は環状の溝又はねじ(訂正考案1の「喰込みエッジ」に相当する。)が数条(訂正考案1の「複数」に相当する。)設けられており,その端部内面に延性金属管4(訂正考案1の「スティフナー」に相当する。)を装着した軟質管2を上記継手本体1の端部に挿入し,該延性金属管4の筒部を押し拡げて,軟質管2の外周を内周溝刻設部12に喰い込ませてなる軟質管用継手(引用考案2)が開示されている。
上記@及びAによれば,引用考案1の「接続部材6」(訂正考案1の筒状の金属管継手用口金に相当する。)の端部に「架橋ポリオレフィン層2」(訂正考案1の樹脂管接続用スリーブに相当する。)の筒状部を嵌合固定するという構成に代えて,上記引用考案2の構成を採用すれば,訂正考案1の相違点1に係る構成となることは,明白である。
引用考案1と同2とは,いずれも,金属管と樹脂管とを継手によって接続しようとする技術であり,技術分野も技術課題も共通していることからすれば,両考案を組み合わせることを妨げる格別の事情が認められない限り,両考案に接した当業者にとって,これらを組み合わせて,相違点1に係る訂正考案1の構成とすることは,きわめて容易なことというべきである。
(2) 原告は,引用考案1の樹脂管と金属管との結合手段を引用考案2のそれに代えようとすれば,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2が,引用考案2の結合手段によって,接続部材6に挿入されて結合することになるので,架橋ポリオレフィン層2の外径は,接続部材6の内径より小さいものとなり,その結果,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2の全体を被接続体5(規格化される長尺の管)より小内径のものにしなければならないことになるとし,接続部材6の内径に比べて被接続体5の内径が小径になると,流体の圧力損失が非常に大きくなるなどの弊害が生ずるから,引用考案1の架橋ポリオレフィン層2に被接続体5をそのまま接続することは不可能であり,当業者が引用考案1と引用考案2とを組み合わせようと考えることはあり得ない旨主張するが,失当である。
内径の等しい二つの管を接続する技術は,日常生活においてしばしば目にするごくありふれたものであり,その場合に,内径が等しいことによって支障がなければそのままにし,支障があれば,上記二つの管の接続部分において,例えば,一方の先端部を徐々に太くしたり細くしたりするなどして,一方又は双方の内径の寸法を適宜調整すればよいことは,当裁判所に顕著な事実である。したがって,本件において,接続部分において,接続部材6と被接続体5との内径に差を設ける必要があったとしても,これが当業者が引用考案1と引用考案2とを組み合わせようと考えることを妨げる事情となり得ないことは,明らかというべきである。
念のために乙第1号証ないし第3号証を検討する。
乙1号証によれば,実願昭49-32804号(実開昭50-122915号)のマイクロフィルムには,考案の名称として「異径管継手」との記載が,実用新案登録請求の範囲の欄には,「流路断面積が互に異なる一対の本管の継手管を,その一端部側において一方の本管に,他端部側において他方の本管にそれぞれ液密にかつ離脱不可能に嵌合させると共に,前記継手管の内周面においてほぼ45°の漸縮角で前記一対の本管間における流路断面積を変化させるテーパ域を設けたことを特徴とする異型管継手。」(1頁5行〜11行)との記載があり,第1図ないし第4図には,上記記載に相応する図面が示されていることが認められる。
乙2号証によれば,実願昭52-138214号(実開昭54-63515号)のマイクロフィルムには,考案の名称として「流動体用パイプ簡易接続具」との記載が,考案の詳細な説明の欄には,「生ゴム等の弾性物質を使用し,第2図に向って右側にかぶせ部(ア)及び肩部(エ)を,左側に差込部(オ)を設け,その間を円錐台部(ケ)で繋いだ。更に (1) かぶせ部(ア)の内径D1が,かぶせパイプ(イ)(かぶせ部(ア)を接続する側のパイプ)の外径P1に等しいか小さい。(2) 差込部(オ)の外径D2が,差込パイプ(カ)(差込部(オ)を差し込む側のパイプ)の内径P 2より等しいかやや小さい。(3) 肩部(エ)の内径D3が,かぶせパイプ(イ)の内径P 1′と等しいか大きい。以上のようになるようにした。又,固定バンド(ウ)は本案をかぶせパイプ(イ)に固定するものである。」(2頁9行〜3頁1行)との記載があり,第1図及び第2図には,上記記載に沿った図面が示されていることが認められる。
乙3号証によれば,実願昭56-88676号(実開昭57-200793号)のマイクロフィルムには,考案の名称として「FRP異形管継手の抜止め装置」との記載が,考案の詳細な説明の欄には,「従来のFRP異形管継手は,第1図に示すように,一様内径のFRP異形管1の内面に設けた環状溝内に,内面に弾性リップを有する硬質リング2及びゴムリング3を装入し,予め外周に凹溝4を形成した差込管5をFRP異形管1内に挿入して前記弾性リップを凹溝4内に突出係止させて抜止めをなさしめると共に」(1頁16行〜2頁2行)「差込管5の外端部分を拡径部5bとし,これに接続管6を挿入接続する構造であった。」(2頁5行〜7行)との記載があり,第1図には,上記記載に沿った図面が示されていることが認められる。
上記認定の各記載によれば,継手管の内側の断面積を変化させるテーパ域をもたせたり,継手管の外側を円錐形にし管の肉厚を変えたりして,内径の異なる管を接続する技術は,古くから知られていたものであり,本件出願時には,周知の技術となっていたことが認められる。
したがって,引用考案1の樹脂管と金属管との結合手段を引用考案2のそれに代える場合,接続部分において接続部材6と被接続体5との内径に差を設ける必要が生じたとしても,上記周知の技術を参酌すれば,接続部材6の内径と被接続体5の内径を,接続部分において適宜調整することはごく容易なことであることが明らかであり,前述したとおり,当業者が引用考案1と引用考案2とを組み合わせようと考えることを妨げる事情となり得ないのである。
(3) 他にも,上記事情となるべきものは,本件全証拠を検討しても見いだすことができない。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について (1) 訂正考案1と引用考案1とを対比すると,前者は,喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングを有しているのに対して,後者は,この構成が何ら記載されていない点で相違すること(相違点2)は,当事者間に争いがない。
甲第6号証及び弁論の全趣旨によれば,特開昭62-4988号公報には,従来の継手におけるシール手段として,確実にシールするために,一方の管部分の先端部(前端部33側の位置)及びその近傍(環形溝31)に凹溝を設け,それぞれの凹溝にシールリング(密閉リング34及び弾性密閉材39)を嵌め込む技術が記載されており,この技術は,本願出願当時,周知の技術であったものと認められる。
(別紙図面(4)参照) そうすると,上記周知の技術を参酌し,これを引用考案1の複数の喰込みエッジに適用すれば,訂正考案1における,上記「喰込みエッジ間及び最奥側の喰込みエッジの奥側にシールリングを嵌め込むことができるように具備された凹溝に嵌め込まれ上記口金と上記接続用スリーブの筒部とに密着させるシールリングを有している」という構成となることが明らかである。
(2) 原告は,引用考案2の内周溝刻設部12に形成される環状の内周溝は,延性金属管4の拡径により軟質管2(ポリエチレン管)に亀裂が起こらないように,かつ,軟質管2が薄肉化されて強度不足にもならないように,軟質管2をわずかに拡径させて,その軟質管2の材料を充満させるものであるとし,これを前提に,引用考案2の内周溝は,極小であって,軟質管2の材料を充満させるものしか想定されず,軟質管2の材料が充満されたときには,隙間がほとんど存在しないから,このような部位をシールリングの設け場所とすることは考えられない旨主張するが,失当である。
引用刊行物2を精査しても,原告主張の,内周溝刻設部12に形成される環状の内周溝は,延性金属管4の拡径により軟質管2(ポリエチレン管)に亀裂が起こらないように,かつ,軟質管2が薄肉化されて強度不足にもならないように,軟質管2をわずかに拡径させて,その軟質管2の材料を充満させるものである,という事実を読みとることはできない。
この点について,原告は,上記事実は,内周溝刻設部12に形成される環状の内周溝が,「溝又はねじ」と記載されていて(3頁12行),「ねじ」と同類に記載されていることから明らかであるという。
しかし,環状の内周溝につき「溝又はねじ」と記載されていることから,なにゆえに「溝」にシールリングが適用できる隙間が存在し得ないことになるのか不明である。「ねじ」の溝であっても,大きい溝の場合もあれば,小さい溝の場合もあり,引用刊行物2において前者を排除するものでないこと,「ねじ」の溝であるからといって,締め付けた「ねじ」の間にシールリングを適用できる程度の隙間を設ける場合を排除するものでないことは,引用刊行物2の記載自体から明らかである。
(3) また,原告は,審決が周知技術を示すものとして挙げる特開昭62-4988号公報(甲第6号証)は,管26のねじ山30の結合箇所とは別の位置(前端部33側の位置)に密閉リング34(Oリング)を設けてシールさせようとしている技術であり,訂正考案1のように,軟質管2の材料が充満される内周溝刻設部12(内周溝)の箇所にシールリングを設けようとしているものではないから,上記公報から,訂正考案1のように食い込み結合箇所と同一の箇所で,食い込みによるシールとシールリングによるシールとのダブルシールを行なおうとする発想に至ることはない旨主張する。
(イ) 前述したとおり,従来の継手におけるシール手段として,確実にシールするために,一方の管部分の先端部(前端部33側の位置)及びその近傍(環形溝31)に凹溝を設け,それぞれの凹溝にシールリング(密閉リング34及び弾性密閉材39)を嵌め込むという周知の技術を参酌し,引用考案1の複数の喰込みエッジによって形成される凹溝にシールリングを適用すれば,訂正考案1における,喰込みエッジの間にもシールリングを設ける構成となることが明らかであり,このような参酌,適用になんらの困難もないものというべきである。
のみならず,次の事実も認めることができる。
(ロ) 甲第6号証によれば,特開昭62-4988号公報には,「密閉リング34は本発明によればプラスチックリング18の,特に該密閉リング34の外径より小さい内径19を有する第二の領域17内に押込まれている。それによって,第一の密閉が実現されている。環形溝31内に存在する弾性密閉材39が第二の密閉を実現し,かつ管部分26を捩込みスリーブ2と接着する。第三の密閉は,プラスチックリング18と係合し,及び/または該リング18に食込んだねじ山30によってもたらされる。この第三の密閉の効果は本発明の範囲内で,捩込みの際に環形溝31から押出されてねじ山30に達した密閉乃至接着材により著しく高められる。」(6頁右上欄1行〜13行),「第3図は,着脱可能な密閉リング34が管部分26の前端部33に配置されている一具体例を示す。密閉リング34はOリングとして形成され得る。密閉リング34と上述した環形溝31との間に,密閉リング34を支持する環形ショルダ52が位置する。場合によっては本発明の範囲内で密閉リング34は,捩込み以前に何かの弾みで外れるのを防ぐべく,管部分26の前端部33に設けられた環形溝42の中に配置されていてもよい。」(7頁左上欄10行〜同頁右上欄1行)との記載があり,第3図には,上記記載に沿った図面が示されていることが認められる(別紙図面(4)参照)。
上記認定によれば,特開昭62-4988号公報には,環形ショルダ52と前端部33との間に設けられた環形溝42の中に配置される密閉リング34によって第一の密閉,ねじ山30と環形ショルダ52との間の環形溝31内に存在する弾性密閉材39によって第二の密閉,リング18に食い込むねじ山30によって第三の密閉を図る技術が記載されていることが認められ,しかも,第三の密閉については,ねじ山30に,環形溝31から押し出されてきた密閉材又は接着材が加わることによって,密閉の効果が著しく高められる旨記載されていることも認められる。
このように,特開昭62-4988号公報には,管と管とを接続する箇所の近傍において,密閉リング34,弾性密閉材39,ねじ山30によって,三重に密閉を行い,しかも,ねじ山30と同一の箇所に密閉材が存在し,ねじ山30と密閉材とが競合して密閉効果を高めている技術が記載されているのである。
そうである以上,特開昭62-4988号公報には,食い込み結合箇所と同一の箇所で,食い込みによるシールとシールリングによるシールとの原告のいうダブルシールを行う技術自体も開示されているものというべきである。原告の上記主張は,採用できない。
(ハ) さらに,甲第7号証によれば,実願昭58-170314号(実開昭60-77889号)のマイクロフィルムには,「第2図は本考案に係る管継手部構造を示す一部破断側面図,第3図は第2図における要部拡大断面図で,2aは継手管,6は嘴状接続部材,7は締付部材,8はO-リングを夫々示す。」(5頁6行〜9行),「この様に接続された嘴状接続部材6の竹の子状接続部にプラスチック製管3を被嵌すると共に該プラスチック製管3先端部外周に配置した締付部材7を締め込むことによってプラスチック製管3を前記竹の子状接続部に固定する。このとき該固定部は第3図に示される様に,締付部材7の締付け力によってプラスチック製管3がO-リング8を押圧してこれを変形させるので,プラスチック製管3の内面とO-リング8が相当の接圧をもって当接する状態となる。」(7頁1行〜11行),「その他,本考案においては竹の子状接続部の前記溝にO-リングを嵌装する場合には全溝部に夫々O-リングを嵌装してもよいが,O-リングの嵌装数は1つでも十分目的を達することができる。」(8頁14行〜18行)との記載があり,第3図には,上記記載に沿った図面が示されていることが認められる(別紙図面(5)参照)。
甲第8号証によれば,特開昭50-77923号公報の発明の詳細な説明の欄には,「4はインナーチューブ1の端部に内挿された金属管体のインサートで,全体として楔状をなしており,その嵌合胴周部Dにはs1乃至s 4なる鋸歯状の環状段部を形成する。5は締結用ソケット金具で閉塞蓋部分Cおよび圧潰縮締部分Sよりなる。6は対手との接続用ユニオンで,これは上記インサート4の肩部鈎部分fに縣合し回転自在におかれる。r1・r 2・r 3およびr 4は架橋エラストマーからなるOリング状成形体である。」(2頁右下欄10行〜19行),「この加締めによる圧潰縮締が行われた図の状態においては,r1乃至r 4はその縮締の影響下にあって夫々内部に応力を貯えることとなり,その外向作用はs1乃至s 4の斜向面および段部の垂直面に強く及んでOリングの効果を増強し,」(3頁左上欄10行〜14行)との記載があり,上記記載に沿った図面が示されていることが認められる(別紙図面(6)参照)。
上記認定の記載によれば,上記各書証には,継手によって管を接続するに当たり,一方の管のねじ部又は溝部の隙間にOリングを嵌め込んで,密閉効果を向上させるという技術が記載されていることが認められ,また,上記各書証の発行された時期を考えれば,上記技術は,本願出願当時に周知の技術事項となっていたものと認められる。
(ニ) 以上のとおりであるから,原告の上記主張は,採用できない。上記認定に反する原告のその余の主張も採用できない。
3 取消事由3(顕著な作用効果の看過)について 原告主張の訂正考案1の効果は,その構成を採用すれば,得られることの自明な効果である。原告の取消事由3に係る主張は,採用できない。
4 取消事由4(訂正考案2についての進歩性の判断の誤り)について 訂正考案2は,訂正考案1の「合成樹脂管の嵌合される筒状の樹脂層に発熱により上記樹脂層を溶融させて上記合成樹脂管と上記樹脂層とを熱融着させるための発熱体が設けられていると共に,上記樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブ」との構成が,「樹脂管接続用の筒状の樹脂層に上記口金の他端部に挿入される筒部が延出され該筒部が上記口金の複数の喰込みエッジに喰い込み上記口金と結合される樹脂管接続用スリーブ」との構成とされている点で相違しているのみであることは,訂正考案1及び同2の実用新案登録請求の範囲の記載自体から明らかである。そして,訂正考案2において,訂正考案1の「合成樹脂管の嵌合される筒状の樹脂層に発熱により上記樹脂層を溶融させて上記合成樹脂管と上記樹脂層とを熱融着させるための発熱体が設けられている」との構成を欠くことによって,訂正考案1に比べ,格別の技術事項が追加されたとは,本件全証拠によっても認めることができない。
そうすると,上述のとおり,訂正考案1について論じてきたことは,すべて訂正考案2にも当てはまることになり,訂正考案2もまた,引用考案1及び同2及び本件周知技術に基づいて,当業者がきわめて容易考案をすることができたものであることが明らかである。
原告の取消事由4に係る主張も,採用できない。
5 以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく,その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。よって,本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸