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関連ワード 技術的範囲 /  均等 /  実施料相当額 /  考案 /  構造 /  請求項 /  本質的部分 /  公知技術 /  転用 /  特定 /  明細書 / 
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事件 平成 12年 (ネ) 2331号 実用新案権侵害差止等請求控訴事件

控訴人(1審原告) 日世株式会社
控訴人(1審原告) 日世メリーランドカップ株式会社
同両名訴訟代理人弁護士 山上和則
同 西山宏昭
同補佐人弁理士 原謙三
同 木島隆一
被控訴人(1審被告) ユナイス ジャパン リミテッド
被控訴人(1審被告) ユナイス インターナショナル リミ テッド
同訴訟代理人弁護士 小西敏雄
同補佐人弁理士 鈴木 守三郎
同 石田俊男
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2001/06/07
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は,控訴人らの負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人ら (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人らは,原判決別紙目録一及び同二記載の各ソフトクリーム状食品用サーバーを販売し,使用し,貸し渡し,若しくは輸入し,又はその販売若しくは貸し渡しの申出(販売又は貸し渡しのための展示を含む。)をしてはならない。
(3) 被控訴人らは,その所有する前項記載のソフトクリーム状食品用サーバー及びその半製品を廃棄せよ。
(4) 被控訴人らは,控訴人日世株式会社に対し,各自金5000万円及びこれに対する平成11年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を,控訴人日世メリーランドカップ株式会社に対し,各自金5000万円及びこれに対する平成11年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被控訴人ら 主文と同旨
事案の概要
1 本件は,控訴人らが被控訴人らに対し,被控訴人らが控訴人らの共有する本件実用新案権(登録番号2098194号)に係る登録実用新案(本件考案)の技術的範囲に属する被控訴人製品を販売する行為は,本件実用新案権を侵害するとして,本件実用新案権に基づき,侵害行為の差止等と損害賠償を求めた事案である。
原判決は,被控訴人製品は本件考案技術的範囲に属さないとして,控訴人らの請求を棄却した。
2 争いのない事実及び争点 争いのない事実及び争点は,原判決「事実及び理由」中の「第二 事案の概要」一,二記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決7頁3行目と5行目にある「不用」をいずれも「不要」と,同6行目の「手入れ」を「手入れに」と,同14頁6行目の「いすれも」を「いずれも」と,同19頁3行目の「実施料相当額を原告らに」を「実施料相当額のうち5000万円を控訴人日世株式会社に,うち5000万円を控訴人日世メリーランドカップ株式会社にそれぞれ」と各改める。)。
争点に対する判断
1 当裁判所も,被控訴人製品は本件考案技術的範囲に属さないと判断する。
その理由は,後記2のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」一に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決33頁8行目の「(三)」を「(二)」と,同行目の「当業者か」を「当業者が」と各改める。)。
2 本件考案本質的部分の認定に関する補足説明 控訴人らは,原判決が本件考案と被控訴人製品との相違点である本件構成要件Dの「水平台の下方に位置する喫食容器保持台を備えている」という構成を本件考案本質的部分であると判断したことは誤りであるとして,当審において,次のとおり主張するが,いずれも理由がないと考える。
(1) 請求項の独立性について 控訴人らは,原判決は,喫食容器保持台の構成が請求項1に係る本件考案本質的部分であるか否かの認定にあたって,請求項3及び5に記載された考案を認定の基礎としているが,各請求項はそれぞれ独立した法的地位を有しており,請求項1は他の請求項2〜5とは無関係に判断されるべきであって,原判決のような判断方法は,請求項の独立性に反し許されない旨主張する。
しかし,前記引用に係る原判決中,請求項3及び5に言及している点については,請求項1における喫食容器保持台の有する作用効果を理解するため,他の請求項における喫食容器保持台の作用効果を参酌したものにすぎないから,請求項の独立性に反する解釈をしたことにはならないというべきである。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
(2) 弁論主義違反について 控訴人らは,被控訴人らは,本件考案の構成要件D(喫食容器保持台の存在)は全部公知,すなわち従来技術であると主張し,これを立証するために乙2を提出しているが,乙2によると,作業台上に小容器(喫食容器)を載せるようにすることが開示されているにもかかわらず,原判決が,それと本件考案の喫食容器保持台とを同視できるかどうかは疑問があるとして,喫食容器保持台の構成を本件考案本質的部分であると認定したことは誤りであり,弁論主義に違反する旨主張する。
しかし,被控訴人らは,本件考案の構成が全部公知であることを主張する一方,仮にそうでないとしても,本件考案の構成要件Dが本質的部分であり,同部分を欠く被控訴人製品が均等論上も本件考案技術的範囲に属さないと主張しているところ,前記引用に係る原判決は,本件考案の構成が全部公知であるとは認められないとする一方,本件考案の構成要件Dが本質的部分であると認定したというのであるから,この認定が弁論主義に違反するとはいえない。また,その認定に際し,被控訴人らが提出した公知技術の立証のための証拠を,本件考案本質的部分の認定に使用することは許されるというべきであるし,乙2が前記本質的部分の積極的認定に使用されたわけでもない。したがって,控訴人らの上記主張は理由がない。
(3) 本件考案の課題,作用効果から導かれる本質的部分について 控訴人らは,喫食容器保持台の構成からは本件明細書に記載された解決課題と作用効果を導き出すことができず,この点からも,原判決が喫食容器保持台の構成を本件考案本質的部分と認定したことは誤りであると主張する。
しかし,喫食容器保持台の構成が本件考案特有の課題解決手段を基礎づけ,特有の作用効果を奏すると考えられることは,前記引用に係る原判決記載のとおりであるが,これに付言すると,本件明細書によると,〔課題を解決するための手段〕の(1) 概要,(2) 基本的構造に,本件考案の基本的構造を構成するものとして喫食容器保持台が記載され,〔作用〕に「喫食用容器内へ正確に押し出すための簡便な装置が提供されるので,単にストッカーを準備するだけで,多種多様のソフトクリーム状食品を迅速かつ衛生的に提供することができる」(原判決添付実用新案公報5欄23〜26行)と記載されており,ソフトクリーム状食品を小分け押出容器から喫食用容器内へ正確に押し出すことにより,迅速性が確保されるというべきであることからも,この点を本件考案特有の作用効果と解することができる。
控訴人らは,本件考案の解決課題及び作用効果は,「小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置」から導き出されると主張するが,後記(4)のとおり,〔考案が解決しようとする課題〕を解決するための手段として,小分け押出容器が用いられることは記載されているものの,その形状,構造,材質などについては特に限定がされておらず,他の構成については,喫食容器保持台を除くと,公知技術として開示されており(乙1,3ないし5),控訴人らが主張する点だけでは,単に公知のアイスクリーム用の小分け装置をソフトクリーム状食品に転用したにすぎず,従来技術の問題点を解決する手段を提供したとはいい難い。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。
(4) 公知技術と本件考案の登録性からみた本質的部分について 控訴人らは,原判決が,固形アイスクリームに関する米国特許(乙1,3ないし5)を,アイスクリーム用の小分け装置に関する公知技術であるとした上,これを前提として,「小分け押出容器入りソフトクリーム状食品を喫食用容器内へ押し出すための装置」について,上記米国特許に係る装置をソフトクリーム状食品に転用したものにすぎないと判断したことは誤りであると主張し,その理由として,本件考案における押出容器への「小分け」は,多量のソフトクリーム状食品を製造した後,これを食単位量に小分けすることをいうところ,固形アイスクリームは,最初から食単位量の大きさの容器に充填して製造するのが通例であり,多量の固形アイスクリームを製造した後,これを小分けするようなことはなく,したがって,上記米国特許に係る装置は,固形アイスクリームを小分けする装置とはいえないと指摘する。
しかし,本件明細書によると,ソフトクリーム状食品を小分けすることによる効果は記載されているが,小分けの手段については何ら記載されておらず,このことに照らすと,本件考案における「小分け」は,ソフトクリーム状食品を食単位量ごとに押出容器に入れるという以上の意味を有するものではないというべきである。
仮に,上記米国特許の訳文において「小分け器」と訳された「dispensing device」,「dispenser」が,固形アイスクリームの「配給装置」の意味であり,上記訳文中の「小分け」が,押出容器から喫食用容器内への食品の押出しを意味するとしても,あらかじめ1食分ごとの固形アイスクリームを充填した容器を使用し,これを喫食用容器内へ押し出すという点では本件考案と変わらず,押出容器内の食品が固形アイスクリームかソフトクリーム状食品かという違いにすぎない。
また,控訴人らは,食品の内容が固形アイスクリームかソフトクリーム状食品かによって,容器(押出容器)から喫食用容器内へ食品を押し出す構造が異なるとも主張し,これに沿うものとして甲13,14を提出するが,本件考案においては,小分け押出容器の具体的な形状,構造,材質などについて特定されているわけではなく,上記米国特許と本件考案との間において,食品の入った容器(押出容器)から喫食用容器内へ食品を押し出すという意味において違いがあるわけではない。
したがって,上記米国特許における「小分け」が本件考案における「小分け」と異なることを前提とする控訴人らの主張は採用することができない。
3 結 論 以上によると,控訴人らの本訴請求は理由がなく,これを棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当である。よって,本件控訴を棄却し,控訴費用の負担につき民事訴訟法67条,61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。
(当審口頭弁論終結日 平成13年4月9日)
裁判長裁判官 竹原俊一
裁判官 若林諒
裁判官 山田陽三