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関連審決 審判1999-39078
関連ワード 考案 /  構造 /  組合せ /  きわめて容易 /  実施例 /  容易に想到 /  置換 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 329号 審決取消請求事件
原告 共同カイテック株式会社
訴訟代理人弁護士 高橋隆二
同 弁理士 元井成幸
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 田中弘満
同 杉浦淳
同 大野覚美
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/07/16
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第39078号事件について平成12年7月18日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「配線用フロアパネル」とする登録第2145904号考案(昭和62年5月30日出願、平成8年12月10日登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。原告は、平成11年10月4日、本件実用新案登録願書添付の明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の記載の訂正(以下「本件訂正」という。)をすることについて審判の請求をし、特許庁は、同請求を平成11年審判第39078号事件として審理した上、平成12年7月18日、「本件審判の請求は、成り立たない。」とする審決をし、その謄本は、同年8月7日、原告に送達された。
2 本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載 (1) 本件訂正前のもの 所定の間隔を置いて配置した中空で底面が開放している複数個の配線溝形成用方形ブロックの側面下端部相互を、上記ブロックの厚さより薄い薄肉連結部で連結することにより、隣合うブロックとブロックの間に薄肉連結部を底とする直交配線溝を形成し、その直交配線溝の上面開口をカバー板で覆ってパネルの上面を平らに構成した配線用フロアパネル。
(2) 本件訂正に係るもの(訂正部分に下線を付す。以下、この考案を「訂正考案」という。) 所定の間隔を置いて配置した中空で底面が開放している複数個の配線溝形成用方形ブロックの側面下端部相互を、可撓性がありかつ 上記ブロックの厚さより薄い薄肉連結部で連結することにより、隣合うブロックとブロックの間に薄肉連結部を底とする直交配線溝を形成し、その直交配線溝の上面開口をカバー板で覆ってパネルの上面を平らに構成した配線用フロアパネル。
3 審決の理由 審決の理由は、別添審決謄本記載のとおり、訂正考案は、特開昭62-107161号公報(甲第3号証、以下「刊行物1」という。)、特開昭61-158558号公報(甲第4号証、以下「刊行物2」という。)及び実願昭54-155632号(実開昭56-71839号)のマイクロフィルム(甲第5号証、以下「刊行物3」という。)に記載された各考案に基づいて、当業者がきわめて容易考案をすることができたものであるから、平成6年法律第116号附則10条1項によりなお従前の例によるとされ、平成5年法律第26号附則4条1項によりなおその効力を有するとされる同法による改正前の実用新案法39条3項により、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けること(以下「独立実用新案登録要件」という。)ができないものであり、本件訂正は適法な訂正とは認められないというものである。
原告主張の審決取消事由
審決は、訂正考案と刊行物1記載の考案との相違点につき、「(ア)相違点1: 本件訂正考案の方形ブロックが中空で底面が開放しているのに対し、刊行物1に記載されたものの方形ブロックが中実である点、(イ)相違点2:本件訂正考案の薄肉連結部は可撓性があるのに対し、刊行物1に記載されたものは、可撓性があるのかどうか不明である点」(審決謄本4頁31行目〜34行目)と認定した上、
相違点1については刊行物1及び2を組み合わせることがきわめて容易であり(取消事由1)、相違点2については刊行物1及び3を組み合わせることがきわめて容易である(取消事由2)との誤った判断をした結果、訂正考案は、刊行物1ないし3に記載された考案から当業者がきわめて容易考案をすることができ独立実用新案登録要件を欠くとの誤った判断をしたものであるから、取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点1の判断の誤り) (1) 刊行物2記載の考案(以下「刊行物考案2」という。)は、目的、構成及び効果の記載からみて、下面が開放した軽合金ダイカスト製のフリーアクセスフロア同士を、そのフロア上面の端部を密着して隣接配置する密着配列の二重床パネルの考案であって、その端部近傍に形成した溝部にリム部を嵌合した構成とすることにより、その密着性を高めて、フロア上面の摩耗による塵埃発生を防止するものである。これに対し、刊行物1記載の考案(以下「刊行物考案1」という。)において方形ブロックとされたものは、ブロック間に直交配線溝が形成されており、ブロック同士はこれを介して隔離配列されている。このように、刊行物考案1及び2は、方形ブロック同士の配列の仕方が、一方は密着配列をし、他方は隔離配列をすることにより直交配線溝を形成する点で、互いに相いれない技術内容を前提とするものであり、当業者にとって両者を結びつける動機付けはない。
(2) 刊行物1の床パネルは、床面に直接敷設するものであり、他方、刊行物2の床パネルは、支持脚上に敷設するものであって、両者はその基本的構成が異なる。刊行物考案2は、フロア下にエアコンの送排水の配管や機器のケーブル等が大小さまざま配置されることが予定されており、特に、電子計算機室、電話交換器室等の二重床板のフリーアクセスフロアへの用途を予定した考案であるから、通常のオフィス用の二重床より床下に配置されるケーブル等は多量のものである。また、
刊行物2には、訂正考案の作用効果である、方形ブロックを中空構造とすることにより軽量化し施工時の取扱いを容易にするという点に関する示唆はない。同考案において、フロアを直接床面に敷設した場合には、中空部分は、床面とフロアとによって閉鎖された空間となり、ここには配管やケーブル等が配置されることはあり得ないから、フロアを直接床面に敷設することはなく、床下に大小さまざまな多量の配管等を配置することが可能な施工方法が採られることを当然の前提としている。
すなわち、刊行物2の出願時(昭和59年)において、フリーアクセスフロアは、
床下空間を形成するため、別途床面に支柱を設け、その支柱上に配置していたことは当業者の技術常識であり、刊行物2記載のフリーアクセスフロアも、その技術常識を当然の前提として考案されたものである。業界専門雑誌である「ゆか monthly」1991 7 VOL.34/NO.7(株式会社インテリアタイムス社発行、甲第8号証)には、コンピュータルームにおけるフリーアクセスフロアについては、アルミダイカスト製パネルが昭和37年に国産化され、そのフリーアクセスフロアは支持脚を有するものであること、フリーアクセスフロアの型式分類として、支柱分離型、支柱一体型及び置敷型があること、床面に直接敷設する置敷型の型式のものは、パネルの四隅に支柱が一体的に設けられたものであり、各ブロックが中空で底面が開放する構造ではないことが記載されている。
(3) そして、刊行物1及び2には、訂正考案の技術的課題、作用効果である床面不陸の吸収性、追従性に関する記載はなく、ブロックパネルの下面開放面と可撓性の連結部とによって敷設床面の不陸を吸収、追従させるという訂正考案の技術思想を創作する動機付けとなる要素はない。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り) (1) 刊行物1及び3における技術分野の共通性は、単に「二重床の配線用フロアパネル」という製品が共通するというものにすぎない。
刊行物3に記載される弾性材を刊行物1に記載される連結部に選択的に適用することは、容易であるということはできず、また、刊行物1に記載されたアルミダイキャスト等の硬質ボードを刊行物3記載の弾性材に置換する動機付けはない。
(2) 刊行物考案1においては、深溝通路に所要配線を収容し得る寸法を要し、
ボード全体の材質はアルミダイキャスト、積層アスベスト板、パーティクル板、コンクリート板、石膏ボード、強化プラスチック板等あるいはそれらの任意の組合せ板から成るため、それら硬質の材質によって形成され、かつ、所要配線を収容し得る程度の厚さを要する浅溝通路が可撓性であることはない。
刊行物1のフロアパネルは、支柱を立ててフロアパネルを並べることが可能なものである。そのためには、パネル自体の剛性が必要であり、ボードの材質は、その機械的強度を保持するため例示されている、アルミダイキャスト、コンクリート、強化プラスチック等の硬質の材質とされている。
このような記載に照らしても、刊行物1記載のボードの材質を弾性材とすることは、刊行物1自体が積極的に否定している。
(3) 被告は、訂正考案において方形ブロックと薄肉部分の材質が別の材質であるものも含まれると主張するが、本件訂正に係る本件明細書(以下「訂正明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲には、このような記載はない。訂正明細書に係る第1図に示される実施例においては、正方形ブロックとそれらをつなぐ薄肉連結部は、一体成形すると明記されており、両部分が別材質のものを用いることは可能ではない。
(4) 刊行物2及び3に記載されるパネルの材質は、前者が剛性のアルミダイカストであり、後者は弾性体であって、フロアパネルの耐荷重性の観点からは重要な差異がある。
刊行物考案2の構成を刊行物1に適用して、刊行物1の方形ブロックの構造を下面開放の中空とすること、刊行物考案3の材質である弾性材を刊行物考案1のフロアパネルに適用することは、いずれもフロアパネルの構造上の強度を弱めることであって、配線用フロアパネルとしての強度不足をきたすから、刊行物考案1に刊行物2及び3を同時に適用することは、当業者の技術的常識にも反する。
被告の反論
1 取消事由1(相違点1の判断の誤り)について (1) 刊行物1に記載されたフロアパネル及び刊行物2に記載されたフリーアクセス用フロアは、いずれも互いに密着して敷設されるものであるから、敷設の態様において変わるところはなく、刊行物考案1に刊行物考案2を適用することを阻害する要因も見当たらない。
原告は、刊行物1記載の隔離配列の技術と刊行物2記載の密着配列の技術は、方形ブロック同士の配列の態様が互いに相いれないものであると主張する。しかしながら、両者は共に二重床用のフロアパネルである点で技術分野を同じくするものであって、刊行物1記載のパネルの各方形ブロックは、深溝通路や浅溝通路によって隔離されて、独立したブロック状の形状となっていることから、個々独立したフリーアクセス用フロアである刊行物2記載のフロアの中空で底面が開放した構成を、刊行物1記載のフロアパネルの方形ブロック部分に適用することに困難性はない。
また、訂正考案は、従来公知のフロアパネルが中実のブロック体で、重くて扱いにくいという問題を解決するため、中空で底面が開放した構成としたものであるが、フロアパネルにおいて軽量化を図るために中空で底面が開放した構成とした点は、本件考案の登録出願前に周知の技術事項であって、当該構成を採用することは、当業者にとって設計事項にすぎない。
(2) 刊行物2に記載されたフロアは、上面が方形をして底面が開放した中空となっており、このフロアは、床面上に敷設されることも予定されるものであるから、当業者であれば、このフロアを多少不陸のある床面の上に敷設した場合には、
開放した底面で多少の不陸を吸収することができることに想到することは自然であって、刊行物2に記載されたものには、パネルの不陸吸収性が示唆されている。
原告は、刊行物2記載のフロアは支持脚上に敷設することを前提とする旨主張するが、刊行物2記載のフロアは、これを床面上に直接に敷設することを妨げる構造ではなく、このフロアを刊行物1記載のフロアパネルの方形ブロック部分に適用することにより、配線が溝通路内に設けられるから、支持脚を設け、又はフロアの側面に配線用の開口部等を設ける必要もない。また、二重床パネル自体を床面に直接敷設することが本件考案の登録出願前に周知の技術的事項であったことを考慮すると、刊行物2記載のフロアを刊行物1記載のフロアパネルに適用することは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について (1) 刊行物1及び3に記載された技術は、いずれも訂正考案と同様に、配線用のフロアパネルに関するものであって、その組合せについて十分に動機付けがある。
(2) 訂正考案の薄肉連結部は、方形ブロックと同じ材質のものにより一体に形成されているものに限定されず、別の材質のものも含むから、刊行物3に記載された床材のピットが設けられた薄肉部を刊行物1記載のボードの溝通路が設けられた薄肉部に適用することの阻害要因はない。
(3) 原告は、刊行物1記載のボードの材質のすべてを弾性材とすることは刊行物1の記載により否定されている旨主張するが、刊行物3記載の可撓性のある薄肉連結部分を刊行物1に記載された薄肉連結部分に適用することにより相違点2に係る訂正発明の構成を得ることは、当業者にとってきわめて容易なものである。
刊行物2記載の中空のフロア用パネルは、実施例において軽合金ダイカスト製のものであることが例示されており、中空で底面が開放した方形パネルの上面でいわゆる二重床を構成することから、中空であっても床としての機能を有するだけの剛性や機械的強度を有し、これを刊行物1記載のボードの方形ブロックに相当する部分に適用した場合には、ボードは当然に床としての剛性及び機械的強度を有する。
(4) 原告は、刊行物1に刊行物2及び3を同時に組み合わせることが当業者の技術的常識に反する旨主張するが、訂正考案は、方形ブロックと薄肉連結部とが別の材質である構成も含むものである。一方、二重床とするための床板材を異なる材質のものにより一体に形成することは、本件考案の登録出願前に周知の技術事項であったから、刊行物3記載の床材のピットが設けられた薄肉部を、刊行物1記載のボードの溝通路が設けられた薄肉部に適用することは、当業者がきわめて容易に想到し得たものである。なお、床面の上に直接敷設される二重床パネルにおいて、薄肉部分を設けることにより薄肉部分の可撓性を利用して床面の多少の不陸を吸収することは、本件考案の登録出願前に周知の技術事項であった。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点1の判断の誤り)について (1) 訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の記載が「所定の間隔を置いて配置した中空で底面が開放している複数個の配線溝形成用方形ブロックの側面下端部相互を、可撓性がありかつ上記ブロックの厚さより薄い薄肉連結部で連結することにより、隣合うブロックとブロックの間に薄肉連結部を底とする直交配線溝を形成し、その直交配線溝の上面開口をカバー板で覆ってパネルの上面を平らに構成した配線用フロアパネル。」であることは、当事者間に争いがない。
訂正明細書(甲第7号証)には、以下の記載がある。
ア 「〔考案が解決しようとする課題〕 上記公知の配線用フロアパネルは、いずれも中実のブロック体で構成されているので重くて扱いにくい。また、直交配線溝の底面をなすブロックとブロックの連結部分は厚肉であるから、配線用フロアパネルに撓み性がない。したがって施工床面に不陸(凹凸)がある場合、フロアパネルが床になじまなくてがたついたり、仕上がりが悪くなる。・・・本考案は上記従来技術における問題点を解決するもので、配線用フロアパネルの軽量化および施工床面の不陸(凹凸)を吸収して床に対する密着性を高めることを目的とする。」(同2頁10行目〜3頁末行) イ 「〔作用〕・・・コンクリート打ち放しによる床面の多少の不陸(凹凸面)は、配線溝の底を形成する薄肉連結部の撓み、および各配線溝形成用方形ブロックの開放底面が吸収して配線用フロアパネルの底面全面を床に密着させる。」(同4頁11行目〜5頁5行目) ウ 「〔考案の効果〕 本考案は、配線用フロアパネルにおいて直交配線溝を形成するために所定の間隔を置いて配置した複数個の方形ブロックを、それぞれ中空で且つ下面が開放しているちようど箱を伏せた形にしたから、軽くて搬入および施工時等における取扱いが容易であるとともに、大荷重に十分耐えることができる。また、隣合うブロックとブロックの間の配線溝の底を形成する連結部はブロックの厚さより薄いから可撓性があり、上記各ブロックの下面が開放していることと相まって、床がコンクリートの打ち放しなどで多少不陸の状態(凹凸)であってもその不陸を吸収して床面に良く倣い、フロアパネルを床に密着させることができて体裁よく仕上がる効果がある。」(同9頁15行目〜10頁10行目) 上記の各記載及び本件明細書(甲第2号証)に係る第1〜第4図(3、4頁)によれば、訂正考案は、配線用フロアパネルの軽量化及び施工床面の不陸を吸収して床に対する密着性を高めることを目的とし、その構成を採用することにより、軽量化及び不陸吸収の作用効果を奏し、床がコンクリートの打ち放しなどで多少の不陸があっても、連結部の可撓性がその不陸にならい、かつ、開放面に入る不陸を吸収することができるものと認められる。
(2) 原告は、刊行物考案2が下面の開放された軽合金ダイカスト製のフロア上面の端部を密着して隣接配置する二重床パネルの考案であり、他方、刊行物考案1がブロック間に直交配線溝が形成され、ブロック同士を密着して配列することはなく、両考案が互いに相いれない技術内容を前提とするものであり、当業者にとって両者を結びつける動機付けがないと主張する。
しかしながら、審決は、刊行物2の記載中「二重床板のフリーアクセスフロアにおいて、中空で底面が開放された軽合金ダイカスト製の方形ブロック状のフリーアクセスフロア用パネル」(審決謄本3頁35行目〜37行目)という点を認定し、フリーアクセスフロア用パネルの裏側が中空となっていることを刊行物考案2として引用しているのであって、表側の構造である「フロアの上面の端部近傍の溝部」や「フロア上部に設置した金属系保護板の端部を押え込む傾斜部を有したリム部」を引用したものではない。パネルの裏側が中空となっている構成は、表側の構造から独立して認定し得る構成であって、原告の主張は審決が引用した刊行物2の内容を正解していない。
そして、刊行物1記載の配線用フロアパネルと刊行物2記載のフリーアクセスフロア用パネルの類型や構造が異なるものであるとしても、軽量化や材料節約のためにパネルを中空構造とすることは広く行われている技術であり、当業者にとって、パネルのいずれの類型や構造についても考慮することであるから、刊行物1及び2に接した当業者であれば、刊行物1記載の方形ブロックの裏側を中空構造とすることは、きわめて容易に想到し得るというべきである。
(3) 原告は、刊行物2記載のフリーアクセスフロア用床パネルは支持脚上に敷設するものと理解すべきであり、他方、刊行物1の床パネルは床面に直接敷設するものであって、両者はその基本的構成が異なること、刊行物1及び2には、訂正考案の技術的課題、作用効果である床面の不陸吸収性、追従性に関する記載はないことから、当業者にとって両者を組み合わせることは困難であると主張するので、この点について判断する。
酒井正雄「フリーアクセスフロアの材質別動向-スチール製-」ゆか monthly 1991 7 VOL.34/NO.7(株式会社インテリアタイムス社1991年7月1日発行、甲第8号証)には、以下の記載がある。
「3,2 フリーアクセスフロアの材料と構法 今日市販されているフリーアクセスフロアの材料と構法との関係を纏めてみたい。
フリーアクセスフロアを構成する部品要素は、居住空間と接する要素であるパネルとこれを構造床上に支持する要素である支柱とに分類される。構法的には、パネルと支柱の関係により分類するのが一般的である。
@ パネル/支柱分離型 イ)構法……構造床と接合する支柱に、着脱可能なパネルを載置する構法 ロ)敷設……構造床に接着剤または鋲により支柱を接合し、パネルの脱落防止機能をもつ支柱頂部の台座にパネルを敷設する。
ハ)不陸対応性……支柱の床レベル調整ナットにより±10o程度を吸収する。・・・ A パネル/支柱一体型 イ)構法……パネルの四隅に支柱を取付けた構法。パネルと支柱とは分離できない。
ロ)敷設……パネル/支柱一体構成を構造床に敷ならべる。
ハ)不陸対応性……支柱のネジ要素の調整により±10o程度を吸収する。・・・ B置敷型 イ)構法……パネル/支柱一体構成。パネルと支柱とは分離できない。
ロ)敷設……パネル/支柱一体構成体を構造床に敷ならべる。
ハ)不陸対応性……パネルサイズを小さくすることによりパネル間の段差の発生を防止する。構造床のもつ不陸吸収はできない。」(13頁右欄14行目〜14頁左欄11行目) これらの記載によれば、フリーアクセスフロアには、「パネル/支柱分離型」、「パネル/支柱一体型」、「置敷型」の3類型があり、構造床の不陸に対応するためには調整ネジや調整ナットによる高さ調整が必須であり、置敷型では高さ調整ができないため構造床のもつ不陸を吸収することはできないが、パネルサイズを小さくすることによりパネル間の段差の発生を防止し得ることが認められる。
甲第8号証の発行日は1991年(平成3年)7月1日であるが、本件実用新案登録出願前に刊行された甲第9〜第22号証、乙第1〜第4号証にも、上記の技術事項に反する記載はなく、他に本件実用新案登録出願日(昭和62年5月30日)から上記発行日までの間に、床パネルの基本構造に係る上記の三つの型とその技術的特徴が変化したことをうかがわせる証拠もない。
パネル/支柱分離型は、パネルと支柱が分離するものであり、両者は別の部品として把握されるものであって、刊行物2に支柱の記載及び図示がないのは、
その表れである。また、刊行物2記載のパネルが上面の端部を密着して隣接配置する二重床パネルであるとしても、その垂直壁部分に支柱との固着構造が設けられているとも認められない。したがって、刊行物2記載のパネルについて、支柱から独立して「中空で底面が開放された軽合金ダイカスト製の方形ブロック状のフリーアクセスフロア用パネル」という技術思想を認定することができ、方形ブロックの裏面を中空化するという技術を刊行物1の方形ブロックに適用するに際し、刊行物考案2が支柱上に載置されることが組合せの阻害要因とはならない。そして、軽量化の観点から、当業者が刊行物1記載の方形ブロックに刊行物2記載の中空化の技術を組み合わせることは、きわめて容易に想到し得るところである。
(4) また、原告は、刊行物1及び2には、訂正考案の技術的課題、作用効果である床面不陸の吸収性、追従性に関する記載はなく、ブロックパネルの下面開放面と可撓性の連結部とによって敷設床面の不陸を吸収、追従させる訂正考案の技術思想を創作する動機付けとなる要素は認められないと主張する。
しかしながら、酒井正雄・前掲(甲第8号証)には、上記のとおり、フリーアクセスフロア用パネルにおいて、パネル/支柱分離型とパネル/支柱一体型にあっては、支柱のネジ要素の調整により構造床のもつ不陸を吸収させることができ、置敷型にあっては、パネルサイズを小さくすることによりパネル間の段差の発生を防止することができる旨記載されており、いずれの型であっても、床面不陸の吸収性、追従性について解決の動機付けを有していることが認められる。
また、実開昭58-156930号公報(乙第1号証)には、「従来より床下内にコード等を収納できる各種床パネルがあるが、これらは高さ調節器で床面レベルが均一になるように調節しなければならず、この作業が煩雑であった。本考案はそのような煩雑な作業を必要とせず床下地の小さい凹凸(以下不陸という。)に対応できる床パネルを提供するものであり、矩形または正方形の繰返し単位と該繰返し単位の四隅に設けられた脚部と、さらに該繰返し単位を結合する可撓性を有する連続体の連接部からなる床パネル基体の表面に仕上げ材が貼着されていることを特徴とする床パネル、をその要旨とする。」(明細書1頁17行目〜2頁10行目)との記載があり、第1ないし第5図によれば、これは上記「置敷型」に分類されるものであるが、可撓性の連結部によって敷設床面の不陸を吸収、追従させる動機付けが認められる。
さらに、実開昭58-156931号公報(乙第2号証)には、「本考案は薄板1が可撓性により床面の不陸に応じて曲がり、したがって脚部が床面に密着し歩行時に床パネルと床面が接触不良で『カタカタ』と音を発生させることを防止する」(明細書4頁13行目〜16行目)との記載があり、第2図によれば、上記「置敷型」に分類されるものであるが、可撓性の連結部によって敷設床面の不陸を吸収、追従させる動機付けが認められる。
刊行物1記載の配線用フロアパネルは、構造床面に置かれる点で、置敷型の床パネルと同様に床面不陸の影響を受けるから、床面不陸の吸収性、追従性について解決の動機付けを有していると認められる。
(5) したがって、刊行物1及び2を組み合わせることがきわめて容易であるとした審決の判断に、原告主張の誤りはない。
2 取消事由2(相違点2の判断の誤り)について (1) 原告は、刊行物3記載の弾性材を刊行物1記載の連結部のみに選択的に適用することは容易ではなく、刊行物1記載のボードにおける硬質の材質を刊行物3記載の弾性材に置換する動機付けがないと主張するので、この点について判断する。
審決は、「刊行物3には、・・・ピットが設けられた薄肉部は可撓性を有するといえ、この薄肉部は、本件訂正考案の薄肉連連結部(注、「連結部」の誤記と認める。)に相当するものであることから、本件訂正考案の相違点2に係る構成は刊行物3に記載されているといえる。そして、・・・刊行物3に記載された上記相違点2に係る構成を刊行物1に記載された方形ブロックの連結部に適用して本件訂正考案1のように構成することは当業者がきわめて容易に想到できたことと認められる。」(審決謄本5頁12行目〜22行目)と説示するから、この説示によれば、審決は、刊行物3記載の薄肉部が可撓性を有するという構成を刊行物1記載の連結部に適用することがきわめて容易であることをいう趣旨であって、弾性材という構成を引用しているのではないから、原告の主張は、審決の趣旨を正解しないものである。
また、実開昭58-156930号公報(乙第1号証)には、「繰返し単位1(注、脚部)および脚部2はABS樹脂・硬質塩化ビニル樹脂・ポリプロピレン等の合成樹脂により得られる。・・・床パネル基体4はその連接部3で曲げることが可能で床下地の不陸に対応できる。連接部3は薄い帯状物を上記繰返し単位と一体成型してもよく」(明細書2頁14行目〜3頁8行目)との記載があり、実開昭58-156931号公報(乙第2号証)には、「第1図は本考案床パネル裏面図である。1は薄板であり硬質ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂、ポリプロピレン等の合成樹脂により形成され、1辺が40〜60pの正方形または矩形の形状をしている。薄板1は薄く可撓性を有す。」(明細書2頁10行目〜15行目)、「薄板1、補強部2、脚部4、5は一体成型可能できわめて廉価で提供できる。」(同3頁12行目〜13行目)との記載があるから、これらの記載によれば、脚部の間に薄肉可撓性の構成を設ければ、弾性材でなくとも床面の不陸に対応し得ることが認められる。
刊行物1記載の配線用フロアパネル及び刊行物3記載の床内装材と同様に構造床面に置かれる以上、床面の不陸の影響を受けるものであって、いずれも床面不陸の吸収性、追従性について解決の動機付けを有しているから、パネルサイズを小さくして段差の発生を防止することや脚部の間に薄肉可撓性の構成を設けることにより床面の不陸に対応することを知っている当業者にとって、刊行物3記載の上記構成を刊行物1記載の方形ブロックの連結部に適用することは、きわめて容易に想到し得ることというべきである。
(2) 原告は、刊行物1において、ボード全体の材質がアルミダイキャスト、積層アスベスト板、パーティクル板、コンクリート板、石膏ボード、強化プラスチック板等又はそれらの任意の組合せ板から成るため、それら硬質の材質によって形成され、かつ、所要配線を収容し得る程度の厚さを要する浅溝通路が可撓性であることはないと主張するが、刊行物1(甲第3号証)には「図中1はボードで、・・・2は深溝の通路、3は浅溝の通路で、ボード1の上面に交差させて形成する。その通路2・3の深さ及び幅は、所要配線を収容し得る寸法であれば適宜である。」(2頁右上欄17行目〜左下欄4行目)との記載があるところ、溝通路は、その深さを当業者が適宜設定し得るものであり、底面からの厚みに配線収容上の制限があるわけではないから、上記(1)認定の乙第1、第2号証の記載に照らせば、刊行物1記載の強化プラスチック等の材料であっても、薄ければ不陸に対応し得る程度の可撓性を有するものと認められる。
(3) また、原告は、刊行物1記載のフロアパネルが支柱を立ててフロアパネルを並べることが可能なものとされるから、パネル自体の剛性が必要であり、刊行物1記載のボードの材質を弾性材とすることは刊行物考案1が積極的に否定していると主張する。しかしながら、刊行物1には、フロアパネルが床面上に直接配置される場合についても記載されているのであって、上記(1)認定の乙第1、2号証の記載によれば、フロアパネルが床面に直接配置される場合には、パネル全体について一様に剛性が要求されるものではないことが認められる上、可撓性のために刊行物1記載のボード全体の材質を弾性材としなければならないものではないことは、前示のとおりである。
(4) さらに、原告は、刊行物考案2の構成を刊行物1に適用して刊行物1の方形ブロックの構造を下面開放の中空とすること、刊行物3記載の考案の弾性材を刊行物1のフロアパネルに適用することは、いずれもフロアパネルの構造上の強度を弱めることであり、かかる方形ブロックでは配線用フロアパネルとしての強度不足をきたし耐荷重性のないものとなるため、刊行物2及び3を同時に適用することは当業者の技術的常識にも反すると主張する。しかしながら、前示のとおり、フロアパネルが床面に直接配置される場合にパネル全体について一様に剛性が要求されるものではなく、刊行物1の方形ブロックの構造を下面開放の中空とすることが配線用フロアパネルとしての強度不足をきたし耐荷重性のないものになると認める根拠はない。可撓性のために刊行物1記載のボード全体の材質を弾性材としなければならないものでもないから、原告の主張は採用することができない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、
他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民訴法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 長沢幸男
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