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関連ワード 権利濫用(権利の濫用) /  考案 /  図面 /  構造 /  進歩性(3条2項) /  新規性(3条1項) /  請求項 /  実施例 /  容易に想到 /  公知技術 /  頒布 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (ワ) 12941号 実用新案権侵害差止等請求事件
原告 広和株式会社
補佐人弁理士 大森忠孝
被告 石川島汎用機サービス株式会社
訴訟代理人弁護士 有賀信勇
補佐人弁理士 大塚誠一
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/08/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙物件目録記載の各製品を製造し、販売し、販売のために展示してはならない。
2 被告は、原告に対し、金1278万円及びこれに対する平成12年12月8日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は、後記実用新案権を有する原告が、被告による別紙物件目録記載の各製品の製造販売等の行為は同実用新案権を侵害するとして、被告に対し、同実用新案権に基づく上記製造販売等の行為の差止めを請求するとともに、民法709条
実用新案法29条2項に基づく損害賠償を請求した事案である。
(争いのない事実) 1 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」、本件実用新案権にかかる明細書を「本件明細書」という。)を有している。
(1) 登録番号 第2561762号 (2) 考案の名称 潤滑給油ポンプ (3) 出願日 平成3年10月16日(実願平3-83937号) (4) 登録日 平成9年10月17日 (5) 実用新案登録請求の範囲請求項1】 グリース等の粘性流動体からなる潤滑剤を収納している容器の上に被せられる蓋部と、この蓋部に取り付けられた駆動装置と、上記蓋部に取り付けられて駆動装置により駆動すると共に容器内に挿入されて潤滑剤を吸い込みかつ吐出するポンプ本体とを備えた潤滑給油ポンプにおいて、前記容器の近傍位置に支柱を立設し、支柱には一定の上下方向長さを有する昇降部材を昇降自在に支持し、該昇降部材に前記蓋部を固定し、昇降部材の下端部にワイヤロープ等の索状伝達部材の一端を連結し、索状伝達部材を支柱上端部まで上方に延ばすと共に、その他端を適宜の巻き取り装置に連結していることを特徴とする潤滑給油ポンプ。
2 本件考案の構成要件を分説すれば、次のとおりとなる。
A グリース等の粘性流動体からなる潤滑剤を収納している容器の上に被せられる蓋部と、この蓋部に取り付けられた駆動装置と、上記蓋部に取り付けられて駆動装置により駆動すると共に容器内に挿入されて潤滑剤を吸い込みかつ吐出するポンプ本体とを備えた潤滑給油ポンプにおいて、
B 前記容器の近傍位置に支柱を立設し、
C 支柱には一定の上下方向長さを有する昇降部材を昇降自在に支持し、
D 該昇降部材に前記蓋部を固定し、
E 昇降部材の下端部にワイヤロープ等の索状伝達部材の一端を連結し、
F 索状伝達部材を支柱上端部まで上方に延ばすと共に、その他端を適宜の巻き取り装置に連結している G ことを特徴とする潤滑給油ポンプ。
3(1) 被告は、別紙物件目録記載の製品を業として製造販売している(以下、一括して「イ号物件」という。)。
(2) イ号物件を代表するものは、@平成12年10月以前はEPM-231L型、A平成12年10月以降はEPM-231B型であり、その構造は、@につき別紙「イ号物件1図1」及び「イ号物件1図2」、Aにつき別紙「イ号物件2図1」及び「イ号物件2図2」各記載のとおりである(ただし、後記争点1、2に関する名称の記載を除く。)。
(争点) 1 構成要件E「昇降部材の下端部に索状伝達部材の一端を連結し」の充足性 (原告の主張) (1) 「昇降部材」の意義は、蓋部を上方から吊り下げる機構と比べ、支柱の高さを大幅に低くすることができるという本件考案の効果に照らして考えるべきであり、被告主張のように限定されるものではない。
本件考案の「昇降部材」は、「一定の上下方向長さを有する」ことと、その下端部に連結した索状伝達部材により巻き上げるものとしたことの相乗効果により、「例えばロープ等で上方から蓋部を吊り下げるような機構」と比べて、支柱を低くすることができる(本件明細書【0024】)という効果を生じるのである。
(2) イ号物件において「昇降部材」に相当するのは、別紙「イ号物件1図1」及び「イ号物件2図1」各二点鎖線部分であり、その下端部にチェン(索状伝達部材に相当する。以下同じ。)が連結されているから、上記構成要件を充足する。
(被告の主張) (1) 「昇降部材」とは、蓋部を昇降させるための部材であって、蓋部を取り付けた際に蓋部によるモーメント荷重を受けることができ、かつ、上下に移動できる機能を有しているものをいう。
(2) イ号物件において、「昇降部材」に相当するのは、上下方向に長さを有し上下端部にガイド輪を備えてガイドレールに沿い転動できるようにした「昇降台車」であって、昇降台車及びこれとブラケットが昇降部材に相当するとしても、これにチェンが連結されている位置は、その垂直方向中間部であって、下端部ではないから、上記構成要件を充足しない。
2 構成要件F「索状伝達部材の他端を適宜の巻き取り装置に連結し」の充足性 (原告の主張) (1) 索状伝達部材の他端とは、荷重を受けて索状伝達部材としての機能を果たしている部分の他端をいうから、「連結」も、索状伝達部材の他端を固着することに限定されない。
(2) イ号物件において、チェンは、別紙「イ号物件1図2」及び「イ号物件2図2」記載のとおり、巻き取り装置に「連結」されているから、上記構成要件を充足する。
(被告の主張) (1) 「連結」とは、少なくとも当該装置の使用中に離脱しないように結ばれていることをいう。
(2) イ号物件において、チェンは巻き掛け装置のギヤに噛み合い、昇降台車の昇降のためにチェンが送られる際には、同チェンはギヤから離脱して順次送られる(係合している)にすぎないのであって、チェンの昇降台車に連結されている側と反対側の端部は巻き掛け装置に「連結」していないから、上記構成要件を充足しない。
3 権利の濫用(本件実用新案権の明らかな無効理由) (被告の主張) 本件考案は、その実用新案登録出願前に日本国内又は外国で頒布された次の刊行物にすべて記載された公知技術の結合よりなるものであり、これらの公知技術から当業者が極めて容易に想到し得るものであるから、新規性ないし進歩性に欠けることが明らかである。
@ DELIMON社製「Electric Barrel Pump BF-E」のカタログ(1989年2月3日発行)(乙1) A 兵神装備株式会社製「サニタリータイプ・ヘイシン・モーノポンプ」のカタログ(1989年4月発行)(乙2) B 京町産業車輛株式会社製「キャリーリフトCL型シリーズ」のカタログ(1990年4月発行)(乙3) (原告の主張) 否認する。
4 原告の損害 (原告の主張)1278万円(426000×60×0.5) (1) イ号物件の1台当たりの販売価格(代理店仕切り価格)は42万6000円である。
(2) 被告による平成11年6月末から同12年12月末までの間のイ号物件の販売台数は合計60台である。
(3) 被告の粗利益率は50パーセントである。
(被告の主張) (1) 認める。
(2) 否認する。
(3) 否認する。
判断
1 争点1(構成要件Eの充足性)について (1) 本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載によれば、本件考案の「昇降部材」は、支柱に昇降自在に支持され、一定の上下方向長さを有するものであり、
かつ、昇降部材には蓋部を固定し、昇降部材の下端部にワイヤーロープ等の索状伝達部材の一端が連結されるものである。
(2) 本件明細書考案の詳細な説明の欄と図面を参酌するに、甲2(別紙実用新案登録公報、以下「本件公報」という。)によれば、次の事実が認められる。
ア 【作用】の項に次の記載がある。
「このような構成の潤滑給油ポンプの容器等交換作業は次の通りである。手動ウインチ等の巻き取り装置のハンドル回転操作により、ワイヤロープ等の索状伝達部材を巻き取り、それにより昇降部材と共に蓋部を引き揚げ、その状態でドラム缶等の容器交換を行なう。」(本件公報4欄16行〜20行) イ 【実施例】の項には、容器の近傍位置に立設される支柱が2本であり、
そのうちの支柱45が昇降部材を支持し、他の支柱46に滑車と巻き取り装置が設けられている実施例が示されている。そして、昇降部材の説明として、次の記載がある。
「一方の支柱45の外周面には、昇降部材として、上記支柱45と略同じ上下方向長さを有する円筒形の昇降ポール47が上下方向移動自在に嵌合し、該昇降ポール47の上部位置にブラケット60を介して蓋部22が固定されている。」(本件公報5欄12行〜16行) 「昇降ポール47の下端には、図2に示すようにフック52が設けられ、該フック52にはワイヤロープ等の索状伝達部材53の一端が固定されている。」(本件公報5欄39行〜41行) また、図2には、昇降ポール47の外面最下端部にフック52が設けられ、該フック52に索状伝達部材53の一端が連結された構造が図示されている。
なお、別の実施例の説明として、「1本の支柱にガイドレール等を介して昇降ポールを昇降自在に支持すると共に、同じ支柱に滑車及び巻き取り装置を取り付けるようにすることもできる。」(本件公報6欄46行〜48行)との記載もある。
ウ 本件考案の効果として、【考案の効果】の項に次の記載がある。
「支柱45に昇降自在に昇降部材(昇降ポール47)を支持し、該昇降部材の下端部に索状伝達部材53の一端部を連結し、索状伝達部材53を上方に延ばして巻き取り装置50により巻き上げるようにしているので、例えばロープ等で上方から蓋部を吊り下げるような機構に比べると、支柱の高さを1/2程度に低くすることができ、トンネル等のような天井壁の低い場所への配置が簡単である。また、支柱自体も重心が低くなって安定する。ちなみに、上方から吊り下げる構造の場合は、ドラム缶の高さの2倍以上(概ね3m以上)の支柱を必要とするが、本考案の場合では支柱はドラム缶の高さより少し高い程度(略1.5m)で済み、ポール上昇時でも略2.4m程度で済む。」(本件公報7欄8行〜20行) (3) 上記のような本件明細書の記載によれば、本件考案の「昇降部材」は、上下方向に一定の長さを有し、支柱に昇降自在に支持され、蓋部を固定するものであり、容器交換作業時には、昇降部材の下端部に一端が連結された索状伝達部材を巻き取り装置により巻き上げることにより、昇降部材が支柱を上昇し、これにより蓋部を引き上げるという作用を行う部材をいうものと認められる(本件明細書実施例に即していえば、蓋部の固定はブラケットを介してするものであるから、「昇降部材」には「ブラケット」も含まれると解しうるが、「昇降ポール」の全体が「昇降部材」に該当することは明らかである。)。
また、本件考案においては、昇降部材の「下端部」に索状伝達部材の一端を連結することが構成要件となっており、このような構成により、他の構成と相まって、本件考案は「例えばロープ等で上方から蓋部を吊り下げるような機構に比べると…支柱の高さを…低くすることができ」るという効果を奏するものと本件明細書に記載されているのであり、前記のような構成によってこのような効果を奏することは原告も自認するところである。
(4) イ号物件の構造が別紙イ号物件1図1、2及び同2図1、2のとおりであることは当事者間に争いがないところ、これらの各図と証拠(甲5、乙4の1ないし3、乙5、6)によれば、イ号物件においては、支柱にガイドレールが設けられ、該ガイドレールに沿って、上下にガイド輪を有する板状の部材(被告のいう昇降台車)が上下する構成になっており、この板状部材に固定されたブラケットにより蓋部を一体に固定しており、また、この板状部材にチェン53の端部が連結されており、巻き取り装置によって板状部材をガイドレールに沿って上下に移動できるようにしたものであることが認められる。このようなイ号物件の構造と本件考案とを対比すると、上記板状部材(被告のいう昇降台車)の全体がこれに取り付けられたブラケットと共に本件考案の「昇降部材」に該当することが明らかである。しかるところ、前記各図によれば、イ号物件においては、索状伝達部材であるチェン53の一端は、昇降部材たる前記板状部材の上端(イ号物件1)又は中間部(イ号物件2)に連結されているものであり、「下端部」に連結されていない。
これに対し、原告は、イ号物件の「昇降部材」に相当するのは、別紙イ号物件1図1及び同2図1の各二点鎖線部であると主張するが、この主張は、単に、
全体として昇降部材である前記板状部材(昇降台車)及びこれに固定されたブラケットのうち、チェンの連結された箇所より上の部分だけを「昇降部材」と称するものであって、何ら本件明細書に根拠を有するものではなく、採用に値しない。また、イ号物件においては、昇降部材を支持する支柱の高さを低くすることができるのは、蓋部を固定するブラケットの位置を蓋部よりも下方に長く設定したり、昇降部材自体の上下方向の長さを短くしたことによる効果であると解されるから(別紙イ号物件1図1及び同2図1参照)、実質的にみても、イ号物件は、本件考案が「昇降部材の下端部に索状伝達部材の一端を連結」するという構成を採用したことによる効果を奏しているとはいえない。
したがって、イ号物件は構成要件Eを充足しない。
2 以上によれば、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、
いずれも理由がない。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 田中秀幸
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