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事件 平成 12年 (ワ) 4634号 実用新案権侵害差止等請求事件
原告 株式会社シマノ
訴訟代理人弁護士 鎌田邦彦
補佐人弁理士 小野 由己男
被告 リョービ株式会社
訴訟代理人弁護士 平野和宏
補佐人弁理士 小谷悦司
同 樋口次郎
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2001/08/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告は、別紙物件目録(1)ないし(4)記載の製品を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
2 被告は、その所有に係る別紙物件目録(1)ないし(4)記載の製品を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金2億8484万円及びこれに対する平成12年2月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
1 前提事実(末尾に証拠の記載のない事実は、当事者間に争いがない。) (1) 本件実用新案権 ア 原告は、次の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その考案を「本件考案」という。)を有している。
登録番号 第2552677号 考案の名称 両軸受リール 出 願 日 平成2年8月7日(実願平2-83879) 公 開 日 平成4年4月8日(実開平4-41264) 登 録 日 平成9年7月11日 イ 本件実用新案登録出願の願書に添付した明細書(訂正後のもの)の実用新案登録請求の範囲請求項1は次のとおりである(以下、別紙添付の平成11年2月2日付け訂正請求に係る訂正明細書を「訂正明細書」といい、実用新案登録時の実用新案登録請求の範囲が記載された別紙添付の実用新案公報を「本件公報」という。)。
「リール本体を構成する左右のケース部(1)、(1)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに、ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受けリールであって、前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、前記左右のケース部(1)(1)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある両軸受リール。」 (2) 構成要件 本件考案は、次の構成要件に分説することができる。
A リール本体を構成する左右のケース部(1)、(2)に亘ってサムレスト(12)とリール脚取付用のロアーフレーム(13)とを配置するとともに(実用新案登録請求の範囲の「左右のケース部(1)、(1)」という記載は、「左右のケース部(1)、(2)」の誤記であることが明白であるので、以下、「左右のケース部(1)、(2)」と表記する。)、
B ハンドル軸(16)、レベルワインド機構(R)、スプール(6)、クラッチ操作具(7)夫々を配置して成る両軸受けリールであって、
C 前記リール本体の外形を、前記スプール(6)の軸芯(Q)に沿う方向視で円形、若しくは、略円形に成形するとともに、
D 前記サムレスト(12)と前記ロアーフレーム(13)とを、前記リール本体の外形中心(P)を基準にして上下に振り分け、かつ、前記リール本体の外形より内側に位置するように配置するとともに、
E 前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し、
F 前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け、
G 前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び、前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し、
H 前記サムレスト(12)を前記リール本体における前記仮想水平面上に沿った前後方向において前記スプール(6)の軸芯(Q)より前方側でかつ前記レベルワインド機構(R)より後方側に位置させ、
I 前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ、
J 前記左右のケース部(1)、(2)、前記サムレスト(12)、前記ロアーフレーム(13)とを一体成型してある K 両軸受リール (3) イ号・ロ号物件 ア 被告は、平成10年11月以降、別紙物件目録(1)記載のリール(以下「イ号物件の1」という。)及び同目録(2)記載のリール(以下「イ号物件の2」という。)を製造、販売している(被告は、同目録(1)(2)における原告の特定のうち「左右のケース部(1')(2')」を否認し、イ号物件の1、2のうち、原告が「左右のケース部(1')(2')」と特定する部分は、別紙被告図面記載のとおり、左右の「内側枠(X1)(X2)」と左右の「ケース部(Y1)(Y2)」から成ると主張している。)。
イ 被告は、平成11年5月から、別紙物件目録(3)記載のリール(以下「ロ号物件の1」という。)及び同目録(4)記載のリール(以下「ロ号物件の2」という。)を製造、販売していた(被告は、同目録(3)(4)における原告の特定のうち「左右のケース部(1')(2')を否認し、イ号物件の1、2のうち、原告が「左右のケース部(1')(2')」と特定する部分は、別紙被告図面記載のとおり、左右の「内側枠(X1)(X2)」と左右の「ケース部(Y1)(Y2)」からなると主張している。)。
ロ号物件の1、2は限定品であり、現在製造・販売は停止されている。
ウ イ号物件の1、2及びロ号物件の1、2(以下、併せて「被告製品」という。)は、いずれも本件考案の構成要件B、C、D、H、I、Kを充足する。
2 原告は、被告に対し、被告製品が本件考案技術的範囲に属しているとして、実用新案法27条に基づき、被告製品の製造、販売等の差止めを求めるとともに、同法29条2項に基づき、被告製品の製造、販売等により被告が得た利益の額として、2億8484万円の損害賠償を請求した。
3 争点 (1) 被告製品は、本件考案技術的範囲に属するか。
ア 構成要件A、Jの「左右のケース部」の充足性 イ 構成要件E充足性 ウ 構成要件F充足性 エ 構成要件G充足性 オ 構成要件Jの「一体成型」の充足性 (2) 本件実用新案権には、無効事由が存在することが明らかか。
進歩性欠如 イ 請求の範囲の記載不備 ウ 不適法な訂正 エ 不適法な補正 (3) 原告の損害額
当事者の主張
1 争点(1)(被告製品は、本件考案技術的範囲に属するか)について (1) 同ア(構成要件A、Jの「左右のケース部」の充足性)について 【原告の主張】 ア 本件考案の構成要件A、Jにいう「左右のケース部」とは、リール本体の左右の枠として機能すると同時に部材を収納するケースとして機能するものをいい、被告の特定によっても、被告製品の「内側枠(X1)(X2)」は、環状壁を有して内部に部材を収納する空間を有し、現実にレベルワインド固定部材、リベット、軸受け支持部材等様々な部材の収納空間となっているから、本件考案の構成要件A及びJにいう「ケース部」に該当する。
イ 被告は、原告の拒絶査定不服審判における主張を根拠に、原告が被告製品の「内側枠(X1)(X2)」をケース部と主張することは禁反言の原則により許されないと主張する。しかし、同主張は、審判理由補充書における意見の趣旨を誤解するものであり、審判理由補充書における主張は、被告製品の「内側枠」を本件考案にいう「ケース部」から排除するものではない。また、拒絶理由通知書における審査官の指摘と、審判理由補充書における原告の主張の具体的経緯に照らしても、原告が被告製品の「内側枠(X1)(X2)」のような部材を左右のケース部でないと主張したことにより登録査定を得たとはいえないから、本件に禁反言の原則は当てはまらない。
【被告の主張】 ア 被告製品の「左側ケース部(Y1)」「右側ケース部(Y2)」は、リール本体とは別の部材から成り、環状円盤から成る内側枠(X1)(X2)にビス止めされており、
サムレスト(12')及びロアーフレーム(13')と一体でないから、本件考案の構成要件A、Jにいう「ケース部」に当たらない。
また、被告製品の「内側枠(X1)(X2)」は、部品を内部に収納するものではないので、本件考案のケース部(1)(2)とは作用効果が異なり、構成要件A、Jにいう「ケース部」に当たらない。
イ 原告は、拒絶査定不服審判における平成8年7月19日付け審判理由補充書(乙13)において、平成7年12月4日付け拒絶理由通知書(乙10)及び平成8年4月22日付け拒絶査定(乙11)の引用例(実願昭61-166043号〔実開昭62-181168号〕のマイクロフィルム、乙12)について、「本願考案が『左右のケース部、ロアーフレーム、サムレストとを一体形成してある』のに対して、引用例に記載された考案では「左右のケース部については一体形成されていない」点で相違すると主張することにより登録査定を得たものであるから、
侵害訴訟において、前記引用例と同じ構成を有する被告製品が本件考案の構成要件A及びJを充足すると主張することは、禁反言の原則により許されない。
(2) 同イ(構成要件E充足性)について 【原告の主張】 本件考案の構成要件Eは、被告製品のように釣り竿取付用の脚部がロアーフレームに外接して左右のケース部に亘って配置されている場合を含む。被告製品における脚部の取付方法は慣用手段であり、脚部をロアーフレームに直接取り付けている本件考案実施例と差がない。 【被告の主張】 本件考案のロアーフレームは釣り竿取付用であるのに対し、被告製品の釣り竿取付用の脚部(14')はロアーフレーム(13')と別体に形成され、ロアーフレーム(13')との間に隙間を設けて左側ケース部(Y1)及び右側ケース部(Y2)にビス止めされている点で相違しており、本件考案の構成要件Eを満たさない。被告製品は、釣り竿取付用の脚部(14')をリール本体とは別の部材とし、ロアーフレーム(13')との間に隙間を設けることにより、リール本体を形成する際のロアーフレームの変形や加工精度に影響されることなく、釣り竿取付用の脚部(14')を常にリール本体の一定の位置に取り付けることができ、釣り竿との取付位置関係を一定に保つことができるという、本件考案とは異なる特有の効果を有している。
(3) 同ウ(構成要件F充足性)について 【原告の主張】 本件考案の構成要件Fは、「前記スプール(6)の軸芯(Q)を前記外形中心(P)を基準として前記サムレスト側に設け」と規定するのみでそれ以上の限定をしておらず、本件公報第3図にも、スプールの軸芯がサムレスト側で、かつリール本体の後方に偏倚させた図が示されている。したがって、本件考案の構成要件Fは、被告製品のようにスプールの軸芯を上方かつ後方に偏倚したものも含む。
被告は、原告の登録異議意見書における主張を根拠に、原告が、スプールの軸芯をリールの上方かつ後方に偏倚させたものも本件考案の構成要件Fに含まれると主張することは禁反言の原則により許されないと主張するが、被告が取り上げる部分は、引用例にはクラッチ操作具がなく、本件考案とは構成が違うのみならず課題も違うという趣旨であり、被告の主張は、部分的に文言を取り出して原告の主張を曲解したものにすぎない。
【被告の主張】 本件考案の構成要件Fは、スプール(6)の軸芯(Q)をリール本体の外形中心(P)を基準としてサムレスト側(上方)に設けるものに限定され、スプール軸芯(Q’)をリールの後方かつ斜め上方に偏倚させた被告製品は、構成要件Fを充足しない。
原告は、平成11年2月2日付け登録異議意見書(乙14)において、異議申立てに伴う取消理由通知で引用された米国特許第1565402号明細書(乙4の1)について、「クラッチ操作具が設けられておらず、また、…スプールが後方に偏移して設けられているので、設けるべきスペースもない。」(7頁23〜26行)、「スプール3がリールの後方で斜め上方に偏倚して設けられ、……スプール3の後方には連結棒11が設けられているのみで、クラッチ操作具を配置するスペースもない」(9頁最終行〜10頁4行)と主張することにより登録維持の決定を得たのであるから、原告がスプールの軸芯(Q’)をリール本体の外形中心(P’)の上方かつ後方に偏倚させた構成についても構成要件Fを充足すると主張することは、禁反言の原則により許されない。
(4) 同エ(構成要件G充足性)について 【原告の主張】 ア 「仮想水平面上若しくはその近傍」とは、仮想水平面の近辺を意味するものであり、その意味は当業者に周知である。
仮に、「近傍」をより限定して解釈するとしても、別紙模式図の斜線部分にレベルワインド機構又はクラッチ操作具が配置されていれば、スプールの上方への偏倚により広がったスペースを利用しているといえるから、本件考案の構成要件Gを充足する。スプールを上方に偏倚したことで大きくなる部分は別紙模式図のクロス斜線部分であり、同クロス斜線部分ができたことにより前後方向に大きくなる部分は別紙模式図の斜線部分であるから、同斜線部分にレベルワインド機構又はクラッチ操作具が配置されていれば、スプールを上方に偏倚させたことにより大きくなったスペースを利用してレベルワインド機構又はクラッチ操作具が配置されているといえる。
イ レベルワインド機構もクラッチ操作具も相当の大きさを有する部品であるから、いかなる配置状態又はどの部分を基準に配置関係を捉えるべきかが問題となるが、一般論としては、少なくともレベルワインド機構又はクラッチ操作具の中心的部分の一部が仮想水平面の近辺ないし別紙模式図の斜線部分に配置されていれば、レベルワインド機構又はクラッチ操作具が仮想水平面上若しくはその近傍に配置されているといえる。
本件考案や被告製品のような構造のレベルワインド機構においては、螺軸及びその回りの厚幅部分が中心的部分であり、本件考案又は被告製品のような構造のクラッチ操作具については、支軸及びその回りの厚幅部分又は回動軸及びその回りの厚幅部分が中心的部分である。なお、支軸又は回動軸がクラッチのオン・オフ操作に伴い動く場合は回動範囲全体を基準とすべきである。
ウ 被告製品において、レベルワインド機構は、中心的部分である螺軸及びその回りの厚幅部分が仮想水平面の近辺ないし別紙模式図の斜線部分に配置されており、クラッチ操作具は、中心的部分である回動軸及びその回りの厚幅部分の相当部分が仮想水平面の近辺ないし別紙模式図の斜線部分に配置されている。したがって、被告製品のレベルワインド機構又はクラッチ操作具は仮想水平面上若しくはその近傍に配置されており、構成要件Gを充足する。
【被告の主張】 ア レベルワインド機構及びクラッチ操作具の配置の基準について (ア) レベルワインド機構及びクラッチ操作具は上下方向にある程度の大きさを有し、特に本件考案実施例のようなクラッチ操作具は操作状態によって上下位置が変化するので、これらの配置を特定する場合、クラッチ操作具がどのような操作状態にあるときのどの部分を基準にしているかを定める必要があり、レベルワインド機構についてもどの部分を基準にしているかを定める必要があるが、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明は、このような配置の基準を全く説明していない。
(イ) 本件公報第1図ないし第9図の実施例(特に第3図)は、リールの外形中心(P)と等しいレベルに設定した仮想水平面(L)上において、スプール(6)より前方にレベルワインド機構(R)の螺軸(3)、後方にクラッチ操作具(7)を配置している。レベルワインド機構(R)は、螺軸(3)、ガイド杆(4)、糸案内具(5)から成るが、第3図では、ガイド杆(4)及び糸案内具(5)は、スプール軸芯(Q)を通過する仮想水平面より上方に配置されているから、本件考案において、レベルワインド機構がリールの外形中心(P)を通過する仮想水平面上に位置しているか否かは、レベルワインド機構の構造上から可及的に前後長が最も長くなる螺軸(3)の軸芯を基準としていることが窺われる。
他方、第3図のクラッチ操作具は、クラッチオンの状態を示しており、この状態でクラッチ操作具の中央部分がリールの外形中心(P)を通過する仮想水平面上に位置している。したがって、本件考案において、クラッチ操作具がリールの外形中心(P)を通過する仮想水平面上に位置しているか否かは、クラッチオン状態でのクラッチ操作具の中央部を基準としていることが窺われる。
イ 「近傍」の意義について (ア) 訂正明細書には、「近傍」の意義を積極的に明らかにする記載がない。訂正明細書の作用欄には、「平面視でスプールと最も離れた前後位置に、スプールに妨げられることなくレベルワインド機構及びクラッチ操作具を配置できることになる」(14頁7〜9行)、効果欄には、「前後長が最も長く採れる外径中心を通る仮想水平面上のスペースをより大きくして、その前端部と後端部とにレベルワインド機構とクラッチ操作具を配置してスペースの有効利用を図る」(15頁6〜8行)との記載があるが、これらの記載は、仮想水平面上にレベルワインド機構とクラッチ操作具を配置した場合の位置を示すものであり、これらの記載から「近傍」の意義を明らかにすることはできない。
(イ) レベルワインド機構とクラッチ操作具をリールの外形中心を通過する仮想水平面より上に配置した場合は、これらを仮想水平面上に配置した場合と比較してスプールに近付かざるを得なくなり、「前後長が最も長く採れる外径中心を通る仮想水平面上のスペースをより大きくして、その前端部と後端部とにレベルワインド機構とクラッチ操作具とを配置してスプールの有効利用を図る」(15頁6〜8行)という本件考案の効果を奏しないから、「近傍」の範囲は、リールの外形中心を通過する仮想水平面の下方にしか存しない。
(ウ) 別紙模式図のうち、リールの外形中心(P)を通過する仮想水平面とスプール中心(Q)を通過する仮想水平面の中間位置に相当するライン(以下「中間ライン」という。)よりも上側の部分が「近傍」に含まれないことは、原告の主張からみても明らかである。
中間ラインより上の部分は、スプール軸芯が上方に偏倚することにより前後方向のスペースが極めて狭くなるので、クラッチ操作具等の一部が中間ラインよりも下に配置されていたとしても、大部分が中間ラインより上に配置されていれば、訂正明細書に記載されている「スペースの有効利用を図る」という効果に反することになり、「リールの外形中心(P)を通過する仮想水平面の近傍」にあるとはいえない。
ウ 被告製品は、いずれもクラッチ操作具の軸芯が、被告物件の仮想水平面(L’)より2.5o上方に位置する中間ラインよりも上方(イ号物件の1及びロ号物件の1は、軸芯が仮想水平面(L’)の4.5o上方にあり、イ号物件の2及びロ号物件の2は、軸芯が仮想水平面(L’)の4o上方にある。)に配置されており、クラッチ操作具の大部分が中間ラインより上に配置されているから、本件考案の構成要件Gを充足しない。
エ また、本件考案においては、「近傍」なる構成の意義が不明確であり、
明細書考案の詳細な説明や図面を参酌しても、実用新案登録請求の範囲を確定することができず、技術的範囲を確定することができないから、仮に、被告製品が実用新案登録請求の範囲の記載の一部を満たすとしても、本件考案技術的範囲に属するという判断はできない。
(5) 同オ(構成要件Jの「一体成型」の充足性)について 【原告の主張】 ア 本件考案の構成要件Jにいう「一体成型」とは、リール本体と左右ケース部等の一体化により強度アップを図るものであり、ダイキャストによる成型に限られず、広く一体化する周知方法(鍛造、切削等)を含み、訂正明細書実施例にもダイキャストと切削により一体として形成する例が開示されている(3頁左欄37行〜3頁右欄6行、4頁左欄の図面の簡単な説明の第11図の説明)。
被告は、本件考案の構成要件Jにいう「一体成型」はダイキャストによる一体成型に限定されており、被告製品のような鍛造品は含まれないと主張するが、「成型」と「成形」は必ずしも厳密に区別して使われるものではなく、本件公報でも「成型」は広く形を作るという意味で使われている。被告製品における鍛造も、鍛造型を用いて形を作るものであるから、「型成型」の範疇に入り、本件考案の構成要件Jを充足する。
イ 被告は、原告が補正により「左右ケース部、サムレスト、ロアーフレームとを一体成型してある」を実用新案登録請求の範囲に追加したことをもって、
「アルミダイキャストによる一体成型」に意識的に限定したと主張するが、右補正は自発的にされたものであり、これを意識的限定とみることはできない。
【被告の主張】 ア 本件考案の構成要件Jにいう「一体成型」とは、実施例中唯一開示されたアルミダイキャストによる一体成型(溶融したアルミを型に流した後に冷却して一体成型するもの)をいうのに対し、被告製品は鍛造品であり、アルミの小塊を機械的に鍛造して鉄アレイ状に圧縮変形させ、ほぼ外面形状に近い形に形成した後、
中間の柱状部分を切削加工することによりサムレスト及びロアーフレームとなる部分を残して削り抜き、さらに両側部や内外周を切削加工して、内側枠(X1)(X2)及びサムレスト並びにロアーフレームの所定の形状を得るものである。
イ 「成型」は「型にはめて形を作ること」、「成形」は「形を作ること。
形成」であり(乙21)、後者が前者の上位概念である。また、当業者から見れば、原告がクレームに用いている「成型」なる技術用語には鍛造が含まれないから、被告製品が本件の技術的範囲に属すると解することはできない。
ウ 原告は、審判理由補充書(乙13)、平成6年8月5日付け手続補正書(甲14)において、「左右ケース部、サムレスト、ロアーフレームの一体成型」する構成要件の重要性を強調しており、「一体成型」に意識的に限定したことは明らかである。
2 争点(2)(本件実用新案権には明らかな無効事由が存在するか)について (1) 同ア(進歩性欠如)について 【被告の主張】 ア 本件考案の出願前に米国で頒布された刊行物である米国特許2163914号明細書(乙1の1)に記載された両軸受リールは、@クラッチ機構を備えていない点、A端部ヘッド11、12、バー16、バー14とが一体成型されていない点を除き、本件考案のすべての構成を備えている。しかも、上記@の相違点は実開昭60-15167号公開実用新案公報(乙2)、米国特許4223854号明細書(乙5)、米国特許4226387号明細書(乙6)、米国特許4919362号明細書(乙7)及び実開昭60-36077号公開実用新案公報(乙8)に、
上記Aの相違点は実開昭60-15167号公開実用新案公報(乙2)及び実公昭60-8693号実用新案公報(乙3)に記載されている上、上記@、Aの相違点によって、本件考案は乙2ないし8の記載から予期できない格別顕著な効果を奏するものでもないから、本件実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則4条1項によりその効力を有するとされた実用新案法(以下「平成5年旧実用法」という。)3条2項に違反するものとして無効であることが明白であり、本件実用新案権に基づく請求は権利の濫用に当たり許されない。
【原告の主張】 争う。
(2) 同イ(請求の範囲の記載不備)について 【被告の主張】 本件考案は、リール本体の中心(P)を通過する仮想水平面の「近傍」においてスプール(6)の前方にレベルワインド機構(R)、及び、スプール(6)の後方にクラッチ操作具(7)を配置するものであるが、明細書及び図面から「近傍」の意義を直接的かつ一義的に導き出すことができず、「近傍」というだけでは、考案の外延が不明確である。よって、本件考案にかかる本件実用新案登録は平成5年旧実用法5条4項の規定に違反してなされたものである。
【原告の主張】 「近傍」の意義は明確であり、レベルワインド機構及びクラッチ機構の配置関係を確定することができる。仮に、実用新案登録請求の範囲中の文言がそれ自体では明確でない場合でも、明細書及び図面の記載並びに技術常識を参酌して解釈し明確にできる場合は平成5年旧実用法5条4項に反しない。
(3) 同ウ(不適法な訂正)について 【被告の主張】 原告は、平成11年2月2日付け訂正請求に当たり、「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付け用の脚部を取付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し」なる構成及び「前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、かつ下方に位置させ」なる構成を付加したが、これらの構成は、
出願当初の明細書に記載されておらず、その示唆もない新規事項であり、図面を見ても、これに示されているロアーフレーム(13)の配置やハンドル軸(16)の配置は、上記訂正後の構成において、特に「本体外形の半径(T/2)以下」といった範囲の限界を示唆するものではない。したがって、この訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項により特許法第5章の規定が準用され、特許法120条の4第3項において準用される特許法126条2項に違反する。
【原告の主張】 「前記ロアーフレーム(13)は、釣り竿取付用の脚部を取り付けた場合に脚部(14)の底面と前記本体の外形中心(P)までの距離(H)が本体外形の半径(T/2)以下であるように配置し」なる構成は、当初明細書6頁12〜17行及び第3図から直接かつ一義的に導き出せるものであり、新規事項を付加したものではない。
「前記ハンドル軸(16)を、前記レベルワインド機構(R)より後方、
かつ下方に位置させ」という訂正も、当初明細書1頁13〜15行及び5頁9〜14行、並びに第1図ないし第3図から明らかであるから、新規事項の付加ではない。
(4) 同エ(不適法な補正による新規性又は進歩性の欠如)について 【被告の主張】 (ア) 本件考案のうち、「前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において、…前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し」という構成は、原告が本件考案の拒絶査定不服審判の理由補充とともに行った平成8年7月19日付け補正により加えられたものであるが、前記構成は出願当初の明細書に記載がなく、「仮想水平面上、若しくは、その近傍」の範囲も示されていない。また、「スプール軸芯をリール本体の外径中心より上方に偏位させて、前後長が最も長く採れる外径中心を通る仮想水平面上のスペースをより大きくして、その前端部と後端部とにレベルワインド機構とクラッチ操作具とを配置してスペースの有効利用を図る」という本件考案の効果も、前記補正により入れられたものであるが、この効果も当初明細書及び図面から直接的かつ一義的に導き出すことができない。
したがって、原告の平成8年7月19日付け補正は、明細書の要旨を変更するものである。よって、本件考案にかかる実用新案登録は、平成5年旧実用法9条において準用する平成5年改正前特許法40条により出願日が平成8年7月19日に繰り下がる。
(イ) 他方、平成4年の本件考案の公開公報(乙9)に記載されている実施例の記載や図面には、スペースの有効利用という本件考案の効果までは記載されていないが、本件考案の構成に含まれる実施形態は図面に記載されている。したがって、乙9に記載されている実施例図面の存在により、前記のとおり繰り下がった出願日前に全部公知となっていたから、本件実用新案登録は、平成5年旧実用法3条1項に違反するものであり、少なくとも当業者であれば乙9から極めて容易に考案することができるから、同法3条2項に違反するものである。
【原告の主張】 「前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍において、…前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具(7)を配置し」という構成は、出願当初の明細書4頁6〜8行、5頁13〜14行及び第3図から明らかである。また、被告主張の本件考案の効果も、出願当初の明細書4頁6〜11行及び第3図における位置関係から明らかである。したがって、右補正は適法で出願日が繰り下がることはなく、新規性進歩性が欠如することはない。
3 争点(3)(原告の損害額)について 【原告の主張】 被告は、平成9年11月から現在まで、イ号物件の1、2を少なくとも2万9600個製造販売した。イ号物件の1、2の1個当たりの小売価格は金3万9500円であり、利益率は20%であるから、被告は、イ号物件の1、2の製造、販売により、少なくとも金2億3384万円の利益を得た(なお、年間予想販売数は2万7300個である。)。
また、被告は、平成11年から本訴提起時まで、ロ号物件の1、2を少なくとも6000個製造販売した。ロ号物件の1、2の1個当たりの小売価格は金4万2500円であり、利益率は20%であるから、被告はロ号物件の販売により少なくとも金5100万円の利益を得た。
よって、原告には、少なくとも合計金2億8484万円以上の損害が生じた。
【被告の主張】 争う。
当裁判所の判断
1 争点(1)(被告製品は、本件考案技術的範囲に属するか)について (1) 同エ(構成要件G該当性)について ア 「近傍」の意義について 構成要件Gは、「前記中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、
その近傍において前記スプール(6)の前方に前記レベルワインド機構(R)、及び前記スプール(6)の後方に前記クラッチ操作具を配置し」というものであるところ、そこにいう「近傍」の範囲を具体的に明らかにした記載は訂正明細書には存在しない。
しかし、訂正明細書考案の詳細な説明中、〔作用〕の項の「スプールを上方に変位させ、仮想水平面上、若しくは、その近傍にレベルワインド機構の配置位置を決めるので、平面視でスプールと最も離れた前後位置に、スプールに妨げられることなくレベルワインド機構及びクラッチ操作具を配置できることになる」(14頁6〜9行)、〔考案の効果〕の項の「前後長が最も長く採れる外径中心を通る仮想水平面上のスペースをより大きくして、その前端部と後端部とにレベルワインド機構とクラッチ操作具とを配置してスペースの有効利用を図る」(15頁6〜8行)との各記載(甲2)によれば、本件考案において、「リールの外形中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍」にレベルワインド機構及びクラッチ操作具を配置することの意義は、スプールを上方に偏倚させることにより拡大されたリールの外形中心を通る仮想水平面上のスペースに、レベルワインド機構及びクラッチ操作具という前後左右に相当の大きさを有する部品をスプールに妨げられないように配置し、リール全体の大きさを抑えながら各構成を有機的に機能させる点にあると認められる。この事実に照らすと、「近傍」とは、リールの外形中心(P)を通る仮想水平面の近辺の空間のうち、スプール軸芯を上方に偏倚させることによって前後方向に拡大される部分を意味するものと解するのが相当である。
イ レベルワインド機構及びクラッチ操作具の配置の基準について (ア) レベルワインド機構及びクラッチ操作具は、リール内部の空間において、上下方向及び前後方向に相当程度の割合を占める部品であるから、実際の構成において、両部品の全体が「リールの外形中心を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍」に配置されるとは考え難い。そこで、レベルワインド機構及びクラッチ操作具のうち、どの部分が「リールの外形中心を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍」に配置されていれば、本件考案の構成要件Gを充足するかを検討する必要があるが、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲には、「仮想水平面上若しくはその近傍」に配置されるべきレベルワインド機構(R)及びクラッチ操作具(7)の範囲を具体的に示した記載はない。
(イ) しかし、訂正明細書考案の詳細な説明中、〔実施例〕の項には、
「第1図乃至第9図に示すように、左側ケース部(1)と右側ケース部(2)とを有したリール本体の前部に螺軸(3)、ガイド杆(4)、糸案内具(5)夫々で成るレベルワインド機構(R)を配置すると共に、中央部にスプール(6)、後部にクラッチ操作具(7)を夫々配置し」(15頁18〜21行)、「この中心(P)と等しいレベルに設定した仮想水平面(L)上において前記スプール(6)より前方側に前記螺軸(3)、及び、前記スプール(6)より後方にクラッチ操作具(7)を配置してある」(16頁5〜7頁)、「第9図に示すように、クラッチ操作具(7)は右側ケース部(2)の壁状部(2S)に対してのみスライド移動自在に支持され、その操作軌跡が側面視において、リール本体の中心(P)を軸芯とする円弧状になるよう、前記操作ピン(7A)を円弧状の案内孔(2A)に挿通し、
このクラッチ操作具(7)には連結フレーム(34)が挿通する円弧状の貫通孔(7B)が形成されている」(18頁10〜14行)との各記載があり、実施例を示す第3図には、リール本体の外形中心(P)を通る仮想水平面(L)がレベルワインド機構の螺軸(3)の位置を通過しており、スライド移動自在のクラッチ操作具(7)の中央部分がクラッチオン状態で前記仮想水平面(L)上に位置している状態が図示されている(甲1、2)。
(ウ) これらの実施例の記載及び図面に加え、本件考案の構成要件Gの意義が、前記アのとおり、スプールを上方に偏倚することにより拡大された「リールの外形中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍」にレベルワインド機構及びクラッチ操作具を配置することによりスペースの有効利用を図り、リール全体の寸法を抑えながら各構成を有機的に機能させるところにあることを考慮すれば、レベルワインド機構及びクラッチ操作具のうち、「リールの外形中心(P)を通る仮想水平面上、若しくは、その近傍」に配設される部分とは、これらの部品のうち、最も前後方向に幅が大きく、機能的にも中心的役割を果たす部分をいい、
レベルワインド機構であれば螺軸及びその周辺部分、クラッチ操作具であれば回動部分がこれに該当するとみるのが相当である。
なお、クラッチ操作具については、訂正明細書実施例のように、ケース部の壁状部に対してスライド移動自在に支持されるもののほか、被告製品のように、支軸を中心としてクラッチ操作具が回動する形態のものがあるが、前者についてはスライド部分、後者については支軸部分を基準として、これらが「リールの外形中心(P)を通る仮想水平面上、若しくは、その近傍」に位置しているかどうかを判断するのが相当である。
ウ 被告製品について (ア) イ号物件の1及びロ号物件の1について 証拠(乙17)によれば、イ号物件の1(バリウスM200、バリウスF200)及びロ号物件の1(バリウスF200スペクトル)は、スプール軸芯(Q')がリール本体の外形中心(P')よりも上方に5o、後方に2.5o偏倚していることが認められるから、イ号物件の1及びロ号物件の1において、スプールを上方に偏倚することにより拡大された部分、すなわち「仮想水平面の近傍」の上限とは、リールの外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')とスプール軸芯(Q')を通過する仮想水平面の中間に相当する、リールの外形中心(P')から2.5o上方偏倚した点を通過する仮想水平面ということができる。
他方、証拠(乙17)によれば、イ号物件の1及びロ号物件の1においては、レベルワインド機構の螺軸の軸芯は、リール本体の外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')より2o上方にあり、レベルワインド機構のうち最も横幅を必要とする部分がスプール軸芯の上方偏倚により拡大された部分に位置していることが認められるが、クラッチ操作具の支軸は、リール本体の外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')より4.5o上方にあり、支軸の周りの回転部分のほとんどが、スプール軸芯の上方偏倚により狭められることになった空間に位置していることが認められる。
(イ) イ号物件の2及びロ号物件の2について 証拠(乙18)によれば、イ号物件の2(バリウスM300、バリウスF300)及びロ号物件の2(バリウスF300スペクトル)は、スプール軸芯(Q')がリール本体の外形中心(P')より上方に5o、後方に2.5o偏倚していることが認められ、イ号物件の2及びロ号物件の2においても、スプールを上方に偏倚することにより拡大された部分、すなわち「仮想水平面の近傍」の上限は、
イ号物件の1及びロ号物件の1と同じく、リールの外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')から2.5o上方に偏倚した点を通過する仮想水平面であるといえる。
他方、証拠(乙18)によれば、イ号物件の2及びロ号物件の2のレベルワインド機構の螺軸の軸芯は、リール本体の外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')よりも0.3o上方にあり、レベルワインド機構のうち最も横幅を必要とする部分がスプール軸芯の上方偏倚により拡大された部分に位置していることが認められるが、クラッチ操作具の支軸は、リール本体の外形中心(P')を通過する仮想水平面(L')より4o上方にあり、支軸を中心に回転する部分のほとんどが、
スプール軸芯の上方偏倚により狭められた空間に位置していることが認められる。
(ウ) 以上によれば、被告製品は、いずれも、レベルワインド機構については、その中心的機能を果たす螺軸の軸芯が、スプール軸芯がリール本体の外形中心(P')より上方及び後方に偏倚したことにより拡大された部分に配置されているのに対し、クラッチ操作具については、その中心的機能を果たす支軸が、スプール軸芯がリール本体の外形中心より上方に偏倚したことにより狭められた部分に配置されていることが認められるから、「外形中心(P)を通過する仮想水平面上、若しくは、その近傍」において、スプールの後方にクラッチ操作具を配置させているとはいえない。
したがって、被告製品はいずれも構成要件Gを充足しない。
2 以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝
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