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事件 平成 12年 (ワ) 3585号 実用新案権侵害差止等請求事件
原告 ワイケイケイアーキテクチュラルプロダクツ株式会社
訴訟代理人弁護士 小坂志磨夫
同 小池豊
同 櫻井彰人
被告 東洋エクステリア株式会社
訴訟代理人弁護士 小林幸夫
補佐人弁理士 田村公總
裁判所 東京地方裁判所
判決言渡日 2001/10/31
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 被告は,原告に対し,3300万円及びこれに対する平成11年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
請求
1 主位的請求 (1) 被告は,別紙物件目録2記載の連棟式車庫を製造し,使用し,販売し,貸し渡し,販売又は貸渡しの申し出をしてはならない。
(2) 被告はその保有する前項の連棟式車庫を廃棄せよ。
(3) 被告は,原告に対し,2億7891万2864円及び内金1億3191万2864円に対する平成11年4月1日以降,内金1億4700万円に対する平成12年10月1日以降,それぞれ支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。
2 予備的請求 (1) 被告は,別紙物件目録2記載の連棟式車庫の構成部材をセットとして販売してはならない。
(2) 被告は,別紙物件目録2記載の連棟式車庫の構成部材のうち,合掌材及び合掌材取付金具を製造販売してはならない。
(3) 被告は,その所有する前項の合掌材及び合掌材取付金具を廃棄せよ。
(4) 被告は,原告に対し,2億7891万2864円及び内金1億3191万2864円に対する平成11年4月1日以降,内金1億4700万円に対する平成12年10月1日以降,それぞれ支払済みまで各年5分の割合による金員を支払え。
事案の概要
本件は,連棟式車庫の屋根端部連結構造に関する実用新案権を有する原告が,連棟式車庫又はその部品を販売した被告に対して,同連棟式車庫が原告の実用新案権を侵害するとして,上記実用新案権に基づき,販売等の差止め及び損害賠償金の支払等を求めた事案である。
1 争いのない事実 (1) 原告は,サッシ及びその他の建築材料の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
被告は,門扉及びフェンス等のエクステリア製品の製造及び販売等を目的とする株式会社である。
(2)ア 原告は,以下のとおりの実用新案権(以下「本件実用新案権」といい,その考案を「本件考案」という。)を有している。
実用新案登録番号 第2148586号 考案の名称 連棟式車庫の屋根端部連結構造 出願日 平成2年4月18日 登録日 平成9年6月20日 実用新案登録請求の範囲 別紙実用新案登録公報写しの該当欄記載のとおり(以下,同公報掲載の明細書を「本件明細書」という。) イ 本件明細書の「実用新案登録請求の範囲」の記載を構成要件に分説すると,次のAないしCのとおりとなる。
A 支柱1に屋根4を取り付けた片流れ屋根を備えた一対の車庫5,5を,その屋根4の端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結して成る連棟式車庫において, B@ 前記屋根4の端部を構成する前枠10の外側面を略半円形状とし, A 相対向する一対の前枠10,10の外側面上部間に跨って,横片23に締結片24を設けて成る前枠連結カバー22の横片23を載置し, B 前記一対の前枠10,10の外側下部に,裏板25における前記前枠10の外側面と同一形状の一側前枠当接部26と他側前枠当接部27をそれぞれ押しつけ, C この裏板25よりビス29を前記締結片24に締付けて前記連結カバー22と裏板25で一対の前枠10,10を挟持したこと を特徴とする連棟式車庫の屋根端部連結構造 (3) 被告は,業として,平成6年4月から平成11年3月までの間,別紙物件目録1記載の連棟式車庫(以下「被告製品1」という。),又はその部材を製造販売し,平成8年9月から現在まで,別紙物件目録2記載の連棟式車庫(以下「被告製品2」といい,被告製品1と併せて「被告製品」という。)又は,その部材を製造販売している(被告が製造販売している物が被告製品全体であるのか,その部材であるのかについては争いがある。)。
(4)ア 被告製品1の構成を分説すると,次のA′ないしC′のとおりとなる。
A′ 支柱1に曲率半径6メートルの湾曲屋根を取り付けた起り屋根3を備えた一対の車庫2を,その屋根3端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結してなる連棟式車庫であること, B′@ 起り屋根3の端部を構成する前枠10の外側面11を上部に突条を有する曲率半径約31ミリメートルの円弧面による略半円形としたこと, A 相対向する一対の前枠10の外側面11上部間に跨って,横片51に締結片52を設けるとともに下端に約6ミリメートルの高さの上向き引掛片53を設けた合掌材5の横片51を載置したこと, B 合掌材取付金具6を,その上端に約9ミリメートルの高さの下向き引掛片62を設けるとともに,約25ミリメートル幅の基板61を介してその左右にそれぞれ前記前枠10の円弧面と円弧中心を同一とする同心円にして曲率半径約31ミリメートルの一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を左右対称に設け,合掌材取付金具6の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を前枠10の外側面下部にそれぞれ配置したこと, C′ 合掌材取付金具6の基板61よりビス65を合掌材5の締結片52に締め付け,合掌材5と合掌材取付金具6で一対の前枠10,10を挟み込んだこと イ 被告製品2の構成を分説すると,次A″ないしC″のとおりとなる。
A″ 支柱1に曲率半径9メートルの湾曲屋根を取り付けた起り屋根3を備えた一対の車庫2を,その屋根3端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結してなる連棟式車庫であること, B″@ 起り屋根3の端部を構成する前枠10の外側面11を,第4図に示すごとく,曲率半径60ミリメートルにして約65度(1/5.5円)の角度幅の上部円弧面12と,曲率半径10ミリメートルにして約60度の角度幅の下部円弧面13とを上下に連続させた形状としたこと, A 相対向する一対の前枠10の外側面11上部間に跨って,横片51に締結片52を設けるとともに,その下端に約6ミリメートルの高さの上向き引掛片53を設けた合掌材5の横片51を載置したこと, B 合掌材取付金具6を上端に約14ミリメートルの高さの下向き引掛片62を設けるとともに,約22ミリメートル幅の基板61を介して,その左右にそれぞれ前記前枠10の下部円弧面13と円弧中心を同一とする同心円にして曲率半径10ミリメートルとし約60度の角度幅の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を左右対称に設け,合掌材取付金具6の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を前枠10の外側面下部にそれぞれ配置したこと, C″ 合掌材取付金具6の基板61よりビス65を合掌材5の締結片52に締め付け,合掌材5と合掌材取付金具6で一対の前枠10,10を挟み込んだこと (5) 被告製品1の構成B′@は本件考案の構成要件B@を,被告製品1の構成B′A及び被告製品2の構成B″Aは本件考案の構成要件BAをそれぞれ充足する。
(6) 被告が平成7年8月9日から平成11年3月末日までの間に販売した被告製品1の販売総額は,32億9782万1600円である。
2 争点に対する当事者の主張 (1) 被告製品1は本件考案の構成要件を充足するか。
ア 構成要件Aの充足性について (原告の主張) 被告製品1は,支柱1に曲率半径6メートルの片流れ屋根3を備えた一対の車庫2を,その屋根3端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結してなる連棟式屋根であるから,構成要件Aを充足する。
これに対し,被告は,被告製品1の車庫の屋根は「起り屋根」であって,「片流れ屋根」ではないと主張する。しかし,被告の上記主張は,以下のとおり失当である。すなわち,起り屋根とは「上方に対し凸になった曲線形の屋根」をいうが,片流れ屋根とは「建物において一方のみに傾斜した屋根」であり,建物に対する屋根の傾斜態様を表しており,屋根自体の形状とは無関係である。そして,被告製品1の屋根の形状は起り屋根であるけれども,屋根の勾配形態は「前枠を頂点として一方のみに傾斜した屋根」であるから片流れ屋根である。
(被告の反論) 本件考案の構成要件Aの「片流れ屋根」とは,「建物において一方のみに傾斜した屋根」を意味する。
被告製品1の屋根の形態は,「起り屋根」,すなわち「上方に対し凸形になった曲線形の屋根」である。被告製品1の屋根は片流れ屋根ということはできない。
したがって,被告製品1の構成A′は本件考案の構成要件Aを充足しない。
イ 構成要件BBの充足性について (原告の主張) (ア) 本件考案の構成要件BBにいう「一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつける」とは,以下のとおり,ビスの締着に先行して前枠に裏板を押しつける意味に限定して解すべきではない。
すなわち,本件考案は,「連棟式車庫の屋根端部連結構造」であって,組立方法ではない。そして,実用新案は,物品の形状,構造又は組合せに係る考案を対象とするものであり,製法(組立方法)が要件とされるものではない。最高裁昭和56年6月30日判決(ベニヤ板製長押事件,民集35巻4号848頁判例時報1008号145頁)も,実用新案において製造方法を技術的範囲に取り込むことを否定した。したがって,被告のこの点に関する主張は理由がない。
(イ) 一方,被告製品1は,合掌材取付金具6を,その上端に高さ約9ミリメートルの下向き引掛片62を設けるとともに,幅約25ミリメートルの基板61を介してその左右にそれぞれ前記前枠10の円弧面と円弧中心を同一とする同心円にして,曲率半径約31ミリメートルの一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を左右対称に設け,合掌材取付金具6の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を前枠10の外側面下部にそれぞれ押しつけているものであるから,構成要件BBを具備する。
なお,被告は,本件実用新案登録に対する無効審判において,原告(被請求人)が,公知資料では合掌材取付金具と前枠との関係が「当てがう」ものであって,本件考案の「押しつける」ものとは異なると述べた点が,本訴での主張と矛盾するという。しかし,原告主張は公知資料には,前枠と合掌材取付具との当接構造が記載されていないことを述べたにすぎないのであって,何ら矛盾するものではない。
(被告の反論) (ア) 本件明細書における実用新案登録請求の範囲の欄には,「前記一対の前枠10,10の外側下部に,裏板25における前記前枠10の外側面と同一形状の一側前枠当接部26と他側前枠当接部27をそれぞれ押しつけ,」(構成要件BB)とし,次に「この裏板25よりビス29を前記締結片24に締付けて前記連結カバー22と裏板25で一対の前枠10,10を挟持した」(構成要件C)と記載されていることに照らすならば,「押しつけ」動作と,「締付け」動作とは区別され,順に行われるものと理解すべきである。そうすると,構成要件BBにおける「押しつけ」とは,ビスの締着に先行して前枠に裏板を押しつけることを指すと解すべきである。
(イ) 一方,被告製品1の合掌材取付金具は下向き引掛片を備えており,その前枠への配置は,その下向き引掛片を,合掌材に設置した上向き引掛片に相互を噛み合わせるように支持して,対向する前枠の長手方向端部から前枠間にスライド挿入することによって行うものであるから,本件考案の構成要件BBにいう「一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつける」ものではない。
なお,原告は,本件実用新案登録に対する無効審判において,同審判で提出された公知技術における連棟式車庫の屋根端部連結構造の合掌材取付金具は,前枠の外側に「当てがう」ものであり,本件考案の「押しつけ」るものとは異なると主張していることらかすれば,被告製品1のように,ビスの締付けによって結果的に押しつけ状態を達成させるものは,「押しつけ」に該当しないことになる。
したがって,被告製品1は,本件考案の構成要件BBを充足しない。
ウ 構成要件Cの充足性について (原告の主張) (ア) 本件考案の構成要件Cにおいては,前枠と裏板の前枠当接部が揺動変位しても挟持の状態が得られれば足りると解すべきであって,前枠と裏板の前枠当接部が揺動変位しても,常時「密接」するものでなければならないと解すべきではない。
(イ) 一方,被告製品1は,合掌材取付金具6の基板61よりビス65を合掌材5の締結片52に締め付け,合掌材5と合掌材取付金具6で一対の前枠10,10を挟持したものであるから,構成要件Cを具備する。
(被告の反論) (ア) 本件考案の構成要件Cにおける「前枠連結カバーと裏板で一対の前枠を挟持」するとは,以下のとおりの理由から,「揺動変位する」可能性のある前枠を挟持することを指すと解すべきである。
本件考案は,その一対の前枠が揺動変位する可能性があることを前提として,なおその相互の連結を達成させた技術であって,本件明細書には揺動変位の可能性のない前枠に関する記載はないから,構成要件Cは,合掌連結時に,およそ揺動変位の可能性のない一対の前枠を挟持することを含まないと解すべきである。
そして,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄に「前枠連結カバーと裏板とに対して前枠が若干揺動変位できるから,屋根勾配の異なる屋根の屋根端部を連結できる。」,「前枠連結カバー22と裏板25に対して前枠10が若干上下揺動変位できるから,屋根勾配の異なる片流れ屋根を備えた車庫でも連結できる。」と記載されていることからすると,構成要件Cにおける「挟持」とは,片流れ屋根の連結において,前枠に上下の段差を生じ得ることを前提として,上下の段差が生じたときにも常に裏板の前枠当接部が前枠の外側面と密接した状態に強固に挟持し得ることを意味すると解すべきである。「揺動変位」とは,単に屋根勾配が異なることによって前枠の角度が異なることのみを意味するものではなく,前枠が連結に際して上下方向に揺れ動くことをも含める趣旨に解すべきである。この点は,本件明細書には,「上下揺動変位」,「揺動変位」との記載があることから明らかである。
(イ) 一方,被告製品1においては,上り連結金具の連結によって上り同士を連結して,前枠の高さ位置を同一にして,一定の間隔を開けて前枠を対向した後に,合掌材を前枠に載置し,合掌材取付金具をスライド挿入し,ビスの締着によって,合掌材と合掌材取付金具で前枠を挟み込んで合掌材を取り付けるものである。上り連結金具の連結は,前枠の上下動揺変位,すなわち段差を許容するものではなく,常に前枠が同一の高さで定位置にある状態で,合掌材と合掌材取付金具によって挟み込みがされる。仮に,前枠に段差を生じると,前枠の円弧面の中心と合掌材取付金具の前枠当接部の円弧面の中心との間に位置ずれが生じる結果,双方の中心が一致しなくなり,同心円の関係が損なわれるため,前枠に対して合掌材取付金具の前枠当接部の一方又は双方が密接しない状態となる。
したがって,被告製品1においては,本件考案の構成要件Cの「挟持」はなく,同構成要件Cを充足しない。
(2) 被告製品2は本件考案の構成要件を充足するか。
ア 構成要件Aの充足性について (原告の主張) 被告製品2は,支柱1に曲率半径9メートルの片流れ屋根3を備えた一対の車庫2を,その屋根3端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結してなる連棟式屋根であるから,構成要件Aを充足する。
その詳細については,前記(1)アにおける原告の主張と同じである。
(被告の反論) 前記(1)アにおける被告の主張と同じである。
イ 構成要件B@の充足性について (原告の主張) (ア) 本件考案の構成要件B@の「略半円形状」とは,以下のとおり,全体として湾曲状を呈していることを指すと解すべきである。すなわち,「半円形状」という用語は,「半円形」又はこれに類する形状を指すと解すべきであるが,さらに「略」という文言が用いられている以上,全体として湾曲状を呈していることを広く指すのは明らかである。
これに対し,被告は,本件考案の構成要件B@の「略半円形状」とは,円を略2分の1にした略2分の1円弧を意味すると主張する。しかし,「略半円形状」とは,「略2分の1の円」という「円弧の長さ」によって理解すべきでなく,略半円形状という全体形状によって理解すべきであるから,被告の上記主張は失当である。
(イ) 一方,被告製品2の前枠外側面は,曲率半径60ミリメートルにして約65度(1/5.5円)の角度幅の上部円弧面12と,曲率半径10ミリメートルにして約60度の角度幅の下部円弧面13とを上下に連続させた形状であり,全体として湾曲状の形をしているから,被告製品2は本件考案の構成要件B@を充足する。
(被告の反論) (ア) 本件考案の構成要件BBの「略半円形」とは,同一曲率半径の円を略2分の1にした略2分の1円弧を指すと解すべきである。
これに対し,原告は,「略半円形」を「全体として湾曲状を呈している形状」を指すと解すべきであると主張する。しかし,本件明細書にはそのような記載はないのみならず,原告の主張のように解すると,前枠が揺動変位すると裏板の前枠当接部が前枠外側面と密接しなくなり,本件考案の作用効果を奏することができない。したがって,原告の上記主張は失当である。
(イ) 一方,被告製品2における前枠の外側面は,曲率半径60ミリメートルにして約65度の角度幅の上部円弧面と,曲率半径10ミリメートルにして約60度の角度幅の下部円弧面を上下に連続したものであり,弓形をしている。被告製品2における前枠が揺動変位すると,前枠の外側面と合掌材取付金具の前枠当接部とが密接することができなくなる。
したがって,被告製品2の前枠の形状は,略半円形ということはできず,本件考案の構成要件B@を充足しない。
ウ 構成要件BBの充足性について (原告の主張) (ア) 被告製品2は,合掌材取付金具6を上端に高さ約14ミリメートルの下向き引掛片62を設けるとともに,約22ミリメートル幅の基板61を介して,その左右にそれぞれ前記前枠10の下部円弧面13と円弧中心を同一とする同心円にして曲率半径10ミリメートルとし約60度の角度幅の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を左右対称に設け,合掌材取付金具6の一側前枠当接部63と他側前枠当接部64を前枠10の外側面下部にそれぞれ押しつけているものであるから,本件考案の構成要件BBを充足する。
その詳細は,前記(1)イにおいて主張したとおりである。
(イ) この点,被告は,被告製品2においては,合掌材取付金具の前枠当接部は,前枠外側面の下部円弧面だけと同一形状となっているにすぎず,前枠外側面のその他の部分とは同一形状になっていないので,本件考案の構成要件BBの「同一形状の」という要件を充足しない旨主張する。しかし,本件考案の構成要件BBにおいて同一形状であることが要求される部分は,前枠当接部と前枠外側面とが相互に当接する面のみであり,被告製品2においても,前枠外側面の下部円弧面と合掌材取付金具の前枠当接部は同一形状であるから,被告の上記主張は理由がない。
(被告の反論) 前記(1)イで主張したことと同様である。さらに,被告製品2においては,前枠外側面と合掌材取付金具の前枠当接部とは同一の形状とはいえないから,本件考案の構成要件BBの,裏板における前記前枠の外側面と「同一形状の」一側前枠当接部と他側前枠当接部を備えたものということはできない。すなわち,本件考案実施例では,前枠外側面は「同一曲率の1つの円弧」で形成され,裏板の前枠当接部はこの円弧と同一形状であるのに対し,被告製品2における前枠外側面は「曲率の異なる二つの円弧」を連続させた形状である。合掌材取付金具の前枠当接部は,前枠外側面の下部円弧面だけと同一形状になり,前枠外側面のその他の部分とは同一形状になっていない。被告製品2は本件考案の構成要件BBを充足しない。
エ 構成要件Cの充足性について (原告の主張) 被告製品2は,合掌材取付金具6の基板61よりビス65を合掌材5の締結片52に締付け,合掌材5と合掌材取付金具6で一対の前枠10,10を挟持したものであるから,本件考案の構成要件Cを充足する。
その詳細は,前記(1)ウにおける原告の主張と同じである。
(被告の反論) 前記(1)ウにおける被告の主張と同じである。
(3) 被告の製造販売行為は,本件実用新案権を侵害するか。
(原告の主張) 被告の行為は,その態様に照らして,被告製品の部材のみではなく,被告製品全体を製造販売した行為と解すべきである。すなわち,被告は車庫そのものを自社商品として宣伝に供していること,被告製品のすべての構成部材が被告により製造販売されているのみならず,完成のためのすべての部材をセットした形で価格表示がされ,被告自身がセット販売していること,被告は車庫の品質不良等につき保証をしていること,被告名義で車庫自体の取付説明書(組立マニュアル)を発行していること,末端ユーザーサイドで組み立てられた車庫に被告製品であることを示す表示がされており,その表示(ステッカー)も被告の作成に係るものとして示されていること等の点に照らすならば,被告が製造,販売したのは,被告製品の部材のみではなく,被告製品全体である。
したがって,被告の行為は,本件実用新案権を侵害する行為である(主位的主張)。仮に,被告の製造販売行為が,本件実用新案権の実施行為とはいえず,いわゆる直接侵害行為に当たらないとしても,少なくとも間接侵害に当たる(予備的主張)。
(被告の反論) 被告は,被告製品の部材を代理店ないし販売店に販売し,上記代理店ないし販売店が顧客からの注文に応じて被告製品全体を工事付きで販売するのであって,被告が被告製品全体を販売しているわけではない。すなわち,車庫には,車両1台用のタイプ,2台用のタイプ,セダン用,ハイルーフ用等色々な形態があり,その形態に応じて部材の組み合わせも異なるところ,被告の販売システムは,顧客が上記のような多種多様な形態の中から1つの形態を選択して,これを代理店ないし販売店から購入し,代理店ないし販売店が顧客が選択した形態に対応した部材を被告から購入するというものである。被告製品はその部材ごとに価格が設定してあり,顧客は部材単位で購入することもできる。
したがって,被告の製造販売行為は,本件実用新案権の実施行為とはいえず,少なくとも,いわゆる直接侵害行為ではない。
(4) 原告の被った損害額はいくらか。
(原告の主張) ア 被告製品1の製造,販売による損害額等について (ア) 原告は,被告の平成7年8月9日から平成9年1月末日までの販売行為に対しては,不当利得返還請求権に基づき,同年2月1日から平成11年3月末日までの販売行為に対しては,不法行為による損害賠償請求権に基づき,不当利得の返還ないし損害の賠償を請求する(遅延損害金は,不当利得及び不法行為の後である平成11年4月1日から請求する。)。
被告が平成7年8月9日から平成11年3月末日までの間に販売した被告製品1の販売総額は,32億9782万1600円であり(当事者者間に争いはない。),実施料率は4パーセントが相当であるから,その実施料相当額は1億3191万2864円である。
したがって,被告製品1の販売行為について,原告の被告に対する請求額は,1億3191万2864円である。
(イ) 被告が本件実用新案権を侵害したことにより原告が被った損害額等(実施料相当額)の算定に当たっては,連棟式車庫全体の販売額を基礎とすべきであり,連結構造を構成する部分の販売額のみを基礎とすべきではない。
また,被告は,被告製品全体を販売しているのであり,部材のみを販売しているのではないが,仮に,被告が部品のみを販売しているとしても,被告には被告製品を実際に販売している者と共同不法行為が成立するから,被告製品全体の販売額を基礎として損害額を計算すべきである。
イ 被告製品2の製造,販売による損害額等について 原告は,被告の平成8年9月1日から平成9年1月末日までの販売行為に対しては,不当利得返還請求権に基づき,同年2月1日から平成12年9月末日までの販売行為に対しては,不法行為による損害賠償請求権に基づき,不当利得の返還ないし損害の賠償を請求する(遅延損害金は,不当利得及び不法行為の後である平成12年10月1日から請求する。)。
上記の被告製品1の販売総額から被告製品2の販売総額を推計すると,被告が平成8年9月1日から平成12年9月末日までの間に販売した被告製品2の販売総額は,36億7500万円であると推認でき,実施料率は4パーセントが相当であるから,その実施料相当額は1億4700万円である。
したがって,被告製品2の販売行為について,原告の被告に対する請求額は,1億4700万円である。
その他の主張は上記ア(イ)及びア(ウ)と同じである。
(被告の反論) ア 被告製品1の製造,販売による損害額等について (ア) 被告が平成7年8月9日から平成11年3月末日までの間に販売した被告製品1の販売総額は,32億9782万1600円であることは認める。
実施料率は,3パーセントが相当である。
被告が本件実用新案権を侵害したことにより原告が被った損害額等(実施料相当額)の算定に当たっては,連結構造を構成する部分の販売額を基礎とすべきであり,連棟式車庫全体の販売額を基礎とすべきではない。本件実用新案権を侵害しているのは,被告製品1全体ではなく,被告製品1のうち,別紙被告製品1目録中の5,6及び41の各部材であり,これらの販売総額は6942万8734円である。
イ 被告製品2の製造,販売による損害額について 原告の主張は争う。
(5) 本件実用新案登録には無効理由のあることが明らかであるか。
(被告の主張) ア 本件考案の容易推考性について (ア) 本件考案先行技術についての公知文献として,三協アルミニウム工業株式会社作成の「エクステリア設計施工手引書」と題する資料(乙3),被告作成の「’87総合カタログ」と題する資料(乙17),被告作成の「製品マニュアル カーポート・テラス編」と題する資料(乙18),被告作成の「TOTAL EXTERIOR ’89-’90」と題する資料(乙19),特許庁作成の「特許庁公報 周知・慣用技術集(戸・窓等開口部閉鎖部材)」と題する資料(乙20),実開昭61-157607号公報(乙21),実開昭55-162602号公報(乙22),被告作成の「フリーポート 取付説明書」と題する資料(乙23),実開平1-153022号公報(乙24),トーヨーサッシ株式会社作成の「’87/’88基本図・納まり図集 玄関・外まわり製品編」と題する資料(乙26),実開昭54-183943号公報(乙37)等が存在する。本件考案は,これらの文献に基づいて,当業者がきわめて容易考案をすることができたというべきである。
(イ) すなわち,乙3,乙17,乙18,乙19,乙23,乙26には,合掌材と合掌材取付金具により一対の車庫を連結する構成が記載されているが,本件考案とこれらの公知技術との相違点は,本件考案が前枠の外側面を略半円形状とした点及び前枠の外側面と裏板の前枠当接部とを同一の形状とした点である。乙17,乙18,乙19,乙24には,前枠の外側面を略半円形状とする構成が,乙20,乙21,乙22,乙26,乙37には,前枠の外側面と裏板の前枠当接部とを同一の形状とする構成が,それぞれ記載されている。
したがって,本件考案は,上記各文献に基づいて,当業者がきわめて容易考案をすることができたというべきである。
イ したがって,本件実用新案登録には,無効理由が存することは明らかであるから,本件実用新案権に基づく請求は権利の濫用に当たり,許されない。
(原告の反論) 乙17には,車庫全体の写真が掲載されているだけであり,略半円形状の前枠は示されていない。乙18の商品名「エルポート」に関する7頁「2.柱と桁の取付け」の項には,側桁が略半円形状を呈した図が示されているが,これを合掌構造(3頁中段の図)とする場合には,9頁左中段4項の図に示されるように,側桁の代わりに別の中間桁を使用し,略半円形状の側桁とはわざわざ別の構成を採用して合掌部分を形成しているのであって,枠材を略半円形状のまま合掌構造とすることが技術的に思い至らなかったことをむしろ裏付けている。つまり,枠材が略半円形状をした単体のカーポートが存在したとしても,それを合掌する場合に,略半円形状の枠材の特性を活かして合掌することが容易に推考し得るとはいえない。
乙19に示される商品名「パラポート」等や,乙24も,それ自体合掌構造を開示しておらず,本件考案に対する公知資料としての価値はない。
乙20,乙21,乙22,乙26に記載されたものは,いずれもカーポートとは全く関係のない物件である。
したがって,被告が挙げた上記各文献に基づいて,当業者が本件考案考案することが極めて容易であったということはできない。
当裁判所の判断
〔被告製品1について〕 1 被告製品1は本件考案の構成要件を充足するか。
以下のとおり,被告製品1は本件考案の構成要件のすべてを充足する。
(1) 構成要件Aの充足性について 証拠(乙13)によれば,片流れ屋根とは,「一方のみに傾斜した屋根」であることが認められるところ,被告製品1の構成A′の起り屋根は,別紙物件目録1にあるとおり,一方のみに傾斜した屋根であるから,本件考案における構成要件Aの「片流れ屋根」に当たるというべきである。
これに対し,被告は,被告製品1は,「起り屋根」,すなわち「上方に対し凸形になった曲線形の屋根」であって,片流れ屋根に当たらない旨主張する。しかし,片流れ屋根と起り屋根とは何ら矛盾する概念ではなく,被告主張のような形状の屋根であっても,一方のみに傾斜していれば,構成要件Aにおける「片流れ屋根」ということができるから,被告の上記主張は理由がない。
したがって,被告製品1は本件考案の構成要件Aを充足する。
(2) 構成要件BBの充足性について 被告製品1の構成B′Bは前記「争いのない事実」記載のとおりである。
被告製品1における前枠の外側面の曲率半径は約31ミリメートルであり,前枠当接部の曲率半径も約31ミリメートルであるから,前枠の外側面と前枠当接部は同一形状である。また,被告製品1においては,ビス65を締結片52に締め付けているのであるから,前枠当接部は前枠の外側面下部に押しつけていることは明らかである。したがって,被告製品1の構成B′Bは本件考案の構成要件BBを充足する。
これに対し,被告は,本件考案の構成要件は,構成要件BBで「押しつけ」とし,次いで,構成要件Cで「締め付けて」としており,この2つの動作が区別されて時間の順序に沿って記載されているとして,本件考案の構成要件BBの「押しつけ」とは,ビスの締着に先行して前枠に裏板を押し付けることを意味すべきであると主張する。しかし,本件考案の構成要件BB及び同Cの記載からすると,「押しつけ」という動作と「締め付けて」という動作には,時間的な前後関係はないものと解釈するのが自然であり,また,考案の詳細な説明欄にも,上記各動作を経時的に解釈すべきことを示唆する記載はないことから,構成要件BBの「押しつけ」を制限的に解釈すべき理由はない。被告の上記主張は理由がない。
(3) 構成要件Cの充足性について ア 挟持の意義について 構成要件Cにおける,「挟持」とは,以下のとおり,前枠が揺動変位する可能性があることを前提として,前枠が揺動変位しても,前枠連結カバーと裏板とで,裏板の前枠当接部が前枠の外側面に密接した状態を維持して挟持することを指すと解すべきである。
すなわち,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄には,「課題を解決するための手段及び作用」として,「屋根端部を構成する前枠の外側面を略半円形状とし,一対の屋根の前枠における外側面上部に前枠連結カバーを配設し,前記前枠における外側面下部に裏板における前枠外側面と同一形状の一側前枠当接部,他側前枠当接部を当接し,この裏板より前記前枠連結カバーにビスを締め付けて一対の前枠を前枠連結カバーと裏板で挟持して連結したものであり,これによって,前枠連結カバーと裏板とに対して前枠で若干揺動変位できるから,屋根勾配の異なる屋根の屋根端部を連結できる。」と,また「裏板25における前枠当接部26,27が,前枠10の略半円形状の外側面と同一形状であるため,前枠の揺動変位を許容しながらも,前枠の外側面と密接して屋根端部相互を安定して保持することができ,この裏板25と前記連結カバー22とにより一対の前枠10,10を強固に挟持することができる。」と記載されていることから,前枠が揺動変位し得ることは当然の前提であると解すべきである。したがって,「挟持」とは,前枠が揺動変位することを前提として,揺動変位しても,前枠連結カバーと裏板とで,裏板の前枠当接部が前枠の外側面に密接した状態を維持させて挟持することを指すものと解される。
これに対し,被告は,上記「揺動変位」を合掌連結時に上下方向に揺れ動く可能性があることを前提とすべきであると主張する。しかし,本件明細書の「考案の詳細な説明」欄等を参酌してもなお,前枠が合掌連結時に上下方向に揺動可能であることを前提とする記載,前枠が合掌連結時に上下方向に揺動しても,同一の部材において屋根勾配の異なる屋根を連結できることを示唆する記載はない。
被告の上記主張は理由がない。
イ 対比 一方,被告製品1の構成C′は,前記「争いのない事実」記載のとおりである。被告製品1においては,前枠の外側面は略半円形状をしていること,前枠当接部は前枠の外側面と同一形状であること,及び上り連結金具のボルト挿通用の孔は,別紙物件目録1のとおり,ハ字形の形状を呈した長孔のものであって,上りの位置を調整し得ることに照らすならば,被告製品1において,前枠は揺動変位が可能であり,前枠が揺動変位しても,合掌材と合掌材取付金具とで,合掌材取付金具の前枠当接部が前枠の外側面に密接した状態で前枠を挟持するものであるから,被告製品1の構成C′は本件考案の構成要件Cを充足する。
2 被告の行為は,本件実用新案権の侵害行為か。
本件考案は,後記3のとおり,連棟式車庫全体を対象とするものではなく,連棟式車庫のうちの屋根端部連結構造のみを対象とするものと解すべきである。これを前提として判断する。
証拠(甲3,4,5,8,9,13の1ないし6,14の1ないし3,乙1,2の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,屋根端部連結構造部分を含む連棟式車庫(被告製品)を構成する各部材について,個別に価格を設定した上,部材ごとの販売をしている。しかし,同証拠によれば,被告は被告製品を構成する部材についてのすべてを製造し,販売していること,被告製品の組立て後の写真及び被告製品の各種形態のセット価格を記載したパンフレット及びチラシを作成及び頒布していること,被告製品1の組立ての方法を説明した「取扱説明書」と題する資料を作成及び頒布していること,被告は,被告製品の品質,性能及び機能について保証をしていること,及び上記各部材のうち,各連結構造部分は被告製品以外の商品には使用されないこと等の事実が認められ,これに反する証拠はない。上記認定した販売態様に照らすならば,被告の製造販売行為は,本件実用新案権の実施行為と解して差し支えない。したがって,被告の行為は本件実用新案権を侵害する行為ということができる(なお,仮に,被告から被告製品を購入して,顧客からの注文に応じて,被告製品全体を施工,完成,引き渡す代理店ないし販売店の行為こそが,いわゆる直接侵害行為とみた場合には,被告の行為は,いわゆる間接侵害行為と評価することができるのであるから,いずれにせよ,被告の行為が本件実用新案権の侵害行為に当たるという結論に消長を来すものではない。)。
3 原告の被った損害額はいくらか。
(1) まず,本件実用新案権を侵害したことによって原告が受けた損害額を算定するに当たり考慮すべき点について検討する。
ア 本件考案は,以下の理由から,連棟式車庫全体を対象とするものではなく,屋根端部連結構造部分のみを対象とするものと解すべきである。すなわち,前記のとおり,「本件考案の名称」が「連棟式車庫の屋根端部連結構造」とされていること,本件明細書の「実用新案登録請求の範囲」が,従来技術からなる連棟式車庫において,構成要件B,Cを特徴とする「連棟式車庫の屋根端部連結構造」とされていること,考案の課題解決のための本質的な特徴部分が専ら屋根端部連結構造を構成する部分にあることに照らすならば,本件考案が屋根端部連結構造を対象としていることは明らかである。
他方,本件考案は,@連棟式車庫を設置するに際して,同一の連結部材及び屋根板保持部材を使用して,屋根勾配の異なる屋根を,前枠の外側面と前枠当接部とを密接させて,連結できるようにすること,A屋根端部の連結作業を容易にすることをその特徴とし,本件考案のこのような特徴によって,同一の連結部材で,車庫の屋根勾配をある程度自由に設定できることから,需要者の多様なニーズへの対応の幅が広がり,販売量の増大が期待でき,また,車庫の組立作業が容易になり,組立時間を短縮できることから,経費の削減が期待できるといえる。
このような点に鑑みると,本件実用新案権を侵害したことによって原告が受けた損害額は,屋根端部連結構造部分に係る販売金額,被告製品1の販売金額及び上記連結構造部分が被告製品1の全体の販売に寄与している程度等を総合的に考慮して算定するのが相当である。
イ 証拠及び争いない事実によれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告が平成7年8月9日から平成11年3月末日までの間に販売した被告製品1の販売総額は,32億9782万1600円である(争いがない)。
(イ) 屋根端部連結構造を構成する部分は,被告製品1のうち,M合掌材,M合掌部品(M合掌材取付金具,M合掌キャップ,上り連結金具,上り連結金具取付ボルト,上り連結金具取付袋ナット,上り連結金具取付平座金,上り連結金具固定ネジ,M合掌材取付ネジ,M合掌キャップ取付ネジ)及び前枠の外側面の部分であると解される。
平成7年8月9日から平成11年3月末日までの間における被告製品1のうちのM合掌材及びM合掌部品の販売総額は6942万8734円である(これらの被告製品1全体の総販売額の約2.1パーセントに当たる。争いがない。)。また,前枠の外側面の上記期間における販売総額については,前枠の外側面は前枠と一体となっているため,これを正確に算出することはできないが,前枠の外側面の価格は少なくともM合掌材の価格の約1.5倍に相当すると推測でき,M合掌材の販売総額は4599万1563円であることは争いがないから,前枠の外側面の販売総額は少なくとも約6898万7345円である(甲3,弁論の全趣旨)。
そうすると,M合掌材,M合掌部品及び前枠の外側面の販売総額は少なくとも約1億3842万円である(なお,被告製品1全体の総販売額に占める割合は少なくとも約4.2パーセントである。) ウ 以上認定した屋根端部連結構造部分の販売金額,被告製品1の販売金額及び上記連結構造部分が被告製品1の全体の販売に寄与している程度等を総合的に考慮すると,被告製品1の販売総額の20パーセントに相当する金額である6億5956万4320円を基礎として算定するのが相当である。
(2) 次に,損害額を算定するに際しての相当実施料について検討する。
ア 証拠によれば,以下のとおりの事実が認められる。
(ア) 社団法人発明協会発行の「実施料率(第4版)」(甲22)によれば,被告製品1のようなアルミ製品が属する鉄鋼及び非鉄金属の分野において,実施料率昭和63年から平成3年までの間における,イニシャルペイメントがない場合の実施料率は,10件の契約例で,平均値が5.30パーセント,最頻値が3パーセントであり,イニシャルペイメントがある場合の実施料率は,18件の契約例で,平均値が3.39パーセント,最頻値が1.4パーセントである。
(イ) 証拠(甲21の1ないし6)及び弁論の全趣旨によると,原告の関連会社であるYKKAPエクステリア株式会社(以下「YKKAP」という。)は,平成10年12月11日,被告との間で,YKKAPが過去にカーポートを販売し,同カーポートが被告の意匠権を侵害したとの紛争について,被告に対して,同カーポートの販売総額の約5パーセントに相当する解決金を支払う旨の和解契約を締結した。
イ 上記認定した事実を考慮すれば,本件考案を実施する際の実施料率は,5パーセントが相当というべきである(原告は,連棟式車庫全体の販売金額の4パーセントが相当である旨を主張するが,当裁判所の認定額が原告主張額より低額である以上,原告主張に係る実施料率に拘束されるものではないというべきである。)。
(3) 以上のとおり,本件実用新案権を侵害したことによって原告が受けた損害額は,被告製品1の販売総額である32億9782万1600円に20パーセントを乗じた金額である6億5956万4320円を基礎として,これに実施料率である5パーセントを乗じた3300万円が相当と考える(10万円未満を四捨五入した。)。
4 本件実用新案登録には無効理由のあることが明らかであるか。
(1) 本件全証拠によっても,本件考案先行技術に基づき当業者がきわめて容易考案ができたことが明らかであるとはいえない。その理由は,以下のとおりである。
ア 乙3には,片流れ屋根を備えた一対の車庫を,その屋根の端部相互を対向して配設し,その屋根端部を連結したいわゆる合掌タイプの車庫において,片流れ屋根の端部を構成する前枠の外側面を略湾曲形状とし,相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って,横片に締結片を設けてなる合掌材の横片を載置し,前記一対の前枠の外側面下部に,前枠合掌金具における前記前枠の下端に対接する一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ,この前枠合掌金具よりビスを前記締結片に締め付けて前記合掌材と前枠合掌金具で一対の前枠を挟持した連棟式車庫の屋根端部連結構造が記載されている。本件考案と乙3に記載された技術とを対比すると,本件考案は,屋根の端部を構成する前枠の外側面を略半円形状とし,裏板の前枠当接部を前枠の外側面と同一形状としているのに対し,乙3では,前枠の外側面は略湾曲形状としており,前枠の外側面と裏板前枠当接部は同一形状ではない点が相違する。なお,被告は,本件考案と乙3との相違点を,@本件考案は,屋根の端部を構成する前枠の外側面を略半円形状としているのに対し,乙3では略湾曲形状としている点,A本件考案は,前枠の外側面と裏板前枠当接部は同一形状であるのに対し,乙3では同一形状でない点の2点に分けて主張しているが,上記相違点Aにおける本件考案の構成である「同一形状」とは,本件考案の作用効果からみて,「略半円形状」と「同一形状」であることを要することが明らかであるから,上記相違点Aは,裏板の前枠当接部を略半円形状である前枠の外側面と同一形状とした点であると解すべきであり,結局,本件考案と乙3との相違点は上記のようになる。
イ 前記アの相違点について検討する。
まず,乙20,乙22及び乙37は,いずれも連棟式屋根端部の連結構造についての文献ではなく,その記載は本件考案構造とは異なる技術についてのものである。次に,乙17,乙18,乙19,乙24には,屋根の端部を構成する前枠の外側面を略半円形状とし,裏板の前枠当接部を前枠の外側面と同一形状としている構成が記載されていない(なお,乙24は,組立建物の屋根における雨水排出装置に関する考案についての文献であり,垂木の軒先側端部を略半円形状とした構成が記載されているが,本件明細書の実用新案登録請求の範囲の文言及び本件考案の前記作用効果に照らすと,前枠とは,屋根の端部のうち,柱に支持される側とは反対側の端部の枠を意味すると解すべきであるから,乙24には,前枠の外側面を略半円形状とした構成が記載されているとはいえない。)。また,乙26も,連棟式屋根端部の連結構造について記載した部分は,前枠の外側面を略半円形状とし,裏板の前枠当接部を前枠外側面と同一形状としている構成が記載されていない。乙21は,建物の出隅又は入隅を構成する一対の壁に沿って設けられる,サンルームのような建造物のための片流れ屋根に関する考案についての文献であり,軒材の端部を構成する凹面部を略半円形状とし,垂木本体の下部円弧面は上記凹面部と同一形状とした構成が記載されているが,本件考案の前枠連結カバーに相当するものが存在せず,この存在を前提とする乙3に乙21の技術を適用することは困難である。
以上のとおりであって,本件考案は,被告の引用する各文献に基づいて,当業者がきわめて容易考案をすることができたということができないのみならず,この点が明らかであったということもできない。
(2) したがって,本件実用新案権に基づく権利行使は権利の濫用に当たらない。
〔被告製品2について〕 5 被告製品2は本件考案の構成要件を充足するか。
(1) 構成要件BBの充足性について ア 被告製品2における前枠の外側面は,曲率半径60ミリメートルにして約65度の角度幅の上部円弧面と,曲率半径10ミリメートルにして約60度の角度幅の下部円弧面を上下に連続したものであり(争いのない事実),前枠当接部は,連続した円弧の形状をしたものであると認められる(弁論の全趣旨)。
したがって,被告製品2においては,前枠の外側面と前枠当接部とは同一の形状をしておらず,被告製品2の構成B″Bは本件考案の構成要件BBを充足しない。
イ これに対して,原告は,本件考案の構成要件BBにおいて同一形状であることが要求される部分は,前枠当接部と前枠の外側面とが相互に当接する面のみであり,被告製品2においても,合掌材取付金具の前枠当接部と当接することになる前枠の外側面の下部円弧面は,上記前枠当接部と同一形状であるから,被告製品2は本件考案の構成要件BBを充足する旨主張する。
しかし,本件考案の作用効果の1つは,前枠の揺動変位を可能とし,それにより,同一の連結部材においても,屋根勾配の異なる屋根を,前枠の外側面と前枠当接部とを密接させて連結できることであるが,こうような作用効果を生じさせるには,前枠の外側面及び前枠当接部が同一形状で,かつ,円弧形状あることが必要である(前枠の外側面と前枠当接部とが同一形状の円弧であれば,前枠が上記両円弧の中心点を中心として揺動変位しても,前枠の外側面と前枠当接部とは密接した状態を保持できる。)。本件考案の構成要件BBにおいて,前枠の外側面と前枠当接部とが同一形状であることを要求したのは,前枠が揺動変位しても,裏板と前枠連結カバーとにより,前枠を安定して挟持できるようにするため,すなわち,前枠当接部が前枠の外側面に密接した状態で裏板及び前枠連結カバーが前枠を挟持することができるようにするためである。この観点から検討すると,本件考案の構成要件BBにおける,前枠の外側面のうち,前枠当接部と同一の形状であることが求められる範囲とは,前枠が揺動変位することにより前枠当接部と当接する可能性のある範囲全体であると解するのが相当である。そして,被告製品2の前枠の外側面の下部円弧面の形状は曲率半径が10ミリメートル,角度幅が約60度である(したがって,円弧面の長さは,約15.7ミリメートルとなる。)ところ,前枠当接部の形状は,角度幅が上記下部円弧面よりも若干小さいが,上記下部円弧面とほぼ同一の形状であると推測されこと(甲4),上り連結金具のボルト挿通用の孔は長孔であること,同長孔の幅は10ミリメートル近くあるものと推測されること(甲4)から,被告製品2においては,前枠が揺動変位することにより前枠の外側面が前枠当接部に接する可能性のある範囲は,前枠の外側面の下部円弧面に限られないことになる(したがって,被告製品2においては,前枠が揺動変位することにより,裏板の前枠当接部が前枠の外側面の上部円弧面に当接するようになった場合には,前枠の外側面と前枠当接部とが密接しなくなり,裏板と合掌材とにより前枠を「挟持」することができなくなる。)。
したがって,原告の上記主張は理由がない。
(2) 以上のとおりであるから,その余の点を検討するまでもなく,被告製品2は本件考案の構成要件を充足しない。
〔結論〕 6 原告の本訴請求は,被告に対して3300万円及びこれに対する平成11年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 谷有恒
裁判官 佐野信
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