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関連審決 無効2000-40007
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  きわめて容易 /  請求項 /  実施例 /  頒布 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 448号 審決取消請求事件
原告 亨吉股有限公司
訴訟代理人弁理士 倉内基弘
同 風間弘志
被告 ツインバード工業株式会社
訴訟代理人弁理士 牛木護
同 染川利吉
同 外山邦昭
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/11/26
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が無効2000-40007号事件について平成12年7月12日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文第1、2項と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、名称を「延長コード」とする登録第3049723号考案(平成9年12月12日実用新案登録出願、平成10年4月1日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。
被告は、平成12年2月10日、原告を被請求人として、上記実用新案登録につき無効審判の請求をした。
特許庁は、同請求を無効2000-40007号事件として審理した上、平成12年7月12日に「登録第3049723号実用新案の明細書請求項に記載された考案についての登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は同年8月2日、原告に送達された。
2 本件考案の要旨 (1) 願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲請求項1に記載された考案(以下「本件考案1」という。)の要旨 複数のコンセントと複数のスイッチとを有する上カバー12と、前記上カバー12の下部を覆う下カバー14とからなる延長コードにおいて、 前記コンセントの一方の孔に挿入し、二枚で形成される挿入片21と、前記スイッチの一方の電極端子182に接続される横片22と、前記複数のコンセントにおけるそれぞれの前記挿入片21と前記横片22とを連結する連結条20とが一体に形成される第1電気ピースと、 前記コンセントの他方の孔に挿入し、二枚で形成される挿入片24と、前記スイッチの他方の電極端子184に接続される横片25とが一体に形成される第2電気ピースと、 前記複数のスイッチの第3電極端子186に接続されるそれぞれの横片と、これらの横片をそれぞれ電気的に接続する連結条とからなる第3電気ピース組とを有し、
前記スイッチの前記第2電気ピースと前記第3電気ピース組とへの切り換えによってコンセントの電気オンオフを制御することを特徴とした延長コード。 (2) 同請求項2に記載された考案(以下「本件考案2」という。)の要旨 前記横片は前記スイッチの電極端子に接続する部位に、前記電極端子を包む包囲部を有することを特徴とした請求項1に記載の延長コード。
3 本件審決の理由 審決は、別添審決謄本記載のとおり、本件考案1、2は、特開平7-220833号公報(審判参考資料1、本訴甲第10号証、以下「周知例1」という。)、特開平8-45617号公報(審判参考資料2、本訴甲第11号証、以下「周知例2」という。)及び特公平8-28168号公報(審判参考資料3、本訴甲第12号証、以下「周知例3」という。)に示された周知技術を考慮すれば、いずれも本件実用新案登録出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である中華民国専利公報第205404号公報(審判甲第1号証の1、本訴甲第3号証、以下「引用例1の1」という。)及び同全文明細書(審判甲第1号証の2、本訴甲第4号証、以下「引用例1の2」といい、引用例1の1と引用例1の2とを併せて、単に「引用例1」という。)、実公昭62-8140号公報(審判甲第2号証、本訴甲第5号証、以下「引用例2」という。)、特公昭61-41104号公報(審判甲第3号証、本訴甲第6号証、以下「引用例3」という。)、特開平1-255178号公報(審判甲第4号証、本訴甲第7号証、以下「引用例4」という。)、実開昭59-33684号公報(審判甲第5号証、本訴甲第8号証、以下「引用例5」という。)及び実公昭58-27511号公報(審判甲第6号証、本訴甲第9号証、以下「引用例6」という。)にそれぞれ記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易考案をすることができたものであるから、本件考案1、2の実用新案登録は、実用新案法3条2項の規定に違反してされたものであり、同法37条1項2号の規定により無効とすべきものであるとした。
原告主張の審決取消事由
審決の理由中、本件考案1、2の要旨の認定、引用例1〜6の記載事項の認定、本件考案1と引用例1に記載された考案(以下「引用例考案」という。)との一致点及び相違点の各認定は認める。
審決は、本件考案1、2の技術事項を看過して、本件考案1と引用例考案との相違点(ア)及び(イ)についての判断を誤り(取消事由1)、さらに、本件考案2に付加された構成についての容易想到性の判断を誤った(取消事由2)結果、本件考案1、2が引用例1〜6に記載された考案及び周知技術に基づき当業者がきわめて容易考案をすることができたとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件考案1に係る相違点(ア)及び(イ)についての判断の誤り) (1) 審決は、その認定に係る本件考案1と引用例考案との相違点(ア)の「本件考案(注、本件考案1)では、第1電気ピースが挿入片21と横片22と連絡条20とからなり、三者が一体に形成され、挿入片21がコンセントの孔・・・に挿入することにより導通するものであるのに対して、甲第1号証の並列式多孔コンセント(注、引用例考案)では・・・本件考案の挿入片21に相当する部材としては導電チップ(符号なし)が第1電気ピース側ではなくコンセントに形成され、導電チップ(251)を支持チップ(41)に形成された穿孔(符号42)に差し込まれることにより導電部材間を導通するものである点」(審決謄本6頁3行目〜9行目、なお、上記記載中の『導電チップ(符号なし)』と『導電チップ(251)』とは同じ導電チップを指す。同導電チップは、引用例1の1、2(甲第3、第4号証)にそれぞれ添付された図面3上は符号が付されていないが、引用例1の2の『支持チップ(41)にも同じ方式で2つの穿孔(42)が設けてあり、この2つの穿孔はそれぞれスイッチ(21)の導電チップ(22)およびコンセント(25)の中の導電チップの1つ(251)がさしこまれる』(甲第4号証訳文7頁4行目〜6行目)との記載に照らし、『導電チップ(251)』と特定しても誤りではない。)及び同相違点(イ)の「本件考案では、第2電気ピースが挿入片24と横片25により一体に形成されるのに対して、甲第1号証の並列式多孔コンセントでは、第2電気ピースは電極ピース丙(符号50)のみからなり、本件考案の挿入片24に相当する部材としては導電チップ(符号251)が第2電気ピース側ではなくコンセント(符号25)側に形成され、導電チップ(251)を電極ピース丙(50)に形成された穿孔(符号なし)に差し込むことにより導電部材間を導通するものである点」(審決謄本6頁11行目〜17行目)について、「本件考案の挿入片21(第1電気ピース)、挿入片24(第2電気ピース)に相当する部材を電気ピースと一体に設けることは、本件実用新案登録の出願前すでに広く行われていることであり、甲第2号証乃至甲第6号証(注、引用例2〜6)にもそうしたタイプのコンセント類が記載されている。とくに、甲第4号証(注、引用例4)には、コンセントを個別にオンオフするスイッチを有するコンセントにおいて『電気ピース』と一体に設けたものが示されている(第2図)。したがって、甲第1号証の並列式多孔コンセントにおいて、導電チップを電極ピース乙(40)および支持チップ(41)とを一体に形成して第1電気ピースとすること、および、導電チップと電極ピース丙(50)を一体に形成して第2電気ピースとすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことにすぎない」(同6頁21行目〜31行目、以下「相違点判断A」という。)、「さらに、本件考案の挿入片21(第1電気ピース)、挿入片24(第2電気ピース)に相当する部材をコンセントの孔に挿入することにより導通するタイプの電源ソケットについても、本件実用新案登録の出願前すでに広く知られたものであり・・・参考資料1乃至3(周知例1〜3)にもそうしたタイプの電源コンセントが記載されている。一例として参考資料1・特開平7-220833号公報(注、周知例1)には、『ケーシング22には、差し込み口、即ち雌コンタクトを形成するように、導電体30が組み込まれる2個のスロット24が形成されている。また、このスロットには、導電体30が下方から係入されるように、
スロット24よりも幅広の係入溝31が、スロット24に沿って両側に形成され、
上端部で終端している』・・・という記載と図示がある(図2、図4)」(同7頁8行目〜18行目、以下「相違点判断B」という。)とした上で、これらの相違点(ア)、(イ)に係る相違点判断A、Bを前提として、「本件の請求項1に係る考案(注、本件考案1)は・・・周知技術を考慮すれば、請求人の提示した甲第1号証乃至甲第6号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものというべきであり、実用新案法第3条第2条(注、「第3条第2項」の誤記と認める。)の規定に違反する」(同7頁37行目〜8頁3行目)と判断した。
しかしながら、相違点判断Aのうち、本件考案1の第1電気ピースに係る挿入片21及び第2電気ピースに係る挿入片24に相当する部材を電気ピースと一体に設けることが本件実用新案登録出願前に広く行われているとした点及び相違点判断Bは認めるが、相違点判断Aのうち、引用例考案において、導電チップを電極ピース乙(40)及び支持チップ(41)と一体に形成して第1電気ピースとすること、導電チップと電極ピース丙(50)を一体に形成して第2電気ピースとすることは、当業者がきわめて容易にし得るとした点、並びに相違点判断A、Bに基づき、本件考案1は当業者がきわめて容易考案することができたする判断は、以下のとおり誤りである。
(2) 本件考案1は、第1電気ピースを挿入片21、横片22及び挿入片21と横片22とを連結する連結条20からなる一体構造とし、第2電気ピースを挿入片24及び横片25からなる一体構造として、挿入片21、22をコンセントの孔16、16に下から挿入することにより、部品点数の減少と組立時間の短縮とを図ったものであるが、このように第1電気ピース及び第2電気ピースを一体構造に形成した場合には、コンセントユニット側に直接の支持部分がなくなることにより構造不安定となって、電気プラグの挿脱の際の電気的接続の安定性が不十分となる問題点(以下「構造不安定の問題」という。)が予想された。そのため、本件考案1は、第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する構造(片持支持構造)とすることにより構造安定性を得て、
構造不安定の問題を解消したものである。
引用例考案を本件考案1のようにするためには、まず、引用例考案の、コンセント側の導電チップ(251)、(251)が絶縁成型物に埋設されている構造を、絶縁成型物を取り払って挿入自在の孔を有する構造に変更し、次いで、導電チップ(251)、(251)を挿入片として支持チップと一体化するように電極ピース乙(40)及び電極ピース丙(50)を修正する必要があるところ、このような工夫自体が発想の転換を要するものである。
のみならず、本件考案1の第1電気ピースに係る挿入片21及び第2電気ピースに係る挿入片24に相当する部材を電気ピースと一体に設けることが本件実用新案登録出願前に広く行われており、また、本件考案1の第1電気ピースに係る挿入片21、第2電気ピースに係る挿入片24に相当する部材をコンセントの孔に挿入することにより導通するタイプの電源ソケットが本件実用新案登録出願前に広く知られたものであるとしても、審決が引用する引用例2〜6(甲第5〜第9号証)及び周知例1〜3(甲第10〜第12号証)には、挿入片21及び挿入片24に相当する部材を電気ピースと一体構造に形成したときの構造不安定の問題を解決すべきことの記載はなく、また、第1電気ピース及び第2電気ピースの端部をスイッチ側の電極端子に支持させること(片持支持構造)も記載されていない。すなわち、引用例2(甲第5号証)記載の考案においては、一対の導電片が刃受ばね4a、4bの中央付近の貫通孔5aで鋲止めにより支持され、引用例3(甲第6号証)記載の考案においては、刃受ばね体Aの接続部2の基部に設けられたストッパ部6、6が直接ケースに支持され、引用例4(甲第7号証)記載の考案においては、受け端子A、Bの支持導電片やスイッチの導電片は別々にケースに固定されており、引用例5(甲第8号証)記載の考案においては、プラグソケット5はそれを支持する導電片全体でケースに支持され、引用例6(甲第9号証)記載の考案においては、複数の受刃部5はそれぞれの位置でケースに支持されているから、いずれも本件考案1のような片持支持構造ではない。
したがって、引用例考案に上記のような修正変更を加えて本件考案1のようにすることについての動機付けが存在せず、当業者がこのような修正変更をきわめて容易にし得たということはできない。
(3) 被告は、本件明細書及び図面に、構造不安定の問題、更には、本件考案1が第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する片持支持構造とすることにより構造安定性を得て構造不安定の問題を解消した旨は、何ら記載がない旨主張するが、構造不安定の問題は、引用例考案から本件考案1に転換するに当たり解決すべき問題点として把握できるものであり、かつ、本件考案1における支持安定性はその構造自体から導かれるものであって、その効果は本件考案1に内在するものである。
また、被告は、引用例考案のコンセント側の絶縁成型物を挿入孔を有するものに換え、その下から挿入片を挿入する構造としたときに不安定な状態が生ずるおそれが見込まれる場合には、できるだけそのようなおそれを排除して設計しなければならないことは当業者が当然に配慮すべきである旨主張する。しかしながら、
第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端を電極端子182、184に固定し、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する片持支持構造とすることにより、上記のおそれを排除したものが本件考案1であるところ、被告の引用する引用例3(甲第6号証)の記載は、一体構造とすることの利点について記載したものであって、その記載から、本件考案1の上記解決手段が当然に導けるものではない。
さらに、被告は、引用例1の2(甲第4号証)に片持支持構造について示されていると主張するが、引用例1の2(甲第4号証)に記載された引用例考案においては、コンセント側の導電チップ(251)、(251)に支持されており、片持支持構造ではない。
2 取消事由2(本件考案2に係る容易想到性判断の誤り) 本件考案2が「請求項1に係る考案(注、本件考案1)の構成に加えて、横片がスイッチの電極端子に接続する部位に電極端子を包む包囲部を有するものである」(審決謄本8頁4行目〜6行目)こと、「甲第1号証の並列式多孔コンセント(注、引用例考案)においても、本件考案の横片22、25に相当する支持チップ41、31は、本件考案の電極端子182、184、186に相当するスイッチ(21)の導電チップ(22〜24)に接続する部位に、該導電チップを包む包囲部を有しているものであると認められ、この点の構成において、請求項2に係る考案(注、本件考案2)は甲第1号証の並列式多孔コンセントと一致している」(同頁6行目〜11行目)ことは認める。
しかしながら、本件考案1の構成における片持支持構造とすること自体が、
当業者においてきわめて容易にし得るものでないことは上記1のとおりである。のみならず、仮に、第1電気ピース及び第2電気ピースの横片末端の包囲部に電極端子182、184を単に差し込むことにより支持するものとした場合には、更に問題であることが予想される。
したがって、「本件の請求項2に係る考案も、上述した理由により、周知技術を考慮すれば、請求人の提示した甲第1号証乃至甲第6号証(注、引用例1〜6)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができた」(同頁12行目〜14行目)とする審決の判断は誤りである。
被告の反論
審決の認定及び判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。
1 取消事由1(本件考案1に係る相違点(ア)及び(イ)についての判断の誤り)について 原告は、第1電気ピース及び第2電気ピースを一体構造に形成した場合に構造不安定の問題が予想されたため、本件考案1は、第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する構造(片持支持構造)とすることにより構造安定性を得て構造不安定の問題を解消した旨主張した上、引用例2〜6(甲第5〜第9号証)及び周知例1〜3(甲第10〜第12号証)には、構造不安定の問題を解決すべきことの記載はなく、また、第1電気ピース及び第2電気ピースの端部をスイッチ側の電極端子に支持させること(片持支持構造)も記載されていないから、引用例考案を本件考案1のようにすることについての動機付けが存在せず、当業者がこのような修正変更をきわめて容易にし得たということはできない旨主張する。
しかしながら、構造不安定の問題、更には、本件考案1が第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する構造(片持支持構造)とすることにより構造安定性を得て構造不安定の問題を解消した旨は、本件明細書及び図面に何ら記載がないから、この点を前提とした主張は失当である。
のみならず、引用例考案のコンセント側の絶縁成型物を挿入孔を有するものに換え、その下から挿入片を挿入する構造としたときに不安定な状態が生ずるおそれが見込まれる場合には、できるだけそのようなおそれを排除して設計しなければならないことは当業者が当然に配慮すべきであるところ、引用例3(甲第6号証)には、「刃受ばね体Aは第5図のように平板状板材を打ち抜き形成したものを折り曲げ加工して得られるものであり」(3欄30行目〜32行目)、「加えて接続部の折曲先端にストッパ突起を突設し、刃受ばね体を筐体内に装着してストッパ突起を筐体の内面に凹設した位置決め係合孔内に挿入係合するようにしたので・・・刃受部に栓刃を挿入したときの刃受ばね体の移動や変形を防止して刃受部への栓刃の挿入や保持を安定させることができる」(6欄2行目〜11行目)との記載があって、プラグ挿脱時の構造不安定のおそれを解消するために挿入片を横片等と一体化することが示されているから、構造不安定の解消のために一体化する点に何ら困難性は認められない。
さらに、引用例1の2(甲第4号証)には「これら支持チップ(31)(41)および電極ピース丙(50)に設けられた各穿孔と、スイッチ(21)かあるいはコンセント(25)に取り付けられた各導電チップは、穿孔部分をスタンピングされている側面チップを2つの突起の問において位置づけをしている。このようにして、支持チップ(31)(41)あるいは電極ピース丙(50)と、各導電チップ(22)(23)(24)(251)の間は、
緊密にぴったりと固定されている」(同号証訳文7頁8行目〜13行目)との記載があって、片持支持構造についても示されている。
したがって、本件考案1につき、周知例1〜3に記載された周知技術を考慮すれば、引用例1〜6に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものとした審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(本件考案2に係る容易想到性判断の誤り)について 本件考案1の構成における片持支持構造とすることが、当業者においてきわめて容易にし得るものであることは上記1のとおりである。また、第1電気ピース及び第2電気ピースの横片末端の包囲部に電極端子182、184を単に差し込むことにより支持するものとした場合に、更に問題が顕著になることも考えられない。
したがって、本件考案2が、周知技術を考慮すれば、引用例1〜6に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたとした審決の判断に誤りはない。
当裁判所の判断
1 取消事由1(本件考案1に係る相違点(ア)及び(イ)についての判断の誤り)について (1) 本件考案1が、第1電気ピースを挿入片21、横片22及び連結条20からなる一体構造とし、第2電気ピースを挿入片24及び横片25からなる一体構造として、挿入片21、22をコンセントの孔16、16に挿入することにより、部品点数の減少と組立時間の短縮とを図ったものであることは、原告が自認するところである。
そして、審決の相違点判断Aのうち、本件考案1の第1電気ピースに係る挿入片21及び第2電気ピースに係る挿入片24に相当する部材を電気ピースと一体に設けることが本件実用新案登録出願前に広く行われていることは当事者間に争いがないところ、引用例2(甲第5号証)の「接地用の刃受ばねが2個設けられたアース付コンセントであって、前記2個の刃受ばねとこれらを直結するリード板と端子板が一体構造となり」(実用新案登録請求の範囲)、「第1図は、この考案にかかるアース付コンセントの一部を分解してあらわした斜視図である・・・接地回路金具2は、二つの接地用刃受ばね4a,4b,リード板5および二つの端子板6,6をそれぞれ持ち、…リード板5の両端に刃受けばね4a,4bがかしめにより固定されている。たとえば、刃受けばねの底部とリード板の両者にそれぞれ設けられた貫通孔に鋲が通され、この鋲の先端が押しつぶされることにより両者が固定されている」(2欄21行目〜3欄5行目)、「このアース付コンセントはつぎのようにして組み立てられる。ボデイ1の貫通孔12bの表側から接地回路金具2の刃受ばね4aを挿入し、刃受ばね4aをボデイ1の裏側につき出させる。つづいてリード板5を裏側につき出させる。このとき、接地回路金具2は第2図の一点鎖線で示される状態となる。このあと、実線で示されるように、端子ばね4aをボデイ1の貫通孔12aに挿入するとともに端子ばね4bを貫通孔12bに挿入して両者をボデイ1の表面に臨ませる。同時に・・・リード板5をボデイ1の裏面に合わせる。リード板5の貫通孔5aから鋲21を打ち込んで接地用金具2をボデイ1に固定する」(3欄35行目〜4欄4行目)、「この考案にかかるアース付コンセントは・・・2個の接地用の刃受ばね、リード板および端子板が一体構造となっているので、4者間の電気的接続信頼性が非常に高い。また・・・固定箇所が少なくてすみ、組立能率が非常に高い」(4欄35行目〜44行目)との各記載及び図面第1、第2図、引用例3(甲第6号証)の「第1図は本発明一実施例における刃受ばね体Aの斜視図を示し、この刃受ばね体Aは第5図のように平板状板材を打ち抜き形成したものを折り曲げ加工して得られるものであり」(3欄29行目〜32行目)、「基準面部1、接続部2、刃受部4、曲り部5、ストッパ突起6を具備して板材の打ち抜きで第1の刃受ばね体Aを形成するものであり・・・ストッパ突起6,6を合成樹脂により形成された筐体7の底面に設けた位置決め係合孔8に第2図や第3図に示すようにはめ込み係合し、この位置決め係合孔8とストッパ突起6,6との係合関係により、筐体7に対する刃受ばね体Aの取付位置を位置決めすると共に、刃受部4に栓刃15を挿入したときの刃受ばね体Aの移動を防止するようにする」(4欄16行目〜27行目)、「各刃受ばね体A,Bの刃受部4を筐体7に設けた栓刃受口9に対向させた状態でそれぞれ刃受ばね体A,Bを筐体7内に組み込むことによって第7図a、b、cに示すようなテーブルタップを形成する」(4欄44行目〜5欄4行目)、「部品点数を削減して生産性を大巾に向上することができる・・・加えて接続部の折曲先端にストッパ突起を突設し・・・ストッパ突起を筐体の内面に凹設した位置決め係合孔内の挿入係合するようにしたので・・・筐体に対する刃受けばね体の取付位置を位置決めできると共に・・・刃受部への栓刃の挿入や保持を安定させることができる」(5欄31行目〜6欄11行目)との各記載及び図面第2、第3、第7図、並びに引用例6(甲第9号証)の「第1図はタップ本体1とこれに合着される蓋体2に収納される、本考案の受刃金具A側3とB側4の分解斜視図である。受刃金具3、4は受刃部5と端子部6と、
これを連結する橋渡片7とで形成される」(2欄4行目〜8行目)、「受刃金具3,4は端子部6にて、タップ本体にリベット12で固着され」(同頁12行目〜13行目)、「生産工程を大巾に省略できる顕著な実用性を有する」(同頁23行目〜24行目)との各記載及び図面第1図によれば、引用例2、3及び6に記載された各考案は、上記のとおり、広く行われている本件考案1の挿入片21、24に相当する部材を電気ピースと一体に設ける構成を採用したものであり、本件考案1と同様、部品点数の減少や組立(生産)効率の向上等の効果を奏するものであることが認められる。
また、審決の相違点判断B(本件考案1の第1電気ピースに係る挿入片21及び第2電気ピースに係る挿入片24に相当する部材をコンセントの孔に挿入することにより導通するタイプの電源ソケットが、本件実用新案登録の出願前に広く知られており、周知例1〜3にそうしたタイプの電源コンセントが記載されていること)は、当事者間に争いがない。
(2) ところで、原告は、引用例考案の、コンセント側の導電チップ(251)、(251)が絶縁成型物に埋設されている構造を、絶縁成型物を取り払って挿入自在の孔を有する構造に変更した上、導電チップ(251)、(251)を挿入片として支持チップと一体化するように電極ピース乙(40)及び電極ピース丙(50)を修正して本件考案1の構成とすることそれ自体が、発想の転換を要する旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、引用例2、3及び6には、本件考案1の挿入片21、24に相当する部材を電気ピースと一体に設けることにより、部品点数の減少や組立効率の向上等の効果を奏することが記載されているのであるから、同様の課題を解決するために、引用例考案の導電チップ(251)、(251)を挿入片として、電極ピース乙(40)及び電極ピース丙(50)の各支持チップと一体化すること、並びに、その際に、相違点判断Bに係る周知技術を参酌して、コンセント側の絶縁成型物を取り払い、挿入片を挿入するための挿入孔を有する構造とすることは、当業者においてきわめて容易にし得たものと認められる。
(3) 原告は、さらに、本件考案1が、第1電気ピース及び第2電気ピースを一体構造に形成した場合の構造不安定の問題に対し、第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する構造(片持支持構造)とすることにより構造安定性を得たものであるとした上、引用例2〜6(甲第5〜第9号証)及び周知例1〜3(甲第10〜第12号証)には、構造不安定の問題を解決すべきこと及び第1電気ピース及び第2電気ピースの端部をスイッチ側の電極端子に支持させること(片持支持構造)が記載されていないから、引用例考案を本件考案1のようにすることについての動機付けが存在しない旨主張する。
しかしながら、一体構造であるか否かにかかわらず、コンセントの刃受部(本件考案1の挿入片21、24に相当する部材)が電気プラグの挿脱の際に機械的な力を受けることは明らかであり、そのため、コンセントの刃受部を機械的に支持する必要があることも明らかである。そして、上記(1)の引用例2、3及び6の各記載中には、いずれも、本件考案1の挿入片21、24に相当するコンセントの刃受部(引用例2の刃受ばね4a、4b、引用例3の刃受部4、引用例6の受刃部5)と一体構造を成す電気ピースの他の部位(引用例2のリード板5の貫通孔5a、引用例3のストッパ突起6、6、引用例6の端子部6)を固定することが記載されており、そのことによりそれ自体には直接の支持のない刃受部を間接的に支持するものであることは明らかである。なお、原告は、引用例6記載の考案において、複数の受刃部5がそれぞれの位置でケースに支持されている旨主張するが、引用例6(甲第9号証)にはそのような記載はなく、他にこれを認めるに足りる証拠もないから、当該受刃部5は、端子部6を固定することにより間接的に支持されているものというべきである。
したがって、引用例2、3及び6には、一体構造としたときの構造不安定の問題を解決すべきことが示唆されているものということができ、そうとすれば、
本件考案1において、挿入片21を横片22及び連結条20と、挿入片24を横片25と一体構造とした場合の構造不安定の問題は、そのような構成を採用する際に当然配慮すべきことであるといわざるを得ない。
また、本件考案1の要旨は、横片22、24と電極端子182、184との関係について「スイッチの一方の電極端子182に接続される横片22」、「スイッチの他方の電極端子184に接続される横片25」と規定するのみであるところ、上記「接続される」との規定が電気的に接続することを意味することは明らかであるとしても、横片22、24をそれぞれ電極端子182、184に固定すること、すなわち、機械的に支持することまで含むものと当然に認められるものではない。したがって、本件考案1において、第1電気ピースの横片22及び第2電気ピースの横片24の他端をスイッチ側の電極端子182、184に固定して、第1電気ピース全体及び第2電気ピース全体をそれぞれ支持する構造(片持支持構造)とすることにより構造不安定の問題を解決したとする原告の主張は、本件考案1の要旨に基づかないものといわざるを得ない。
のみならず、この点をおくとしても、引用例1の2(甲第4号証)の「これら支持チップ(31)(41)および電極ピース丙(50)に設けられた各穿孔と、スイッチ(21)かあるいはコンセント(25)に取り付けられた各導電チップは、穿孔部分をスタンピングされている側面チップを2つの突起の問において位置づけをしている。
このようにして、支持チップ(31)(41)あるいは電極ピース丙(50)と、各導電チップ(22)(23)(24)(251)の間は、緊密にぴったりと固定されている」(同号証訳文7頁8行目〜13行目)との記載及び図面3によれば、引用例考案において、支持チップ(41)及び電極ピース丙(50)のスイッチ側の端部は導電チップ(22)、(24)にそれぞれ固定され、機械的に支持されていることが認められる。もっとも、上記記載及び図面3によれば、引用例考案の支持チップ(41)及び電極ピース丙(50)は、コンセント側においても導電チップ(251)、(251)にそれぞれ固定されているから、スイッチ側の導電チップにのみ固定された片持支持構造であるといえないことは原告主張のとおりである。しかしながら、引用例2、3及び6に、コンセントの刃受部と一体構造を成す電気ピースの他の部位を固定することにより、それ自体には直接の支持のない刃受部を間接的に支持することが開示されていることは上記のとおりであり、とりわけ、引用例6(甲第9号証)に記載されたものは、コンセントの孔に挿入する挿入片(受刃部5)と一体構造とした電気ピース(受刃金具3、4)の他端(端子部6)をタップ本体に固着して支持する構造、すなわち片持支持構造であるから、引用例考案の支持チップ(41)及び電極ピース丙(50)のスイッチ側の端部を導電チップ(22)、(24)にそれぞれ固定した構成には変更を加えず、本件考案1のように、第1電気ピース及び第2電気ピースの端部をスイッチ側の電極端子に固定して、片持支持構造とすることは、当業者においてきわめて容易にし得ることと認められる。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(4) 以上によれば、「本件の請求項1に係る考案(注、本件考案1)は・・・周知技術を考慮すれば、請求人の提示した甲第1号証乃至甲第6号証(注、引用例1〜6)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものというべきであり、実用新案法第3条第2条(注、「第3条第2項」の誤記と認める。)の規定に違反する」(審決謄本7頁37行目〜8頁3行目)とした審決の判断に誤りはない。
2 取消事由2(本件考案2に係る容易想到性判断の誤り)について 本件考案2が「請求項1に係る考案(注、本件考案1)の構成に加えて、横片がスイッチの電極端子に接続する部位に電極端子を包む包囲部を有するものである」(審決謄本8頁4行目〜6行目)こと、「甲第1号証の並列式多孔コンセント(注、引用例考案)においても、本件考案の横片22、25に相当する支持チップ41、31は、本件考案の電極端子182、184、186に相当するスイッチ(21)の導電チップ(22〜24)に接続する部位に、該導電チップを包む包囲部を有しているものであると認められ、この点の構成において、請求項2に係る考案(注、本件考案2)は甲第1号証の並列式多孔コンセントと一致している」(同頁6行目〜11行目)ことは当事者間に争いがない。
原告は、本件考案1の構成における片持支持構造とすること自体が、当業者においてきわめて容易にし得るものでないと主張するが、本件考案1において、第1電気ピース及び第2電気ピースの端部をスイッチ側の電極端子に固定して、片持支持構造とすることは、当業者においてきわめて容易にし得るものと認められることは上記1の(3)のとおりである。
また、原告は、第1電気ピース及び第2電気ピースの横片末端の包囲部に電極端子182、184を単に差し込むことにより支持するものとした場合には、更に問題であることが予想されるとも主張するが、具体的にどのような問題が生じ、
あるいは顕著となるかについての主張はなく、仮に、それが、挿入片21を横片22及び連結条20と一体構造とした第1電気ピース又は挿入片24を横片25と一体構造とした第2電気ピースの支持に関する問題であるとしても、このような一体構造とした場合の構造不安定の問題は、そのような構成を採用する際に当然配慮すべきことであることは上記1の(3)のとおりであり、本件考案1の構成に加えて、横片がスイッチの電極端子に接続する部位に電極端子を包む包囲部を有する本件考案2の構成とする場合に、その点に関する本件考案1の構成が殊更問題が生ずるように変更されるものと考える理由はない。
そうとすれば、本件考案2は、本件考案1と同様、引用例1〜6に記載された各考案及び審決の相違点判断Bに係る周知技術に基づき、当業者がきわめて容易考案することができたものと認められ、その旨の審決の判断(審決謄本8頁12行目〜14行目)に誤りはない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらないから、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担並びに上告及び上告受理申立てのための付加期間の指定につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条96条2項を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利
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