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関連審決 審判1999-35022
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  公然実施 /  きわめて容易 /  容易に想到 /  設計変更 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 165号 審決取消請求事件
原告 株式会社スター精機
訴訟代理人弁理士 伊藤研一
被告 株式会社ユーシン精機
訴訟代理人弁理士 玉田修三
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2001/12/25
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成11年審判第35022号事件について平成12年3月27日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 主文と同旨 2 被告 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は,原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,平成2年5月29日,考案の名称を「樹脂成形機」とする考案について,実用新案登録の出願をし,この出願の過程で,平成5年11月22日に明細書及び図面について手続補正をし(以下「本件補正」という。),平成6年6月29日の出願公告を経て,平成10年7月17日に実用新案登録を受けた,登録第2149899号(以下,「本件登録実用新案」といい,その考案そのものを「本件考案」という。)の実用新案権者である。
原告は,平成11年1月12日,本件登録実用新案の登録を無効とすることについて審判を請求し,特許庁は,これを平成11年審判第35022号事件として審理した結果,平成12年3月27日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,同年4月20日にその謄本を原告に送達した。
2 本件実用新案登録請求の範囲 「樹脂成形機の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において,該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ前記固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して電動サーボモータ用ドライバーボックスが前記成形品取出装置に取付けられていることを特徴とする樹脂成形機。」 3 審決の理由の要点 別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに,@本件考案は,本件実用新案登録出願前に公然実施された審判甲第1,第2号証(本訴甲第3,第4号証)等に示されるNT-600型取出機(以下「引用考案」という。)と,審判甲第4,第5号証(本訴甲第6,第7号証)に記載された技術を合わせて考察したとしても,それらの技術に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものとは認められない,A本件補正は,願書に添付した明細書及び図面(以下,これらを合わせて「当初明細書」という。)の要旨を変更するものではなく,補正の要件を満たす,として,原告主張の無効事由の存在をすべて否定したものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中,「1.本件の経緯」,「2.本件考案」「3.請求人の主張」及び「4.請求人適格」は認め,「5.上記(1)の主張についての検討」,「6.上記(2)の主張についての検討」及び「7.結び」は,争う。
審決は,本件考案と引用考案との相違点についての判断を誤った結果,本件考案きわめて容易考案をすることができたものとは認められないとして進歩性の判断を誤り(取消事由1),また,本件補正は,当初明細書の要旨を変更するものであるにもかかわらず,要旨変更があったとは認められないとして,補正についての判断を誤った(取消事由2),ものであり,これらの判断の誤りが,それぞれ,結論に影響を及ぼすことは明らかであるから,違法なものとして取り消されるべきである。
1 取消事由1(進歩性の判断の誤り) 審決は,「NT-600型取出機は,成形品取出チャック部を往復移動させるための樹脂成形機の長手方向に延びる軌道をもたない点ばかりでなく(判決注・以下「相違点1」という。),その走行レール下面に取り付けられた「制御Box」がエアモーターを作動させるためのエアの供給および遮断を行うエアバルブを開閉する制御ボックスである点で,成形品取出装置に取付けられているドライバボックスが電動サーボモータ用である本件考案と明確に相違しており(判決注・以下「相違点2」という。),・・・電動サーボモータ用ドライバーボックスを,積極的に,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取付けるということ(判決注・このことについての本件考案と引用考案(NT-600型取出機)との相違を「相違点3」という。)を簡単に想起できるものではない。」(審決書4頁24行〜36行)とした上で,「NT-600取出機に係る考案と甲第4号証(判決注・本訴甲第6号証)や甲第5号証(判決注・本訴甲第7号証)に記載された技術を合わせて考察したとしても,本件考案は,それらの技術に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものとは認められない。」(審決書5頁5行〜8行)と認定判断した。しかし,上記相違点1ないし3は,いずれも誤りであり,これらを前提にした容易想到性の判断も,誤りである。
(1) 相違点1についての判断の誤り 甲第6号証には,走行体9に樹脂成形機の長手方向に延びる軌道(前後フレーム10a,10b)を設け,その軌道をチャック部26を有する前後走行体16が往復移動する構造の成形品取出機が示されている。引用考案に甲第6号証記載のような上記軌道を設けることは,当業者の設計変更的事項にすぎず,したがって,きわめて容易になし得ることというべきである。
(2) 相違点2についての判断の誤り ア 甲第6号証には,成形品取出機において,走行体9及び前後走行体16を移動させる駆動部材として,位置,速度,方向等をインダクションモータ(サーボモータ)を使用して制御する技術が示されている。甲第7号証によれば,サーボモータ駆動制御装置は,本件出願前において公知の技術である。したがって,引用考案を「エアーモータ」仕様から「サーボモータ」仕様に変更し,その際に引用考案の制御Box内に収容されるものを甲第7号証記載のサーボモータ駆動制御装置,すなわち,電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは,当業者が行う設計変更的事項にすぎず,したがって,きわめて容易になし得ることというべきである。
イ 被告は,引用考案の制御Boxに収容されたエアーモータ駆動制御装置は,複雑な動きや正確な取出し動作を制御する必要がないので,軽量かつ簡易な構造であるのに対し,本件考案のサーボモータ駆動制御装置は,複雑な動きや正確な取出し動作の制御が要求されることから,重量物になるため,引用考案を「サーボモータ」仕様に変更した場合には,制御Boxをそのまま走行レールに取り付けることができず,床置き式にしなければならないと主張する。
しかし,引用考案を「サーボモータ」仕様に設計変更した場合に,制御Boxを床置き式にする必然性は全くない。そもそも,本件考案は,成形品取出装置に対する電動サーボモータ用ドライバーボックスの取付位置に関する技術事項を唯一の特徴とするものであって,本来床置き式にしなければならない重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを,いかにして成形品取出装置に取り付けるかを問題として,これを可能とする取付構造等を提供しようとするものではない。引用考案を「サーボモータ」仕様に変更した場合には,制御Boxを床置き式にしなければならないとする被告の主張は,重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを成形品取出装置に設けたことを主な特徴とする本件考案を,自ら否定するものにほかならない。
(3) 相違点3についての判断の誤り 引用考案は,その制御Boxが樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位した位置に設定して成形品取出装置に取り付けられており,さらに,固定金型ホルダに対してスライド可能で制御Boxを同ホルダの金型取付面に対して射出装置側に位置させることができる構造であり,(2)で述べたように制御Boxを電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは当業者が行う設計変更的事項に過ぎないのであるから,結果として,「電動サーボモータ用ドライバーボックスを,積極的に,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取付けるということ」(審決書4頁32行〜36行)は,きわめて容易に想到することができるものであるというべきである。
2 取消事由2(補正についての判断の誤り) 審決は,本件補正は,当初明細書の要旨を変更するものではない,と認定判断した。しかし,この判断は,誤りである。
(1) 当初明細書には,制御ボックス1は樹脂成形機本体のサーボモータをも駆動制御の対象とするものとして記載されていた。これに対し,本件補正後の明細書及び図面には,前記制御ボックス1に対応する電動サーボモータ用ドライバーボックスが樹脂成形機本体のサーボモータを駆動制御対象とすることについては,一切記載されていない。さらに,本件補正後の図面である第5図には,電動サーボモータ用ドライバーボックスからの信号経路につき,成形品取出装置に向かう実線矢印が示されている。同図は従来例を示すものではあるものの,「本考案の特徴は,電動サーボモータ用ドライバーボックスの設置位置に係り,これらを除く他の部材およびその構成は従来例と異ならないので,第1図ないし第3図において,第5図に対応する部分にはそれぞれ同一符号を付して,その詳しい説明は省略する。」(甲第1号証4欄18行〜23行)との記載からみて,本件考案に関しても電動サーボモータ用ドライバーボックス1からの信号出力は第5図の実線矢印と同様に成形品取出装置に出力され,樹脂成形機本体には出力されないと理解することができる。
上に述べたところによれば,本件補正は,当初明細書においては,樹脂成形機本体のサーボモータをも駆動制御の対象としていた制御ボックスを,成形品取出装置に搭載されたAC・DCサーボモータを制御対象とする駆動制御装置のみを収容する電動サーボモータ用ドライバーボックスに変更するものであるから,当初明細書の要旨を変更するものであるというべきである。
(2) 被告は,当初明細書記載の制御ボックスが成形品取出装置のみを制御対象としていると主張する。
しかしながら,被告の主張は,当初明細書における「特に,射出成形機に付設される制御ボックス」(甲第9号証1頁14行〜15行),「この種の樹脂成形機では,第5図に示すように,例えば,DCサーボモータ,ACサーボモータなどの電子制御を必要とする制御機器類が格納されている制御ボックス」(甲第9号証2頁1行〜4行)との記載に反するものであるから,失当である。
被告の反論の要点
審決の認定判断は正当であり,審決に原告主張の違法はない。
1 取消事由1(進歩性の判断の誤り)について (1) 相違点1の判断の誤りについて 引用考案には,樹脂成形機の長手方向に延びる軌道はない。これに甲第6号証記載のような軌道を設けることを,当業者の設計変更的事項とすることはできない。
(2) 相違点2の判断の誤りについて 原告は,NT-600型取出機の制御Boxを電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは当業者が行う設計変更的事項に過ぎない,と主張する。しかし,原告の主張は誤りである。
ア NT-600型取出機の制御Boxに収容されているエアモータ駆動制御装置と電動サーボモータ駆動制御装置とは同一視できない別種の装置であるから,前者を後者に代えることを,当業者が行う設計変更的技術の範囲内であるということはできない。
エアモータ駆動制御装置は,エアモータを単に作動させるためにエアの供給及び遮断を行うエアバルブの開閉を行うための装置であり,エアバルブの電磁ソレノイドを制御する電力と駆動制御信号を取り扱う装置であって,ノイズの影響を受けにくい電力のみを作動動力としており,導電線にも単なる電力しか流れていない。このことから,各種位置調整や速度調整はエアモータ自体の制御にはよらず,「株式会社スター精機のNT-600の取扱いの手引書」(甲第4号証)にあるように,取出機の各場所に設置されている調整クッション,調整ネジ,調整輪や調整ボルトで機械的に行われている(甲第4号証8頁〜9頁)。したがって,エアモータ駆動制御装置の主機能はエアバルブの電磁ソレノイドを制御する電力と駆動制御信号の電圧や電流を,単に調整し供給することにあるとみるべきである。
他方,電動サーボモータ駆動制御装置は,電動サーボモータを,これに取り付けられているエンコーダーを介して,直接制御するための電気的な信号を取り扱う装置であり,導電線には駆動用の電力以外にノイズの影響を受けやすい電気的なパルス信号も当然に流れている。
したがって,電動サーボモータ駆動制御装置と,エアモータ駆動制御装置とは同一視することができない別種の装置であるというべきである。
イ 電動サーボモータ駆動制御装置は,エアモータ駆動制御装置に比べ,後者の制御装置に収納されているコンデンサや抵抗などの電気素子を含めた基板,ターミナル,リレー及びそれらの配線に加え,回転速度や回転角(移動量)などを演算して電気的に制御するCPUを主とする電気制御回路やPWM発生回路などを備えた複雑で大きな構造物となり,総重量も相当大きくなっている。このため,電動サーボモータ駆動制御装置は,本件出願時においては,床置き式とされるのが常識だったのである。
これに対し,エアモータ駆動制御装置は,複雑かつ精緻な制御ができない軽量かつ簡単な構造からなり,床置き式にしなければならないほどの大きさや重量がないため,床置き式とはされず,引用考案のように,走行レールの下面に取り付けられていたのである。
このように,電動サーボモータ用ドライバーボックスを使用しようとすれば,床置き式となってしまうというのが,本件出願時の技術水準であったのであるから,床置き式でない引用考案の制御Boxを電動サーボモータ駆動制御装置収納用のものとすることは,きわめて容易になしうることではなかったというべきである。
(3) 相違点3についての判断の誤りについて 原告は,引用考案は,固定金型ホルダに対してスライド可能で,制御Boxをそのホルダの金型取付面に対して射出装置側に位置させることができる構造であり,結果として,「電動サーボモータ用ドライバーボックスを,積極的に,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取付けるということ」はきわめて容易に想到できる旨,主張する。
しかし,上記のようにスライド可能とする送りねじは,樹脂成形機に対して走行レールを取り付ける位置を設定するために,走行レールをノズルの芯方向(ノズルの芯方向とは,樹脂成形機の金型の型締め方向および型開放方向を意味する。)に移動させる目的を達成するためにのみ設けられているものであって,制御Boxを固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に位置させることを目的としているものではない。そして,NT-600型取出機全体をスライドさせた位置いかんによっては,制御Boxが,常時,固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置を取れないことも当然のことである。
したがって,仮に,上記制御Boxを,電動サーボモータ用ドライバーボックスに代え得たとしても,これを,積極的に,固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取り付けることを簡単に想起することはできない。
2 取消事由2(補正の適法性判断の誤り)について 原告は,本件補正は,当初明細書においては,樹脂成形機本体のサーボモータをも駆動制御の対象としていた制御ボックスを,成形品取出装置に搭載されたAC・DCサーボモータを制御対象とする駆動制御装置のみを収容する電動サーボモータ用ドライバーボックスに変更するものであって,当初明細書の要旨を変更するものである旨,主張する。
しかし,当初明細書には,「樹脂成形機本体に搭載され,少なくとも樹脂成形機本体の長手方向および幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出アームを往復移動させる成形品取出装置の,樹脂成形機における操作側,反操作側から選択されたいずれか一方側に変位した位置に,制御機器類を格納した制御ボックスが取付けられていることを特徴とする樹脂成形機」(甲第9号証・実用新案登録請求の範囲)と記載されており,そこでも,制御ボックスは成形品取出装置のみを制御対象としていることが明らかである。
当裁判所の判断
1 本件考案の概要 甲第1号証によれば,本件考案の出願明細書(以下「本件明細書」という。)の【考案の詳細な説明】欄には,次の記載があることが認められる(別紙1参照)。
[産業上の利用分野] 「本考案は樹脂成形機に係り,特に,電動サーボモータ用ドライバーボックスから成形品取出装置に収納されている電動サーボモータあるいは該サーボモータに付設されているエンコーダに対して,電気的に接続される導電線の長さを短縮し,かつ電動サーボモータ用ドライバーボックスの設置位置と前記導電線の配置位置を作業者の邪魔にならない位置に設定するための技術に関する。」(甲第1号証1欄12行〜2欄4行) [従来の技術] 「この種従来の樹脂成形機は,・・・成形品取出装置3に収容されているDCサーボモータもしくはACサーボモータ・・・およびこれらのサーボモータに付設されているエンコーダ・・・に対して,制御信号を出力する電動サーボモータ用ドライバーボックス1・・・と,この電動サーボモータ用ドライバーボックス1に制御信号を出力する制御ボックス1Aを,樹脂成形機2近傍の床面に設置した構成になっている。
しかし,電動サーボモータ用ドライバーボックス1が樹脂成形機2近傍の床面に設置された床置き式の構造では,電動サーボモータ用ドライバーボックス1から成形品取出装置3に収容されているAC,DCサーボモータやエンコーダまでの距離が長くなり,当然,電動サーボモータ用ドライバーボックス1からAC,DCサーボモータやエンコーダに制御信号を出力する導電線EWの長さが長くなる。
このように,導電線EWの長さが長くなるとアンテナ作用が増大し,AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が大きくなって成形品取出装置3の誤動作を招き,成形品の取出精度・・を低下させる要因になている。
一方,導電線EWの通電量は大きいので大きい横断面積が必要になる。しかも,導電線EWの必要数量が多い。・・・つまり,寸法の長い多数の導電線EWが必要になる。したがって,イニシャルコストが高くなり経済的に不利である。
他方,電動サーボモータ用ドライバーボックス1が樹脂成形機2近傍の床面に設置された床置き式の構造では,導電線EWの一部が床面に配線されることになる。このように導電線EWの一部が床面に配線されると,作業者の足元に干渉するので邪魔になり作業環境を悪くするとともに,干渉により導電線EWが切断される虞れを有している。」(2欄5行〜3欄34行) [考案が解決しようとする課題] 「解決しようとする問題点は,導電線の長さが長いために,アンテナ作用が増大し,AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が高くなって,誤動作を招き,成形品の取出精度を低下させる点,横断面積が大きく,かつ寸法の長い多数の導電線を必要とするので,イニシャルコストが高くなり経済的に不利な点および作業者の足元に干渉するので邪魔になり,作業性を低下させる一因になるとともに,干渉により導電線が切断する点などの諸点である。」(3欄35行〜44行) [問題を解決するための手段] 「本考案は,樹脂成形機の長手方向及び幅方向に延びる軌道に沿って成形品取出チャック部を往復移動させる成形品取出装置が当該樹脂成形機の固定金型ホルダに搭載された樹脂成形機において,該樹脂成形機の前記長手方向の中心軸線より前記幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ前記固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して電動サーボモータ用ドライバモータボックスが前記成形品取出装置に取付けられていることを特徴とし,ノイズの影響度を小さくして誤動作を避け,成形品の取出制度(判決中・精度の誤記と認める。)を向上させ,イニシャルコストを低くするとともに,作業者の足元への干渉をなくして作業環境を良くし,干渉による導電線の切断を防止する目的を達成した。」(3欄45行〜4欄8行) [作用] 「本考案によれば,導電線の長さを短縮できる。その結果,AC,DCサーボモータやエンコーダに対するノイズの影響度が小さくなる。また,導電線が床面に配線されなくなるので,作業者の足元への干渉がなくなる。さらに,成形品取出チャック部の往復運動に干渉しない。」(4欄9行〜14行) 本件明細書の上記認定の記載によれば,本件考案は,樹脂成形機の成形品取出装置内に収容されて,同装置の成形品取出チャック部を往復移動させる電動サーボモータを制御する電動サーボモータ用ドライバーボックスの位置の設定に関する考案であり,従来技術においては,これを床面に設置していたのを,成形品取出装置の近傍の,成形品取出チャック部の往復移動に干渉しない位置に配置したものであり,これによって,電動サーボモータと電動サーボモータ用ドライバーボックスをつなぐ導電線の長さを短縮し,電動サーボモータに対するノイズの影響度を小さくして誤動作を防止するとともに,寸法の長い多数の導電線の使用を不要としてイニシャルコストを低減し,かつ,導電線を床面に配置しないことを通じて,作業者の足元への干渉をなくして作業環境を良くし,干渉による導電線の切断を防止することを目的とした考案であると認められる。本件考案に上記以外の目的があることを意味する記載は,本件明細書に存在しない(甲第1号証)。
2 引用考案(NT-600型取出機)の概要 (1) 引用考案であるNT-600型取出機が,本件実用新案登録出願前に日本国内において販売され,公然実施されたことは,当事者間に争いがない。
甲第3号証(原告製造販売に係るNT-600型取出機の製品カタログ)及び甲第4号証(NT-600型取出機の取扱手引書)中の記載及び写真,図面によれば,引用考案は,本件考案と同じく,樹脂成形機上に搭載される成形品取出装置に関する考案であり,その取扱手引書(甲第4号証)中には,次の記載があることが認められる(別紙2参照)。
「2-1 スライドベース これは本取出機を取付架台を通じて成形機に据付けるためのものです。
この取付にはM12CAPボルトを4本使用して行ないます。この上面において,走行レールAと1体構造をもっている本体部とスライド結合されている。」(甲第4号証4頁2行〜5行) 「2-2 走行レール これは走行体を正面より向って左右方向にスライドさせるためのもので上面に平面受けのレールが前端と後端に設けてあり後端レールの前側には走行駆動モータのピニオンに対してラックギヤが切られています。又,レール内部の下方向には走行体の安定性をもたせるため,丸ガイドが設置されており,これにより走行体の前後方向,上下方向の制限を行ないます。」(4頁6行〜10行) 「2-3 走行体 これは走行レールの上を左右に横行するボデー部分で,これに前後方向,上下方向の各作動機構が全て装着されています。又,内部には各作動用のエアバルブがセットされており,同じく各動作速度調整用スピコンも取付けられています。又,これらのバルブおよび各種リミットスイッチ等の電気配線もこの中の端子台により行ないます。そして走行体の側面部に走行駆動用エアモーターが固定されています。」(4頁11行〜15行) 「2-4 走行用エアモーター これは走行体側面に固定されて走行体を左右方向に走行動作させるためのもので,自社製品です。このモータはφ30シリンダが3気筒構造で作られています。このとき,エア圧力が5kg/cm2時に走行方向に対して約20kgの推力を発生します。」(4頁16行〜19行) 「2-5 上下ユニット これは走行体より前後ガイドを通じてスライド構造となっています。そして,この先端には標準装備のスプールチャックが取付いております。この上下のシリンダは標準機でφ20600ST,姿勢付きユニットでφ25-600STとなっており両者間で下降位置調整輪の構造等が若干相違しております。」(4頁20行〜23行) 「2-6 制御盤および操作パネル これは取出機の制御機能を全て含みます。又,操作側では走行レールの下面,反操作側では走行レールの取出側端面にそれぞれ下方向に若干の角度振りの可能な形で取付けます。」(4頁24行〜26行) 「2-19 スタンダードチャック これは標準機、姿勢付オプション機を問わずに標準装備されています。
但し、標準機の場合はNP型時に使用したものを、姿勢オプション機については新規開発したものを装着します。別に製品掴みの必要な場合はミニシリンダによる掴み、吸着盤によるパット吸着とそれぞれを併用して行なう事もできるでしょう。」(5頁16行〜19行) 「3-1 NT-600型取出機の成形機への取付方法を図3を使用して詳細説明します。
これはFS・75を例にして示してあります。
先ず取付架台を成形機固定盤上に据付けます。これはM10CAPボルトを4本使用するのを原則とします。
又、この時固定盤上に安全装置等細工の施してある機械については、事前に現場確認により架台を作成します。これは将来的には兼用型で使用出来るものを計画して行きます。(現状では鋳造品1種類を使用中) この取出機は成形機のノズル芯と、取出機のスライドベースの左右芯を合せます。そして次に、取出機を据付ますが、この時にはM12CAPボルトにて据付けます。」(6頁2行〜8行) 「8 制御部の説明 NT-600の制御は走行レールの下面に取付けられた制御Boxと同じく,操作パネルにおいて行ないます。
制御Boxには,電源機能とプリント基板,それに自動モードSWの他,調整の必要なタイマのツマミ等が含まれています。又,操作パネル面には,自動,手動時に必要な操作スイッチと成形機よりの信号,成形機の信号,内部のリミットスイッチの状態表示,そして各種SOLの動作状態の表示のそれぞれの機能を含めてあります。」(12頁1行〜5行) (2) 甲第4号証中の上記の記載及び甲第3,第4号証中の写真,図面によれば,引用考案については,次のようにいうことができる。
ア スライドベースは、成形品取出機本体部を取付架台を介して樹脂成形機に据え付けるためのもので、樹脂成形機の長手方向に延びる軌道を構成している(甲第3号証の1枚目掲載の写真及び2枚目記載の外形寸法図、甲第4号証の1頁記載の図面及び6頁記載の図-3参照)。
イ スライドベース上にはスライドベース送りネジによって上記アの軌道を前後方向(長手方向)に往復移動する成形品取出機本体部が載置されている(甲第4号証6頁記載の図-3参照)。
ウ 成形品取出機本体部には、走行レールが取り付けられ,走行レールは,取出機本体部が前後方向に往復移動するのに伴って往復移動する。
エ 走行レールは、その上を左右方向(幅方向。上記長手方向と直交し、かつ上下方向と直交する方向)に往復移動する走行体を有し、その走行体には前後ガイドによってスライド構造とされた上下ユニット、すなわち、前後方向に往復移動する上下ユニットが装備されている(甲第4号証の3頁記載の図面参照)。
オ 上下ユニットは、その先端に成形品取出チャック部を設け、そのチャック部は,上下のシリンダで上下に往復移動する。
カ 走行体は、走行用エアモータで左右方向に往復移動され、その内部には上記前後ガイドや上下のシリンダによる成形品取出チャック部の前後及び上下方向への往復移動を調整するエアバルブがセットされている。
キ 制御Boxは,走行レールの下面に,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側に変位した位置に設定されて取付けられている(甲第3号証の1枚目掲載の写真参照)。
ク 制御Boxの「制御盤および操作パネル」は取出機の制御機能をすべて含んでいる。
以上のとおり,NT-600型取出機(引用考案)は,取出機本体部がスライドベース上を前後方向(長手方向)に往復移動するのに伴って,結果的に,走行レール及び成形品取出チャック部も同じように往復移動するものであること,走行体を左右方向(幅方向)に,上下ユニットを前後方向(長手方向)に,成形品取出チャック部を上下方向に,それぞれ往復移動させ,これらの往復移動を組み合わせることにより同チャック部を三次元的に移動させるよう構成していること,制御Boxには,走行体を左右方向(幅方向)に往復移動させる走行用エアモータ及び成形品取出チャック部を前後方向(長手方向)及び上下方向へ往復移動させる前後ガイドや上下のシリンダを調整するエアバルブを制御するための制御機器を収容していること,制御Boxは樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側に変位した位置に設定されて取り付けられていること,走行レールが前後方向(長手方向)に往復移動し,その移動した位置によっては制御Boxが固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った場所に位置されることがあること,が認められる。
3 取消事由1(進歩性判断の誤り)について 審決は,「NT-600取出機に係る考案と甲第4号証(判決注・本訴甲第6号証)や甲第5号証(判決注・本訴甲第7号証)に記載された技術を合わせて考察したとしても,本件考案は,それらの技術に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものとは認められない。」(審決書5頁5行〜8行)としている。以下,この判断について検討する。
(1) 相違点2について ア 甲第6号証によれば,特開昭58-110232号公報には,次の記載があることが認められる(別紙3参照)。
「本発明は射出成形機から射出成型品を自動的に取出す成型品自動取出装置に関するものである。」(甲第6号証2枚目左上欄14行〜16行) 「図中本体フレーム1は射出成形機2に固定される架台部3と,図示左右方向へ延出する走行フレーム4とが一体形成され,該走行フレーム4長手方向には逆テーパ状の一対の左右レール5a・5bが,また,一方レール5a(判決注・「5b」の誤りと認める。別紙3の第2図参照)側にはラックギヤ6が夫々固着されている。」(2枚目右下欄1行〜6行) 「走行体9は前記左右レール5a・5b上を往復移動可能に嵌装されるものであり,該左右レール5a・5bの長手方向と直行する前後方向へ延出する一対の前後フレーム10a・10bが一体に形成され,該前後フレーム10a・10b上には逆テーパ状からなる一対の前後レール11a・11bが・・・固着されている。」(2枚目右下欄11行〜20行) 「前記走行体9には前記ラック・ギヤ6に噛合するギヤ14を一方回転子端に装着してなるインダクションモータ15が装着され,該インダクションモータ15の回転駆動に従って走行体9は左右方向へ往復移動される。
前記前後走行体16は前記前後レール11a・11b上を前後方向へ往復移動可能に嵌装され,該前後走行体16には前後方向と直行する上下方向へロッドを往復動させる上下シリンダ17が固着されると共に,該上下シリンダ17両側においてロッドと平行状に上下動するガイド・ロッド18a・18bが嵌装されている。
インダクションモータ19は前記走行体16に固着され,・・・インダクションモータ19の回転駆動力をスクリュー軸23に付与し,スクリュー軸23の回転に従って前後走行体16を前後方向へ往復移動させるものである。
チャック部26は前記上下シリンダ17のロッド,並びにガイド・ロッド18a・18bの下端に固着されてなる姿勢制御部材27を介して取付けられるチャックプレート28と,該チャックプレート28に固着され成型品Pを保持するエア・シリンダ,若しくは吸盤等の保持部材29とからなり,・・・。」(3枚目左上欄1行〜右上欄10行) 「第5図は成型品自動取出装置の制御回路を示すブロック図であり,・・・」(3枚目右上欄15行〜16行) 「制御回路51・52は正転信号L,逆転信号Mに基づいてインダクションモータ15・19を可逆運転すると共に,速度指示信号Nに基づいてインダクションモータ15・19に供給される交流電圧を電圧制御し,走行体9,並びに前後走行体16の移動速度を加減速すると共に,一致信号Nに基づいてインダクションモータ15・19を停止制御し,走行体9,並びに前後走行体16を所望の停止位置で停止させる。」(4枚目右上欄16行〜左下欄4行) 特開昭58-110232号公報中の上記認定の記載によると,同公報に記載された射出成型品自動取出装置は,射出成形機2の上に架台部3及び走行フレーム4を設け,この走行フレーム4の上に走行体9を設け,走行体9はインダクションモータ15によって走行フレーム4上を左右方向に往復移動し,また,走行体9には前後フレーム10a・10bが設けられ,これらの上を前後走行体16がインダクションモータ19によって前後方向に往復移動し,チャック部26が前後走行体16に固着された上下シリンダ17によって上下方向に往復移動する取出機であり,これらインダクションモータ15,19は制御装置により制御されているということができる。
イ 甲第12号証(「精密小形モータの基礎と応用」,昭和54年7月10日第4版,総合電子出版社発行)には,「人間が手で操作していたことを,エネルギ伝達性のすぐれた電気エネルギを使って機械エネルギに変えて操作するものにサーボモータがある。このサーボモータと検出,比較,判断などを行なう他の電気制御装置を組み合わせることによって自動化が行なわれ,この電気制御のうち位置制御はサーボ機構として最も一般的に利用されているものである。このサーボ機構の操作器としてのサーボモータには,閉ループで使われるマイクロモータ,コアレスモータ,誘導モータなどの非同期モータと,開ループで使われるステップモータなどがある。」(191頁)との記載があること,甲第7号証(「ブラシレスサーボモータの基礎と応用」,昭和62年3月30日第2版,総合電子出版社発行)には,ブラシレスサーボモータの駆動装置が記載されていることが認められる。上記各文献のこれらの記載によれば,インダクションモータ,すなわち,誘導モータとは,電動サーボモータのことであることは技術常識であり,かつ電動サーボモータの駆動装置は,本件出願前において,周知であったということができる。
ウ 以上の認定によれば,甲第6号証記載の取出機と,NT-600型取出機(引用考案)とは,樹脂成形品を取り出すという利用分野において一致し,また,三つの装置要素,すなわち,甲第6号証記載の取出機に即して表現するならば,走行体9,前後走行体16及びチャック部26を左右,前後及び上下方向のそれぞれに往復移動させることにより,結果的に,チャック部26を三次元的に移動させるよう構成しているという構造上の類似性を有するものであるから,NT-600型取出機の,走行体を往復移動させる走行用エアモータに代えて,甲第6号証記載の取出機の走行体9を往復移動させる電動サーボモータであるインダクションモータ15に変更し,これに伴い,制御Boxに,このインダクションモータを制御する機能を有する制御装置を収容させ,この制御Boxを電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは,それを困難とする何か特別な事情がない限り,きわめて容易になし得ることというべきである。
被告は,エアモータ駆動制御装置と電動サーボモータ駆動制御装置とは同一視できない別種の装置であるので,前者を後者に代えることは当業者が行う設計変更的技術の範囲内とはいえない旨主張する。しかしながら,この主張に理由がないことは,以上に説示したところから明らかというべきである。
エ 被告は,電動サーボモータ駆動制御装置はエアモータ駆動制御装置に比べて複雑な機構であって大きく,総重量が相当大きくなるため,本件出願時の技術水準では,床置き式にせざるを得ないから,成形品取出機の走行レールの下面に取り付けられた引用考案の制御Boxを電動サーボモータ駆動制御装置に置き換えることはできない旨,主張する。
確かに,もし,電動サーボモータ駆動制御装置は,その総重量の大きさのゆえに,床置き式にせざるを得ない,とするのが,本件出願当時の技術水準であり,技術常識であったとするならば,そのような状況の下で,引用考案におけるエアーモータ駆動装置を電動サーボモータ駆動制御装置に置き換えることを,極めて容易になし得たこととすることはできないであろう。しかしながら,被告は,本訴においては上記のように主張しているものの,出願に当たっては,そのようなことは何ら述べていないこと,すなわち,本件考案は,成形品取出装置の近接した位置に電動サーボモータ用ドライバーボックスを取り付けるという取付位置に関する事項のみをその技術事項とするものであって,重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを取り付けることの困難性の克服を技術課題とするものでも,その技術課題を解決するための取付構造を開示するものでもないことが明らかである(甲第1号証)。換言すれば,本件の出願は,重量物である電動サーボモータ用ドライバーボックスを,成形品取出装置に近接して設置することに格別困難はないことを当然の前提としてなされているのである。
このような形で出願して登録を認められた被告が,当該登録を維持するためのものとして上記のような主張をすることは,著しく信義に反することであり,このような主張をすること自体,許されるべきことではない,とする立場も十分に考えられるところである。
被告が上記のように主張すること自体は許されるとの立場に立ったとしても,被告が上記の形で出願したことに変わりはなく,被告がこのような形で出願したという事実自体,被告の上記主張の真実性に強い疑いを投げかけるものと考えるべきであるから,明確な証拠により裏付けられない限り,被告の上記主張を真実とすることはできないものというべきである。 もし,被告の上記主張が明確な証拠により裏付けられるならば,引用考案におけるエアーモータ駆動制御装置を電動サーボモータ駆動制御装置に置き換えることをきわめて容易になし得たこととすることはできない,ということになるであろう(そのとき,電動サーボモータ駆動制御装置は床置き式にしなければならないという技術水準の下で,果して,当業者は,本件明細書の記載によって,本件考案を実施することができるのか,という疑問,すなわち,本件明細書の記載に要件に欠けることはなかったか,という疑問が生じるかどうかは,別の事柄である。)。
いずれにせよ,審決は,これらの点につき,何らの判断も示していない。
被告の主張は採用することができない。
オ 以上によれば,審決が,相違点2について,きわめて容易になし得ることではないとしたのは誤りであるというべきである。
(2) 相違点1について 引用考案と甲第6号証記載の取出機とが利用分野において一致し,これらの構造上の類似性が高いことは,(1)で説示したとおりであるから,引用考案における前後ガイドによる上下ユニットの前後方向への往復移動に代えて,甲第6号証記載の取出機の走行体9に設けられた前後フレーム10a・10b上を前後走行体16が往復移動する構成とすることは,きわめて容易になし得たことというべきである。
審決が,相違点1について,きわめて容易になし得ないことであるとしたのは,誤りというべきである。
(3) 相違点3についての判断について 審決は,「甲第1号証(判決注・本訴甲第3号証)や甲第2号証(判決注・本訴甲第4号証)に記載された説明を参酌しながら上記NT-600取出機の構造を検討して当業者が考察したとしても,導電線が長くなることによって生じるノイズの影響や,配線コストの増加等を回避するため,電動サーボモータ用ドライバーボックスを,積極的に,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定して成形品取出装置に取付けるということを簡単に想起できるものではない。」(審決書4頁29行〜36行)としている。
しかしながら,NT-600型取出機(引用考案)は,その制御Boxを樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位させており,かつ,固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置に設定することが可能なものである。そして,(1)で説示したとおり,引用考案の制御Boxを,電動サーボモータ用ドライバーボックスとすることは,甲第6号証を適用することによって,きわめて容易になしうる事項である。この場合,電動サーボモータ用ドライバーボックスは,いずれにせよ成形品取出装置のどこかには取り付けられなければならないのであるから,その具体的な取付位置をどこにするかは,格別の特徴のある位置,あるいは電動サーボモータ用ドライバーボックスが成型品取出チャック部の往復移動に干渉するなど,特段の不都合を生む位置でない限り,当業者において適宜に選択し得る設計事項にすぎないものというべきである。そして,本件において,成形品取出装置に取り付けるべき位置として,樹脂成形機の長手方向の中心軸線より幅方向の一方側と他方側から選択されたいずれかに変位し,かつ固定金型ホルダの金型取付面より射出装置側に偏った位置を,格別の特徴のある位置とすることができないことは,明らかであり,また,この位置を,引用考案及び甲第6号証に基づいて,電動サーボモータ用ドライバーボックスを成形品取出装置に取り付けるべき位置として,不都合とするような事情は,本件全証拠を検討しても,何ら見いだすことができない。そうである以上,上記の位置を取付位置とすることは,きわめて容易になし得ることであるというべきである。
(4) その他 審決は,引用考案は「電動サーボモータを作動させる場合のように,導電線が長くなることによって生じるノイズの影響や,配線コストの増加等の心配をする必要は特にないものである。」(審決書4頁20行〜22行)として,引用考案に,導電線が長くなることによって生じるノイズの影響や,配線コストの増加等を回避する,という課題がないことを,容易想到性を否定する根拠としている。
しかしながら,電動サーボモータを作動させる場合には,「導電線が長くなることによって生じるノイズの影響や,配線コストの増加等の心配」があるというのは,電動サーボモータ用ドライバーボックスを床置き式で用いるときのことであり,電動サーボモータ用ドライバーボックスを床置き式で用いようとすれば上記のような心配が発生するのに対し,引用考案には上記の心配がないということになれば,その事実は,むしろ,電動サーボモータ用ドライバーボックスを作動させるに当たっては,電動サーボモータ用ドライバーボックスを床置き式で用いることをやめて,引用考案の構成のようにして用いようとする動機付けとなるはずであり,その限度で,逆に,本件考案の容易想到性を根拠付ける資料となるものというべきである。審決の上記説示を合理的なものとして理解することはできない。
審決のいわんとするところが,引用考案を出発点にして考えた場合,同考案には上記課題がないのであるから,これを,あえて,そのような課題を伴うものとされてきた電動サーボモータを作動させるものに換えようとする動機付けが発生しにくい,ということであるとしても,それは,誤りである。引用考案で用いられているエアーモータと電動サーボモータとを比較した場合,後者に前者にない特色があることは明らかであるから,前者に換えて後者を用いようとする発想は,ごく自然に生まれてくるものということができるからである。
上記技術課題の有無を容易想到性を否定する根拠とした審決の判断は,誤りというべきである。
(5) まとめ 以上述べたところによれば,本件考案進歩性を肯定した審決の認定判断は誤りであるというべきであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは,明らかである。原告主張の取消事由1は,理由がある。
以上のとおりであるから,審決は,その余の点のいかんにかかわらず,違法
なものとして,取消しを免れない。
よって,審決を取り消すこととし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 阿部正幸
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