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関連審決 審判1999-10971
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  補正 /  進歩性(3条2項) /  きわめて容易 /  実施例 /  容易に想到 /  特段の事情 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 109号 審決取消請求事件
原告 郡山チップ工業株式会社
訴訟代理人弁理士 清水定信
被告 特許庁長官及川耕造
指定代理人 酒井進
同 長屋 陽二郎
同 大野克人
同 宮川久成
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/02/27
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第10971号事件について平成13年1月25日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成5年1月27日、名称を「スクリューリング釘」とする考案につき、実用新案登録出願をした(実願平5-5793号)が、平成11年6月8日に拒絶査定を受けたので、同年7月7日、これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は、同請求を平成11年審判第10971号事件として審理した上、
平成13年1月25日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年2月19日、原告に送達された。
2 本願考案の要旨 胴部にスクリュー加工とリング加工とが施され、前記胴部は尖端に向けて縮小するテーパー状に形成されたことを特徴とするスクリューリング釘。
3 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本願考案は、実願昭52-126783号(実開昭54-52562号)のマイクロフィルム(甲第2号証、以下「引用文献1」という。)に記載された考案(以下「引用考案1」という。)及び従来周知の技術事項に基づき当業者がきわめて容易考案し得たものと認められるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決の理由中、本願考案の要旨の認定、引用文献1の記載事項の認定、本願考案と引用考案1との一致点及び相違点の各認定は認める。
審決は、本願考案と引用考案1との相違点についての判断を誤り(取消事由)、本願考案が、引用考案1及び従来周知の技術事項に基づき当業者がきわめて容易考案し得たとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本願考案と引用考案1との相違点についての判断の誤り) (1) 審決は、本願考案と引用考案1との相違点として認定した「本願考案では、胴部が『尖端に向けて縮小するテーパー状に形成されている』のに対して、引用考案(注、「引用考案1」の誤記と認められる。)では、その点が不明である点」(審決謄本2頁31行目〜32行目)につき、「本願考案は、相違点に係る本願考案の構成により、釘の胴部の多くの区域で木の繊維にからみつくようにして釘の引抜耐力を向上させるものであるが、胴部を『尖端に向けて縮小するテーパー状に形成』することにより、釘の胴部の多くの区域で木の繊維にからみつくようにして釘の引抜耐力を向上させるような技術思想は、従来より、木ねじ等において広く採用されている周知の事項と認められる・・・引用考案1において、引用文献1の記載『ガイド部の外径をスクリューリング部の最大外径に対して2/3以下とした』等からみて、従来周知の技術思想を適用できない特段の事情があるとも認められない。してみると、この相違点に係る本願考案の構成は、引用考案1に従来周知の技術思想を適用することにより当業者がきわめて容易に想到できたものといわざるを得ない」(同2頁34行目〜3頁10行目)と判断し、上記周知事項の例として、実願平1-29344号(実開平2-121611号)のマイクロフィルム(甲第3号証、以下「周知例1」という。)及び実願昭58-121009号(実開昭60-28611号)のマイクロフィルム(甲第4号証、以下「周知例2」という。)を挙げた(同3頁2行目〜4行目)。
しかしながら、以下のとおり、審決の上記判断は誤りである。
(2) 引用文献1(甲第2号証)の「従来一般には、釘の引抜耐力を大きくするためスクリュー釘及びリング釘が使用されている。スクリュー釘は打込む際に自動的に姿勢を修正する機能を有しているが、引抜時の抵抗、即ち引抜耐力が小さい欠点がある。一方、リング釘の引抜耐力はスクリュー釘に比較して若干小さいが、打込抵抗が大きい欠点がある。本考案の目的は、スクリュー釘よりも打込抵抗が小さく、かつリング釘よりも引抜耐力が大きい釘を提供することを目的とする。」(昭和53年1月9日付け手続補正書による補正後の1頁10行目〜2頁1行目)、
「第3図(a)には通常使用されているスクリュー釘9が示され、第3図(b)には通常使用されているリング釘10が示され、第3図(c)には本考案による釘1が示されている」(3頁8行目〜11行目)との各記載及び第3図(a)〜(c)の図示に照らして、引用考案1のスクリューリング釘は、スクリュー釘よりも打込み抵抗が小さく、かつリング釘よりも引抜耐力が大きい釘を提供することを目的とするものであり、その胴部は全長にわたり同一径に構成されたものを前提としている。
しかしながら、引用考案1のように、胴部が全長にわたり同一径であるスクリューリング釘においては、打ち込むと、尖端付近が空けた穴の内壁を胴部の途中ないし基端からさらえた状態(打ち込んだ穴の部分の木の繊維が切断された状態)で打ち込まれるので、木の繊維が胴部の尖端に近い部分にしかからまず、胴部の全長にわたってからまない結果、尖端に近い部分しか引抜きに対する抵抗力を発揮せず、引抜耐力が低いという欠点があった。
そこで、本願考案は、この欠点を解決することを技術課題として、「胴部は尖端に向けて縮小するテーパー状に形成された」との構成を採用したものである。
このような技術課題は、引用文献1(甲第2号証)並びに審決が挙げた周知例1(甲第3号証)及び同2(甲第4号証)に記載されておらず、当業者がきわめて容易に想到することのできるものではない。
(3) 審決は、周知例1、2を挙げて、胴部を尖端に向けて縮小するテーパー状に形成することにより、釘の胴部の多くの区域で木の繊維にからみつくようにして、釘の引抜耐力を向上させるとの技術思想が、従来周知の事項であるとした。
しかしながら、周知例1、2が示す従来周知の事項は、審決が認めるとおり、「ねじ込み」によって用いられる木ねじ等に係る技術思想であって、「打込み」によって使用するスクリューリング釘に係る技術思想を示すものではない。
「打込み」によって使用するスクリューリング釘においては、従来、胴部を尖端に向けて縮小するテーパー状に形成すると引抜耐力が低下すると考えられており、すべて胴部を全長にわたり同一径に構成していた。なお、「打込み」によって使用するねじ釘は、従来から胴部を尖端に向けて縮小するテーパー状に形成するものがあったが、これは、打込み時の貫入抵抗を小さくするためである。
上記のような技術的背景の下において、「打込み」によって使用するスクリューリング釘の胴部を、尖端に向けて縮小するテーパー状にすることは、当業者がきわめて容易に想到することができるものではない。
(4) 兼松日産農林株式会社が、本願考案実施例に係る実施品と従来例に係る実施品との引抜耐力の比較試験(以下「本件試験」という。)をした結果は、同会社作成の試験報告書(甲第8号証)に記載されたとおりである。
同試験報告書記載の「郡山チップ工業製65oスクリュウリング釘」(以下「スクリューリング釘A」という。)は、本願明細書(甲第5号証)の図1に示された本願考案実施例に係る実施品であって、全長65o、線径(頭部の直下)3.25o、同(中間点)3.02o、同(尖端部の手前)2.96oであり、また、同試験報告書記載の「他社製65oスクリング」(以下「スクリューリング釘B」という。)は、本願明細書の図3に示された従来例に係る実施品であって、全長65o、線径3.1oであるところ、本件試験の結果によれば、スクリューリング釘Aの引抜耐力は、栂材において平均221.7s、雑木(楢材)において平均287.1sであり、他方、スクリューリング釘Bの引抜耐力は、栂材において平均84.7s、雑木(楢材)において平均193.4sであったから、スクリューリング釘Aの引抜耐力がスクリューリング釘Bの引抜耐力に比べ、極めて大きいことが明らかである。なお、同比較試験における引き抜いた釘の状況を撮影した写真(甲第9号証)により、スクリューリング釘Aの胴部には、スクリューリング釘Bに比べ多くの木の繊維がからみついていることが認められるが、このことからも、
本願考案の実施品であるスクリューリング釘Aの引抜耐力が従来品であるスクリューリング釘Bに比べてはるかに大きいことが理解される。
審決は、本願考案に係る、従来例のものと比較して引抜耐力が著しく大きいという顕著な効果を看過して、本願考案が当業者においてきわめて容易に想到することができるとの判断をしたものであって、その判断が誤りであることは明白である。
被告の反論
1 審決の認定及び判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は理由がない。
2 取消事由(本願考案と引用考案1との相違点についての判断の誤り)について (1) 原告は、胴部が全長にわたり同一径であるスクリューリング釘の引抜耐力が低いという欠点を解決しようとする本願考案の技術課題が、引用文献に記載されていないと主張するが、以下のとおり、誤りである。
すなわち、引用文献1(甲第2号証)には、「本考案の目的は、スクリュー釘よりも打込抵抗が小さく、かつリング釘よりも引抜耐力が大きい釘を提供することを目的とする。この目的を達成するための本考案はスクリュー部、スクリューリング部、ガイド部及び尖鋭状の先端部を有していることを特徴とする」(1頁18行目〜2頁4行目)、「スクリューリング部4の外径はスクリュー部3の外径に等しく、このスクリュー部3、スクリューリング部4およびガイド部5には軸方向に対してリード角の大きい斜めになった多数の螺旋条7が付加されている。ガイド部5の外径はスクリューリング部4の最大外径よりも小さく、最小外径よりも若干大きくなるように設定されている。ガイド部5の外径をスクリューリング部4の最大外径に対して2/3以下とすることが望ましく、引抜耐力を向上させることにつながる。」(2頁11行目〜3頁1行目)との各記載がある。
これらの記載によれば、引用考案1のスクリューリング釘は、本願考案と同様、引抜耐力を大きくすることを目的とするものであって、そのために、スクリュー部、スクリューリング部、ガイド部及び尖鋭状の先端部を有しているところ、
ガイド部は、スクリューリング部とは異なるものの、螺旋条(スクリュー)が施されており、引抜耐力に寄与する部分である。そして、引用文献1は、そのガイド部の外径をスクリューリング部の最大外径の三分の二以下とすることが引抜耐力の向上につながるとしているのであるから、引用文献1では、スクリューリング釘において、引抜耐力を大きくするために、胴部各部分の外径に大小関係を設けることが検討されているのである。したがって、本願考案の技術課題が引用文献に記載されていないとする原告の主張は誤りである。
また、原告は、本願考案の上記技術課題が周知例1、2に記載されていないとも主張するが、固着要素の胴部にねじを施し、これを回転させながら木材中に押し込めば、木の繊維を切断することが少なく、ねじ部分に木の繊維がからみついて引抜耐力を大きくすることは、当業者にとって技術常識であり、周知例1、2が開示する「釘」のねじ部分がこのような作用効果を奏することは明白である。したがって、本願考案の上記技術課題は、周知例1、2から、当然に想起し得ることである。
(2) 原告は、周知例1、2が示す従来周知の事項は、「ねじ込み」によって用いられる木ねじ等に係る技術思想であって、「打込み」によって使用するスクリューリング釘に係る技術思想を示すものではないから、スクリューリング釘の胴部を、尖端に向けて縮小するテーパー状にすることには、当業者がきわめて容易に想到することはできないと主張する。
しかしながら、ねじに係る技術分野と釘に係る技術分野とは極めて近接するものであるのみならず、周知例1(甲第3号証)の考案の名称が「隠しねじ釘」であり、周知例2(甲第4号証)の考案の名称が「セメント系外壁材の固定釘」であるとおり、これらは釘に係る技術分野に属するものである。
さらに、実願昭63-93213号(実開平2-19919号)のマイクロフィルム(乙第1号証)及び特開昭61-201910号公報(乙第2号証)に、頭部上面にドライバー等のねじ込み工具が係合する係合溝を設けたスクリュー釘が開示されていることによって明らかであるとおり、スクリュー釘では、「打込み」により使用される外に、「ねじ込み」による使用も従来からの慣用方法である。また、スクリュー釘及びスクリューリング釘は、その打込みに際して、胴部に施されたスクリューの機能によりその軸線を中心として回転し、その結果、木の繊維がからみつくことによって引抜耐力を向上させることが図られているのである。
そして、周知例1、2に開示された「釘」がスクリューに相当するねじを有する以上、スクリューリング釘と共通するものであるから、周知例1、2が示す従来周知の事項を、「打込み」によって使用するスクリューリング釘の胴部を形成するに際して適用することを妨げる事由は存在しない。
したがって、本願考案の構成は、引用考案1に周知事項を適用することにより、当業者がきわめて容易に想到することができたものである。
(3) 本件試験に係る試験報告書(甲第8号証)には、スクリューリング釘Aの胴部径の寸法、特に、テーパーの形状に関する寸法が示されていない。この点につき、原告は、頭部の直下3.25o、中間点3.02o、尖端部の手前2.96oであるとするが、頭部の直下が3.25o、尖端部の手前が2.96oであるとすれば、下記の式のとおり、単純計算によれば中間点の線径は3.105oとなるから、これを3.02oとする原告の主張は正確な数値を示したものということはできない。
(3.25+2.96)/2=3.105 そして、胴部直径が太い釘が細い釘と比較して大きな締着力を有することは技術常識である。
また、スクリューリング釘Aとスクリューリング釘Bの胴部の形状がどのようなものであったかが明らかでない。
異なる製作者によって製作された釘の場合には、胴部が同じ特徴を有するとしても、細部構成の仕様が異なるものであり、それによって引抜き耐力は異なるものとなる。したがって、スクリューやリングを構成する山谷の大きさの程度を含めた胴部の形状の仕様が明示されなければ、引抜耐力の絶対値のみ比較しても、本願考案のスクリューリング釘が従来例のスクリューリング釘より引抜耐力が大きい根拠を示したものということはできない。
なお、写真(甲第9号証)には、引き抜けた状態の釘が撮影されているが、本件試験との関連を示すものは何ら存在せず、また、この写真によって、本件試験におけるスクリューリング釘A、Bの胴部の形状の仕様が明らかになるものでもない。
したがって、本件試験及び上記写真を根拠として、本願考案が従来品に比べて引抜耐力が大きいといえるものではない。
当裁判所の判断
1 取消事由(本願考案と引用考案1との相違点についての判断の誤り)について (1) 原告は、引用考案1のように胴部が全長にわたり同一径であるスクリューリング釘においては、木の繊維が胴部の尖端に近い部分にしかからまず、引抜耐力が低いという欠点があるところ、本願考案は、この欠点を解決することを技術課題とするものであるが、このような本願考案の技術課題は、引用文献1(甲第2号証)並びに周知例1(甲第3号証)及び同2(甲第4号証)に記載されておらず、
当業者がきわめて容易に想到することはできない旨主張する。
しかしながら、釘は、木材等の部材の接合や固定等の固着手段として通常用いられるものであるから、その引抜耐力を向上することは、当然に求められるところである。このことは、スクリューリング釘であっても、その用途が部材の接合等に用いられる固着手段であることに変わりがないから、同様というべきであって、現に、引用文献1(甲第2号証)の「本考案の目的は、スクリュー釘よりも打込抵抗が小さく、かつリング釘よりも引抜耐力が大きい釘を提供することを目的とする。この目的を達成するための本考案はスクリュー部、スクリューリング部、ガイド部及び尖鋭状の先端部を有していることを特徴とする。」(1頁18行目〜2頁4行目)、「スクリューリング部4の外径はスクリュー部3の外径に等しく、このスクリュー部3、スクリューリング部4およびガイド部5には軸方向に対してリード角の大きい斜めになった多数の螺旋条7が付加されている。ガイド部5の外径はスクリューリング部4の最大外径よりも小さく、最小外径よりも若干大きくなるように設定されている。ガイド部5の外径をスクリューリング部4の最大外径に対して2/3以下とすることが望ましく、引抜耐力を向上させることにつながる。」(2頁11行目〜3頁1行目)との各記載及び図面第1〜第3図によれば、引用文献1には、引抜耐力の向上を課題として、ガイド部の外径をスクリューリング部の最大外径に対して2/3以下とするスクリューリング釘が開示されていると認められるが、このような記載を待つまでもなく、スクリューリング釘においても、その引抜耐力を向上することは、当業者には自明の課題であるというべきである。
また、スクリュー釘及びスクリューリング釘が、その打込みに際して、胴部に施されたスクリューの作用によりその軸線を中心として回転することは当業者に明らかな技術的事項であると認められる。そして、胴部が全長にわたり同一径である引用考案1のようなスクリューリング釘を木材に使用した場合に、回転力によりねじ山が木材を切り込み排除しながら進入し、穴を形成する作用が、スクリューリング釘の尖端部分でされることは明らかであり、また、穴空け作用を行うスクリューリング釘の尖端部に木材の繊維が最も多くからむことは、技術常識に基づいて当然に予測し得ることである。
そうとすれば、本願考案の上記技術課題は、木材に用いられる従来のスクリューリング釘において、当業者に自明の課題であったものと認められるから、当業者がこれをきわめて容易に想到することはできない旨の原告の主張は採用することができない。
(2) 原告は、周知例1、2が示す従来周知の事項は「ねじ込み」によって用いられる木ねじ等に係る技術思想であって、「打込み」によって使用するスクリューリング釘に係る技術思想を示すものではないから、スクリューリング釘の胴部を尖端に向けて縮小するテーパー状にすることは、当業者がきわめて容易に想到することはできない旨主張する。
しかしながら、実願昭63-93213号(実開平2-19919号)のマイクロフィルム(乙第1号証)には、「第4図は、この考案の第2実施例を示し、スクリュー釘1における大径頭体5の上面に、ドライバー等の工具14が係脱される係合溝15を形成したものである。・・・このような構造によれば、工具14を前記係合溝15に係合させた状態でスクリュー釘1の打ち込み方向に力を加え且つ前記工具14を回転させれば、スクリュー釘1は構築部材に容易にねじ込まれることになる。」(10頁4行目〜13行目)との記載があり、さらに、特開昭61-201910号公報(乙第2号証)には、「この発明は、スクリュー釘・・・に関するものである」(1頁右下欄4行目〜6行目)、「第6図はこの発明に係るスクリュー釘を示しており、一端に頭部11を有する軸12の外周面にスクリュー13が設けられ、軸12の他端にドリル部14が連成されている。」(3頁右上欄1行目〜4行目)、「頭部11はドライバー係合溝25が・・・成形される。」(同頁左下欄11行目〜13行目)との各記載があって、これらの記載によれば、
スクリュー釘においては、頭部にドライバー等の工具が係脱される係合溝を有し、
打込みのほか、ねじ込みによる使用が想定されているものもあることが周知の事項であると認めることができる。
また、周知例1(甲第3号証)には、「隠しねじ釘に関する」(1頁17行目)考案が記載され、その実施例に関し、「隠しねじ釘1を用いた二部材(被固着部材と固着部材)の固着手順を第2図(a),(b),(c)により説明する。先ず、第2図(a)に示す様に、ドライバー21の先端を締付け穴4に係合し、隠しねじ釘1を被固着部材11にねじ込む。次に、第2図(b)に示す様に、木槌22を用い、当て木23を介して、固着部材12に隠しねじ釘1を打ち込む。この時、第3図(c)に示す様に、隠しねじ釘1は、矢印A方向、即ち被固着部材11及び固着部材12にねじ込まれる方向に僅かに回転する為、被固着部材11と固着部材12との固着が強固に行われる」(5頁2行目〜15行目)との記載があるところ、この記載と図面第1図(a)、(b)及び第2図(a)〜(c)の各表示とによれば、周知例1記載の隠しねじ釘は、上部ねじ頭に逆ねじ山が形成され、また、胴部はねじ山が形成され、かつ、尖端に向けて縮小するテーパー状とされ、まず被固着部材にねじ込まれた後、当て木を介して頭部に固着部材12が打ち込まれた際、隠しねじ釘の軸線まわりに回転力が発生して、隠しねじ釘が被固着部材及び固着部材に更にねじ込まれる作用を奏するものと認められる。そうすると、周知例1に記載された隠しねじ釘は、「ねじ込み」に加えて、「打込み」により回転し進入する釘の作用を有するものということができる。
さらに、周知例2(甲第4号証)には、「頭部とスクリュー部とからなるセメント系外壁材の固定釘」(実用新案登録請求の範囲)の考案が記載され、その考案の効果として、「金槌で固定釘Aを打ちつけるとスクリュー部が胴縁4及びセメント系外壁材5を貫通して頭部1がセメント系外壁材5の表面に到達して固定される」(3頁4行目〜7行目)との記載があるところ、金槌で固定釘Aを打ちつけた場合には、スクリュー部に施されたスクリューの作用によりその軸線を中心として回転し胴縁に進入するものと認められるから、周知例2に記載された固定釘も、
「打込み」により回転し進入する釘の作用を有するものと認められる。
そうすると、上記(1)のとおり、スクリュー釘及びスクリューリング釘は、
その打込みに際して、胴部に施されたスクリューの機能によりその軸線を中心として回転するものであるのみならず、スクリュー釘にあっては、打込みによって使用されるとともに、ねじ込みによる使用が想定されているものがあり、他方、周知例1には、ねじ込みに加えて、打込みにより回転し進入する隠しねじ釘が、周知例2には、打込みにより回転し進入する固定釘が記載されているのであるから、周知例1、2に開示された釘とスクリュー釘及びスクリューリング釘とは固着手段として共通するものと認められる。
そして、上記(1)のとおり、引用文献1には、引抜耐力の向上を課題として、引用考案1のスクリューリング釘のガイド部の外径をスクリューリング部の最大外径に対して2/3以下とすることが開示されているのであるから、そのガイド部の外径をスクリューリング部の最大外径に対して2/3以下とする形状を、周知例1、2に示された、釘の胴部を「尖端に向けて縮小するテーパー状に形成」する周知の形状に置き換えて本願考案の構成とすることは、上記のとおり、周知例1、
2に開示された釘とスクリュー釘及びスクリューリング釘とは固着手段として共通するものである以上、当業者であればきわめて容易に想到できたことと認められる。
したがって、原告の上記主張は採用することができない。
(3) 原告は、本件試験の結果のとおり、本願考案の実施品であるスクリューリング釘Aの引抜耐力が従来品であるスクリューリング釘Bに比べて極めて大きいことが明らかであるから、審決には、本願考案に係る、従来例のものと比較して引抜耐力が著しく大きいという顕著な効果を看過して、本願考案が当業者においてきわめて容易に想到することができるとの判断をした誤りがある旨主張する。
しかしながら、比較試験により、本願考案が従来例のものと比較して顕著な効果を奏することが明らかであるというためには、当該比較試験を実施する際の条件を同じくすることはもとより、本願考案において新規である構成部分以外の構成部分、すなわち、従来例のものと共通する構成部分についても従来例のものと同じくして当該比較試験に供することが必要であるものというべきである。ところが、本件試験に係る試験報告書(甲第8号証)においては、本願考案の実施品であるとして本件試験に供したスクリューリング釘Aについては「郡山チップ工業製65oスクリュウリング釘 線径3.25」と、従来品であるとして本件試験に供したスクリューリング釘Bは「他社製65oスクリング 線径3.1」と特定されていることにかんがみて、それぞれ製造者を異にする一般の市販品であることがうかがわれ、そうであるとすれば、例えば、技術常識上スクリューリング釘の引抜耐力に多大な影響を及ぼすものと認められるリング加工部分におけるリング加工の数や形状等が当然に同一であるとは認められない。同報告書には、スクリューリング釘Aにつき「これは実願平5-5793号明細書(注、本願明細書)添付の図面の図1に示すスクリューリング釘に対応する物である」との、また、スクリューリング釘Bにつき「これは実願平5-5793号明細書添付の図面の図3に対応するものである」との各記載があるが、同各記載が、スクリューリング釘A及びスクリューリング釘Bがそれぞれリング加工の数や形状等も含めて同明細書図面表示のスクリューリング釘と同一であることをいう趣旨とは解されず、他に、スクリューリング釘Aとスクリューリング釘Bとで、上記の点が同一であることを明らかにする証拠もない。そうすると、本件試験の結果に基づいて、本願考案が従来例のものと比較して顕著な効果を奏するものと直ちに認めることはできない。
のみならず、本願考案の要旨は、「胴部は尖端に向けて縮小するテーパー状に形成された」と規定するのみであって、そのテーパー角度について格別の限定はない。そうすると、仮に本件試験に供したスクリューリング釘Aが、胴部が全長にわたり同一径である従来例のスクリューリング釘Bと比較して、その引抜耐力に有意の差異が認められたとしても、それは、本願考案の一実施例の効果にすぎず、
本願考案の効果であると直ちに認めることはできない。本願考案には、胴部のテーパー角度が極めてわずかであり、胴部が全長にわたり同一径である従来例のスクリューリング釘と比較して構成上の相違が微差にすぎないものも含まれるところ、そのようなものが従来例のものと比較して顕著な作用効果を奏するものとは技術常識上考え難いというべきであるから、結局、本願考案の効果は、当業者が従来例から予測できる程度のものであって、格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
したがって、審決が、本願考案に係る、従来例のものと比較して引抜耐力が著しく大きいという顕著な効果を看過したとする原告の主張は採用することができない。
2 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらないから、原告の請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 石原直樹
裁判官 宮坂昌利
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