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関連審決 審判1998-35161
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  きわめて容易 /  請求項 /  実施例 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 11年 (行ケ) 380号 審決取消請求事件
原告 株式会社鶴見製作所
訴訟代理人弁理士 本田紘一
同 豊田正雄
被告 株式会社荏原製作所
訴訟代理人弁護士 福田親男
同 近藤恵嗣
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/02/28
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成10年審判第35161号事件について平成11年9月17日にした審決のうち,「登録第2148998号実用新案の明細書請求項第2項に記載された考案についての審判請求は,成り立たない。」とした部分を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告主文と同旨 2 被告原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
当事者間に争いのない事実等
1 特許庁における手続の経緯等被告は,考案の名称を「水中モータポンプ」とする実用新案登録第2148998号(平成元年12月26日出願,平成7年6月21日出願公告,平成9年10月3日設定登録。以下「本件登録実用新案」という,その考案を「本件考案」という。)の実用新案権者である。
原告は,平成10年4月15日,本件登録実用新案の請求項1及び同2に係る登録を無効にすることにつき審判を請求し,特許庁は,これを平成10年審判第35161号事件として審理した。被告は,この審理の過程で,願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の訂正を請求した。特許庁は,訂正を認めず,平成11年9月17日「登録2148998号実用新案の明細書請求項第1項に記載された考案についての登録を無効とする。登録第2148998号実用新案の明細書請求項第2項に記載された考案についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし,同年10月29日にその謄本を原告に送達した(なお,審決のうち,請求項1に記載された考案についての登録を無効とした部分については,被告から審決取消訴訟が提起され(平成11年(行ケ)第388号),東京高等裁判所は,同事件につき審理した結果,審決の上記部分を取り消すとの判決をしたことは,当裁判所に顕著である。本件は,審決のうち,請求項2に記載された考案についての無効審判請求が成り立たないとした部分の取消しを求めるものである。)。
2 本件考案の実用新案登録請求の範囲請求項1,2 (1) 訂正後のもの(下線部が訂正に係る個所である) (請求項1)「下部側ケーシングが製造上の中子を不要とする上下分割型ケーシングを使用する半側流型水中モータポンプにおいて,上部側ケーシングに相当する中間ケーシングの下面に,該中間ケーシングをモータに取付けるボルト部を羽根車から吐出される 水流から遮蔽するように,ゴムのような耐摩耗性の弾性体からなる交換可能なリングを嵌め込んだことを特徴とする半側流型水中モータポンプ。」 (請求項2)「弾性体リング内径側にOリング状の突起を設け,中間ケーシング側に該突起と嵌合する環状溝を設け,これらの突起と溝を強制的に嵌め込むことによって,上記弾性体リングを中間ケーシングへ固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の半側流型水中モータポンプ。」 (2) 訂正前のもの (請求項1)「下部側ケーシングが製造上の中子を不要とする上下分割型ケーシングを使用する水中モータポンプにおいて,上部側ケーシングに相当する中間ケーシングの下面に,該中間ケーシングをモータに取付けるボルト部を水流から遮蔽するように,ゴムのような耐摩耗性の弾性体からなる交換可能なリングを嵌め込んだことを特徴とする水中モータポンプ。」(以下「本件考案1」という。) (請求項2)「弾性体リング内径側にOリング状の突起を設け,中間ケーシング側に該突起と嵌合する環状溝を設け,これらの突起と溝を強制的に嵌め込むことによって,上記弾性体リングを中間ケーシングへ固定するようにしたことを特徴とする請求項1記載の水中モータポンプ。」(以下「本件考案2」という。) 3 審決の理由について(本件考案2関係)別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに,本件考案1は,本件実用新案登録の出願前に日本国内において刊行された刊行物である実願昭58-77973号(実開昭59-182694号)のマイクロフィルム(甲第3号証。以下「引用例1」という。)記載の考案及び特開昭59-110896号公報(甲第4号証。以下「引用例2」という。)記載の事項に基づいて当業者がきわめて容易考案をすることができたものであって,実用新案法3条2項の規定に該当し,実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないから,本件訂正請求は,請求項2について検討するまでもなく,全体として認められない,本件考案2は引用例1記載の考案及び引用例2記載の事項並びに審判甲第1,第3ないし第8号証(本訴甲第5ないし第11号証)記載の考案ないし事項に基づいて当事者がきわめて容易考案をすることができたとすることはできない,としたものである。
原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中,「第1 手続の経緯」(審決書2頁2行〜15行),「第2 訂正の適否についての判断」(審決書2頁16行〜17頁2行)は争わない。
「第3 実用新案登録無効請求についての判断」(17頁3行〜26頁3行)のうち,「1 実用新案登録無効請求の理由の概要」(17頁4行〜18頁14行)並びに「2 請求人の主張の検討」のうち「(1) 本件考案」及び「(2) 引用例及び甲各号証の記載内容」(18頁16行〜22頁2行)は争わない。
「(3) 対比・判断」のうち,本件考案1についての対比・判断(22頁4行〜20行)は争わず,本件考案2についての対比・判断(23頁1行〜25頁9行)は争う。「3 むすび」(25頁10行〜26頁3行)は争う。
審決は,実開昭63-98497号公報(審判甲第3号証,本訴甲第6号証。以下「甲第6号証刊行物」という。)記載の事項の認定を誤った結果,進歩性の判断を誤ったものであり,違法であるから取り消されるべきである。
1 審決は,甲第6号証刊行物に記載された事項につき,「甲第3号証(判決注・本訴甲第6号証)記載の事項における弾性材製の上部ケーシング4内径側に設けられた突出部は,Oリング状の突起であるのか否かが定かでなく,中間ケーシング3側に設けられた凹部も環状溝であるのか否かが定かでないのみならず,上記突出部と上記凹部を強制的に嵌め込むことによって,弾性材製の上部ケーシング4を中間ケーシング3へ固定するものであるのか否かも定かでない」(審決書24頁4行〜13行)と,認定した。しかし,この認定は,誤りである。
(1) 機械図面にあっては,一般的に,言葉による説明がなくとも,図面に示されたものから,構造・機能や作用効果を判断することができることが多い。
特公昭49-47321号公報(審判甲第1号証,本訴甲第5号証。以下「甲第5号証刊行物」という。)には,審決が認定したとおり,「弾性材料の円板62は,・・・弾性材料の円板62外径側に設けられた環状突起部68をポンプハウジングカバー26を形成する円板要素44の外縁に設けられた溝に強制的に嵌め込む」(審決書23頁16行〜24頁2行)ことで,固定する構成が示されている。
その他にも,弾性体の固定技術としては,ドイツ国特許第1173341号公報(甲第13号証)のポンプにおけるゴムの保護部材41の取付けや,実開昭59-31127号公報(甲第12号証)のポンプのフロート式液面スイッチなどのほか,自動車のタイヤのホイールへの取付けなどがある。このように,弾性体の弾性を利用して嵌合することによりこれを固定することは,本件出願前,多くの分野で行われている慣用の技術であるということができる。
このような慣用技術に照らすならば,甲第6号証刊行物の記載及び第2図に示す嵌合構成に接した当業者は,同号証において,上部ケーシング4の中間ケーシング3への固定は,凹凸嵌合部においてなされていると判断するのが,ごく通常で,自然なことである。
(2) 本件考案2と同じ種類の構造の,甲第6号証刊行物の第2図に示すような周知の遠心型のポンプにおいて,弾性材から成る上部ケーシング4が回転軸の軸芯のカラーと凹凸嵌合していると認められる以上,平面においても,軸芯周りに連続して凹凸嵌合していると判断するのが,自然の理というべきものである。そして,上部ケーシング4が,回転軸の軸芯の軸心周りに羽根車及び中間ケーシング3を覆うように平面状に展開されているものであることは疑いのないことであるから,当業者は,その上部ケーシング4の軸芯周りの凹凸嵌合による固定は,軸心周りに環状に形成されて固定されているものであると容易に考えることができる。
2 以上のとおり,審決は,当業者の技術水準,慣用技術等を全く考慮せずに,甲第6号証刊行物に記載された事項の認定を誤り,その結果,進歩性の判断を誤ったものである。
被告の反論の要点
本件考案2に関する審決の認定判断は,正当であり,審決を取り消すべき理由はない。
1 甲第6号証刊行物の図面には,弾性材製の上部ケーシングの内側に突起が,中間ケーシングの中央部側面に凹部が,それぞれ記載されている。しかし,これらは,Oリング状であるのか,また,環状溝であるのかが定かではない。これらがOリング状であり,環状溝であると解釈するのは,本件考案2の図面からの類推にすぎず,いわゆる後知恵である。
2 本件考案請求項2は,請求項1に従属しているから,請求項1に係る登録を無効とした審決の認定判断が正しくなければ,請求項2のみについて無効事由を主張しても無意味である。本件考案請求項1に係る登録を無効とした審決の認定判断は誤りであるから,請求項2について請求不成立とした審決は,原告の主張する取消事由を審理するまでもなく,結果として正しいことになるというべきである。
当裁判所の判断
1 審決は,甲第6号証刊行物には,本件考案2の構成要件の一つである,「弾性体リング内径側にOリング状の突起を設け,中間ケーシング側に該突起と嵌合する環状溝を設け,これらの突起と溝を強制的に嵌め込むことによって,上記弾性体リングを中間ケーシングへ固定するようにした」構成は,開示されていないと認定判断した。
2 甲第6号証によれば,同号証刊行物(実開昭63-98497号公報)には,次のとおりの記載及び図面があることが認められる。
(1) 実用新案登録請求の範囲「中間ケーシングに弾性材製の上部ケーシングと,弾性材製で下部ケーシングカバーで覆われた下部ケーシングと,それら上部ケーシング及び下部ケーシングを覆うようにストレーナとを取付けた水中ポンプにおいて,ストレーナ,下部ケーシングおよび上部ケーシングをストレーナと下部ケーシングカバーとの間に設けたディスタンス体を介し同種複数本のボルトで中間ケーシングに共締め固着したことを特徴とする水中ポンプ。」(甲第6号証中の明細書1頁5行〜13行) (2) 実施例(別紙参照)「第1図および第2図において,ストレーナ7には複数個の凹座11が形成され,凹座11の内方には下部ケーシングカバー6に当接するディスタンス体であるディスタンスカラー12が溶着またはカシメ加工により固着されている。そして,ストレーナ7,下部ケーシング5および上部ケーシング4は中間ケーシング3に螺合する同種複数本のボルト13により中間ケーシング3に共締め固着されている。
従って,ストレーナ7はディスタンスカラー12を介して下部ケーシングカバー6を押圧し,下部ケーシング5と上部ケーシング4との間のシールを図るようになっている。なお,上記構成において,ディスタンスカラー12はストレーナ7に固着するかわりに,下部ケーシングカバー6に溶接またはカシメ加工により固着してもよい。
このように構成されているので,ボルト13を外すだけで,ストレーナ7,下部ケーシング5,上部ケーシング4を簡単に外し,ポンプ部の分解,点検を容易,迅速に行うことができる。また,ボルト13のねじ部は,ディスタンスカラー12により水からシールされているので,泥,砂等がねじ溝に入り込んで中間ケーシング3から外しにくくなることはない。」(4頁14行〜5頁17行) (3) 図面(別紙参照)第1図には水中ポンプの要部の側断面図として,ボルト13がストレーナ7の周辺端部に形成された凹座11に位置し,下部ケーシングカバー6に当接するディスタンスカラー12を貫通して,ストレーナ7,下部ケーシング5および上部ケーシング4を中間ケーシング3に螺合していることが図示されている。
第2図には第1図の直行断面図として,上部ケーシング4の内径側の上部に突出部が設けられており,中間ケーシング3の上部ケーシング4に面する部分に,該突出部と対応する形状の凹部が設けられていることが図示されている。
3 甲第6号証刊行物には,上部ケーシング4の内径側に設けられた突出部がOリング状の突起であること,中間ケーシング3側に設けられた凹部が環状溝であること,及び上記突出部を上記凹部に強制的に嵌め込むことによって,弾性材製の上部ケーシング4を中間ケーシング3へ固定するものであることについて,直接の記載はない。しかしながら,ケーシングとは,ポンプ等で,機械の内部を密閉するために被覆,容器,囲いなどの役目をする部分のことであること(工業教育研究会編・図解機械用語辞典・第3版参照),上部ケーシングの全体の形状自体について同刊行物に特段の記載のないことを前提に,同刊行物の上記記載並びに第1図及び第2図をみれば,同刊行物記載の水中ポンプにおいて,中間ケーシング3は,インペラ1の回転軸を囲む環状のものであることも,上部ケーシング4は,中間ケーシング3に密着して,これと対応する環状の孔を有する形状をしていることも自明なことというべきである。また,これを前提にした場合,同刊行物においては,弾性材製の上部ケーシングは,その内側に環状突起を有し,中間ケーシングは,その中央部側面に前記突起に対応する形状の環状溝である凹部を有しており,かつ,上記弾性材製の上部ケーシングの内側の突起は,当然に,Oリング状の突起である,と理解することができるというべきである。
そして,@弾性材製の上部ケーシングの内側に環状突起を有し,中間ケーシングの中央部側面に前記突起に対応する形状の環状溝を有していれば,これらを嵌合させることにより両者を固定する作用が生じることは明らかであること,A甲第5号証によれば,同号証刊行物は,昭和43年出願の特許公報(特公昭49-47321)であり,そこには,ポンプにおいて,弾性材製の円板外径側に環状突起部を設け,この環状突起部をポンプハウジングカバーを形成する円板要素の外縁に設けられた溝に嵌め込むことによって位置を保持することが示されていることが認められ,この事実によれば,弾性材製の環状突起部を円板要素の溝に嵌め込むことで,弾性を利用して固定することは,水中ポンプ(排水ポンプ)の分野において通常行われていることであるといえること,B甲第6号証刊行物の第1図,第2図によれば,甲第6号証刊行物記載の考案では,ボルト13がストレーナ7の周辺端部にあって上部ケーシング4は周辺部分で中間ケーシング3に螺合しているから,中央部分で両者を固定する機能が必要であると認められること,を総合するならば,甲第6号証刊行物記載の前記上部ケーシングの内側の環状突起と,中間ケーシングの中央部側面に環状溝とは嵌合して両者を固定する作用を行っていると解するのが相当である。
被告は,甲第6号証刊行物記載の考案において,弾性材製の上部ケーシングにOリング状の突起が,中間ケーシングに環状溝があると解釈するのは,本件考案2の図面からの類推にすぎず,いわゆる後知恵である旨主張する。しかし,前示の如く,前記解釈は,甲第6号証刊行物に開示された事項及び技術常識に基づいて行われたものであるから,後知恵とはいえない。被告の主張は採用することができない。
4 以上述べたところによれば,甲第6号証刊行物には,本件考案2の構成要件の一つである,「弾性体リング内径側にOリング状の突起を設け,中間ケーシング側に該突起と嵌合する環状溝を設け,これらの突起と溝を強制的に嵌め込むことによって,上記弾性体リングを中間ケーシングへ固定するようにした」構成が開示されているというべきであるから,同刊行物に上記構成が開示されていないとした審決の認定判断は,誤りであるというべきであり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。
5 被告は,本件考案請求項2は,請求項1に従属しているから,請求項1に係る登録を無効とした審決の認定判断が正しくなければ,請求項2のみについて無効事由を主張しても無意味であり,本件考案請求項1に係る登録を無効とした審決は誤りであるから,請求項2について請求不成立とした審決は,原告の主張する取消事由を審理するまでもなく,結果として正しいことになるというべきである,と主張する。
仮に,本件において,請求項1に係る登録を無効とした審決の認定判断が誤りであるとされたとしても,そのことは,ただ,少なくとも審決の挙げた理由によっては同登録を無効とすることはできない,とされたということを意味するだけであり,決して,同登録に無効事由が存在しないものとされたことまでを意味するものではない。したがって,請求項2についての審決の上記認定判断の当否を離れて,請求項2について請求不成立とした審決は結果として正しい,ということはできないのである。
被告の主張は,採用することができない。
以上のとおりであるから,審決のうち,「登録第2148998号実用新案
明細書請求項第2項に記載された考案についての審判請求は,成り立たない。」とした部分は,その余の点のいかんにかかわらず,違法なものとして,取消しを免れない。
よって,審決の上記部分を取り消すこととし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 宍戸充
裁判官 阿部正幸
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