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事件 平成 14年 (ワ) 1323号 損害賠償請求事件
原告A
被告B
被告 タイホー工業株式会社
被告両名訴訟代理人弁護士 村林隆一
被告タイホー工業株式会社補佐人弁理士 福田賢三
裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 2002/04/30
権利種別 実用新案権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
1 被告タイホー工業株式会社(以下「被告タイホー」という。)は、原告に対し金520万円を支払え。
2 被告Bは、原告に対し金520万円を支払え。
当事者の主張
1 原告の主張 (1) 被告タイホーに対する請求について ア 原告は、登録第1501677号の実用新案権(以下「原告実用新案権」といい、その考案を「原告考案」という。)を有していた。
イ 原告は、特許第2566512号の特許権(以下「原告特許権」といい、その特許発明を「原告発明」という。)を有している。
ウ 被告タイホーは、「クリンビュー」と称する商品を販売している。
エ 被告タイホーが「クリンビュー」と称する商品を製造、販売する行為は、原告実用新案権及び原告特許権を侵害する。
オ 被告タイホーは、「クリンビュー」と称する商品の製造、販売により何億円かの利益を得ている。
カ 原告は、被告タイホーに対し、上記侵害行為により被った財産的損害の内金として400万円、及び精神的苦痛を被ったことによる慰謝料として120万円を請求する。
(2) 被告Bに対する請求について ア 原告は、昭和52年3月ころ、原告実用新案登録の出願手続の際、弁理士である被告Bに対し、
(ア) 車両のエアワイパーについてのアイデア (イ) ウインドウガラスに油状、ワックス状、油紙又は他の液状、固体状、グリス状のものを塗布することにより、ウインドウガラスに付着する雨・水等の水滴を粒状にして吹き飛ばし、ウインドウガラスに残らないようにしたアイデア (ウ) 加熱装置を設置して、熱風をウインドウガラスに吹き出して凍結を防止したり、油膜を除去するアイデア (エ) 防曇剤のアイデア を開示した。
イ 被告Bは、原告から開示を受けた前記ア記載のアイデアのうち、車輌のエアーワイパーについてのみ原告実用新案権に係る実用新案登録出願をし、他のアイデアを第三者に漏らし、このアイデアに基づいて、被告タイホーが特許出願(発明の名称:「防曇剤」、登録番号:第1441167号、出願日:昭和54年12月24日。以下「タイホー特許」という。)するに至った。
ウ 原告は、被告Bの上記イの行為により、400万円の財産的損害を被った上、精神的苦痛を被った。その慰謝料額としては、120万円が相当である。
エ よって、原告は被告Bに対し、不法行為に基づく損害賠償として金520万円を請求する。
2 被告タイホーの主張 (1) 原告の主張(1)のア〜ウ記載の事実は認め、同エ〜オ記載の事実は否認する。
(2) 「クリンビュー」との標章は、被告タイホーが有する登録商標であり、かつ、ハウスマークである。したがって、「クリンビュー」商品としては、自動車のフロントガラスに用いる「塗る」もの・スプレー・ワックス、車の洗車後に車に直接用いるワックス・スプレー、車のボディーの傷を消す塗りもの、車の水アカ・汚れを取るワックス、フロントガラスの凍結防止剤、防錆剤等、自動車用化学製品として多種類のものが存在し、原告が侵害品であると主張する商品がどれであるのか全く特定されていない。いずれにしても、被告タイホーの商品「クリンビュー」は、原告考案及び原告発明とは全く構成を異にしている。
3 被告Bの主張 (1) 原告の主張(2)のアのうち、原告が原告実用新案登録の出願をしたことは認めるが、同アのその余の事実及び同イ〜ウの各事実は否認する。
(2) タイホー特許は、被告タイホーが、出願代理人であるC弁理士に依頼して出願したものであり、被告タイホーの本店所在地は東京都である。したがって、タイホー特許の出願行為は、被告Bとは何らの関係もない。
当裁判所の判断
1 被告タイホーに対する請求について (1) 原告が原告実用新案権及び原告特許権を有していること、被告タイホーが「クリンビュー」と称する商品を製造、販売していることは当事者間に争いはない。原告実用新案権の内容は別紙1のとおりであり(甲2の1・2)、原告特許権の内容は別紙2のとおりである(甲3の1・2)。
(2) 原告は、被告が製造、販売する「クリンビュー」と称する商品が、原告実用新案権及び原告特許権を侵害すると主張する。
原告実用新案登録請求の範囲(別紙1)及び原告特許請求の範囲(別紙2)からすれば、原告考案及び原告発明は、いずれも、エアーノズルからエアーを噴出することによってエアーカーテンを形成する車輌のエアーワイパーの技術に関するものである。
他方、乙1によれば、被告タイホーが販売する「クリンビュー」と称する商品は、自動車のフロントガラスに用いる「塗る」もの・スプレー・ワックス、車の洗車後に車に直接用いるワックス・スプレー、車のボディーの傷を消す塗りもの、車の水アカ・汚れを取るワックス、フロントガラスの凍結防止剤、防錆剤等、
自動車用化学製品として多種類のものが存在することが認められるが、これらの商品は、いずれも、エアーノズルからエアーを噴出することによってエアーカーテンを形成する車輌のエアーワイパーに該当する構成を備えたものではなく、その他、
被告タイホーが、原告考案及び原告発明の技術的範囲に属する車輌用エアワイパーを販売している事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) 以上によれば、原告の被告タイホーに対する請求は理由がない。
2 被告Bに対する請求について (1) 原告が、原告実用新案登録の出願をしたことは当事者間に争いがない。
(2) 原告は、原告実用新案登録の出願の際に、次のア〜エ記載のアイデアを開示したことろ、被告Bがこれを第三者に漏らしたと主張する。
ア 車両のエアワイパーについてのアイデア イ ウインドウガラスに油状、ワックス状、油紙又は他の液状、固体状、グリス状のものを塗布することにより、ウインドウガラスに付着する雨・水等の水滴を粒状にして吹き飛ばし、ウインドウガラスに残らないようにしたアイデア ウ 加熱装置を設置して、熱風をウインドウガラスに吹き出して凍結を防止したり、油膜を除去するアイデア エ 防曇剤のアイデア (3) 原告実用新案権の実用新案公報(甲2の1)によれば、原告は被告Bを代理人として原告実用新案登録の出願をしていることが認められるから、原告は同出願手続に際し、被告Bに上記(2)アの車輌のエアーワイパーに関する技術を伝えたものと推認できる。また、原告実用新案公報の考案の詳細な説明の項には、「車輌の前面ウインドガラスには通常機械式のワイパが具備されるが、このような機械式のワイパを用いた場合には、前方視界が左右に揺動するワイパにより遮られて、快適な運転が困難であると云う問題があった。また、上記の場合には、前面ウインドガラスに油膜が付着しやすいと云う欠点もあり、更に、上記の場合には、前面ウインドガラスの全面をワイパでぬぐうことは困難であって、隅部は汚れたままであると云う欠点もあった。」(同公報1欄37行〜2欄8行)と記載されているから、原告は、上記出願に際して、被告Bにこうした機械式のワイパが抱えている問題点をも伝えたものと推認できる。また、証拠(甲6、甲7の2、甲12)によれば、原告は、その作成した上告状、告訴状及び手続補正書において、上記出願に当たり、被告Bに対し、ハスの葉に落ちた水滴が水玉状になりポロポロと落ちることにヒントを得て、車輌のウインドガラスの内外に油膜を付けることにより、水滴を粒状にしてエアーで吹き飛ばしやすくするとのアイデアを得た旨述べたとの趣旨の記載をしていることが認められる。
しかしながら、タイホー特許権の公開特許公報(甲1の1)によれば、同特許出願公開時における特許請求の範囲は、「下記構造式で表されるリン酸エステル系界面活性剤の1種又は2種以上を含有する防曇剤。」(「下記構造式」が示す化学構造式の記載は省略)とされており、発明の詳細な説明には、「この発明は、ガラス、メガネ、鏡、合成樹脂シート、フィルム、パネル等、特にメガネ、ゴーグルなど比較的長時間に亘って防曇性が持続されることを必要とするものに顕著な効果を呈する防曇剤に関するものである。」(同公報1頁右下欄2〜6行)と記載され、
従来技術の防曇剤組成物として@防曇性を有する樹脂を表面にコーティングするタイプ、A界面活性剤を使用するタイプがあったところ、タイホー特許の発明は、特にAのタイプの防曇剤の防曇性の持続効果や拭き取り性を向上させるために特定構造式で表されるリン酸エステル系界面活性剤を含有する防曇剤を提示したものであることが認められる。したがって、タイホー特許の発明は、前記(2)イのアイデア(原告が前掲証拠(甲6、甲7の2、甲12)中で被告Bに告げたと述べているアイデアも同趣旨のものと解される。)にとどまるものとはいえず((2)エは具体的内容が明らかでない。)、本件全証拠によっても、原告が、タイホー特許権の特許請求の範囲に記載されているような具体的技術を想到するに至ったことや、こうした具体的な技術内容を被告Bに開示した事実を認めるに足りる証拠はない。
さらに、前掲甲1の1によれば、タイホー特許の出願手続を行った代理人は、被告Bではなく、弁理士C外2名であることが認められ、被告Bが原告から開示を受けた情報をもとにタイホー特許が出願されたとするには、被告Bが得た上記技術情報が弁理士Cらに伝えられる必要があるというべきところ、本件全証拠によっても、被告Bがタイホー特許権の技術や上記(2)イないしエの技術を第三者に漏らした事実も、その結果、被告タイホーがタイホー特許を出願するに至った事実についても、いずれもこれを認めるに足りる証拠はない。
3 以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
追加
(別紙1)(1)考案の名称「車輌のエアーワイパ」(2)登録番号第1501677号(3)出願日昭和52年6月21日(実願昭52-82155号)(4)公開日昭和54年1月22日(実開昭54-9438号)(5)公告日昭和57年12月13日(実公昭57-58027号)(6)登録日昭和58年8月10日(7)登録抹消日平成5年2月25日(原因:平成3年12月13日第10年分登録料不納)(8)実用新案登録請求の範囲車輌1の前面ウインドガラス5の前方側にエアーカーテン33を形成する車輌のエアーワイパであって、前面ウインドガラス5に略平行に、かつ略全面に沿った後面エアーカーテン32を形成する上向きエアーノズル31を前面ウインドガラス5の下縁部26aに沿って複数個並設し、前記後面エアーカーテン32の前方側で前面エアーカーテン30を形成する上向きエアーノズル24を前面ウインドガラス5の下縁部26aに左右に首振り自在に備えて、該エアーノズル24を首振り振動させる手段23を備え、上記前面エアーカーテン30を形成するエアーノズル24を前傾上方にエアーを噴出すべく設け、各ノズル24、31へのエアー供給用パイプ18、19に夫々エアー流量調整用絞り弁21を設けたことを特徴とする車輌のエアーワイパ。
(別紙2)(1)考案の名称「車両用エアワイパー」(2)登録番号特許第2566512号(3)出願日平成4年11月24日(特願平4-334937号)(4)公開日平成6年6月3日(特開平6-156204号)(5)登録日平成8年10月3日(6)特許請求の範囲車体内に設置された圧縮空気供給手段と、前面ウィンドガラス下端の前方近傍位置で前記前面ウィンドガラスの下端縁に沿って所定間隔毎に設置され、前記圧縮空気供給手段から送られた空気を前記前面ウィンドガラス外表面に沿って下方から上方に噴射し第1のエアカーテンを形成する第1のエア噴射ノズル部と、前記前面ウィンドガラス下端縁の前方近傍位置で前記圧縮空気供給手段から送られた空気を上方に噴射するように設置され、かつ前記前面ウィンドガラスの外表面に略平行な方向に首振り運動可能に設けられ、前記首振り動作により前記第1のエアカーテンより前記前面ウィンドガラスから遠い位置に第2のエアカーテンを形成する第2のエア噴射ノズル部と、前記第2のエア噴射ノズル部に前記首振り動作を行わせる首振り駆動手段と、を含む車両用エアワイパーにおいて、前記第2のエア噴射ノズル部は、複数個のノズルからなり、該ノズルは、互いに前記前面ウィンドガラスからの距離を異にする2以上の小カーテンから前記第2のエアカーテンを構成するように、前記前面ウィンドガラスの左右方向の中央位置部分に設置された1又は複数のセンターノズルパートと、左右両側寄りにそれぞれ1又は複数個ずつ設置され前記前面ウィンドガラスの外表面に対して前記センターノズルとは異なる傾斜角で首振り動作するサイドノズルパートと、から成り、各ノズルは、噴射エアが前記前面ウィンドガラスの左右両側辺から外方へはみ出さないような首振り動作角とされ、
前記前面ウィンドガラス下端縁の前方近傍でかつ前記第1のエア噴射ノズル部近傍位置に吹出し口が配され温風を前記前面ウィンドガラス外表面に沿って上方へ送出する温風供給手段が設けられたことを特徴とする車両用エアワイパー。
裁判長裁判官 小松一雄
裁判官 阿多麻子
裁判官 前田郁勝
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