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関連審決 審判1996-17661
審判1998-39041
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  補正 /  設定登録 /  訂正の請求 /  減縮 /  削除 /  実施例 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 /  明瞭でない記載 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 78号 審決取消請求事件
原告 豊和工業株式会社
訴訟代理人弁護士 吉武賢次、神谷巖、弁理士 永井浩之、鈴木清弘、前島旭
被告 エスエムシー株式会社
訴訟代理人弁理士 千葉剛宏、弁護士 宮寺利幸
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/05/09
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 特許庁が平成8年審判第17661号事件について平成13年1月9日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
主文第1項同旨の判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 原告が実用新案権者である実用新案登録第2035182号考案(名称「圧流体シリンダ」。本件考案)は、昭和60年11月6日に出願され、出願公告(実公平4-52482号公報。本件公報)後の平成6年10月6日に設定登録された。
被告は、平成8年10月17日、本件考案の実用新案登録の無効の審判(平成8年審判第17661号)を請求し、平成10年4月7日、「登録第2035182号実用新案の登録を無効とする。」との審決(第1次審決)があった。
原告は、東京高等裁判所に審決取消訴訟(平成10年(行ケ)第141号)を提起した後、平成10年6月10日に明細書の訂正をすることについての審判(平成10年審判第39041号)を請求し、平成11年3月9日、「登録第2035182号実用新案の明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」との審決(訂正審決)があり、確定した。これに基づき、東京高等裁判所の上記事件につき、平成11年6月24日、第1次審決を取り消す旨の判決があり、確定した。
この判決に基づき、特許庁における平成8年審判第17661号の審理が再度行われた結果、平成13年1月9日、「登録第2035182号の実用新案登録を無効とする。」との審決があり、その謄本は同月29日原告に送達された。
2 本件考案の要旨(訂正審決による訂正後。下線が訂正部分) バレルの側壁に軸方向にスリットを有し、該スリットよりバレル内の遊動ピストンに連結されたドライバーの先端が突出し、スリットはスチールバンドにて密封されるようになっている所謂ロッドレスシリンダにおいて、バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にべ一スを一体に突設し、そのべ一スの上に ピストンの軸芯と平行な棒状の 案内レールを一体に突設し 、その案内レールには、前記スリットの幅方向の両外側 に前記軸芯と平行な案内面を夫々備え、これらの案内面に案内される案内面を有する案内子を前記ドライバーに設けたことを特徴とする圧流体シリンダ。
本件考案図面第1図,第2図,第3図 3 審決の理由の要点 (1) 訂正審決により認容された訂正事項 (あ)原明細書の登録請求の範囲第1項の記載「両側の側壁の一方のみに、ピストンの軸芯と平行な案内レールをバレルと一体に設け、」(本件公報第1欄第7〜9行)を「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、そのベースの上にピストンの軸芯と平行な棒状の案内レールを一体に突設し、」と訂正する。
(い)原明細書の登録請求の範囲第1項の記載「案内レールには、前記スリットの幅方向の両側に前記軸芯と平行な案内面を夫々備え、」(本件公報第1欄第9〜11行)を、「案内レールには、前記スリットの幅方向の両外側に前記軸芯と平行な案内面を夫々備え、」と訂正する。
(う)原明細書の第4頁第18〜20行の記載「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに案内レール10を取付け、」(本件公報第3欄第18〜20行)を「バレル1Aのスリットを挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、
そのベースの上に棒状の案内レール10を一体に突設し、」と訂正する。
(え)原明細書の第7頁第12〜13行の記載「バレルと一体に構成された案内レールにより、」(本件公報第4欄第25〜26行)を、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、そのベースの上に一体に突設された棒状の案内レールによって案内するようにしたので、」と訂正する。
(お)原明細書の第7頁第13〜17行の記載「また、従来のように案内レールをバレルと別個に設けたものに比べて小型化でき、」(本件公報第4欄第29〜31行)及び「また、圧流体の供給によってバレルがふくれてもドライバーを何等支障なく案内でき、最小の摺動抵抗で高精度の移送が可能となる。」(本件公報第4欄第32〜35行)を、「また、バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみの側壁に突設したベース上に棒状の案内レールを一体に突設しているので、従来のように案内レールをバレルと別個に牽けたものに比べて小型化でき、」及び「また、バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみの側壁の下方部に突設したベース上に棒状の案内レールを突設し、その案内レールのスリット幅方向の両外側に案内面を夫々備えているので、圧流体の供給によってバレルがふくれてもドライバーを何ら支障なく案内でき、最小の摺動抵抗で高精度の移送が可能となる。」と訂正する。
(か)原明細書の第7頁第2〜10行の記載「尚上記実施例において案内レール10は、バレル1Aの側壁9に突設したベース11上に取付けられているが、バレル1Aとは別個に設けたベース11に案内レール10を取付け、適宜の取付具によってバレル1Aに一体的に取付けてもよい。」(本件公報第4欄第19〜23行)を削除する。
(2) 本件考案 訂正審決により認容された訂正事項(あ)及び(い)により、本件考案の登録請求の範囲第1項の記載は、
「バレルの側壁に軸方向にスリットを有し、該スリットよりバレル内の遊動ピストンに連結されたドライバーの先端が突出し、スリットはスチールバンドにて密封されるようになっている所謂ロッドレスシリンダにおいて、バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみに、ピストンの軸芯と平行な案内レールをバレルと一体に設け、その案内レールには、前記スリットの幅方向の両側に前記軸芯と平行な案内画を夫々備え、これらの案内面に案内される案内面を有する案内子を前記ドライバーに設けたことを特徴とする圧流体シリンダ。」(本件公報第1欄第2〜13行)から、前記2(本件考案の要旨)のとおりに訂正され、これが確定した。
(3) 請求人(被告)の主張 被告は、概略以下@、Aのとおり主張した。
@ 訂正審決で認容された訂正事項(あ)ないし(か)は、下記の理由により、
特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第39条第1項ただし書き若しくは第2項の規定に適合しない。
したがって、本件考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、
かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第37条第1項第二の二号の規定により無効とすべきものである。
記(@-1)訂正事項(あ)について、
「その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、」との訂正において、「一方の側壁から下方に延びる側壁」とはいかなる部位を指示するか明らかでない。
さらにその「側壁の下方部にベースを一体に突設し、」という構造については前記「下方に延びる側壁」が明らかでなく、その上にさらに「その側壁の下方部」がいかなる部分を指称するか本件公報の考案の詳細な説明及び第2図を参照しても明確な開示あるいは示唆がない。
「棒状の案内レール」との訂正において、この「棒状」は訂正前の本件公報に開示されている登録請求の範囲考案の詳細な説明、図面の簡単な説明及び第1図〜第4図において開示され、あるいは当業者をして理解することが可能な程度に示唆されているものではない。
「案内レールをバレルと一体に設け」とあるを、「案内レールを一体に突設し、」と訂正し、バレルとの関係を遮断した。すなわち、案内レールがバレルと一体に設けられているという訂正前の構成に対して、今回の訂正は側壁の一方のみに案内レールを一体に突設するように訂正した。しかしながら、両側の側壁の一方のみに案内レールを一体に突設することと、案内レールをバレルと一体に設けることとは全く異なる構成である。
以上のとおり、訂正事項(あ)は、登録請求の範囲減縮を目的としたものではなく、実質上登録請求の範囲を変更するものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でもない。
(@-2)訂正事項(い)について、
「スリットの幅方向の両外側」とはいかなる部位を指すのか、本件訂正前の明細書からうかがうことはできない。
したがって、訂正事項(い)は、実質上登録請求の範囲を変更するものである。
(@-3)訂正事項(う)ないし(か)について、
訂正事項(う)ないし(か)は、明瞭でない記載の釈明を目的としたものではなく、実質上登録請求の範囲を変更するものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正でもない。
A 本件考案は、下記の理由により、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされる実用新案法第39条第3項の規定に適合しない。
したがって、本件考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、
かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第37条第1項第二の二号の規定により無効とすべきものである。
記(A-1)本件考案は、審判甲第4号証(欧州公開特許公報第0157892A1号)及び審判甲第1号証(特開昭60-172711号公報)に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(A-2)本件考案は、審判甲第1号証、審判甲第4号証及び審判甲第13号証(DE2908605号A1公報)に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(A-3)本件考案は、審判甲第13号証、審判甲第3号証(特開昭58-214015号公報)及び審判甲第4号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(A-4)本件考案は、審判甲第1証、審判甲第3号証、審判甲第4号証及び審判甲第13号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(4) 被請求人(原告)の主張 原告は、概略以下@、Aのとおり主張した。
@ 訂正審決で認容された訂正事項(あ)ないし(お)は、下記の理由により、
特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第39条第1項ただし書き若しくは第2項の規定に適合する。
記(@-1-1)訂正事項(あ)について、
訂正事項(あ)は、登録請求の範囲第1項に記載の要件「両側の側壁の一方のみに、ピストンの軸芯と平行な案内レールをバレルと一体に設け、」を「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、そのベースの上にピストンの軸芯と平行な棒状の案内レールを一体に突設し、」と訂正し、案内レールの設置位置を一方の側壁の下方部に突設したベースの上に特定するとともに、案内レールを棒状のものに特定し、かつ案内レールをベースの上にバレルと一体に突設することに特定するものである。そして、バレルにおける「側壁の下方部」が側壁の下端部近くであることを特定するために、「側壁の下方部」を修飾する用語として「その一方の側壁から下方に延びる」を加入し、バレルの壁が「一方の側壁から下方に延びる」ところであること(バレルの側壁はバレル孔の側方に位置し、下壁はバレル孔の下方に位置し、側壁の下端部近くでバレル壁が側壁から下方に延びている)を特定したものである。
「一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」の記載の本質が、「一方の側壁の下方部にベースを一体に突設すること」にあり、「一方の側壁から下方に延びる」が「側壁の下方部」を修飾する用語であることは、訂正後の「考案の効果」で「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部に突設したベース上に棒状の案内レールを突設し」と記載していることや、第1図や第2図に「一方のみの側壁の下方部にベースを突設してそのベース上に棒状の案内レールを突設し」た構成が開示されていることからみても容易に理解できる。
「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成は、訂正前の明細書実施例の説明として、「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで」(本件公報第3欄第26〜28行)と記載され、第1図及び第2図に、「一方のみの側壁9の下方部にベース11を一体に突設すること」及び「ベース11が突設されている側壁の下方部はバレル壁がその一方の側壁から下方に延びているところであること」が当業者にとって明確に図示されているから、本件実用新案権の訂正前の明細書に開示されている事項である。
側壁の下方部にベースを突設することや、そのベースの上に案内レールを一体に突設することや、案内レールが棒状のものであることは、本件公報第3欄第26〜30行に「11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、該ベース11上には、断面形状台形状をなす案内レール10がピストン2の軸芯と平行に設けられ、」と記載されていることや第2図の記載から明白である。また、側壁の下方部に突設したベースの上に案内レールを突設することによって、バレルがふくれて側壁が拡がっても、ドライバーを傾倒させることなく正確に直線作動させることができる効果を奏することは、明細書に記載されている。
よって、訂正事項(あ)は、「登録請求の範囲減縮」に該当するものである。
また、案内レールを側壁の下方部に突設したベースの上に突設することや案内レールが棒状のものであることは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていることであるから、訂正事項(あ)は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(@-1-2)「訂正事項(あ)についての被告の主張」に対する反論 被告は、訂正事項(あ)の「その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、」との訂正において、「一方の側壁から下方に延びる側壁とはいかなる部位を指示するか明らかでない。」と主張している。ところが、被告のこの主張は、本件実用新案権の明細書図面に記載されている技術を理解することなく、訂正後の登録請求の範囲の文字のみに拘泥し、訂正後の記載を自分勝手な読み方をして意味不明とするもので、許されない。その理由は次のとおりである。
訂正が認められた本件実用新案権の「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」の記載は、本質が「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部にベースを一体に突設すること」にあることは明細書図面の記載から当業者にとって極めて明白であり、その「側壁の下方部」を説明するために、「側壁の下方部」を修飾する用語として「その一方の側壁から下方に延びる」を加入し、側壁の下方部が一方の側壁から下方(側壁はバレル孔の側方、下壁はバレル孔の下方)に壁が延びているところであることを説明している。
訂正後の「考案の効果」として、「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部に突設したベース上に棒状の案内レールを突設し」と記載され、第1図や第2図に、一方のみの側壁の下方部に突設したベース上に棒状の案内レールを突設している構成が開示されているから、本質が「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部にベースを一体に突設すること」にあることは当業者にとって極めて明白である。
訂正前の明細書には、実施例の説明として、「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、該ベース11上には、断面形状台形状をなす案内レール10がピストン2の軸芯と平行に取付けられ、」(本件公報第3欄26〜30行)と記載され、第1図及び第2図には、「一方のみの側壁9の下方部にベース11を一体に突設すること」及び「ベース11が突設される側壁の下方部はその一方の側壁から下方に壁が延びているところであること」が当業者にとって明確に図示されているから、訂正後の「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成が本件実用新案権の訂正前の明細書に開示されている。
訂正審判請求書(審判甲第10号証)に、「訂正(あ)」の訂正の原因として、
「訂正(あ)は、…と訂正し、案内レールの設置位置を一方の側壁の下方部に突設したベースの上に特定すると共に、案内レールを棒状のものに特定し、かつ案内レールをベースの上にバレルと一体に突設することに特定するものである。」と記載されている。
被告は、「さらに「その側壁の下方部」がいかなる部分を指称するか本件公報の詳細な説明及び第2図を参照しても明確な開示あるいは示唆がない」と主張しているが、前記のように明細書に「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、」と記載され、
第1図及び第2図に「一方のみの側壁9の下方部にベース11を一体に突設すること」が当業者にとって自明な事項として記載され、「側壁の下方部」が第2図のベースが突設している部分を示すことは明細書に記載した事項の範囲内のことであるから、被告の主張は失当である。
…以下略…(@-2)訂正事項(い)について、
訂正事項(い)は、「登録請求の範囲減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」に該当し、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(@-3)訂正事項(う)ないし(お)について、
訂正事項(う)ないし(お)は、「明瞭でない記載の釈明」に該当し、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
A 本件考案は、下記の理由により、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされる実用新案法第39条第3項の規定に適合する。
記(A-1)本件考案は、審判甲第4号証及び審判甲第1号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(A-2)本件考案は、審判甲第1号証、審判甲第4号証及び審判甲第13号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(A-3)本件考案は、審判甲第13号証、審判甲第3号証及び審判甲第4号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(A-4)本件考案は、審判甲第1証、審判甲第3号証、審判甲第4号証及び審判甲第13号証に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものではなく、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
(5) 審決の判断「訂正審決で認容された訂正事項(あ)」の訂正の適否について判断する。
訂正事項(あ)では、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみに、ピストンの軸芯と平行な案内レールをバレルと一体に設け、」とあったのを、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、そのベースの上にピストンの軸芯と平行な棒状の案内レールを一体に突設し、」と訂正した。
そこでまず、訂正前と訂正後において共通して現れる「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」における「側壁」が、どの部位を指示するのかについて検討する。
訂正前の明細書考案の詳細な説明における「バレルlAのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに」(本件公報第3欄第18〜20行)なる記載、
同じく「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで」(本件公報第3欄第26〜28行)なる記載、及び訂正後の明細書(審判甲第19号証)の考案の詳細な説明における「バレル1Aのスリットを挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみには」(第2頁第28,29行)なる記載、同じく「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで」(第3頁第6,7行)なる記載、並びに本件公報の第1,2図の記載内容からみて、訂正前も訂正後も、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」における「側壁」は、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9a」であると解釈できる。(この側壁9,9aは、本件公報の第2図において、その頂部から下方にそのまま垂線を延長し、底部側壁9bに到達する直線状の壁部と考えるのが妥当であろう。) 以上のことを前提として、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部」について検討する。
前記文言には、一つの文節中に「側壁」が三つ現れている。そして、第1番目の「側壁」と第2番目の「側壁」は、指示語「その一方」があることから両者が同一であることは明確に把握できる。また、「一方の側壁から」の「から」は出発点を示す助詞であり、そうであるならば、「一方の側壁から下方に延びる側壁」は「一方の側壁から発して最終的に到達する他の側壁」であるべきであり、少なくとも「下方に延びる側壁」は出発点を示す側壁と同一ではあり得ない。
そこで、訂正後の登録請求の範囲に現れ、訂正前の登録請求の範囲に現れない「一方の側壁から下方に延びる側壁」について、訂正前の明細書又は図面に記載されているか否か検討する。
訂正前の明細書には、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに案内レール10を取付け、」(本件公報第3欄第18〜20行)及び「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、」(本件公報第3欄第26〜28行)と記載されるだけで、「一方の側壁から下方に延びる側壁」、すなわち「側壁9,9aのいずれか一方から下方に延びる側壁」について記載も示唆もしていない。また、第1図ないし第3図の記載内容を参照しても、「一方の側壁から下方に延びる側壁」について記載も示唆もしていない。
以上のとおりであるから、上記訂正事項(あ)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正とは認められない。
したがって、訂正事項(あ)は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第39条第1項ただし書きの規定に適合しない。
なお、訂正事項(あ)に関する原告の主張は、下記@ないしCの理由によりいずれも失当である。
記 @ 原告は、「「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成に関連して、訂正後の「考案の効果」として、「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部に突設したベース上に棒状の案内レールを突設し」と記載され、それに関連する第1図や第2図にもそのような構成が示されていることから、その本質が「両側の側壁の一方のみの側壁の下方部にベースを一体に突設すること」にあることは当業者にとって極めて明白である。」と主張する。
しかしながら、「考案の効果」にそのような記載があるからといって登録請求の範囲第1項がそれと異なる構成要件を特定するものである以上、そしてまた、登録請求の範囲特定される構成要件が本件考案の権利範囲を確定する上で必要不可欠のものである以上、前記「考案の効果」の記載を優先させて考慮すべきものではない。
A 原告は、「「その一方の側壁から下方に延びる」は、それに続く「側壁の下方部」を修飾する用語として用いたものであり、側壁の下方部が一方の側壁から下方(側壁はバレル孔の側方、下壁はバレル孔の下方)に壁が延びているところである」と主張する。
しかしながら、「一方の側壁」と「一方の側壁から下方に延びる側壁」とが同一ではあり得ないことに変わりはない。また、「側壁」をバレル孔の側方のみに限定する根拠、及び「下壁」をバレル孔の下方のみに限定する根拠は存在しない。
B 原告は、「訂正後の「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成が訂正前の明細書に開示されている。」とし、断面形状台形状をなす案内レール10に関連する記載及び第1図、第2図の内容を示している。
しかしながら、原告が実施例の説明として掲げる「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレルlAの略全長に亘る如くに突設したベースで、該ベース11上には、断面形状台形状をなす案内レール10がピストン2の軸芯と平行に取付けられ、」(本件公報第3欄第26〜30行)という記載が、
「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成と対応するものとは認められない。
C 原告は、被告が指摘する「その側壁の下方部」がいかなる部位を示すか明らかでないとの主張に対し、「「側壁の下方部」が本件公報の第2図のベースが突出している部分を示すことは、明細書に記載した事項の範囲内のことであるから、被告の主張は失当である」と主張する。
しかしながら、バレルを形成する側壁9(その一方の側壁)がスリット側の水平方向の側壁端部から下方に指向して垂直に延び、ベース11との境界線を通って底面9bに至るまでの一連の壁部であると判断されることから、「その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部」が本件公報の第2図のベースが突出する部分でないことはいうまでもない。少なくとも、その一方の側壁が参照符号9で特定される以上、そこからさらに延在する側壁は存在せず、かつその側壁の下方部もなく、該下方部が存在しない以上、そこから延在するベースもまた存在し得ない。
(6) 審決のむすび 以上のとおり、訂正審決で認容された訂正事項(あ)は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第39条第1項ただし書きの規定に適合しない。
したがって、本件考案の実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、
かつ同条第2項の規定により読み替えるものとされる実用新案法第37条第1項第二の二号の規定により無効とすべきものである。
原告主張の審決取消事由
審決は、訂正明細書の記載内容の解釈を誤った結果、訂正明細書の記載が訂正前明細書に記載した事項の範囲外であると判断した点において違法であり、取り消されるべきである。
1(1) 審決は、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」における「側壁」が指示する部位を次のように認定している。
「訂正前の明細書考案の詳細な説明における「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに」(本件公報第3欄第18〜20行)なる記載、同じく「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで」(本件公報第3欄第26〜28行)なる記載、及び訂正後の明細書(甲第19号証)の考案の詳細な説明における「バレル1Aのスリットを挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみには」(第2頁第28,29行)なる記載、同じく「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで」(第3頁第6,7行)なる記載、並びに本件公報の第1,2図の記載内容からみて、訂正前も訂正後も、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」における「側壁」は、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9a」であると解釈できる。(この側壁9,9aは、本件公報の第2図において、その頂部から下方にそのまま垂線を延長し、底部側壁9bに到達する直線状の壁部と考えるのが妥当であろう。)」 (2) ところが、訂正前の明細書は、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」に関して、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに」(本件公報第3欄第18〜20行)と記載し、また、「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9に」(本件公報第3欄第26〜27行)、「18は、バレル1Aの反対側の側壁9aに取付けられた」(本件公報第3欄第42〜43行)、「他方側の側壁9aはそのままの状態であるから」(本件公報第4欄第13〜14行)、「尚バレル1A下側の側壁9bを、取付面として使用することも従来と同様である。」(本件公報第4欄第16〜18行)と記載し、第1図及び第2図では、
上向きのスリット4を有するバレル1Aの左側の側壁を符号「9」で示し、バレル1Aの右側の側壁を符号「9a」で示し、バレル1Aの下側の側壁を符号「9b」で示し、バレル1Aの側壁全体を、バレル孔の左側に位置する左側の側壁9と、バレル孔の右側に位置する右側の側壁9aと,バレル孔の下側に位置する下側の側壁9bとに区分して説明している。
(3) したがって、バレル1Aの左側の側壁9と右側の側壁9aが、本件考案の「スリット4を挟んだ両側の側壁」を構成していることは明らかである。この種のバレル1Aは、明細書に「尚バレル1A下側の側壁9bを、取付面として使用することも従来と同様である。」(本件公報第4欄第16〜18行)との記載があるように、バレル1Aのバレル孔の下側の側壁9bを取付面として使用し、バレル1Aのバレル孔の左側の側壁9と右側の側壁9aを上向きのスリット4を挟んだ両側の側壁とし、下側の側壁9bを両側の側壁9、9aに含めていない。
(4) よって、審決が、「訂正前も訂正後も、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁」における「側壁」は、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9a」であると解釈できる。」と認定しておきながら、「(この側壁9,9aは、本件公報の第2図において、その頂部から下方にそのまま垂線を延長し、底部側壁9bに到達する直線状の壁部と考えるのが妥当であろう。)」と認定したのは誤りである。
(5) 被告は、垂直な線をバレル上端からバレル下端にかけて引いた部分がこの側壁である、と原告自ら自認していると主張するが、被告引用の乙20号証(本件無効審判事件の口頭審理調書)の図は、ベースを設ける場所を説明するために記載した略図にすぎず、被告の主張は失当である。
2(1) 審決は、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部」との構成における三つの「側壁」の同一性について次のように認定している。
「前記文言には、一つの文節中に「側壁」が三つ現れている。そして、第1番目の「側壁」と第2番目の「側壁」は、指示語「その一方」があることから両者が同一であることは明確に把握できる。また、「一方の側壁から」の「から」は出発点を示す助詞であり、そうであるならば、「一方の側壁から下方に延びる側壁」は「一方の側壁から発して最終的に到達する他の側壁」であるべきであり、少なくとも「下方に延びる側壁」は出発点を示す側壁と同一ではあり得ない。」 (2) しかしながら、本件明細書の詳細な説明や図面には、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その側壁からバレル孔下方(下側の側壁9bを意味する)へ延びている領域であるその側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成が明確に記載されている。そうすると、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」を、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、」、「その一方の側壁から下方に延びる」、「側壁の下方部に」、「ベースを一体に突設し」と区分し、「その一方の側壁から下方に延びる」が「側壁の下方部」を修飾し、「側壁の下方部」が一方の側壁から下方に壁が延びているところの側壁下方部の部位を示していると容易に理解される。日本語文章の解釈から考えても、「その一方の側壁から下方に延びる」が「側壁の下方部」を修飾する用語であると十分に理解可能である。
3(1) 審決は、「一方の側壁から下方に延びる側壁」について、訂正前の明細書又は図面に記載されているか否か検討して、次のように認定している。
「訂正前の明細書には、「バレル1Aのスリット4を挟んだ両側の側壁9,9aの一方のみに案内レール10を取付け、」(本件公報第3欄第18〜20行)及び「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、」(本件公報第3欄第26〜28行)と記載されるだけで、「一方の側壁から下方に延びる側壁」、すなわち「側壁9,9aのいずれか一方から下方に延びる側壁」について記載も示唆もしていない。また、第1図ないし第3図の記載内容を参照しても、「一方の側壁から下方に延びる側壁」について記載も示唆もしていない。」 (2) しかしながら、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」は前記のように区分して把握すべきで、本件考案と全く関係のない「一方の側壁から下方に延びる側壁」の概念を持出して対比することは恣意的であって、訂正前の明細書及び第1図ないし第3図に「一方の側壁から下方に延びる側壁」について記載も示唆もしていない、と認定したのは誤りである。
平成11年2月8日付け手続補正書に添付の補正後(訂正の)審判請求書(甲第3号証)には、次の記載がある。
「・訂正T(あ)について 訂正T(あ)は、登録請求の範囲第1項に記載の要件「両側の側壁の一方のみに、ピストンの軸芯と平行な案内レールをバレルと一体に設け、」を「両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し、そのベースの上にピストンの軸芯と平行な棒状の案内レールを一体に突設し、」と訂正し、案内レールの設置位置を一方の側壁の下方部に突設したベースの上に特定すると共に、案内レールを棒状のものに特定し、かつ案内レールをベースの上に一体に突設することに特定するものである。」 この(訂正の)審判請求書の記載からみても、訂正前の明細書図面に、「一方の側壁9から下方に壁が延びているところの側壁9の下方部にベース11を一体に突設し」た構成が記載されており、「一方の側壁から下方に延びている側壁の下方部にベースを一体に突設し」た構成が記載されていることは明らかで、訂正事項(あ)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえる。
審決取消事由に対する被告の反論
1 原告は、「バレル1aの左側の側壁9と右側の側壁9aが本件考案のスリット4を挟んだ両側の側壁を構成していることは明らかである。」と主張する。
この主張の趣旨及び内容は明らかでないが、バレルを形成する側壁9につき、その一方の側壁9がスリット側の水平方向の側壁上端部から下方に垂直に延び、ベース11の上端部との境界線に至るまでの部位である、と主張しているのであれば、
原告は自らの主張をその都度都合によって変えていることになる。本件無効審判事件の口頭審理調書である乙第20号証に添付された図によれば、原告は、前記側壁に関連して自ら図面を作成した上で、ベース部分にハッチングを入れ、一方、バレルはハッチングを入れることなくこのバレルの左側に「バレルの両側の側壁の一方」と明示し、垂直な線をバレル上端からバレル下端にかけて引いた部分がこの側壁である、と自認しているからである。
そうであるならば、この側壁9は、本件公報の第2図において、その頂部から下方にそのまま垂線を延長し、底部側壁9bに到達する直線上の壁部と考えるのが妥当であろう、とした審決の判断に誤りはない。
2(1) 原告は、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」は、
「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、」「その一方の側壁から下方に延びる、」「側壁の下方部に、」「ベースを一体に突設し、」と区分して読むべきであることから、審決の判断に誤りがあるとする。
しかしながら、訂正後の登録請求の範囲では、読点で区切ることなく、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」と一連の文言として書き表し、その結果訂正が認容されたものであり、その一連の文言を読む限りにおいては、審決の認定に誤りはない。
(2) 原告は、出発点を示す助詞「から」との関連において、審決は、「側壁」に関する登録請求の範囲の文言の解釈に当たり、考案の詳細な説明の記載や図面を無視していると主張する。そして、さらに原告は考案の効果に言及して、登録請求の範囲の解釈に影響させようとしている。
しかしながら、訂正が認容された登録請求の範囲考案の詳細な説明や図面によっても不明瞭であることは客観的に明らかであり、しかも考案の効果自体は、今回無効にされた訂正審判の際に導入されたものであって、出願当初の明細書に記載されていたものでもない。
3(1) 原告は、訂正後の「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」は、
「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、」「その一方の側壁から下方に延びる、」「側壁の下方部に、」「ベースを一体に突設し」と区分して把握すべきであることから、一方の側壁から下方に延びる側壁の概念を持ち出して対比した審決は恣意的であって、その認定に誤りがあると主張する。
しかしながら、「側壁」の理解をするに当たって、その文言が一連に書かれており、読点によって明確に区分されたものでない以上、原告主張の解釈によると、かえって請求範囲の解釈を誤りに導く可能性がある。審決は「一方の側壁から下方に延びる側壁」の概念を新たに持ち出したのではなく、訂正無効とされた請求範囲をそのまま忠実に理解している。
(2) 訂正(あ)については、訂正が認められた請求の範囲には、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」と一連に明確に規定されており、審決が認定するように、側壁9、9aのいずれか一方の終端する位置から更に下方に延びる側壁について記載も示唆も存在しないのは、明らかである。
当裁判所の判断
1 原告主張の取消事由は、要するに、審決が、訂正審決で認容された訂正事項(あ)について、本件訂正がその要件を欠くものであるとして本件実用新案登録を無効とすべきものとした点の誤りをいうものである。
そこで訂正事項(あ)についてみる。訂正後の登録請求の範囲における「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にべ一スを一体に突設し」の文言から読み取ることのできる技術的意義を検討するに、訂正後の文言中、第1番目の「側壁」と第2番目の「側壁」は、
指示語「その一方」があることからして、同一のものである。
次に、「一方の側壁から」の「から」が出発点を示す助詞であるものと解されるので、「一方の側壁から下方に延びる側壁」と分節を区切った場合、第3番目の「側壁」は、例えば「一方の側壁から発して最終的に到達する他の側壁」とも解することができるところ、この「他の側壁」が何の側壁であるのかは、登録請求の範囲の記載によっては明らかではない。側壁とは何らかの構造物の側面の壁であると解されるが、第1番目の「側壁」と第2番目の「側壁」は、バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方の側壁であるから、「他の側壁」がバレルの側壁であるということ自体は明瞭であるものの、登録請求の範囲にはバレルの下方に位置する構造物についての記載はない。バレルの下方に構造物が存在していないのならば、そこに側壁が存在することはあり得ず、「他の側壁」が何の側壁なのかは、登録請求の範囲の記載からは不明である。
結局、登録請求の範囲の記載自体から、「一方の側壁から下方に延びる側壁」と文言を区分した場合の側壁がどのような側壁を意味しているのかを一義的に読み取ることはできない。
2 そこで本件明細書考案の詳細な説明及び図面の記載をみるに、甲第4号証によれば、訂正明細書における実施例の説明として、「第1図及び第2図において11は、バレル1Aの左側の側壁9にバレル1Aの略全長に亘る如くに突設したベースで、該ベース11上には、断面形状台形状をなす案内レール10がピストン2の軸芯と平行に取付けられ、該案内レール10の両側の斜面には弧状の案内面12が設けられている。」(第3頁第6〜第9行)との記載があることが認められ(この記載部分は訂正前のものと変わりがない。甲第6号証中の本件公報参照)、第1図及び第2図(甲第6号証中の本件公報。本判決2頁及び3頁)には、バレル1Aの左側の側壁9のほぼ下半分に、バレル1Aのほぼ全長にわたるようにベース11が一体に突設されている様子が示されていることが認められる。他方において、訂正明細書及び図面に、バレル1Aの下方に他の構造物を設けることや、バレル1Aの左側の側壁9の下方に他の側壁を設けることの記載及び図示は認められない。
そうすると、明細書考案の詳細な説明及び図面の参酌結果によっても、「一方の側壁から下方に延びる側壁」が、バレル1Aの左側の側壁9以外の他の側壁を意味していると解することはできない。
3 一方、原告主張のとおり、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、その一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部にベースを一体に突設し」を、「バレルのスリットを挟んだ両側の側壁の一方のみには、」、「その一方の側壁から下方に延びる」、「側壁の下方部に」、「ベースを一体に突設し」と区分してみると、「その一方の側壁から下方に延びる」が「側壁の下方部」を修飾し、
「側壁の下方部」が一方の側壁から下方に壁が延びているところの側壁下方部の部位を示していると解することも、文理解釈上成り立つものである。そして、上記2で判断したところによれば、このような解釈も、訂正前明細書考案の詳細な説明及び図面とも矛盾するものではない。したがって、「一方の側壁から下方に延びる側壁の下方部」をもって、バレル1Aの左側の側壁9と解すべきものであるとする原告の主張は理由がある。
4 甲第3号証によれば、本件訂正審判請求書に、訂正事項(あ)について、
「案内レールの設置位置を一方の側壁の下方部に突設したベースの上に特定すると共に、案内レールを棒状のものに特定し、かつ案内レールをベースの上に一体に突設することに特定するものである」(第5頁第23〜25行)と記載されていることが認められる。そして同請求書第5頁第12〜16行の記載によれば、「上記実施例において案内レール10は、バレル1Aの側壁9に突設したベース11上に取付けられているが、バレル1Aとは別個に設けたベース11に案内レール10を取付け、適宜の取付具によってバレル1Aに一体的に取付けても良い。」との文章を削除する訂正の請求もされていることが認められるので、本件訂正は、案内レール10の設置位置を「バレル1Aの左側の側壁9に突設したベース11上に取付ける」実施例に限定したものと解される。乙第20号証(本件無効審判事件の口頭審理調書)添付の図によっても、上記認定判断は左右されない。
5 したがって、訂正事項(あ)は、明細書又は図面に記載された範囲内の事項でないとすることはできない。審決は、「一方の側壁から下方に延びる側壁」は「一方の側壁から発して最終的に到達する他の側壁」であるべきであり、少なくとも「下方に延びる側壁」は出発点を示す側壁と同一ではあり得ないとし、訂正前の明細書又は図面には「一方の側壁から下方に延びる側壁」についての記載も示唆もないと認定した上で、訂正事項(あ)において、本件訂正はその要件を欠くものであるとして本件実用新案登録を無効とすべきものとしたが、この訂正事項(あ)に関する判断は誤りであり、この誤りは審決の結論に影響を及ぼすものとして、審決は取消しを免れない。
結論
よって、原告の請求は認容されるべきである。
(平成14年4月18日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 田中昌利
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