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関連審決 無効2000-35053
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  請求項 /  実施例 /  公知技術 /  頒布 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 12年 (行ケ) 497号 審決取消請求事件
原告 東洋エクステリア株式会社
訴訟代理人弁護士 内藤義三
訴訟代理人弁理士 田村公總
被告 ワイケイケイアーキテクチュラルプロダクツ株式会社
訴訟代理人弁理士 浜本忠、佐藤嘉明、高橋邦彦
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/06/20
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が無効2000-35053号事件について平成12年11月1日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 被告が実用新案権者である本件実用新案登録第2148586号(名称「連棟式車庫の屋根端部連結構造」)は、平成2年4月18日に出願され、平成9年6月20日に設定登録され、平成12年1月20日に東洋エクステリア株式会社より無効審判の請求があり、無効2000-35053号事件として審理されたが、平成12年11月1日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同月27日原告に送達された。
2 本件考案(請求項1に係る考案)の要旨 支柱1に屋根4を取付けた片流れ屋根を備えた一対の車庫5、5を、その屋根4の端部相互を対向して配設し、その屋根端部を連結して成る連棟式車庫において、
前記屋根4の端部を構成する前枠10の外側面を略半円形状とし、相対向する一対の前枠10、10の外側面上部間に跨って、横片23に締結片24を設けて成る前枠連結カバー22の横片23を載置し、前記一対の前枠10、10の外側面下部に、裏板25における前記前枠10の外側面と同一形状の一側前枠当接部26と他側前枠当接部27をそれぞれ押しつけ、
この裏板25よりビス29を前記締結片24に締付けて前記連結カバー22と裏板25で一対の前枠10、10を挟持したことを特徴とする連棟式車庫の屋根端部連結構造
本件考案図面(実施例図面) 3 審決の理由の要点 (1) 請求人(原告)及び被請求人(被告)の主張の概要 原告は、請求の理由として、本件実用新案登録の請求項1に記載された考案は、
その出願前日本国内において頒布された審判甲第1号証の1ないし審判甲第9号証に記載されたものから当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項に該当し無効とされるべきである旨主張する。
一方、被告は、本件考案は審判甲第1号証の1ないし審判甲第9号証に何ら開示されていない構成を具備し、明細書記載の特有の作用効果を奏するものであるから、本件考案は審判甲第1号証の1ないし審判甲第9号証に記載されたものから当業者が極めて容易に考案できたものではない旨主張する。
(2) 証拠に記載された事項の認定 原告は審判甲第1号証の1ないし審判甲第9号証を提示するので検討する。
審判甲第1号証の4は報告書であって、これ自体は出願前の公知文献ではなく、
また、審判甲第1号証の6は出願前の公知文献ではない。
また、審判甲第1号証の1ないし審判甲第1号証の3、審判甲第1号証の5、審判甲第2号証及び審判甲第3号証については、被告はその成立性及び公知性を争うが、その点はさておき、先に記載された事項を検討する。なお、審判甲第1号証の1ないし審判甲第3号証の発行日は、原告主張の発行日を記載する。
(2)-1 審判甲第1号証の1(原告、昭和62年1月1日発行「’87総合カタログ」) 236頁には「フリーポート」として、支柱に片流れ屋根を取付けた車庫が記載されており、
237頁の上段には「・・まさに2台目の時代にふさわしいワイド&ダブルの合掌タイプです。・・」と記載され、ここで「合掌タイプの車庫」とは、図の右側図面上方の「フリポート合掌タイプ27-27(ステンカラー)」との記載、セット価格表の各「合掌」の記載から、片流れ屋根を備えた一対の車庫を、その屋根の端部相互を対向して配設し、その屋根端部を連結してなる連棟式車庫をいい、中段にはこの合掌タイプの車庫の写真が掲載されている。
また233頁ないし235頁には「エルポート」として屋根の両側が支柱により支持された車庫が掲載されている。
(2)-2 審判甲第1号証の2(原告、昭和61年9月ころ発行「フリーポート取付説明書-基本・合掌・連棟」) 9頁及び10頁には「合掌仕様」の車庫の図面が記載され、
9頁には「1.姿図及び基本寸法」として車庫のパース図及び正面図が、10頁には「2.合掌材の取付」、「3.合掌金具の取付」としてそれぞれ正面図、斜視図が記載され、「2.合掌材の取付」の正面図によれば、連棟式車庫において、前記屋根の端部を構成する前枠の外側面を略段差平板形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けてなる合掌材の横片を載置し、前記一対の前枠の外側面下部に、合掌材取付金具における前記前枠の下端に対接する形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、この合掌材取付金具よりビスを前記締結片に締め付けて前記合掌材と合掌材取付金具で一対の前枠を挟持する連棟式車庫の屋根端部連結構造が記載されている。
(2)-3 審判甲第1号証の3(原告、平成元年9月発行「製品マニュアル カーポート・テラス編」) 15頁上段右側の「1.合掌材の取付け」の正面図には、連棟式車庫において、
前記屋根の端部を構成する前枠の外側面を略段差平板形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けてなる合掌材の横片を載置し、
前記一対の前枠の外側面下部に、合掌材取付金具における前記前枠の下端に対接する形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、この合掌材取付金具よりビスを前記締結片に締付けて前記合掌材と合掌材取付金具で一対の前枠を挟持する連棟式車庫の屋根端部連結構造が記載され、
34頁から37頁には、「アルミカーポートF型」が掲載され、37頁中段左側の「2.合掌材の取付け」の正面図には、15頁に記載されたものと同様の合掌材と合掌材取付金具による連棟式車庫の屋根端部連結構造が示されており、前枠外側面の形状は傾斜平板状となっている。
(2)-4 審判甲第1号証の5(原告、平成元年10月1日発行「TOTAL EXTERIOR '89-'90」) 384頁及び386頁には、支柱に片流れ屋根を取付けた車庫が記載され、
390頁ないし395頁には、屋根の両側が支柱により支持された車庫が記載されている。
(2)-5 審判甲第2号証(トーヨーサッシ株式会社、1988年8月発行「’87/’88基本図・納まり図集」) 203頁には「カーポートST」としていわゆる合掌タイプの車庫が記載されており、
同頁上段には「合掌」として、片流れ屋根を備えた一対の車庫を、屋根の端部相互を対向して配設し、その屋根端部を連結してなる連棟式車庫が示され、
下段には「合掌連結部正面図」として、上記連棟式車庫において、前記屋根の端部を構成する前枠の外側面を略傾斜平板形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けてなる連結カバーの横片を載置し、前記一対の前枠の外側面下部に、裏板における前記前枠の下端に対接する形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、この裏板よりビスを前記締結片に締付けて前記連結カバーと裏板で一対の前枠を挟持した連棟式車庫の屋根端部連結構造が示されている。
(2)-6 審判甲第3号証(三協アルミニウム工業株式会社、昭和59年6月発行「エクステリア設計施工手引書」) 125頁には支柱に片流れ屋根を取付けた車庫が記載され、該屋根の前枠の外側面を略湾曲形状としており、
127頁の中段左にはいわゆる合掌タイプの車庫が記載されており、同下段には、屋根の端部を構成する前枠の外側面を略湾曲形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けてなる合掌材の横片を載置し、前記一対の前枠の外側面下部に、前枠合掌金具における前記前枠の下端に対接する一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、この前枠合掌金具よりビスを前記締結片に締付けて前記合掌材と前枠合掌金具で一対の前枠を挟持した連棟式車庫の屋根端部連結構造が記載されている。
(2)-7 審判甲第4号証(実開平1-153022号公報(平成1年10月23日出願公開)) 「組立建物の屋根における雨水排出装置」に関する考案が記載されており、特に第2図及び第4図には、垂木14の軒先側端部が略半円形状に形成された状態が図示されている。
(2)-8 審判甲第5号証(森北出版株式会社、昭和41年6月20日発行「建築工事データブック」) 883頁には「3 アルミニウム合金の骨組みをもつプレハブ工法」、「3・7・3サンドウイッチパネルおよびその他(レイノルズ社資料より)」として各種のパネルの端部連結構造が図示され、特に右側のJには、直交するパネルの端部間を、締結片を有する断面四半円の片と裏板とビスとにより挟持したパネルの端部連結構造が図示されている。ここにおいて、パネルの端部は平面状になっている。
(2)-9 審判甲第6号証(株式会社建築知識、昭和56年2月20日発行「建築知識資料版NO.2設計カタログ 12 開口部材」) 64頁上段には「サンアール断面図」が図示されており、特にB-B断面図には、湾曲した部材の端部間に跨がって、下側から、横片に締結片を設けてなる連結枠の横片を裏当てし、上側には、湾曲した部材の端部間に跨がってカバーの一側端部当接部と他側端部当接部をそれぞれ押しつけ、このカバーよりビスを締結片に締付けて連結枠とカバーで湾曲した部材の端部を挟持した連結構造が図示されている。
(2)-10 審判甲第7号証(特許庁公報、昭和62年3月30日発行「周知・慣用技術集(戸・窓等開口部閉鎖部材)」) 22頁には「角度方立」として、「2.技術内容・・・すでに組み立てられた左、右ユニットの竪枠間の隙間より角度方立を差し込み、差し込んだ角度方立に目板をネジ止めしてセットし、目板塞ぎでネジ部を塞ぐ。従って、ある角度範囲を設定した角度方立を用いる事により種々の角度に対応でき・・・る。」と記載され、
「3.図面」には、竪枠の端部間に跨がって、湾曲した横片に締結片を設けてなる角度方立の横片を載置し、一対の竪枠の側面内側に、角度方立目板における一側竪枠当接部と他側竪枠当接部をそれぞれ押しつけ、この角度方立目板よりビスを締結片に締付けて角度方立と角度方立目板で一対の竪枠を挟持した竪枠の端部連結構造が図示されている。
また24頁には、「コーナー方立の角度決め方法」が図示されており、2つの円弧状の角度方立アタッチメント間に、これらと対応する形状の角度方立を用いて、
円弧状の当接面によって取付け角度を変え得る構造とした方立が図示されている。
(2)-11 審判甲第8号証(実開昭61-157607号公報(昭和61年9月30日出願公開)) 片流れ屋根に関する考案が記載されており、特に第4図には、2つの棟材24の端部を略半円形の凹部とし、これと対応する略半円形状の垂木本体50を2つの棟材24の端部間で当接させることにより、棟材相互を揺動自在に連結する構造が図示されている。
(2)-12 審判甲第9号証(実開昭55-162602号公報(昭和55年11月21日出願公開)) バルコニー支脚の支持構造に関する考案が記載されており、特に第2図及び第3図には、屋根上面に当接される駒部の背部を凸面となる円弧状とし、駒部に連結される鞍本体を上記凸面となる円弧状と対応する凹面の円弧状とすることにより、両者を摺動自在に連結する構造が図示されている。
(3) 本件考案と審判甲号証に記載されたものとの対比、判断 (3)-1 本件考案と審判甲第3号証の特に127頁の中段左及び下段に図示されたもの(以下「審判甲第3号証に記載されたもの」)とを対比すると、審判甲第3号証に記載されたものは、片流れ屋根を備えた一対の車庫を、その屋根の端部相互を対向して配設し、その屋根端部を連結したいわゆる合掌タイプの車庫であって、
片流れ屋根の端部を構成する前枠の外側面を略湾曲形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けてなる合掌材(本件考案の前枠連結カバーに相当)の横片を載置し、前記一対の前枠の外側面下部に、前枠合掌金具(同裏板に相当)における前記前枠の下端に対接する一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、この前枠合掌金具よりビスを前記締結片に締付けて前記合掌材と前枠合掌金具で一対の前枠を挟持した連棟式車庫の屋根端部連結構造が記載されていると認められる。ここで審判甲第3号証に記載されたものの、柱、合掌材、前枠合掌金具はそれぞれ、本件考案の支柱、前枠連結カバー及び裏板に相当するものであるから、本件考案と審判甲第3号証に記載されたものとは次の点で一致し、相違していると認められる(符号は省略)。
[一致点]「支柱に屋根を取付けた片流れ屋根を備えた一対の車庫を、その屋根の端部相互を対向して配設し、その屋根端部を連結してなる連棟式車庫において、
前記屋根の端部を構成する前枠の外側面を曲面形状とし、相対向する一対の前枠の外側面上部間に跨って、横片に締結片を設けて成る前枠連結カバーの横片を載置し、前記一対の前枠の下部に、裏板における一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ、
この裏板よりビスを前記締結片に締付けて前記連結カバーと裏板で一対の前枠を挟持したことを特徴とする連棟式車庫の屋根端部連結構造。」[相違点1] 本件考案は、屋根の端部を構成する前枠の外側面を略半円形状としているのに対し、審判甲第3号証に記載されたものは、湾曲面形状としている点。
[相違点2] 本件考案は、裏板における前記前枠の外側面と同一形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけて連結カバーと裏板とで前枠を挟持しているのに対し、審判甲第3号証に記載された裏板はそのようになっていない点。
(3)-2 相違点の検討 まず、相違点2について検討する。
車庫において、「前枠」とは、屋根を片側に設けた柱で支持するいわゆる片側支持式車庫において、柱で支持される側と反対側の屋根の端部の枠をいう(審判乙第1号証(JISA6604-1996)参照。なお、職権調査によればJISA6604-1989においても同様の記載が認められる。)ものであって、本件考案においてもそのような意味で「前枠」という用語を用いていることは明らかである。
原告は、本件考案の前枠を片流れ屋根の車庫に関する平成8年のJIS規格である審判乙第1号証によって規定しなければならない理由はなく、そのような定義が明細書にあるわけでもないから、設置状態で定まる前後左右のうちの前に存する枠が前枠である旨主張するが、本件考案は実用新案登録請求の範囲において、片流れ屋根の車庫の端部を構成する前枠であることを明確にしており、その前枠に関しては実施例において、柱で支持される側と反対側の屋根の端部の枠のみを例示しており、
さらに、1989年(平成元年)のJIS規格においても、屋根を片側に設けた柱で支持するいわゆる片側支持式車庫において、柱で支持される側と反対側の屋根の端部の枠を前枠としており、また、原告の提示した審判甲第1号証の1、同2、審判甲第3号証においても、屋根を片側に設けた柱で支持するいわゆる片側支持式車庫において、柱で支持される側と反対側の屋根の端部の枠を前枠としていることと整合するものであるから、原告のように、設置状態で定まる前後左右のうちの前に存する枠を前枠とすることはできない。
そして、本件考案は、前枠の外側面を略半円形状とするとともに、相違点2に記載したように、「裏板における前記前枠の外側面と同一形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ」る構成としたものであって、そのことによって、明細書に記載したように、「前枠連結カバー22と裏板25に対して前枠10が若干上下揺動変位できるから、屋根勾配の異なる片流れ屋根を備えた車庫でも連結できる。屋根4を構成する前枠10相互に跨って前枠連結カバー22と裏板25を配設してビスで締付ければ良いので、屋根端部の連結作業が簡単となる。しかも、裏板25における前枠当接部26、27が、前枠10の略半円形状の外側面と同一形状であるため、前枠10の揺動変位を許容しながらも、前枠10の外側面と密接して屋根端部相互を安定して保持することができ、この裏板25と前記連結カバー22とにより一対の前枠10、10を強固に挟持することができる。」(考案の効果の項)という作用効果を奏するものである。
一方、審判甲第1号証の1ないし審判甲第1号証の3、審判甲第1号証の5並びに審判甲第2号証、審判甲第4号証ないし審判甲第9号証に記載されたものには、
前記1において認定したように、外側面を略半円形状とした前枠相互を連結する構成が記載されておらず、ましてや、当該前枠の外側面と同一形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部とを有する裏板について記載されていない。
以上のように、本件考案は、審判甲第1号証の1ないし審判甲第1号証の3、審判甲第1号証の5並びに審判甲第2号証ないし審判甲第9号証に記載されていない構成を有し、そのことによって明細書記載の作用効果を奏するものであるから、仮に審判甲第1号証の1ないし審判甲第1号証の3、審判甲第1号証の5、審判甲第2号証及び審判甲第3号証が公知であったとしても、本件考案は審判甲第1号証の1ないし審判甲第1号証の3、審判甲第1号証の5並びに審判甲第2号証ないし審判甲第9号証に記載されたものから当業者が極めて容易に考案できたとすることはできない。
(3)-3 原告は、前枠の外側面を略半円形状とした点について、片流れタイプの車庫においてその前枠の外側面を略半円形状としたものは本件考案の出願前に周知であったとして、審判甲第1号証の1、同3、同5及び審判甲第4号証を挙げ、また、前枠の外側面を略半円形状とした場合に、裏板の形状をこの略半円形状と同一の形状とすることは、審判甲第2号証の170頁、審判甲第7号証の24頁、審判甲第8号証、審判甲第9号証に、物の連結構造において連結対象の被連結材と連結材の形状を相互に円弧面として、これらを嵌合又は係合させて連結を行うことが本件考案出願前に公知又は周知であったから、当然の措置にすぎない旨主張する。
しかしながら、審判甲第1号証の1、同3及び審判甲第4号証に示されたものには、片流れタイプの車庫においてその前枠の外側面を略半円形状とした構成は認められない。
次に、審判甲第1号証の5の384頁の写真によれば、片流れタイプの車庫において、一見、その前枠の外側面を略半円形状とした構成が認められるものの、仮に審判甲第1号証の5が本件考案出願前に公知であったとしても、これのみから片流れタイプの車庫において、その前枠の外側面を略半円形状とした構成が周知であったとすることはできない。また、審判甲第1号証の5には、片流れタイプの車庫が単独で使用されている写真が示されているにすぎず、片流れタイプの車庫の屋根部分を連結するものではない。
次に、審判甲第2号証の170頁、審判甲第9号証に記載されたものは、2つの物の連結構造において、連結対象の被連結材と連結材の形状を互いに円弧面として、これらを嵌合又は係合させて連結を行うものではあるものの、両者に記載されたものはともに支持部の構造に関するものであって、本件考案のように2つの部材(前枠)を連結するための部材の構造に関するものではないから、本件考案の前枠連結カバーと裏板等による連結構造とは基本的に異なる技術と考えられる。
次に、審判甲第7号証の24頁には、コーナー方立として、2つの円弧状の角度方立アタッチメント間に、これらと対応する形状の角度方立を用いて、円弧状の当接面によって取付け角度を変え得る構造とした方立が図示されているが、角度方立は直接2つの円弧状の角度方立アタッチメントに連結されて設定角度を出せるようになっているのであるから、この角度方立を本件考案の裏板に相当するものとした場合には、本件考案の前枠連結カバーに相当するものを必要とせず、また、審判甲第8号証の特に第4図には、2つの棟材24の端部を略半円形の凹部とし、これと対応する略半円形状の垂木本体50を2つの棟材24の端部間で当接させることにより、棟材相互を揺動自在に連結する構造が図示されているが、この垂木本体を本件考案の裏板に相当するものとした場合に、本件考案の前枠連結カバーに相当するものを必要としないのであって、いずれのものも本件考案の特に「裏板25と前記連結カバー22とにより一対の前枠10、10を強固に挟持することができる。」という作用効果を奏することができないものである。
以上のように、裏板の形状を前枠の略半円形状と同一の形状とすることは、いずれの証拠にも記載されておらず、仮に審判甲第1号証の5に記載されたものにおいて前枠が略半円形状となっているとしても、前枠、裏板相互の形状を本件考案の相違点2に係る構成としたものがいずれの証拠にも記載されていないことから、原告の主張は採用することができない。
(4) 審決のまとめ 以上のとおりであるから、原告の主張及び証拠方法によっては、本件実用新案登録の請求項1に係る考案を無効とすることはできない。
原告主張の審決取消事由
審決は本件考案の作用効果の認定を誤り、その結果相違点2の判断を誤ったものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 審決は、「片流れタイプの車庫において、・・前枠の外側面を略円形状とした・・(ものが)公知であったとしても、・・周知であったとすることはできない。」として、前枠の外側面を略円形状とした片流れタイプの車庫が周知ではないことを理由として、片流れタイプの車庫2台を組み合わせた合掌型の車庫を発明することは容易ではないと判断した。
しかし、その前提事項である「前枠の外側面を略円形状とした」「片流れタイプの車庫」は周知であるので、これを2台合掌式に組み合わせることは容易であり、
審決は容易推考の判断の前提事実を誤認したものである。
2 本件考案と審判甲第1号証の2、3と審判甲第3号証(三協アルミエクステリア設計施工手引書)に記載のものとの差異は、本件考案が「前枠」の形状について「略半円形状」を選択し、「裏板」の両側の「前枠当接部」の形状について「前枠」の外側面と同一形状を採用したという2点のみの形状の違いだけで、後は同一である。
さらに、その形状自体についても、以下に示すように、片流れ屋根において前枠を略半円形にすること自体は周知であり、本件考案と同じエクステリア外装の分野で、2枚のフェンス前枠を円筒状とし、同型の板で両側から挟持しネジ止することも周知、車庫の屋根についても円筒状のものをこれと同型の板で両側から挟持しねじ止めすることも周知である等、本件技術分野における連結手段として周知なものを選択使用したにすぎず、かつ車庫の屋根に用いた点も公知あるいは周知である。
3 前枠を略半円形にすること自体は、審判甲第1号証の1、5及び甲第13号証(実開昭62-061805号公報)により周知である。
また、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、広い面積で固定するという点は、審判甲第7号証(特許庁周知慣用技術集)、
甲第14号証(実開昭54-183943号公報)、甲第15号証(実開昭62-177847公報)により周知である。
以上総合すれば、
@ 片流れ屋根式の車庫において、前枠を略半円形とすること、
A 円形、半円形(円筒状、半円筒状)のような形状のものを、裏板に相当する同形の形状の金具で挟持しビス、ボルト、ねじで締め付けることにより固定すること。それらが、「揺動変位」にも対応できること、
は周知であった。
これを2台合掌式に組み合わせることは容易であり、審決は容易推考の判断の前提事実を誤認し、その結果容易性の判断を誤ったものである。
4 また仮に片流れ式の車庫の前枠を略半円形状にすることは公知にすぎなかったとしても、他に片流れ式ではない車庫においては端部を略半円形状とすることは周知(審判甲第1号証の1の233頁等)であること、片流れ式の車庫においては、2台を合掌式に組み合わせること自体も周知(審判甲第1号証の2、審判甲第3号証)であることを考慮すれば、前枠を略半円形状にした片流れ式の車庫を合掌式に組み合わせることは、この公知技術から容易に推考できる事項である。
したがって、仮に片流れ式の車庫の前枠を略半円形状にすることは公知にすぎなかったとしても、前記各周知技術を綜合すれば、本件考案の容易推考性は否定されないので、片流れ式の車庫の前枠を略半円形状にすることは公知にすぎなかったことを理由に本件考案の容易推考性を否定したのは誤りである。
5 本件明細書には、本件考案は前記2点の相違点を採用したゆえに、「前枠の揺動変位を許容しながらも、前枠の外側面と密接して屋根端部相互を保持することができ、この裏板と前記連結カバーとにより一対の前枠を強固に挟持することができる」と説明している。「前枠の外側面と密接して屋根端部相互を保持することができ」というのは、「前枠の揺動変位」があっても「この裏板と前記連結カバーとにより一対の前枠を強固に挟持することができる」との効果が生じることを説明した記載であり、これ以外に前記2点を採用したことによる作用効果は存在しないし、明細書にその旨の記載もない。
したがって、本件考案は前記作用効果があって初めて進歩性が肯定されるのであって、前記2点が作用効果を生み出さないものであれば、本件考案進歩性は否定されるはずである。
6 同一技術分野の同一商品において、単に前枠の形状、裏板の当接部の形状のみを異にし、作用効果は共通の公知技術が存在する場合に、本件考案が容易推考し得るものか否かは、専ら前枠外側面の形状を略半円形状のものとすること、当接部の形状を前枠と同一形状とすることが当業者に容易かどうかである。
形状をどのように設定するかは、形状によって特異な作用効果が生じるときは別としても、一般には適宜に設定し得る単なる設計の事項であり、これによって考案進歩性が生じたりするものではないので、本件考案公知技術には見られない強固な連結力があって初めて容易に考案できるものではないから、問題は結局、連結力の大小に帰着する。
7 甲第21号証実験結果報告書に記載されているとおり、相互の前枠を略半円形とし、裏板の前枠当接部を同一形状としても、何ら挟持による連結力は生ぜず、
むしろ公知技術のように上下をやや平らな板で押さえ付けるようにした方がはるかに挟持による前枠相互の連結力は高く、かつ「若干の揺動変位」した場合でさえも、公知技術の方が挟持による前枠相互の連結力は高いから、本件考案には、「強固に挟持」する作用効果はないことが明らかである。
本件考案の公報図面をベクトル的に解析しても、一見面接触のように見えて、3点支持のところが2点支持状態になっているから、連結力はかえって弱くなっているのである。
この種の合掌式屋根は、本件考案も、甲第3号証記載のものも、いずれも「梁連結板とボルト」や「梁合掌金具とボルト、ナット」で連結されるものである。これはボルトで固定するものであるから、その連結力は抜群であり、金属が破断しない限り確実に固定され、その連結力は数百キロ以上(重量換算、以下同じ)あるものである。
本件考案や甲第3号証のような、前枠同士を上下で挟んでつなぐ部材は、前枠同士の水漏れを防止するためであり、前枠同士を「連結」して固定するためのものではない。したがって、この部分を改良しても、連結力はせいぜい数キロの連結力ににすぎないから、実際上は意味がない。
8 以上のとおり、本件考案の構成からは、公知技術に比して、「若干上下揺動変位」した場合にも「強固に挟持することができる」という効果は発生せず、前枠を略円形状とし、裏板をそれと同一形状にした要件からは、それらの効果と直結していないのに、それをあると誤認した審決は取り消されるべきである。言い換えれば、作用効果に顕著なものがない単なる構成の違いは、当業者にとって任意に選択できる設計事項であり、その違いを理由に公知技術からの容易推考性を否定するのは誤っている。
審決取消事由に対する被告の反論
1 本件考案の本質部分は「屋根4の端部を構成する前枠10の外側面を略半円形状とし、相対向する一対の前枠10、10外側面上部間に跨って、横片23に締結片24を設けて成る前枠連結カバー22の横片23を載置し、前記一対の前枠10、10の外側面下部に、裏板25における前記前枠10の外側面と同一形状の一側前枠当接部26と他側前枠当接部27をそれぞれ押しつけ、この裏板25よりビス29を前記締結片に24に締付けて前記連結カバー22と裏板25で一対の前枠10、10を挟持したこと」の構成を具備し、かつ、その構成をなす各要件が有機的に結合して、前記公知技術から期待することができない「前枠10の揺動変位を許容しながらも、前枠の10の外側面と密接して屋根端部相互を安定して保持することができ、この裏板25と前記連結カバー22とにより一対の前枠10、10を強固に挟持することができる。」という特有の作用効果を奏するものであるから、
本件考案は前記公知技術とは顕著に相違するものである。前記公知技術のものは、
これらを湊合する予測性がないが、たとえ、湊合したとしても本件考案はこれらものから想到し得るものではなく、この構成を当業者が極めて容易に考案することはあり得ない。
よって、「前枠の外側面を略半円形状とした」「片流れタイプの車庫」が、仮に公知であろうが周知であろうが関係ないことであり、原告の主張は失当である。
2 審判甲号証及び甲号証の開示内容について (1) 審判甲第1号証の1、審判甲第1号証の5の前枠外側面が「略半円形状」であること自体認められない。つまり、審判甲第1号証の1と審判甲第1号証の5は、車庫の単なる写真と寸法図であるから、前枠がどのような断面形状か読み取れるはずもない。また、仮に、これらの前枠が略半円形状となっていることが証明されたとしても、審判甲第1号証の1に開示される車庫(エルポート)は片流れ式の車庫ではないし、審判甲第1号証の3の証拠によると別途中間桁を用いて合掌するものであり(審判甲第1号証の3の10頁 合掌3.前後桁と側桁、中間桁の取付け 参照)、また、審判甲第1号証の5に開示される車庫(パラポート)において、これを連棟して2台用とするには、前枠連結カバーと裏板とにより前枠を挟持するものではなく、合掌桁という別の部材を使用して連棟する(乙第1号証:東洋エクステリア取付説明書集、車庫まわり・テラス・アウトドア編)から、この車庫が、前枠連結カバーと裏板により一対の前枠を挟持するタイプの連棟式車庫と結び付く証拠とはならない。
(2) 甲第13号証は「片流れ屋根を備えた車庫でない」。また、原告のいう第5図に図示されたものは支柱側の屋根パネル係止部材であって前枠に相当するものではない。さらに、この証拠における第4図にも同様の部材が図示されるが、この図から明らかなように梁4、金具12、金具12を止めるボルト等の存在が、この車庫を前枠合掌連結タイプの連棟式車庫にすることを不可能にしている。したがって、甲第13号証には、本件考案の構成要件のいずれも記載されていない。
(3) 甲第14号証は本件考案の車庫とは技術分野が異なるフェンス連結金具に関するものである。甲第14号証には本件考案の構成要件である「片流れ屋根、前枠、横片と締結片を設けてなる前枠連結カバー、裏板」が開示されていない。
(4) 甲第15号証には、「棟部は、円筒状の棟芯材が桟材の端部に形成される円筒体に回動自在に嵌挿され、円筒体の間には桟材間の間隔を保持するための円筒状のスペーサが嵌挿され、棟芯材の先端部に円筒体、スペーサの抜け外れを防止する端部キャップが螺子止め固着されて形成されるもの」が開示されているが、甲第15号証に開示されたものは「一対の車庫を連棟するものではなく、これ自体屋根角度が可変の独立した1つの車庫」であり、したがって、円筒状の棟芯材はその名称のとおり棟芯材であり、本件考案の前枠とはいえない。
3 上記から分かるように、いずれの証拠にも本件考案の構成要件B(前記屋根の端部を構成する前枠の外側面を略半円形状とし)はなく、まして、構成要件D(前記一対の前枠の外側面下部に、裏板における前記前枠の外側面と同一形状の一側前枠当接部と他側前枠当接部をそれぞれ押しつけ)は開示、示唆されていない。
したがって、「本件考案の相違点2に係る構成としたものがいずれの証拠にも記載されていないことから、請求人の主張は採用することができない。」とした審決の判断に誤りはない。
4 原告は、甲第13号証から甲第21号証までの新たな証拠を追加し、それに基づく主張を展開しているが、これらの証拠の中には、異議申立てにおいても、また、無効審判においても提出しておらず、審決が判断していない証拠の追加があり、原告の主張は、これらの証拠に基づく新たな主張であって、主張自体において認められない。
また、証拠のうち、審判甲第1号証の2ないし審判甲第1号証の3、審判甲第2号証及び審判甲第3号証には、発行された日付がなく、原告が発行日を推定しているだけであるから、公知性・周知性を争う。
5 本件考案では、前枠連結カバー22と裏板25が車庫の連結に当たって発生する屋根勾配の異なりに対して対応することができるので、屋根勾配の異なる片流れ屋根を備えた車庫でも連結できる。また、連結したときに、裏板25における前枠当接部26、27が前枠10の略半円形状の外側面と同一形状であるため、前枠10の揺動変位を許容しながらも、前枠10の外側面と密接して屋根端部相互を安定して保持することができ、この裏板25と前記連結カバー22とにより一対の前枠10,10を強固に挟持することができるのである。
6 原告は、「本件考案には連結強度がなく、審判甲第3号証記載のものよりも弱い」などと述べているが、審判甲第3号証に記載されたものは「屋根勾配の変化に対応することができない」構造であり、本件考案の「屋根勾配が変化しても」対応できるという、課題の共通性、作用・機能の共通性がない。この点を見落として、本件考案と審判甲第3号証に記載されたものとの連結強度を単純に比較して、
どちらの連結強度が強いかと議論することは意味のないことである。
7 原告は、連結強度に関する作用効果は甲第3号証に対する本件考案進歩性の問題であるとしているが、そもそも進歩性とは、本件考案が甲第3号証に基づいて極めて容易に考案できたか否かであり、考案が有する多数の効果のうち、一部の効果のみを比較して論じるものではない。
当裁判所の判断
1 引用文献の公知性はさておき、本件考案と審判甲第1号証の2、3及び審判甲第3号証の3つに記載のものとの間の差異は、本件考案が「前枠」の形状について「略半円形状」を選択し、「裏板」の両側の「前枠当接部」の形状について「前枠」の外側面と同一形状を採用したとの違いの点にあることは、当事者双方が当然の前提としているところである。
2 原告は、その形状自体についても、片流れ屋根において前枠を略半円形にすること自体は周知であり、また、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、広い面積で固定するという点は周知であって、本件技術分野における連結手段として周知なものを選択使用したにすぎず、かつ車庫の屋根に用いた点も公知あるいは周知であるから、これを2台合掌式に組み合わせることは容易であり、審決は容易推考の判断の前提事実を誤認し、その結果容易性の判断を誤ったものである旨主張する。
3 しかしながら、本件考案が「裏板」の両側の「前枠当接部」の形状について「前枠」の外側面と同一形状を採用したというのは、「前枠」の形状として「略半円形状」を選択したことを前提とするものであって、前記両相違点が有機的に結合していることは明らかであるから、片流れ屋根において前枠を略半円形にすること自体は周知であり、また、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ広い面積で固定するという点が周知であるとしても、それだけで本件考案が容易推考と判断されるものではなく、両構成を結合することが容易か否かも検討する必要がある。
4 ところで、原告が、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、広い面積で固定するという点は周知であるとして挙げている証拠は、審判甲第7号証(特許庁周知・慣用技術集。本訴甲第7号証)、甲第14号証(実開昭54-183943号公報)、甲第15号証(実開昭62-177847公報)、甲第22号証(特開平2-217540号公報)、甲第23号証(実願昭54-156463号(実開昭56-74141号)のマイクロフィルム)、
甲第25号証(実願昭58-130221号(実開昭60-37543号)のマイクロフィルム)、甲第26号証(実願昭47-39079号(実開昭48-111761号)のマイクロフィルム)、甲第27号証(実願昭48-40545号(実開昭49-140574号)のマイクロフィルム)、甲第28号証(実願昭48-108609号(実開昭50-53571号)のマイクロフィルム)、甲第29号証(実願昭53-158725号(実開昭55-76317号)のマイクロフィルム)、甲第30号証(実願昭54-168985号(実開昭56-86212号)のマイクロフィルム)、甲第31号証(実願昭56-46387号(実開昭57-158815号)のマイクロフィルム)である。
5 以下、これらの書証に記載の技術について検討する。
(1) 審判甲第7号証には、その22頁に「角度方立」として、「2.技術内容・・・すでに組み立てられた左、右ユニットの竪枠間の隙間より角度方立を差し込み、差し込んだ角度方立に目板をネジ止めしてセットし、目板塞ぎでネジ部を塞ぐ。従って、ある角度範囲を設定した角度方立を用いる事により種々の角度に対応出来・・・る。」と記載されているが、円形(円筒)状のものを金具で固定するものではなく、また24頁には、「コーナー方立の角度決め方法」として、「2.技術内容 円弧状の当接面によって取付け角度を変え得る構造とした方立において、
複数の目印溝を設け、目印溝を選択してネジ孔をあけることによって設定角度を出す方法。」と記載され、2つの角度方立アタッチメント間に、これらと対応する形状の角度方立を用いて、円弧状の当接面によって取付け角度を変え得る構造とした方立が図示されているが、角度方立アタッチメントは直角方立カバーによりカバーされており、端面が円形(円筒)状のものを金具で固定するものではない。
(2) 甲第14号証には、フェンス連結金具に関し、表裏2枚の押え板4、5には両側に支柱挟持部6、7が形成されていて、一方の押え板4の支柱挟持部6はフェンス支柱の側壁のほぼ片側全面を押さえ得るようになっているのに対して、他方の押え板5の支柱挟持部7は短くて、フェンス支柱の側壁の一部が露出するようになっており、この2枚の押え板4、5で隣接するフェンスの支柱を挟み付けて、両方のフェンス支柱を互いに結合するようにし、また、押え板4、5をボルト10によって締め付けるようにすることが記載されており、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、広い面積で固定するという点は開示されているといえる。しかしながら、甲第14号証のものはフェンス連結金具であり、隣接するフェンスはかなりの角度をもって連結することも多く、地面に対して垂直方向に設置されているので、フェンスを支持する支柱の形状を地面に垂直な軸を有する円柱状とし、支柱を同軸を中心として回転可能に連結することにより、隣接するフェンスを所定の角度をもって連結できるようにすることは、通常採用される技術的手段と認められる。これに対し、屋根端部連結構造はフェンス連結構造と異なり、屋根の連結点の角度はあらかじめ設定された両側の配置箇所、各辺の寸法等によりほぼ自動的に決せられるものであるから、かなりの角度範囲で連結することを想定するとはいえず、また、前枠の外側面は殊更形状変更しなければ方形状であるから、もともと円柱状が普通であるフェンスの支柱とは異なるものである。よって、甲第14号証に開示された前記技術を、審判甲第1号証の2、3や審判甲第3号証に記載されたフリーポートやカーポートの連棟屋根端部連結構造に適用することは通常は考えないことであり、甲第14号証が公知であっても、屋根の前枠の外側面を略半円形状とすること、裏板の前枠当接部を前枠の外側面と同一形状にすることが、当業者にとって極めて容易であったと認めることはできない。
(3) 甲第15号証には、「棟部において回動自在に結合されて折曲自在となった屋根体の両側縁部を、地表に立設される支柱体の上端部に結合保持せしめてなるカーポート」が記載され、「棟部4は、・・・円柱状の棟芯材7が桟材5の端部に形成される円筒体8に回動自在に嵌挿され、該円筒体8の間には桟材5間の間隔を保持するための円筒状のスペーサー9が嵌挿され、」「屋根体」1の両側縁部2は、・・・円筒状体13で形成されており、・・・分割され対となる略半円状の挟持片15によって円筒状体13が回動自在に挟持され」るものであり、「屋根体をその棟部において折曲させて角度調整することによって、単一の屋根体を使用して、支柱体の巾間隔の変化に対応でき、しかも、異なる形状様相の屋根体として施工できる」ことを作用効果とするものであることが記載されているが、甲第15号証に開示されたものは「単一の屋根体を棟部において折曲させた1つの車庫」であり、一対の車庫を連結して連棟するものではない。
(4) 甲第22号証には、「構築物の壁を構成する複数のパネルの会合部に配置され、これらパネルを互いに結合させる構築物の支柱装置であって、上記パネルを揺動可能に保持する手段を備えた構築物の支柱装置」が記載されており、甲第14号証について判断したところと同様に評価することができる。
(5) 甲第23号証には、車両格納庫を並設する場合に関し、隣接するパイプ状の堅柱を半円弧状凹部を有する一対のクランプ片をボルトナットで締付固定する連結具で連結固定する構造が記載されているが、これも、甲第14号証について判断したところと同様に評価することができる。
(6) 甲第25号証には、プールにおける防護柵の取付構造に関し、その第6図には、板材の両側縁面を同一方向に彎曲形成して近接(隣接)せる防護柵単体1両側の垂直杆1aを前後から挟着する挟着部10を設けた一対の連結割型3a′により構成することが記載され、垂直杆1aは円筒状であり、連結割型3a′は略半円形状であることが示されているが、これも、甲第14号証について判断したところと同様に評価することができる。
(7) 甲第26号証には、ナット付ボルトに関して、座金6と自在ナット5がついたボルトをネジ棒に取り付け、パイプ7、7を座金6と囲板10の間に入れてから自在ナット5を締めることによって、パイプ7、7を囲板に取り付けることが記載されているが、これにはコンクリートを固める際に使用する囲板10を補強するために片面略半円形状の座金6でパイプ7を取り付ける技術が開示されているのにすぎない。そこには、同種の構造物を連結する技術は記載されておらず、また、パイプはもともと円筒状であるから、連結される構造物の両端面の形状をわざわざ略半円形状とし、連結部材の形状をこれに合わせるといった技術思想が開示されていると認めることもできない。
(8) 甲第27号証には、プラスチック成形の半円弧状の開口部を2個持つ挟持片一対を向かい合わせ、開口部で2本の軸を挟持させ、割りピンで緊縮するプラスチック製柵等の連結子が開示されているが、これも、甲第14号証について判断したところと同様に評価することができる。
(9) 甲第28号証には、椅子6、6′の断面円の杆である脚5、5′を平行にして、中央凸部の両側方が略半円形状の連結具Aの両挟圧部2、2′の内方に押し込むことにより、椅子を連結する技術が開示されているが、これも、甲第14号証について判断したところと同様に評価することができる。
(10) 甲第29号証には、外壁等に屋根パネルを勾配自由に取り付ける連結固定構造において、断面略半円の凹円弧と取付用足を具備した第1梁を外壁に取り付け、該凹円弧に内接する半円部及び屋根パネルとの接続部を具備した第2梁を第1梁に取り付け、これに屋根パネルを連結する屋根パネル連結用梁構造が記載されているが、これは屋根パネルを外壁に連結するものであって、屋根パネル同士を連結するものではなく、当然ながら、両端面が略半円形状の屋根を、これと同一形状の当接部を有する連結具で連結することを開示したものではない。
(11) 甲第30号証には、屋根構成材に関して、その第1図に、家屋壁面に取り付けられた湾曲状の支持凹部を、それに嵌合する(したがって同一形状の)湾曲状係止部で係止する構造が示されているが、これは、甲第29号証と同様に、屋根を家屋壁面に連結するものであって、屋根同士を連結するものではなく、当然ながら、両端面が略半円形状の屋根を、これと同一形状の当接部を有する連結具で連結することを開示したものではない。
(12) 甲第31号証は、原告も主張するように、前記甲第30号証とほぼ同様の趣旨の内容が開示されているものであるから、甲第30号証について判断したところと同様に評価することができる。
6 以上のように、審判甲第7号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第22号証、甲第23号証、甲第25号証ないし甲第31号証を検討しても、一般論として、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、
広い面積で固定するという点が周知であることは示しているとしても、これらの証拠は屋根同士を連結することを示すものではなく、屋根の前枠の外側面が略半円形状であるときに、これと同一形状の当接部を有する連結具で連結することは開示していないことは明らかである。
したがって、上記証拠により、一般論として円形状のものをその円形に合わせた形状の金具で固定することが周知であり、また、片流れ屋根において前枠を略半円形にすること自体は周知であるとしても、前枠を略半円形にした片流れ屋根同士を連結することを示唆する証拠はないので、連結する屋根の前枠の形状を略半円形状とし、裏板の両側の前枠当接部の形状を前枠の外側面と同一形状にて採用した本件考案の構成が、当業者にとって極めて容易に推考し得たと認めることはできない。
7 原告は、同一技術分野の同一商品において、単に前枠の形状、裏板の当接部の形状のみが異なり、作用効果が共通の公知技術が存在しているから、本件考案は前記2点の相違点に関する構成を採用したことに由来する、「前枠の揺動変位を許容しながらも、前枠の外側面と密接して屋根端部相互を保持することができ、この裏板と前記連結カバーとにより一対の前枠を強固に挟持することができる」という作用効果があって初めて進歩性が肯定されるものである旨主張する。しかしながら、原告の主張は、前枠の形状及び裏板の当接部の形状が互いに独立して設定し得るものであり、両者に有機的な結合がない場合には首肯することができるものであるが、前示3のとおり、両者は有機的に結合しているものであるから、原告の主張は、この点において直ちに採用することはできない。
しかも、原告が、円形(円筒)状のものを金具で固定する場合、金具の側もその円形に合わせ、広い面積で固定するという点は周知であるとして挙げている証拠(前記6)によれば、屋根同士の連結ではないが、略半円形状を含む円筒状のものを同一形状の金具で連結すれば、かなり異なる角度のもの同士を連結することができることが認められる。そうすると、本件考案においても、甲第1号証の2、3及び甲第3号証のものと比較して、屋根の揺動変位を、より大きく許容可能にするものであることは明らかである。また、本件考案においては、裏板の両側の前枠当接部の形状を前枠の外側面と同一形状にて採用しているから、固定するためにビスを締め付けた場合に、裏板の前枠当接部が前枠の外側面に密接して屋根端部相互を保持することも明らかであり、一対の前枠を強固に挟持することができるか否かは別として、裏板が一対の前枠にしっかりと固定されるという作用効果を奏するものと認められる。
してみれば、本件考案は前枠の形状及び裏板の当接部の形状が有機的に結合して一定の作用効果を奏するものであるから、いずれにしても、作用効果に関する原告の上記主張は理由がない。
結論
以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。
(平成14年6月6日口頭弁論終結)
裁判長裁判官 永井紀昭
裁判官 塩月秀平
裁判官 古城春実
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