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関連審決 審判1999-35682
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事件 平成 13年 (行ケ) 17号 審決取消請求事件
原告 ジョイテック株式会社
訴訟代理人弁護士 古田友三
同 山田徹
同 高橋譲二
同 弁理士 土川晃
被告 シンポ株式会社
被告 東邦瓦斯株式会社
両名訴訟代理人弁護士 高橋美博
同 弁理士 西山聞一
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/06/24
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 原告 特許庁が平成11年審判第35682号事件について平成12年11月30日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告らの負担とする。
2 被告ら 主文と同旨
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告らは、名称を「ロースターにおける立消え安全装置」とする実用新案登録第2106398号の考案(平成元年1月20日出願、平成8年2月21日設定登録、以下「本件考案」という。)の実用新案権者である。原告は、平成11年11月19日、被告らを被請求人として、本件実用新案登録の無効審判の請求をし、
平成11年審判第35682号事件として特許庁に係属した。特許庁は、上記事件につき審理した結果、平成12年11月30日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年12月20日、原告に送達された。
2 本件考案の要旨 燃焼部に設けたバーナーの点火部の高さ位置と同一平面上にしてドレンパン、内箱、外箱の各側壁に貫通孔を貫設し、外箱の貫通孔の外方でテーブルの底部にバーナーの炎から照射される紫外線を検知する炎センサーを対向配置し、該炎センサーを燃焼ガスを供給するガス流入経路中に配設した電磁弁に炎センサーの作動によりガス流入経路を開閉する様に接続したことを特徴とするロースターにおける立消え安全装置。
3 審決の理由 審決は、別添審決謄本写し記載のとおり、本件考案が、特開昭59-176526号公報(審判甲第1号証、本訴甲第3号証、以下「引用例1」という。)、
特開昭63-210520号公報(審判甲第2号証、本訴甲第4号証、以下「引用例2」という。)、実願昭58-70148号(実開昭59-175860号)のマイクロフィルム(審判甲第3号証、本訴甲第5号証)、特開昭57-155022号公報(審判甲第4号証、本訴甲第6号証)及び実願昭49-99347号(実開昭51-26520号)のマイクロフィルム(審判甲第5号証、本訴甲第7号証)に記載されたものに基づいて、当業者がきわめて容易考案をすることができたとはいえないとした。
原告主張の取消事由
審決の理由中、「4.当審の判断」の相違点(イ)及び(ロ)の判断並びに「5.むすび」は争い、その余は認める。
審決は、本件考案と引用例1記載のもの(以下「引用例考案1」という。)との相違点(イ)(取消事由1)及び相違点(ロ)(取消事由2)についての判断を誤った結果、本件考案が、当業者にとって、引用例考案1及び引用例2記載のもの(以下「引用例考案2」という。)に基づいてきわめて容易考案をすることができたとはいえないとしたものであるから、違法として取り消されるべきである。
1 取消事由1(相違点(イ)の判断の誤り) (1) 貫通孔について ア 審決は、本件考案と引用例考案1との相違点について、本件考案が「燃焼部に設けたバーナーの点火部の高さ位置と同一平面上にしてドレンパン、内箱、
外箱の各側壁に貫通孔を貫設し」ている構成を相違点(イ)と認定した(審決謄本5頁末行〜6頁1行目)上、「本件考案は各構成部材を、ロースターのドレンパン、
内箱、外箱と特定して、これらの構成部材に貫通孔を設けたものであって、炎センサーと炎との一般的な構想(技術思想)を考案の構成要件としているものではないし、請求人(注、原告)が提出した甲第2号証(注、引用例2)に示された『石油ボイラー』には、本件考案の課題に相当する記載も見当たらない。」(同7頁2行目〜6行目)と判断したが、誤りである。
イ すなわち、本件考案では、「ドレンパン」「内箱」「外箱」という構成部材を特定して、これらの構成部材に貫通孔を貫設したものであるが、このことは、炎を検知するために製品の構成部材に貫通孔を設ける必要があるからであって、これら特定の構成部材に貫通孔を設けること自体に技術的意義があるものではない。本件考案において、「ドレンパン、内箱、外箱の各側壁に貫通孔を貫設し」と構成した趣旨は、考案の対象製品に貫通孔を設けることであるから、本件考案は、炎センサーと炎との間の一般的な技術思想を考案の構成要件としているのである。
ウ 仮に、本件考案が炎センサーと炎との間の一般的な技術思想を考案の構成要件としたものではないとしても、製品に貫通孔を設けるために、製品の具体的な構成部材にすぎない「ドレンパン」「内箱」「外箱」に貫通孔を設けることは、
当業者にとって、きわめて容易に想到し得たことである。
エ 被告らは、本件考案では、貫通孔を設ける部材を、洗浄のために脱着されるドレンパン及び内箱並びに非脱着の外箱と特定し、貫通孔を貫設する位置をこれら部材の側壁と特定したから、これら部材の機能を損なうことなく貫通孔を設けたことに技術的意義が存在すると主張するが、貫通孔を設ける以上、特定の部材の機能を損なうことなく設けることは当然のことであり、そのことに特段の技術的意義はない。
オ また、被告らは、貫通孔を設けるのは、炎センサーを外箱の外方に設けるためであり、その理由は、製品の構成部品の脱着により炎センサーが損傷するという課題を解決するためであって、この課題の発見も考案の要素の一つであると主張するが、引用例考案2では、バーナヘッド部と反対側のファンケースの表面に火炎検出器が取り付けられており、火炎検出器が外方に設置されていることは明らかである。引用例2(甲第4号証)には、「火炎検出器を取付けるファンケースに、
火炎検出器を取付けるための、特別な加工をしなくてすむ」(4頁右上欄10行目〜12行目)と記載され、他の部材の脱着の容易さという効果もうかがえるし、洗浄のための脱着の容易さという効果や課題も、当業者には自明の事項である。
(2) 火炎の検出等について ア 審決は、相違点(イ)に係る判断において、「甲第2号証(注、引用例2)に開示されている構成をみても、ブローチューブ28又は10の底部の火炎検出窓15を通して火炎を検出しているものであるから、火炎検出窓15がバーナーの点火部の高さ位置にあるということはできないし、甲第2号証のファンケース20又は2、ブローチューブ28又は10が、それぞれ本件考案の外箱7、内箱6に相当するとしても、底部から空気整流穴11を通して燃焼空気を供給するブローチューブ28又は10の構成では、本件考案のドレンパンのように底部で調理物の油汁等を受ける機能を備えているものということもできない。」(審決謄本7頁6行目〜14行目)と判断したが、誤りである。
すなわち、仮に、引用例2記載の火炎検出窓がバーナーの点火部の高さにないとしても、火炎検出位置は当該製品の構造に応じて最も使用しやすい位置に決めればよく、その決定は、当業者にとってきわめて容易である。ロースターでは、バーナー上部には、焼肉などを載置するからセンサーを設置することができず、バーナー下方にセンサーを設置すると、炎が上方に向かうことから検知しにくくなる。このような構造的制約により、ロースターでは貫通孔の位置が水平方向にならざるを得ないから、当業者にとって、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とする本件考案の構成は、きわめて容易に想到し得たものである。
また、引用例1の第2図は、本件明細書の第2図と構成がほとんど同一であり、前者の「プレート」が後者において「ドレンパン」と名称を変えているにすぎず、引用例1の第2図は、「底部で調理物の油汁等を受ける機能を備えている」というべきである。審決は、この点を看過して、誤った判断に至ったものである。
イ 被告らは、引用例考案2では、炎を後方から検知しており、ここでの「後方から」は本件考案における「下方から」に相当するから、構造的制約をいう原告の主張は誤りであること、本件考案ではバーナーの点火部の高さ位置で炎を検知するから、引用例考案2とは炎の検知方向が相違するものであり、そこには創作力の発揮が必要であることを主張する。しかしながら、引用例2が開示する業務用の石油ボイラーでは、第2図が図示する円筒形状の燃焼部27を炎が満たして大きく広がって燃え上がるのに対し、本件考案のロースターでは、その願書に添付された第2図(甲第2号証5頁)が図示する点火部4において、数ミリメートルから1cm程度の高さのごく小さな炎が環状になって燃えるにすぎないものであるから、両者は、炎の性質及び形状において全く異なるものである。このため、炎の存在を検知する際に、石油ボイラーでは炎の大きさが非常に大きいので下方から検知可能であるが、本件考案のロースターでは、小さな炎を確実に検知するために、炎センサーを水平方向に設けることが必要となる。このようなロースターにおける小さな炎の性質及び形状の特徴から、炎センサーを水平方向に設けることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことである。
2 取消事由2(相違点(ロ)の判断の誤り) 審決は、本件考案と引用例考案1との相違点について、本件考案が「外箱の貫通孔の外方でテーブルの底部にバーナーの炎から照射される紫外線を検知する炎センサーを対向配置」(審決謄本6頁2行目〜3行目)している構成を相違点(ロ)と認定した上、「甲第5号証(注、引用例5)に、種火炎17を紫外線受光素子15で直接検知し、着火ミスがあったとき燃料の供給を停止するものが記載されているので、この『紫外線受光素子15』が、本件考案に用いられている『紫外線を検知する炎センサー』とに格別な相違があるとは認められないし、甲第5号証記載のものが、種火炎17を紫外線受光素子15によって検知するようにしてはいるが、
メインバーナーの炎を検出するようにすることも甲第1号証の記載から当業者がきわめて容易に想到し得るものといえる。」(同7頁末行〜8頁6行目)としながら、これに続けて、「しかし、本件考案は、さらに、炎センサーの配置箇所を、
『外箱の貫通孔の外方でテーブルの底部』としているところにある。・・・甲第2号証に記載された火炎検出器32又は14は、ファンケース20又は2に取り付けられており、このファンケース20又は2が本件考案の外箱に相当するとしても、
本件考案の炎センサーは、その外箱の外方のテーブルの底部に配置したものである。この構成は、請求人(注、原告)の提出した他の甲各号証を検討しても何も記載もされていない。さらに、甲各号証には、バーナーに脱着し得る構成部品を備えた箇所における炎センサーの配置について示唆する記載も認められない。」(同8頁7行目〜15行目)と判断したが、誤りである。
すなわち、炎センサーの配置の位置を「テーブルの底部」としたことは、貫通孔を設けてセンサーを設置する以上、製品の構造的制約から当然であり、また、
「外箱の外方に」としたことも、製品の構成部品の脱着を妨げることのないようにするために当然の構成である。そうすると、炎センサーを外箱の外方のテーブルの底部に配置することは、当業者にとって、きわめて容易に想到し得たものである。
被告らの反論
1 取消事由1(相違点(イ)の判断の誤り)について (1) 貫通孔について 審決は、相違点(イ)の検討において、貫通孔を設ける構成部材を「ドレンパン、内箱、外箱」と特定しているが、同時に、「この点火部(注、バーナーの点火部)と『同一平面上にしてドレンパン、内箱、外箱の各側壁に貫通孔を貫設し』たことは、ロースターのドレンパン、内箱、外箱のそれぞれの機能を損なうことなく、それぞれに貫通孔を貫設し、この貫通孔を通して、バーナー点火部の炎を炎センサーで検出できるようにしているということができる。」(審決謄本6頁28行目〜32行目)と認定したものである。すなわち、本件考案では、貫通孔を設ける部材を、洗浄のために脱着されるロースターのドレンパン及び内箱並びに非脱着の外箱と特定し、貫通孔を貫設する位置をこれら部材の側壁と特定している。本件考案は、これら特定の部材の機能を損なうことなく貫通孔を設けたことに技術的意義が存在するのであって、炎センサーと炎との間の一般的な技術思想である「炎センサーと炎との間に介在する構成部材に貫通孔を設ける」という構成に技術的意義があるわけではない。
本件考案において、貫通孔を設けたのは、製品の構成部品の脱着により炎センサーが損傷するという課題を解決する目的で、炎センサーを外箱の外方に設けるためであり、この課題の発見も考案の要素の一つである。
原告は、引用例2の記載から、洗浄のための脱着の容易さという効果や課題が当業者には自明であると主張する。確かに、引用例2(甲第4号証)には、
「火炎検出器を取付けるファンケースに、火炎検出器を取付けるための、特別な加工をしなくてすむこととなり、コストダウンという効果も得られた。」(4頁右上欄10行目〜13行目)と記載されているが、引用例考案2は、火炎検出器の取付け角度に関するものであり、しかも、一度取り付ければ取り外すことを予定しない火炎検出器を設けたものである。したがって、「特別な加工をしなくてすむこと」から、洗浄のための脱着の容易さという効果や課題に到達することはなく、引用例2には本件考案の課題が見当たらないとして、本件考案進歩性を肯定した審決の判断は正当である。
(2) 火炎の検出等について ア 原告は、火炎検出位置は当該製品の構造に応じて最も使用しやすい位置に決めればよく、その決定は、当業者にとってきわめて容易であること、ロースター製品では、構造的制約から貫通孔の位置が水平方向にならざるを得ないことから、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とする本件考案の構成は、当業者にとって、
きわめて容易に想到し得たものであることを主張する。
しかしながら、火炎検出のための炎センサーの最良位置は、バーナーの近傍であるところ、ドレンパン、内箱、外箱を有するロースター製品では、これらの構成部品の脱着に支障となるから、炎センサーをバーナーの近傍に設けることができないという問題があった。本件考案は、この問題を解決するために考案されたものであり、そこには創作力の発揮が必要である。また、引用例2の第2図では炎を後方から検知するが、ここにおける「後方から」は、本件考案における「下方から」に相当するから、引用例考案2の構成を引用例考案1に適用すると、ドレンパンの機能が発揮されないことになり、この点からも、創作力の発揮が必要となる。
したがって、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とする本件考案の構成は、当業者にとって、きわめて容易に想到し得たものではない。
イ 原告は、引用例1の第2図が図示するロースターのプレート9が、本件考案のドレンパン5に相当し、底部で調理物の油汁等を受ける作用を奏することは明らかであるのに、審決が、同第2図が図示するロースターの構造を看過して、引用例2記載のもののみに着目して誤った結論に至ったと主張する。しかしながら、
引用例2に開示された火炎検出器を引用例考案1に適用すると、炎の下方にセンサーが設けられることになるので、ドレンパンの機能が発揮されなくなるから、上記のような適用は、当業者にとって困難であるというべきである。
2 取消事由2(相違点(ロ)の判断の誤り)について 原告は、炎センサーの配置位置を「テーブルの底部」としたことは、貫通孔を設けてセンサーを設置する以上、製品の構造的制約から当然であり、「外箱の外方に」としたことも、製品の構成部品の脱着を妨げることのないようにするため当然の構成であると主張する。しかしながら、本件考案は、上記のとおり、製品の構成部品の脱着により炎センサーが損傷されるという課題を解決するために、特定の構成部材に貫通孔を貫設し、外箱の外方でテーブルの底部に炎センサーを配置したものである。
当裁判所の判断
1 取消事由1(相違点(イ)の判断の誤り)について (1) 貫通孔について ア 原告は、本件考案においては、「ドレンパン」「内箱」「外箱」という特定の構成部材に貫通孔を設けること自体に技術的意義が存在するものではなく、
「ドレンパン、内箱、外箱の各側壁に貫通孔を貫設し」た構成とした趣旨は、考案の対象製品に貫通孔を設けることであるから、本件考案は、炎センサーと炎との間の一般的な技術思想を構成要件としたものであると主張する。
しかしながら、本件登録出願の願書に添付した明細書(甲第2号証)には、「従来、家庭用のガスコンロにはバーナー付近に立消えセンサーを設置して点火操作時の点火ミス或いは立消えによるガス放出を防止していたが、かかる立消えセンサーをロースターのバーナー付近に取付けることは出来なかった。それはロースターの燃焼部は洗浄の為に、毎日バーナー、ドレンパン、内箱、トッププレート等各構成部品の脱着を要し、かかる洗浄時に立消えセンサーを損傷させたり、その精度を損なう等の欠点を有するためで、その結果立消えの発見が出来なかったり、
又は遅れることがある危険性を有していた。」(2欄3行目〜13行目)、「本考案は点火操作時の点火ミス或いは立消えによる未燃焼ガスの放出を遮断すると共に、洗浄の為の各構成部品の脱着を容易としたロースターにおける立消え安全装置を提供せんとするものである。」(2欄末行〜3欄3行)との記載がある。
これらの記載によれば、従来の家庭用のガスコンロにおけるバーナー付近に設置された立消えセンサーを、ロースターに適用しようとしても、ロースターでは、毎日の洗浄の際に、バーナー、ドレンパン、内箱、トッププレート等の各構成部品の脱着を要し、それに伴い、立消えセンサーを損傷させたり、その精度を損なう等の危険性があるので、立消えセンサーをバーナー付近に取り付けることはできないという問題があるところから、本件考案では、これを課題とし、解決したものであることが明らかである。
そうすると、本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載された「ドレンパン、内箱、外箱の各側壁に貫通孔を貫設」する構成は、本件考案の上記課題に照らすと、ロースターに必要とされる頻繁な洗浄の際に、ドレンパン、内箱、外箱という各構成部品を頻繁に脱着しても、バーナー付近に配置された立消えセンサーを損傷させたり、その精度を損なうことがないようにするためのものであるところに意義があるのであって、単なる「炎センサーと炎の間にある部材」にとどまるものではない。したがって、本件考案が、上記の構成により、炎センサーと炎との間の一般的な技術思想を考案の構成要件としたものでないことは明らかであり、他に、
本件明細書の実用新案登録請求の範囲考案の詳細な説明及び図面の記載中にも、
本件考案の上記構成が炎センサーと炎との間の一般的な技術思想を考案の構成要件としているとの原告の上記主張に沿う部分は見いだすことができない。
イ 原告は、また、製品に貫通孔を設けるために、製品の具体的な構成部材にすぎない「ドレンパン」「内箱」「外箱」に貫通孔を設けることは、当業者にとって、きわめて容易に想到し得たことであり、また、貫通孔を設ける以上、特定の部材の機能を損なうことなく設けることは当然であり、このことに特段の技術的意義はないと主張する。
そこで、引用例2(甲第4号証)について見るに、第1図が石油ボイラーのバーナユニットの正面断面図、第2図が同石油ボイラーのバーナユニットの側断面図を図示するものであり、これらの図示によれば、火炎検出器32がバーナヘッド部31の下方を覆うファンケース20の外方に設けられ、火炎検出窓(孔)33がノズルアダプター24自体の取付フランジとブローチューブ28に連通し、これらの部材間に透明板30が挟持されていると認められ、引用例2の「火炎検出器32」「火炎検出窓(孔)33」が本件考案の「炎センサー」「貫通孔」にそれぞれ相当すると認められる。
他方、引用例2(甲第4号証)には、従来の石油ボイラーについて、
「燃焼部9の火炎が発っする光を通す火炎検出窓は、必然的に、前記ブローチューブ10の空気整流穴11が形成されている面の周辺部に配さざるを得ないという制約条件が生じていた。一方、燃焼部9は、スタビライザー8の中央部にあけられた穴部からしか望めないから、結果的に、火炎検出窓15からは、ファンケース2に対しある角度θをもってしか、火炎を検出できない構成とならざるを得なかった。」(2頁左下欄10行目〜18行目)、「本発明は、上記問題点に鑑み、火炎検出器の取付け精度を容易にかつ、確実に向上させ、そのことにより、火炎検出器の検出精度の高い石油ボイラーを提供するものである。」(2頁右下欄14行目〜17行目)と記載した上、引用例考案2について、「底面には、自ら固定用フランジを持つノズルアダプターが、燃料噴霧ノズルを連結し、かつ点火電極を拘持した状態で固定されているもので、前記ノズルアダプターの、固定用フランジと、この固定用フランジと密接した、前記ブローチューブには、連通する孔が開けられており、この孔は、前記固定用フランジと、前記ブローチューブに挟持された透明板で閉鎖されており、更に、前記火炎検出器は、前記燃焼部から前記透明板へ結んでできる直線の延長線上にあり、かつ前記火炎検出器は、前記ファンケースに対し、平行をなして取付けるという構成を備えたものである。・・・本発明は、上記した構成によって、火炎検出器を、ファンケースに対し平行に取付けた状態で、燃焼部の火炎の発っする光を検知することができるようになった。」(3頁左上欄12行目〜右上欄8行目)との記載がある。
そうすると、これらの記載によれば、引用例2(甲第4号証)の第2図には炎センサー及び貫通孔が火炎の下方に設けられているところ、この理由は、石油ボイラーのバーナに特有な火炎の形状及び火炎周辺の構成によるものであって、
これらを火炎と同じ高さ位置と同一平面上に設けることは、引用例2が開示する石油ボイラーのバーナユニットの構成上、困難であると認められる。また、上記ロースターでは、下方に焼肉からの肉汁等を受けるドレンパンがあって、肉汁等が火炎の検知を妨げるため、引用例2に開示された位置関係での炎センサー及び貫通孔を引用例1(甲第3号証)が開示するロースターに適用することは不可能であると認められる。そして、引用例2(甲第4号証)が開示する技術は、石油ボイラーに係るものであるから、引用例1(甲第3号証)のガスバーナーを用いるロースターとは、燃焼器を有する製品であることを除き、その燃料、燃焼器の構造、火炎の形状、燃焼により加熱される物、使用形態等において、大きな差異があるといわざるを得ない。そうすると、引用例2(甲第4号証)に開示された、火炎に対する炎センサー及び貫通孔の特有な位置関係に加え、石油ボイラーとロースターにおけるこれらの差異もまた、引用例2(甲第4号証)の炎センサーと貫通孔の構成を引用例1(甲第3号証)のロースターに適用することを妨げる事由となることは明らかである。したがって、当業者にとって、引用例2に開示された上記構成を引用例1のロースターに適用することもまた、困難であるから、引用例考案1及び同2に基づいて、本件考案きわめて容易に想到することができるということはできない。
ウ 原告は、さらに、引用例2(甲第4号証)では、火炎検出器が外方に設置されていることは明白であり、「火炎検出器を取付けるファンケースに、火炎検出器を取付けるための、特別な加工をしなくてすむ」(4頁右上欄10行目〜12行目)と記載されているので、他の部材の脱着の容易さという効果もうかがうことができるし、洗浄のための脱着の容易さという効果や課題も、当業者には自明であると主張するが、引用例2には、洗浄又は部材の脱着について何らの記載も示唆もされていないから、原告の主張は失当である。
エ したがって、相違点(イ)についての審決の判断(審決謄本7頁2行目〜6行目)に、原告主張の誤りはない。
(2) 火炎の検出等について ア 原告は、ロースターでは、バーナー上部には焼肉などを載置するからセンサーを設置できず、バーナー下方にセンサーを設置すると炎が上方に向かうことから検知しにくくなるという構造的制約により、貫通孔の位置が水平方向にならざるを得ないから、当業者にとって、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とする本件考案の構成は、きわめて容易に想到し得ると主張する。しかしながら、引用例2(甲第4号証)の石油ボイラーのバーナユニットに設けられた炎センサー及び貫通孔を引用例1(甲第3号証)のロースターに適用することが困難である以上、当業者にとって、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とするという本件考案の構成は、これら引用例からきわめて容易に想到し得たということはできない。
イ 原告は、また、引用例2が開示する業務用の石油ボイラーでは、炎の大きさが非常に大きいので下方から検知可能であるが、本件考案のロースターでは、
小さな炎を確実に検知するために炎センサーを水平方向に設けることが必要となることから、炎センサーを水平方向に設けることは、当業者がきわめて容易に想到し得たことであると主張する。しかしながら、上記のとおり、当業者にとって、引用例考案2における石油ボイラーの炎センサー及び貫通孔を引用例考案1のロースターに適用することが困難なのであるから、炎センサーを水平方向に設けることもまた困難であるといわざるを得ず、原告の主張は、その前提を欠き失当である。
ウ 原告は、さらに、引用例1の第2図が本件明細書の第2図と構成がほとんど同一であり、前者の「プレート」が後者において「ドレンパン」と名称を変えているにすぎず、引用例1の第2図は「底部で調理物の油汁等を受ける機能を備えている」というべきであると主張する。しかしながら、上記のとおり、貫通孔の位置を点火部の高さ位置とする本件考案の構成が、当業者にとってきわめて容易に想到し得たということができない以上、「底部で調理物の煮汁等を受ける機能を備えている」かどうかという点は、相違点(イ)に係る審決の判断を左右するものではない。
エ したがって、相違点(イ)についての審決の判断(審決謄本7頁6行目〜14行目)に、原告主張の誤りはない。
2 取消事由2(相違点(ロ)の判断の誤り)について 原告は、炎センサーの配置位置を「テーブルの底部」としたことは、貫通孔を設けてセンサーを設置する以上、製品の構造的制約から当然であり、また、「外箱の外方に」としたことも、製品の構成部品の脱着を妨げないために当然であって、炎センサーを外箱の外方のテーブルの底部に配置することは、当業者にとって、きわめて容易に想到し得たものであると主張する。
しかしながら、原告の主張は、引用例2の石油ボイラーのバーナユニットに設けられた炎センサーと貫通孔を引用例1のロースターに適用することを前提とするものであるところ、上記のとおり、その適用が困難である以上、原告の主張は、
この点においても前提を欠き失当である。
したがって、相違点(ロ)についての審決の判断(審決謄本8頁7〜15行)にも、原告主張の誤りはない。
3 以上のとおりであるから、原告主張の審決取消事由は理由がなく、他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利
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