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関連ワード 補正命令 /  補正 /  新規性(3条1項) /  訴えの利益 /  本質的部分 /  特定 / 
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事件 平成 14年 (行コ) 19号 行政不服審査法による異議申立却下決定取消請求控訴事件
控訴人A
被控訴人 特許庁長官 太田 信一郎
指定代理人 松下貴彦
同 菊地原 正彦
同 小林進
同 佐藤一行
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/09/20
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 (1) 原判決を取り消す。
(2) 被控訴人が行政不服審査法による異議申立て12特総3065号、同3066号事件について平成13年3月30日にした決定を取り消す。
(3) 被控訴人が行政不服審査法による異議申立て12特総3063号、同3064号事件について平成13年3月30日にした決定を取り消す。
(4) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人 主文と同旨
事案の概要
本件は、控訴人が、工業所有権に関する手続等の特例に関する法律(以下「特例法」という。)16条において準用する同法14条15条の規定に基づき代理人として行う特許料及び実用新案登録料(以下「登録料」という。)の納付手続に関し、@ 実用新案登録第2000545号の第7年分及び第8年分の登録料の納付に際しての申出(以下「納付の申出」という。)をいずれも却下した被控訴人の処分に対する異議申立事件(12特総3065号、同3066号事件)、A 特許第1761708号の第8年分及び第9年分の特許料の納付の申出をいずれも却下した被控訴人の処分に対する異議申立事件(12特総3063号、同3064号事件)について、被控訴人がした異議申立却下決定(本件各決定)の瑕疵を主張して、その取消しを求めている事案である。
本件の前提となる事実、争点及びこれに関する当事者の主張は、次のとおり訂正及び付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」のとおりである(ただし、原判決2頁7行目〜12行目を除く。)から、これを引用する。
1 原判決の訂正 (1) 原判決2頁15行目、17行目、3頁8行目〜9行目、11行目〜12行目の各「納付手続」を「納付の申出」に、3頁2行目の「実用新案登録料納付手続」を「登録料の納付の申出」に、同頁4行目の「特許料納付手続」及び同頁18行目〜19行目の「特許料納付の手続」を「特許料の納付の申出」に、それぞれ改める。
(2) 同2頁17行目の「行った。」の次に「なお、これらの納付の申出は、弁理士である控訴人が、特例法16条において準用する同法14条15条の規定に基づき、特許料等の納付をする者の代理人として、その委任事務を処理するために自己の名において行ったものである(後記(2)の納付の申出も同様である。)。」を加える。
(3) 同4頁22行目の「3 争点」を「2 争点」に改める。
(4) 同6頁2行目〜3行目の「日本特許情報機構」を「財団法人日本特許情報機構(以下「日本特許情報機構」という。)」に改める。
2 控訴人の主張 (1) 訴えの利益に関する訴訟要件は弁論主義型の訴訟要件であるところ、被控訴人が、原審において特許権及び実用新案権の消滅を理由とする訴えの利益の欠缺の主張をしたのは、原処分3、4に関する部分にとどまるから、原処分1、2に関する部分を含め、本件訴えの全部を却下した原判決は、弁論主義に反し、行政事件訴訟法24条ただし書にも反した違法がある。
(2) 特許料及び登録料の納付手続の却下処分に対しては、特許法195条の4(実用新案法55条5項)が行政不服審査法による異議申立てを許容しているところ、その納付手続の却下処分によってもたらされる権利消滅の外観によって訴えの利益が否定されるとすると、上記不服申立て手段を認めた法の趣旨が損なわれ、ひいて憲法76条2項に違反することになる。さらに、そもそも、本件訴訟は、原処分1〜4の当否が主要な争点となるものであるのに、当該処分によってもたらされる結果である特許権及び実用新案権の消滅を理由として訴えの利益の喪失をいうのは、背理であり、民事訴訟法246条に違反するといわざるを得ない。本件訴訟の係属によって、原処分1〜4の確定は妨げられており、実体としての特許権及び実用新案権の帰すうは未決の状態にあるはずである。なお、特許原簿及び実用新案登録原簿上、特許権及び実用新案権の消滅が登録されているとしても、公信力はない。
また、特許料及び登録料の電子情報処理組織(オンラインシステム)による納付手続は、納付書の提出とこれに対応してされる予納台帳からの引落し(特例法15条)とが対をなしているところ、後者は事実行為であって回数及び期限がないのであるから、原処分が取り消されて所定の金額の引落しがされれば、納付書提出日に特許料及び登録料の納付があったことになる。
(3) さらに、原処分1、2は、適法な手続を履践していない。すなわち、特許法17条3項18条1項(実用新案法2条の2第3項2条の3)の各規定は、
手続に瑕疵があって補正が可能な場合には、被控訴人が補正を命ずるとともに、指定した期間内に補正をしなかった場合に限り、当該手続を却下することができるとするものである。したがって、特許料及び登録料の納付書に補正の可能な瑕疵がある場合には、補正命令に当たる納付書補充指令書が発せられることになる。ところが、本件においては、特許権の第8年分の納付書に対する納付補充指令書及び実用新案権についての第7年分の納付書に対する納付補充指令書は、電子情報処理組織(オンラインシステム)の機能不全によって控訴人に対する適法な送達(特許法189条190条、民事訴訟法101条103条1項109条)がされていないのであるから、原処分1、2は、補正の機会を与えることなく行った瑕疵のある手続といわざるを得ない。
この点について、被控訴人は、原処分1、2は特許法18条の2第1項(実用新案法2条の5第2項)に基づくものであると主張するが、仮にそうであるとしても、特許法18条の2第2項(実用新案法2条の5第2項)の弁明の機会の付与の手続が行われていない以上、その手続に瑕疵があることに変わりはない。
3 被控訴人の主張 (1) 本件訴えが、本件各決定の取消しを求める法律上の利益を欠く不適法なものであることは、以下のとおりである。
ア 行政処分等の取消訴訟における訴えの利益の有無は、行政処分等がその公定力によって有効なものとして存在しているために生じている法的効果を除去することにより、回復すべき権利又は法律上の利益があるか否かという観点から検討すべきであり、その訴えの利益の存否は、判決言渡時において、当該行政処分等を取り消すことによって回復される法的利益があるか否かによって判断すべきものである。
イ 他方、特許法ないし実用新案法は、納付期間に特許料ないし登録料を納付しなければならず、仮にその納付期間を徒過した場合には、その追納期間又は回復期間に、特許料ないし登録料に割増特許料ないし割増登録料を付加して納付した場合に限り、特許権ないし実用新案権を維持することができるのであり、これらの納付がない場合には、当該特許権ないし実用新案権は、当初の納付期限にさかのぼって確定的に消滅する(特許法112条4項、実用新案法33条4項)。
ウ ところが、本件においては、第8年分の特許料及び第7年分の登録料の納付の申出こそあったものの、その予納台帳の残高に不足があったことからこれを引き落とすことができず、結局、上記特許料及び登録料の納付がなかったものである。そして、その後の追納期間及び回復期間に、特許料及び割増特許料並びに登録料及び割増登録料(以下「特許料等」という。)の納付がされていないから、特許権及び実用新案権は、原処分1〜4ひいては本件各決定の適否にかかわらず、既に確定的に消滅したというほかはない。本件が、例えば、特許料等の納付の事実自体に争いがあるような事案であれば格別、上記のとおり特許料等の納付の事実がないことを前提とした上で、本件各決定の瑕疵が争われているにすぎないのであるから、その瑕疵の存否いかんにかかわらず特許権及び実用新案権は消滅するものである。したがって、本件において、本件各決定の取消しを求める法律上の利益を欠くことが明らかである。
(2) 控訴人は、以上と同旨の原判決の判断における弁論主義違反等を主張するが、訴えの利益は職権調査事項に属するから、本件訴えを却下したことに何らの違法もない。また、控訴人は、本件訴訟は、原処分1〜4の当否が主要な争点となるものであるのに、当該処分によってもたらされる結果である特許権及び実用新案権の消滅を理由として訴えの利益の喪失をいうのは背理であると主張するが、原処分1〜4が取り消されたとしても、その納付手続に係る予納台帳残高が不足していたという事実が覆るものではないし、後日の支払によってさかのぼって納付があったことになるわけでもない。
また、控訴人は、原処分1、2は適法な手続を履践していない旨主張するが、失当である。すなわち、一般に、手続がその本質的要件を欠いており、しかも補正によってこれを追完することが法の建前からいって許されないような場合には、特許法17条3項(実用新案法2条の2第3項)に規定する補正を命ずることなく、特許法18条の2第1項(実用新案法2条の5第2項)により却下することができると解されている。そして、特許料ないし登録料の納付手続にあっては、法定された料金の納付行為そのものが本質的部分であり、単に納付の書面を提出しただけで法定の料金が納められていないものは手続としての本質的要件を欠く不適法なものといわざるを得ないから、補正を命ずることなくこれを却下することができる。さらに、特許法18条の2第2項(実用新案法2条の5第2項)に規定する弁明の機会の付与は、納付補充指令書をもって行われているから、本件において、控訴人の主張する手続上の瑕疵はない。
(3) 原判決は、「付加判断」として、本訴において本件各決定の理由を差し替える主張は許されない旨判断するが、誤りである。すなわち、行政不服審査法に基づく不服申立てに対する異議決定は、あらかじめ不服申立者に対してその決定内容や根拠条文、理由等を告知し、聴聞や弁明の機会を与える手続が予定されているものではないから、その取消訴訟における理由の差替えは、通常の処分理由の差替えと同様、原則として、訴訟物の範囲内で客観的に存在した一切の事実上及び法律上の根拠を主張できるというべきである。
当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件訴えは、本件各決定の取消しを求める法律上の利益を欠き、不適法として却下すべきものと判断する。その理由は、次のとおり当審における主張に対する判断を付加するほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の「1 訴えの利益について」のとおり(ただし、原判決12頁25行目〜13頁3行目を除き、13頁4行目の「まず、」の次に「控訴人が、」を加える。)であるから、これを引用する。
2 控訴人の当審における主張に対する判断 (1) 控訴人は、被控訴人が原審において訴えの利益の欠缺の主張をしたのは原処分3、4に関する部分にとどまるから、本件訴えの全部を却下した原判決は弁論主義に反し、行政事件訴訟法24条ただし書にも反した違法がある旨主張する。しかし、訴えの利益の存否の判断は裁判所の職権調査事項に属するから、弁論主義の適用をいう点は前提において失当というべきであり、また、原審が職権証拠調べをしたわけではないから、行政事件訴訟法24条ただし書違反をいう点も失当であって、原処分1、2に関する部分を含め、訴えの利益の欠缺を明確に述べる被控訴人の当審における主張に照らしても、控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 控訴人は、@ 納付手続の却下処分によってもたらされる権利消滅の外観によって訴えの利益が否定されるとすると、特許法195条の4(実用新案法55条5項)が行政不服審査法による異議申立てを許容した法の趣旨が損なわれ、ひいて憲法76条2項に違反する、A 本件訴訟は、原処分1〜4の当否が主要な争点となるものであるのに、本件処分によってもたらされる結果である特許権及び実用新案権の消滅を理由として訴えの利益の喪失をいうのは背理であり、民事訴訟法246条に違反する、B 本件訴訟の係属によって、原処分の確定は妨げられており、実体としての特許権及び実用新案権の帰すうは未決の状態にあるはずである、C 原処分1〜4が取り消されて所定の金額の引落しがされれば、納付書提出日に特許料及び登録料の納付があったことになる等の主張をする。
しかし、本件訴えにつき訴えの利益が否定されるのは、控訴人において、
特許法及び実用新案法の定める法定の期間(納付期間、追納期間及び回復期間)内に特許料等の納付を行わなかったという事実によるものであって、この客観的な事実自体から、特許権及び実用新案権は、既に確定的に消滅したと解さざるを得ないことは、前記引用に係る原判決の説示するとおりである。電子情報処理組織(オンラインシステム)の使用による特許料等の納付手続は、その申出とともに、それに対応した特許料等の予納があって初めて成立するものであり、上記納付の申出がその納付期間内にあったとしても、それに対応した予納台帳の残高がなければ、特許料等の支払はなかったものというほかはない。予納台帳の残高に不足がないのに、
納付の申出が違法に却下されてしまい、結果的に特許料等の納付ができなったといった事案であれば格別、本件は、上記のとおり予納台帳の残高に不足があったために特許料等の納付ができなったものであるから、本件各決定、さらには原処分1〜4が取り消されたとしても、特許料及び登録料の不納付という事実並びに特許権及び実用新案権の消滅という法的効果が覆るものではない。
そもそも、特許料等の納付は、特許印紙若しくは現金をもって現実に所定の金額を納めるか(特許法107条5項、実用新案法31条5項参照)、又は、特例法14条15条の規定するところにより、納付の申出並びに予納台帳の残高からの控除及び充当という方法で行われるものであり、後者の方法は、特例法16条において、特許料等の納付をする者の代理人がその委任事務を処理するために自己の名において行う場合に準用されている。本件において、原処分1〜4をもって却下された手続は、後者の方法のうち納付の申出(特例法15条1項、同法施行規則40条に規定する「特許料等の納付に際しての申出」)であって、特許料等の納付それ自体ではない。控訴人の上記主張は、特許料等の納付という手続と、納付の申出という手続とを混同するものであるか、又は独自の見解に立つものといわざるを得ず、採用することができない。
(3) また、控訴人は、原処分1、2に先立って被控訴人の発した納付書補充指令書が、電子情報処理組織(オンラインシステム)の機能不全によって、OSI端末の画面に表示することができなかったとして、当該納付書補充指令書は控訴人に適法に送達されたとはいえず、原処分1、2は適法な手続を履践していない旨主張する。この控訴人の主張する内容が、それ自体、訴えの利益に関する上記の判断を左右するものでないことは上記説示に照らして明らかであり、また、本件訴訟において本件各決定の取消事由として主張することのできる裁決固有の瑕疵(行政事件訴訟法10条2項参照)にも当たらないが、審理の経過にかんがみ、念のため、以下判断する。
証拠(乙7〜9、枝番を含む。)によれば、上記納付書補充指令書(特許権につき平成11年4月9日付け、実用新案権につき同月14日付け)は控訴人のOSI端末に備えられたファイルに記録された(特許権につき同月14日、実用新案権につき同月27日、乙4の1、2)ものの、当該端末のソフトウエアの一部につき、平成11年1月の法改正対応ソフトによるバージョンアップがされていなかったため、上記納付書補充指令書を、控訴人のOSI端末の画面に表示し又は印刷することができない状態であったこと、しかし、特許庁から発送書類と同時に送付される発送目録は表示及び印刷が可能であり、当該発送目録との照合により上記納付書補充指令書の送付の事実を控訴人が確認することは可能であったこと、上記ソフトウエアは、控訴人が日本特許情報機構との間の賃貸借契約に基づいて賃借しているものであり、そのバージョンアップサービスもその賃借料金で賄われていたところ、日本特許情報機構は、上記バージョンアップがされなかった原因は、控訴人をバージョンアップソフトの送付先登録リストから漏らしたためであると推定していること、以上の事実を認めることができる。
この事実によれば、上記納付書補充指令書が控訴人のOSI端末で表示及び印刷ができなかった原因は、専ら控訴人のOSI端末のソフトウエアの不備にあり、電子情報処理組織(オンラインシステム)自体の機能不全によるものとはいえない。そして、上記認定のとおり、納付書補充指令書は、現に控訴人のOSI端末に備えられたファイルに記録されたのであるから、この納付書補充指令書の法的な意味が、控訴人の主張するように手続の補正命令(特許法17条3項、実用新案法2条の2第3項)であるか、被控訴人の主張するように弁明書を提出する機会を付与するための却下理由の通知(特許法18条の2第2項、実用新案法2条の5第2項)であるかはともかく、そのいずれであるにせよ、これが控訴人のOSI端末に備えられたファイルに記録された時点で、控訴人に到達したものとみなされるのであるから(特例法5条3項、同法施行令6条1号、2号)、控訴人の主張する手続の瑕疵はないというべきである。控訴人のOSI端末のソフトウエアの不備については、そのサービスを提供する者等との間で別途損害賠償の問題が生ずる余地のあることは格別、特例法の定める特定通知等の到達の効力を左右するものではない。
3 結論 以上のとおり、本件訴えは、訴えの利益を欠く不適法なものであるから、これを却下した原判決は相当であって、その余の点について判断するまでもなく、本件控訴は理由がない。
よって、本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法67条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 長沢幸男
裁判官 宮坂昌利
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