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関連審決 異議1997-72274
審判1999-35617
関連ワード 考案 /  図面 /  構造 /  組合せ /  設定登録 /  進歩性(3条2項) /  一致点の認定 /  きわめて容易 /  減縮 /  請求項 /  特段の事情 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 14年 (行ケ) 51号 審決取消請求事件
原告 株式会社クボタ
訴訟代理人弁理士 北村修一郎
被告 株式会社小松製作所
被告 小松ゼノア株式会社
被告 株式会社神戸製鋼所
被告 コベルコ建機株式会社
被告ら訴訟代理人弁護士・弁理士 上村正二、石葉泰久、弁護士 石川秀樹、松 村武、弁理士 荒垣恒輝
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/02/25
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
原告の求めた裁判
「特許庁が平成11年審判第35617号事件について平成13年12月17日にした審決を取り消す。」との判決。
事案の概要
1 特許庁における手続の経緯 本件実用新案登録第2517417号の請求項1に記載された考案(名称「バックホウ」)は、平成2年5月24日付け実願平2-54338号の出願を平成6年5月20日に分割して新たな出願とした実願平6-5564号に係り、平成8年8月20日にその設定登録がされたものであって、原告が実用新案権者である。本件考案については、実用新案登録異議の申立て(平成9年異議第72274号)があって平成10年1月5日に訂正請求があり、平成10年5月12日、「訂正を認める。実用新案登録第2517417号の実用新案登録を維持する。」との決定があった。その後の平成11年10月29日、被告らによって本件無効審判の請求(平成11年審判第35617号)があって、平成13年12月17日「登録第2517417号の実用新案登録を無効とする。」との審決があり、その謄本は同月28日原告に送達された。
2 本件考案の要旨(上記訂正後のもの。「共に」は「ともに」と、「亘って」は「わたって」と表記した。) 【請求項1】旋回台(2)に運転部(4)とバックホウ装置(3)とを左右に並べて配置し、前記運転部(4)とバックホウ装置(3)との間に前記運転部(4)とバックホウ装置(3)とを仕切る縦壁(6)を備えるとともに、この縦壁(6)を、前記バックホウ装置(3)側を透視可能な透明の板部材で構成された透視部(10)と、その透視部(10)の前後方向の両側辺位置に立設された前後一対の支柱部を備える周辺枠構成部分とから構成し、前記運転部(4)の前部において、
前記縦壁(6)の前部に対し前記バックホウ装置(3)とは反対側の前記旋回台(2)の部分と前記縦壁(6)の前部の支柱部とにわたって、手すり(9)を架設連結し、前記縦壁(6)の上端に屋根(7)を片持ち状に支持し前記運転部(4)側に延出してあるバックホウ。
本件考案図面【図1】 【図2】 3 審決の理由 別紙審決の理由に記載のとおりである。骨子は次のとおり。
平成10年1月5日付け訂正請求書により訂正された考案は、引用例1(実願昭63-121167号(実開平2-42961号)のマイクロフィルム、甲第3号証)、引用例2(実願昭63-121916号(実開平2-42963号)のマイクロフィルム、甲第4号証)、引用例3(特開昭63-272820号公報、甲第5号証)及び引用例4(実願昭58-137768号(実開昭60-45276号)のマイクロフィルム、甲第6号証)に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、当該訂正後の考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであって、その訂正が適法になされたものではないから、本件実用新案登録は、無効とすべきである。
原告主張の審決取消事由
以下において、引用文献に「バックホー」とあっても「バックホウ」の表記に統一した。
1 取消事由1(引用例3の認定誤り) 審決は、引用例3の第1図の事実認定において、図面上運転席手前で立ち上がっている第3の柱(下記第1図に朱記の4D-3)を見落とした結果、引用例3に「運転席とバックホウ装置との間に運転席とバックホウ装置とを仕切る部材を備え、この部材の上端に屋根を片持ち状に支持し、運転席側に延出したこと」の趣旨の技術事項が記載されていると誤って認定した(別紙審決の理由162〜168行)。
引用例3図面(朱記は原告によるもの) (1) 引用例3の第1図は断面図ではなく、正面図なので、省略がなければ、製図法上すべての視認可能な構造が実線で描かれ、隠れた構造は破線で描かれることになる。この図面の見方によれば、第1図に連続した二重線で描かれた部材4D-5,4D-3,4D-11は、当然に座席18の図面上の手前(着座姿勢での左側)に位置していると認定されるべきである。そして、屋根はバックホウ装置と運転席との間の仕切り部材と運転席手前の支柱(部材4D-3)で支持されていると認定されてしかるべきである。
(2) 第2図には、運転席18とバックホウ3との間の部材4D-2の上端に、図中運転席18の左側から上部にかけて屋根(部材4D-1)が記載され、運転席の図において右側の当該屋根(部材4D-1)の下には何も記載されていないが、以下の理由により、第1図に二重線で描かれている部材4D-5,4D-3,4D-11の記載が第2図において省略されているとみるべきである。
@ 第1図は構造を最も良く示す主要図として描かれる正面図であるから、第1図から把握可能な構造を無視すべきでないし、図面に示されている構造は立体構造として捉えられるべきである。
A 出願図面は、明細書に記載されている技術説明と合わせてその構造を理解させることに主眼を置くものであり、構造を分かりやすくするために積極的に図中の一部の記載を省略することもよく行われる。省略されていると解することのできる構成部材は、省略されている図面に対してそれを補って解釈されるのが特許・実用新案の図面の正しい合理的な解釈である。したがって、第2図に記載されていないことを理由に、第1図の朱記4D-5,4D-3の記載を無視して、第3の支柱が全体として記載されていないと認定するのは誤りである。
B バックホウ等の作業車には、運転席の周囲を壁や扉で覆う「キャビンタイプ」のものと、運転席の周囲(三面又は四面)を開放し、上方に屋根を設けた「キャノピータイプ」のものとがある。
この種バックホウ等の作業車に採用される「キャビン」や「キャノピー」における屋根を支持する構造を示す本件出願前周知の技術についてみれば、引用例1や引用例2、更には甲第10号証の1(本件審判請求書)に添付の審判甲第9号証のカタログ等のように、「3柱」で屋根を支持する3柱キャノピーしか存在しないのであり、本件出願前には屋根を運転部とバックホウ装置の間に配設した「縦壁のみ」で支持する技術は存在していなかった。
この周知技術を熟知し、キャノピーの技術的な本質を理解する当業者が、引用例3の図面(第1図〜第3図)をみれば、第1図の4D-5,4D-3,4D-11は正に第3の支柱の存在を示し、座席の左側でも支持されている周知の「3柱キャノピー」を開示するものと理解するのが自然である。
C 引用例3の運転席の保護構造が「キャビン」でなく、「キャノピー」であることを理解しやすいように、第2図においては、仕切部材とは別にあるはずの第3の支柱を省略したものと解するのが自然である。
2 取消事由2(引用例1,3の認定誤り及び相違点2の判断の誤り) 審決は、引用例1に「運転部の前部において、手すりを架設連結した」構成が記載されていると誤って認定するとともに(別紙審決の理由89〜90行)、引用例3に「運転席の前部において、運転席とバックホウ装置とを仕切る部材の前部に対し前記バックホウ装置とは反対側の前記旋回台の部分と前記部材の前部とにわたって、手すりを架設連結した」構成が記載されていると誤って認定したものである(別紙審決の理由164〜166行)。
審決引用のその他の文献にも、小型軽量化を図り、縦壁のみで屋根の荷重を支持する全く新規なキャノピーにおいて、その縦壁の補強に手すりを兼用することによって、縦壁構造全体の軽量化に寄与しながら、屋根を片持ち状に支持することの本件考案の結合構成を示唆する記載は認められない。
(1) 引用例1の認定誤り 引用例1に記載の事項に関し、審決は、引用例1には「前記運転部の前部において、手すりを架設連結し、・・・」が記載されていると認定している(別紙審決の理由89〜90行)。
架設連結とはP1点からP2点(あるいは一端から他端)という少なくとも2箇所にわたって連結されていることを指す用語であることから、手すりが連結されているP1点(一端)とP2点(他端)が分からない場合には、使用できない用語である。ところが、引用例1に記載された明細書及び図面からは手すり(朱記a)と指摘されているものが、一端が操作ボックス(朱記b)に取り付けられているように思われるが他端がどうなっているのか分からないから、「手すりを架設連結した」構造が開示されていると認めることはできない。
引用例1図面(朱記は原告によるもの) (2) 引用例3の認定誤り 図面を解釈する場合、紙面の奥行き方向は正面図だけでは分からず、側面図なり斜視図があって初めて理解可能なものであり、手すりも引用例3の第2図だけでは確定できないし、第4図の正面図をみてもこれらの正面図には手すりが示されていないことから、手すりは座席の手前に存在するとはいえないことになる。
引用例3に示されている部材(4D-6)が座席の前方に位置する手すりであると解せるとしても、第3図平面で既に屋根の縦壁が存在する側がブームの旋回半径範囲に一部重複しており、この旋回範囲内には縦壁の前支柱は設けられないはずであり、
手すり部材(4D-62)は縦壁の前支柱に接続されているとはいえない。
(3) 相違点2の判断の誤り 審決は、予備的な証拠として、甲第10号証の1に添付のヤンマーディーゼル株式会社の昭和63年8月ころ作成のヤンマークローラバックホウB3のカタログ(審判甲第5号証)及び原告の昭和63年2月ころ作成のクボタ全旋回ミニバックホウSRシリーズのカタログ(審判甲第9号証の1)を「手すり」に関する周知技術として引用している。
しかし、それらは、従来周知の強度的には屋根の荷重を座席の後方に配設した2本の支柱で支持する「3柱キャノピータイプ」の縦壁の前支柱に手すりを設けることを示すにとどまるものであって、縦壁(側壁)のみで屋根の荷重を支持するキャノピーにおいて、その縦壁を補強する「手すり」を開示するものではない。
本件考案は、縦壁(側壁)を屋根を支持させるための周辺枠構成とするとともに、
縦壁の前支柱に手すりを取り付けて、該手すりを縦壁の補強部材を兼ねさせることによって、小型のキャノピーの屋根を片持ち状に支持することができるようにしたものであり、これによって背部の圧迫感もなく振り向いての後方確認もしやすくなったものである。
これらの技術的な考え方は、従来周知の一対の後支柱でキャノピーの屋根を強度的に支持する構造を採用していた「2柱キャノピー」及び「3柱キャノピー」からは、到底想到できなかった新規な技術的思想に基づく考案である。
3 取消事由3(引用例1との一致点の認定及び相違点3の判断の誤り) 審決は、対比判断において、本来「相違点」とすべき「少なくとも、前記縦壁の上端に屋根を支持し、前記運転部側に延出してある」点を誤って一致点として認定し、その誤認に基づいて「引用例1に記載されたものにおけるようなバックホウにおいて、その運転部側に延出した屋根を支持する構成として3本の柱により支持する構成に代えて、運転席側に延出した屋根を片持ち状に支持する構成を採用したものに相当する。」とその論理を誤り、「引用例1に記載されたものに、引用例3、
引用例4に記載された技術事項を適用・組み合わせることを阻害する特段の要因もない」として、進歩性の判断を誤ったものである。
(1) 本件考案と引用例1との一致点の認定誤り 引用例1に記載されたバックホウの「キャノピー」に関して、それに示されている屋根の支持構造が形式的に3柱であっても、前支柱よりも後ろ2本の支柱が太いことから、強度的には、屋根の荷重が後ろの2本の支柱で支持される「3柱キャノピー」であると正しく認定されていたものであるとすれば、屋根の支持構造に関しては、屋根を支持する強度メンバー(太い支柱)を基点として、「後ろの2本の支柱で屋根を支持し、運転部の後方から運転部前方側(前方)に延出して、少なくとも、側壁(縦壁)の前部で第3の支柱で屋根を支持するバックホウ」が記載されていると認定すべきところ、審決が、本件考案との「一致点」として「少なくとも、縦壁の上端に屋根を支持し、運転部側(側方)に延出してあるバックホウ」であると、
屋根を支持する強度メンバーが縦壁の前後に設けられている支柱であるかのように認定した(別紙審決の理由198〜199行)のは誤りである。
(2) 引用例1と引用例3との組合せの論理の誤り 引用例3の図面に記載された「キャノピー」は、従来周知の「3柱キャノピー」が記載がされていると理解するのが自然である以上、引用例3に「屋根は片持ちの状態で支持されている」ものが記載されているとした誤認に基づく適用、組合せの論理は成立しない。
(3) 引用例1と引用例4との組合せの論理の誤り 引用例4の図面に記載された「キャノピー」は、「縦壁(後壁)」のない「2柱キャノピー」であるから、引用例1に示された3柱キャノピータイプのものに代えて、引用例4に示された技術を適用しても本件考案とはならない。
また、従来周知の「2柱キャノピー」の技術手段を大きな概念で捉えて、これを引用例1(3柱キャノピー)の技術に適用すべく、引用例1に示された3柱キャノピーの支持部材のうち、第3の支柱を除去しようとしても、引用例1の運転席左側の「第3」の支柱は屋根を両持ち支持するための強度部材であるから、引用例1(3柱キャノピー)に示された考案から、本来後2本を対とされるべき強度メンバーを付加的なものとみなして、第3の支柱を除去することは常識的にみても、明確な阻害要因がある。
審決取消事由に対する被告らの反論
1 取消事由1に対して 審決は、図面には正確に記載されていない部分も存するけれども、全体としては概ね正確に記載されているという前提の下に、単に引用例3の第2図のみに着目したものではなく、第1図〜第3図を総合的に解釈し、「屋根は片持ちの状態で支持されていると理解するのが合理的」(別紙審決の理由280〜281行)であるとしたのであって、正当である。
原告が主張するように部材(4D-3)が運転席の手前(着座姿勢における運転席18の左側)にあると仮定すると、第2図において部材(4D-3)は必ず運転席の右側に描かれなければならないはずである。実際には、第2図において「第3の支柱」は影も形もないのであるから、第3の支柱が存在するとする原告の主張は、社会通念及び技術常識からかけ離れている。
2 取消事由2に対して (1) 引用例1について 審決における引用例1の認定は手すりを架設連結しているかどうかであり、どこに連結しているかではない。手すりの一端が宙に浮いていることはあり得ない。
(2) 引用例3について 引用例3第2図をよく見ると、前支柱と旋回台に架設連結された手すりが明らかに開示されている。したがって、「第2図において、運転席18の左側に図示された屋根の支持部材の中程から右側へ延出し、旋回台4の方向に下方に屈曲している部材は、運転席の前方に設けられた手すりである」(別紙審決の理由159〜161行)とした審決の認定は正当である。
原告は、本件考案は「縦壁の前支柱に手すりを取り付けて、該手すりを縦壁の補強部材を兼ねさせることによって、小型のキャノピーの屋根を片持ち状に支持することができるようにした」と主張するが、引用例3の第2図を見ると、手すりは縦壁(4D-2)の前支柱に取り付けられているから、原告が主張するのと同様の補強効果を奏する。
3 取消事由3に対して 屋根の支持の仕方(屋根を縦壁だけで支持しているのか、それとも、屋根を縦壁と第3の支柱とで支持しているのか)を捨象すれば、運転席の上方を屋根が覆っている点においては本件考案も引用例1も共通しているから、審決がこれを一致点と認定したからといって、誤りというのは当たらない。強度的に荷重がどこに主にかかっているかを考慮したとしても、引用例1が「少なくとも、前記縦壁の上端に屋根を支持し、前記運転部側に延出してある」との構成であるのに間違いない。
バックホウにおいて屋根を片持ちに支持することは、引用例3に開示されているから、引用例1のバックホウが現に備えている左支柱(第3の支柱)を除去することは、当業者であれば当然に案出可能な設計的事項である。
当裁判所の判断
1 取消事由1について (1) 審決が、引用例3に、「旋回台に運転席とバックホウ装置とを左右に並べて配置し、前記運転席とバックホウ装置との間に前記運転席とバックホウ装置とを仕切る部材を備える」「バックホウ」(別紙審決の理由163〜164行)が記載されているとした点については、原告も争っていない。
(2) 「屋根を片持ち状に支持する」点について引用例3の第1,2図の記載を検討する。
引用例3の第1,2図は正面図及び側面図であるが、製図法上省略がなければすべての視認可能な構造は実線で描かれ、隠れた構造は破線で描かれるのが通例であって、引用例3の上記図面についてこの通例に反する記載方法がされたものと認めるべき特段の事情は認められない。
そこで、原告が朱記した符号に基づいてこの第2図の記載を検討すると、4D-1の折れ曲がった先端の先には何も記載されていないことからして、第2図の記載から部材4D-1の先端の位置には部材が存在しないと解される。第2図の4D-2,4D-1は連続した二重線で、運転席18の左側から上方に立ち上がった後、運転席18上に延びたΓ状に描かれている。ところで、本件出願当時、バックホウにおいて屋根を運転席の上に設けることは当然の慣用技術であると認められるので、この慣用技術を認識しているはずの当業者が第2図の上記記載を見みれば、引用例3の屋根は運転席18の左側から上方に立ち上がった部材の上端に片持ち状に支持され、運転席側に延出されていると当然理解するべきものである。
(3) 原告は、第1図に4D-5,4D-3,4D-11が連続した実線で描かれていることを根拠に、これらの部材は運転席18の手前(着座姿勢の左側)に位置し、屋根が第3の支柱(4D-3)により支持され、第2図においては該第3の支柱(4D-3)の記載が省略されている旨主張しているが、上記(2)説示における第2図から理解されるべきところに反し、第2図から第3の支柱が省略されていることを読み取るべき根拠はないというべきである。
そうすると、引用例3には「運転席とバックホウ装置との間に運転席とバックホウ装置とを仕切る部材を備え、この部材の上端に屋根を片持ち状に支持し、運転席側に延出したこと」の技術事項が記載されているものであり、これと同旨の審決の認定に誤りはない。取消事由1は理由がない。
2 取消事由2について (1) 原告は、引用例1では、手すりの一端がボックスに取り付けられて操作ボックスに取り付けられていても他端がどうなっているか分からないので、引用例1には「手すりを架設連結した」構造が開示されていないと主張しているが、審決が引用例1について認定したのは手すりの架設連結の有無であり、どこへの架設連結ではない。手すりの一端が宙に浮いていることはあり得ないから、審決が引用例1につき「手すりを架設連結し」たものとした認定(別紙審決の理由90行)に誤りはない。
(2) 引用例3の認定について判断する。
(2)-1 被告らは、引用例3の第2図を見ると前支柱と旋回台に架設連結された手すりが明らかに開示されていると主張する。そこで第2図を見ると、手すりに対応する連続した二重線で描かれた部材4D-6が、審決で認定されているように「運転席18の左側に図示された屋根の支持部材の中程から右側へ延出し、旋回台4の方向に下方に屈曲している」(別紙審決の理由159〜160行)ことを確認することができる。
しかしながら、部材4D-6と旋回台4の交差部分、部材4D-6と屋根の支持部材に対応する部材4D-2の交差部分を見ると、いずれも連続した線として描かれていないので、部材4D-6と旋回台4の交差部分、部材4D-6と部材4D-2の交差部分では各部材の図面上の奥行き方向の相対的位置が異なる可能性を否定できない。
してみると、第2図の記載からは部材4D-6が旋回台4、部材4D-2にそれぞれ連結しているとはいえないので、引用例3に「運転席の前部において、運転席とバックホウ装置とを仕切る部材の前部に対し前記バックホウ装置とは反対側の前記旋回台の部分と前記部材の前部とにわたって、手すりを架設連結し」(別紙審決の理由164〜166行)た構成が記載されているとした審決の認定は、必ずしも首肯することができない。
(2)-2 しかし、審決は、手すりの構成に関する周知技術を示す予備的証拠として、甲第10号証の1に添付のヤンマーディーゼル株式会社の昭和63年8月ころ作成のヤンマークローラバックホウB3のカタログ(審判甲第5号証。甲第10号証の1(審判請求書)に添付)及び原告の昭和63年2月ころ作成のクボタ全旋回ミニバックホウSRシリーズのカタログ(審判甲第9号証の1。甲第10号証の1(審判請求書)に添付)を引用している。
この点につき原告は、上記周知技術は、従来周知の強度的には屋根の荷重を座席の後方に配設した2本の支柱で支持する「3柱キャノピータイプ」の縦壁の前支柱に手すりを設けることを示すにとどまるものであって、縦壁(側壁)のみで屋根の荷重を支持するキャノピーにおいて、その縦壁を補強する「手すり」を開示するものではないと主張する。
しかしながら、上記予備的証拠から周知技術として認定されたのはあくまでも手すりをどのように架設連結するかであって、架設連結される前支柱が3柱キャノピータイプの縦壁のものであっても、手すりがどのように架設連結されているかには変わりはなく、強度的に荷重がどこに主にかかっているかを考慮したとしても、上記技術事項を認定するのを妨げるほどの根拠は見いだせない。
したがって、上記予備的証拠に基づいて、「手すりを、屋根を支持する縦壁フレームの前部に対しバックホウ装置とは反対側の旋回台の部分と縦壁フレームの前部の支柱部とにわたって架設連結することは、本件考案出願前に周知の技術的事項にすぎない」(別紙審決の理由238〜241行)とした審決の認定に誤りはなく、
原告の上記主張は採用することができない。
してみると、引用例3に関する審決の認定を是認できないとしても、そこに記載されているとした事項は、審判甲号証の記載により本件出願前周知であると認められる。
(3) 原告は、本件考案は、縦壁(側壁)を屋根を支持させるための周辺枠構成とするとともに、縦壁の前支柱に手すりを取り付けて、該手すりに縦壁の補強部材を兼ねさせることによって、小型のキャノピーの屋根を片持ち状に支持することができるようにした新規なものであると主張している。
しかしながら、手すりで縦壁の補強ができるのは、結局手すりを縦壁の前支柱に取り付けて縦壁を支えることによるものであることは自明であり、また上記(2)説示の周知技術も縦壁の前支柱に手すりを取り付けるものであって、これら周知技術においても程度の差こそあれ、手すりが縦壁の補強部材を兼ねていると解すべきものである。
してみると、引用例1記載の考案の手すりを架設連結する際に、上記周知技術を採用し、本件考案のように、手すりを「前記縦壁(6)の前部に対し前記バックホウ装置(3)とは反対側の前記旋回台(2)の部分と前記縦壁(6)の前部の支柱部とにわたって」架設連結することは、当業者が極めて容易になし得る程度の事項であると認められる。
(4) 以上のとおりであって、取消事由2は理由がない。
3 取消事由3について (1) 原告は、引用例1に記載されたバックホウの「キャノピー」が3柱キャノピーであるにもかかわらず、本件考案との一致点として、屋根を支持する強度メンバーが縦壁の前後に設けられている支柱であるかのように、「少なくとも、縦壁の上端に屋根を支持し、運転部側(側方)に延出してあるバックホウ」であると認定した審決の認定(別紙審決の理由198〜199行)は誤りであると主張している。
しかしながら、運転席の上方を屋根が覆っている点においては本件考案も引用例1も共通しているから、審決がこれを一致点と認定した点に誤りはない。強度的に荷重がどこに主にかかっているかを考慮したとしても、引用例1から上記技術事項を認定するのを妨げるほどの根拠は見いだせない。審決の上記認定に誤りはない。
(2) 引用例3には、取消事由1について説示したように、「運転席とバックホウ装置との間に運転席とバックホウ装置とを仕切る部材を備え、この部材の上端に屋根を片持ち状に支持し、運転席側に延出したこと」の技術事項が記載されていると解すべきである。したがって、「引用例1に記載されたものに、引用例3・・・に記載された技術事項を適用・組み合わせることを阻害する特段の要因もないことを考慮すると、本件考案の相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば格別の困難性を伴うことなく極めて容易になし得た程度のことである。」(別紙審決の理由259〜262行)とした審決の認定判断に誤りはない。
(3) 以上のとおりであって、引用例4に関する原告の主張について触れるまでもなく、取消事由3は理由がない。
結論
よって、原告主張の審決取消事由は理由がなく、原告の請求は棄却されるべきである。
追加
平成14年(行ケ)第51号平成11年審判第35617号審決の理由一手続の経緯本件実用新案登録第2517417号の請求項1に記載された考案は、平成2年5月24日に出願された実願平2-54338号の出願を平成6年5月20日に実用新案法9条1項において準用する特許法44条1項の規定により分割して新たな出願とした実願平6-5564号出願に係るものであって、平成8年8月20日にその設定登録がなされ、実用新案登録異議の申立て(平成9年異議第72274号)がなされ、平成9年10月16日付けで取消理由通知がなされ、平成10年1月5日付けで意見書提出、訂正請求がなされ、平成10年5月12日付けで、「訂正を認める。実用新案登録第2517417号の実用新案登録を維持する。」との決定がなされた。
その後、本件無効審判の請求(平成11年審判第35617号)がなされ、平成13年5月24日付けで無効理由通知がなされ、平成13年8月6日付けで意見書が提出された。
二請求人の請求の趣旨及び被請求人の答弁の趣旨請求人の請求の趣旨は、「登録第2517417号実用新案の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」であり、被請求人の答弁の趣旨は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」である。
三無効理由通知の概要平成13年5月24日付け無効理由通知の概要は次のとおりである。
平成10年1月5日付け訂正請求書により訂正された考案は、引用例1(実願昭63-121167号(実開平2-42961号)のマイクロフィルム)、引用例2(実願昭63-121916号(実開平2-42963号:審判甲第7号証)のマイクロフィルム)及び引用例3(特開昭63-272820号公報(審判甲第3号証、審判乙第2号証))に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易考案をすることができたものであり、当該訂正後の考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであって、その訂正が適法になされたものではない。したがって、本件実用新案登録は、平成10年法律51号附則13条により改正された、平成5年法律26号附則4条1項の規定によりなお効力を有するものとされ、同法附則4条2項の規定により読み替えられた、平成5年改正前の実用新案法37条1項2号の2の規定に該当し、無効とすべきものである。
四本件考案平成10年1月5日付け訂正請求書により、実用新案登録請求の範囲減縮を目的として実用新案登録請求の範囲「【請求項1】旋回台(2)に運転部(4)とバックホウ装置(3)とを左右に並べて配置し、前記運転部(4)とバックホウ装置(3)との間に前記運転部(4)とバックホウ装置(3)とを仕切る縦壁(6)を備えると共に、前記運転部(4)の前部において、前記縦壁(6)の前部に対し前記バックホウ装置(3)とは反対側の前記旋回台(2)の部分と前記縦壁(6)の前部とに亘って、手すり(9)を架設連結し、前記バックホウ装置(3)側を透視可能な透明の板部材で構成された透視部(10)を前記縦壁(6)に備えて、前記縦壁(6)の上端に屋根(7)を片持ち状に支持し前記運転部(4)側に延出してあるバックホウ。」が、
「【請求項1】旋回台(2)に運転部(4)とバックホウ装置(3)とを左右に並べて配置し、前記運転部(4)とバックホウ装置(3)との間に前記運転部(4)とバックホウ装置(3)とを仕切る縦壁(6)を備えると共に、この縦壁(6)を、前記バックホウ装置(3)側を透視可能な透明の板部材で構成された透視部(10)と、その透視部(10)の前後方向の両側辺位置に立設された前後一対の支柱部を備える周辺枠構成部分とから構成し、前記運転部(4)の前部において、前記縦壁(6)の前部に対し前記バックホウ装置(3)とは反対側の前記旋回台(2)の部分と前記縦壁(6)の前部の支柱部とに亘って、手すり(9)を架設連結し、前記縦壁(6)の上端に屋根(7)を片持ち状に支持し前記運転部(4)側に延出してあるバックホウ。」と訂正された。
(以下、訂正後の考案を本件考案という。)五当審における検討1平成13年5月24日付け無効理由通知で引用した公知の刊行物(引用例1ないし引用例3)に記載された技術事項及び周知(引用例4)の技術的事項1-1引用例1:実願昭63-121167号(実開平2-42961号)のマイクロフィルム引用例1には、
(1)「第1図に示す(A)は小旋回型バックホーであり、(1)はクローラ式の走行部、(2)は旋回台、(3)は同旋回台(2)上に設けた運転部、(4)は同運転部(3)の側方において旋回台(2)上に上下回動自在に取付けた掘削装置である。運転部(3)には、走行操作レバー(5)や掘削装置操作レバー(6)等を設け、これらレバー(5)(6)の後方に座席(7)を配置している。(7’)は座席下方に配設した原動機部である。(8)は天蓋、(9)は掘削装置(4)側に立設した運転部(3)の側壁である。」(同明細書6頁15行〜7頁6行)、
(2)「また、第5図及び第6図中、(35)は、天蓋(8)のブーム(11)側角部に設けた土落下防止体であり、同土落下防止体(35)により、天蓋(8)上に落下した土砂等がブーム(11)や原動機部(7’)側に落下して、ブーム(11)や油圧ホース(26)等を損傷等するのを防止している。そして、天蓋(8)は、前高後低の傾斜面として、落下土砂等が後方へすべり落ちやすいようにしている。」(同明細書11頁3〜11行)、
(3)第1図及び第4〜6図、
が記載されており、第1図において、運転部3の前方には手すりが設けられていることは明らかであるから、引用例1には、
「旋回台に運転部とバックホー装置とを左右に並べて配置し、前記運転部とバックホー装置との間に前記運転部とバックホー装置とを仕切る側壁を備えると共に、
この側壁を、前記バックホー装置側を透視可能な透視部と、その透視部の前後方向の両側辺位置に立設された前後一対の支柱部を備える周辺枠構成部分とから構成し、前記運転部の前部において、手すりを架設連結し、さらに運転部を介して側壁とは反対側の運転部の側部後方位置に、側壁を構成する周辺枠構成部分の後の支柱部にほぼ対向して第3の支柱を立設し、前記側壁の上端と第3の支柱により天蓋を支持し、前記運転部側に延出してあるバックホー」が記載されているものと認められる。
なお、同明細書の「(9)は掘削装置(4)側に立設した運転部(3)の側壁である。」との記載によると、運転部とバックホー装置との間に運転部とバックホー装置とを仕切る「側壁」が設けられるものであり、しかもその「側壁」は、引用例1が「小旋回形バックホーにおける掘削装置の土溜り防止構造」に関するものであって運転部側方に配置されるバックホー装置のブーム基端部に土砂が滞留し不具合を解消するものであるとの点からすると、その透視部がいわゆる素通しの構成ではなく、透視可能であるとともに何らかの部材で運転席への土砂等の侵入を防止する構成が当然に考慮されているものとするのが相当であり、上記のとおり認定した。
1-2引用例2:実願昭63-121916号(実開平2-42963号:本件事件の審判甲第7号証)のマイクロフィルム引用例2には、
(1)「旋回台(4)の上に運転部(5)を設け、同運転部(5)の側方に掘削装置(B)を上下昇降自在に取付け、さらに、同装置(B)のブーム(7)を左右に移動させ、バケット(9)を運転部(5)の上方に上昇させるように構成した小旋回型バックホーにおいて、同運転部(5)の上方に設けたキャノピールーフ(C)の前部を下方に向けて傾斜状に形成すると共に、同ルーフ(C)の傾斜面(C-1)に透明板(23)を張設して運転部(5)より掘削装置(B)を視認する為の窓部(24)を構成したことを特徴とする小旋回型バックホーにおけるキャノピールーフ構造。」(同明細書実用新案登録請求の範囲)、
(2)「第1図の全体側面図において、Aは本考案に係る小旋回型バックホーを示し、同バックホーAは、左右一対のクローラ1を装備した走行フレーム2の略中央部に旋回基台3を立設している。さらに、旋回基台3の上面には、旋回台4を旋回自在に載設し、同旋回台4の上面左側部に運転部5、その後方に原動機M等を収納したボンネット6を配設し、運転部5の側方、すなわち、同旋回台4の略中央部に掘削装置Bの基端部を上下回動自在に枢着している。」(同明細書5頁12行〜6頁1行)、
(3)「また、かかる運転部5には、前部に操作スタンド17を立設して上面に各種操作レバー18を傾動自在に立設し、後部に座席19を配設している。さらに、運転部5の上方には、キャノピールーフCを配設しており、同ルーフCは、運転部5の右側前後端と、座席19の左側に、それぞれ立設した前支柱20、後支柱21、左支柱22によって支持されている。本考案は、第2図に示すように、かかるキャノピールーフCの前部を下方に傾斜させて、同ルーフCの前部に昇降するバケット14が通過する為の空間を形成している。従って、掘割装置Bのバケット14を上昇した際に、同バケット14とキャノピールーフCとの接触を回避すると共に、バケット14等を大きく作動して円滑な操作を行うべく構成している。また、
かかるキャノピールーフCの傾斜面C-1には、アクリル製の透明板23を張設して窓部24が形成されており、同窓部24によって運転部5の作業者が上方に作動した掘削装置Bを確認しながらその操作を行うものである。なお、25は窓部24のガードであり、同ガード25は、キャノピールーフCの傾斜面C-1に沿って前後方向に取付けて掘削土が円滑に滑り落ちるようにしている。かかる構造により、
キャノピールーフCは、その上に落下した掘削土を傾斜面C-1に沿って運転部5の前方に滑り落とし、掘削土の堆積による窓部24の閉塞を防止すべく構成している。また、キャノピールーフCの傾斜面C-1に設けた窓部24は、運転部5の作業者に対して略直面状態になり、可及的に視界を拡げると共に、窓部24を構成する透明板23が光を反射しないようにしている。」(同明細書7頁3行〜8頁16行)、
(4)第1〜4図、
が記載されており、これらによると、引用例2には、
「旋回台に運転部とバックホー装置とを左右に並べて配置し、運転部の上方にはキャノピールーフを配設し、同キャノピールーフの前部の下方傾斜面にアクリル製の透視可能な透明の板部材で構成された透明板を設けたバックホー」が記載されているものと認められる。
1-3引用例3:特開昭63-272820号公報(本件事件の審判甲第3号証、審判乙第2号証)引用例3には、
(1)「本発明は、・・・小旋回を必要とする全旋回式バックホー等の掘削運搬車両に関するものである。」(同公報1頁左下欄15〜18行)、
(2)「第1図、第2図、第3図において、1は車両、2は車体フレーム、3はバックホー、4は旋回台、5は車体フレーム2の後部に配設した荷台、6は荷台リンク装置、7は走行装置である。バックホー3は、車体フレーム2の前部で、運転席18の斜め前方に設置される。」(同2頁右上欄12〜17行)、
(3)「第2図は第1図の側面図」(同3頁左上欄13行)、
(4)第1〜8図、
が記載されており、特にその第2図には、掘削運搬車両の側面図が記載されており、運転席18とバックホー3との間に、図において運転席18の左側から上部にかけて屋根が記載されており、運転席の図において右側においては、当該屋根の下には何も記載されていない。ここで、第2図が第1図(掘削運搬車両の正面図)における側面図を表しており、断面図でないことを考慮すると、当該屋根は図において運転席の左側においてのみ支持され右側は支持されていない、いわゆる片持ちの状態で支持されていると考えられる。
また、第2図において、運転席18の左側に図示された屋根の支持部材の中程から右側へ延出し、旋回台4の方向に下方に屈曲している部材は、運転席の前方に設けられた手すりであることは明らかである。
したがって、引用例3には、
「旋回台に運転席とバックホー装置とを左右に並べて配置し、前記運転席とバックホー装置との間に前記運転席とバックホー装置とを仕切る部材を備えると共に、
前記運転席の前部において、前記部材の前部に対し前記バックホー装置とは反対側の前記旋回台の部分と前記部材の前部とに亘って、手すりを架設連結し、前記部材の上端に屋根を片持ち状に支持し、前記運転席側に延出してあるバックホー」が記載されているものと認められる。
1-4引用例4:実願昭58-137768号(実開昭60-45276号)のマイクロフィルム引用例4には、
(1)「本考案は、ブルドーザやドーザショベル等の建設車両の運転席を覆う屋根に関するものである。」(明細書2頁2〜4行)、
(2)「3はこの運転席2の上方を覆う屋根であり、この屋根3は屋根本体4と、これを支える支柱5・5とからなっている。支柱5・5は運転席2の後両側に立設されており、その上端部は第2図に示すようにフレーム6にて連結されている。そしてこのフレーム6にはアーム7・7が前方へ突出して設けてある。」(明細書3頁4〜11行)、
(3)「屋根本体4の下側壁には支柱5・5の上部構成部材、すなわちフレーム6及びアーム7・7が嵌合する支柱受溝10・・・・が設けてある。」(明細書4頁2〜6行)、
(4)「上記構成において、屋根本体4は、この屋根本体4の支柱受溝10を支柱5・5の上部構成部材に嵌合することにより支柱5・5に固定される。」(明細書5頁2〜5行)、
(5)第1図〜第7図、
が記載されており、特に第1図及び第2図を参照すると、引用例4には、
「ブルドーザやドーザショベル等の建設車両の運転席を覆う屋根本体4を、支柱5、フレーム6、アーム7により片持ち状に支持し、屋根本体4はフレーム6の上に嵌合して設けた構造。」が記載されていると認められる。
2本件考案と、引用例1に記載されたものとの対比、判断2-1対比本件考案と引用例1に記載されたものとを対比すると、両者は、
「旋回台に運転部とバックホウ装置とを左右に並べて配置し、前記運転部とバックホウ装置との間に前記運転部とバックホウ装置とを仕切る縦壁を備えると共に、
この縦壁を、前記バックホウ装置側を透視可能な透視部と、その透視部の前後方向の両側辺位置に立設された前後一対の支柱部を備える周辺枠構成部分とから構成し、前記運転部の前部において、手すりを架設連結し、少なくとも、前記縦壁の上端に屋根を支持し、前記運転部側に延出してあるバックホウ」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件考案においては、その透視部を、「透明の板部材で構成された透視部」としているのに対し、引用例1に記載されたものにおいては、その構成が明確でない点。
相違点2:本件考案においては、手すりを、「前記縦壁(6)の前部に対し前記バックホウ装置(3)とは反対側の前記旋回台(2)の部分と前記縦壁(6)の前部の支柱部とに亘って」架設連結しているのに対し、引用例1に記載されたものにおいては、
その構成が明確でない点。
相違点3:本件考案においては、屋根を支持するのに、「縦壁の上端に屋根を片持ち状に支持し、前記運転部側に延出し」た構成としているのに対し、引用例1に記載されたものにおいては、「さらに運転部を介して側壁とは反対側の運転部の側部後方位置に、側壁を構成する周辺枠構成部分の後の支柱部にほぼ対向して第3の支柱を立設し、」そして、「側壁の上端と第3の支柱により天蓋を支持し、前記運転部側に延出し」た構成としている点。
2-2相違点に対する判断(1)相違点1について引用例2には、「旋回台に運転部とバックホー装置とを左右に並べて配置し、運転部の上方にはキャノピールーフを配設し、同キャノピールーフの前部の下方傾斜面にアクリル製の透視可能な透明の板部材で構成された透明板を設けたバックホー」が開示されている。
本件考案は、引用例1に記載されたものにおける透視部の具体的構成として、引用例2におけるアクリル製の透明板におけるような、透視可能な透明の板部材の構成を採用したものに相当するが、このようなことは、引用例1及び2が何れも本件考案におけるバックホウとは同一の技術に関するものであること、さらに引用例1に記載されたものに、引用例2に記載された技術事項を適用・組み合わせることを阻害する特段の要因もないことを考慮すると、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなくきわめて容易になし得た程度のことである。
(2)相違点2について引用例3には、「旋回台に運転席とバックホー装置とを左右に並べて配置し、前記運転席とバックホー装置との間に前記運転席とバックホー装置とを仕切る部材を備えると共に、前記運転席の前部において、前記部材の前部に対し前記バックホー装置とは反対側の前記旋回台の部分と前記部材の前部とに亘って、手すりを架設連結」たバックホーが開示されていることから、引用例1に記載されたバックホーにおいて、その運転部の前部に設けた手すりの構成として、引用例3における手すりの構成を採用して本件考案の相違点2に係る構成とすることは、引用例1及び3が何れも本件考案におけるバックホウとは同一の技術に関するものであること、さらに引用例1に記載されたものに、引用例3に記載された技術事項を適用・組み合わせることを阻害する特段の要因もないことを考慮すると、当業者であれば、格別の困難性を伴うことなくきわめて容易になし得た程度のことである。
なお、バックホウ装置において、本件考案の相違点2に係る構成のように、手すりを、屋根を支持する縦壁フレームの前部に対しバックホウ装置とは反対側の旋回台の部分と縦壁フレームの前部の支柱部とに亘って架設連結することは、本件考案出願前に周知の技術的事項にすぎない(必要なら、請求人提出の審判甲第5号証(ヤンマーディーゼル株式会社の昭和63年8月頃作成のヤンマークローラバックホーB3のカタログ)、同審判甲第9号証の1(久保田鉄工株式会社の昭和63年2月頃作成のクボタ全旋回ミニバックホーSRシリーズのカタログ)参照のこと)。
(3)相違点3について本件考案は、引用例1に記載されたものにおけるようなバックホーにおいて、その運転部側に延出した屋根を支持する構成として3本の柱により支持する構成に代えて、運転席側に延出した屋根を片持ち状に支持する構成を採用したものに相当する。
しかしながら、引用例3には、「旋回台に運転席とバックホー装置とを左右に並べて配置すると共に、前記運転席とバックホー装置との間に前記運転席とバックホー装置とを仕切る部材を備え、その部材の上端に前記運転席側に延出した屋根を片持ち状に支持してあるバックホー」が開示されており、また、屋根を設けるに当たり、本件考案のように、「運転部側に延出した屋根を片持ち状に支持」する構成や、「梁部上に連ねて」屋根を片持ち状に支持する構成は、上記引用例4にも記載されている(引用例4におけるフレーム6は訂正考案における「梁部」に相当し、
引用例4の屋根本体4はフレーム6の上に嵌合して設けられている。)ようにブルドーザやドーザショベル等の建設車両の運転席を覆う屋根において、本件考案出願前に周知の事項にすぎない。
そして、引用例1、引用例3、引用例4が何れも本件考案におけるバックホウとは同一の技術分野の建設車両に属するものであること、さらに引用例1に記載されたものに、引用例3、引用例4に記載された技術事項を適用・組み合わせることを阻害する特段の要因もないことを考慮すると、本件考案の相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば格別の困難性を伴うことなくきわめて容易になし得た程度のことである。
(4)まとめそして、全体として、本件考案によってもたらされる効果も、引用例1ないし引用例4にそれぞれ記載された事項から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、平成10年1月5日付け訂正請求書により訂正された本件考案は、
引用例1ないし引用例4に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易考案をすることができたものであって、実用新案法第3条第2項に該当し、本件考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
(5)被請求人の主張に対して被請求人は、平成13年8月6日付け審判事件意見書において、引用例3に記載された事項、特に図面には「屋根を片持ち状に支持する」技術は開示されておらず、かえって、第1図ないし第3図を総合すれば、屋根は運転席を跨って左右両持ち支持されている旨主張する。
しかしながら、引用例3において、第1図ないし第3図は、製図法に則り正確に記載されていない部分も存するが、運搬車両の全体を示す図面としては概ね正確に記載されており、その第2図に示された側面図において、屋根を支持する部材が運転席の左右に設けられている場合に、図面上右側に設けられている支持部材を欠落して記載しているとは考えにくく、上記「1」の「1-3」に記載したように、屋根は片持ちの状態で支持されていると理解するのが合理的であって、被請求人の主張は採用できない。
六むすび以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、平成10年1月5日付け訂正請求書による訂正が、平成6年法律116号附則9条2項の規定により準用され、同6条1項の規定によりなお従前の例とされる、特許法120条の4第3項の規定によりさらに準用される平成6年法律116号による改正前の特許法126条3項の規定に違反してなされたものであって、実用新案登録を受けることができないものであり、平成10年法律51号附則13条により改正された、平成5年法律26号附則4条1項の規定によりなお効力を有するものとされ、同法附則4条2項の規定により読み替えられた、平成5年改正前の実用新案法37条1項2号の2の規定に該当し、無効とすべきものであり、平成13年5月24日付け無効理由通知における無効の理由は妥当なものである。
裁判長裁判官 塚原朋一
裁判官 塩月秀平
裁判官 田中昌利
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