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関連審決 審判1999-35463
関連ワード 考案 /  考案者 /  考案の要旨認定 /  図面 /  構造 /  物品 /  設定登録 /  新規性(3条1項) /  請求項 /  実施例 /  頒布 /  特定 /  明細書 /  請求の範囲 / 
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事件 平成 13年 (行ケ) 168号 審決取消請求事件
原告 川崎化工株式会社
訴訟代理人弁理士 清原義博
被告A
訴訟代理人弁護士 徳田恒光
訴訟復代理人弁理士 川崎隆夫
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2003/03/17
権利種別 実用新案権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が平成11年審判第35463号事件について平成13年3月21日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 被告は,名称を「ふろばの回る腰掛け」とする実用新案登録第2507154号考案(平成5年6月28日出願,平成8年5月30日設定登録,以下「本件考案」といい,その実用新案登録を「本件実用新案登録」という。)の実用新案権者である。原告は,平成11年8月30日,被告を被請求人として,本件実用新案登録の無効審判の請求をし,この請求は,平成11年審判第35463号事件として特許庁に係属した。特許庁は,上記事件につき審理した結果,平成13年3月21日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年4月2日,原告に送達された。
2 本件実用新案登録出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の実用新案登録請求の範囲請求項1】の記載 下端面にOリング8を施した下部側の環状裾部3a,該裾部3aから上方へ径小に湾曲形成される環状殻部3bを介して設けた上部側の環状支持部3c,及び該環状支持部3cの内側に一体的に連接されて上下中空状をなし,該中空状の内周面に雌ねじを形成した内筒部からなる本体3と, 中空筒状をなして外周面に前記環状支持部3cの雌ねじに上下方向螺進退可能な螺合嵌挿する上下用雄ねじハを形成した支持中空軸部2a,該支持中空軸部2aの上部側から拡径され,かつ下部側には,軸芯方向へ向けて突出形成し下面に平面歯下ホを形成した内周鍔部2dを設けた中間部2b,該中間部2bの周端部を拡径して受皿状に形成され,該受皿状部分の上面内周側に上向きの下部ボール受け溝ロを形成した受支部2cからなる伸縮用座受け2と, 中心部に上下方向の貫通孔1bを残して平面化された腰掛け面部1a,該腰掛け面部1aの下面内周側に前記下部ボール受け溝ロに対向する下向きの上部ボール受け溝イ,及び前記貫通孔1bの内周部に前記中間部2bの内側に嵌挿され,内周縁部に連結用突起受け部トを形成され,該連結用突起受け部トの上面に所定角間隔を隔てて複数の連結用突起廻り止めチを突出させた内筒部1cからなる回転座1と, 前記平面歯下ホと噛み合う平面歯上ヘを形成し,上面に独立的に撓曲可能な連結用突起ニ,及び該突起ニの上部外面に前記連結用突起廻り止めチに係合させる係合爪6aを突設した環状体からなる連結用部品6と, 前記伸縮用座受け2の下部ボール受け溝ロと,これに対向する前記回転座1の上部ボール受け溝イとの間に介在可能にされ,複数の保持穴を形成し,該各保持穴内に保持されるボール5からなるボールガイド板4とを備え, 利用者が,前記回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け,該回転座1への体重負荷を軽減した状態では,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持され,回転座1及び伸縮用座受け2間の回動を拘束して,前記本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の螺進退操作を可能とし, また,前記回転座1への体重負荷を軽減しない状態では,前記連結用部品6の平面歯上ヘと前記伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが自動的に解放され,前記伸縮用座受け2に対する前記回転座1の回動操作が優先されて,前記本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退を不能にし得るように構成したことを特徴とするふろばの回る腰掛け。
3 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,請求人(原告)の主張,すなわち,本件考案は,(1) 被告が本件考案に係る物品のパンフレット及び取扱説明書を頒布目的で大量に印刷するとともにその宣伝をテレビ放送したことにより出願前に日本国内において公然知られた考案として実用新案法3条1項1号に該当する,(2) 有限会社ケイエスビー四国及び有限会社エイブル企画が本件考案に係る物品を販売したことにより出願前に日本国内において公然知られた考案として同号に該当する,(3) 本件出願前に出願されその後公開された実願平4-40966号(実開平5-91671号)のCD-ROMと同一のものとして同法3条の2に該当する,(4) 考案者でない者であってその考案について実用新案登録を受ける権利を承継しない者の出願に対してされたものとして同法(平成5年法律第26号による改正前のもの)37条1項4号に該当するとの主張について,いずれも本件考案とは異なる構成に係るものであって理由がないから,本件実用新案登録を無効とすることはできないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本件考案の要旨の認定を誤った(取消事由)結果,原告の上記(1)ないし(4)の主張について,いずれも理由がないとの誤った結論に至ったものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本件考案の要旨認定の誤り) (1) 審決は,本件考案が,本件明細書の実用新案登録請求の範囲請求項1】に記載されたとおりのものであるとして,「連結用突起廻り止めチ」の構成(以下「本件構成」という。)を有すると認定するが(審決謄本3頁「第3本件考案」),本件構成は,被告の錯誤によって実用新案登録請求の範囲に記載されたものにすぎず,何らの作用効果も奏し得ない構成であって,特定不能な構成でもあるから,本件考案を構成しない。
(2) 本件構成は,本件明細書及びその図面(以下「本件図面」といい,本件明細書と併せ「本件明細書等」という。)から特定することはできない。本件考案の要旨として,このように特定不能な構成を認定したことは誤りである。
すなわち,本件明細書(甲2)の考案の詳細な説明には,本件構成について,「該連結用突起受け部トの上面に所定角間隔を隔てて複数の連結用突起廻り止めチを突出させてある」(【0016】)及び「該各連結用突起ニの上部外面に前記連結用突起廻り止めチに係合させる係合爪6aを突設してある」(【0018】)との記載があるが,これらの記載のみによって本件構成の具体的な形状や位置の特定は不可能であるから,その具体的構成を特定するためには本件図面を参酌する必要がある。
しかしながら,本件図面において,本件構成は,図2及び図3中に符号チとして表されているが,図2においては薄片状の部材として示されているのに対し,図3においては,連結用突起ニの高さよりも大きい相当の厚さを有するブロック状の部材として示されており,両図面に示された本件構成の形状は全く異なったものとなっており,これら図面を参酌しても,本件構成の具体的形状を特定することができない。また,本件構成は,図3において,隠れ線を表す破線で描かれており,しかも,当然表れるべき図1においては全く表れておらず,本件構成の具体的位置についても特定することができない。
(3) 本件考案において,本件明細書(甲2)に記載された「利用者が両足を洗い場の床面で支えたまま,回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け,該回転座1への体重負荷を軽減させることで・・・本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の利用者自身による螺進退操作,つまり,回転座1の上下高さ位置の調節(上昇,下降)が可能になる」(【0021】)との作用効果は,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持されれば,「連結用突起廻り止めチに対する連結用部品6の係合爪6aとの係合」の有無にかかわらず,当然に奏し得るものである。すなわち,本件構成の存在は上記作用効果を奏するために必須ではない無用のものである。
(4) 本件構成は,被告が本件出願に当たり本件図面を誤って記載した結果生じたものにすぎない。
審決は,入浴椅子「ユーランド」のパンフレット(審判甲4,本訴甲4)及びそのカラーパンフレット(審判甲11,本訴甲12。以下,これらを「本件パンフレット」という。)に「実用新案出願中」と記載があることの重要な意味を全く考慮していない。本件パンフレット(甲4,12)が被告の作成に係ること及びそこに記載された入浴椅子「ユーランド」(以下「被告製品」という。)が本件考案の実施品であることは,被告自ら,本件被告外1名を原告とし本件原告を被告とする高松地裁丸亀支部平成10年(ワ)第190号事件の訴状(審判甲3,本訴甲3。以下「別件訴状」という。)において認めており(7頁),また,本件無効審判の答弁書中でも同旨の自白をしている。そうすると,本件図面は,当然,被告製品の設計図面(甲7添付資料3〜7)と同一のはずである。ところが,本件図面には,被告製品の設計図面に記載されていない本件構成が描かれており,その具体的形状及び位置が特定し得ないほど不明りょうな描かれ方をしている。
被告は,被告製品の構造を熟知していないために,実際には存在しない本件構成が被告製品に存在しているものと誤解した結果,本件出願に当たって,本件構成を本件図面に記載したものである。本件図面において,本件構成が極めて不明りょうな描かれ方をしているのは,そのためである。
(5) 実用新案登録請求の範囲の記載の誤りについて ア 本件考案において,回転座1を含んだ伸縮用座受け2は,その外周面の螺子ハと本体3の内周面の螺子との螺合により上下するため,伸縮用座受け2は,その回転を摩擦力で阻害するように,人の荷重が掛かっている状態で動くことはできない。
したがって,本件明細書(甲2)の実用新案登録請求の範囲における「前記回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け,該回転座1への体重負荷を軽減した状態では,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持され,回転座1及び伸縮用座受け2間の回動を拘束して,前記本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の螺進退操作を可能とし」の記載は誤りである。
本件考案における回転座1の回転作用についても,本件明細書の実用新案登録請求の範囲における「前記回転座1への体重負荷を軽減しない状態では,前記連結用部品6の平面歯上ヘと前記伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが自動的に解放され,前記伸縮用座受け2に対する前記回転座1の回動操作が優先されて,前記本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退を不能にし得るように構成した」との記載,考案の詳細な説明における「両足を洗い場の床面に伸ばす等で回転座1への体重重荷を十分に加えることで」(【0022】)の記載は,いずれも誤りである。
イ 本件考案において,回転座1を回転させたとき,回転座1のみが回転するか,又は伸縮用座受け2も回転して本体3に対する螺進退操作を可能とするかは,利用者の座る位置によるのであり,荷重の大小によるのではない。体重80kgの人が軽く腰掛けた方が体重40kgの人が重く腰掛けたときよりも重いから,個人の体重差を無視して,軽く腰掛ける,重く腰掛けると表現することは,考案の定義として不明りょうである。したがって,人が軽く腰掛けたときは,回転座1及び伸縮用座受け2が回転して本体3に対する螺進退操作を可能とし,人が重く腰掛けたときは,回転座1のみが回転し本体3に対する螺進退操作はないという,審決の認定する本件考案の要旨は,荷重の大小との相関性を欠き誤りである。
ウ 利用者が体を洗う時など,いすを固定して座る通常の使用時においては,深く腰掛けるから,人の荷重は,受支部2cを介して伸縮用座受け2から本体3に受けられ,平面歯下ホと平面歯上への噛み合いが離れないため,回転座1のみが回転することはない。一方,浅めに腰掛けるときは,回転座1に荷重が掛かりその内筒部1cの先端が連結用部品6を下へ押し下げられ,平面歯下ホと平面上のへの噛み合いが離れ,いすは回転可能となる。結局,回転座1を回転させたときに,回転座1のみが回転するか,伸縮用座受け2も回転して本体3に対する螺進退操作を可能とするかは,利用者の座る位置によるのであり,荷重の大小によるのもではない。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の審決取消事由は理由がない。
2 取消事由(本件考案の要旨認定の誤り)について (1) 本件明細書等には,連結用部品6が,図3の右上の平面図のような環状体を構成し,環状体の外周部上面には,伸縮用座受け2の平面歯下ホと噛み合う平面歯上ヘが設けられており,図3の実施例では,環状体に約90度の角間隔で4箇所の外周面が回転座1の内周部にならって湾曲した,それぞれ独立的に撓曲可能な所定幅の舌片状の連絡用突起ニが環状体平面より突出して形成され,各連結用突起ニの上部外面には,本件構成に係合させる係合爪6aが突設されている。
一方,上記連結用部品6により伸縮用座受け2に連結される回転座1は,内筒部1cの内周縁部に連結用突起受け部トを形成させた上で,その上面に上記連結用部品6の連結用突起ニに対応させて,複数の本件構成を突出させた構造である。すなわち,連結用突起ニと本件構成は,それぞれ連結用部品の環状体と回転座の内筒部の内周縁部上に両者とも所定角間隔を隔てて設けられるものであって,連結用突起ニの係合爪6aと本件構成は交互に係合して,連結用突起ニの廻り止め作用を奏する。所定間隔を隔てて設けた連結用突起ニの係合爪6aが,同じく所定間隔を隔てて設けた本件構成に係合するためには,本件構成は,図3の実施例では,約90度間隔で4箇所に設けられた連結用突起ニの間に形成された4箇所の隙間に嵌合する連結用突起ニと相似形状を成すこととなる。そして,連結用突起ニが本件構成に係合することにより連結用突起ニの廻り止めがされることは,本件明細書等を参酌すれば,当業者にとって明らかなことである。
審決も,本件明細書等を参酌して,本件考案の要旨を上記のように認定したのであって,審決の要旨認定に誤りはない。
(2) 審決は,回転座1における本件構成と連結用部品6の係合爪6aとの係合,連結用部品6における平面歯上へと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いの保持によって,回転座1及び伸縮用座受け2間の回動が拘束される結果,回転座1を含む伸縮用座受け2を本体3に対し螺進退操作をすることが可能になるという本件考案の作用効果を肯定しており,審決の判断は正当である。
(3) 実用新案登録請求の範囲の記載が誤りであるとする原告の主張は失当である。
ア 本件考案は,本件明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された構成により,連結用部品6における平面歯上へと伸縮用座受け2の平面歯下ホとが噛み合うことにより,回転座1及び伸縮用座受け2間の回動が拘束され,本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の螺進退が可能となる。一方,連結用部品6の平面歯上へと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが開放されると,伸縮用座受け2に対する回転座1の回動操作が優先されて,本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退が不能となる。
本件考案において,回転座1に利用者が腰掛けている状態で平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとを噛み合せるには,回転座1の腰掛け面部1a上に,利用者が腰を軽く浮かせるなどにより軽く腰掛け,回転座1への体重負荷の点で利用者が腰掛けていない状態に近くすればよく,逆に,利用者が回転座1に腰掛け,回転座1に負荷を掛ければ,回転座1の内筒部1cが下方へ撓み,連結用部材6が押し下がり平面歯上ヘと平面歯下ホとの噛み合いは外れる。本件考案について,腰掛け面部1a上に軽く腰掛けるとは,回転座1への体重負荷を軽減させ,連結用部品6における平面歯上へと伸縮用座受け2の平面歯下ホを噛み合せるための動作の一つを述べたにすぎない。
イ 原告は,回転座1を含む伸縮用座受け2は,人が回転座1に腰掛けたまま上下高さ位置の調節はできないと主張するが,本件考案は,回転座1に腰掛けたままではなく,回転座1に軽く腰掛けて,回転座1への体重負荷を軽減させた状態で,回転座1を含む伸縮用座受け2の上下高さ位置を調節するものであるから,原告の主張は失当である。
ウ 原告は,回転座1を単独で回転させるか,又は伸縮用座受け2と共に回転させるかは,利用者の座る位置によると主張するが,回転座1に少し深く腰掛けるか,又は少し浅めに腰掛けるかは,連結用部品6の平面歯上へと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合せ状態という点で実質的な差異はない。
当裁判所の判断
1 取消事由(本件考案の要旨認定の誤り)について (1) 審決は,本件考案が本件構成,すなわち「連結用突起廻り止めチ」の構成を具備すると認定するところ,原告は,本件構成が本件明細書等から特定不能な構成である旨主張する。
そこで,検討するに,本件明細書(甲2)の考案の詳細な説明には,「前記貫通孔1bの内周部に該当する部分には,前記中間部2bの内側に嵌挿される内筒部1cを垂設した上で,該内筒部1cの内周縁部に連結用突起受け部トを形成させた上で,該連結用突起受け部トの上面に所定角間隔を隔てて複数の連結用突起廻り止めチを突出させてある」(【0016】),「前記連結用部品6は,図3に示す如く,前記平面歯下ホと噛み合う平面歯上ヘを上面に形成した環状体を構成しており,該環状体の上面に所定角間隔を隔てた複数箇所に独立的に撓曲可能な連結用突起ニを形成させ,該各連結用突起ニの上部外面に前記連結用突起廻り止めチに係合させる係合爪6aを突設してある」(【0018】)と記載されている。
これらの記載及び図2及び図3の図示によれば,回転座1は,内筒部1cの内周縁部に連結用突起受け部トを形成させ,連結用突起受け部トの上面に,所定角間隔を隔てて複数の本件構成を突出させた構造であると認められる。また,連結用部品6は,図3の右上の平面図に示すような環状体を構成し,環状体の外周部上面には,伸縮用座受け2の内周鍔部2dの下面に形成された平面歯下ホと噛み合う平面歯上ヘが設けられており,環状体に約90度の角間隔で4箇所に独立的に撓曲可能な所定幅の連結用突起ニが突出して形成され,各連結用突起ニの上部外面には,本件構成に係合させる係合爪6aが突設されているものと解される。そして,連結用突起ニ及び本件構成は,連結用部品の環状体の上部と回転座の内筒部の内周縁部上に共に所定角間隔を隔てて設けられるものであって,連結用突起ニの係合爪6aは本件構成に係合するのであるから,本件構成は,連結用突起ニの間に形成された4箇所の隙間に延在する円弧状の形状を成すことは明らかである。
そうすると,本件考案の本件構成は,本件明細書等に記載され,特定可能な構成であるから,原告の主張は失当である。
原告は,図3において,本件構成が連結用突起ニの高さよりも大きい相当の厚さを有するブロック状の部材として示されているとも主張するが,図2の記載を参酌して図3を見ると,図3のチの引き出し線の示す矢印位置の高さ付近のみが本件構成であり,その下部は,中央部にトの引き出し線で示す矢印位置の高さ付近の箇所と同じ高さの箇所が「連結用突起受け部ト」であり,さらにその下部は,回転座1の連結用突起受け部トよりも下方に突出した箇所であると認められるから,原告の主張は失当である。
(2) 原告は,利用者が両足を洗い場の床面で支えたまま,回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け,回転座1への体重負荷を軽減させることで,回転座1の上下高さ位置の調節が可能になるという本件考案の作用効果を奏するために,本件構成は必須の構成ではないと主張する。
しかしながら,上記のように,本件構成は連結用突起ニの間に形成された4箇所の隙間に延在し,連結用突起ニの係合爪6aは本件構成に係合するものであるから,両者が係合している間は,回転座1は連結用部品6に対して独立して回転し得なくなり,また,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持されている限り,連結用部品6と伸縮用座受け2とは連動して回転することとなる。したがって,本件明細書(甲2)の「利用者が両足を洗い場の床面で支えたまま,回転座1の腰掛け面部1a上に軽く腰掛け,該回転座1への体重負荷を軽減させることで,回転座1の連結用突起廻り止めチに対する連結用部品6の係合爪6aとの係合,ひいては連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持され,回転座1及び伸縮用座受け2間の回動が拘束されることになる。この結果,本体3に対する回転座1を含んだ伸縮用座受け2の利用者自身による螺進退操作,つまり,回転座1の上下高さ位置の調節(上昇,下降)が可能になる」(【0021】)として記載された作用効果を奏するために,本件構成は必須の構成というべきである。
原告は,上記作用効果は,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持されている限り,本件構成に対する連結用部品6の係合爪6aとの係合の有無にかかわらず当然に奏し得ると主張する。しかしながら,上記のように,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持されれば,連結用部品6と伸縮用座受け2とは連動して回転することにはなるものの,本件構成と連結用部品6の係合爪6aとの係合が解放されると,回転座1は,連結用部品6に対して独立して回転し得ることとなり,伸縮用座受け2と独立して回転可能となるから,回転座1を回転させることにより伸縮用座受け2の上下高さ位置の調節をすることはできない。
(3) また,原告は,本件構成について,被告が本件出願に当たり本件図面を誤って記載した結果生じたものにすぎないと主張するが,上記のように,本件構成は,本件明細書等に記載された特定可能な構成であり,かつ,上記作用効果を奏するための必須の構成というべきであるから,原告の主張は失当というほかはない。
(4) さらに,原告は,本件パンフレット(甲4,12)に「実用新案出願中」との記載があり,被告が,別件訴状(甲3)において,本件パンフレットに記載された被告製品は本件考案の実施品であることを自認しているほか,本件無効審判の答弁書中でも同旨の自白をしていると主張する。しかしながら,仮に,被告が別件訴状において被告製品が本件考案の実施品であることを自認したとしても,この点が当裁判所を拘束するいわれはなく,本件訴訟における本件考案の要旨認定を左右するものではないし,また,本件全証拠によっても,被告が本件無効審判において原告主張の自白をしたことを認めるに足りない。
(5) 実用新案登録請求の範囲の記載が誤りであるとする原告の主張について ア 原告は,本件考案において,回転座1を含む伸縮用座受け2は,人の荷重が掛かっている状態で伸縮用座受け2の回転座1に腰掛けたまま上下高さ位置の調節はできず,また,回転座1を回転させたときに,回転座1のみが回転するか,伸縮用座受け2も回転して本体3に対する螺進退操作が可能かどうかは,利用者の座る位置によるのであり,荷重の大小によるものではないから,本件明細書(甲2)の実用新案登録請求の範囲の記載には誤りがある旨主張する。
しかしながら,上記のとおり,本件考案は,回転座1に腰掛けたまま本体3に対して回転座1を含む伸縮用座受け2を上下動させるというものではなく,回転座1に軽く腰掛けて回転座への負荷を軽くすることにより,回転座1の本件構成に対する連結用部品6の係合爪6aとの係合,ひいては連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いを保持し,この状態で回転座1を回転させることで回転座1を含む伸縮用座受け2の上下高さ位置の調節が可能になるというものである。また,本件明細書に記載されているように,「回転座1への体重重荷(注,「負荷」の誤記と認める。)を十分に加えることで,平面化した腰掛け面部1aが下方へ弾性的に撓曲され,該撓曲に伴って回転座1の連結用突起受け部トも下方へ押し下げられることになる。この結果,回転座1の連結用突起受け部トと係合爪6aを介して係合されている連結用部品6も自重で下方へ移動し,連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが自動的に解放されることになり,伸縮用座受け2に対する回転座1の回動操作が優先されて,本体3に対する伸縮用座受け2の螺進退操作を不能にする」(【0022】)のであって,本件明細書の実用新案登録請求の範囲の記載に誤りはない。
イ 原告は,回転座1を回転させたときに,回転座1のみが回転するか,又は伸縮用座受け2も回転して本体3に対する螺進退操作を可能とするかは,利用者の座る位置によると主張する。しかしながら,本件考案においては,回転座1を回転させたときに,伸縮用座受け2も連動して回転させ,本体3に対する回転座1を含む伸縮用座受け2の上下高さ位置調節を可能とするか,又は回転座1のみを回転させて伸縮用座受け2は回転させず,上下高さ位置調節を不可能とするかの選択は,回転座1に掛かる荷重が,回転座1における本件構成と連結用部品6の係合爪6aとの係合,ひいては連結用部品6の平面歯上ヘと伸縮用座受け2の平面歯下ホとの噛み合いが保持される程度に軽いか,又はこれらの係合及び噛み合いが解放される程度に重いかによって決定されるのであり,利用者の座る位置,すなわち,回転座1に荷重の掛かる位置とは関係がない。
ウ 原告は,利用者が深く腰掛けることと少し浅めに腰掛けることにより回転座1のみが回転するかどうかが決まるとも主張する。その趣旨とするところは必ずしも明らかではないが,本件明細書により本件構成が本件考案の要旨と解すべきことは上記のとおりであって,このような本件考案の詳細な作用効果は本件考案の要旨認定に影響を及ぼすものではないから,原告の主張は採用することができない。
2 以上のとおりであるから,原告主張の審決取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 長沢幸男
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